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特許7580754免疫細胞操作用の安定化されたMHC分子を有するスカフォールド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】免疫細胞操作用の安定化されたMHC分子を有するスカフォールド
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241105BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241105BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241105BHJP
   C07K 14/52 20060101ALN20241105BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20241105BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20241105BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C07K14/74
C12N5/0783
C12N15/12
C07K14/52
C07K14/705
C07K16/18
C07K14/78
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020570505
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019066286
(87)【国際公開番号】W WO2019243463
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】18178769.8
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507023887
【氏名又は名称】ダンマークス テクニスク ユニバーシテット
【氏名又は名称原語表記】DANMARKS TEKNISKE UNIVERSITET
【住所又は居所原語表記】Anker Engelunds Vej 101,DK-2800 Kongens Lyngby,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハドルップ,シネ,レッカー
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン,ソーレン,ニューボ
(72)【発明者】
【氏名】サイニ,スニル,クマル
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/161092(WO,A1)
【文献】HEIN Z; ET AL,PEPTIDE-INDEPENDENT STABILIZATION OF MHC CLASS I MOLECULES BREACHES CELLULAR QUALITY CONTROL,JOURNAL OF CELL SCIENCE,英国,2014年05月07日,VOL:127, NR:13,,PAGE(S):2885 - 2897,http://dx.doi.org/10.1242/jcs.145334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12N 15/00-90
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のテンプレート分子:
i.サイトカイン、共刺激分子、接着分子、及び抗体からなる群から選択される少なくとも2つのT細胞影響分子、及び
ii.少なくとも1つのMHCクラスI分子が結合したポリマー骨格を含む人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドであって、
前記MHCクラスI分子が、ジスルフィド架橋によって接続されたα-1ドメイン及びα-2ドメインを含む重鎖を含み、
前記MHCクラスI分子は、前記α-1ドメインに位置する変異システイン残基と、前記α-2ドメインに位置する変異システイン残基とを有するHLA-A、HLA-B又はHLA-Cであり、
前記T細胞影響分子がIL-21及びIL-2を含む、人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項2】
前記ジスルフィド架橋が、前記α-1ドメインに位置する前記変異システイン残基と、前記α-2ドメインに位置する前記変異システイン残基との間に形成される、請求項1に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項3】
前記ポリマー骨格が、少なくとも5のMHCクラスI分子を含む、請求項1又は2に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項4】
前記T細胞影響分子がサイトカインである、請求項1~のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項5】
前記サイトカインが、IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-17、IL-22、及びIL-23からなる群から選択される、請求項に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項6】
前記サイトカインがγ鎖受容体サイトカインである、請求項4又は5に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項7】
前記γ鎖受容体サイトカインが、IL-21、IL-2、IL-15、IL-4、IL-7及びIL-9からなる群から選択される、請求項に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項8】
前記γ鎖受容体サイトカインが、IL-21、IL-2及びIL-15からなる群から選択される、請求項6又は7に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項9】
前記MHCクラスI分子が、抗原ペプチドのないペプチド結合グルーブを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項10】
前記MHCクラスI分子が、抗原ペプチドを含むペプチド結合グルーブ(pMHC)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド。
【請求項11】
T細胞の同時インビトロ刺激及び増殖のための方法であって、以下のステップ
T細胞を含むサンプルを、請求項10に記載の人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドを含む増殖溶液と接触させるステップと、
ii.培養物中の前記aAPCスカフォールドに対して特異性を有するT細胞を刺激し増殖させるステップと、
iii.ステップii)のT細胞を前記培養から収集して、T細胞の増殖した抗原特異性集団を得るステップと、を含む、方法。
【請求項12】
T細胞の増殖用キットであって:
i.請求項1~のいずれか一項に記載の少なくとも1つの人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドを含む第一保存手段と、
ii.少なくとも1つ抗原ペプチドを含む第二保存手段と、
を含み、
前記第一保存手段及び前記第二保存手段の内容物が組み合わされるように構成されている、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞に特異的機能刺激を提供して腫瘍退縮又はウイルス排除を媒介するために理想的な表現型及び機能的特性を得るための人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドに関する。特に、本発明のスカフォールドは、抗原ペプチドのない安定化されたMHCクラスI分子を含む。スカフォールドは、必要に応じて抗原ペプチドをロードすることができ、ペプチド-MHCを標的とした方法で、特異的T細胞の有効な増殖及び機能刺激のための迅速なプラットフォームを提供する。
【背景技術】
【0002】
末梢血(PBMC)又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)からの腫瘍反応性T細胞を患者から抽出し、エクスビボで活性化・増殖させ、その後、患者に戻す免疫療法アプローチである養子細胞移入(ACT)は、悪性黒色腫研究では、患者の50%超において持続的臨床反応を示した。しかしながら、PBMC又はTILからの腫瘍反応性T細胞の増殖は、多くの場合、T細胞分化及び機能的能力を犠牲にした広範なエクスビボ培養を必要とする。結果として、移入されたT細胞産物は、腫瘍退縮を媒介するために適切な表現型及び機能特性を有する充分な頻度の腫瘍反応性CD8T細胞を含まない可能性がある。さらに、そのような腫瘍浸潤T細胞の大多数は、腫瘍特異的ではなく、むしろ末梢からのT細胞のバイスタンダー浸潤であり、T細胞受容体(TCR)認識はどの腫瘍抗原とも適合しない可能性がある。最終的に、腫瘍反応性T細胞のフラクションは、腫瘍部位に存在する抑制環境のために成長可能性が低下する可能性がある。
【0003】
増殖したT細胞の不十分な分化及び機能的能力の問題を克服するために、人工抗原提示細胞(aAPC)を利用する試みがなされた。aAPCの背後にある単純な概念は、TCRと、主要組織適合性複合体(MHC)によって提示される特異的抗原ペプチドとの間の自然の相互作用を模倣することである。この相互作用は、効率的な免疫応答を誘発することができるT細胞の活性化、増殖及び分化による免疫の生成における核となる段階である。T細胞応答の自然発生は、T細胞に影響を及ぼす分子、例えばサイトカインや共刺激分子によってさらに支援され、T細胞活性化及び機能を誘導する働きをする。したがって、すべての必要な分子を単一のaAPCスカフォールドに組み入れることは、T細胞の増殖の課題のいくつかを克服するための有望なツールである。aAPCは、T細胞活性化及び分化のための理想的な免疫学的シナプスを形成する。しかしながら、重大な課題は、aAPCが、機能的表現型も維持しつつ、抽出されたTILを効率的に増殖することを可能にする分子の組み合わせを明らかにすることである。
【0004】
国際公開第2002072631号では、MHCプラットフォームを利用する多くの概念が開示されており、それらのうちの1つは、1つ以上のMHCが結合している担体分子を含むMHC構築物である。構築物はまた、生物学的に活性な分子、例えば、共刺激分子又は細胞調節分子も含み得る。MHC構築物は、中でも、構築物を認識する細胞の増殖に使用され、疾患、例えばがんなどの治療で使用するための治療組成物を生成するために使用されることが企図される。国際公開第2002072631号は、T細胞増殖に好適であり得る多くの共刺激分子及びサイトカインを開示しているが、T細胞の増殖のために特に好適かつ有効な特定の組み合わせを特定していない。
【0005】
米国特許出願公開第2011/318380号は、がんワクチン及び免疫モニタリングのための国際公開第2002072631号で記載されているMHC構築物の応用を開示している。しかしながら、米国特許出願公開第2011/318380号は、T細胞の増殖のために特に好適かつ有効な共刺激分子及びサイトカインの特定の組み合わせを例示していない。
【0006】
国際公開第2009003492号は、抗原特異的T細胞の検出に主に焦点をあわせているが、抗原特異的T細胞の増殖も開示している。複合型ペプチドを含む及び含まないMHCマルチマー、それらの調製法並びに、望ましくない標的T細胞の不活化又は除去が可能な抗原特異的T細胞の単離を含む、分析及び療法におけるそれらの使用法が記載されている。国際公開第2009003492号にかかるMHCマルチマーは、デキストランスカフォールド並びに共刺激分子及び細胞調節分子を含み得る。しかしながら、この開示は、T細胞の増殖のために特に有効な分子の特定の組み合わせを指摘してはいない。
【0007】
国際公開第2009094273では、抗原-特異的T細胞を増殖するために使用される、ナノ粒子、サイトカイン、カップリング剤、T細胞受容体アクチベータ及び共刺激分子を含むaAPC組成物が開示される。T細胞受容体アクチベータは、抗原ペプチドに結合したMHC分子であり得る。さらに、養子免疫療法における増殖T細胞の使用を記載する。ただし、aAPC上の単一のサイトカイン、すなわちIL-2の適合性のみを調査し、外因性サイトカインと比較するだけである。
【0008】
したがって、aAPCスカフォールドの以前の開示に共通するのは、それらが主に包括的な方法で概念を記載しているだけであることである。T細胞増殖の成功基準、すなわち、活性なT細胞の高い比率、T細胞の高い抗原特異性及びT細胞の高い機能性は、刺激分子の特定の組み合わせが組み合わせられる場合にのみ満たされるので、明確に定義され有効なaAPCスカフォールドが強く求められている。T細胞増殖についての3つの成功基準のすべてが満たされた場合のみ、結果としてのT細胞集団がそれらの抗腫瘍又は抗ウイルス機能に適用するために最適に準備されている。
【0009】
公知aAPCスカフォールドの別の制限は、それらの非効率的なかつ柔軟性のない産生であり、これは、新しい免疫療法の開発を加速するハイスループットプラットフォームの需要と同調しない。aAPCスカフォールドの調製における主要な障害は、抗原ペプチド提示のためのMHC分子の要件によって生じる。簡単に説明すると、MHC分子の再フォールディングプロセスは、β2-ミクログロブリン(B2M)及び抗原ペプチドの非存在下で重鎖をその天然状態にフォールディングすることができないという事実により複雑になる。したがって、空MHCクラスI分子は非常に不安定で、凝集しやすい。したがって、T細胞刺激に望ましいすべてのペプチド-MHCの組み合わせは、独立した生産ラインを必要とする。これは、抗原ペプチドの状況が非常に広範であり、患者一人につきHLA分子あたり推定範囲200,000ペプチドが効率的に提示され、MHCクラスI分子は非常に多様であり、12,000を超える既知MHCクラスI分子が存在するために問題である。さらに、所与の状況下で適切な抗原ペプチドの選択は、関心対象の疾患、患者のMHCプロフィール及び利用可能なT細胞レパートリーに依存する。したがって、一つの抗原ペプチド特異的aAPCスカフォールドのみを生成することができる現行の一つの生産ラインのために、膨大な抗原ペプチド多様性及び従来型の個別化aAPC産生技術を利用した広範囲の可能な抗原ペプチド及びMHC分子の組み合わせを対象とする問題に適合することが実質的に不可能になる。
【0010】
組換えMHCクラスI分子は、例えば、細菌で産生されて、不溶性封入体を形成する。以前は、これらの封入体を次いでカオトロピック剤の溶液中で変性させ、続いて関心対象の特異的抗原ペプチドの存在下で(例えば、再生及び再フォールディングにより)カオトロピック剤を除去し、結果としてpMHC複合体が形成される。pMHC複合体を次いでゲルろ過クロマトグラフィによってフォールディングされていないタンパク質から精製する。これは、pMHCの一種を産生するだけの、労力がかかり比効率的な技術である。
【0011】
MHC分子の非効率的な産生は、MHC分子の再フォールディングの後に関心対象の抗原ペプチドと置換される、中間ペプチドを用いたMHC分子の産生によって解決することが試みられてきた。この技術は、MHCペプチド交換として知られる。しかしながら、交換率は100%ではなく、交換可能なペプチドが失われると、新しいペプチド結合に利用可能でないMHC分子の実質的に(50%まで)失われる可能性がある。さらに、この産生方法は時間がかかり、典型的に、ペプチド交換はMHCモノマー段階で起こり、そのため当該テクノロジーはより大きなスカフォールドでの使用に適さなくなる。上述の制限のために、aAPCスカフォールドアセンブリの化学量論の制御が欠如し、適所のpMHC分子に依存して可変産物安定性に関連する課題が生じる。
【0012】
pMHCを含む現行のaAPCスカフォールドテクノロジーのさらに別の制限は、抗原ペプチド依存性寿命を有することが知られている主要組織適合性複合体に固有の不安定性である。pMHCの不安定性は、pMHCが充分に機能的なままであり、したがって機能的aAPCスカフォールドのアセンブリングに有用である範囲を限定する。また、pMHC複合体の不安定性は、アセンブリングされたaAPC複合体が充分機能的なままであり得、効率的かつ抗原特異的にCD8T細胞を刺激することができる時間も限定する。
【0013】
米国特許第9,494,588号では、MHCクラスI分子のフォールディング後に抗原ペプチドをロードすることができる空MHCクラスI分子を提供することが、単一の生産ラインから任意の抗原特異的MHCクラスI分子を産生する便利な方法として提案されている。しかしながら、この方法を大きなaAPCスカフォールドでの使用に適用可能であるか否かは、単なる推測であり、開示されていない。例えば、wt MHC分子と類似の抗原特異的相互作用特性を有するT細胞とそれらが相互作用できることは示されていない。さらに、導入された変異がTCR-pMHC相互作用に対して構造的に影響を及ぼし得るか否かは不明である。そして同様に、この修飾された相互作用の機能性は記載されていない。
【0014】
したがって、ハイスループットセットアップのための改善されたaAPCスカフォールドが有利であろう。特に、あらかじめ産生することができ、必要に応じて抗原ペプチドをロードしてT細胞集団を増殖させ、刺激し、それによって活性なT細胞の高い比率、T細胞の高い抗原特異性及びT細胞の高い機能性をもたらすことができるaAPCスカフォールドの提供が有益であろう。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の目的は、末梢血(PBMC)又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から抽出された腫瘍反応性T細胞の増殖のための改善された能力を有する人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドを提供することに関する。
【0016】
本発明の別の目的は、異なる抗原ペプチドを提示する改善されたaAPCの大きなライブラリを生成するための、より使い勝手がよくハイスループットなプラットフォームを提供することである。
【0017】
さらに、大きなバッチの品質が保証されたaAPCスカフォールドの産生は、品質保証の規制当局からの高まる要求に対してより良好に対応するであろう。ここで、我々は、エンドユーザーのサイトで抗原ペプチドローディングに利用可能な、品質管理されたaAPCスカフォールドの1つの大きなバッチを用いて生産課題に対する「すぐに利用可能な」解決策を提供することができる。これは、患者腫瘍を配列決定して腫瘍変異を特定して、がん特異的ペプチド抗原を予測する、増えつつある高度にパーソナル化された免疫療法プロトコルに対する理想的な解決策となる。そのような抗原ペプチドは、レディーメイドの抗原ペプチド受容的aAPCスカフォールドに直接ロードされることが企図され得る。
【0018】
特に、本発明の目的は、不十分なT細胞分化及び増殖T細胞集団の機能的能力の先行技術の上述の課題を解決するaAPCスカフォールドを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、最適化された表現型及び機能的特性を有する、得られた増殖T細胞集団を利用して、腫瘍退縮又はウイルス排除を媒介することである。
【0020】
したがって、本発明の一態様は、以下のテンプレート分子:
i.少なくとも1つのT細胞に影響を及ぼす分子と、
ii.少なくとも1つのMHCクラスI分子
が付着したポリマー骨格を含む人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドであって、
MHCクラスI分子が、ジスルフィド架橋によって接続されたα-1ドメインとα-2ドメインとを含む重鎖を含む、人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドに関する。
【0021】
本発明の別の態様は、T細胞の同時インビトロ刺激及び増殖のための方法であって、以下のステップ:
i.T細胞を含むサンプルを提供するステップと、
ii.前記サンプルを、本発明にかかるaAPCスカフォールドを含む増殖溶液と接触させるステップと、
iii.培養物中の前記aAPCスカフォールドに対する特異性を有するT細胞を刺激し増殖させるステップと、
iv.培養物からステップiii)のT細胞を収集して、T細胞の増殖抗原特異性集団を得るステップと
を含む方法に関する。
【0022】
本発明のさらなる態様は、本発明にかかる方法によって得られる増殖T細胞集団を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、薬剤として使用される、本発明にかかる方法によって得られる増殖T細胞集団に関する。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、がん又はウイルス性疾患の治療で使用するための、本発明にかかる方法によって得られる増殖T細胞集団を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる態様は、T細胞の増殖用キットであって:
i.本発明にかかる少なくとも1つのaAPCスカフォールドを含む第一保存手段と、
ii.少なくとも1つ抗原ペプチドの第二保存手段と、
を含むキットを提供し、
第一保存手段及び第二保存手段の内容物は、組み合わせられるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、(A)例示的人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドの概略図を示す。aAPCスカフォールドは、テンプレート分子、例えばアンロードMHCクラスI分子(又はロードされたペプチド-MHC(pMHC)クラスI分子)及びT細胞に影響を及ぼす分子、例えばサイトカイン又は共刺激分子が結合した骨格で構成されている。異なる比率の骨格及びテンプレート分子がaAPCスカフォールドにアセンブリングされたaAPCスカフォールドの例を挙げる。(B)慎重に選択されたテンプレート分子の組み合わせをaAPCスカフォールドに組み合わせて、患者から抽出した特異的T細胞集団を増殖するためにどのように利用することができるかを示す図である。
図2図2は、(A)PE(X軸)及びAPC(Y軸)標識テトラマーでエクスビボにて直接検出された健常なドナーからのHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8T細胞の頻度、(B)1:10:5:5:5(スカフォールド:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の比率の抗原提示スカフォールド、(C)遊離FLU BP-VSDペプチド、IL-15、及びIL-21、又は(D)無関係のペプチド特異性を有する1:10:5:5:5の比率の抗原提示スカフォールドのいずれかと、培養培地中に添加された20IU/mlのIL-2と共に2週間培養した後のHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8T細胞の頻度、(E)ベースラインを用い、増殖後1週間及び2週間からテトラマー染色により検出された、HLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8T細胞の頻度に基づく増殖率、(F)2週間の増殖後のHLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8T細胞の絶対数を示す。
図3図3は、Cys-変異体とアセンブリングしたaAPCスカフォールド及び野生型MHC分子とアセンブリングしたaAPCスカフォールドを用いて増殖させたCD8T細胞の機能性を比較する、HLA-A*02:01、FLU 58-66 GILGFVFTLペプチド(配列番号20)での刺激後のCD8T細胞間のTNF-α及びIFN-γの発現のドットプロットを示す。健常なドナーPBMCからの、0.3%の初期頻度のHLA-A*02:01、FLU 58-66 GILGFVFTL特異的CD8T細胞(左、増殖前pMHCデュアルカラーテトラマー染色プロット)を、比率1:8:8:8(スカフォールド:pMHC:IL-2:IL-21)でアセンブリングしたaAPCスカフォールドを使用して10日間増殖させ、FLU 58-66 GILGFVFTLペプチドで刺激した。無関係のペプチド(HLA-A*02:01 HIV Pol ILKEPVHGV(配列番号23))特異性を有し、増殖培養で使用し、続いてペプチド刺激した、aAPCスカフォールドを負の対照として使用した。TNF-α抗体はPE-Cy7標識され(Y軸)、IFN-γ抗体はAPC標識されている(X軸)。これらの染色は、二連で行ったが、各染色の一方だけを図示する。
図4図4は、Cys-変異体とアセンブリングしたaAPCスカフォールド及び野生型MHC分子とアセンブリングしたaAPCスカフォールドを用いて増殖させたCD8T細胞の機能性を比較する、HLA-A*02:01、EBV BMF1 GLCTLVAMLペプチド(配列番号21)での刺激後のCD8T細胞間のTNF-α及びIFN-γの発現のドットプロットを示す。健常なドナーPBMCから得られた初期頻度0.05%を有するHLA-A*02:01、EBV BMF1 GLCTLVAML特異性CD8 T細胞(左、増殖前、pMHCデュアルカラーテトラマー染色プロット)を、10日間、比率1:8:8:8(スカフォールド:pMHC:IL-2:IL-21)とアセンブリングし、EBV BMF1 GLCTLVAMLペプチドで刺激したaAPCスカフォールドを使用して増殖させた。無関係のペプチド(HLA-A*02:01 HIV Pol ILKEPVHGV(配列番号23))特異性を有し、増殖培養で使用し、続いてペプチド刺激したaAPCスカフォールドを負の対照として使用した。TNF-α抗体はPE-Cy7標識され(Y軸)、IFN-γ抗体はAPC標識されている(X軸)。これらの染色は二連で行ったが、各染色の一方だけを示す。
図5図5は、aAPCスカフォールドを使用して増殖させた、HLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV(配列番号22)特異的CD8T細胞のテトラマー染色ドットプロットであって、アセンブリ後Cys-変異MHC(すなわち、ロード可能な)aAPCスカフォールドの増殖効率をスカフォールドの抗原ロードアセンブリ前(Cys-変異体又は野生型MHC)と比較するものを示す。図5A、HLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV特異的CD8T細胞のベースライン頻度(pMHC特異的ダブルポジティブテトラマーによって決定した総CD8T細胞の%で表す)。図5Bは、10日間増殖させ、pMHC特異的PEテトラマーを使用して定量化したHLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV特異的CD8T細胞を、Cys-変異MHCをロードしたプレアセンブリペプチド-抗原aAPC、Cys-変異体MHCを有するプレロードaAPC、及び野生型MHCを有するプレロードaAPCにわたって比較する。
図6図6は、HLA-A*02:01、CMV pp65 NLVPMVATVペプチド(配列番号22)で刺激した後のCD8T細胞間のTNF-α及びIFN-γの発現を示すドットプロットであって、Cys-変異MHCをロードしたポストアセンブリペプチド-抗原aAPC、Cys-変異MHCを有するプレロードaAPC、及び野生型MHCを有するプレロードaAPCを用いてアセンブリングしたaAPCスカフォールドで増殖させたCD8T細胞の機能性を比較するものを示す。TNF-α抗体はPE-Cy7標識され(Y軸)、IFN-γ抗体はAPC標識されている(X軸)。これらの染色は二連で行ったが、各染色の一方だけを示す。
図7図7は、HLA-A*02:01、EBV BMF1 GLCTLVAMLペプチド(配列番号21)での刺激後のTNF-α及びIFN-γダブルポジティブCD8T細胞のドットプロットを示す。健常なドナーPBMCからのHLA-A*02:01、EBV BMF1 GLCTLVAML特異的CD8T細胞を10日間、aAPCスカフォールド1:8:8:8(スカフォールド:MHC/pMHC:IL-2:IL-21)を使用して増殖して、Cys-変異MHCをロードしたポストアセンブリペプチド-抗原aAPC、Cys-変異MHCを有するプレロードaAPC、及び野生型MHCを有するプレロードaAPCを用いてアセンブリングしたaAPCスカフォールドにわたって増殖CD8T細胞の機能性を比較した(図7B)。TNF-α抗体は、PE-Cy7標識され(Y軸)、IFN-γ抗体はAPC標識されている(X軸)。これらの染色は二連で行ったが、各染色の一方だけを示す。ドナーPBMC中のベースラインHLA-A*02:01、EBV BMF1 GLCTLVAML特異的CD8T細胞を、pMHC特異的デュアルカラーテトラマーによって測定して、全CD8T細胞の%として示す(図7A)。
図8図8は、wt MHC(上のパネル)又はCys-変異pMHCテトラマー(下のパネル)を用いて調製したpMHCテトラマーを使用した、HLA-A*02:01抗原特異的CD8T細胞のTCR認識を比較するフローサイトメトリー分析のドットプロットを示す。4つの異なる抗原特異性を分析して、Cys-変異MHCがwt MHCと比較する方式でCD8T細胞TCRを認識することを立証する。CD8陽性T細胞は総CD8T細胞のパーセンテージで表され、2色で検出され、したがってダブルポジティブドットプロットである(X及びY軸)。
図9図9は、HLA-A*01:01 CMV pp65 YSEHPTFTSQYペプチド(配列番号30)での刺激後のCD8T細胞の増殖を示す。(A)それぞれ蛍光マーカーPE及びBV605で標識されたMHCテトラマーを使用した、末梢血からのHLA-A*01:01 CMV pp65 YSEHPTFTSQY特異的CD8T細胞の同定。プロットはCD8T細胞をあらかじめ標的とする。(B)neo2/15+pMHC Agスカフォールドを用いて2週間増殖後のHLA-A*01:01 CMV pp65 YSEHPTFTSQY特異的CD8T細胞の集団。図示されているのは、CD8T細胞(Y軸)及びMHCテトラマー陽性T細胞標識BV605(x軸)である。集団は、増殖前の総CD8T細胞に対するHLA-A*01:01 CMV pp65 YSEHPTFTSQY特異的CD8T細胞0.6%から、増殖後の8.4%まで増強される。(C)HLA-A*01:01 CMV pp65 YSEHPTFTSQY特異的CD8T細胞の抗原曝露に対して応答する能力。総T細胞の40%はマルチサイトカイン分泌に応答する。
【0027】
本発明を以下でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本発明をさらに詳細に議論する前に、以下の用語及び表現をまず定義する:
人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド
この文脈で、用語「人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールド」は、抗原提示細胞と同様に機能するために本明細書中で定義される必要な分子のアセンブリを意味する。
【0029】
ポリマー骨格
この文脈で、用語「ポリマー骨格」は、個々のテンプレート分子がその上に固定されるaAPCスカフォールドの部分を意味する。テンプレート分子は、ポリマー骨格上に位置するか又はポリマー骨格の一体化された部分としてのカップリング剤と、テンプレート分子上に配置されたアフィニティタグとの間の相互作用によって結合されている。あるいは、カップリング剤はテンプレート分子上にあり得、対応するアフィニティタグはポリマー骨格上にあり得る。
【0030】
ポリマー骨格は、多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、strep-tactin、ポリ-ストレプトアビジン、ビオチン結合タンパク質及びポリヒスチジン結合ポリマーから選択される材料のものであり得る。
【0031】
テンプレート分子
この文脈で、用語「テンプレート分子」は、aAPCスカフォールドのポリマー骨格上に結合している任意の分子を指す。それらは、MHCクラスI分子、T細胞に影響を及ぼす分子、例えば、サイトカイン及び共刺激分子、並びにCD47から選択することができる。テンプレート分子はアフィニティタグを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、テンプレート分子は、ポリマー骨格上ではなく、固体支持体に直接結合させることができる。
【0033】
T細胞に影響を及ぼす分子
この文脈で、用語「T細胞に影響を及ぼす分子」は、T細胞に対して生物学的影響を及ぼす任意の分子を指す。生物学的影響としては、限定されるものではないが、T細胞の増殖、分化及び刺激が挙げられる。
【0034】
したがって、T細胞に影響を及ぼす分子は、T細胞集団を増殖させ機能的に操作して、高特異性、高殺傷能力、高いインビボ増殖及び生存特性をもたらす所望の分化を得るために利用することができる。T細胞に影響を及ぼす分子としては、限定されるものではないが、サイトカイン、共刺激分子及び接着分子が挙げられる。
【0035】
本発明のaAPCスカフォールドは、1以上の異なる種類のT細胞に影響を及ぼす分子、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5の異なる種類のT細胞に影響を及ぼす分子を含み得る。
【0036】
さらに、各aAPC上に位置するT細胞に影響を及ぼす分子の数は1つ以上であり得、aAPCの設計に依存して変動し得る。したがって、aAPCスカフォールド上のT細胞に影響を及ぼす分子の数は、1~100、例えば1~50、例えば1~25、例えば1~20、例えば1~15、例えば1~10、又は例えば1~5の範囲内であり得る。
【0037】
変異システイン残基
この文脈で、用語「変異システイン残基」は、MHCクラスI分子の重鎖に人工的に導入されたシステイン残基を指す。したがって、変異システイン残基は、対応する野生型MHCクラスI分子の重鎖中に存在しない。
【0038】
変異システイン残基は、当業者に公知の変異誘発技術、例えば部位特異的変異誘発によって導入することができる。
【0039】
非共有相互作用
この文脈で、用語「非共有相互作用」は、共有結合以外の相互作用を介する任意の結合を意味する。非共有結合は、例えば、疎水性相互作用、親水性相互作用、イオン性相互作用、ファンデアワールス力、水素結合、及びそれらの組み合わせによって形成することができる。
【0040】
カップリング剤
この文脈で、用語「カップリング剤」は、aAPCのポリマー骨格上に位置する分子的実体を指す。カップリング剤は、アフィニティタグに非共有結合することができる。カップリング剤の例としては、ストレプトアビジン、アビジン、strep-tactin、抗体、ポリHis-タグ、金属イオンキレートなどが挙げられる。
【0041】
あるいは、カップリング剤はテンプレート分子上にあり得、対応するアフィニティタグはポリマー骨格上にあり得る。
【0042】
アフィニティタグ
この文脈で、用語「アフィニティタグ」は、テンプレート分子上に位置する分子種を指す。アフィニティタグは、非共有相互作用によってカップリング剤に対して高度に特異的に結合する。カップリング剤の例としては、ビオチン、抗体エピトープ、His-タグ、ストレプトアビジン、strep-tactin、ポリヒスチジン、ペプチド、金属イオンキレートなどが挙げられる。
【0043】
あるいは、アフィニティタグはポリマー骨格上にあり得、対応するカップリング剤はテンプレート分子の骨格上にあり得る。
【0044】
抗原ペプチド
この文脈で、用語「抗原ペプチド」は、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合して、ペプチド-MHC(pMHC)複合体を形成することができるペプチドを指す。pMHC複合体は、抗原ペプチドを免疫細胞に対して提示して、T細胞受容体依存性免疫応答を誘導することができる。
【0045】
MHCはMHCクラスI分子であり得る。
【0046】
MHC
この文脈で、用語「MHC」は、その主要な機能が、病原体由来の抗原ペプチドと結合し、適切なT細胞による認識のためにそれらを細胞表面上に提示することであるタンパク質複合体である、主要組織適合性複合体を指す。
【0047】
MHC分子には、MHCクラスI分子及びMHCクラスII分子の2つの主なクラスがある。本明細書で、「MHC」は、MHCクラスI分子を指す。MHCクラスI分子は、MHC遺伝子によって産生されるα鎖(重鎖)と、β2-ミクログロブリン遺伝子によって産生されるβ鎖(軽鎖又はβ2-ミクログロブリン)とから構成される。
【0048】
重鎖は、それぞれ、α-1、α-2及びα-3で示される3つのドメインから構成される。α-1ドメインは、非共有結合したβ2-ミクログロブリンの隣に位置する。α-3ドメインは、細胞膜中にMHCクラスI分子を固定する膜貫通ドメインである。合わせると、α-1及びα-2ドメインは、特異的抗原ペプチドを結合するペプチド結合グルーブを含むヘテロダイマーを形成する。ペプチド結合グルーブのアミノ酸配列は、どの特異的抗原ペプチドがMHCクラスI分子に結合するかに関する決定因子である。
【0049】
当然ながら、MHCクラスI分子の重鎖は、4つの保存されたシステイン残基を含み、その結果、2つのジスルフィド架橋が形成される。MHCクラスI分子の正しくフォールディングされたコンフォメーションで、1つのジスルフィド架橋は、Cys101とCys164との間のα-2ドメインの内部に位置し、別のジスルフィド架橋は、Cys203とCys259との間のα-3ドメインの内部に位置し、アミノ酸ナンバリングはシグナルペプチドなしのHLA-Aを参照する。
【0050】
本発明では、さらなるジスルフィド架橋が、α-1ドメインとα-2ドメインとの間に2つのシステイン残基を組換え導入することによって導入される。好ましくは、2つの変異システインは、α-1ドメイン中のシステイン残基とα-2ドメイン中のシステイン残基との間の空間距離が2~10Åである重鎖中の位置で導入される。
【0051】
MHC分子は空であるか又は抗原ペプチドに結合するかのいずれかであり得る。したがって、この文脈で、抗原ペプチドのないMHC分子(すなわち、空MHC分子)と、結合した抗原ペプチドを有するMHC分子を指すpMHC分子との間には違いがある。
【0052】
この文脈で、用語「ロード可能なaAPCスカフォールド」、「抗原ペプチド受容的aAPCスカフォールド」及び「空aAPCスカフォールド」は交換可能に用いられ、抗原ペプチドのないMHC分子を有するaAPCスカフォールドを意味する。
【0053】
ヒトにおいて、MHC複合体はヒト白血球抗原(HLA)遺伝子複合体によってコードされる。したがって、この文脈で、用語「MHC」は「HLA」も包含する。3つの主な種類のHLAが存在し、したがって、MHCとしては、この文脈で、限定されるものではないが、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cの遺伝子座においてコードされるHLA対立遺伝子が挙げられる。同様に、MHCとしては、限定されるものではないが、MHCクラスI様分子、例えば、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、MIC A、MIC B、CD1d、ULBP-1、ULBP-2、及びULBP-3が挙げられる。
【0054】
pMHC
この文脈で、用語「pMHC」は、抗原ペプチドが結合する前記定義のMHC分子を指す。したがって、用語pMHCは、抗原ペプチドをロードしたMHCクラスI分子を指す。
【0055】
サイトカイン
この文脈で、用語「サイトカイン」は、刺激されたT細胞の増殖、生存及びエフェクタ機能に影響を及ぼす免疫調節分子を意味する。サイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0056】
インターロイキンの例としては、限定されるものではないが、IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-17、IL-22、及びIL-23が挙げられる。サイトカインには、1つ以上のインターロイキンに対応するT細胞刺激及び活性化を誘導するインターロイキンの変異体又は模倣物も含まれる。インターロイキンの変異体又は模倣物は、天然のサイトカインの結合部位を含み得るが、タンパク質の残りの部分は様々であり得る。したがって、インターロイキンの変異体又は模倣物としては、限定されるものではないが、IL-2、IL-15及びIL-21の変異体、又はそれらの組み合わせ、例えばIL-2/IL-15が挙げられる。
【0057】
サイトカイン群に含まれる特定のインターロイキン変異体又は模倣物はネオロイキン-2/15と称する。ネオロイキン-2/15(Neo-2/15)は、非常に安定で、IL-2Rβγcに対して強力に結合するが、CD25には結合しないデザイナーサイトカインである。
【0058】
γ鎖受容体サイトカイン
この文脈で、用語「γ鎖受容体サイトカイン」は、共通のγ鎖サブユニットを含む対応するサイトカイン受容体と結合するサイトカインの群を指す。共通のγ鎖(γ)受容体は、CD132又はインターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)としても知られる。γ鎖受容体サイトカインの共通点の一つは、それらがすべて、共有されるγ鎖受容体を介して自身の細胞内シグナルを送達し、T細胞活性化及び分化に影響を及ぼすことである。
【0059】
γ糖タンパク質は膜貫通タンパク質であり、これは、細胞外、膜貫通及び細胞内ドメインを含み、典型的にはリンパ球上で発現される。γサブユニットは、少なくとも6つの異なるサイトカイン受容体、すなわち、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21受容体の受容体複合体の部分である。したがって、γ鎖受容体サイトカインの群は、少なくともIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21を含む。γ鎖受容体サイトカインはまた、1つ以上のインターロイキンに対応するT細胞刺激及び活性化を誘導するγ鎖受容体サイトカインの変異体又は模倣物、例えば、IL-2、IL-15及びIL-21、又はその組み合わせ、例えばIL-2/IL-15の変異体も含む。
【0060】
共刺激分子
この文脈で、用語「共刺激分子」は、T細胞との相互作用により、サイトカインのT細胞応答、増殖、産生及び/又は分泌を増強し、T細胞の分化及びエフェクタ機能を刺激するか、又は共刺激分子と接触しないT細胞と比較してT細胞の生存を促進する分子を意味する。共刺激分子の例としては、限定されるものではないが、B7.1、B7.2、ICOS、PD-L1、a-ガラクトシルセラミド、CD3、CD4、CD5、CD8、CD9、CD27、CD28、CD30、CD69、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD147、CDw150(SLAM)、CD152(CTLA-4)、CD153(CD30L)、CD40L(CD154)、Fas(CD95)、CD40、CD48、CD70、及びCD72が挙げられる。
【0061】
接着分子
この文脈で、用語「接着分子」は、aAPCスカフォールドとT細胞との間の接着を誘導する分子を指す。接着分子としては、限定されるものではないが、ICAM-1、ICAM-2、GlyCAM-1、CD34、抗LFA-1、抗LFA-2(CD2)、LFA-3(CD58)、抗CD44、抗β-7、CXCR4、CCR5、抗セレクチンL、抗セレクチンE、及び抗セレクチンPが挙げられる。
【0062】
エピトープ
この文脈で、用語「エピトープ」は、T細胞のTCRによって認識される抗原決定基を意味する。pMHCによって提示されるエピトープは、任意の外来物質に対して非常に特異的であり、TCRとの相互作用によって、ペプチド-MHCを標的とした方法で、特異的T細胞の有効な増殖及び機能的刺激が確実になる。
【0063】
固体支持体
この文脈で、用語「固体支持体」は、aAPCスカフォールドを結合させることができる任意の種類の不溶性材料を指す。aAPCスカフォールドは、固体支持体に共有的又は可逆的に結合させることができる。固体支持体に結合させたaAPCスカフォールドは、(例えば、ろ過、クロマトグラフィ、遠心分離などにより)、過剰の試薬又は溶媒から容易に分離することができる。
【0064】
固体支持体としては、限定されるものではないが、ビーズ、ウェルプレート、粒子、フィルター、ゲル、チューブ、及びペトリ皿が挙げられる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態において、テンプレート分子、すなわち、T細胞に影響を及ぼす分子及びMHCクラスI分子は、固体支持体に直接結合させることができる。
【0066】
サンプル
この文脈で、用語「サンプル」は、対象から抽出された溶液を指し、溶液はT細胞の集団を含む。サンプルは、任意の特定の供給源に限定されず、例えば、血液、組織又は体液から抽出することができる。T細胞集団は異なる特異性を有するT細胞を含み得る。
【0067】
増殖溶液
この文脈で、用語「増殖溶液」は、aAPCに対する特異性を有するT細胞の増殖において使用するためのaAPCスカフォールドを含む溶液を指す。増殖溶液は、T細胞の増殖、分化及び刺激を支持する他の実体をさらに含んでもよく、例えば、増殖溶液は、aAPCスカフォールド上に固定化されたものに加えて、さらなるサイトカイン、共刺激分子又は接着分子を含み得る。
【0068】
臨床的に関連する数
この文脈で、用語「臨床的関連数」は、疾患と闘うために必要な細胞の数を指す。細胞の臨床的関連数の絶対値は疾患に応じて変わる。患者に再導入される前に利用可能な細胞の数は、投与当たり10~1012個の細胞、例えば投与当たり10~1010個の細胞、例えば投与あたり10~10個の細胞の範囲内であり得る。
【0069】
医薬組成物
この文脈で、用語「医薬組成物」は、本発明にしたがって得られ、好適な量の薬剤的に許容される希釈剤若しくは賦形剤及び/又は薬剤的に許容される担体中に懸濁された、増殖T細胞集団を含む組成物を指す。
【0070】
薬剤的に許容される
この文脈で、用語「薬剤的に許容される」は、生理学的に許容され、ヒトに投与された場合、典型的にはアレルギー又は類似の有害な反応、例えば、異常亢進、めまいなどを生じない分子的実体及び組成物を指す。好ましくは、本明細書中で用いられる場合、用語「薬剤的に許容される」は、連邦若しくは州政府の規制機関によって認可されていること、又は動物、さらに詳細にはヒトでの使用のための米国薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0071】
アジュバント
この文脈で、用語「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物又は混合物を指す。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織デポーとして、またリンパ系アクチベータとしての役割を果たすことができ、これは、免疫応答を非特異的に増強することができる。多くの場合、アジュバントの不在下で、抗原単独での一次負荷では、液性又は細胞性免疫応答は誘発されない。アジュバントとしては、限定されるものではないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リソレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油又は炭化水素エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及び潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)が挙げられる。好ましくは、アジュバントは薬剤的に許容される。
【0072】
賦形剤
この文脈で、用語「賦形剤」は、本発明の組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、担体、又はビヒクルを指す。そのような医薬担体は、無菌液体、例えば、水、及び石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む油であり得る。水又は水溶液、生理食塩液並びにデキストロース及びグリセロール水溶液が担体として、特に注射液用に用いられる。好適な医薬担体は、E.W.Martinによって「Remington’s Pharmaceutical Sciences」で記載されている。
【0073】
配列同一性
この文脈で、用語「配列同一性」は、本明細書中では、それぞれヌクレオチド、塩基又はアミノ酸レベルでの遺伝子又はタンパク質間の配列同一性として定義される。具体的には、DNA及びRNA配列は、DNA配列の転写産物を同じRNA配列に転写することができる場合、同じであるとみなされる。
【0074】
したがって、この文脈で「配列同一性」は、アミノ酸レベルでのタンパク質間の同一性の尺度であり、ヌクレオチドレベルでの核酸間の同一性の尺度である。タンパク質配列同一性は、配列を整列させた場合、各配列における所与の位置のアミノ酸配列を比較することにより決定することができる。同様に、核酸配列同一性は、配列を整列させた場合に、各配列における所与の位置のヌクレオチド配列を比較することによって決定することができる。
【0075】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸の同一性(%)を決定するために、配列を最適の比較目的のために整列させる(例えば、ギャップを、第二アミノ又は核酸配列との最適アラインメントのために、第一アミノ酸又は核酸配列の配列に導入することができる)。対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを次いで比較する。第一配列中のある位置が、第二配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、分子は当該位置で同一である。2つの配列間の同一性(%)は、当該配列によって共有される同じ位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同じ位置の数/位置の総数(例えば、オーバーラップする位置)×100)。一実施形態において、2つの配列は同じ長さである。
【0076】
別の実施形態では、2つの配列は異なる長さのものであり、ギャップは異なる位置として見られる。配列を手作業で整列させ、同じアミノ酸の数を数えることができる。あるいは、同一性(%)の決定のための2つの配列のアラインメントは、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。そのようなアルゴリズムは、(Altschul et al.1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、語長=12を用いて実施して、本発明の核酸分子と同種であるヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質サーチは、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3で実施して、本発明のタンパク質分子と相同性のアミノ酸配列を得ることができる。
【0077】
比較目的でギャップ付アラインメントを得るために、Gapped BLASTを利用することができる。あるいは、PSI-Blastは、分子間の距離関係を検出する反復検索を実施するために使用することができる。NBLAST、XBLAST、及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラムのデフォルトパラメータを使用してもよい。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照。あるいは、配列同一性は、配列を、例えば、EMBLデータベース(www.ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST)のBLASTプログラムにより整列させた後、算出することができる。概して、例えば、「スコアリングマトリックス」及び「ギャップペナルティ」に関するデフォルト設定をアラインメントに使用することができる。本発明の関連で、BLASTN及びPSI BLASTデフォルト設定が有利であり得る。
【0078】
2つの配列間の%同一性は、ギャップを許容するか否かを問わず、上述のものと類似の技術を用いて決定することができる。%同一性の算出において、正確な一致のみをカウントする。したがって、本発明の実施形態は、ある程度の配列変動を有する本発明の配列に関する。
【0079】
安定化されたMHCクラスI分子を有するaAPCスカフォールド
T細胞は、免疫応答において重要な役割を果たし、抗原提示細胞(APC)と相互作用することによって外来物質を認識し応答し、MHC分子との複合体(pMHC)で外来物質の抗原ペプチドを提示する。T細胞は非常に特異的であり、T細胞受容体(TCR)の単一特異性のみを発現させ、それにより、T細胞が、単一特異性pMHC分子のみを認識し応答することを可能にする。T細胞をまずプライミングして、抗原とMHC分子との特定の組み合わせの受容体を発生させると、それらは、その後、他の特異性を認識することができなくなる。T細胞のこの特殊化は、MHC限定と呼ばれ、増殖T細胞集団を「汚染」する無関係の特異性のない単一特異性のT細胞を増殖させるために利用することができる。
【0080】
MHC分子は、いくつかの変異体で存在し、そのMHCクラスI及びMHCクラスII分子が最も重要であるとみなされ得る。MHCクラスI分子はCD8陽性細胞毒性T細胞(CD8+T細胞)と相互作用し、MHCクラスII分子はCD4陽性ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)と相互作用する。一旦活性化すると、CD8+T細胞は、概して、がん細胞、(特にウイルスに)感染した細胞、過剰発現するがん抗原によって特徴づけられる細胞、変異を発現する細胞、すなわちネオアンチゲン、がん-精巣抗原を発現する細胞又は他の方法で損傷を受けた細胞を殺滅しようとする。一方、CD4+T細胞は、免疫系を支援することにより、例えばサイトカインを放出することによって主に機能し、CD8+T細胞を増強する。単一種のT細胞に限定されないが、本発明は主にCD8+T細胞の活性化、刺激及び増殖に関連する。これは、aAPCスカフォールドの利用がCD4+T細胞及び抗原提示細胞の統合された役割をある程度果たすので、特に当てはまる。
【0081】
TCR-pMHC相互作用はT細胞の活性化の主な推進力であるが、有効な免疫応答のためにT細胞を調製するためにはいくつかの他の要因が必要とされる。全体として、CD8+T細胞の活性化は、2つのシグナル;1)TCRとpMHCクラスI分子との間の相互作用、及び2)CD28、T細胞上の膜受容体及びAPC上に位置するCD28リガンド、例えばB7.1(CD80)又はB7.2(CD86)間の共刺激相互作用を必要とする。第二シグナルは、増殖、サイトカイン産生及び細胞生存を増強する働きをする。
【0082】
刺激シグナルに加えて、T細胞応答は阻害シグナルによっても調節される。Tim-3、LAG-3及びPD-1は阻害シグナルのメディエータの例である。それらは、過剰なT細胞活性化を回避し、免疫系が生物全体に広がるのを防止するための自然のメカニズムとしての役割を果たす。
【0083】
二次シグナルは、CD4+T細胞によって放出されたサイトカインでのCD8+T細胞の刺激によって、支援されるか、又は場合によっては置換され得る。したがって、サイトカインは、免疫応答の調節に関与する別の重要な分子群を構成する。サイトカインには、一般的に、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子が含まれる。それらは、受容体を介して作用し、中でも、T細胞集団の成熟、成長、及び反応性を調節する。合わせると、インターロイキン-2(IL-2)及び共刺激シグナルは、連続した細胞分裂の保存のための最も重要な因子である。共刺激分子とサイトカインとの間の繊細な相互作用は複雑であり、効率的かつ特異的なT細胞増殖の重要な因子のうちの1つである。
【0084】
免疫応答においてだけでなく、アポトーシス、増殖、接着、及び遊走などの細胞プロセスにおいても重要な役割を果たす別の分子がCD47である。この膜貫通タンパク質は、ヒト細胞において偏在的に発現されるが、多種多様の腫瘍細胞において過剰発現され、高レベルのCD47により、がん細胞は食作用を回避することができる。しかしながら、CD47はまた、免疫細胞においても広く発現され、免疫細胞の循環時間を延長する「食作用阻害(don’t eat me)」シグナルとして機能する。CD47を発現するT細胞の増殖は、これらの細胞が治療的に使用される場合に半減期が増加することが予想されるので、好ましい場合がある。
【0085】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、テンプレート分子が、T細胞集団におけるCD47発現を刺激することができるリガンドを含むaAPCスカフォールドに関する。
【0086】
CD47はまた、aAPC自体にとって、例えば、培養又は循環におけるaAPCスカフォールドの半減期を延長する「食作用阻害(don’t eat me)」シグナルとして、有益な特性であり得る。
【0087】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、CD47をさらに含むaAPCスカフォールドに関する。
【0088】
上記により例示されるように、T細胞の活性化及び増殖に関与する多くの因子がある。しかしながら、免疫療法及び/又は特異的T細胞集団の増殖のために、T細胞集団に、これらの目的に適した高い活性及び機能性を提供する能力のために理想的に満たされるべきある条件を設定することが可能である。したがって、増殖T細胞の好ましい特性としては以下のものが挙げられる:
a.アクチベータ(例えばCD28)の高発現
b.阻害剤(例えばPD1)の低発現
c.多機能性、すなわち、いくつかのサイトカインの同時分泌。
【0089】
効率的な活性化及び刺激のために必要とされる異なる分子のクラスタは、T細胞機能及び増殖の最適能力を提供するために同時に存在しなければならない。aAPCスカフォールドを使用することで互いに所定の近接度にある必要とされる分子の組み合わせが集められるので、特異的T細胞の効率的な増殖に好適なプラットフォームを構成される。
【0090】
高度に特殊化され、かつ活性なT細胞の効率的な増殖のためにaAPCスカフォールドを利用する見込みは非常に有望である。しかしながら、MHC抗原提示に基づく技術を真にハイスループットのプラットフォームに変えるという課題が引き続き存在する。これは、MHC分子の再フォールディングが抗原ペプチドの非存在下では不可能であり、それらの産生はしたがって複雑かつ費用がかかるためである。数千のMHCクラスIアロタイプがあるだけでなく、治療目的で検査又は利用される各抗原ペプチドのために新しい個別化aAPCスカフォールドを産生しなければならない。抗原ペプチドなしでMHC分子を産生し、代わりに必要に応じてaAPCスカフォールドをアセンブリングする直前に抗原ペプチドを添加するのがより効率的で柔軟性がある。抗原ペプチドなしでMHC分子を使用して完全にアセンブリングされたaAPCスカフォールドを産生し、代わりに、必要に応じて抗原ペプチドを添加することが、なお一層効果的かつ柔軟性である。
【0091】
したがって、T細胞の増殖及び新しい免疫療法の開発のためのハイスループットプラットフォームを提供するために、aAPC本発明のスカフォールドは、aAPCスカフォールドの産生後に抗原ペプチドを添加できる、空MHCクラスI分子を備えていてもよい。MHCクラスI分子は、重鎖のα-1及びα-2ドメインを結合させるジスルフィド架橋の人工的導入によって安定化される。ジスルフィド架橋は、C末端ペプチド結合ポケットの遠位末端のペプチド結合グルーブの外側に位置する。MHCクラスI分子のこのような構造的変化は、結合した特異的抗原ペプチドのコンフォメーション的効果及び動的効果を模倣し、それによってMHCクラスI分子を安定化させる。
【0092】
天然クラスI MHC分子は、特異的アフィニティで多様な配列のペプチドと結合する。これは、ペプチド結合を促進するポケット(典型的には、MHC結合グルーブのA及びFポケット)を形成するペプチド結合グルーブの末端で保存アミノ酸の使用により達成することができる。これらの結合ポケットは、典型的にはアンカーモチーフ(典型的には、位置2又は3、及びペプチドのc末端位置)と称する、抗原ペプチドの結合についての一組の要件を決定する。天然のMHCクラスI分子は多くの異なる抗原ペプチドとアンカーモチーフの認識によって結合するが、各対立遺伝子は、すべての利用可能な抗原ペプチドの異なるサブセットにのみ高アフィニティで結合する。しかしながら、安定化されたMHCクラスI分子の人工的に導入されたジスルフィド架橋は、結合した特異的抗原ペプチドのコンフォメーション的効果及び動的効果を模倣するため、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドは、多種多様な抗原ペプチドを結合することができる空MHCクラスI分子を用いて産生することができる。これは、安定化されたMHCクラスI分子のジスルフィド架橋に基づくT細胞相互作用が、野生型MHC分子を用いて得られるものと充分同一であるという知見によってさらに強調される。
【0093】
したがって、aAPCスカフォールドは、アフィニティタグ付けされたジスルフィド安定化空MHCクラスI分子が結合したカップリング剤と結合したポリマー骨格から構築される。空MHCクラスI分子に抗原ペプチドをロードして、特異的T細胞との特異的相互作用を支配することができるpMHC分子を形成することができる。共結合(co-attached)アフィニティタグ付けされた、T細胞に影響を及ぼす分子、例えば、サイトカイン及び共刺激分子と組み合わせて、aAPCスカフォールドは特異的T細胞を刺激して、増大した機能的特性を達成する。したがって、本発明は、腫瘍退縮又はウイルス排除を媒介するために理想的な表現型及び機能的特性を得るために細胞に特異的機能的刺激を提供するためにMHCロードaAPCスカフォールドを使用することにより、腫瘍反応性T細胞を増殖するために必要な特定の条件を示す。空MHCクラスI分子に抗原ペプチドをローディングした後のaAPCスカフォールドは、pMHC分子の認識に基づいてT細胞と特異的に相互作用し、この特異的相互作用を介して、ペプチド-MHCを標的とした方法で、特異的T細胞を効果的に増殖し機能的に刺激することができる。
【0094】
aAPCスカフォールドは、様々な異なるテンプレート分子(すなわち、MHCクラスI分子、T細胞に影響を及ぼす分子)の組み合わせによってアセンブリングすることができる。本明細書中で記載するaAPCスカフォールドは、限定されるものではないが、B7.1、B7.2、ICOS、PD-L1、a-ガラクトシルセラミド、CD3、CD4、CD5、CD8、CD9、CD27、CD28、CD30、CD69、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD147、CDw150(SLAM)、CD152(CTLA-4)、CD153(CD30L)、CD40L(CD154)、Fas(CD95)、CD40、CD48、CD70、及びCD72を含む1つ以上の共刺激分子を含み得る。
【0095】
さらに、本明細書中で記載するaAPCスカフォールドは、限定されるものではないが、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-22(IL-22)、インターロイキン-23(IL-23)、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターフェロンベータ(IFN-β)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、IGIF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、腫瘍壊死因子ベータ(TNF-β)及びマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、並びにその変異体及びフラグメントを含む1つ以上のサイトカインを含み得る。
【0096】
本明細書では、抗原ペプチドをロードした場合、T細胞増殖に好適であり、活性なT細胞の高い比率、T細胞の高い抗原特異性及びT細胞の高い機能性を保証するaAPCスカフォールドを記載する。したがって、本発明の第一の態様は、人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドであって、以下のテンプレート分子:
i.少なくとも1つのT細胞に影響を及ぼす分子、及び
ii.少なくとも1つのMHCクラスI分子
が結合したポリマー骨格を含み、
MHCクラスI分子が、α-1ドメインと、ジスルフィド架橋により接続されたα-2ドメインとを含む重鎖を含む、
人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドに関する。
【0097】
α-1及びα-2ドメイン間に形成されたジスルフィド架橋は、MHCクラスI分子に人工的に導入される。具体的には、2つの変異システイン残基を重鎖のアミノ酸配列に導入して、α-1及びα-2ドメイン間のジスルフィド架橋形成を可能にする。変異システイン残基の導入は、任意の種類の好適な変異誘発によって実施することができ、そのような技術は当業者には公知である。好ましくは、変異誘発の位置は、α-1及びα-2ドメインに位置する、結果として得られる変異システイン残基が、正常なタンパク質フォールディング条件下でジスルフィド架橋の形成を可能にするような相互の空間距離内にあるように選択される。
【0098】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、前記ジスルフィド架橋が、α-1ドメインに位置する変異システイン残基とα-2ドメインに位置する変異システイン残基との間に形成されるaAPCスカフォールドに関する。
【0099】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、α-1ドメインに位置する変異システイン残基とα-2ドメインに位置する変異システイン残基との間の空間距離が、2~10Å、例えば2~8Å、好ましくは2~5Åである、aAPCスカフォールドに関する。
【0100】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
重鎖が:
a.配列番号1、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含み、
前記アミノ酸配列が、α-1ドメインに位置する変異システイン鎖残基と、α-2ドメインに位置する変異システイン残基とを含む、
aAPCスカフォールドに関する。
【0101】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号1、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは(a)の配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、あるいはこれらのアミノ酸配列からなり、
前記アミノ酸配列が、α-1ドメインに位置する変異システイン残基とα-2ドメインに位置する変異システイン残基とを含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0102】
2つのシステイン残基の好ましい変異には、位置139のアミノ酸及び位置84又は85のいずれかのアミノ酸の修飾が含まれる。位置139のアミノ酸は重鎖のα-2ドメインに位置し、多くの場合、アラニン残基である。位置84又は85のアミノ酸は重鎖のα-1ドメインに位置し、多くの場合、チロシン残基である。システイン変異は、標準的遺伝子操作を用いた重鎖の遺伝子配列の修飾によるアミノ酸置換によって導入することができる。
【0103】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、α-1ドメインにおける変異システイン残基がアミノ酸残基84又は85にあり、α-2ドメインに位置する変異システイン残基がアミノ酸残基139にある、aAPCスカフォールドに関する。
【0104】
MHCクラスI分子のフォールディングにより、ジスルフィド架橋が、Cys-84又はCys-85とCys-139との間に形成される。新たに形成されたジスルフィド架橋はMHCクラスI分子を安定化させるので、抗原ペプチドの非存在下でも溶液中で安定なままである。これらの安定な空MHCクラスI分子を次いでアフィニティタグとカップリング剤との間の相互作用によってaAPCスカフォールドのポリマー骨格に結合させることができる。
【0105】
システイン変異残基の導入は、いかなる種類のMHCクラスI分子又はMHCクラスI様分子にも適用することができる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、MHCクラスI分子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、MIC A、MIC B、CD1d、ULBP-1、ULBP-2、及びULBP-3からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0106】
本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドはまた、H-2複合体と称される、マウスのMHCとの併用にも適用可能であり、したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が、H-2分子、例えば、H-2Kb又はH-2Dbである、aAPCスカフォールドに関する。本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号12若しくは配列番号13のいずれか一つ、又は
b.(a)の配列のいずれか一つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0107】
MHCクラスI分子の好ましい変異体には、HLA-A、HLA-B及びH-2が含まれ、各々、2つの変異システイン残基を含む。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2~13のいずれか一つ、又は
b.(a)の配列のいずれか一つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0108】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2~13のいずれか一つ、又は
b.(a)の配列のいずれか一つと少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列のいずれか一つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0109】
なお、用語「配列番号2~13」は、「配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、又は配列番号13」と理解される。
【0110】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2~11のいずれか一つ、又は
b.(a)の配列のいずれか一つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0111】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2~6のいずれか一つ、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0112】
T細胞の増殖によく利用されるHLAの対立遺伝子はHLA-A 02:01対立遺伝子である。したがって、本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0113】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0114】
MHCクラスI分子は、アフィニティタグとカップリング剤との間の相互作用によってaAPCスカフォールドのポリマー骨格に結合されている。好ましくは、アフィニティタグ、例えば、ビオチンは、MHCクラスI分子上に位置する。ビオチンの重鎖への結合は、重鎖のビオチン化のためのハンドル、例えば、Avi-tagを含めることによって達成することができる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号2~13のいずれか一つ、又は
b.(a)の配列のいずれか一つと少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列のいずれか一つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなり、
重鎖が配列番号19をさらに含む、
aAPCスカフォールドに関する。
【0115】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号14、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0116】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号14、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0117】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、重鎖が:
a.配列番号17、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0118】
重鎖は、β2-ミクログロブリン分子(B2M)と結合して、MHCクラスI分子を形成する。具体的には、重鎖のα-3ドメインはB2Mに隣接した位置にある。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子がβ2-ミクログロブリン分子を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0119】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、β2-ミクログロブリン分子が:
a.配列番号15、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0120】
MHCクラスI分子はまた、リンカーを介して重鎖に接続されたB2Mを有するファイナライズされた融合タンパク質として提供することもできる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子が:
a.配列番号16、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0121】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子が:
a.配列番号16、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0122】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子が:
a.配列番号18、又は
b.(a)の配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば、(a)の配列と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらのアミノ酸配列からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0123】
一部のT細胞の増殖は、いくつかの、T細胞に影響を及ぼす分子が同時に存在する場合に増強させることができる。達成される利点は、T細胞の増殖及び刺激において、異なる目的(例えば、成長、分化、活性化など)に役立つT細胞に影響を及ぼす分子の相乗効果であり得る。したがって、T細胞に影響を及ぼす分子は、同じ種類又は異なる種類の分子に属し得る。したがって、本願の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも2つの異なる、T細胞に影響を及ぼす分子を含むaAPCスカフォールドに関する。
【0124】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、T細胞に影響を及ぼす分子が、サイトカイン、共刺激分子、接着分子、及び抗体からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0125】
T細胞に影響を及ぼす分子の好ましい一種がサイトカインである。サイトカインは、液性免疫応答と細胞系免疫応答との間のバランスを調節し、それらは、T細胞集団の成熟、成長、及び反応性を調節する。あるサイトカインは複雑な方法で他のサイトカインの作用を増強又は阻害し、サイトカインの選択間の相互作用を予測不可能にする。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、T細胞に影響を及ぼす分子がサイトカインである、aAPCスカフォールドに関する。
【0126】
本明細書中で記載するサイトカインは、天然のサイトカイン、並びに増強されたT細胞活性化及び機能を誘導するように操作されたサイトカインの変異体又は模倣物の両方を包含する。したがって、インターロイキンなどのサイトカインの変異体又は模倣物は、1つ以上のサイトカインに対応するT細胞活性化及び機能を誘導し得る。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、T細胞に影響を及ぼす分子がサイトカイン、又はそれらの変異体及び模倣物である、aAPCスカフォールドに関する。本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインが、自然のサイトカイン、又はそれらの変異体及び模倣物から選択される、aAPCスカフォールドに関する。本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインの変異体又は模倣物が、IL-2、IL-15及びIL-21の群から選択される1つ以上のインターロイキンに対応するT細胞刺激を誘導する、aAPCスカフォールドに関する。本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインの変異体又は模倣物が、IL-2、IL-15及びIL-21の群から選択される2つのインターロイキン、例えば、IL-2/IL-15、例えばIL-2/IL-21、又は例えばIL-15/IL-21に対応するT細胞刺激を誘導する、aAPCスカフォールドに関する。
【0127】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインが、IL-21、IL-2、IL-15、IL-1、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-17、IL-22、及びIL-23からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0128】
IL-2は、免疫応答の強度を調節するために治療的に使用される。IL-2は、IL-2Rβγcと呼ばれるヘテロダイマーシグナリングタンパク質を形成する、IL-2受容体β及びIL-2受容体γ(IL-2Rβ及びIL-2Rγ)として知られる2つの受容体サブユニットと同時に結合することによって、そのメッセージを送達する。IL-2Rαと呼ばれる第三の非シグナリング受容体(CD25としても知られる)は、シグナリング複合体の形成に寄与し、IL-2とIL-2Rβγcとの間の結合をほぼ100倍増強する。
【0129】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインが少なくともIL-2、又はそれらの変異体及び模倣物を含む、aAPCスカフォールドに関する。本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインがIL-2、又はそれらの変異体及び模倣物からなるaAPCスカフォールドに関する。
【0130】
IL-2の変異体又は模倣物は、ネオロイキン-2/15と称する。ネオロイキン-2/15(Neo-2/15)は、非常に安定で、IL-2Rβγcと強力に結合するが、CD25とは結合しない、デザイナーサイトカインである。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインが、少なくともNeo-2/15を含む、aAPCスカフォールドに関する。本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインがNeo-2/15からなる、aAPCスカフォールドに関する。
【0131】
様々なサイトカイン群が、特に好ましいaAPCスカフォールドを産生することが確認されている。理論によって拘束されないが、サイトカインの1つの効率的な群は、共有されるγ鎖受容体を介してそれらの細胞内シグナルを送達し、T細胞活性化及び分化に影響を及ぼすサイトカインである。この文脈で、これらのサイトカインは、「γ鎖受容体サイトカイン」と称する。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインがγ鎖受容体サイトカインである、aAPCスカフォールドに関する。
【0132】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが、IL-21、IL-2、IL-15、IL-4、IL-7及びIL-9からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0133】
本発明者らは、γ鎖受容体サイトカインファミリー内の刺激分子の好ましい組み合わせを特定した。
【0134】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが、IL-21、IL-2及びIL-15からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0135】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが少なくともIL-21を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0136】
前に概説したように、以下サイトカインと称する、いくつかのT細胞に影響を及ぼす分子間の相互作用は、T細胞の増殖が恩恵を受け得る有益な効果をもたらし得る。これはまた、γ鎖受容体サイトカイン群についても当てはまる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、aAPCスカフォールドが少なくとも2つのγ鎖受容体サイトカインを含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0137】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが:
i.少なくともIL-2及びIL-21、又は
ii.少なくともIL-15及びIL-21
を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0138】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが:
i.IL-2及びIL-21、又は
ii.IL-15及びIL-21
である、aAPCスカフォールドに関する。
【0139】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが:
i.少なくともIL-4及びIL-21、
ii.少なくともIL-7及びIL-21、又は
iii.少なくともIL-9及びIL-21
を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0140】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが:
i.IL-4及びIL-21、
ii.IL-7及びIL-21、又は
iii.IL-9及びIL-21
である、aAPCスカフォールドに関する。
【0141】
aAPCスカフォールドに含まれ得る別の種類の、T細胞に影響を及ぼす分子は、サイトカインのT細胞応答、増殖、産生及び/又は分泌を増強するか、T細胞の分化及びエフェクタ機能を刺激するか、又はT細胞の生存を促進する、共刺激分子である。したがって、共刺激分子は、自然界で作用し、また、aAPCスカフォールドと共に作用して、T細胞増殖及び分化を単独で誘導し、他のT細胞に影響を及ぼす分子、例えばサイトカインの効果を増強する。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、T細胞に影響を及ぼす分子が少なくとも1つの共刺激分子を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0142】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、共刺激分子が、B7.2(CD86)、B7.1(CD80)、CD40、ICOS及びPD-L1からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0143】
テンプレート分子は、カップリング剤とアフィニティタグとの間の相互作用によりポリマー骨格に結合させることができる。カップリング剤は、aAPCスカフォールドのポリマー骨格上に位置し、限定されるものではないが、疎水性相互作用、静電相互作用又は共有結合によって骨格に結合させることができる。ポリマー骨格上に位置する場合、カップリング剤は、アフィニティ-タグ付けされたテンプレート分子をモジュール方式で固定することができる柔軟性テンプレートを提供する。アフィニティタグは、限定されるものではないが、非共有相互作用を介してカップリング剤に特異的に結合する分子種である。アフィニティタグを各テンプレート分子に結合させることによって、特注のaAPCスカフォールドをアセンブリングするのは容易である。
【0144】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、テンプレート分子が、ポリマー骨格上に位置するカップリング剤とテンプレート分子上のアフィニティタグとの間の非共有相互作用によってポリマー骨格に結合される、aAPCスカフォールドに関する。
【0145】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、テンプレート分子が、テンプレート分子上に位置するカップリング剤とポリマー骨格上のアフィニティタグとの間の非共有相互作用によってポリマー骨格に結合される、aAPCスカフォールドに関する。
【0146】
アフィニティタグとカップリング剤との多くの公知適合性対は、本発明で使用することができ、限定されるものではないが、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/アビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、ビオチン/strep-tactin、ポリ-His/金属イオンキレート、ペプチド/抗体、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、エピトープ/抗体、マルトース結合タンパク質/アミラーゼ及びマルトース結合タンパク質/マルトースが挙げられる。アフィニティタグとカップリング剤との他の公知適合性対も本発明で使用することができる。
【0147】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、カップリング剤/アフィニティタグが、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/アビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、ビオチン/strep-tactin、ポリ-His/金属イオンキレート、ペプチド/抗体、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、エピトープ/抗体、マルトース結合タンパク質/アミラーゼ及びマルトース結合タンパク質/マルトースからなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0148】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、カップリング剤がストレプトアビジンであり、アフィニティタグがビオチンである、aAPCスカフォールドに関する。
【0149】
テンプレート分子を結合させたaAPCスカフォールドのポリマー骨格はまた、様々な異なる材料ベースであり得る。したがって、限定されるものではないが、多糖類、合成多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、誘導体化セルロース性物質、strep-tactin及びポリ-ストレプトアビジンを含む、数種類の骨格を本発明で使用することができる。多糖類は、デキストランのデキストラン又は異なる変異体、例えばカルボキシメチルデキストラン、デキストランポリアルデヒド、及びシクロデキストリンであり得る。合成多糖類の例は、例えば、フィコールである。ビニルポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリルエステル)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)及びポリ(ビニルアルコール)が挙げられる。誘導体化セルロース性物質からなるポリマー骨格としては、限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシ-エチルセルロースを含む誘導体化セルロース成物質が挙げられる。
【0150】
さらに、本発明にかかる自己集合性aAPCスカフォールドを形成するための基礎として機能し得る市販のポリマー骨格が存在する。これらのポリマー骨格としては、限定されるものではないが、IBA GmbH and Beckman Coulter製のStreptamerが挙げられ、これは、オリゴマー化して、いくつかのビオチン化分子、例えばビオチン化MHC複合体及びT細胞に影響を及ぼす分子、例えばサイトカイン及び共刺激分子を結合することができるマルチマーを形成する、Strep-tactinタンパク質に基づく。
【0151】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ポリマー骨格が、多糖類、ビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、strep-tactin及びポリ-ストレプトアビジンからなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0152】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ポリマー骨格が多糖類である、aAPCスカフォールドに関する。
【0153】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、多糖類がデキストランである、aAPCスカフォールドに関する。
【0154】
ポリマー骨格のサイズは、各aAPCスカフォールドにどれほど多くのテンプレート分子を結合させることができるかに対して物理的制限を設定する。ポリマー骨格のサイズは、その分子量によって与えられる。
【0155】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストランが、50~3000kDa、例えば100~2500kDa、例えば250~2500kDaの範囲内の分子量を有する、aAPCスカフォールドに関する。
【0156】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストランが、250kDa、270kDa、750kDa、及び2000kDaからなる群から選択される分子量を有する、aAPCスカフォールドに関する。
【0157】
各aAPCスカフォールドに結合された分子の数に加えて、別の重要なパラメータは、テンプレート分子がポリマー骨格上に分布している密度である。密度は、aAPCスカフォールドに含まれるすべての分子間の比を調節することによって変えることができる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ポリマー骨格:MHCクラスI分子:共刺激分子:サイトカイン間の比が、1:1:1:1、1:2:1:1、1:4:1:1、1:4:2:1、1:4:2:2、1:10:5:5、1:4:4:4、1:8:8:8、1:10:10:10、1:20:20:20、1:30:30:30、1:40:40:40、1:50:50:50、1:50:10:10又は1:50:20:20からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0158】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ポリマー骨格:MHCクラスI分子:サイトカイン1:サイトカイン2間の比が、1:1:1:1、1:2:1:1、1:4:1:1、1:4:2:1、1:4:2:2、1:10:5:5、1:4:4:4、1:8:8:8、1:10:10:10、1:20:20:20、1:30:30:30、1:40:40:40、1:50:50:50、1:50:10:10又は1:50:20:20からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0159】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ポリマー骨格:MHCクラスI分子:共刺激分子:サイトカイン1:サイトカイン2間の比が、1:1:1:1:1、1:2:1:1:1、1:4:1:1:1、1:4:2:1:1、1:4:2:2:2、1:10:5:5:5、1:4:4:4:4、1:8:8:8:8、1:10:10:10:10、1:20:20:20:20、1:30:30:30:30、1:40:40:40:40、1:50:50:50:50、1:50:10:10:10又は1:50:20:20:20からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0160】
本発明は、様々な対象からのT細胞の増殖に好適であり得る。したがって、本発明の実施形態は本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子が脊椎動物MHC分子、例えば、ヒト、ネズミ、ラット、ブタ、ウシ又はトリ分子などである、aAPCスカフォールドに関する。
【0161】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、脊椎動物MHCクラスI分子がヒト分子であるaAPCスカフォールドに関する。
【0162】
上述のように、MHC分子はいくつかの変異体で存在する。MHC分子には、MHCクラスI分子及びMHCクラスI様分子が含まれるが、これらに限定されない。MHCクラスI様分子には、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、MICA、MICB、MR1、ULBP-1、ULBP-2、及びULBP-3が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子がヒトMHCクラスI分子である、aAPCスカフォールドに関する。ヒトでは、主要組織適合性複合体(MHC)は、ヒト白血球抗原(HLA)複合体と呼ばれる遺伝子複合体によってコードされる。MHCクラスIに対応するHLAは、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cと呼ばれる。したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、少なくとも1つのMHCクラスI分子が、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cからなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0164】
本明細書中で記載されるaAPCスカフォールドは、α-1及びα-2ドメインを接続するジスルフィド架橋によって安定化されるMHCクラスI分子を含む。これによって、抗原ペプチドを含まないMHCクラスI分子を有するaAPCスカフォールドの形成が可能になる一方で、aAPCスカフォールドは、抗原ロードMHCクラスI分子の有無にかかわらず提供することができる。アンロードMHCクラスI分子を備える場合でも、aAPCスカフォールドの最終的に意図される使用としては、抗原ペプチドをローディングし、それによってpMHC分子を形成することが含まれる。
【0165】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、MHCクラスI分子が抗原ペプチドのないペプチド結合グルーブを含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0166】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、MHCクラスI分子が、抗原ペプチドを含むペプチド結合グルーブ(pMHC)を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0167】
pMHC分子によって提示される抗原ペプチドは、どの種類のT細胞がaAPCスカフォールドによって増殖されるかを最終的に決定し、これは前記でMHC限定と称する概念である。本発明にかかるaAPCスカフォールドでの使用に適した抗原ペプチドは、本質的にいかなる供給源からも得ることができる。抗原源としては、限定されるものではないが、ヒト、ウイルス、細菌、寄生生物、植物、真菌、又は腫瘍を挙げることができる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、pMHCの抗原ペプチドが、ヒト、ウイルス、細菌、寄生生物、植物、真菌、及び腫瘍からなる群から選択される源由来である、aAPCスカフォールドに関する。
【0168】
本発明のaAPCスカフォールドの1つの使用は、養子細胞移入(ACT)における使用のための腫瘍反応性T細胞の増殖においてである。ACT方略の強度は、T細胞が、局所的腫瘍環境に反して、抗原特異的T細胞集団の効率的な増殖に最適な環境において、エクスビボで提示されることである。
【0169】
本発明のaAPCスカフォールドの別の潜在的使用は、典型的には移植の結果として生じるある特定の感染症との闘争に特異的なT細胞集団の増殖のためのものである。移植を受けた患者は、典型的には、移植片拒絶を回避するために免疫抑制療法を受ける。多くの場合、そのような治療により、患者は攻撃的なウイルス株に攻撃されやすくなり、すでに弱っている患者の重篤な感染症を引き起こす。本発明のaAPCスカフォールドは、ACT方略により重篤な感染症を治療する目的で、移植患者から抽出されたT細胞の効果的な増殖のために非常に適している。
【0170】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、pMHCの抗原ペプチドが、がん関連エピトープ又はウイルスエピトープである、aAPCスカフォールドに関する。
【0171】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、pMHCの抗原ペプチドが、ネオエピトープ、例えば、がんネオエピトープ又はがんネオアンチゲンである、aAPCスカフォールドに関する。
【0172】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、がん関連エピトープが、ウイルス誘発性がんと関連するウイルスエピトープである、aAPCスカフォールドに関する。
【0173】
さらに、本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、がん関連エピトープが、がんと関連する過剰発現抗原である、aAPCスカフォールドに関する。
【0174】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、がん関連エピトープが、がん-精巣抗原である、aAPCスカフォールドに関する。
【0175】
本発明のaAPCスカフォールドは、ポリマー骨格に結合されたpMHC分子によって提示され得る任意の抗原ペプチドと共に機能する。いくつかの効能が本発明で好ましい。
【0176】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ウイルスエピトープが、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスである、aAPCスカフォールドに関する。
【0177】
aAPCスカフォールドが単一T細胞特異性を増殖できる精度に関して、各aAPCスカフォールドの効率を最適化するために、本発明の1つのバージョンでは、各aAPCスカフォールドは、例えば、各種類のaAPCスカフォールドについて抗原ペプチド1つだけを意図的にローディングすることを意図して、MHCクラスI分子の単一変異体のみを有する。
【0178】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、aAPCスカフォールドが同一のMHCクラスI分子を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0179】
各aAPCスカフォールドについて単一の抗原ペプチドのみを提示することによって、異なる特異性のT細胞間の競合は最小に限定される。必要に応じて、異なるペプチドを提示するいくつかの異なるスカフォールドをあわせてプールし同時に増殖させることができる。様々な異なる特異性を有するT細胞の同時増殖が可能である。なぜなら、T細胞間の競合が、互いに近接したすべてのテンプレート分子(すなわち、pMHC及びT細胞に影響を及ぼす分子)をクラスタ化するaAPCスカフォールドのために最小に保たれるからである。したがって、本発明のaAPCスカフォールドの使用により増殖されるT細胞は、特異性を保持し、異なる特異性のプールは、対象に再導入された場合、任意の免疫応答の幅を保証する。この後者の特性は、免疫回避変異体を回避するために臨床上重要である。応答の幅は、どれほど多くの異なるaAPCスカフォールドが単一の増殖であわせてプールされるかを決定することによって調整することができる。
【0180】
ポリマー骨格は、ポリマー骨格のサイズに照らして妥当である任意の数のMHCクラスI分子を含み得る。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、各ポリマー骨格が、少なくとも5つのMHCクラスI分子、例えば、少なくとも8、例えば、少なくとも10、例えば、少なくとも20、例えば、少なくとも30、例えば、少なくとも40、例えば、少なくとも50又は例えば、少なくとも100のMHCクラスI分子を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0181】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、各ポリマー骨格が、少なくとも2つのMHCクラスI分子、例えば、少なくとも3つ又は例えば、少なくとも4つのMHCクラスI分子を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0182】
一部の用途に関して、aAPCスカフォールドを、固体支持体、e.例えば、ある特定の種類の分析用、又は増殖T細胞集団からのaAPCスカフォールドの分離用の固体支持体上に固定化することが実際的であり得る。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、前記aAPCスカフォールドを固体支持体上に固定化する、aAPCスカフォールドに関する。
【0183】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなテンプレート分子を直接結合させる固体支持体に関する。したがって、この特別な場合では、テンプレート分子はaAPCスカフォールドのポリマー骨格上に配置されない。
【0184】
固体支持体の多くの変形が存在し、aAPCスカフォールドの用途に応じて選択することができる。固体支持体の変形としては、限定されるものではないが、ビーズ、ウェルプレート、粒子、フィルター、ゲル、チューブ、及びペトリ皿が挙げられる。
【0185】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、固体支持体が、ビーズ、ウェルプレート、粒子、フィルター、ゲル、チューブ、及びペトリ皿からなる群から選択される、aAPCスカフォールドに関する。
【0186】
aAPCスカフォールドは、任意の従来型手段、例えば、リンカー、抗体等によって固体支持体に結合させることができる。
【0187】
多くの異なるテンプレート分子が存在し、したがって、多様なaAPCスカフォールドをアセンブリングすることができる。本発明者らは、テンプレート分子のある特定の組み合わせが、特に効率的かつ好ましいaAPCスカフォールドをもたらすことを見出した。
【0188】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.γ鎖受容体サイトカインがIL-15及びIL-21であり、
iii.共刺激分子がB7.2(CD86)である、aAPCスカフォールドに関する。
【0189】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格上のMHCクラスI分子、IL-15、IL-21及びB7.2(CD86)間の比が2:1:1:1である、aAPCスカフォールドに関する。
【0190】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格、MHCクラスI分子、IL-15、IL-21及びB7.2(CD86)間の比が1:10:5:5:5である、aAPCスカフォールドに関する。
【0191】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが、IL-2、IL-15及びIL-21である、aAPCスカフォールドに関する。
【0192】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、そして
ii.γ鎖受容体サイトカインがIL-21、IL-2及びIL-15である、aAPCスカフォールドに関する。
【0193】
本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格、MHCクラスI分子、IL-2、IL-15及びIL-21の間の比が1:10:5:5:5であるaAPCスカフォールドに関する。
【0194】
本発明のさらに別の実施形態が、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.γ鎖受容体サイトカインがIL-2、IL-15及びIL-21であり、そして
iii.共刺激分子がB7.2(CD86)である、aAPCスカフォールドに関する。
【0195】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格、MHCクラスI分子、IL-2、IL-15、IL-21及びB7.2(CD86)間の比が1:10:5:5:5:5である、aAPCスカフォールドに関する。
【0196】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、そして
ii.γ鎖受容体サイトカインが、IL-2及びIL-21、又はIL-15及びIL-21である、aAPCスカフォールドに関する。
【0197】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、サイトカインが少なくともIL-6及びIL-10を含むaAPCスカフォールドに関する。
【0198】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.共刺激分子がB7.2(CD86)であり、
iii.サイトカインがIL-6及びIL-10である、aAPCスカフォールドに関する。
【0199】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格上のMHCクラスI分子、IL-6、IL-10及びB7.2(CD86)間の比が2:1:1:1である、aAPCスカフォールドに関する。
【0200】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格、MHCクラスI分子、IL-6、IL-10及びB7.2(CD86)間の比が1:10:5:5:5である、aAPCスカフォールドに関する。
【0201】
本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、γ鎖受容体サイトカインが少なくともIL-2及びIL-21を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0202】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.γ鎖受容体サイトカインがIL-2及びIL-21である、aAPCスカフォールドに関する。
【0203】
本発明のさらに別の実施形態が、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格上のMHCクラスI分子、IL-2及びIL-21間の比が1:1:1である、aAPCスカフォールドに関する。
【0204】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、共刺激分子が少なくともB7.2(CD86)を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0205】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格、MHCクラスI分子、IL-2及びIL-21間の比が1:8:8:8である、aAPCスカフォールドに関する。
【0206】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、ポリマー骨格が少なくともIL-1及びPD-L1を含む、aAPCスカフォールドに関する。
【0207】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.共刺激分子がB7.2(CD86)及びPD-L1であり、
iii.サイトカインがIL-1である、aAPCスカフォールドに関する。
【0208】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格上のMHCクラスI分子、IL-1、B7.2(CD86)及びPD-L1間の比が2:1:1:1である、aAPCスカフォールドに関する。
【0209】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、デキストラン骨格、MHCクラスI分子、IL-1、B7.2(CD86)及びPD-L1間の比が1:10:5:5:5である、aAPCスカフォールドに関する。
【0210】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.共刺激分子がB7.2(CD86)及びICOSであり、
iii.サイトカインがIL-10である、aAPCスカフォールドに関する。
【0211】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.サイトカインがIL-1及びIL-2である、aAPCスカフォールドに関する。
【0212】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドであって、
i.ポリマー骨格がデキストランであり、
ii.サイトカインがIL-2及びIL-15である、aAPCスカフォールドに関する。
【0213】
本発明のaAPCスカフォールドは、病院や研究所による使用に適したキットの一部であり得る。そのようなキットは、異なる特異性を有するT細胞を増殖させるために適した1つ以上の異なるaAPCスカフォールド、並びにサンプルから抽出されたT細胞を増殖させるために適した培地を含み得る。キットはまた、T細胞含有サンプルの増殖に必要な他の化合物又は分子を保持してもよい。
【0214】
したがって、本発明の態様は、T細胞の増殖用キットであって:
i.本明細書中に記載する少なくとも1つのaAPCスカフォールドを含む第一保存手段、及び
ii.少なくとも1つ抗原ペプチドの第二保存手段
を含み、
第一保存手段及び第二保存手段の内容物が組み合わされるように構成される、キットに関する。
【0215】
本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなキットであって、第二保存手段が抗原ペプチドのライブラリを含む、キットに関する。抗原ペプチドのライブラリは、最も頻繁に使用される抗原ペプチドの選択を含み得る。
【0216】
本発明のaAPCスカフォールドは、対象の免疫系を補助するために対象に直接投与するための免疫療法として使用することができる。aAPCは、任意の経路、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮又は経口により局所的又は全身的のいずれかで投与することができる。
【0217】
本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドは、T細胞増殖及び/又は養子T細胞(ACT)療法のために自動システムの一部として利用することができる。したがって、aAPCスカフォールドは、例えば、臨床用途用のT細胞の製造のための、装置又はシステムの構成要素であり得る。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドを含むT細胞増殖及び/又は養子T細胞(ACT)療法用の装置又はシステムに関する。aAPCスカフォールドは、蛍光活性化細胞分類又は類似の細胞選択方略の様々な形態との組み合わせでの細胞製造のために使用することができる。
【0218】
T細胞増殖の方法
不健康な対象から免疫反応性T細胞を抽出し、T細胞をエクスビボで増殖させ、そして増殖T細胞集団を対象に再導入することによって、そうしなければ免疫型が麻痺してしまう免疫抑制疾患の課題の一部を克服することが可能である。しかしながら、例えば、末梢血からアフェレーシス処置によってT細胞を抽出し、その後、患者に再導入することは問題ないが、所与の特異性のT細胞の活性化及び増殖は依然として大きな課題であり、多くの場合、結果として得られるT細胞集団は充分な分化及び機能的能力が欠落している。
【0219】
本発明のaAPCスカフォールドは、T細胞の同時インビトロ刺激及び増殖に好適であり、高い比率の活性なT細胞、高い抗原特異性のT細胞及び高機能性のT細胞を有するT細胞集団を産生する。したがって、本発明の別の態様は、T細胞の同時インビトロ刺激及び増殖のための方法であって、以下のステップ:
i.T細胞を含むサンプルを提供するステップと、
ii.前記サンプルを、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドを含む増殖溶液と接触させるステップと、
iii.前記aAPCスカフォールドに対する特異性を有するT細胞を刺激し増殖させるステップと、
iv.培養からステップiii)のT細胞を収集して、T細胞の増殖抗原特異性集団を得るステップと、
を含む方法に関する。
【0220】
本発明の実施形態は、T細胞の同時インビトロ刺激及び増殖のための方法であって、以下のステップ:
i.本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドを提供するステップであって、MHCクラスI分子が抗原ペプチドを含まないペプチド結合グルーブを含む、ステップと、
ii.前記aAPCスカフォールドを抗原ペプチドと混合して、pMHC分子を含むロードされたaAPCスカフォールドを提供するステップと、
iii.T細胞を含むサンプルを提供するステップと、
iv.前記サンプルをステップii)のロードされたaAPCスカフォールドと接触させるステップと、
v.培養中の前記ロードされたaAPCスカフォールドに対する特異性を有するT細胞を刺激し増殖させるステップと、
vi.ステップiii)のT細胞を培養から収集して、T細胞の増殖抗原特異性集団を得るステップと、
を含む方法に関する。
【0221】
T細胞を含むサンプルを対象から抽出し、続いて、T細胞の成長を可能にする条件下で、aAPCスカフォールドを含む培養中に入れる。したがって、T細胞の増殖は、aAPCスカフォールドに加えて、細胞増殖に必要な化合物及び因子をすべて含む溶液又は培地中で実施されると理解すべきである。したがって、T細胞増殖が実施される培養は、無関係な細胞の成長を阻害するか、又はT細胞、例えば、IL-2の成長を促進する化合物を含み得る。
【0222】
増殖T細胞集団の質を向上させるために、aAPCスカフォールドを、分子量カットオフフィルターを通した遠心分離によってろ過して、結合していないpMHC分子をすべて除去した後、aAPCをサンプルと混合することができる。これは、スカフォールドと結合しないpMHC分子からの刺激を回避し、また過剰の抗原ペプチド及びT細胞に影響を及ぼす分子を除去して、無関係のT細胞サブセットの刺激を制限することができる。同じことが、MHC分子と複合体化していない抗原ペプチドにも当てはまり、これもまた、分子量カットオフフィルターを通した遠心分離によって除去することができる。
【0223】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、増殖溶液をろ過した後にサンプルと接触させる、方法に関する。
【0224】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、増殖溶液を、分子量カットオフフィルターを通した遠心分離によりろ過する、方法に関する。
【0225】
aAPC本発明のスカフォールドの利点は、それらが異なるT細胞特異性の同時増殖を可能にすることである。なぜなら、複数の異なるaAPCスカフォールドを使用した場合に交差反応性が前記説明した最小値まで低減されるからである。本発明の方法は、したがって、異なる特異性を有する様々なT細胞を含むサンプルについても有効である。
【0226】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、ステップi)の前記サンプルが、少なくとも2つの異なる特異性、例えば、少なくとも5つの異なる特異性、例えば、少なくとも10の異なる特異性、例えば、少なくとも15の異なる特異性、例えば、少なくとも20の異なる特異性、又は例えば、少なくとも50の異なる特異性のT細胞を含む方法に関する。
【0227】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、aAPCスカフォールドを含む前記溶液が、少なくとも2つの異なるaAPCスカフォールド、例えば、少なくとも5つの異なるaAPCスカフォールド、例えば、少なくとも10の異なるaAPCスカフォールド、例えば、少なくとも15の異なるaAPCスカフォールド、例えば、少なくとも20の異なるaAPCスカフォールド、又は例えば、少なくとも20の異なるaAPCスカフォールドを含む方法に関する。
【0228】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、少なくとも2つの異なる特異性のT細胞が、例えば、少なくとも5つの異なる特異性、例えば、少なくとも10の異なる特異性、例えば、少なくとも15の異なる特異性、又は例えば少なくとも20の異なる特異性を有する同じサンプル中で、並行して刺激し増殖される、方法に関する。
【0229】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、以下のステップ:
i.少なくとも5つの異なる特異性を有するT細胞を含むサンプルを提供するステップと、
ii.前記サンプルを、少なくとも5つの異なるaAPCスカフォールドを含む増殖溶液と接触させるステップと、
iii.培養中の前記少なくとも5つの異なるaAPCスカフォールドに対して少なくとも5つの異なる特異性を有する前記T細胞の平行刺激及び増殖のステップと、
iv.ステップiii)のT細胞を培養から収集して、少なくとも5つの異なる特異性を有するT細胞の増殖抗原特異性集団を得るステップと、
を含む、方法に関する。
【0230】
増殖させるT細胞を含むサンプルは、任意の供給源に由来し得るが、典型的には、血液、組織又は体液から抽出される。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、サンプルが、末梢血単核細胞、腫瘍、組織、骨髄、バイオプシー、血清、血液、血漿、唾液、リンパ液、胸膜液、脳脊髄液(cerospinal fluid)及び滑液からなる群から選択される、方法に関する。
【0231】
本明細書中で記載する方法にしたがって増殖されるT細胞を含むサンプルはまた、幹細胞又は、TCR修飾/形質導入細胞から選択することもできる。
【0232】
本発明の方法を使用して、aAPCスカフォールド上のpMHC分子との相互作用に必要なTCRを発現する任意のT細胞を増殖することができる。したがって、本発明の方法による増殖に適したT細胞としては、限定されるものではないが、CD8T細胞、CD4T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、α-ベータT細胞、ガンマ-デルタT細胞、NK細胞、先天性粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、及びリンホカイン-活性化キラー(LAK)細胞が挙げられる。
【0233】
T細胞受容体(TCR)遺伝子療法は、腫瘍反応性T細胞の事前の存在に依存せず、最適な所定のがん抗原ペプチドを標的とすることを可能にする。このアプローチは、一緒になってαβ-TCRヘテロダイマーを形成するTCRα-及びβ鎖をコードする遺伝子を導入することにより、抗原特異性をT細胞間で輸送することができるという観察結果に基づく。したがって、腫瘍反応性TCRをコードする遺伝子の導入を使用して、関心対象の抗原に対して患者由来の細胞(自己)又は非患者由来の(異種)細胞を向けなおし、それによって、さもなければ存在しない腫瘍反応性T細胞区画を確立することができる。今では、いくつかのTCR光学的治療アプローチは固形腫瘍において臨床活性を示している。これらのTCR治療アプローチのほとんどは、TCR形質導入細胞のエクスビボ増殖に依存する。これらの細胞は、自己又は異種T細胞、NK細胞、MAIT細胞又はNKT細胞であり得る。がん特異的TCR遺伝子は細胞に形質導入されるので、これらはTCRの以前からの存在に依存せず、したがって、必ずしもT細胞である必要はない。
【0234】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、T細胞が、CD8T細胞、CD4 T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ガンマ-デルタT細胞、NK細胞及び自然粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞からなる群から選択される、方法に関する。
【0235】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、T細胞がCD8T細胞である方法に関する。
【0236】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、T細胞がCAR T細胞である方法に関する。
【0237】
増殖T細胞集団の患者への再導入が治療学的展望から有意義であるためには、抽出されたT細胞が臨床的に関連する数まで増殖されることが必要である。本発明の方法によるT細胞の増殖は100~3000倍程度であり得る。患者への再導入前に利用可能な細胞の数は、投与あたり10~1012細胞、例えば、投与当たり10~1010細胞、例えば、投与当たり10~10細胞の範囲であり得る。細胞は、投与経路に応じて20mL~1Lの体積で投与される。
【0238】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、T細胞を臨床的に関連する数まで増殖させる方法に関する。
【0239】
aAPCスカフォールドについて上述したように、MHCクラスI分子は様々な抗原ペプチドを提示し得る。抗原ペプチドの選択に関してと同じことが方法にも当てはまる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、pMHCの抗原ペプチドががん関連エピトープ又はウイルスエピトープである方法に関する。
【0240】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、抗原ペプチドが、がん関連エピトープ又はウイルスエピトープを含む方法に関する。
【0241】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法であって、がん関連エピトープがウイルスで誘発されたがんに関連するウイルスエピトープである、方法に関する。
【0242】
本発明のさらに別の実施形態は、記載するような方法であって、ウイルスエピトープが、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルス由来である方法に関する。
【0243】
増殖T細胞集団の使用
本発明の方法によって得られる増殖T細胞集団は、養子免疫療法(又は養子細胞移入)に重点をおいた治療計画において効果的に使用できることが想定される。そのような治療計画では、治療を必要とする対象由来の免疫反応性T細胞が抽出される。対象は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、トリ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなどであり得る。T細胞源は、例えば、末梢血単核細胞、腫瘍、組織、骨髄、バイオプシー、血清、血液、血漿、唾液、リンパ液、胸膜液、脳脊髄液又は滑液であり得る。
【0244】
一旦対象から抽出したら、所望の特異性又は特異性のT細胞を含むサンプルを、対象や治療される状態又は疾患にあわせてカスタマイズされたaAPCスカフォールドを使用して増殖させる。この増殖は、上述するような本発明の方法にしたがって実施される。T細胞集団が臨床的に関連する数まで増殖されたら、対象に投与して、免疫応答を誘導し、疾患を治療する。
【0245】
その結果として、本発明の態様は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団に関する。
【0246】
本明細書中で開示されるaAPCスカフォールドで増殖されたT細胞集団は、いくつかの好ましい特性、例えば、高フラクションの抗原特異的細胞、マルチサイトカイン分泌プロフィール、若年表現型及び低消耗(less exhaustion)を有する。マルチサイトカイン分泌プロフィールは、INF-γ及びTNF-αの同時分泌、並びに細胞毒性脱顆粒によって特徴づけることができる。若年表現型は、高発現のアクチベータ、例えばCD28によって特徴づけることができる。減少した消耗は、低発現の阻害剤、例えばPD1によって特徴づけることができる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、増殖T細胞集団が:
i.培養の2週間後の抗原特異的T細胞が少なくとも10倍増殖される、
ii.後の抗原チャレンジに際してのINF-γ及びTNF-αの分泌、
iii.高発現のCD28、及び
iv.低発現のPD1
からなる群から選択される、少なくとも1つ、例えば、少なくとも2つ、例えば、少なくとも3つの特性を有する、増殖T細胞集団に関する。
【0247】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、増殖T細胞集団が以下の特性:
i.培養の2週間後の抗原特異的T細胞が少なくとも10倍増殖させる、及び
ii.後の抗原チャレンジに際してのINF-γ及びTNF-αの分泌
を含む、増殖T細胞集団に関する。
【0248】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、増殖T細胞集団が以下の特性:
i.培養の2週間後の抗原特異的T細胞が少なくとも10倍増殖される、
ii.後の抗原チャレンジに際してのINF-γ及びTNF-αの分泌
iii.CD28の高発現、及び
iv.PD1の低発現
を含む、増殖T細胞集団に関する。
【0249】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、培養の2週間後の抗原特異的T細胞が、少なくとも10倍、例えば、少なくとも25倍、例えば、少なくとも50倍、例えば、少なくとも100倍、例えば、少なくとも1000倍、例えば、少なくとも5000倍増殖される、T細胞集団に関する。
【0250】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、培養の2週間後の抗原特異的T細胞が、10倍~5000倍、例えば100倍~1000倍の範囲で増殖する、増殖T細胞集団に関する。
【0251】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、CD28の高発現が、サンプル中の非増殖非特異的T細胞のCD28発現と比較して、CD28の増大した発現の少なくとも2倍、例えば、増大した発現の少なくとも5倍、例えば、増大した発現の少なくとも10倍と定義される、増殖T細胞集団に関する。
【0252】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団であって、PD1の低発現が、サンプル中の増殖されていない非特異的T細胞と比較して、最大でPD1の発現の半分(50%)、例えば最大で発現の1/4(25%)、例えば最大で発現の1/10(10%)と定義される、増殖T細胞集団に関する。
【0253】
本発明の第四の態様は、薬剤として使用するための、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団に関する。
【0254】
さらに具体的には、本発明の実施形態は、疾患又は障害の養子免疫療法のための方法であって
i.対象からT細胞を含むサンプルを抽出し、
ii.前記サンプルを、本明細書中で記載するようなaAPCスカフォールドを含む増殖溶液と接触させ、
iii.培養において、前記aAPCスカフォールドに対して特異性を有するT細胞を刺激し増殖させ、
iv.ステップiii)のT細胞を培養物から収集して、T細胞の増殖抗原特異性集団を得、そして
v.T細胞の増殖抗原特異性集団を対象に対して、免疫応答を誘導するために有効な量で投与する
ことを含む方法に関する。
【0255】
aAPCスカフォールドについて上述したように、MHCクラスI分子は、様々な抗原ペプチドを提示することができる。抗原ペプチドの選択に関して同じ検討事項が、本発明の方法によって得られる増殖T細胞集団の使用について当てはまる。
【0256】
したがって、本発明の別の態様は、がん又はウイルス性疾患の治療で使用するための、本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団に関する。
【0257】
本発明の実施形態は、本明細書中で記載するような使用のための増殖T細胞集団であって、がんが、ウイルス性疾患と関連する、増殖T細胞集団に関する。
【0258】
本発明の別の実施形態は、本明細書中で記載するような使用のための増殖T細胞集団であって、ウイルス性疾患が、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヒトTリンパ向性ウイルス(HTLV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びインフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスと関連する、増殖T細胞集団に関する。
【0259】
本明細書中で記載するような方法によって得られる増殖T細胞集団は、1つ以上のアジュバント及び/又は賦形剤及び/又は薬剤的に許容される担体をさらに含む医薬組成物に処方することができる。賦形剤としては、限定されるものではないが、緩衝液、懸濁化剤、分散剤、可溶化剤、pH調節剤及び/又は防腐剤を挙げることができる。
【0260】
医薬組成物は、任意の経路、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮又は経口により局所的又は全身的のいずれかでの投与のために、養子免疫療法(又は養子細胞移入)で使用することができる。
【0261】
本発明の態様のうちの一つの文脈で記載される実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも当てはまることに留意されたい。
【0262】
本願で引用するすべての特許及び非特許文献は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0263】
本発明を以下の非限定的実施例でさらに詳細に説明する。
【実施例
【0264】
実施例1:抗原提示スカフォールドを使用した抗原特異的CD8T細胞の増殖(図2
健常なドナーからのHLA-A1 FLU BP-VSD(VSDGGPNLY(配列番号29))特異的CD8T細胞を、比1:10:5:5:5(スカフォールド:pMHC:B7-2:IL-15:IL-21)の抗原提示スカフォールド、遊離FLU BP-VSDペプチド(配列番号29)、IL-15、及びIL-21サイトカイン、又はMHC複合体において無関係ペプチド特異性を有する比1:10:5:5:5の抗原提示スカフォールドのいずれかの存在下で平行して増殖させた。aAPCスカフォールドは、野生型MHCを用いて調製した。すべての培養には、20IU/MLのIL-2を追加し、2週間培養した。HLA-A1 FLU BP-VSD特異的CD8T細胞の増殖を週に1回テトラマー染色により追跡した。代表的なドットプロットを図2に示す。
【0265】
結論:(図2A~D)この実験は、抗原提示スカフォールドを用いてpMHC指向的方法で低頻度ベースライン応答を伴って抗原特異的CD8T細胞を増殖させることが可能であることを示す。培養培地中に自由に添加したペプチド、IL-15及びIL-21で刺激された細胞、及び抗原提示スカフォールドで刺激された細胞の増殖を比較した場合、抗原提示スカフォールドで刺激された細胞が特異的CD8T細胞の頻度及び絶対数の両方で最も増殖したことは明らかである(図2E~Fを参照)。さらに、無関係ペプチドMHC特異性を有する抗原提示スカフォールドは、A1 FLU BP-VSD特異的CD8T細胞増殖を刺激することができず、このことは、細胞が、確立されたpMHC指向性相互作用なしで、共結合した(co-attached)サイトカイン及び共刺激分子から恩恵を受けることができないことを示す。
【0266】
実施例2:Cys-変異MHC(抗原/ペプチド受容的)の産生及び特異的T細胞増殖のための人工抗原提示細胞(aAPC)スカフォールドのアセンブリ
MHC複合体及びT細胞に影響を及ぼす分子、例えば、サイトカイン及び刺激分子を、デキストランにストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介してカップリングさせることによってaAPCスカフォールドを作製する方法をここで記載する。この実施例では、MHC並びにジスルフィド安定化Cys-変異MHCの両方を調製し、aAPCスカフォールドのアセンブリのために使用した。原則として、ビオチン-ストレプトアビジンを任意の二量化ドメインで置換することができ、二量化ドメインの半分をMHC複合体又はT細胞に影響を及ぼす分子にカップリングさせ、そして残りの半分をデキストラン又は類似のスカフォールド骨格にカップリングさせる。
【0267】
ストレプトアビジン修飾デキストランは、様々なデキストランサイズ、例えば、MW250KDa、750KDa、2000KDaでFina Biosolutionsから、及びImmudexから約270KDaのデキストランで市販されている。
【0268】
wt MHC及びCys-変異MHCの両方を、ここでは、それぞれ、Avi-tag(配列番号17)を有するwt HLA-A 02:01の重鎖と、Avi-tag(配列番号14)を有するCys-変異HLA-A 02:01の重鎖を用いて例示される、古典的E.Coli発現により産生した。簡単に説明すると、wt MHC及びMHC Cys-変異タンパク質の両方並びに軽鎖ベータ-2ミクログロブリン(B2M)タンパク質を、pETシリーズプラスミドを用いてE.coliにおいて産生した。E.coli産生タンパク質を含む封入体を、超音波処理、溶解緩衝液(Tris-Cl 50mM、pH8.0、1mM EDTA、25%スクロース)中でE.coli細胞を溶解させることによって収集した。変性タンパク質の可溶性フラクションを、封入体から、界面活性剤緩衝液(Tris-Cl 20mM、pH7.5、200mM NaCl、2mM EDTA、NP40 1%、デオキシコール酸1%)、及び洗浄緩衝液(0.5%Triton X-100、1mM EDTA)中で洗浄することによって収集し、続いて再可溶化緩衝液(HEPES 50mM、pH6.5、8M尿素、0.1mM β-メルカプトエタノール)中、4℃で48時間インキュベーションし、MHCクラスIモノマー産生に使用するまで-80℃で保存した。
【0269】
Cys-変異MHCモノマーは、例えば、ジペプチド/トリペプチド/小分子などのヘルパー分子の存在下で、Cys-変異MHCタンパク質及びB2Mのインビトロフォールディング(フォールディング緩衝液:100mM Tris-Cl、pH8.0、400mM L-アルギニン、2mM EDTA、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル)によって作製した。ヘルパー分子が含まれていないことを除いてCys-変異MHCモノマーのようにwt MHCを作製した。その代わり、wt MHC分子をUVレイビルペプチドKILGFVF-X-V(配列番号24)の存在下でリフォールディングし、ここで、Xは、紫外線に対して感受性のアミノ酸である3-アミノ-2-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸を指し、これは、UV光に曝露されると完全長ペプチドを切断する。結果として得られる切断されたペプチドフラグメントのMHC分子に対する低減した結合アフィニティによって、次期(incoming)交換抗原ペプチドの結合が可能となる。
【0270】
MHCモノマーを従来型サイズ排除クロマトグラフィによって精製した。あるいは、他の標準的タンパク質精製方法を使用することができる。サイズ排除クロマトグラフィによるCys-変異MHCモノマーの精製は、MHCモノマー安定化ヘルパー分子、例えば、ジペプチドグリシン-ロイシンの有無を問わず、緩衝液を用いて実施することができる。
【0271】
抗原ペプチド(空MHCモノマー)のない、そのような産生された安定なCys-変異MHCモノマーは、様々な研究、診断及び治療的使用のための多数の抗原ペプチドロードMHCモノマーの迅速な生成のために非常に有用である。抗原ペプチドロードCys-変異MHC(pMHC)モノマーは、100μMのペプチドを200μg/mLのCys-変異空MHCモノマーと共に30~60分間、室温にてインキュベートすることによって調製することができる。Wt pMHCは、最適の200μMの抗原-ペプチドを含め、その後、モノマーを360nmのUV光に1時間曝露することによって、UVレイビルペプチドを含むMHCモノマーから産生することができる。
【0272】
pMHC及びT細胞に影響を及ぼす分子、例えば、サイトカイン及び共刺激分子は、標準的な化学的及び酵素的プロトコルの両方によってビオチン化することができる。例えば、pMHCは、ビオチン化コンセンサスペプチド配列をMHC重鎖中に含め、BirA酵素及び遊離ビオチンを使用する部位特異的ビオチン化を可能にすることによって、酵素的にビオチン化することができる。サイトカイン及び共刺激分子は、BioLegend及びPreProtechなどの供給業者から市販されている。これらのタンパク質は、ThermoFisher Scientific製のEZ-Link Sulfo-NHS-LC-ビオチンなどの市販のビオチン化試薬を使用し、供給業者のプロトコルにしたがって反応させることにより、容易にビオチン化される。
【0273】
本明細書中で記載する実施例において、aAPCスカフォールドをストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介してアセンブリングした。簡単に説明すると、デキストランによって結合したビオチン化分子及びストレプトアビジンを、以下に記載する実施例にしたがって、相対的化学量論で、PBSなどの水性緩衝液中で組み合わせて、最終濃度60nMのアセンブリングされたaAPCスカフォールドを得た。aAPCスカフォールドを4℃で1時間アセンブリングさせ、その後、細胞培養に添加するまで4℃に保持した。アセンブリングされたスカフォールドは4℃で少なくとも1か月保存することができる。結合していない抗原ペプチド、pMHC、サイトカイン及び共刺激分子から、Amicon Ultra遠心分離フィルターユニットUltra-4、MWCO 100kDaなどのMWカットオフフィルターを通して結合していない分子を遠心分離することによって、アセンブリングされたaAPCスカフォールドを精製することができ分離することができる。
【0274】
T細胞培養を、ヒトPBMC又はTILから確立させ、48ウェル平底培養皿中、2×10細胞/mlでイニシエートさせ、37℃及び5%COで2週間培養した。5%熱不活化ヒト血清を追加した1mLの新鮮なX-VIVO15培地中0.2nMの最終濃度のaAPCスカフォールドを添加することによって細胞を週に2回刺激した。1週間培養した後、細胞を24ウェル平底培養皿に移し、MHCテトラマー染色のために培養からサンプルを週に1回採取して、フローサイトメトリーにより抗原特異的CD8T細胞の増殖を追跡した。
【0275】
実施例3:Cys-変異MHCモノマーを用いて調製したaAPCスカフォールドを使用した抗原特異的CD8T細胞の増殖及び野生型MHCモノマーを用いて調製したaAPCスカフォールドと比較してのそれらの機能評価(図3~4)
【0276】
ここでは、FLU 58-66 GILGFVFTL(配列番号20)及びEBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)に対してCys-変異MHCクラスI HLA-A*02:01モノマーを使用したaAPCスカフォールドのアセンブリ並びにこれらのaAPCスカフォールドを使用した健常なドナーPBMCからの特異的CD8T細胞増殖を記載する。野生型MHCクラスI HLA-A*02:01モノマーから調製したaAPCスカフォールドに関する比較的機能評価をする。データを図3及び4に示す。
【0277】
Cys-変異HLA-A*02:01モノマーを実施例2に記載するようにして調製した。簡単に説明すると、Cys-変異HLA-A*02:01 DNA配列(配列番号14)を含む重鎖構築物及び野生型ヒトB2M(配列番号15)構築物をE.Coli発現株pLysSに形質転換して、これらのタンパク質を産生した。発現されたタンパク質を含む封入体を、溶解緩衝液中で超音波処理を使用する標準的手順によって収集し、続いて界面活性剤緩衝液、及び洗浄緩衝液中で洗浄し、タンパク質を尿素緩衝液中で48時間、4℃にて可溶化して、タンパク質の変性された可溶性フラクションを集めた。同様の手順を行って、野生型HLA-A 02:01の可溶性変性タンパク質を産生した。
【0278】
Cys-変異HLA-A*02:01の変性可溶性フラクションをフォールディングして、Cys-変異HLA-A*02:01のモノマーを産生した。Cys-変異HLA-A*02:01の重鎖タンパク質及びB2Mを、ジペプチドグリシン-ロイシン(GL)の存在下、Tris-Cl 100mM、pH8.0、L-アルギニン400mM、及びEDTA 2mMを含むフォールディング緩衝液中、1:2のモル比で混合した。フォールディング後、モノマーを、Avi-tagからのプロトコルにしたがって、30℃で1時間のビオチン-タンパク質リガーゼ酵素反応を使用して、重鎖に組み入れたAvi-tag配列でビオチン化した。Cys-変異HLA-A*02:01のこれらのビオチン化モノマーを、サイズ排除クロマトグラフィ(HPLC、Waters Corporation、USA)により精製した。フォールディング反応はHLA-A*02:01特異的抗原ペプチドを含んでいなかったので、Cys-変異HLA-A*02:01モノマーは空であり、かつペプチド受容的である。精製後、Cys-変異HLA-A*02:01モノマーの品質評価をタンパク質濃度及びビオチン化について実施し、さらなる使用まで-80℃で保存した。
【0279】
野生型HLA-A*02:01モノマーを、上述と類似のプロセスであるが、野生型MHCのフォールディング及び安定性に必須である、UVレイビルHLA-A*02:01特異的ペプチド(配列番号24)の存在下で調製した。したがって、精製されビオチン化された野生型HLA-A*02:01モノマーは常にこのペプチドに関連した形態である。
【0280】
aAPCスカフォールドをFLU 58-66 GILGFVFTL(配列番号20)又はEBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)に対して特異的なCys-変異HLA-A02:01とアセンブリングするために、PBS中で希釈した、各特異性の100μMペプチドを、100μg/mL Cys-変異HLA-A02:01モノマーと60分間、PBS中の20μL反応物中に混合した。平行して、IL-2及びIL-21をデキストランスカフォールドと共に30分間インキュベートすることによって、サイトカイン、IL-2及びIL-21をデキストランスカフォールド上で1:8:8のモル比にてアセンブリングした。これらのアセンブリングされたサイトカインデキストランスカフォールドに対して、抗原特異的Cys-変異HLA-A*02:01モノマーを1:8のモル比まで添加し、30分間インキュベートして、骨格、pMHC、IL-2、IL-21比が1:8:8:8の抗原提示スカフォールドを生成させた。スカフォールド上の任意の可能な遊離ストレプトアビジン部位を、20μMのD-ビオチンを添加し、20分間インキュベートすることによってブロックした。
【0281】
野生型HLA-A*02:01モノマーはプレ結合ペプチドと結合していたので、FLU 58-66 GILGFVFTL(配列番号20)又はEBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)に対して特異的な野生型HLA-A02:01を使用するaAPCスカフォールドは、プレ結合ペプチドをFLU 58-66 GILGFVFTL又はEBV BMF1 GLCTLVAML特異的ペプチドと交換するためにさらなるステップを必要とした。100μg/mlの野生型HLA-A*02::01モノマーをPBS中200μMの抗原ペプチドと混合して総体積20μLとし、UVランプ(366nm)下で60分間インキュベートして、プレ結合UVレイビルペプチドの抗原特異的ペプチドとの交換を促進した。反応後、Cys-変異aAPCスカフォールドについて上述したように、野生型HLA-A*02:01モノマー及びサイトカインを1:8:8:8(骨格:pMHC:IL-2:IL-21)のモル比で使用して、aAPCスカフォールドをアセンブリングした。スカフォールドをT細胞増殖のために使用するまで4℃で保存する。
【0282】
FLU 58-66 GILGFVFTL及びEBV BMF1 GLCTLVAMLに対して特異的なCys-変異及び野生型HLA-A*02:01分子を使用して調製したaAPCスカフォールドを評価し比較するために、これらの2種類のスカフォールドを用いた平行培養を、各特異性に対応する2人の異なる健常ドナーからのPBMCを用いて確立させた。陽性特異性のスカフォールドとあわせて、無関係のペプチド(HLA-A*02:01 HIV Pol ILKEPVHGV(配列番号23))を用いて作成した陰性対照スカフォールドも含まれていた。すべてのaAPCスカフォールドベースのT細胞増殖は、48ウェル平底細胞培養プレートにおいて、5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中、特異性あたり2×10PBMCを使用してイニシエートした。3μlの各特異性のaAPCスカフォールドを2日又は3日ごとに4回添加し、培養を2週間維持した。抗原特異的刺激によって誘導された細胞内サイトカイン染色を使用した増殖のために、10サンプルを集めて試験した。各特異性の増殖させた細胞を、5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中、300.000細胞/100μLの細胞濃度で、5μMの関連抗原ペプチドを負荷した。抗原ペプチドとともにインキュベーションした後、増殖させた細胞を洗浄し、まず、関連細胞表面抗体(CD3、CD4、CD8、及び実効可能な染料)で染色し、続いて細胞透過処理緩衝液を使用したTNFα(PE-Cy7)及びIFNγ(APC)の細胞内染色を行った。細胞を固定し、フローサイトメータで分析した。
【0283】
本明細書中では、2つの抗原ペプチドを使用した実施例を示す。しかしながら、本発明は、抗原ペプチドの限定されたセットに限定されない。他の関連ペプチドとしては、限定されるものではないが、配列番号25~28が挙げられる。
【0284】
結論:(図3及び4)この実験は、HLA-A*02:01タンパク質のCys-変異変異体を使用してFLU58-66GILGFVFTL抗原(図1)及びEBV BMF1GLCTLVAML(図2)抗原を提示する、aAPCスカフォールドを用いたpMHC指向的方法で、低頻度ベースライン応答を伴って抗原特異的CD8T細胞を増殖することが可能であることを示す。この実施例は、迅速な産生のためのCys-変異MHC及び抗原-特異的T細胞の増殖のためのaAPCスカフォールドの抗原多様化の使用が可能であることを示す。
【0285】
Cys-変異MHC aAPCスカフォールドを用いて増殖させたCD8T細胞は、FLU 58-66 GILGFVFTL(図1)及びEBV BMF1 GLCTLVAML(図2)に対して抗原ペプチド特異的増殖CD8T細胞による細胞内サイトカイン(TNFα及びIFNγ)放出によって示されるように、野生型MHCを用いて調製したaAPCスカフォールドと機能的に匹敵することが判明した。機能的分析によってまた、無関係のペプチド特異的CD8T細胞の増殖は観察されなかったので、Cys-変異MHCを有するaAPCスカフォールドが抗原特異的細胞のみを増殖させることが確認される。
【0286】
実施例1では、wt MHC分子を用いて調製されたaAPCスカフォールドで刺激された細胞が、遊離抗原ペプチド及びT細胞に影響を及ぼす分子を使用した増殖及び刺激と比較して、特異的CD8T細胞の頻度及び絶対数の点で優れた増殖を示すことが示されている。この実施例では、Cys-変異MHC aAPCスカフォールドが、wt MHC分子を用いて調製されたaAPCスカフォールドと類似の効率でCD8T細胞を増殖させ刺激することが示されている。その結果として、Cys-変異MHC aAPCスカフォールドは、遊離抗原ペプチド及びT細胞に影響を及ぼす分子を使用した増殖及び刺激よりも優れている。
【0287】
実施例4:ジスルフィド安定化空MHCクラスIを使用した抗原人工抗原提示(aAPC)スカフォールドのアセンブリ及び当該aAPCを使用した特異的T細胞増殖(図5~7)
ここでは、抗原ペプチドなしのCys-変異MHCを使用してどのようにしてaAPCスカフォールドをアセンブリングすることができるかを記載する。そのようなaAPCスカフォールドは抗原ペプチド受容的であり、したがって、抗原同定の前に、例えば、がんペプチド抗原を完全な腫瘍シーケンシングから同定する、個別化がん免疫療法と組み合わせて産生することができる。aAPCスカフォールドは、抗原ペプチドのCys-変異MHCモノマーへのローディングを、aAPCスカフォールドのアセンブリの前(プレアセンブリ)にMHCにローディングするのとは対照的に、aAPCスカフォールドのアセンブリの後(ポストアセンブリ)に実施することを除いて、本質的には実施例2及び3に記載するようにしてアセンブリングすることができる。
【0288】
空MHC分子を有するこれらのaAPCスカフォールドに、関心対象の抗原ペプチドを単一ステップでロードすることができ、それによって、それらをpMHC特異的aAPCスカフォールドに変換した。そのような抗原受容的aAPCスカフォールドは、各pMHC aAPCスカフォールドが空MHC分子を有するaAPCスカフォールドの安定なマスターバッチから生成されるので、各pMHC特異的aAPCスカフォールドを生成するための処理時間を排除し、またバッチ特異的変動を限定する。
【0289】
ここで記載するのは、健常なドナーPBMCからのHLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV(配列番号22)特異的CD8T細胞を増殖するためのそのようなロード可能な(ポストアセンブル)aAPCスカフォールドの使用である。Cys-変異MHC及び野生型MHC分子のいずれかを使用した、ポストアセンブルaAPCスカフォールドとプレロード抗原ペプチドを有する(プレアセンブル)aAPCスカフォールドの定量的増殖効率の比較を図5に示す。ポストアセンブルaAPCスカフォールド、Cys-変異MHCを有するプレアセンブルaAPCスカフォールド、及び野生型MHCを有するプレアセンブルaAPCスカフォールドによるHLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATVに対して特異的なこれらの増殖CD8T細胞の機能性を、サイトカイン放出を測定することによって決定した(図6)。
【0290】
一般的概念実証をさらに確立するために、ポストアセンブルaAPCスカフォールドを用いたCD8T細胞増殖の検証は、異なる健常なドナーPBMCからのHLA-A*02:01 EBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)特異的CD8T細胞の増殖及び機能評価によって実施した。結果を、Cys-変異MHCを有するプレアセンブルaAPCスカフォールド、及び野生型MHCを有するプレアセンブルaAPCスカフォールドによる増殖と比較した(図7)。
【0291】
空aAPCスカフォールドをアセンブリングするために、Cys-変異MHCクラスIモノマーを、抗原ペプチドを直ちにロードしない以外は、実施例2に記載するように産生した。これらのビオチン化空MHCモノマー、サイトカイン、及び共刺激分子を、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用によりストレプトアビジン修飾デキストラン上でアセンブリングして、空MHCクラスI分子を有する抗原受容的aAPCスカフォールドを生成した。
【0292】
Cys-変異HLA-A*02:01分子を用いて空aAPCスカフォールドをアセンブリングするプロセスは、以下のように実施した。デキストランスカフォールド骨格をまず、1:8:8のモル比のビオチン化IL-2及びIL-21と、30分間4℃にて、PBS緩衝液中でインキュベートした。その後、100μg/mLのCys-変異MHC(空)モノマーを添加し、30分間4℃でインキュベートして、1:8:8:8のモル比のアセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールド(スカフォールド:Cys-変異MHC:IL-2:IL-21)を生成した。デキストラン骨格上の任意の残存する空ストレプトアビジン結合部位を、20μMのD-ビオチンを添加することによってブロックした。これらのaAPCスカフォールドは抗原特異性を含まないので、大バッチのHLA-A*02:01のこれらのロード可能なaAPCスカフォールドをさらに使用するまで4℃で保存した。
【0293】
HLA-A*02:01のポストアセンブリロード可能なaAPCスカフォールドを次いで評価して、健常なドナーPBMCからのHLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV(配列番号22)特異的CD8T細胞を増殖させた。増殖培養をイニシエートする当日に、抗原ペプチドを空aAPCスカフォールドに直接添加することによって、HLA-A*02:01の空aAPCスカフォールドをHLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV特異的aAPCスカフォールドに変換した。簡単に説明すると、PBS中で希釈した100μMのペプチドを、20μLの空aAPCスカフォールドとともにインキュベートし、30分間インキュベートした。アセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールドを単一ステップで変換することによって生成するそのようなaAPCスカフォールドを次いで使用して、増殖培養をセットアップした。3μLの特異的aAPCスカフォールドを2×10PBMCに添加し、培養を48ウェルプレートにおいて、5%血清を追加したX-vivo培地中でイニシエートした。培養を次いで、3μLのaAPCスカフォールドを2週間の期間にわたってさらに3回添加して、2週間維持した。平行して、HLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV特異性の同様の増殖培養を、野生型及びCys-変異HLA-A*02:01モノマーから作製された、プレアセンブルaAPCスカフォールドを用いてイニシエートした。このセットアップからの増殖培養を、ロード可能なaAPCスカフォールドの増殖効率との比較評価のために使用した。10日後、サンプルを集め、各特異性のCD8T細胞増殖を、pMHCテトラマーを使用して各特異性について決定した(図5)。
【0294】
これらの増殖させた培養から、別のセットの増殖させた細胞を集めて機能性を評価し、3種類のaAPCスカフォールド(Cys-変異MHCを有するポストアセンブリロードaAPCスカフォールド、Cys-変異MHCを有するプレアセンブリロードaAPCスカフォールド、及び野生型MHCを有するプレアセンブリロードaAPCスカフォールド)すべてにわたって比較した。
【0295】
機能評価のために、増殖させた細胞に、HLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV抗原を負荷して、細胞毒性殺滅のマーカーとしての抗原刺激サイトカインTNFα及びIFNγを誘導し検出した。これらのマーカーを同時に発現するCD8T細胞は、高殺傷能力を有すると解釈される。細胞に、5μMの関連ペプチドを2時間、5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中で、300000細胞/100μLの細胞濃度で負荷した。抗原ペプチドとともにインキュベーションした後、増殖させた細胞を洗浄し、まず、関連細胞表面抗体(CD3、CD4、CD8、及び実効可能な染料)で染色し、続いて細胞透過処理緩衝液を使用したTNFα(PE-Cy7)及びIFNγ(APC)の細胞内染色を行った。細胞を固定し、フローサイトメータで分析した(図6)。
【0296】
アセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールドについてのさらなる検証実験において、異なる健常なドナーPBMCからのHLA-A*02:01 EBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)特異的CD8T細胞は、アセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールド(1:8:8:8)を使用することによって増殖させた。これらのスカフォールドを、100μMのEBV BMF1 GLCTLVAMLペプチドを20μLのロード可能なaAPCスカフォールドに添加することによって抗原特異的pMHCスカフォールドに変換し、30分間インキュベートして、HLA-A*02:01 EBV BMF1 GLCTLVAML特異的aAPCスカフォールドを生成した。野生型又はCys-変異MHC分子を使用するHLA-A*02:01 EBV BMF1 GLCTLVAML特異的aAPCスカフォールドを実施例2に記載するようにして生成させた。
【0297】
HLA-A*02:01 EBV BMF1 GLCTLVAMLに対して特異的な増殖培養を、健常なドナーPBMCからの3種類のaAPCスカフォールドを使用し、48ウェルプレート中でイニシエートし、5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中で2週間、関連aAPCスカフォールドで3日ごとに刺激しながら維持した。
【0298】
各特異性につき300.000細胞を集め、実施例3で記載したように抗原ペプチドを負荷した後に細胞内サイトカイン放出を測定することによって、10日の増殖後に増殖CD8T細胞の機能評価を実施した。簡単に説明すると、増殖させた細胞に、5μMのEBV BMF1 GLCTLVAMLペプチドを2時間、5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中、300.000細胞/100μLの細胞濃度で負荷した。抗原ペプチドとともにインキュベーションした後、増殖させた細胞を洗浄し、まず、関連細胞表面抗体(CD3、CD4、CD8、及び実効可能な染料)で染色し、続いて細胞透過処理緩衝液を使用したTNFα(PE-Cy7)及びIFNγ(APC)の細胞内染色を行った。細胞を固定し、フローサイトメータで分析した(図7)。
【0299】
結論:(図5~7)この実験は、抗原特異的CD8T細胞を増殖することが可能であり、低頻度ベースライン応答は、抗原ペプチドローディングの単一ステップで抗原特異的aAPCスカフォールドに変換されるアセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールドを使用することを示す。図5は、ベースラインで全CD8+T細胞の0.18%(図5A)から全CD8+T細胞の25%(図5B)まで増殖されたHLA-A*02:01 CMV pp65 NLVPMVATV(配列番号22)CD8T細胞に対して特異的な、そのようなアセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールドの増殖効率を示す。効率は、野生型並びにCys-変異MHC分子の両方を使用するプレアセンブルaAPCスカフォールドに匹敵した。抗原特異的サイトカイン放出を用いて測定された、これらの増殖されたCD8T細胞の機能性は、3つの変異体すべて(Cys-変異MHCを有するポストアセンブリロードaAPCスカフォールド、Cys-変異MHCを有するプレアセンブリロードaAPCスカフォールド、及び野生型MHCを有するプレアセンブリロードaAPC)(図6)にわたって同等であることが判明した。図7の結果は、異なるドナーPBMCからのアセンブリ後ロード可能なaAPCスカフォールドを使用してHLA-A*02:01 EBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)に対して特異的な増殖CD8T細胞の機能性をさらに確立する。これは、ポストアセンブリロード可能なaAPCスカフォールドが効率的なT細胞刺激を提供することを示し、多機能T細胞を活性化し、したがって、それらは使用するまで4℃にてロード可能な形態で保存することができ、抗原ペプチドの単一ステップ添加で任意の特異性のaAPCスカフォールドに変換することができるので、有益なaAPCスカフォールドを提供する。
【0300】
まとめると、これらの実施例は、迅速な産生のための空Cys-変異MHCの使用及び抗原-特異的T細胞の増殖のためのaAPCスカフォールドの抗原多様化が可能であることを示す。これは、患者由来のがん-特異的T細胞の迅速な増殖が有効な臨床結果のために必須である、養子T細胞移入設定において有利である。
【0301】
本明細書中では、2つの抗原ペプチドを使用する実施例を挙げる。しかしながら、本発明は、抗原ペプチドの限定されたセットに限定されない。他の関連ペプチドとしては、限定されるものではないが、配列番号25~28が挙げられる。
【0302】
実施例5:ジスルフィド安定化(Cys-変異体)pMHCテトラマーのTCR認識
この実施例で、我々は、wt pMHCがTCRを認識する能力を、Cys-変異pMHCが同じTCRを認識する能力と比較した。これは、Cys-変異pMHCがwt pMHCと同様の方法でTCRにペプチド抗原を提示することを検証するために実施した。
【0303】
簡単に説明すると、pMHCテトラマーをフルオロクロム結合ストレプトアビジンと組み合わせたビオチン化wt pMHCモノマーから調製した。ビオチン化pMHCモノマー及びCys-変異MHCモノマーは、本質的に実施例2に記載した通りに調製した。wt HLA-A*02:01モノマーを使用する抗原ペプチド特異的MHCテトラマー(pMHC)を実施例4で記載する通りに調製した。
【0304】
簡単に説明すると、wt HLA-A*02:01モノマー(UVレイビルペプチド KILGFVF-X-V(配列番号24)とあらかじめ結合)は、100μg/mLのwt HLA-A02:01モノマーを200μMの抗原ペプチドとPBS緩衝液中20μLの反応体積で1時間、UVランプ(366nm波長)下でインキュベートすることによって抗原ペプチドと交換した。これらの交換後抗原ペプチド特異的モノマーを次にフルオロフォア標識ストレプトアビジンと結合させて、抗原ペプチド特異的テトラマーを作製し、各テトラマー特異性は、コンフォメーション分析のために2つの異なる色を用いて各特異性のCD8T細胞を検出するために2つの異なるフルオロフォアを用いて調製した。Cys-変異MHC分子を使用するpMHCテトラマーは、あらかじめ結合させた抗原ペプチドがなく、したがって交換プロセスを必要としないので、1時間、20μLの反応体積で、200μMの抗原ペプチドを100μg/mLのCys-変異MHCモノマーとともに直接インキュベートすることによって調製した。抗原ペプチド特異的Cys-変異MHCモノマーを次に、各特異性のために2つの異なる色のフルオロフォア標識ストレプトアビジンをと共にインキュベートすることによってテトラマー化した。
【0305】
TCR認識の比較分析のために、wt及びCys-変異MHCテトラマーを4つの異なるHLA-A*02:01抗原特異性;EBV LMP2 FLYALALLL(配列番号26)、FLU 58-66 GILGFVFTL(配列番号20)、EBV LMP2 CLGGLLTMV(配列番号25)、及びEBV BMF1 GLCTLVAML(配列番号21)に対して調製した。wt及びCys-変異MHCテトラマーを使用して、健常なドナーからのCD8T細胞を検出し、抗原ペプチド特異的T細胞を総CD8T細胞のパーセンテージとして評価した(図8)。
【0306】
結論:この実施例は、Cys-変異MHCがwt MHCの抗原ペプチド特異的T細胞と結合するのと同じ能力を有することを示す。pMHCモノマーの両形態は、MHCテトラマーに変換することができ、抗原ペプチド特異的T細胞の同じ集団を等しく効率的に顕出することが示されている。
【0307】
実施例6:がんモデルにおけるaAPCスカフォールド増殖T細胞の機能的能力
この実施例で、我々は、腫瘍材料からヒトがん特異的腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する。TILは、aAPCスカフォールドを用いて増殖させ、がんモデルにおける機能的能力について試験する。aAPCスカフォールドで増殖させたT細胞は、高用量のIL-2を用いた迅速な増殖による最先端の(state-off-the-art)TIL増殖プロトコルを用いて増殖させたT細胞に対する基準である。
【0308】
aAPCスカフォールド増殖T細胞の抗腫瘍活性を3D微小腫瘍モデルにおいて調べる。新鮮な黒色腫組織を手術後24時間以内に処理する。組織サンプルを洗浄し、細かく刻み、コラゲナーゼ酵素のブレンドを使用して穏やかに消化する。この後、微小腫瘍調製物を続いて、セルストレーナーを通してろ過して、50μmを越えるサイズを有する3D微小腫瘍を分離する。これらの3D微小腫瘍を無血清条件下で増殖させる。aPCスカフォールド増殖T細胞の抗腫瘍反応性を、同じ患者から確立された3D微小腫瘍を用いた共培養において、蛍光染料ベースの細胞毒性アッセイを用いて評価する。自己細胞産物(対照)に対する3D微小腫瘍細胞の細胞毒性応答を96時間までの期間にわたって評価する。上述の細胞毒性分析と平行して、各細胞産物による3D微小腫瘍浸潤の程度を、肝細胞3D共焦点蛍光顕微鏡法を用いて分析する。
【0309】
結論:この実施例は、AAPCスカフォールドを使用して増殖させたT細胞が自己がん微小腫瘍に対して抗腫瘍反応性を有することを示す。
【0310】
実施例7:ヒト化マウスモデルにおけるaAPCスカフォールド増殖T細胞のインビボ抗腫瘍活性
この実施例で、我々は、ヒト化huIL2-NOGマウスにおけるaAPCスカフォールド増殖T細胞のインビボ抗腫瘍活性を示し、これは、養子移入の黒色腫由来のTILの臨床活性をモデル化し予想することが最近報告された。
【0311】
簡単に説明すると、腫瘍をNOD/SCID/IL2Rγ(NOG)マウスに移植する。生着後、腫瘍を連続的に、3~5匹のNOGマウス又は3~5匹のヒトIL-2導入NOGマウス(huIL2-NOG)に移植する。huIL2-NOGマウスを、尾静脈に注入することによってaAPC増殖T細胞で処置する。腫瘍成長は、養子T細胞移入で処置した、又は未処置の担腫瘍マウス間で、カリパス測定又は画像化によって比較する(腫瘍種類に対する依存性)。マウス中で増殖させたT細胞を、免疫表現型決定し、阻害及び刺激シグナルについて分析する。
【0312】
結論:この実施例は、aAPCスカフォールド増殖T細胞がインビボ抗腫瘍反応性を有することを示す。
【0313】
実施例8:ネオロイキン-2/15を有するaAPCスカフォールド(Neo-2/15)を用いた抗原特異的CD8T細胞の増殖
この実施例では、A1 CMV pp65 YSEHPTFTSQY(配列番号30)に対する野生型MHCクラスI HLA-A*01:01モノマーを用いたNeo-2/15を有するaAPCスカフォールドのアセンブリ、及びこれらのaAPCスカフォールドを用いた、健常なドナーPBMCからの特異的CD8T細胞増殖を記載する(図9)。
【0314】
野生型HLA A*02:01モノマーを、実施例2に記載したのと同様のプロセスであるが、UVレイビルHLA A*01:01特異的ペプチドSTAPG-X-LEY(配列番号31)の存在下で調製し、ここで、Xは、紫外線に対して感受性のアミノ酸である3-アミノ-2-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸を指し、これはUV光に曝露されると、完全長ペプチドを切断し、また、野生型MHCのフォールディング及び安定性に必須である。したがって、精製及びビオチン化野生型HLA A*01:01モノマーは、常にこのペプチド結合形態である。
【0315】
野生型HLA-A*01:01モノマーを有するaAPCスカフォールドは、プレ結合ペプチドと結合していたので、A1 CMV pp65 YSEHPTFTSQYの野生型HLA-A*01:01モノマーを使用したaAPCスカフォールドは、プレ結合ペプチドとCMV pp65 YSEHPTFTSQY特異的ペプチドとのペプチド交換を必要とした。100μg/mlの野生型HLA-A*01:01モノマーをPBS中200μMの抗原ペプチドと混合して総体積20μLとし、そしてUVランプ(366nm)下で60分間インキュベートして、プレ結合UVレイビルペプチドと抗原特異的ペプチドとの交換を促進した。反応後、aAPCスカフォールドを、野生型HLA-A*01:01モノマー及びサイトカインを使用してアセンブリングした。スカフォールドをT細胞増殖のために使用するまで4℃で保存する。
【0316】
aAPCスカフォールドベースのT細胞増殖を、48ウェル平底細胞培養プレートにおいて5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中、特異性あたり2×10PBMCでイニシエートした。3μlのaAPCスカフォールドを2日又は3日おきに4回添加し、培養を2週間維持した。10サンプルを集め、抗原特異的刺激によって誘導された細胞内サイトカインを使用した増殖について試験した。増殖させた細胞に、5μMの関連抗原ペプチドを、2時間、5%ヒト血清を追加したX-vivo培地中、300.000細胞/100μLの細胞濃度で負荷した。抗原ペプチドとインキュベーションした後、増殖した細胞を洗浄し、まず関連細胞表面抗体(CD3、CD4、CD8、及び実効可能な染料)で染色し、続いて細胞透過処理緩衝液を使用して、TNFα(PE-Cy7)及びIFNγ(APC)について細胞内染色を行った。細胞を次いで固定し、フローサイトメータによって分析した。
【0317】
本明細書中で、1つの抗原ペプチドを使用する例を示す。しかしながら、本発明は、抗原ペプチドの限定されたセットに限定されるものではない。他の関連ペプチドには、限定されるものではないが、配列番号25~28が含まれる。
【0318】
結論:この実験は、HLA-A*01:01 CMV pp65YSEHPTFTSQY抗原と組み合わせてNeo-2/15を提示するaAPCスカフォールドを使用して、pMHC指向的方法で、低頻度ベースライン応答を伴って抗原特異的CD8T細胞を増殖させることが可能であることを示す(図9)。この実施例は、抗原-特異的T細胞の迅速な産生のためにHLA-A*01:01と組み合わせてNeo-2/15を提示するaAPCスカフォールドの使用が可能であることを示す。
【0319】
Neo-2/15 aAPCスカフォールドで増殖させたCD8T細胞は、HLA-A*01:01 CMV pp65 YSEHPTFTSQY抗原について抗原ペプチド特異的増殖CD8T細胞によって放出された細胞内サイトカイン(TNFα及びIFNγ)によって示されるように、IL-2で調製されたaAPCスカフォールドと機能的に匹敵することが判明した(図9)。機能的分析によってまた、無関係のペプチド特異的CD8T細胞の増殖が観察されなかったので、Neo-2/15を有するaAPCスカフォールドが抗原特異的細胞のみを増殖することが確認された。
【0320】
実施例1では、MHC分子を用いて調製されたaAPCスカフォールドで刺激された細胞は、遊離抗原ペプチド及びT細胞に影響を及ぼす分子を使用した増殖及び刺激と比較して、特異的CD8T細胞の頻度及び絶対数の観点から優れた増殖を示すことが示されている。実施例3では、Cys-変異MHC aAPCスカフォールドが、wt MHC分子を用いて調製されたaAPCスカフォールドに類似した効率でCD8T細胞を増殖し、かつ刺激することが示されている。この実施例では、Neo-2/15を有するaAPCスカフォールドは、抗原特異的CD8T細胞を有利に増殖し、かつ刺激することが示されている。
【0321】
引例
国際公開第2002072631号
国際公開第2009003492号
国際公開第2009094273
米国特許出願公開第2011/318380号
米国特許第9,494,588号
図1A
図1B
図2A-D】
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A-C】
【配列表】
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