IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノボマー, インコーポレイテッドの特許一覧

特許7580755ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス
<>
  • 特許-ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス 図1
  • 特許-ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス 図2
  • 特許-ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス 図3
  • 特許-ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス 図4
  • 特許-ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのシステム及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/09 20060101AFI20241105BHJP
   C07C 57/03 20060101ALI20241105BHJP
   B01J 8/18 20060101ALI20241105BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20241105BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
C07C51/09
C07C57/03
B01J8/18
B01J8/02 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020573354
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019039001
(87)【国際公開番号】W WO2020005951
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】16/023,410
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スクラジ,サデシュ・エイチ
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106831389(CN,A)
【文献】特開2009-035508(JP,A)
【文献】国際公開第2017/165344(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/165323(WO,A1)
【文献】特開2013-173088(JP,A)
【文献】米国特許第05412112(US,A)
【文献】Zhu, Rui; Jiang, Ju-Long; Li, Xing-Long; Deng, Jin; Fu, Yao,A Comprehensive Study on Metal Triflates Promoted Hydrogenolysis of Lactones to Carboxylic Acids: From Both Synthetic and Mechanistic Perspectives,ACS Catalysis ,2017年,7(11),,7520-7528,DOI: 10.1021/acscatal.7b01569
【文献】Fujisawa, Tamotsu; Shimizu, Makoto,β-Methyl-β-propiolactone,e-EROS Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis ,2001年,1-2
【文献】Fujisawa, T. et. al.,One-step Synthesis of ω-Hydroxycarboxylic Acids by the Reaction of ω-Metaloxylated Grignard Reagents with β-Propiolactones,Chemistry Letters ,1982年,569-570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ-ラクトン試薬から直接に有機酸を生成するプロセスであって、前記ベータ-ラクトン試薬が、以下の式:
【化1】
(式中、R及びRは、H、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルからなる群より独立して選択され、R及びRの両方は、同時にHではない)
で表され、前記方法が、
前記ベータ-ラクトン試薬を反応容器に導入すること;
前記ベータ-ラクトン試薬を前記反応容器内で150°C~250°Cの温度で不均一系触媒と接触させて、前記有機酸を生成すること;及び
前記反応容器から前記有機酸を取り出すこと
を含み、
前記有機酸が、不飽和脂肪族カルボン酸である、プロセス。
【請求項2】
前記不均一系触媒が、微多孔性固体を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記微多孔性固体が、アルカリ土類ホスフェート、支持リン酸塩、ハイドロキシアパタイトカルシウム、無機塩、酸化金属、及びゼオライト、又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記不均一系触媒が、ルイス又はブレンステッド酸性度を有するアルミナーシリケート分子ふるいを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記不均一系触媒が、ゼオライトを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ゼオライト触媒が、水素形態又は金属陽イオン交換形態である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記金属陽イオンが、Na、K、Ca2+、Mg2+、Cu2+、又はCuである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記有機酸が、連続的に生成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ベータ-ラクトン試薬が、溶媒と共に前記反応容器に導入される、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応容器が、不活性ガスで希釈したベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された連続固定床リアクターをさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応容器が、窒素などの不活性ガスで希釈したベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された流動相リアクターをさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応容器が、温度制御及び反応の間に生じる熱の除去を容易にするために、管に装填された不均一系触媒及びシェル側に供給された伝熱流体を有する管状シェルーチューブリアクターをさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ベータ-ラクトン試薬が、0.1h-1~2.1h-1の単位時間当たりの重量空間速度で供給される、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ベータ-ラクトン試薬が、0.3h-1 0.9h-1の単位時間当たりの重量空間速度で供給される、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記有機酸が、連続的に単離される、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記有機酸が、少なくとも50%の収量で生成される、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
及びRのうちの1つがHであり、R及びRの他方がアルキルである、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
がアルキルであり、RがHである、請求項17に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月29日出願の米国特許出願第16/023,410号(これは、2016年3月21日出願の米国仮特許出願第62/311,262号の優先権を主張する2017年3月21日出願の米国特許出願第15/464,346号の部分継続出願である)に対する優先権を主張し、これは、本明細書中に完全に再掲されたのと同様に、その全体が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、概して、ベータ-ラクトンから有機酸を直接に生成するためのリアクターシステム及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アクリル酸(AA)などの有機酸の生成及び使用は、ポリアクリル酸ベースの超吸収ポリマー類(SAP)などのポリ有機酸の需要が増大するに伴って、この数十年で大幅に増大している。SAPは、おむつ、成人失禁用製品及び女性用生理用品の製造、ならびに農業用途で、広範に使用される。
【0004】
現在、市販されているアクリル酸は、代表的に、プロピレン酸化に由来する。プロピレンは、製油の一次生成物であり、その価格及び安定供給は、原油価格と密接に結びついている。それゆえに、アクリル酸価格は、油の価格及びその変動に密接に結びついたままである。
【0005】
したがって、当該分野において、特定の有機酸を合成する代替方法についての需要が、存在する。同時に、再生可能資源から有機酸を生成することが、好ましい。2015年7月2日に公開された米国特許出願第2015/0183708号及び2014年1月15日に出願された同第2014/0018574号は、広範な種々の生物学的活性物質を用いる、ポリ-3-ヒドロキシプロピオネートから生物を原料としたアクリル酸の生成を開示する。
【0006】
他の参考文献は、無機触媒を用いたベータ-プロピオラクトンからのアクリル酸の生成を開示する。米国特許第3,176,042号は、ベータ-プロピオラクトンからアクリル酸を生成するリン酸触媒プロセスを開示する。リン酸の腐食性及び低い反応率に起因して、このプロセスは、資本集約的である。さらに、リアクター内のリン酸の組成を所望のレベルに維持するために、リアクターには連続的に水が供給されなければならない。このことは、生成されたアクリル酸から水を分離する必要性もたらし、それにより追加の装置及び操作費用がかかる。
【0007】
米国特許第9,096,510号B2は、少なくとも部分的気相条件下での固体触媒を用いた、ベータ-プロピオラクトンからのアクリル酸の生成を教示する。
【0008】
WO20133191号は、2工程プロセスでのベータ-プロピオラクトンからのアクリル酸の生成を教示する:まずベータ-プロピオラクトンを重合体化して、ポリープロピオラクトンを生成し、次いでポリープロピオラクトンの熱分解を介してアクリル酸を生成する。このプロセスは、資本集約的であり、非常に発熱性の重合体化反応の後に非常に吸熱性の熱分解反応が続くため、高い操作費用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2015/0183708号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0018574号明細書
【文献】米国特許第3,176,042号明細書
【文献】米国特許第9,096,510号明細書
【文献】国際公開第2013/3191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、非炭化水素から及び好ましくは再生可能資源から、特定の有機酸生成物を、特に高い純度の有機酸生成物を生成するための改善された方法が、探されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔な要旨
本明細書中で記載のリアクターシステム及びプロセスは、ベータ-ラクトン試薬からより高い純度の有機酸生成物を生成するために、既存の需要を解決する。有利なことに、本発明のリアクターシステム及びプロセスは、先行技術のプロセスと比較して、ベータ-ラクトン試薬からのより高い純度の有機酸生成物を提供し、そして経済的に望ましい。
【0012】
本発明の1つの目的は、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を生成するプロセスを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、本発明のプロセスを通じて少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの非常に純粋な有機酸生成物を生成するように構成されているリアクターシステムを提供することである。
【0014】
本明細書中で、当該分野で公知のプロセスと比較して経済的に望ましい、改善された1工程プロセスを介してベータ-ラクトン試薬から有機酸生成物を生成するためのシステム及びプロセスが、提供される。本発明のリアクターシステム及びプロセスは、ベータ-ラクトン試薬、不均一系触媒、及び容器中での反応のために任意選択可能な溶媒又は希釈剤の混合を、含む。リアクターシステム及びプロセスは、不均一系触媒に接触させて有機酸生成物を生成する間、ベータ-ラクトン試薬及び任意の溶媒又は希釈剤を蒸気相中で維持する。
【0015】
好ましい実施形態において、不均一系触媒は、結晶性微多孔性固体を含む。本発明に特に好適なタイプの触媒としては、アルカリ土類ホスフェート、支持リン酸塩、ハイドロキシアパタイトカルシウム、無機塩、酸化金属、及びゼオライトが挙げられる。好ましい実施形態において、不均一系触媒は、アルミナ-シリケート分子ふるいであり、より好ましくは、ルイス又はブレンステッド酸性度を有するゼオライトである。ゼオライトは、水素形態であっても、又は好適な陽イオンによる陽イオン交換形態であってもよく、例えば、Na+又はK+などのアルカリ金属、ならびにCa2+、Mg2+、Sr2+、またはBa2+;Zn2+、Cu+、及びCu2+などのアルカリ土類陽イオンであってもよい。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、ベータ-ラクトンから有機酸を生成するためのプロセスは、固定床連続的リアクター及び再生を含むように構成されているリアクターシステムを用いて実施され得る。特定の好ましい実施形態において、ベータ-ラクトンから有機酸を生成するためのプロセスは、蒸気相供給流をゼオライト触媒の固定床に通すように構成されているリアクターシステムを用いて実施されてもよい。特定の好ましい実施形態において、ベータ-ラクトンは、不活性溶媒及び/又は不活性ガスによって、反応前に希釈されてもよい。
【0017】
図面の説明
本出願は、以下の記載を、本明細書中に含まれる添付の図面と共に考慮して参照することにより、最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ベータ-ラクトン試薬から有機酸生成物を生成するための、例示的なプロセスを図示する。
図2】本明細書中で記載のプロセスにしたがってベータ-ラクトン試薬から有機酸生成物を生成するための、例示的な反応システムを図示する。
図3】本発明のプロセスにしたがう、ベータ-ラクトン試薬から有機酸生成物を直接に生成するリアクターシステムの固定床操作のための、プロセスフロー図である。
図4】本発明のプロセスにしたがう、ベータ-ラクトン試薬から有機酸生成物を直接に生成するリアクターシステムの移動床操作のための、プロセスフロー図である。
図5】本発明のプロセスにしたがう、ベータ-ラクトン試薬から有機酸生成物を直接に生成するリアクターシステムの流動床操作のための、プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
以下の記載は、例示的なシステム、プロセス、パラメータなどを示す。しかし、このような記載は、本開示の範囲を制限することを意図しないが、その代わり、例示的な局面の記載を提供することが、理解されるべきである。
【0020】
定義
用語「ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、相対的高分子量の分子をいい、その構造は、実質的又は概念的に相対的低分子量である分子に由来する、多数の繰り返し単位を含む。いくつかの局面において、ポリマーは、1つのモノマー種から構成されている。いくつかの局面において、ポリマーは、1つ以上のエポキシドのコポリマー、ターポリマー、ヘテロポリマー、ブロックコポリマー又はテーパー型ヘテロポリマー(tapered heteropolymer)である。
【0021】
生物含量及び生物ベース含量という用語は、バイオマス由来の炭素、炭素廃棄流及び公共固形廃棄物由来の炭素としても公知である、生物起源の炭素を意味する。いくつかの変型において、生物含量(「生物ベースの含量」とも呼ばれる)が、以下に基づいて決定され得る:
【0022】
生物含量又は生物ベース含量=[生物(有機)炭素]/[全(有機)炭素]100%である(ASTM D6866(放射性炭素分析を用いた、固体、液体及び期待サンプルの生物ベース(生物学的)含量を決定するための標準的試験法)によって決定される)。
【0023】
US 20170002136に開示されるように、ASTM D6866方法は、加速器質量分析、液体シンチレーション計数及び同位体質量分析により、放射性炭素分析を用いて物質の生物ベース含量の決定を可能にする。大気中の窒素が紫外線に打たれて中性子を生じる際、陽子を失って、14の分子量を有する放射性の炭素を形成する。この14Cは、直ちに酸化されて二酸化炭素となり、大気中炭素の小さいが測定可能な画分を示す。大気中の二酸化炭素は、緑色植物によって循環されて、光合成の間に有機分子を作る。この循環は、緑色植物又は他の生物が二酸化炭素を生成する有機分子を代謝し、それを大気に戻したときに完了する。事実上、地球上の全ての生物が、化学エネルギーを産生するための有機分子の緑色植物生成に依存し、これが成長及び繁殖を容易にする。したがって、大気中に存在する14Cは、全ての生物及びその生物学的生成物の一部となる。二酸化炭素に生物分解されるこの再生可能ベースの有機分子は、大気中に放出される炭素の純増がないため、地球温暖化に寄与しない。対照的に、化石燃料ベースの炭素は、大気中の二酸化炭素の放射性炭素比の特徴(signature)を有さない。
WO 2009/155086をもまた、参照されたい。
【0024】
「生物ベース含量」を得るためのASTM D6866は、放射性炭素による年代測定と同じ概念の上に成り立つが、年代方程式の使用を行わない。この分析は、未知のサンプル中の放射性炭素(14C)の量対現代参照標準(modern reference standard)の比を得ることによって実施される。この比は、「pMC」(現代炭素百分率)単位で、百分率で報告される。分析される物質が現時点の放射性炭素と化石炭素(放射性炭素を含まない)との混合物である場合、得られるpMC値は、サンプル中に存在する生物ベースの物質の量に直接的に相関する。放射性炭素による年代測定において使用される現代参照標準は、AD1950年におよそ匹敵する、既知の放射性炭素含量によるNIST(National Institute of Standards and Technology)標準である。このAD1950年は、爆発ごとに大量の過剰な放射性炭素(「爆弾炭素」と呼ばれる)を大気中に導入する熱核兵器実験よりも前の時代を表すがゆえに選択された。AD1950参照は、100pMCを表す。大気中の「爆弾炭素」は、試験のピークでありかつ試験停止条約の前において1963年に正常レベルのほぼ2倍に達した。大気中のその分布は、その出現が、AD1950から生きている植物及び動物について100pMCを超える値を示すことから、概算されている。爆弾炭素の分布は、時間経過にわたって徐々に下がってきており、現在の値は107.5pMC近辺である。結果として、新鮮なバイオマス物質、例えばトウモロコシは、107.5pMC近辺の放射性炭素の特徴をもたらし得る。
【0025】
石油ベースの炭素は、大気二酸化炭素の放射性炭素比の特徴を有さない。研究は、化石燃料及び石油化学物質が、約1pMC未満、代表的には約0.1pMC未満、例えば、約0.03pMC未満を有することに留意する。しかし、再生可能資源に完全に由来する化合物は、少なくとも約95現代炭素百分率(pMC)を有し、少なくとも約99pMC(約100pMCを含む)を有してもよい。
【0026】
化石炭素と現在の炭素とを物質に合わせると、現在のpMC含量の希釈が生じる。107.5pMCが現在の生物ベースの物質を表し、そして0pMCが石油誘導体を表すことを考え合わせると、この物質についてのpMC測定値は、2つの構成成分型の割合を反映する。現在のバイオマスに100%由来する物質は、107.5pMC近辺の放射性炭素特徴を与える。50%石油誘導体で希釈した物質である場合、54pMC近辺の放射性炭素特徴を得る。
【0027】
生物ベース含量結果は、100%を107.5pMCに及び0%を0pMCに割り当てることによって得られる。この点において、測定値99pMCのサンプルは、93%のバイオベース含量の結果に匹敵する。
【0028】
本実施形態にしたがって本明細書中で記載される物質の評価は、ASTM D6866改定版12(すなわちASTMD6866-12)にしたがって実施され、その全体は、本明細書中で参考として組み込まれる。いくつかの実施形態において、評価は、ASTM-D6866-12の方法Bの手順にしたがって実施される。平均値は、最終構成成分放射性炭素特徴における変動を考慮して、6%の絶対範囲を含む(生物ベース含量値の両側±3%)。全ての物質は、現在起源又は化石起源であることが仮定され、所望される結果は、生物ベースの炭素の量が物質中に「存在」する量であって、製造工程で「使用された」生物物質の量ではない。
【0029】
物質の生物ベース含量を評価するための他の技術は、例えば、米国特許第3、885、155号、同第4、427、884号、同第4、973、841号、同第5、438、194号、及び第5、661、299号ならびにWO2009/155086に記載される。
【0030】
1つ以上のポリラクトン生成物の熱分解によって生成した有機酸の生物含量は、1つ以上のエポキシド試薬及び一酸化炭素試薬の生物含量に基づき得る。例えば、本明細書中で記載されるプロセスのいくつかの変型において、本明細書中で記載される1つ以上のエポキシド試薬及び一酸化炭素試薬は、0%を超え、そして100%を越えない。本明細書中で記載されるプロセスの特定の変型において、本明細書中で記載される1つ以上のエポキシド試薬及び一酸化炭素試薬は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、又は100%の生物含量を有する。特定の変型において、再生可能資源に由来する1つ以上のエポキシド試薬及び一酸化炭素試薬が、使用されてもよい。他の変型において、1つ以上のエポキシド試薬及び一酸化炭素試薬の一部分は、少なくとも再生可能資源に由来し、1つ以上のエポキシド試薬及び一酸化炭素試薬の少なくとも1部分は、再生不可能な資源に由来する。
【0031】
特定の官能基及び化学用語の定義は、以下により詳細に記載される。化学元素は、the Periodic Table of the Elements、CAS version、Handbook of Chemistry and Physics、第75版(カバー内)にしたがって同定され、特定の官能基は、一般に、本明細書中で記載される。さらに、有機化学の一般原則、ならびに特定の官能性部分及び反応性は、Organic Chemistry、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito、1999;Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry、5th Edition、John Wiley &S ons、Inc.、New York、2001;Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、Inc.、NewYork、1989;Carruthers、Some Modern Methods of Organic Synthesis、3rd Edition、Cambridge University Press、Cambridge、1987に記載される。これらそれぞれの完全な内容が、本明細書中で参考として組み込まれる。
【0032】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書で使用される場合、直鎖(すなわち、分岐していない)であるか、分岐しているか、または環状であってもよく(縮合し、架橋し、スピロ縮合した多環を含み)、完全に飽和であってもよく、または、1個以上の不飽和部を含んでいてもよいが、芳香族ではないような炭化水素部分を示す。他の意味であると明記されていない限り、脂肪族基は、1~30個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、脂肪族基は、1~12個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、脂肪族基は、1~8個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、脂肪族基は、1~6個の炭素原子を含む。ある実施形態では、脂肪族基は、1~5個の炭素原子を含み、ある実施形態では、脂肪族基は、1~4個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1~3個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1~2個の炭素原子を含む。適切な脂肪族基としては、限定されないが、直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル基、およびこれらのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられる。
【0033】
用語「アクリレート(単数又は複数)」は、本明細書中で使用される場合、アシルカルボニルに隣接するビニル基を有する任意のアシル基をいう。
【0034】
この用語は、モノー、ジー及びトリー置換ビニル基を含む。アクリレートの例としては、アクリレート、メタクリレート、エタクリレート、シンナメート(3-フェニルアクリレート)、クロトネート、チグレート及びセンシオエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の二重結合又は三重結合を有する部分を意味する。
【0036】
用語「アルキル」は、本明細書で使用される場合、1~6個の炭素原子を有する脂肪族部分から1個の水素原子を除去することによって誘導される、飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。他の意味であると明記されていない限り、アルキル基は、1~12個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、アルキル基は、1~8個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含む。ある実施形態では、アルキル基は、1~5個の炭素原子を含む。ある実施形態では、アルキル基は、1~4個の炭素原子を含む。特定の実施形態では、アルキル基は、1~3個の炭素原子を含む。ある実施形態では、アルキル基は、1~2個の炭素原子を含む。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「部分的に不飽和」は、少なくとも1個の二重結合または三重結合を含む環部分を指す。用語「部分的に不飽和」は、複数の不飽和部を有する環を包含することを意図しているが、本明細書に定義されているように、アリール部分またはヘテロアリール部分を含むことを意図していない。
【0038】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「任意選択的に置換された」部分を含んでいてもよい。一般的に、用語「置換された」は、用語「任意選択的に」が前についていても、ついていなくても、所定の部分の1個以上の水素が、適切な置換基と置き換わっていることを意味する。他の意味であると記載されていない限り、「任意選択的に置換された」基は、基のそれぞれの置換可能な位置に適切な置換基を有していてもよく、所与の構造の2個以上の位置が、特定の基から選択される2個以上の置換基で置換されていてもよい場合、その置換基は、すべての位置で同じであってもよく、異なっていてもよい。本発明で想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物を生じるものである。用語「安定な」は、本明細書で使用される場合、生成、検出、および特定の実施形態では、回収、精製、本明細書に開示されている1つ以上の目的のための用途を可能にする条件にさらされても、実質的に変わらない化合物を指す。
【0039】
本明細書のいくつかの化学構造では、置換基は、示されている分子の環の内部まで描かれている結合に接続するように示されている。このことは、1個以上の置換基が、(通常は、親構造の水素原子に代わって)任意の利用可能な位置に結合していてもよいことを示していると理解されるであろう。このように置換されている環の原子が、2個の置換可能な位置を有している場合には、2個の基が同じ環原子の上に存在していてもよい。他の意味であると示されていない限り、2個以上の置換基が存在する場合、それぞれは、その他の置換基と独立して定義され、それぞれは、異なる構造を有していてもよい。環に交差する結合で、置換基が-Rで示されている場合には、この環が、上の章で記載されているような「任意選択的に置換された」と述べられているのと同じ意味である。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「触媒」は、存在することにより、化学反応の速度および/または程度を高め、それ自身が消費されないか、永久的な化学変化を受けないような基質を指す。
【0041】
再生可能資源は、100年未満の間再補充可能な、生物学的生物から得られた炭素及び/又は水素の供給源を意味する。
【0042】
再生可能炭素は、100年未満の間再補充可能な、生物学的生物から得られた炭素を意味する。
【0043】
リサイクル資源は、以前使用した製品から回収された炭素及び/又は水素を意味する。
【0044】
リサイクル炭素は、以前使用した製品から回収された炭素を意味する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、1つ以上の数値に先行する用語「約」は、数値±5%を意味する。「約」の言及により、本明細書中の値又はパラメータは、値又はパラメータそれ自体を指向する局面を含む(及び記載する)ことが、理解されるべきである。例えば、「約x」を示す記述は、xそれ自体の記載を含む。
【0046】
さらに、2つの値又はパラメータの「間」の言及は、本明細書中で、これらの2つの値又はパラメータそれ自体を含む局面を含む(及び記載する)ことが理解されるべきである。例えば、「x~y」(between X and Y)を指す記載は、「x」及び「y」それ自体の記載も含む。
【0047】
本明細書中で開示される質量分率は、100を蒸散することによって、wt%に変換されてもよい。
【0048】
有機酸の生成のためのプロセス
いくつかの局面において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を生成するためのプロセスが、提供される。いくつかの実施形態において、ベータ-ラクトン試薬は、以下の式によって表される:
【0049】
【化1】
(式中、R及びRは、H、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルからなる群より独立して選択され、式中、R及びRの両方は、同時にHではない。)
【0050】
本明細書中で記載されるプロセスにおいて使用されるベータ-ラクトン試薬のいくつかの変型では、R及びRのうち1つがHであり、R及びRの他方はアルキルである。1つの変型では、Rは、アルキルであり、Rは、Hである。
【0051】
いくつかの実施形態において、このプロセスは、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を少なくとも1つの反応容器に導入する工程;少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を、少なくとも1つの反応容器中で、少なくとも1つの不均一系触媒と接触させて、少なくとも1つの有機酸を生成する工程;及び少なくとも1つの有機酸を少なくとも1つの反応容器から取り出して、少なくとも1つの有機酸生成物を提供する。このようなプロセスは、ポリラクトン及びポリ有機酸を形成し得る副生成物を最小限にして、有機酸生成物を高収率で生成することができる。このような方法は、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を1工程反応で生成する。
【0052】
図1は、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を生成するプロセスを説明する。これは、ベータ-ラクトン試薬、ゼオライト不均一系触媒、及び任意選択的に重合化阻害剤を合わせることによって、アクリル酸を生じる。図1において、ベータープロピオラクトン102が、反応容器に導入され、ゼオライト不均一系試薬104及び重合体化阻害剤106と接触して、アクリル酸110を生成し、これを、反応容器から取り出す。いくつかの実施形態において、プロセス100は、適切に実施される。他の変型において、プロセス100は、溶媒の存在下で実施される。
【0053】
特定の実施形態において、異なるベータ-ラクトン試薬が、ベータープロピオラクトン102の代わりに、図1で例示されるプロセスで使用され得る。例えば、本明細書中で記載される置換されたベータープロピオラクトン化合物のいずれかが、使用されてもよい。本明細書中で記載されるプロセス及びシステムのいくつかの変型において、使用されるベータ-ラクトン試薬は、ベータープロピオラクトン試薬である。特定の変型において、ベータープロピオラクトン試薬は、置換されたベータープロピオラクトン化合物である。特定の変型において、ベータープロピオラクトン試薬は、少なくとも1つのアルキルで置換されたベータープロピオラクトン化合物である。1つの変型において、ベータープロピオラクトン試薬は、少なくとも1つのC1-10アルキルで置換されたベータープロピオラクトン化合物である。1つの変型において、ベータープロピオラクトン試薬は、少なくとも1つのメチル、エチル又はプロピルで置換された、ベータープロピオラクトン化合物である。上記の特定の変型において、ベータープロピオラクトン化合物は、化学的に可能な範囲まで、1つ以上の置換基で置換されている。1つの変型において、ベータープロピオラクトン化合物は、1つの置換基で置換されている。例えば、1つの変型において、ベータープロピオラクトン化合物は、1つのメチル基で置換されている。
【0054】
特定の好ましい実施形態において、プロセスは、少なくとも1つの反応容器について操作圧力を反応条件に合わせて、少なくとも1つの圧力制御反応容器を提供すること;反応条件まで少なくとも1つの反応容器を加熱して、温度制御反応容器を提供すること;少なくとも1つの不均一系触媒を少なくとも1つの反応容器に導入して、少なくとも1つの触媒充填反応容器を提供すること;及び/又は少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を溶媒中に溶解して、少なくとも1つの希釈ベータ-ラクトン試薬を提供することを、含む。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、プロセスは、少なくとも1つの反応容器に導入される少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の速度を制御することを含む。特定の好ましい実施形態において、プロセスは少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の添加の速度を制御して、望ましからざる生成物の生成を低減することを含む。特定の実施形態において、プロセスは、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の添加の速度を制御して、ポリ有機酸の生成を最小化するか又は抑制することを含む。
【0056】
少なくとも1つの反応容器に導入される少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の量は、当該分野で任意の好適な方法又は技術によって測定され得る。好適な方法又は技術は、生成の規模によって変動し得る。例えば、好適な方法又は技術は、ニードルバルブを介して少なくとも1つの反応容器へ測定する、実験室規模量の少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の添加から、1つ以上のバルブ及びマニホールド配置を通した大規模添加までの範囲であり得る。特定の実施形態において、固定床リアクター及び移動床リアクターは、0.4~2.1h-1又は0.9~1.6h-1の少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の相対的単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)の範囲の原料の量を有し得る。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明のプロセスは、取り出された少なくとも1つの有機酸を測定して、少なくとも1つの有機酸生成物を生成することを含み得る。特定の好ましい実施形態において、生成し取り出した少なくとも1つの有機酸の測定は、少なくとも1つの有機酸生成物の収量に影響し得る。特定の実施形態において、生成し取り出した少なくとも1つの有機酸の測定は、少なくとも1つの酸生成物の収量を増大し得る。いくつかの実施形態において、取り出した少なくとも1つの有機酸の測定は、少なくとも1つの有機酸の重合体化したがって、ポリ有機酸の形成を、最小化する。
【0058】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有機酸は、高温で、例えば、少なくとも100°C、少なくとも150°C、少なくとも200°C、少なくとも250°C又は少なくとも300°Cの温度で取り出され得、この温度は、100°C~300°C、200°C~250°C、及び又は250°C~300°Cの範囲であってもよい。
【0059】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有機酸生成物を生成するためのプロセスは、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の収量を有する。
【0060】
好ましい実施形態において、不飽和脂肪族カルボン酸である少なくとも1つの有機酸生成物を生成するプロセスは、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%の純度を有する。生成した有機酸生成物を例えば蒸留によって単離するいくつかの変型において、有機酸生成物は、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の純度を有する。特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有機酸生成物としては、少なくとも1つのビニル基及び少なくとも1つのカルボン酸基が挙げられる。
【0061】
有機酸を生成するためのリアクターシステム
他の局面において、少なくとも1つの有機酸生成物を少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から生成するために使用されるリアクターシステムが提供され、ここで、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、以下の式によって表される:
【0062】
【化2】
(式中、R及びRは、H、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルからなる群より独立して選択され、
式中、R及びRの両方は、同時にHではない。)
【0063】
本明細書中で記載されるリアクターシステムにおいて使用されるベータ-ラクトン試薬のいくつかの変系において、R及びRのうちの1つがHであり、R及びRの他方がアルキルである。1つの変型において、Rは、アルキルであり、RがHであり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、システムは、少なくとも1つの反応容器を含む。好ましい実施形態において、少なくとも1つの反応容器は、連続固定床リアクター又は流動相リアクターを含む。少なくとも1つの反応容器は、少なくとも1つの供給流からの物質を受け取るための内部容積、及び保持した物質を固相で、液相で及び気相で保持するために適した保持容積を、規定し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの反応容器は、少なくとも1つの保持容積において物質を加熱するために供給されるヒーターに連結され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの反応容器は、少なくとも1つのヒーターに連結され得る。
【0065】
いくつかの変型において、システムは、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を少なくとも1つの反応容器に出力する、ベータ-ラクトン供給源を備える。
【0066】
少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を生成するためのリアクターシステム及びプロセスは、ゼオライト、酸化金属、リン酸(固体リン酸-SPA)及び/又はヘテロポリ酸などの支持酸のような少なくとも1つの不均一系触媒を、使用する。特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの不均一系触媒は、シリカーアルミナ分子ふるい、特に、ホスフェート化合物によって改変されたものを、含む。本発明のために特に好適なタイプの触媒としては、アルカリ土類ホスフェート、支持リン酸塩、ハイドロキシアパタイトカルシウム、無機塩、酸化金属、及びゼオライトが挙げられる。好ましい実施形態において、少なくとも1つの不均一系触媒は、アルミナ-シリケート分子ふるいであり、そしてより好ましくは、ルイス又はブレンステッド酸性度を有するゼオライトである。ゼオライトは、水素形態であっても、又は陽イオン交換形態であってもよい。好適な陽イオンは、Na又はKなどのアルカリ金属;Ca2+、Mg2+、Sr2+、又はBa2+などのアルカリ土類陽イオン、ならびにZn2+、Cu、及びCu2+である。
【0067】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの不均一系触媒は、本発明の実施のために有益に利用され得る、ゼオライトフレームワークタイプを含む、広範なゼオライトから選択されるオライト触媒を含む。本発明において最も有益に使用され得る、異なるゼオライトフレームワークタイプは、MFI(pentasil)、FAU(faujasite)、MAU(mordenite)、BEA(beta)及びMWWゼオライト構造を含む。これらのクラスからの有用なゼオライトは、一次元(1D:ZSM-22)、二次元(2D:MCM-22andZSM-35)、又は三次元(3D:ZSM-5、ZSM-11、ZSM-5/ZSM-11、及びβ-結晶性立体構造を含み得る。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、ZSM-5、ゼオライトベータ、ゼオライトY、及びゼオライトAを含む。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、少なくとも30%の容積の微小孔を有する。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、30%~80%、又は60%~80%の範囲の微小孔を有する。いくつかの実施形態において、ゼオライトは、30%~45%の範囲の微小孔容積を有する、ZSM-5ゼオライト又はYゼオライトである。
【0068】
特定の実施形態において、不均一系触媒は、好ましくは、ナトリウム形態の、少なくとも50%、少なくとも70%もしくは少なくとも90%のカリウム陽イオンが利用可能な陽イオン交換部位によって交換されている、ZSM-5又はベータゼオライトである。特定の実施形態において、少なくとも1つの不均一系触媒は、好ましくは、ナトリウム形態の、少なくとも50%、少なくとも70%もしくは少なくとも90%のカリウム陽イオンが利用可能な陽イオン交換部位によって交換されている、ZSM-5であり、20~50又は20~30のSiO/Al2Oを有する。
【0069】
本発明の特定の好ましい実施形態において、ベータ-ラクトン試薬は、生物学的供給源、リサイクル供給源、再生供給源及び/又はさもなければ持続可能供給源由来の炭素原子からなる、高い生物含量を有し得る。このような供給源は、穀物残渣、木材残渣、草、公共固形廃棄物及び藻類が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、ベータ-ラクトン試薬は、任意の供給源由来の炭素から構成され得る。
【0070】
下記は、少なくとも1つの有機酸生成物を生成するための一工程反応を受けているベータ-ラクトン試薬の、非網羅的なリストである。
【0071】
【表1】
【0072】
特定の好ましい実施形態において、リアクターシステム及びプロセスは、少なくとも1つの有機酸生成物の生成のために減圧下で作動する連続固定床リアクターを備える、少なくとも1つの反応容器を含み得る。特定の実施形態において、連続固定床リアクターは、40Torr~250Torrの圧力で作動する。少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、蒸気相において、少なくとも1つの供給流入口を通って連続固定床リアクターに導入され得る。特定の実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、80°C~127°Cの温度で蒸発し、次いで、不均一系触媒を充填した連続固定床リアクターの少なくとも1つの供給流入口に導入される。連続固定床リアクターは、100°C~300°C、好ましくは150°C~250°Cの範囲の温度で作動する。
【0073】
特定の好ましい実施形態において、リアクターシステム及びプロセスは、不活性な溶媒又はガスで希釈した少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された連続固定床リアクターを備える少なくとも1つの反応容器を、含み得る。不活性な溶媒又はガスは、ヘキサン、窒素、アルゴン又はヘリウムであってもよい。連続固定床リアクターは、大気圧下、大気圧より低い圧力下、又は大気圧より高い圧力下で、作動し得る。いくつかの実施形態において、連続固定床リアクターは、250Torr~50psigの圧力で作動する。特定の好ましい実施形態において、連続固定床リアクターは、5psig~30psigの圧力及び100°C~300°C、又はより好ましくは150°C~250°Cの範囲の温度で作動する。
【0074】
特定の好ましい実施形態において、少なくともベータ-ラクトン試薬は、窒素又は不活性ガスの流において、リアクターに導入される。いくつかの変型において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬対不活性ガスの重量比は、0.05:1~約1.5:1である。いくつかの実施形態において、不活性ガスは、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を液相で含み、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の不活性ガス中の所望の濃度を達成するために必要な温度で維持される、連続固定床リアクターに導入される。次いで、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬と不活性ガスとの混合物は、連続固定床リアクターの供給流入口を通って導入される。他の実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を、連続固定床リアクターの入口近くで不活性ガスの流に注入し、この入口に導入する。好ましい実施形態において、不活性溶液又はガス中の少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の濃度は、10%~99%である。
【0075】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物への変換は、溶媒又は希釈剤の存在下で実施される。いくつかの実施形態において、選択した溶媒又は希釈剤(i)少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を溶解するか又は少なくとも部分的に溶解するが、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬と反応しないか、又は最小限にしか反応しない、溶媒又は希釈剤;又は(ii)少なくとも1つの有機酸生成物が、溶媒が反応容器に残っている間に蒸留され得るような、高い沸点を有する溶媒又は希釈剤、又は(i)及び(ii)の組み合わせから、選択される。いくつかの実施形態において、溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。例えば、溶媒は、高い沸点の極性非プロトン性溶媒であってもよい。1つの変型において、溶媒は、スルホランを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、約1:1の比で溶媒中に希釈され得る。溶媒は、使用前に、当該分野で公知の任意の好適な方法又は技術を用いて乾燥させられてもよい。本明細書中で記載される任意の溶媒の組み合わせもまた、使用され得る。
【0076】
特定の好ましい実施形態において、本発明のリアクターシステム及びプロセスは、1つより多くの節(section)を有するように構成される少なくとも1つの反応容器、及び節と節との間に導入された熱交換器を含み得る。特定の実施形態において、リアクターシステムは、1つ以上の節を有するように構成される少なくとも1つの反応容器を備え、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の全ては、少なくとも1つの反応容器内で、少なくとも1つの有機酸生成物に対し90%より高い、好ましくは95%より高い、最も好ましくは99%よりも高い選択性で変換される。他の実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の一部のみが、少なくとも1つの有機酸生成物に変換され、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の別の部分は、変換しないままに、少なくとも1つの反応容器を出る。特定の実施形態において、変換していない少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を、回収し、そして反応容器の1つ以上の節及び/又は1つ以上の他の反応容器の供給流入口に戻して、リサイクルすることができる。特定の実施形態において、1つより多くの節を有しそして節の間に挿入された熱交換器を有するように構成されている少なくとも1つの反応容器を含む少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、50%より大きく、好ましくは、75%より大きく、最も好ましくは80%より大きく、1つ以上の反応容器内の滞留時間は、0.1秒~2分間の範囲内である。
【0077】
特定の好ましい実施形態において、リアクターシステム及びプロセスは、管内に装填された不均一系触媒及びシェル側に供給された伝熱流体を有する管状シェルーチューブリアクターとして構成されて、温度制御及び反応の間に生じた熱の除去を容易にする、少なくとも1つの反応容器を含み得る。特定の実施形態において、管状シェルーチューブリアクターは、節ごとに分かれた(sectioned)管状シェルーチューブリアクターとして構成されてもよく、1つより多くの節を有しそして節の間に挿入された熱交換器を有する。特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の全ては、節ごとに分かれた管状シェルーチューブリアクター内で、少なくとも1つの有機酸生成物に対して90%より大きい、好ましくは95%より大きい、そして最も好ましくは99%より大きい選択性を有する。特定の実施形態において、節ごとに分かれた管状シェルーチューブリアクター内の少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の一部のみが少なくとも1つの有機酸生成物に変換し、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬の別の一部は、節ごとに分かれた管状シェルーチューブリアクターを、変換されないままに出る。いくつかの実施形態において、何らかの変換された少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を、回収し、そして1つ以上の節ごとに分かれた管状シェルーチューブリアクターの供給流入口に戻して、リサイクルすることができる。いくつかの実施形態において、管節ごとに分かれた状シェルーチューブリアクターの滞留時間は、0.1秒~2分間の範囲内である。
【0078】
いくつかの実施形態において、重合体化阻害剤が、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸への変換において使用される。いくつかの実施形態において、重合体化阻害剤は、ラジカル重合体化阻害剤、例えば、フェノチアジンであってもよい。
【0079】
図2は、リアクターシステム200の例示的実施形態を図示し、includinga反応容器210このシステムは、ベータープロピオラクトン試薬、ゼオライト不均一系触媒、及び重合体化阻害剤を受け取るように構成されている、内部容積を規定する。反応容器210は、ベータープロピオラクトン試薬、theゼオライト不均一系触媒、及び重合体化阻害剤を保持する保持容積を規定し、高温でアクリル酸を生成するように構成される。本発明のプロセスのために記載される温度のいずれかが、リアクターシステム200において使用され得る。例えば、1つの変型において、反応容器210は、170°C~200°Cの温度で有機酸を生成するように構成される。好適な反応容器としては、例えば、aParrリアクターが挙げられてもよい。
【0080】
いくつかの変型において、反応容器210は、添加されるベータープロピオラクトン試薬、ゼオライト不均一系触媒、及び重合体化阻害剤の添加の速度を制御するように構成される。例えば、ベータープロピオラクトン試薬と重合体化阻害剤との混合物は、溶媒中の触媒の混合物に対し、バルブの制御を用いてゆっくりと添加されていてもよい。
【0081】
再び図2を参照すると、反応容器210は、蒸気ポート214をさらに備える。いくつかの実施形態において、反応容器210は、少なくとも生成した有機酸の部分と連続的にはがれるように構成され、蒸気ポート214は、有機酸蒸気が収集容器220を通り抜けるように構成される。
【0082】
再び図2を参照すると、リアクターシステム200は、収集容器220から有機酸を受け取るように構成される、酸/塩基集塵器230をさらに備える。リアクターシステムの他の実施形態において、酸/塩基集塵器230は、省かれてもよい。さらに、図2を参照すると、要素212、216及び222は、浸漬チューブである。
【0083】
図3は、固定床リアクターを含む少なくとも1つの反応容器を備えたリアクターシステムを説明する。図3において、ベータープロピオラクトン試薬は、溶媒と任意選択可能に混合されてもよく、供給線312を介してリアクターシステムに侵入してもよい。各々触媒の多数の管状床を保持する一対の固定床リアクター310及び313は、ベータープロピオラクトン試薬の添加を供給線312から制御された速度で受け取るように構成される。管状形態の固定床リアクターは、反応の間に触媒床から熱を除去するために好ましいが、必要ではなく、他のタイプの固定床リアクター及び配置が、使用されてもよい。2つのリアクターの描写は、説明目的だけのものであり、プロセスは、1つの固定床リアクター又は任意の数の固定床リアクターを使用してもよい。入力線316は、任意選択可能に、さらなるプロセス入力流を供給してもよく、例えば、線324の内容物との混合物への希釈剤を供給して、リアクター入力流326を作ってもよい。
【0084】
リアクター入力流326は、過熱を受けて、蒸気相供給流を生み出す。熱交換器320は、熱入力を、リアクター入力流326に供給する。熱は、内部プロセス流由来であっても、又は外部熱源由来であってもよい。加熱は、リアクター入力流が、固定床リアクター310に入る前に完全な蒸気相となることを、十分に補償する。
【0085】
ベータープロピオラクトン試薬は、少なくとも部分的に、固定床リアクター310及び固定床リアクター312において、有機酸に変換される。転移線330は、ベータープロピオラクトン試薬に添加された任意のさらなる入力物質と共に未変換のベータープロピオラクトン試薬及び有機酸を含む中間流を、固定床リアクター312まで通過する。任意選択可能な熱交換器332が、固定床リアクター312に侵入する前に、代表的には熱除去によって、中間流の熱を制御して調整するために、加えられてもよい。流出流334は、固定床リアクター312から回収される。リアクター流出流334は、contains任意の未反応ベータープロピオラクトン試薬、有機酸及びリアクター入力流326に添加されていてもよい任意のさらなる入力物質を含む。
【0086】
代表的には、生成物分離節(示さず)は、流出流334を受け取って、有機酸生成物を回収する。有機酸生成物の回収とともに、分離節は、多くの場合、未反応ベータープロピオラクトン試薬(通常、リサイクルする)及び希釈剤ならびに供給と共に添加されていてもよい他の添加剤流をも回収し、同時に、望まない副生成物を排除してもよい。
【0087】
図4は、移動床リアクターを含む少なくとも1つの反応容器を含むリアクターシステムを説明する。より具体的には、図4は、不均一系触媒416の床を保持する上部反応節412を規定する及び不均一系触媒418の床を保持する下部反応節414を規定する反応容器410を説明し、両移動床リアクター床は、反応節それぞれを横切る反応物の放射状流れに配置される。
【0088】
流体の流れに関して、リアクター容器410は、ベータープロピオラクトン試薬を含む、合わせたベータープロピオラクトン試薬供給流を受け取るように構成される。供給線420は、ベータープロピオラクトン試薬を送達し、及び添加剤線426は、混合供給422への混合されるための任意の添加剤を送達し、これは、混合供給を加熱するように構成されたヒーター424を通過して、全ての蒸気相混合供給流のリアクター節412への送達を確実にする。混合供給は、不均一系触媒を加熱するために供給された熱交換容器430を通り、触媒転移線450を介して移動床リアクター容器410に入る。混合供給は、不均一系触媒床416の周りに配置される環状分布空間432へと下って流れる。混合供給が床416を通過した後、中央パイプ436は、アクリル酸、未反応混合供給及び何らかの残留した添加剤を含む、上部リアクター流出を、容器から内部ヒーター440への線438を介した転移のために、収集する。内部ヒーター440は、第1リアクター節流出の温度を上げ、加熱した上部リアクター流出を線428を介して下部リアクター節414に戻す。環状空間442は、加熱した上部リアクター流出を下部不均一系触媒床418の周りに配置する。下部リアクター流出は、中央パイプ444を通って、環状空間446に入る。線448は、下部リアクター流出を回収し、同様に、アクリル酸生成物の回収及び未返還のベータープロピオラクトン試薬の任意選択可能なリサイクル、添加剤の回収及び副生成物の除去を通す。
【0089】
図4において、不均一系触媒は、触媒除去線443によって反応容器410の底から定期的に取り出され、触媒転移線450により、反応容器410の上部にて置き換えられる。不均一系触媒は、触媒流れ線460及び収集パイプ452からこぼれることによって、反応容器を通って流れ、環状触媒床418から不均一系触媒を取り除く。触媒が、不均一系触媒の床412からこぼれると、転移パイプ454は、不均一系触媒の床416からの不均一系触媒を加え、不均一系触媒を不均一系触媒の床418の周りに配置する。次に、不均一系触媒が不均一系触媒の床416からこぼれると、転移パイプ456は、これを、熱交換器430の熱交換節458から除去した均一系触媒と置き換え、新鮮な及び/又は再生した触媒を、触媒転移線450から受け取る。
【0090】
特定の実施形態において、反応容器410は、連続的再生あり又はなしで作動し得る。後者の場合、脱活性化したか部分的に脱活性化した触媒は、触媒流れ線460によって除去され、捨てられてもよく、又は、内部又は外部に配置されている、遠方の、使用済み触媒の再活性化及び再使用のための再生施設に送られてもよい。触媒転移線450は、触媒がバイアル触媒流れ線460から取り除かれた際に、再活性化したか又は新鮮な触媒を移動床リアクター容器410に供給するために使用される。
【0091】
図4は、少なくとも部分的に脱活性化した触媒を反応容器420から再活性化触媒線471を介して受け取り、再活性化した、任意選択可能に処理された触媒を、触媒転移線450を介して移動床リアクター容器410に戻す、再生システム462を説明する。触媒の再生システム462への転移は、触媒の、上部制御バルブの開閉の際に、線443を通ったロックホッパー464への、断続的な通過によって始まる。別の制御バルブ463は、ロックホッパー464からリフト容器466への触媒の動きを調節する。不均一系触媒が、再活性化触媒線471を通る再生転移のために準備が整った場合、制御バルブ463は閉じられ、リフト気体が線468を介してリフト容器470に入り、リフト気体管470によってリフト容器466の底に運ばれる。リフト気体は、触媒を、再生システム462の触媒ホッパー472まで上方に運ぶ。リフト気体は、容器472中の触媒から解離して、再生節479から導管475によって移動する。
【0092】
不均一系触媒は、再生システム462の上から下まで断続的に流れることによって、再生される。触媒の断続的通過は、線491におけるバルブ490の開口によって開始し、ホッパー472からの触媒の、線473を通って燃焼容器476の上部チャンバー477への下方通過をもたらし、このとき、触媒は、燃焼容器476の下部488へとこぼれて、ロックホッパー492内へこぼれた触媒と置き換わる。バルブ491は、ロックホッパー492を、触媒のリフト容器496への転移のために、隔離する。触媒は、以前に記載されるように、リフト容器496から線450に、バルブ494を閉めてリフト気体をリフト容器496に注入することによって、線447を介して移動する。
【0093】
特定の実施形態において、再生システムは、再生気体を通過させ、1つ以上の処理気体及び/又はパージ気体を、再生節を通して任意選択可能に通過させてもよい。バッフル467は、燃焼容器を上部チャンバー477と下部チャンバー488とに分けた。一時再生気体が、線478を介して再生節462を通り、上部チャンバー477の底を通過し、脱活性化触媒の床482を横切る。線474は、再生気体を、上部チャンバー477の上部から取り除く。さらなる再生気体又は処理気体は、線487を通って下部チャンバー488の底に入る。さらなる気体流、代表的には処理気体もまた、線461を介して下部接触ゾーン489に侵入し得る。線479は、気体を、バッフル467の下の下部チャンバー488から取り除く。下部接触ゾーン489は、燃焼容器476と連絡しているので、導管479もまた、下部接触ゾーン489に入った気体を取り除く。
【0094】
特定の好ましい実施形態において、本発明のリアクターシステム及びプロセスは、窒素などの不活性ガスで希釈された少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を受け取るように構成された流動相リアクターを含む、少なくとも1つの反応容器を含む。流動相リアクターは、窒素などの不活性ガスの流れの中で、不均一系触媒が沈殿するか/流体化する、少なくとも1つの反応ゾーンを含む。流体化床リアクターは、大気圧にて作動しても、大気圧より低い圧力下で作動しても、又は大気圧より高い圧力下で作動してもよい。特定の実施形態において、流体化床リアクターは、250Torr~50psig、好ましくは5psig~30psigの圧力において作動する。特定の実施形態において、流体化床リアクターは、100°C~300°C、好ましくは150°C~250°Cの範囲の温度で作動する。窒素などの不活性ガスが、流動化床リアクターに導入されて、不均一系触媒を流動化する。流動化床リアクターに入る気体の温度は、所望の温度にてリアクターを維持するために調整されてもよい。好ましい実施形態において、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬少なくとも1つの供給流入口を介して、流動化床リアクターの底に導入され、少なくとも1つの有機酸生成物、副生成物、及び不活性ガスが、流体化床リアクターの上部から出る。いくつかの実施形態において、不活性ガスは、少なくとも1つの有機酸生成物から分離され、流動化床リアクターの少なくとも1つの供給流入口にリサイクルされる。いくつかの実施形態において、流動化床リアクターは、再生ゾーンを含むように構成されてもよく、ここで、不均一系触媒は、再生されて、その後の反応に再利用される。不均一系触媒は、空気の流れ又は薄い酸素において再生されて、付着したコークを除去することができる。いくつかの実施形態において、不均一系触媒の脱活性化は、不均一系触媒の表面上に付着する有機物質、孔の中及びゼオライトの表面上のコークの生成及び/又は極性酸性化合物の蓄積の少なくとも1つから、時間経過で生じる。不均一系触媒の組成は、作動条件とともに、まず温度が、コーク形成により不均一系触媒脱活性化の速度を決定する。高温での燃焼によるコーク及び有機物質の除去は、不均一系触媒の活性を効果的に取り戻すために、組み込まれてもよい。再生は、代表的に、450°C以上の温度で起こる。好ましくは、再生は、450°C~550°Cの範囲である。
【0095】
図5は、流動相リアクター10を備える少なくとも1つの反応容器を含むリアクターシステムを説明する。図5は、ライザー20と呼んでもよい触媒接触ゾーンである希釈相転移ゾーンを含む、流動相リアクター10を示す。流動相リアクター10は、反応ゾーン12においてベータープロピオラクトン試薬と接触する流動化触媒のために形成される。流動相リアクター10において、ベータ-ラクトン供給流は、反応ゾーン12において不均一系触媒と接触する。特定の実施形態において、再生装置導管18から入ってきた再生した不均一系触媒は、ベータ-ラクトン及び1つ以上の希釈剤流動ガス、ならびに本明細書中で記載される他の添加剤を含む、ベータ-ラクトン試薬混合の供給流と接触する。特定の好ましい実施形態において、再生した不均一系触媒は、合わせられた供給より実質的に高い温度であり、再生した不均一系触媒との接触による供給の加熱は、さらなる流動化を供給して不均一系触媒をリフトし、流動相リアクター12のライザー20を持ち上げる。再生装置導管18は、下流において、再生装置14と連絡する。ライザー20は、下流に入口19を有し、再生装置導管18と連絡している。再生装置導管19は、FCCライザー20と下端で連絡している。再生装置の節18及び19の間に置かれた制御バルブは、再生された触媒導管の外の不均一系触媒の流れを調節し、再生導管の節18の上の供給流の何らかの実質的な流れを抑制する圧力低下を供給する。
【0096】
図5が説明する実施形態において、リサイクル触媒導管19及びライザー入口管23から入った使用済みの割れた触媒が、使用済みの割れた触媒が再生を受けることなく、流動相リアクター12の混合ベータープロピオラクトン供給流ライザー20と接触する。ライザー入口管23の上部のバルブは、ライザー入口管23を通る触媒の流れを調節する。使用済みの割れた触媒リサイクルは、流動相リアクター12における不均一系触媒の温度及び/又は活性のさらなる制御を可能にし、流動相リアクター12における不均一系触媒のコーク濃度を増大して、再生装置温度及び不均一系触媒再生の調節を補助する。
【0097】
触媒導管を通る使用済み不均一系触媒のリサイクルもまた使用されて、流動相リアクターにおける触媒対供給比を増大する。いくつかの実施形態において、触媒対供給重量比は、5~20、好ましくは、10~15の範囲である。いくつかの実施形態において、ベータープロピオラクトン供給の一部は、上昇分配器16を通ってライザー20に供給され、これは、不均一系触媒がライザー20へとのぼっていくときに、ベータープロピオラクトン試薬の変換を維持するために使用され得る。
【0098】
再生導管19は、下流において、ライザー出口25と連絡する。再生導管19は、ライザー管23により、リサイクル導管の出口端でライザー20に接続する。リサイクル導管19は、再生装置14を下流においてライザー出口25と連絡することによってバイパスし、ライザー管23は、リサイクル導管と下流で間接的に連絡している。結果として、リサイクル導管19を入る使用済みの割れた触媒が、再生装置14に入る前に、通ってライザー20に戻る。リサイクル導管19は、再生装置14と直接的な連絡は持たない。
【0099】
ライザー20における生成物ガスを含む有機酸及び使用済みの不均一系触媒は、この後、ライザー出口25からライザー出口を含む解離チャンバー27内に捨てられる。アクリル酸生成物を含む気流は、粗切断分離装置26を用いて、解離チャンバー27内の不均一系触媒から解離される。サイクロン分離装置は、流動相リアクター反応チャンバー22において、1又は2段階のサイクロン28を備え得、不均一系触媒を有機酸生成物からさらに分離する。気体を含む生成物は、流動相リアクター反応チャンバー22から、下流生成物分離への輸送のために、出口31に通って出ていき、アクリル酸を回収すること、ベータープロピオラクトン試薬、希釈剤および添加剤をリサイクルすることを、容易にする。別の実施形態において、リサイクル導管19及び再生装置導管18は、下流において、解離チャンバー27に連絡している。ライザー20を離れる気体を含む生成物の出口温度は、325°C未満でなければならず、好ましくは、300°C未満である。
【0100】
気体を含む生成物からの分離後、不均一系触媒は、ストリッピング節34に分類され、ここでは、不活性ガスがノズル35を通って注射されて、何らかの残留した生成物蒸気又はガスをパージするように配置される。ストリッピング操作後、使用済みの割れた触媒の一部が、使用済み触媒導管36を通って、触媒再生装置14に供給される。触媒再生装置14は、下流において、ライザー20と、具体的にはライザー出口25と連絡してもよい。特定の実施形態において、使用済みの不均一系触媒の一部は、前に説明した通り、触媒導管19からライザー20まで通ってリサイクルされる。
【0101】
排煙は、代表的に二酸化炭素、水蒸気、および微量の一酸化炭素を含む。触媒のタイプ及び浸食特性に依存して、排煙はまた、少量の非常に微細な触媒粒子(代表的に、0.2~2ミクロンの範囲)を含み、いくつかの用途においては、排煙からこのような粒子を取り除くためにさらなる処理が必要とされる。
【0102】
図5は、不均一系触媒の再生のための、燃焼装置41を不均一系触媒の再生のための一次ゾーンとして有する、コークの燃焼及び使用済みの割れた触媒の表面からの他の揮発性化合物の取り除きによる、再生容器14を図示する。本発明の他の実施形態は、他の構成及び配置の再生装置を使用し得る。再生容器14において、酸素含有気体、例えば空気の流を、線37から分配装置38を通って導入して上に燃焼したコークが付着したコーク化した触媒に接触させ、再生した触媒及び燃焼の生成物及び排煙について一般に呼ばれるものを含む気体流を供給する。触媒及び空気は、燃焼装置41を通って、再生容器14内に配置される燃焼装置ライザー40から上方に流れる。少なくとも部分的に再生された触媒は、解離装置42を通って捨てられて、排煙からの触媒の初期分離に効果を及ぼす。サイクロン44及び46における一連のサイクロン分離工程は、再生された触媒と排煙とのさらなる分離に、影響を及ぼす。サイクロンは、サイクロンから下方に伸びDiplegsと呼ばれるその導管内に分離される触媒を指向する。比較的触媒が非含有である排煙は、サイクロン44、46を出て、線48を通って再生装置容器14の外に出る。再生した不均一系触媒は、リサイクルされて、再生された触媒導管18を通り、リアクターライザー20に戻る。
【0103】
実施形態の列挙
以下に列挙した実施形態は、本発明のいくつかの局面を代表する。
【0104】
1. 少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を直接に生成するためのプロセスであって、ここで、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、以下の式:
【0105】
【化3】
(式中、R及びRは、H、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルからなる群より独立して選択され、
及びRの両方が同時にHではない)
で表され、
このプロセスは、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を少なくとも1つの反応容器に導入する工程;少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を少なくとも1つの反応容器中で少なくとも1つの不均一系触媒と接触させて、少なくとも1つの有機酸を生成する工程;及び、少なくとも1つの有機酸を少なくとも1つの反応容器から取り出して、少なくとも1つの有機酸生成物を供給する工程を、含む。
【0106】
2. 不均一系触媒は、アルカリ土類ホスフェート、支持リン酸塩、ハイドロキシアパタイトカルシウム、無機塩、酸化金属、及びゼオライト、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される微多孔性固体である、実施形態1のプロセス。
【0107】
3. 不均一系触媒は、ルイス又はブレンステッド酸性度を有するアルミナーシリケート分子ふるいを含む、実施形態1のプロセス。
【0108】
4. 不均一系触媒は、ゼオライトを含む、実施形態1のプロセス。
【0109】
5. 不均一系触媒は、ゼオライトY、ベータゼオライト、ZSM-5、ZSM-11ZSM-22、MCM-22、ZSM-35、ゼオライトA、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態4のプロセス。
【0110】
6. ゼオライト触媒は、水素形態であっても、又は金属陽イオン交換形態であってもよい、実施形態2のプロセス。
【0111】
7.金属陽イオンは、Na、K、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Cuである、実施形態6のプロセス。
【0112】
8. 少なくとも1つの有機酸生成物は、連続的に生成される、実施形態1のプロセス。
【0113】
9. 少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、溶媒と共に少なくとも1つの反応容器に導入される、実施形態1のプロセス。
【0114】
10. 少なくとも1つの反応容器が、減圧にて作動する連続固定床リアクターをさらに備える、実施形態1のプロセス。
【0115】
11. 少なくとも1つの反応容器が、不活性ガスで希釈した少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された連続固定床リアクターをさらに備える、実施形態1のプロセス。
【0116】
12. 少なくとも1つの反応容器が、窒素などの不活性ガスで希釈した少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された流動相リアクターをさらに備える、実施形態1のプロセス。
【0117】
13. 少なくとも1つの反応容器は、温度制御及び反応の間に生じる熱の除去を容易にするために、管に装填された不均一系触媒及びシェル側に供給された伝熱流体を有する管状シェルーチューブリアクターをさらに備える、実施形態1のプロセス。
【0118】
14. ベータ-ラクトン試薬は、0.1h-1~2.1h-1の単位時間当たりの重量空間速度で供給される、実施形態1のプロセス。
【0119】
15. ベータ-ラクトン試薬は、0.3h-1~0.9h-1の単位時間当たりの重量空間速度で供給される、実施形態1のプロセス。
【0120】
16. 少なくとも1つの有機酸生成物は、連続的に単離される、実施形態1のプロセス。
【0121】
17. 少なくとも1つの有機酸生成物は、少なくとも50%の収量で生成される、実施形態1のプロセス。
【0122】
18. 少なくとも1つの有機酸生成物100℃~300℃の温度で生成される、実施形態1のプロセス。
【0123】
19. 少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬から少なくとも1つの有機酸生成物を直接に生成するリアクターシステムであって、ここで、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬は、以下の式:
【0124】
【化4】
(式中、R及びRは、H、アルキル、
アルケニル、アルコキシ、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルからなる群より独立して選択され、
及びRの両方は、同時にHではない)
によって表され、
ここで、リアクターシステムは:
少なくとも1つの供給流入口及び少なくとも1つの生成物流出口を規定する連続固定床リアクター又は流動相リアクターを構成する少なくとも1つの反応容器を備え、少なくとも1つの反応容器は、少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を少なくとも1つの供給流入口から受け取るための内部容積をさらに規定し、そして少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を固相で、液相で及び気相で保持するための保持容積を備える、リアクターシステム。
【0125】
20. 少なくとも1つの反応容器は、固定床リアクターをさらに含む、実施形態19のリアクターシステム。
【0126】
21. 少なくとも1つの反応容器は、減圧下で少なくとも1つの有機酸生成物を生成するために操作される固定床リアクターをさらに含む、実施形態19のリアクターシステム。
【0127】
22. 不活性な溶媒又はガスで希釈された少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された連続固定床リアクターをさらに備える、実施形態19のリアクターシステム。
【0128】
23. 少なくとも1つの反応容器は、不活性ガスで希釈した少なくとも1つのベータ-ラクトン試薬を受け取るために構成された流動相リアクターをさらに備える、実施形態19のリアクターシステム。
【0129】
24. 少なくとも1つの反応容器は、1つ以上のヒーターによって分離された2つ以上の部分をさらに備える、実施形態19のリアクターシステム。
【0130】
25. 少なくとも1つの反応容器は、温度制御及び反応の間に生じる熱の除去を容易にするために、管に装填された不均一系触媒及びシェル側に供給された伝熱流体を有する管状シェルーチューブリアクターをさらに備える、実施形態19のリアクターシステム。
【0131】
26. 少なくとも1つの反応容器は、少なくとも1つの不均一系触媒の再生のための再生容器をさらに備える、実施形態19のリアクターシステム。
【実施例
【0132】
以下の実施例は、説明のためのものでしかなく、本開示の任意の局面を限定するとは決してない。
【0133】
実施例1
ゼオライトを用いたβ―メチルーβ―プロピオラクトンのトランスー2-ブテン酸への変換
【0134】
本実施例は、ゼオライトを用いて、以下に例示するβ―メチルーβ―プロピオラクトン試薬からのトランスー2-ブテン酸の生成を記載する。
【0135】
【化5】
【0136】
β-メチル-β-プロピオラクトン(3.0g)及びフェノチアジン(9.0mg)の混合物を、約165°Cにて50psiの一酸化炭素により、スルホラン(40.0g)及びゼオライトY水素(20.0g)の混合物にニードルバルブを用いて添加した。ゼオライトY水素(80:1モル比SiO/Al、粉末S.A.780m/g)を、真空下で約100℃にて、使用1日前に乾燥させた。フェノチアジンを、使用した重合体化阻害剤である。スルホランは、使用した溶媒であり、これを、使用前に3Å分子ふるい上で乾かす。β-メチル-β-プロピオラクトンをニードルバルブを用いて約8.6分間かけてゆっくりと加える。反応混合物を、約170度まで加熱し、トランス-2-ブテン酸を生成する。
【0137】
反応を、赤外線分光法(IR)によってモニタリングする。反応は、β-メチル-β-プロピオラクトンがIRによって検出されなくなったときに完了する。
【0138】
次いで、ゼオライトを、反応混合物から濾別し、得られた混合物のサンプルを、核磁気共鳴(NMR)分析のために、重水素(DO)及びクロロホルム(CDCl)中に溶解する。
【0139】
実施例2
β-メチル-β-プロピオラクトンからトランス-2-ブテン酸へのH-ZSM-5を用いた蒸気相変換
【0140】
β-メチル-β-プロピオラクトンのトランス-2-ブテン酸への蒸気相変換を、H-ZSM-5(Si:Al=38、直径2mm、表面積>=250m/g)を触媒として用いて、充填床リアクターにおいて実施する。11グラムのH-ZSM-5触媒を、ジャケット付きステンレススチール316パイプリアクター(ID 0.5インチ)内に装填し、触媒を、ガラスビーズカラム内に支持する(ステンレススチールウールを、ガラスビーズの下及び上に置く)。多点熱電対を、リアクターの中心を通して挿入し、リアクタージャケットを通して熱い油を循環させて、所望のリアクター温度を維持する。β-メチル-β-プロピオラクトンを、サチュレーターを用いてリアクターに導入する:28g/hrの速度のNを、液体β-メチル-β-プロピオラクトンをa=94°Cで含む容器の底に流入させ、それにより、β-メチル-β-プロピオラクトン供給速度を5g/hrにする。リアクター及びサチュレーターの圧力を、9.5psigに維持する。反応生成物を、約10℃ジクロロメタンまで冷やし、反応生成物のジクロロメタン中溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。サチュレーターとリアクターとの間の線ならびにリアクターとアブソーバーとの間の線を、β-メチル-β-プロピオラクトンからトランス-2-ブテン酸への濃縮を防ぐためにヒートトレースする。反応を、約210°Cのリアクター温度にて行う。
【0141】
実施例3
ゼオライトを用いる3-メチルオキセタン-2-オンからメタクリル酸への変換
【0142】
本実施例は、ゼオライトを用いる3-メチルオキセタン-2-オンからのメタクリル酸の生成を記載する。
【0143】
【化6】
【0144】
3-メチルオキセタン-2-オン(3.0g)とフェノチアジン(9.0mg)との混合物を、ニードルバルブを用いて、スルホラン(40.0g)とゼオライトY水素(20.0g)との混合物に165°Cにて50psiの一酸化炭素を用いて、添加する。ゼオライトY水素(80:1モル比SiO/Al、粉末S.A.780m/g)を、真空下で100℃にて使用の1日前に乾かす。フェノチアジンは、使用する重合体化阻害剤である。スルホランは、使用する溶媒であり、3Å分子ふるい上で使用前に乾かす。3-メチルオキセタン-2-オンを、約8.6分間かけてニードルバルブを用いてゆっくりと添加する。この反応混合物を、170°Cまで加熱して、メタクリル酸を生成する。
【0145】
反応を、赤外線分光法(IR)によってモニタリングする。反応は、3-メチルオキセタン-2-オンがIRによって検出されなくなったときに完了する。
【0146】
次いで、ゼオライトを、反応混合物から濾別し、得られた混合物のサンプルを、核磁気共鳴(NMR)分析のために、重水素(DO)及びクロロホルム(CDCl)中に溶解する。
【0147】
実施例4
H-ZSM-5を用いる3-メチルオキセタン-2-オンからメタクリル酸への変換
【0148】
3-メチルオキセタン-2-オンからメタクリル酸への蒸気相変換を、H-ZSM-5(Si:Al=38、直径2mm、表面積>=250m/g)を触媒として用いて、充填床リアクターにおいて実施する。11グラムのH-ZSM-5触媒を、ジャケット付きステンレススチール316パイプリアクター(ID 0.5インチ)内に装填し、触媒を、ガラスビーズカラム内に支持する(ステンレススチールウールを、ガラスビーズの下及び上に置く)。多点熱電対を、リアクターの中心を通して挿入し、リアクタージャケットを通して熱い油を循環させて、所望のリアクター温度を維持する。3-メチルオキセタン-2-オンを、サチュレーターを用いてリアクターに導入する:28g/hrの速度のNを、液体3-メチルオキセタン-2-オンをa=94°Cで含む容器の底に流入させ、それにより、3-メチルオキセタン-2-オン供給速度を5g/hrにする。リアクター及びサチュレーターの圧力を、9.5psigに維持する。反応生成物を、約10℃ジクロロメタンまで冷やし、反応生成物のジクロロメタン中溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。サチュレーターとリアクターとの間の線ならびにリアクターとアブソーバーとの間の線を、3-メチルオキセタン-2-オンからメタクリル酸への濃縮を防ぐためにヒートトレースする。反応を、約210°Cのリアクター温度にて行う。
【0149】
実施例5
ゼオライトを用いるβ-クロロメチル-β-プロピオラクトンから4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸への変換
【0150】
本実施例は、ゼオライトを用いるベータープロピオラクトン試薬からの4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸への生成を記載する。
【0151】
【化7】
【0152】
β-クロロメチル-β-プロピオラクトン(3.0g)とフェノチアジン(9.0mg)との混合物を、ニードルバルブを用いて、スルホラン(40.0g)とゼオライトY水素(20.0g)との混合物に165°Cにて50psiの一酸化炭素を用いて、添加する。ゼオライトY水素(80:1モル比SiO/Al、粉末S.A.780m/g)を、真空下で100℃にて使用の1日前に乾かす。フェノチアジンは、使用する重合体化阻害剤である。スルホランは、使用する溶媒であり、3Å分子ふるい上で使用前に乾かす。β-クロロメチル-β-プロピオラクトンを、約8.6分間かけてニードルバルブを用いてゆっくりと添加する。この反応混合物を、170°Cまで加熱して、4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸を生成する。
【0153】
反応を、赤外線分光法(IR)によってモニタリングする。反応は、β-クロロメチル-β-プロピオラクトンがIRによって検出されなくなったときに完了する。
【0154】
次いで、ゼオライトを、反応混合物から濾別し、得られた混合物のサンプルを、核磁気共鳴(NMR)分析のために、重水素(DO)及びクロロホルム(CDCl)中に溶解する。
【0155】
実施例6
β-クロロメチル-β-プロピオラクトンから4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸へのH-ZSM-5を用いた蒸気相変換
【0156】
β-クロロメチル-β-プロピオラクトンの4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸への蒸気相変換を、H-ZSM-5(Si:Al=38、直径2mm、表面積>=250m/g)を触媒として用いて、充填床リアクターにおいて実施する。11グラムのH-ZSM-5触媒を、ジャケット付きステンレススチール316パイプリアクター(ID 0.5インチ)内に装填し、触媒を、ガラスビーズカラム内に支持する(ステンレススチールウールを、ガラスビーズの下及び上に置く)。多点熱電対を、リアクターの中心を通して挿入し、リアクタージャケットを通して熱い油を循環させて、所望のリアクター温度を維持する。β-クロロメチル-β-プロピオラクトンを、サチュレーターを用いてリアクターに導入する:28g/hrの速度のNを、液体4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸をa=94°Cで含む容器の底に流入させ、それにより、4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸供給速度を5g/hrにする。リアクター及びサチュレーターの圧力を、9.5psigに維持する。反応生成物を、約10℃ジクロロメタンまで冷やし、反応生成物のジクロロメタン中溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。サチュレーターとリアクターとの間の線ならびにリアクターとアブソーバーとの間の線を、β-クロロメチル-β-プロピオラクトンから4-クロロ-シス/トランス-2-ブテン酸への濃縮を防ぐためにヒートトレースする。反応を、約210°Cのリアクター温度にて行う。
【0157】
実施例7
ゼオライトを用いるβ-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンから4、4、4-トリフルオロ-トランス/シス-2-ブテン酸への変換
【0158】
本実施例は、ゼオライトを用いるβ-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンからの4、4、4-トリフルオロ-トランス/シス-2-ブテン酸の生成を記載する。
【0159】
【化8】
【0160】
β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトン(3.0g)とフェノチアジン(9.0mg)との混合物を、ニードルバルブを用いて、スルホラン(40.0g)とゼオライトY水素(20.0g)との混合物に165°Cにて50psiの一酸化炭素を用いて、添加する。ゼオライトY水素(80:1モル比SiO/Al、粉末S.A.780m/g)を、真空下で100℃にて使用の1日前に乾かす。フェノチアジンは、使用する重合体化阻害剤である。スルホランは、使用する溶媒であり、3Å分子ふるい上で使用前に乾かす。β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンを、約8.6分間かけてニードルバルブを用いてゆっくりと添加する。この反応混合物を、170°Cまで加熱して、4、4、4-トリフルオロ-トランス/シス-2-ブテン酸を生成する。
【0161】
反応を、赤外線分光法(IR)によってモニタリングする。反応は、β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンがIRによって検出されなくなったときに完了する。
【0162】
次いで、ゼオライトを、反応混合物から濾別し、得られた混合物のサンプルを、核磁気共鳴(NMR)分析のために、重水素(DO)及びクロロホルム(CDCl)中に溶解する。
【0163】
実施例8
β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンから4、4、4-トリフルオロ-シス/トランス-2-ブテン酸へのH-ZSM-5を用いた蒸気相変換
【0164】
β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンの4、4、4-トリフルオロ-シス/トランス-2-ブテン酸への蒸気相変換を、H-ZSM-5(Si:Al=38、直径2mm、表面積>=250m/g)を触媒として用いて、充填床リアクターにおいて実施する。11グラムのH-ZSM-5触媒を、ジャケット付きステンレススチール316パイプリアクター(ID 0.5インチ)内に装填し、触媒を、ガラスビーズカラム内に支持する(ステンレススチールウールを、ガラスビーズの下及び上に置く)。多点熱電対を、リアクターの中心を通して挿入し、リアクタージャケットを通して熱い油を循環させて、所望のリアクター温度を維持する。β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンを、サチュレーターを用いてリアクターに導入する:28g/hrの速度のNを、液体4、4、4-トリフルオロ-シス/トランス-2-ブテン酸をa=94°Cで含む容器の底に流入させ、それにより、β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトン供給速度を5g/hrにする。リアクター及びサチュレーターの圧力を、9.5psigに維持する。反応生成物を、約10℃ジクロロメタンまで冷やし、反応生成物のジクロロメタン中溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。サチュレーターとリアクターとの間の線ならびにリアクターとアブソーバーとの間の線を、β-トリフルオロメチル-β-プロピオラクトンから4、4、4-トリフルオロ-シス/トランス-2-ブテン酸への濃縮を防ぐためにヒートトレースする。反応を、約210°Cのリアクター温度にて行う。
【0165】
実施例9
ゼオライトを用いる種々のβ-プロピオラクトン試薬から有機酸への変換
本実施例は、ゼオライトを用いて種々のβ-プロピオラクトン試薬から有機酸を生成するための例示的な方法を記載する。例示的な反応スキームを、以下の実施例10に示す。
【0166】
β-プロピオラクトン試薬(3.0g)とフェノチアジン(9.0mg)との混合物を、ニードルバルブを用いて、スルホラン(40.0g)とゼオライトY水素(20.0g)との混合物に165°Cにて50psiの一酸化炭素を用いて、添加する。ゼオライトY水素(80:1モル比SiO/Al、粉末S.A.780m/g)を、真空下で100℃にて使用の1日前に乾かす。フェノチアジンは、使用する重合体化阻害剤である。スルホランは、使用する溶媒であり、3Å分子ふるい上で使用前に乾かす。β-プロピオラクトン試薬を、約8.6分間かけてニードルバルブを用いてゆっくりと添加する。この反応混合物を、170°Cまで加熱して、有機酸を生成する。
【0167】
反応を、赤外線分光法(IR)によってモニタリングする。反応は、β-プロピオラクトン試薬がIRによって検出されなくなったときに完了する。
【0168】
次いで、ゼオライトを、反応混合物から濾別し、得られた混合物のサンプルを、核磁気共鳴(NMR)分析のために、重水素(DO)及びクロロホルム(CDCl)中に溶解する。
【0169】
実施例10
種々のβ-プロピオラクトン試薬から有機酸へのH-ZSM-5を用いた蒸気相変換
【0170】
本実施例は、H-ZSM-5を用いる種々のβ-プロピオラクトン試薬から有機酸への蒸気相変換を用いる例示的な方法を記載する。例示的な反応スキームを、以下に示す。
【0171】
種々のβ-プロピオラクトン試薬の有機酸への蒸気相変換を、H-ZSM-5(Si:Al=38、直径2mm、表面積>=250m/g)を触媒として用いて、充填床リアクターにおいて実施する。11グラムのH-ZSM-5触媒を、ジャケット付きステンレススチール316パイプリアクター(ID 0.5インチ)内に装填し、触媒を、ガラスビーズカラム内に支持する(ステンレススチールウールを、ガラスビーズの下及び上に置く)。多点熱電対を、リアクターの中心を通して挿入し、リアクタージャケットを通して熱い油を循環させて、所望のリアクター温度を維持する。β-プロピオラクトン試薬を、サチュレーターを用いてリアクターに導入する:28g/hrの速度のNを、液体有機酸をa=94°Cで含む容器の底に流入させ、それにより、β-プロピオラクトン試薬供給速度を5g/hrにする。リアクター及びサチュレーターの圧力を、9.5psigに維持する。反応生成物を、約10℃ジクロロメタンまで冷やし、反応生成物のジクロロメタン中溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。サチュレーターとリアクターとの間の線ならびにリアクターとアブソーバーとの間の線を、β-プロピオラクトン試薬から有機酸への濃縮を防ぐためにヒートトレースする。反応を、約210°Cのリアクター温度にて行う。
【0172】
種々のベータープロピオラクトン試薬をその対応する有機酸へ変換するための例示的反応スキームを、以下に図示する。
【0173】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5