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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】医療用機器コンテナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/14 20230101AFI20241105BHJP
【FI】
A61J1/14 520
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021069838
(22)【出願日】2021-04-16
(62)【分割の表示】P 2019548486の分割
【原出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2021102164
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149000
【氏名又は名称】株式会社大協精工
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝之
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】小河 了一
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/188427(WO,A1)
【文献】特開平1-164368(JP,A)
【文献】国際公開第2008/107961(WO,A1)
【文献】特表平4-500651(JP,A)
【文献】特開平10-101134(JP,A)
【文献】特開2001-301860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有するコンテナー本体内に医療用機器を複数個保持できる複数のホルダーを段積して内装可能であり、前記開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなる医療用機器コンテナーの製造方法であって、
前記複数のホルダーのそれぞれを、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、
該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成し、
前記ガス不透過性フィルムがはじめから下方に弛んだ状態で、前記シールを400ヘクトパスカル(hPa)以上1013ヘクトパスカル(hPa)未満に減圧した空間内で行なうことによって、前記シール後の前記医療用機器コンテナーの内圧を、前記シールを行なった空間内の減圧値に保ち、
前記ガス不透過性フィルムを、ホルダーに当接させるか、又は、該ホルダー及び該ホルダーに保持された医療用機器の両方に当接させ
減圧前の前記コンテナー本体の開口部面積M1と、減圧前の前記開口部にシールする前記ガス不透過性フィルムの面積M2との比(M1/M2)が、0.70≦M1/M2≦0.90であることを特徴とする医療用機器コンテナーの製造方法。
【請求項2】
前記ホルダーの基板部の長手方向の長さLと、前記コンテナー本体の底面に対する垂直方向への前記ホルダーの基板部の最大変位αとの比(α/L)が、0<α/L≦0.15であることを特徴とする請求項1に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。
【請求項3】
前記複数のホルダーのそれぞれを、前記基板部より突出する複数の筒状部を備えるように構成し、
該複数の筒状部のそれぞれを、その周囲に、前記医療用機器を前記筒状部に当接させて保持する複数の係止突起を設置するように構成することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。
【請求項4】
前記医療用機器は、医薬品容器の口部に装着した栓に被せるキャップであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装している医療用機器を、固定した状態で搬送可能な医療用機器コンテナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用機器を搬送するために、医療用機器をコンテナー本体内に収容して、コンテナー本体の開口部をガス不透過性フィルムやデュポン社製の高密度ポリエチレン不織布からなるTyvek(登録商標)などのガスを通過させるが菌を通過させないフィルム(以下、「Tyvek等」と称することがある。)で包装するコンテナーが知られている。
例えば、WO2013/125443A1(特許文献1)において、医療用機器をコンテナー本体内に収容して、コンテナー本体の開口部にTyvek等で包装するコンテナーが提案されている。
【0003】
しかしながら、このようなTyvek等だけの包装形態では、内装している医療用機器を固定して搬送することが出来ず、医療用機器を収納しているホルダーが動いてしまう事による医療用機器の清浄度の低下や医療用機器がホルダーから落下する等の恐れがあった。加えて、搬送先等における医療用機器の自動取出機において、医療用機器の位置ずれが生じたことによる自動取出機の停止という不具合の発生も懸念されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2013/125443A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題が生じないように、コンテナー本体の開口部をTyvek等で包装した場合、医療用機器を固定するために、医療用機器コンテナー全体を袋状の部材に入れてバキュームを行う減圧包装(以下、「バキュームバック包装」と称することがある。)をして、医療用機器を固定している。
【0006】
しかしながら、バキュームバック包装の内圧は、作業者のバキュームシール機へのセット状態により変わってしまうため、バキュームバック包装の内圧を一定に制御することは難しく、ばらつきが生じてしまうという問題があった。また、医療用機器コンテナーは、製薬会社や医療機関などに出荷されることになるが、出荷先で医療用機器を利用するために、一般的には滅菌雰囲気下でバキュームバック包装を取除き、更にコンテナーの開口部にシールされた蓋を取除くという作業が必要になり、非常に手間がかかる。特に、充填機内で薬剤などを詰める際には、自動化された工程によって充填されるため、このような工程でバキュームバック包装を取除くことは容易ではなかった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、バキュームバック包装をすることなく、内装した医療用機器を固定して搬送することができる医療機器用コンテナーの製造方法を提供することにある。更に、薬液等の充填機内における自動化された工程であっても、容易に包装を取除くことができる医療機器用コンテナーの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、以下の発明を完成するに至った。
【0009】
(1)上部に開口部を有するコンテナー本体内に医療用機器を複数個保持できる複数のホルダーを段積して内装可能であり、前記開口部がガス不透過性フィルムによりシールされてなる医療用機器コンテナーの製造方法であって、
前記複数のホルダーのそれぞれを、板状の基板部と、前記基板部より突出する支柱とを備えるように構成し、
該支柱を、前記複数のホルダーが前記医療用機器を保持しながら前記コンテナー本体内に段積された状態にあるときに前記医療用機器を前記コンテナー本体の底面または前記医療用機器を保持しているホルダーに隣接するホルダーに接触させない長さに構成し、
前記ガス不透過性フィルムがはじめから下方に弛んだ状態で、前記シールを400ヘクトパスカル(hPa)以上1013ヘクトパスカル(hPa)未満に減圧した空間内で行なうことによって、前記シール後の前記医療用機器コンテナーの内圧を、前記シールを行なった空間内の減圧値に保ち、
前記ガス不透過性フィルムを、ホルダーに当接させるか、又は、該ホルダー及び該ホルダーに保持された医療用機器の両方に当接させ
減圧前の前記コンテナー本体の開口部面積M1と、減圧前の前記開口部にシールする前記ガス不透過性フィルムの面積M2との比(M1/M2)が、0.70≦M1/M2≦0.90であることを特徴とする医療用機器コンテナーの製造方法。
(2)前記ホルダーの基板部の長手方向の長さLと、前記コンテナー本体の底面に対する垂直方向への前記ホルダーの基板部の最大変位αとの比(α/L)が、0<α/L≦0.15であることを特徴とする(1)に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。
)前記複数のホルダーのそれぞれを、前記基板部より突出する複数の筒状部を備えるように構成し、
該複数の筒状部のそれぞれを、その周囲に、前記医療用機器を前記筒状部に当接させて保持する複数の係止突起を設置するように構成することを特徴とする(1)または(2)に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。
)前記医療用機器は、医薬品容器の口部に装着した栓に被せるキャップであることを特徴とする(1)~()のいずれか一項に記載の医療用機器コンテナーの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により製造された医療用機器コンテナーによれば、バキュームバック包装をすることなく、内装した医療用機器を固定して搬送することができる。更に、薬液等の充填機内での自動化された工程で容易に包装を取除くことができる。そして、本発明の医療用機器コンテナーの製造方法によれば、このような有利な効果を伴う医療用機器コンテナーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用機器コンテナーの斜視図である。
図2】(A)は図1に示す医療用機器コンテナーの平面図、(B)は(A)のA-A断面図である。
図3図1に示す医療用機器コンテナー本体の斜視図である。
図4】(A)は図1に示す医療用機器コンテナーに内装されるホルダーの斜視図、(B)は(A)に示すホルダーの平面図である。
図5】(A)は図4(A)(B)に示すホルダーの拡大斜視図、(B)は(A)に示すホルダーの拡大正面図、(C)はホルダーに保持されるキャップ(医療用機器)の正面図である。
図6図1に示す医療用機器コンテナーに内装されるホルダーの別の例の斜視図である。
図7】(A)は図6に示すホルダーの一部拡大図、(B)は(A)に示すホルダーにバイアルが保持された状態の拡大断面図である。
図8】減圧による変形前後を表す基板部長手方向の側面図である。
図9】(A)は中央部が弛んだ状態のガス不透過性フィルムの斜視図、(B)は(A)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態を図1~9を適宜参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用機器コンテナー1の斜視図であり、図2(A)は図1に示す医療用機器コンテナー1の平面図、(B)は(A)のA-A断面図である。本実施形態に係る医療用機器コンテナー1は、図1図2(A)(B)に示すように、上部が開口するコンテナー本体2と、コンテナー本体2に内装された医療用機器ホルダー4と、コンテナー本体2の上部の開口部をシールするガス不透過性フィルム3とを備え、医療用機器コンテナー1の内部空間は、大気圧未満の減圧状態として構成している。
【0013】
コンテナー本体2は、図3に示すように、平面形状が概略矩形である箱(籠)形状のものであり、上部の開口部に設けられた環状かつ外側に延伸するように形成された環状フランジ部22と、環状フランジ部22より所定長底面側となる位置に、コンテナー本体2の長手方向に一対に設けられた段差部23とを備える。なお、段差部は環状に設けてもよい。また、コンテナー本体2の平面形状は、図示するような概略矩形のほか、多角形、円形、楕円形であってもよい。更に、コンテナー本体2は、合成樹脂、金属、又はこれらの各種混合体で形成されている。
【0014】
コンテナー本体2に内装される医療用機器ホルダー4は、コンテナー本体2の内部に単体で、あるいは図2(B)に示すように複数が段積された状態で載置される。コンテナー本体2に内装される医療用機器ホルダー4は、図4(A)(B)、図5(A)(B)に示すように、板状の基板部41と、この基板部41より下方に突出する複数の筒状部42を備える。筒状部42の外側から隣接する筒状部42の外側まで板状のステー49が延伸して設けられている。また、筒状部42の基端部(基板41側)には、筒状部42の内側の半径方向に延伸する環状フランジ部421が設けられている。
【0015】
図5(A)(B)に示すように、筒状部42の周囲には、下方に突出する係止突起50を設置している。係止突起50は、柱状の脚部502及び筒状部42に向かって突出する係止爪501から構成される。本例では、各筒状部42の周囲には、それぞれ3つの係止突起50が設置されているが、これに限らず、2つでも4つ以上でもよい。係止突起50の基端部と筒状部42の間には、略矩形の貫通口51が設けられている。貫通口51の形状は、限定されるものではなく、三角形、楕円形、円形、多角形などでもよい。貫通口51の位置は、係止突起50の基端部と筒状部42の間に限定されず、筒状部42の近傍であればよい。貫通口51が設けられることにより、滅菌流体がコンテナー内によく行き渡る。
【0016】
ホルダー4は、図4(A)に示すように、周縁部及び中央部に基板部41より下方に突出する支柱45を備える。支柱45は、筒状部42や係止突起50より長尺となっており、係止突起50や筒状部42に収納された医療用機器(キャップ62)等がコンテナー本体2の底面に接触しない。また、ホルダー4が段積された状態では、係止突起50や筒状部42に収納された医療用機器(キャップ62)等が隣接するホルダー4に接触しない。
ホルダー4を段積するには、支柱45の下端部(先端部)を、既に載置されているホルダー4の支柱45の基端部にある連結穴47(基板部41の上面側)に収納する。順次、これを繰り返すことにより、図2(B)に示すように、段積された状態とすることができる。
【0017】
図5(A)~(C)より、医療用機器の例として医薬品容器等の口部を封止するために装着したゴム栓の脱離防止のために、ゴム栓(図示せず)に被せるキャップ62のホルダー4への収納態様を説明する。キャップ62は、天面621及び該天面621から円筒状に突出するスカート622からなる。天面621を筒状部42に向けてキャップ62を移動させると、天面621の外縁が係止突起50の係止爪501に当接し、更にキャップ62を押し込むと、係止突起50が弾性変形して、天面621が通過し、筒状部42に当接する。係止突起50が弾性復帰することで、係止爪501が天面621に被さることにより、キャップ62はホルダー4に保持される。また、このホルダー4は、医薬品容器等の口部を封止するゴム栓(図示せず)などを保持するのにも適したものである。加えて、ゴム栓を内蔵したキャップ62を保持するのにも適したものである。
なお、このホルダー4は、キャップ62を保持するものであるが、このほかにピストン、バレル、バイアルなど、保持する医療用機器等によってホルダー4の形状は種々のものがある。後述するガス不透過性フィルム3は、キャップ62やピストン(図示せず)を保持するホルダー4に対しては、基板部41に当接するが、バレルやバイアルなどを保持するホルダー4の場合には、基板部41に当接せず、バレルやバイアルなどの医療用機器に当接する。また、ホルダー4によっては、基板部41と医療用機器の両方に当接するケースもある。
【0018】
次に、バイアル63を保持するホルダー4’について説明する。図6及び図7(A)(B)に示すように、筒状部42’の下端部の内側面には、環状凸部48を設けている。筒状部42’の内側面には、断面が略矩形の板状のパッド423が複数配置されている。図7(A)(B)では、等間隔に4つ配置されているが、これに限られず、2つ以上であればよく、等間隔でなくともよい。また、形状は断面矩形のほか、円形、楕円形、多角形などであってもよい。更に、板状に限らず、ドーム形状のように厚みをもっているものでもよい。筒状部42’には、複数の通気孔424が設けられている。通気孔424の形状は、図示するような略矩形のほか、円形、楕円形、多角形などであってもよいが、基板部41’まで孔がつながっていることが好ましい。滅菌流体等がよく行き渡るようにするためである。そのほかの構成は、ホルダー4と同様である。更に、このようなホルダー4’の構成とすることで、ホルダー4’を段積した場合であっても、確実な滅菌処理が可能となり、一度に多くの医療用機器の滅菌処理を行うことができる。
【0019】
基板部41は、図7(B)に示すように、バイアル63のような医療用機器を保持するのに特に適したものであり、ガス不透過性フィルム3で上面から押圧することで、バイアル63などの医療用機器の上面を固定でき、さらにパッド423によりバイアル63等の側面を保持し、バイアル63のがたつきを抑制できる。また、パッド423により、バイアル63と筒状部42’との間に隙間を確保することにより、滅菌流体等がよく行き渡るようにすることができる。また、前記通気孔424も同様に、滅菌流体等がよく行き渡るようにしたものである。
【0020】
図6及び図7(A)(B)に示すホルダー4’へ医療用機器の例としてバイアル63を収納する方法について説明する。バイアル63を底の方から筒状部42の上方の開口部(基板部41の側)へ入れていくと、環状凸部48にバイアル63の底面の周縁部が当接し、バイアルの側面はパッド423に当接することにより、バイアルがホルダー4’に収納され、保持される。
【0021】
ガス不透過性フィルム3は、図1図2(A)(B)に示すように、コンテナー本体2の環状フランジ部22に熱溶着等により剥離可能にシールされ、コンテナー本体2の上部の開口部を封止している。ガス不透過性フィルム3としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン又はこれらを積層したフィルムなどが使用できる。例えば、ポリエチレンの下方にポリエチレンテレフタレート積層し、ポリエチレンテレフタレートの下方に接着層を積層したものを利用することができる。ガス不透過性フィルム3は、ガス、水蒸気、菌などを透過しないガス不透過性フィルムとコンテナー本体2に接する側に位置して積層されたTyvek等から構成してもよい。なお、バキュームバック包装のように、医療用機器コンテナー1全体を覆うのではなく、コンテナー本体2の開口部のみを覆うので、資材の削減となる。また、開口部をガス不透過性フィルム3で覆っているので、医療用機器コンテナー1の外装滅菌が可能である。
【0022】
医療用機器コンテナー1の内圧は、大気圧未満に減圧した状態としている。そのため、ガス不透過性フィルム3は、図2(B)に示すように、医療用機器コンテナー1の内側へ凹み、ホルダー4の基板部41に当接している。従って、ガス不透過性フィルム3を介して、ホルダー4が固定されることになる。また、医療用機器コンテナーの放射線滅菌をする場合には、内部の気体の量が少ないため、放射線滅菌の効果が高くなる。更に、医療用機器コンテナー1の内圧は、大気圧未満であればよいが、400ヘクトパスカル(hPa)以上1013ヘクトパスカル(hPa)未満であれば、ホルダー4の変形による清浄度の低下やガス不透過性フィルム3の損傷等のおそれがなく、搬送する際にも十分にホルダー4を固定することができるため好適である。なお、ガス不透過性フィルム3がホルダー4の基板部41に当接していない場合であっても、ガス不透過性フィルム3がホルダー4の基板部41の近傍まで凹んでいればよい。ホルダー4がほとんど動くことができず、固定された状態となっているからである。
また、バイアル63を保持するホルダー4’の場合には、図7(B)に示すように、ガス不透過性フィルム3は、バイアル63(医療用機器)に当接する。そのほかは、ホルダー4のケースと同様である。
【0023】
図8は、減圧による変形前後を表すホルダー4の基板部41長手方向の側面図であり、基板部41以外の筒状部42などは省略したものである。ホルダー4の基板部41は、図8に示すように、減圧前は略平板状であるが、減圧しフィルム3が当接すると、下方に凹んで、破線で表す基板部41’のように変形する。このときの最大変位をαとする。変位が大きいと、ホルダー4が変位する過程で内容物同士の擦れ等により、清浄が低下するおそれがある。更に、ホルダー4の破損や変形が生じたり、そのことにより、ホルダー4の本来の役目である医療用機器の位置決めや医療用機器の保持等の機能が損なわれることや、医療用機器が干渉・落下するおそれがある。
そのため、ホルダー4の基板部41の長手方向の長さLと、コンテナー本体2の底面に対する垂直方向へのホルダー4の基板部41の最大変位αとの比(α/L)が、0<α/L≦0.15 であることが好ましい。
【0024】
次に、医療用機器コンテナー1の製造方法について説明する。まず、ホルダー4をコンテナー本体2の内部に単体で、あるいは図2(B)に示すように複数が段積された状態で載置する。その後、大気圧未満に減圧した空間内で、例えば、ガス不透過性フィルム3を長尺の巻き取られた状態から、コンテナー本体2の開口部全体(環状フランジ部22を含む)を覆うように被せた後、ガス不透過性フィルム3と環状フランジ部22とが接している部分に対して、熱源を当接させることにより、熱溶着させると同時に適正な寸法でガス不透過性フィルム3をカットする。なお、熱溶着後にガス不透過性フィルム3をカットしてもよい。このようにすることで、内圧を大気圧未満とした医療用機器コンテナー1とすることができる。なお、減圧及びガス不透過性フィルム3の熱溶着する過程は、チャンバー式のパックシーラー機(図示せず)等で自動的に行うことができる。このように、減圧下でガス不透過性フィルム3をシールするので、作業者による減圧状態のばらつきが無くなる。
また、このように減圧下で製造した医療用機器コンテナー1を大気圧下に置くと、図2(B)に示すように、ガス不透過性フィルム3は医療用機器コンテナー1の内側へ凹むことになる。
更に、他の実施形態として、常圧の環境下でガス不透過フィルム3をシールした後、コンテナー本体2側面部、又は底面部に設けた開口部から医療用機器コンテナー1内部を減圧することで、ガス不透過性フィルム3が医療用機器コンテナー1の内側へ凹むようにしてもよい。
【0025】
また、ガス不透過性フィルム3は、図9(A)(B)に示すように、大気圧未満に減圧した空間内で、はじめから下方に弛んだ状態で環状フランジ部22にシールしてもよい。これにより、ガス不透過性フィルム3として、伸びにくい材質を採用することができ、又はガス不透過性フィルム3の伸びによる厚さの減少を軽減できる。減圧前のコンテナー本体2の開口部面積(環状フランジ部22を含む)をM1(図2(A)の例では、長手方向の長さx、短手方向の長さyとすると、xyに相当する。)とし、減圧前のガス不透過性フィルム3の表面積をM2とした場合、M1とM2との比(M1/M2)が、0.70≦(M1/M2)≦0.99であることが好ましい。この比が小さ過ぎるとガス不透過性フィルム3に皺が生じるなどホルダー4の固定に好ましくないからである。ガス不透過性フィルム3の弛みという観点からは、(M1/M2)≦0.90であることがより好ましい。
【符号の説明】
【0026】
1 医療用機器コンテナー
2 コンテナー本体
21 コンテナー底部
22 環状フランジ部
23 段差部
3 ガス不透過性フィルム
4 4’ ホルダー
41 41’ 基板部
42 42’ 筒状部
421 筒状部の環状フランジ部
423 パッド
424 通気孔
45 支柱
47 連結穴
48 環状凸部
49 ステー
50 係止突起
501 係止爪
502 脚部
51 貫通孔
62 キャップ
621 天面
622 スカート
63 バイアル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9