(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】調理容器保持ユニットおよびこれを組み込んだ調理容器自動搬送装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A47J27/14 Z
A47J27/14 N
(21)【出願番号】P 2021166455
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207066
【氏名又は名称】米山 毅
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横内 浩平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
(72)【発明者】
【氏名】但馬 竜介
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-170772(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0096135(KR,A)
【文献】特表2005-504259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0006826(US,A1)
【文献】特表2020-518517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体と、前記容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくとも一方に延出して前記容器本体と同心円状をなす環状周壁部分と、を有する調理容器を保持する調理容器保持ユニットであって、
前記調理容器の環状周壁部分を挟み込む上下一対の容器保持部と、
前記上下一対の容器保持部によって前記調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、前記保持用駆動部によって保持した前記調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備え、
前記上下一対の容器保持部の少なくともいずれか一方の一部が、調理容器の容器外周面に当接自在であり、
前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、
前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の環状周壁部分の他方側部位を一方側へ押し込む押し込み片を備え
、
前記上下一対の容器保持部の中の少なくとも下方の容器保持部の一部が調理容器の容器外周面に当接自在であることを特徴とする調理容器保持ユニット。
【請求項2】
食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体と、前記容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくとも一方に延出して前記容器本体と同心円状をなす環状周壁部分と、を有する調理容器を保持する調理容器保持ユニットであって、
前記調理容器の環状周壁部分を挟み込む上下一対の容器保持部と、
前記上下一対の容器保持部によって前記調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、前記保持用駆動部によって保持した前記調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備え、
前記上下一対の容器保持部の少なくともいずれか一方の一部が、調理容器の容器外周面に当接自在であり、
前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、
前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の環状周壁部分の他方側部位を一方側へ押し込む押し込み片を備え
、
前記調理容器が少なくとも上下方向に反転する姿勢をとることができることを特徴とする調理容器保持ユニット。
【請求項3】
前記上下一対の容器保持部の一方と他方とのいずれか少なくとも一方が、前記調理容器の容器外周面に当接する外周面当接部材を備えていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の調理容器保持ユニット。
【請求項4】
前記容器保持部の容器嵌着溝が、前記調理容器の環状周壁部分と同心円となる円弧状溝壁面で構成されていることを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載された調理容器保持ユニット。
【請求項5】
前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の容器外周面に当接するローラからなる外周面当接部材と、前記調理容器の環状周壁部分の下方部位を下方から上方へ押し込む押し込み片とを備えていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の調理容器保持ユニット。
【請求項6】
前記保持用駆動部が、前記押し込み片に連結して駆動源からの駆動力を増幅するトグル機構を有していることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の調理容器保持ユニット。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載された調理容器保持ユニットと、前記調理容器保持ユニットを移送する移送ユニットと、前記調理容器保持ユニット及び前記移送ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備えた調理容器自動搬送装置であって、前記移送ユニットが、調理工程ラインに沿って設けられていることを特徴とする調理容器自動搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な調理動作に応じて調理容器の保持姿勢を変位させる調理容器保持ユニットおよびこれを組み込んだ調理容器自動搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、飲食店における従業員不足等の背景から、調理の工程を自動化したいという要請があり、この調理工程の一部を自動化した各種の調理装置やこれらの装置を統合して自動化した料理自動提供システムの開発が進められている。
【0003】
そして、このような料理自動提供システムとして、例えば、麺供給装置、茹で器、洗浄機、加熱調理装置、調理容器待機部、食材供給装置、及び、盛付装置などを備えるとともに、これらの相互間で調理容器を着脱自在に把持し、この把持した調理容器の把持姿勢を変位自在に調整したり、移動したりする調理容器保持装置を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
そこで、この料理自動提供システムに用いられている調理容器保持装置は、調理容器の外周に設けた断面L字型のフランジ部の一部を把持する一対の可動式の把持爪と、この一対の把持爪で調理容器を把持及び解放することが可能であるとともに調理容器を把持した状態で調理容器の位置及び姿勢を調整する位置・姿勢調整部とで構成され、前述したような麺供給装置、茹で器などの複数の搬送位置へ自走して調理容器を搬送し、各搬送位置で多様な調理動作に応じて調理容器を昇降させたり、あるいは、調理容器を水平方向に回転させたりして、調理容器を調理動作に適合する位置に移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WО/2020/166723号公報(特に、段落0090、実施形態2、
図4~
図6を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の料理自動提供システムの調理容器保持装置では、
図10に示すように、調理容器600のフランジ部610を上下一対の把持爪510、520で着脱自在に片持ち把持するために、上下一対の把持爪510、520と調理容器600のフランジ部610との間に上下方向の隙間Gを設けているが、例えば、調理容器600を水平面内で旋回移動させて食材供給装置から加熱調理装置へ移動する際や調理容器600の開口部を上下反転させて洗浄機で洗浄する際に、調理容器600が上述した上下方向の隙間Gによりガタツキを生じて不安定な把持姿勢となるばかりでなく、把持部領域の摩耗、破損や騒音の一因となり、しかも、調理容器600が上下一対の把持爪510、520から脱落しないような別の工夫が必要となり、料理自動提供システムのスピードアップに支障を来すという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、片持ち保持した調理容器の上下姿勢を反転させる際に生じがちな調理容器のガタツキや調理容器を水平面内で旋回させる際に生じがちな調理容器のガタツキを解消して調理工程ラインにおいて調理容器を安定した取り扱いを実現する調理容器保持ユニットおよびこれを組み込んだ調理容器自動搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1の調理容器保持ユニットは、食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体と、前記容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくとも一方に延出して前記容器本体と同心円状をなす環状周壁部分と、を有する調理容器を保持する調理容器保持ユニットであって、前記調理容器の環状周壁部分を挟み込む上下一対の容器保持部と、前記上下一対の容器保持部によって前記調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、前記保持用駆動部によって保持した前記調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備え、前記上下一対の容器保持部の少なくともいずれか一方の一部が、調理容器の容器外周面に当接自在であり、前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の環状周壁部分の他方側部位を一方側へ押し込む押し込み片を備え、前記上下一対の容器保持部の中の少なくとも下方の容器保持部の一部が調理容器の容器外周面に当接自在であることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された調理容器保持ユニットの構成に加えて、食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体と、前記容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくとも一方に延出して前記容器本体と同心円状をなす環状周壁部分と、を有する調理容器を保持する調理容器保持ユニットであって、前記調理容器の環状周壁部分を挟み込む上下一対の容器保持部と、前記上下一対の容器保持部によって前記調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、前記保持用駆動部によって保持した前記調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備え、前記上下一対の容器保持部の少なくともいずれか一方の一部が、調理容器の容器外周面に当接自在であり、前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の環状周壁部分の他方側部位を一方側へ押し込む押し込み片を備え、前記調理容器が少なくとも上下方向に反転する姿勢をとることができることを特徴とする調理容器保持ユニット。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された調理容器保持ユニットの構成に加えて、前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、前記上下一対の容器保持部の一方と他方とのいずれか少なくとも一方が、前記調理容器の容器外周面に当接する外周面当接部材を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載された調理容器保持ユニットの構成に加えて、前記容器保持部の容器嵌着溝が、前記調理容器の環状周壁部分と同心円となる円弧状溝壁面で構成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載された調理容器保持ユニットの構成に加えて、前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の容器外周面に当接するローラからなる外周面当接部材と、前記調理容器の環状周壁部分の下方部位を下方から上方へ押し込む押し込み片とを備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載された調理容器保持ユニットの構成に加えて、前記保持用駆動部が、前記押し込み片に連結して駆動源からの駆動力を増幅するトグル機構を有していることを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の調理容器保持ユニットと、前記調理容器保持ユニットを移送する移送ユニットと、前記調理容器保持ユニット及び移送ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備えた調理容器自動搬送装置であって、前記移送ユニットが、調理工程ラインに沿って設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体と容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくとも一方に延出して容器本体と同心円状をなす環状周壁部分とで構成された調理容器を保持する調理容器保持ユニットであって、調理容器の環状周壁部分を挟み込んで調理容器の容器外周面に当接する上下一対の容器保持部と、上下一対の容器保持部によって調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、保持用駆動部によって保持した調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備えていることにより、調理容器を片持ち保持する際に、保持用駆動部によって操作する上下一対の容器保持部が、調理容器の環状周壁部分とこの環状周壁部分と上下方向および容器径方向に離れた容器外周面とに当接して調理容器の自重による偏荷重を分担して受け持ち、従来のような調理容器の環状周壁部分のみで調理容器の全自重を集中的に片持ち把持していた把持部材に比較すると、調理容器の環状周壁部分と容器外周面とで調理容器をより確実に位置決め保持するため、例えば、洗浄工程において調理容器の上下姿勢を片持ち状態の軸心を中心に容器底部を上向きとなるように反転させる際に調理容器の変位に伴って生じがちな上下姿勢のガタツキを抑制し、調理容器の安定した変位動作を実現することができる。これにより、調理容器の上下反転動作、旋回動作、昇降動作に要する時間を短縮し、調理効率の良い調理容器の取り回しを実現できる。
【0015】
また、本発明の調理容器保持ユニットは、上下一対の容器保持部によって調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、この保持用駆動部によって保持した調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備え、ていることにより、保持用駆動部と容器変位用駆動部の動力源をそれぞれ小型化して別個に配置することが可能となるため、調理容器保持ユニットの省スペース化を達成し、調理容器を変位させる範囲を拡大することができる。
また、請求項1に係る発明の調理容器保持ユニットによれば、上下一対の容器保持部の少なくともいずれか一方の一部が、調理容器の容器外周面に当接自在であり、前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の環状周壁部分の他方側部位を一方側へ押し込む押し込み片を備え、前記上下一対の容器保持部の中の少なくとも下方の容器保持部の一部が調理容器の容器外周面に当接自在である。
また、請求項2に係る発明の調理容器保持ユニットによれば、前記上下一対の容器保持部の少なくともいずれか一方の一部が、調理容器の容器外周面に当接自在であり、前記上下一対の容器保持部の一方が、前記調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、前記上下一対の容器保持部の他方が、前記調理容器の環状周壁部分の他方側部位を一方側へ押し込む押し込み片を備え、前記調理容器が少なくとも上下方向に反転する姿勢をとることができる。
【0016】
請求項3に係る発明の調理容器保持ユニットによれば、請求項1又は2に記載の調理容器保持ユニットが奏する効果に加えて、上下一対の容器保持部の一方が、調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えているとともに、上下一対の容器保持部の一方と他方とのいずれか少なくとも一方が、調理容器の容器外周面に当接する外周面当接部材を備えていることにより、調理容器の環状周壁部分が容器保持部の一方の容器嵌着溝内に嵌め込まれると共に、容器保持部の一方と他方とのいずれか少なくとも一方の外周面当接部材が調理容器の容器外周面に押し付けられると、例えば調理容器の環状周壁部分が容器嵌着溝内を形成する一対の溝壁面の双方に寄りかかって2か所で斜めに当接するとともに調理容器の容器外周面が外周面当接部材に当接する、所謂、3点支持状態となるため、上下一対の容器保持部で調理容器を保持する際に、調理容器の環状周壁部分と容器外周面とが確実に位置決めされて係止された片持ち状態を保持することができる。
【0017】
そして、上下一対の容器保持部の一方が、調理容器の環状周壁部分を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝を備えていることにより、調理容器保持ユニットが調理容器を装着する際に、調理容器の環状周壁部分が容器保持部の容器嵌着溝との間で遊嵌状態となる分だけ容器装着に要する隙間が確保されるため、調理容器の環状周壁部分が容器嵌着溝内に嵌め込み易くなり、調理容器に対して簡便な装着操作を達成することができる。
【0018】
請求項4に係る発明の調理容器保持ユニットによれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の調理容器保持ユニットが奏する効果に加えて、容器保持部の容器嵌着溝が、調理容器の環状周壁部分と同心円となる円弧状溝壁面で構成されていることにより、調理動作に応じて調理容器を水平面内で旋回するように変位させる際に、調理容器の環状周壁部分が容器保持部の容器嵌着溝に対して面接触状態となって旋回による遠心力が生じても両者の相対的位置ずれが抑制されるため、調理動作に応じて調理容器を水平面内で旋回するように変位させる際に容器保持部における調理容器の旋回方向のガタツキを解消することができるばかりでなく、旋回速度が増大しても調理容器のガタツキを抑制しつつ、調理時の旋回変位に要する作業速度をより一段と高めることができる。
【0019】
請求項5に係る発明の調理容器保持ユニットによれば、請求項1~4のいずれか1項に記載の調理容器保持ユニットが奏する効果に加えて、上下一対の容器保持部の他方が、調理容器の容器外周面に当接するローラからなる外周面当接部材と、調理容器の環状周壁部分の下方部位を下方から上方へ押し込む押し込み片とを備えていることにより、調理容器保持ユニットに調理容器を装着する際に、押し込み片が容器保持部の容器嵌着溝内に嵌め込まれた調理容器の環状周壁部分を容器保持部の容器嵌着溝内から不用意に脱落しないように下方から上方へ押し込まれるとともに、ローラからなる外周面当接部材が調理容器の容器外周面に円滑に押し当てられるため、調理容器保持ユニットが、調理容器を容器保持部の容器嵌着溝内から不用意に脱落させることのないように調理容器を確実に装着することができる。
【0020】
請求項6に係る発明の調理容器保持ユニットによれば、請求項1~5のいずれか1項に記載の調理容器保持ユニットが奏する効果に加えて、保持用駆動部が、押し込み片に連結されたトグル機構を有していることにより、可動側となる下側の容器保持部に駆動源からの駆動力が増幅して伝達されるため、駆動源から得られる駆動力を上下一対の容器保持部による大きな保持力に増幅させることができ、結果的に、モーター等の駆動源のサイズを小さく抑えて装置を小型化することができる。
【0021】
請求項7に係る発明の調理容器自動搬送装置によれば、請求項1~6のいずれか一項に記載の調理容器保持ユニットと、この調理容器保持ユニットを移送する移送ユニットと、この調理容器保持ユニットと移送ユニットとを駆動制御する制御ユニットとを備えた調理容器自動搬送装置であって、移送ユニットが、調理工程ラインに沿って設けられていることにより、調理容器保持ユニットが、調理容器の環状周壁部分と容器外周面とに当接して調理容器の自重による偏荷重を分担して片持ち保持し、例えば、洗浄工程において調理容器の上下姿勢を片持ち状態の軸心を中心に容器底部を上向きとなるように反転させたり、加熱調理工程において食材供給装置から加熱調理装置へ調理容器を水平面内で旋回させたり、上下方向に昇降させ、制御ユニットにより駆動制御する移送ユニットが、調理工程ラインに沿って配置された各種の調理位置へ調理容器保持ユニットを効率よく移送するため、調理容器の上下姿勢を反転させる際に生じがちな調理容器のガタツキや調理容器を水平面内で旋回させる際に生じがちな調理容器の旋回方向のガタツキを解消するとともに、調理容器の上下反転動作、旋回動作、昇降動作に要する時間を著しく短縮し、しかも、例えば、麺供給装置、茹で器、洗浄機、加熱調理装置、調理容器待機部、食材供給装置、及び、盛付装置などで構成される調理工程ラインにおいて迅速かつ安定した調理容器の取り扱い、所謂、使い勝手の良い調理容器の取り回しを実現し、調理効率の良いレイアウト設計を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態である調理容器自動搬送装置の使用態様を示す斜視図。
【
図2】
図1に示す調理容器自動搬送装置に用いる調理容器の一部を切欠いた概要図。
【
図3A】
図1に示す調理容器自動搬送装置の調理容器保持ユニットの斜視図。
【
図3B】調理容器保持ユニットの容器保持部と調理容器との拡大図。
【
図4】調理容器保持ユニットの装置構成を示す概略図。
【
図5A】
図4に示す調理容器保持ユニットの上下一対の容器保持部の拡大図。
【
図6A】
図5AにおけるVIA-VIA線で矢視した容器保持部の拡大図。
【
図6B】
図5AにおけるVIB-VIB線で矢視した容器保持部の拡大図。
【
図7A】調理容器保持ユニットに用いたトグル機構の動作説明図。
【
図7B】調理容器保持ユニットに用いたトグル機構の動作説明図。
【
図8】本発明の調理容器自動搬送装置を組み込んだパスタ料理自動供給システムの構成図。
【
図9A】調理容器保持ユニットが調理容器を装着する際の動作説明図。
【
図9B】上下一対の容器保持部によって調理容器を保持する際の手順を説明する図。
【
図10】従来の調理容器保持装置による調理容器の把持状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る調理容器保持ユニット及び調理容器自動搬送装置について説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための調理容器保持ユニット及び調理容器自動搬送装置を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0024】
本発明の調理容器保持ユニットは、食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体と容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくとも一方に延出して容器本体と同心円状をなす環状周壁部分とで構成された調理容器を保持する調理容器保持ユニットであって、調理容器の環状周壁部分を挟み込んで調理容器の容器外周面に当接する上下一対の容器保持部と、上下一対の容器保持部によって調理容器を着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部と、保持用駆動部によって保持した調理容器を調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部とを備え、片持ち保持した調理容器の上下姿勢を反転させる際に生じがちな調理容器のガタツキや調理容器を水平面内で旋回させる際に生じがちな調理容器のガタツキを解消して調理工程ラインにおいて調理容器を安定した取り扱いを実現するとともに、調理容器の上下反転動作、旋回動作、昇降動作に要する時間を短縮し、調理効率の良い調理容器の取り回しを実現するものであれば、その具体的な実施形態は、如何なるものであってもよい。
【0025】
また、本発明の調理容器自動搬送装置は、上述した調理容器保持ユニットとこの調理容器保持ユニットを移送する移送ユニットとこれらの調理容器保持ユニットと移送ユニットとを駆動制御する制御ユニットとを備え、移送ユニットが調理工程ラインに沿って設けられ、調理容器の上下姿勢を反転させる際に生じがちな調理容器のガタツキや調理容器を水平面内で旋回させる際に生じがちな調理容器の旋回方向のガタツキを解消するとともに、調理容器の上下反転動作、旋回動作、昇降動作に要する時間を著しく短縮し、しかも、例えば、麺供給装置、茹で器、洗浄機、加熱調理装置、調理容器待機部、食材供給装置、及び、盛付装置などで構成される調理工程ラインにおいて迅速かつ安定した調理容器の取り扱い、所謂、使い勝手の良い調理容器の取り回しを実現し、調理効率の良いレイアウト設計を達成するものであれば、その具体的な実施形態は、如何なるものであってもよい。
【0026】
例えば、本発明の調理容器自動搬送装置の具体的な使用態様については、搬送ユニットにより移送される調理容器保持ユニットで調理容器を複数の搬送位置に搬送することができれば、料理を自動で提供する各種の料理自動提供システムに組み込まれてもよい。
すなわち、調理容器自動搬送装置は、パスタ料理自動提供システムに組み込まれてもよいし、炒め料理自動提供システムに組み込まれてもよいし、冷凍の食材だけでなく冷蔵、常温等の食材を用いた料理を自動で提供する料理自動提供システム、例えば、冷蔵保存されたカット野菜を混ぜ合わせたサラダを自動で提供するサラダ料理自動提供システムに組み込まれてもよい。
【0027】
他方、本発明の調理容器保持ユニットの具体的な使用態様については、固定位置で調理容器を調理動作に応じて昇降、回転あるいは旋回して変位させても良く、調理工程の一部を自動化する装置として調理工程ラインと別に単独で用いても何ら差し支えない。
【0028】
さらに、本発明の調理容器保持ユニットにおける上下一対の容器保持部については、下側の容器保持部のみ周壁当接部分および外周面当接部分を備えてもよいし、上側の容器保持部のみ周壁当接部分および外周面当接部分を備えてもよいし、上下一対の容器保持部のそれぞれに周壁当接部分および外周面当接部分を備えてもよい。
【0029】
そして、本発明の調理容器保持ユニットおよび調理容器自動搬送装置に用いられる調理容器の具体的な容器形態については、円筒状の容器本体と容器本体の容器外周面に周設したフランジ部から上方向又は下方向の少なくともいずれか一方に延出するとともに容器本体と同心円状をなす環状周壁部分とを有していればよい。
例えば、環状周壁部分をフランジ部の周縁から上下方向にそれぞれ延出してフランジ部と環状周壁部分とを合わせた断面をT字形状としてもよいし、調理容器の軽量化を考慮すると、環状周壁部分をフランジ部の周縁から上下方向の少なくともいずれか一方に延出してフランジ部と環状周壁部分とを合わせた断面をL字形状としてもよい。
さらに、容器本体の具体的形態については、円筒状の容器外周面とこの容器外周面の外周部位にフランジ部を介して環状周壁部分を備えていれば、容器本体の容器底部が逆円錐台状であっても寸胴鍋状であっても何ら差し支えない。
【0030】
また、このような調理容器は、調理容器の周方向の如何なる向きであっても自由に片持ち保持できるように、フランジ部および環状周壁部分を円筒状の容器本体の容器外周面の全周に亘って設けるのが好ましいが、調理容器の軽量化と即乾燥を考慮すると、フランジ部または環状周壁部分の一方を容器外周面の全周に亘って設け、他方を容器外周面に沿って分散して設けてもよい。
【0031】
なお、本発明では、一対の容器保持部の位置関係を上下方向で定義しているが、一対の容器保持部の位置関係は上下方向に限定されるものではなく、保持する調理容器の姿勢によって随時変化する。例えば、調理容器の上部開口を下方に向けるように調理容器を上下反転すると、上側の容器保持部が下側となり、下側の容器保持部が上側となる。
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の調理容器保持ユニットおよび調理容器自動搬送装置に係る実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0033】
本発明の実施形態である調理容器保持ユニットおよび調理容器自動搬送装置について、
図1~
図7に基づいて説明すると、以下の通りである。
ここで、
図1は、本発明の一実施形態である調理容器自動搬送装置の使用態様を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す調理容器自動搬送装置に用いる調理容器の一部を切欠いた概要図であり、
図3Aは、
図1に示す調理容器自動搬送装置の調理容器保持ユニットの斜視図であり、
図3Bは、調理容器保持ユニットの容器保持部と調理容器との拡大図であり、
図4は、調理容器保持ユニットの装置構成を示す概略図であり、
図5Aは、
図4に示す調理容器保持ユニットの上下一対の容器保持部の拡大図であり、
図5Bは、
図5Aに示すVB部分の拡大図であり、
図6Aは、
図5AにおけるVIA-VIA線で矢視した容器保持部の拡大図であり、
図6Bは、
図5AにおけるVIB-VIB線で矢視した容器保持部の拡大図であり、
図7Aは、調理容器保持ユニットに用いたトグル機構の動作説明図であり、
図7Bは、調理容器保持ユニットに用いたトグル機構の動作説明図である。
【0034】
<調理容器自動搬送装置1の概要>
まず、本発明の一実施形態である調理容器自動搬送装置1は、例えば、顧客の注文に応じて自動的にパスタを調理して顧客に提供するパスタ料理自動提供システムに組み込まれる。
【0035】
このように、パスタ料理自動提供システムに組み込まれる本発明の一実施形態である調理容器自動搬送装置1は、食材を収容自在に受け入れる調理容器Cと、調理容器Cを片持ち保持して昇降、回転、あるいは旋回等の調理動作に応じて変位させる調理容器保持ユニット100と、調理容器保持ユニット100を調理工程ラインに沿って各種の搬送位置に移送する移送ユニット200と、調理容器保持ユニット100および移送ユニット200を駆動制御する制御ユニット300とを備えている。
【0036】
したがって、このパスタ料理自動提供システムでは、本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100が、パスタ料理に用いる各装置に対応した搬送位置に調理容器Cを搬送すると、各搬送位置において調理容器Cを用いた加熱調理、盛付処理あるいは洗浄処理が施されることによって、パスタ料理の一連の調理が行われる。
【0037】
さらに具体的には、パスタ料理自動提供システムに組み込まれて冷凍麺塊の冷凍保管および自動供給を行う冷凍麺供給装置(図示省略)によって供給された冷凍麺塊が、麺受取り装置(図示省略)によって受け取られ、この麺受け取り装置によって茹で器(図示省略)を通して茹でられる。
【0038】
他方、
図1に示すように、本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100は、具材供給装置D4からパスタの具材が投入されて具材供給位置(P1)に一時的に載置されている調理容器Cを片持ち保持して麺受け取り位置(P2)に搬送する。
そして、麺受け取り位置(P2)にて茹で上がった麺が麺受け取り装置によって調理容器C内に投入されると、本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100が、調理容器Cを加熱調理装置D5が配置された加熱調理位置(P3)、盛付装置(図示省略)が配置された盛付位置(P4)、洗浄装置D7が配置された洗浄位置(P5)に順次搬送する。
これにより、調理容器保持ユニット100が、パスタ料理に関連した各装置に対応した搬送位置に調理容器Cを搬送し、各搬送位置で加熱調理装置D5による加熱調理、盛付装置による盛付処理あるいは洗浄装置D7による洗浄処理が施されることによって、パスタ料理の一連の調理が行われる。
ここで、本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100は、各搬送位置に搬送された調理容器Cが、調理容器保持ユニット100によって調理動作に応じて上下昇降による上下方向の異なる高さ位置、回転による斜め姿勢あるいは上下反転姿勢、あるいは、旋回による水平面上の異なる位置に変位することを可能にする。
【0039】
このようにして、本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100が、調理容器Cを洗浄位置に搬送した後、再び、調理容器Cを具材供給位置(P1)に搬送することによって、パスタ料理の上述した一連の調理が繰り返し行われる。
【0040】
<調理容器Cの具体的構成について>
つぎに、本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100に用いるステンレス製の調理容器Cは、
図2に示すように、食材を収容自在に受けの入れる円筒状の容器本体C1と容器本体C1の容器外周面C1cに周設したフランジ部C2の周縁から上下方向に延出するとともに容器本体C1と同心円状をなす環状周壁部分C3、C4とを有している。
なお、環状周壁部分の中、上方の部分を上方環状周壁部分C3、下方の部分を下方環状周壁部分C4という。
ここで、調理容器Cの素材については、加熱調理、洗浄などの取り扱い上、ステンレス製が好ましいが、ステンレス鋼以外のアルミなどの金属素材から構成されていても構わない。
【0041】
また、この調理容器Cの容器本体C1は、上部が開口した円筒状胴部C1aと、底面に向けて内径を漸次縮径して円筒状胴部C1aの下方に連続した逆円錐台状底部C1bとを有している。
【0042】
そして、調理容器Cは、フランジ部C2と環状周壁部分C3、C4とを合わせた断面が横方向にT字状をなしている。
【0043】
さらに、この調理容器Cのフランジ部C2は、周方向に複数の貫通孔C2aが分散して形成され、容器の軽量化を図ることができるばかりでなく、例えば、パスタ料理自動提供システムの洗浄装置によって洗浄される際、洗浄水の水滴が貫通孔C2aを通して排出されてフランジ部C2に残留し難いようになっている。
なお、フランジ部C2は、容器外周面C1cに水平方向に突設してもよいし、水平方向に対して傾斜して突設してもよい。
すなわち、フランジ部C2の貫通孔C2aは、例えば、水滴の排水性能を考慮して、形状、寸法、数、あるいは、傾斜角度等を適宜調整すればよい。
【0044】
なお、前述した環状周壁部分C3、C4は、容器本体C1の容器外周面C1cの全周に亘って設けられている。
【0045】
<調理容器保持ユニット100の具体的構成について>
つぎに、本発明の一実施形態における調理容器保持ユニット100は、
図3A乃至
図4で示すように、調理容器Cの環状周壁部分C3、C4および容器外周面C1cの一部に当接して調理容器Cを片持ち保持する上下一対の容器保持部110、120と、上下一対の容器保持部110、120を作動させる保持用駆動部130と、上下一対の容器保持部110、120によって片持ち保持された調理容器Cを調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部160とを有している。
【0046】
そして、これらの上下一対の容器保持部110、120は、
図4で示すように、上側の容器保持部110(以下、「上部容器保持部」という。)が保持および保持解放動作の固定側となり、下側の容器保持部120(以下、「下部容器保持部」という。)が保持および保持解放動作の可動側となっている。
【0047】
そして、上部容器保持部110は、調理容器Cの上方環状周壁部分C3に当接される周壁当接部分112と、調理容器Cの容器外周面C1cに当接される外周面当接部分113とを備えている。
【0048】
すなわち、この周壁当接部分112は、調理容器Cの上方環状周壁部分C3の上部部位を上方から嵌め込んで溝壁面112aをこの上方環状周壁部分C3に当接させるように上部容器保持部110の上部保持本体111に設けた容器嵌着溝112によって構成されている。
【0049】
この周壁当接部分112として形成された容器嵌着溝112は、調理容器Cの上方環状周壁部分C3の内周面C3aに向かい合う側にこの内周面C3aと曲率半径が同一の円弧状をなす円弧状溝壁面112cを有している。
より具体的には、容器嵌着溝112は、調理容器Cの上方環状周壁部分C3の径方向両面に対向配置される一対の溝壁面112a、112bおよびこれらの底面を構成する溝壁面112cを有している。
この一対の溝壁面112a、112bのうち一方の溝壁面112aが、上下一対の容器保持部110、120によって調理容器Cを片持ち保持した状態で、上方環状周壁部分C3の径内方側の円弧状の内周面C3aに対向配置される円弧状溝壁面112d、および、容器嵌着溝112の入り口に設けて上方環状周壁部分C3を溝奥側の嵌め込み完了位置へ誘導する溝内誘導面112eを含んでいる。
【0050】
そして、この容器嵌着溝112の円弧状溝壁面112dは、容器嵌着溝112の一方の溝壁面112aの奥側領域を形成し、この容器嵌着溝112に嵌めこみ完了された上方環状周壁部分C3の内周面C3aが対向配置されるようになっている。
【0051】
さらに、溝内誘導面112eは、容器嵌着溝112の入り口の溝幅を最大にするように入り口から円弧状溝壁面112dが形成された溝の奥側位置までの区間で傾斜して設けられている。
なお、円弧状溝壁面112dが形成された溝壁面112aに向かい合う溝壁面112bは、
図6Aに示すように、直線状に形成されている。
【0052】
このような容器嵌着溝112は、調理容器Cの上方環状周壁部分C3に対して遊篏自在に形成されている。
【0053】
外周面当接部分113は、調理容器Cの容器外周面C1cに回転自在に当接するローラであり、上部保持本体111の上部から調理容器Cに向かい合う側に迫出して設けられている。
【0054】
そして、下部容器保持部120は、押し込み片122と、調理容器Cの容器外周面C1cに当接される外周面当接部分123と、を備えている。
【0055】
さらに、この押し込み片122は、下部容器保持部120の本体部分を構成する下部保持本体121に設けられ、下方環状周壁部分C4の内周面C4aに対向配置される円弧状壁面122aを有している。
また、下部容器保持部120は、下方環状周壁部分C4の端面に向かい合う保持面122bと押し込み片122の円弧状壁面122aとで略L字状の面を形成している。
【0056】
下部容器保持部120の外周面当接部分123は、下部保持本体121に回転自在に設けられたローラであり、下部保持本体121の下部から調理容器Cに向かい合う側に迫出して設けられている。
【0057】
図4に示すように、保持用駆動部130は、トグル機構131と、駆動源となる回転モーター132とを有している。
【0058】
このトグル機構131は、
図7に示すように、四節回転連鎖を用いており、4つの回り対偶131a、131b、131c、131dと4つの節131e、131f、131g、131hとから構成されている。
そして、トグル機構131は、一つの節131eに対して回転モーター132からの動力がギアGを介して伝達され、他の一つの節131hが下部容器保持部120に連結して回転モーター132から伝達された動力を下部容器保持部120に伝達している。
このようにトグル機構131によって回転モーター132からの動力を伝達された下部容器保持部120は、トグル機構131の一つの回り対偶131aを回転中心として回動することによって、容器保持位置および容器保持解放位置の間を円弧状の軌跡に沿って可変するようになっている。
【0059】
そして、上下一対の容器保持部110、120および保持用駆動部130は、保持部支持体140に支持され、この保持部支持体140が腕状部150を介して容器変位用駆動部160に接続されている。
これにより、この容器変位用駆動部160により、上下一対の容器保持部110、120によって片持ち保持された調理容器Cが、調理動作に応じて変位されるようになっている。
【0060】
容器変位用駆動部160は、
図4に示すように、駆動源となる昇降用回転モーター161aを含んで保持部支持体140を昇降移動する例えば昇降シリンダーからなる昇降用駆動機構161と、駆動源となる回転モーター162aを含んで保持部支持体140を水平方向の回転軸A1を中心として回転する回転用駆動機構162と、上下一対の容器保持部110、120によって保持された調理容器Cを水平面上の異なる位置に旋回させる旋回用駆動機構163とを有している。
【0061】
そして、回転用駆動機構162は、腕状部150を介して保持部支持体140に連結している。
また、この保持部支持体140に連結した回転用駆動機構162は、昇降自在に昇降用駆動機構161に連結されている。
これにより、保持部支持体140は、昇降用駆動機構161によって回転用駆動機構162と共に昇降自在となり、下降完了位置および上昇完了位置あるいはその間の高さ位置にて回転用駆動機構162によって回転自在となっている。
【0062】
また、旋回用駆動機構163は、駆動源となる旋回用回転モーター163aを含んで保持部支持体140を水平面上に旋回させるようになっている。
より具体的には、旋回用駆動機構163は、回転用駆動機構162が連結した昇降用駆動機構161を底部側から上下方向の回転軸A2を中心として回転自在に軸支し、旋回用回転モーター163aによる駆動力によって保持部支持体140を上下方向の回転軸A2を中心として旋回させる。
【0063】
そして、昇降用駆動機構161、回転用駆動機構162および旋回用駆動機構163は、ユニット本体170内に組み込まれ、このユニット本体170が移送ユニット200の後述のスライダー220上に設けられている。
【0064】
このような本実施形態の調理容器保持ユニット100は、
図3Aに示すように、上下一対の容器保持部110、120を保持および保持解放動作するための可動軸、保持部支持体140を水平方向の軸を中心に回転するための可動軸、保持部支持体140を昇降するための可動軸、および、保持部支持体140を旋回するための可動軸の合計4つの可動軸を有している。
【0065】
<移送ユニット200の具体的構成について>
移送ユニット200は、調理容器保持ユニット100を調理容器の複数の搬送位置P1~P5(
図1参照)に移送するものであり、
図4に示すように、調理容器保持ユニット100の移送方向に沿って延設した移送ガイド枠210と、移送ガイド枠210上を移送方向に沿ってスライド自在に設けたスライダー220と、移送ガイド枠210の内部に移送方向に沿って延設してスライダー220を移送方向に移動自在にガイドするガイドレール230と、スライダー220を移送方向に移動するスライダー駆動部240と、を有している。
【0066】
そして、この移送ガイド枠210は、例えば、台座B上に設けられ、内部には、移送ユニット200の各部、すなわち、ガイドレール230およびスライダー駆動部240が組み込まれている。
【0067】
スライダー220は、調理容器保持ユニット100を載置するユニット載置台221と、ガイドレール230の側部に移送方向に沿って設けた突条部分に係合してガイドレール230にスライド自在に連結するレール連結部分222と、を備えている。
【0068】
そして、スライダー駆動部240は、駆動源となる回転モーター241と、回転モーター241に接続された駆動ギアと駆動ギアに対して移送方向に離間して設けた従動ギア(図示省略)との間に架け渡された駆動ベルト242と、駆動ベルト242とスライダー220とを連結する連結金具243とを備えている。
このような移送ユニット200は、スライダー駆動部240の回転モーター241が駆動され、駆動ベルト242が回転されることによって連結金具243を介して駆動ベルト242に連結したスライダー220がガイドレール230に沿って移動する。
このようにしてスライダー220が移動することによって、スライダー220に載置された調理容器保持ユニット100がパスタ料理に関連した各装置に対応した移送位置に移送される。
【0069】
<調理容器自動搬送装置1が組み込まれたパスタ料理自動提供システムの構成について>
次に、調理容器自動搬送装置1が組み込まれたパスタ料理自動提供システムの構成について、
図8を参照しながら説明する。
ここで、
図8は、パスタ料理自動供給システムの構成図である。
このパスタ料理自動提供システムは、
図8に示すように、制御装置CDを有し、この制御装置CDがパスタ料理自動提供システムのシステム全体を統括的に制御している。
制御装置CDは、例えば、注文入力装置D1、冷凍麺供給装置D2、麺受取り装置D3、具材供給装置D4、加熱調理装置D5、盛付装置D6、および、洗浄装置D7の各制御ユニット(図示省略)に制御線を介して接続される。
また、制御装置CDは、調理容器自動搬送装置1を制御する制御ユニット300に接続し、制御ユニット300が制御装置CDからの指令信号に基づいて調理容器保持ユニット100および移送ユニット200を制御することによって、パスタ料理自動提供システムにおける調理容器Cを用いたパスタ料理の一連の調理を自動で実行する。
【0070】
そして、制御ユニット300は、調理容器保持ユニット100および移送ユニット200それぞれの駆動源に対してドライバを介して接続されている。
より具体的には、制御ユニット300は、保持用駆動部130の駆動源である回転モーター262、容器変位用駆動部の駆動源である昇降用回転モーター161a、回転モーター162a、および旋回用回転モーター163aに接続されている。
【0071】
また、前述した制御ユニット300は、移送ユニット200のスライダー駆動部240の回転モーター241に接続されている。
【0072】
<調理容器保持ユニット100の具体的動作について>
まず、調理容器保持ユニット100の上下一対の容器保持部110、120によって片持ち保持された調理容器Cの動作について、
図1を参照しながら説明する。
上述したように、調理容器保持ユニット100は、移送ユニット200によって具材供給位置(P1)、麺受け取り位置(P2)、加熱調理位置(P3)、盛付位置(P4)、洗浄位置(P5)に調理容器Cを搬送する。
調理容器保持ユニット100によって各位置に搬送された調理容器Cは、調理容器保持ユニット100によって各装置による調理に応じた位置、あるいは姿勢に変位される。
【0073】
例えば、具材供給位置(P1)(
図1参照)では、具材供給装置D4から調理容器C内にパスタの具材を供給するため、具材供給位置(P1)に調理容器Cを載置する。
ここで、調理容器保持ユニット100が保持部支持体140を下降移動することによって、調理容器Cが具材供給位置(P1)に載置される。
この保持部支持体140の下降動作の際、調理容器Cは、容器外周面C1cの上部領域を上部容器保持部110に対して離したり近づけたりするように動こうとするものの、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が調理容器保持ユニット100の周壁当接部分112に当接し、調理容器Cの容器外周面C1cが調理容器保持ユニット100の外周面当接部分113、123に当接しているため、ガタツキが抑制される。
また、保持部支持体140が下降位置に移動完了した状態で、調理容器Cが、自重によって容器外周面C1cの上部領域を上部容器保持部110に対して離すように傾こうとするものの、周壁当接部分112および外周面当接部分123によってこの傾きが抑制される。
特に、調理容器Cが、容器外周面C1cを下部容器保持部120に近づけるように傾くことを下側の外周面当接部分123によって効果的に防いでいる。
なお、保持部支持体140の上昇動作の際にも、同様にして調理容器Cのガタツキおよび傾きが抑制される。
【0074】
また、例えば、洗浄位置(P5)(
図1参照)では、上下反転して開口を下方に向けた調理容器C内に洗浄水を噴射して調理容器Cを洗浄するため、調理容器保持ユニット100が保持部支持体140を水平方向の軸A1を中心に回転することによって調理容器Cを上下反転する。
この保持部支持体140の回転動作の際、調理容器Cは、容器外周面C1cの上部領域を上部容器保持部110に対して離したり近づけたりするように動こうとするものの、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が調理容器保持ユニット100の周壁当接部分112に当接し、調理容器Cの容器外周面C1cが調理容器保持ユニット100の外周面当接部分113、123に当接しているため、ガタツキが抑制される。
また、保持部支持体140が反転完了した状態で、調理容器Cが、自重によって容器外周面C1cの上部領域を上部容器保持部110に近づくように傾こうとするものの、周壁当接部分112および外周面当接部分113によってこの傾きが抑制される。
特に、調理容器Cが、容器外周面C1cを上部容器保持部110に近づけるように傾くことを上側の外周面当接部分113によって効果的に防いでいる。
【0075】
また、例えば、具材供給位置(P1)(
図1参照)における、保持部支持体140の旋回動作の際、調理容器Cが旋回方向に振られて動こうとしても、調理容器Cの上方環状周壁部分C3の内周面C3aが容器嵌着溝112の円弧状溝壁面112cに当接するため、調理容器Cに生じがちな旋回方向のガタツキを防いでいる。
【0076】
このような調理容器Cの傾きおよびガタツキは、調理容器保持ユニット100が、移送ユニット200によって、具材供給位置(P1)、麺受け取り位置(P2)、加熱調理位置(P3)、盛付位置(P4)、および洗浄位置(P5)の各搬送位置に移送される際にも同様に防ぐことができる。
【0077】
次に、調理容器保持ユニット100の上下一対の容器保持部110、120による調理容器Cの保持動作および保持解放動作について、
図9Aおよび
図9Bを参照しながら説明する。
ここで、
図9Aは、調理容器保持ユニット100が調理容器Cを装着する際の位置決めする動作説明図であり、
図9Bは、上下一対の容器保持部110、120によって調理容器Cを保持する際の手順を説明する図である。
【0078】
調理容器保持ユニット100は、例えば、具材供給位置(P1)にて、具材供給装置D4から調理容器C内にパスタの具材を供給するため、調理容器Cを保持解放して具材供給位置(P1)に載置する。
その後、調理容器保持ユニット100は、具材供給装置D4によって内部に具材が供給された調理容器Cを片持ち保持して麺受け取り位置(P2)に移送する。
つまり、具材供給位置(P1)では、調理容器保持ユニット100による調理容器Cの保持および保持解放動作が行われる。
【0079】
まず、調理容器保持ユニット100が、具材供給位置(P1)に載置された調理容器Cを保持する動作について説明する。
調理容器保持ユニット100は、上下一対の容器保持部110、120を保持解放状態、つまり開いた状態にして、上部容器保持部110の容器嵌着溝112に調理容器Cの上方環状周壁部分C3を嵌めこむことができるように調理容器Cの位置決め動作を行う。
【0080】
この調理容器保持ユニット100による調理容器Cの位置決め動作としては、例えば、
図9Aに示すように、旋回用駆動機構163によって、保持部支持体140を上下方向の回転軸A2を中心に旋回して、上部容器保持部110に設けた外周面当接部分113を具材供給位置(P1)に載置された調理容器Cの容器外周面C1cに当接し、調理容器Cを上下一対の容器保持部110、120によって保持可能な位置に位置決めする。
この調理容器保持ユニット100による調理容器Cの位置決め動作によって、調理容器Cが具材供給装置D4にずれて載置されていた場合、調理容器保持ユニット100の上側の外周面当接部分113によって押し動かされて所定の位置に位置決めされる。
なお、本実施形態では、上下一対の容器保持部110、120が調理容器Cの容器外周面C1cおよび容器外周面C1cの全周に亘る上方環状周壁部分C3のいずれかの部分に当接して調理容器Cを片持ち保持するようになっている。
このため、調理容器Cが周方向の向きによらず上下一対の容器保持部110、120によって調理容器Cを保持することができる。つまり、上下一対の容器保持部110、120によって調理容器Cを保持する際、調理容器保持ユニット100によって調理容器Cの周方向の位置決めを行う必要がない。
【0081】
調理容器保持ユニット100は、調理容器Cを保持可能な位置に位置決めされる。位置決めされた位置において、外周面当接部分113が容器外周面C1cに当接した時には、保持部支持体140は、上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112に挿入されていない高さ位置にある(
図9B(A)参照)。このように位置決めされた後、保持部支持体140を下降移動し、上部容器保持部110に設けた容器嵌着溝112内に上方環状周壁部分C3を上方から嵌め込む(
図9B(B)、
図9B(C)参照)。
このとき、調理容器Cに多少の寸法のばらつきがあったとしても、あるいは、調理容器Cに多少の傾きがあったとしても、上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112の溝内誘導面112eによって溝の入り口から溝の奥側の嵌め込み完了位置へ誘導される(
図9B(B)参照)。
また、容器嵌着溝112の溝壁面112bの下方に連続して延出された面が調理容器Cの上方環状周壁部分C3が突き当てられる面として機能される。
また、上部容器保持部110の容器嵌着溝112が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3に対して遊篏自在に形成されているため、上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112に容易に嵌め込まれる。
【0082】
こうして上方環状周壁部分C3が上部容器保持部110の容器嵌着溝112に嵌め込まれると(
図9B(C)参照)、上方環状周壁部分C3の径方向両面が容器嵌着溝112の一対の溝壁面112a、112bにそれぞれ対向配置される。
特に、上方環状周壁部分C3の内周面C3aは、容器嵌着溝112の円弧状溝壁面112cに対向配置される。
なお、上側の外周面当接部分113はローラであるため、保持部支持体140は、調理容器Cの容器外周面C1cに突き当てた状態を保ちながらローラを回転させて滑らかに下降移動される。
【0083】
調理容器Cの上方環状周壁部C3が上部容器保持部110の容器嵌着溝112に嵌め込まれた後、調理容器保持ユニット100は、下部容器保持部120を容器保持解放位置から容器保持位置に向けて回動開始する(
図9B(D)参照)。
ここで、調理容器Cの容器外周面C1cに対してローラである下側の外周面当接部分123を滑らかに当接しながら回動するため、下部容器保持部120が調理容器Cの容器外周面C1cを削りながら回動することを防いでいる。
【0084】
最後に、下部容器保持部120が、調理容器Cの容器保持位置まで回動することによって上下一対の容器保持部110、120による調理容器Cの保持動作が完了する(
図9B(E)参照)。
上下一対の容器保持部110、120による調理容器Cの保持動作が完了すると、調理容器Cの容器外周面C1cが下部容器保持部120の外周面当接部分123によって下方側から押されて、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112の溝壁面、すなわち、円弧状溝壁面112dに当接し、調理容器Cの容器外周面C1cが上部容器保持部110および下部容器保持部120のそれぞれに設けた外周面当接部分113、123に当接する。
【0085】
なお、容器嵌着溝112が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3に対して遊篏自在に形成されているものの、上下の外周面当接部分113、123が調理容器Cの容器外周面C1cに当接することによって、調理容器Cに傾きがあった場合にも、この傾きが調整される。これによって、上方環状周壁部分C3と容器嵌着溝112との距離および容器嵌着溝112内での上方環状周壁部分C3の傾きが調整されため、外周面C3bと溝壁面112bとの間に遊びがある状態で、上方環状周壁部分C3の内周面C3aが円弧状溝壁面112dに押し当てられる。また、下方環状周壁部分C4の内周面C4aが円弧状壁面122aに押し当てられる。
【0086】
また、下部容器保持部120には、トグル機構131の一つの回り対偶131aを回転中心として円弧状の移動軌跡に沿って回動する際に下方環状周壁部分C4の下部部位に引っ掛かる原因となる壁が押し込み片122に対向する側に存在しない。
このため、下部容器保持部120は、調理容器Cに引っ掛けることなくスムーズに回動される。
【0087】
上下一対の容器保持部110、120による調理容器Cの保持動作が完了すると、下部容器保持部120の外周面当接部分123によって調理容器Cの容器外周面C1cが下方側から押され、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112の円弧状溝壁面112dに当接し、調理容器Cの容器外周面C1cが上部容器保持部110および下部容器保持部120のそれぞれに設けた外周面当接部分113、123に当接する。
なお、容器嵌着溝112が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3に対して遊篏自在に形成されているものの、上下一対の外周面当接部分113、123が調理容器Cの容器外周面C1cに当接することによって、上方環状周壁部分C3と容器嵌着溝112との距離および容器嵌着溝112内での上方環状周壁部分C3の傾きが調整され、上方環状周壁部分C3の上部部位が容器嵌着溝112の遊びを許容して溝壁面に当接される。
ここで、W1は、上側の外周面当接部分113の端部から容器嵌着溝112の溝壁面112aまでの距離であり、W2は、上側の外周面当接部分113の端部から容器嵌着溝112の溝壁面112bまでの距離である。また、Wc1は、容器外周面C1cから上方環状周壁部分C3の内周面C3aまでの距離であり、Wc2は、容器外周面C1cから上方環状周壁部分C3の外周面までの距離である。例えば、
図5に示すように、寸法関係を
W1≦Wc1<Wc2≦W2 (式1)
に調整する。
図5においては、Wc2<W2とし、外周面C3bと溝壁面112bとの間に適宜の遊びを設けている。この遊びの範囲は特に限定されるものではないが、本実施形態では例えばフランジ部C2及び上方環状周壁部分C3の板厚が1.2mmであるのに対して、外周面C3bと溝壁面112bとの間の遊びは1.3~2.4mmに設定している。
また、上部容器保持部110の容器嵌着溝112が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3の上方部位の内周面C3aに向かい合う側に内周面C1cと曲率半径が同一の円弧状溝壁面112dを有しているため、調理容器Cの寸法精度を高めれば、上方環状周壁部分C3の内周面C3aを円弧状溝壁面112dに面接触させることも可能である。また、調理容器Cの寸法精度にばらつきがあったとしても、少なくとも2箇所での点接触ないし線接触が可能であるため、調理容器保持ユニット100は寸法精度によらず調理容器Cを安定して保持することが可能である。
【0088】
次に、調理容器保持ユニット100が、具材供給位置(P1)にて調理容器Cを保持解放する動作について説明する。
調理容器保持ユニット100が調理容器Cを保持解放する動作としては、上述の保持動作とは逆の動作を行うことになる。
すなわち、移送ユニット200によって具材供給位置(P1)に移送された調理容器保持ユニット100が調理容器Cを具材供給位置(P1)に載置可能な高さ位置まで下降する。
ここで、調理容器保持ユニット100は、調理容器Cを具材供給位置(P1)に載置可能な高さ位置まで保持部支持体140を下降する(
図9B(E)参照)。
【0089】
その後、調理容器保持ユニット100が、下部容器保持部120を容器保持位置から容器保持解放位置に向けて回動する(
図9B(D)参照)。
ここで、下部容器保持部120は、調理容器Cの容器外周面C1cに対して下側の外周面当接部分123を当接させながら容器保持解放位置に向けて回動する。
このため、下部容器保持部120が調理容器Cの容器外周面C1cを削りながら回動することを防ぐことができるようになっている。
特に、外周面当接部分123についても上側の外周面当接部分113と同様にローラであるため、外周面当接部分123を調理容器Cの容器外周面C1cに回転させながら滑らかに突き当てることができる。
また、下部容器保持部120は、回動する際に下方環状周壁部分C4の下部部位に引っ掛かる原因となる壁が押し込み片122に対向する側に存在しないため、上下一対の容器保持部110、120による調理容器Cの保持解放動作を調理容器Cに引っ掛かることなくスムーズに行うことができる。
【0090】
下部容器保持部120が容器保持解放位置まで回動すると(
図9B(C)参照)、調理容器Cを下側から支持するものがなくなり、調理容器Cが自重によって下方に移動して(
図9B(B)参照)、具材供給位置(P1)に載置される(
図9B(A)参照)。
【0091】
<本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100およびこれを組み込んだ調理容器自動搬送装置1が奏する効果について>
上述したような本実施形態の調理容器保持ユニット100が奏する作用効果は、以下のとおりである。
【0092】
(1)本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100は、食材を収容自在に受け入れる円筒状の容器本体C1とこの容器本体C1の容器外周面C1cに周設したフランジ部C2から上下方向に延出して容器本体C1と同心円状をなす横T字状断面を呈する環状周壁部分C3、C4とで構成された調理容器Cをその周方向の向きによらず着脱自在に片持ち保持するために、調理容器Cの環状周壁部分C3、C4を挟み込んで調理容器Cの容器外周面C1cに当接する上下一対の上部容器保持部110、下部容器保持部120と、これら上部容器保持部110、下部容器保持部120によって調理容器Cを着脱自在に片持ち保持する保持用駆動部130とを備えていることにより、調理容器Cを片持ち保持する際に、保持用駆動部130によって操作する上下一対の上部容器保持部110、下部容器保持部120が、調理容器Cの環状周壁部分C3とこの環状周壁部分C3と上下方向および容器径方向に離れた容器外周面C1cとに当接して調理容器Cの自重による偏荷重を分担して受け持ち、従来のような調理容器の環状周壁部分のみで調理容器の全自重を集中的に片持ち把持していた把持部材に比較すると、調理容器Cの環状周壁部分C3と容器外周面C1cとで調理容器Cをより確実に位置決め保持するため、例えば、洗浄工程において調理容器Cの上下姿勢を片持ち状態の軸心を中心に容器底部を上向きとなるように反転させる際に調理容器Cの変位に伴って生じがちな上下姿勢のガタツキを抑制し、調理容器Cの安定した変位動作を実現することができる。
そして、この保持用駆動部130によって保持した調理容器Cを調理動作に応じて変位させる容器変位用駆動部160とを備えていることにより、保持用駆動部130と容器変位用駆動部160の動力源をそれぞれ小型化できるため、調理容器保持ユニット100の省スペース化を達成し、調理容器Cを変位させる範囲を拡大することができる。
【0093】
(2)上部容器保持部110が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝112を備えているとともに、下部容器保持部120が、調理容器Cの容器外周面C1cに当接する外周面当接部材を備えていることにより、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が上部容器保持部110の容器嵌着溝112内に嵌め込まれて下部容器保持部120の外周面当接部材123が調理容器Cの容器外周面C1cに押し付けられると、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112内を形成する一対の溝壁面112a、112bの双方に寄りかかって2か所で斜めに当接するとともに調理容器Cの容器外周面C1cが外周面当接部材123に当接する、所謂、3点支持状態となるため、上下一対の上部容器保持部110と下部容器保持部120で調理容器Cを保持する際に、調理容器Cの上方環状周壁部分C3と容器外周面C1cとが確実に位置決めされて係止された片持ち状態を保持することができる。
また、上部容器保持部110が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3を遊嵌状態で嵌め込む容器嵌着溝112を備えていることにより、調理容器保持ユニット100が調理容器Cを装着する際に、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が上部容器保持部110の容器嵌着溝112との間で遊嵌状態となる分だけ容器装着に要する隙間が確保されるため、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112内に嵌め込み易くなり、調理容器Cに対して簡便な装着操作を達成することができる。
さらに、上述した上部容器保持部110の容器嵌着溝112が、調理容器Cの上方環状周壁部分C3と同心円となる円弧状溝壁面112dで構成されていることにより、調理動作に応じて調理容器Cを水平面内で旋回するように変位させる際に、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が上部容器保持部110の容器嵌着溝112に対して面接触状態となって旋回による遠心力が生じても両者の相対的位置ずれが抑制されるため、調理動作に応じて調理容器Cを水平面内で旋回するように変位させる際に上部容器保持部110における調理容器Cの旋回方向のガタツキを解消することができるばかりでなく、旋回速度が増大しても調理容器Cのガタツキを抑制しつつ、調理時の旋回変位に要する作業速度をより一段と高めることができる。
【0094】
(3)下部容器保持部120が、調理容器Cの容器外周面C1cに当接するローラからなる外周面当接部材123と、調理容器Cの下方環状周壁部分C4を下方から上方へ押し込む押し込み片122とを備えていることにより、調理容器保持ユニット100に調理容器Cを装着する際に、押し込み片122が上部容器保持部110の容器嵌着溝112内に嵌め込まれた調理容器Cの上方環状周壁部分C3を上部容器保持部110の容器嵌着溝112内から不用意に脱落しないように下方から上方へ押し込まれるとともに、ローラからなる外周面当接部材123が調理容器Cの容器外周面C1cに円滑に押し当てられるため、調理容器保持ユニット100が、調理容器Cを上部容器保持部110の容器嵌着溝112内から不用意に脱落させることのないように調理容器Cを確実に装着することができる。
【0095】
(4)保持用駆動部130が、押し込み片122に連結されたトグル機構131を有していることにより、可動側となる下部容器保持部120に駆動源からの駆動力が増幅して伝達されるため、駆動源から得られる駆動力を上下一対の上部容器保持部110と下部容器保持部120による大きな保持力に増幅させることができ、結果的に、モーター等の駆動源のサイズを小さく抑えて装置を小型化することができる。
【0096】
(5)本発明の一実施形態である調理容器保持ユニット100を組み込んだ調理容器自動搬送装置1が奏する作用効果は、以下のとおりである。
すなわち、本発明の一実施形態である調理容器自動搬送装置1は、上述した調理容器保持ユニット100と、この調理容器保持ユニット100を移送する移送ユニット200と、調理容器保持ユニット100と移送ユニット200とを駆動制御する制御ユニット300とを備えた調理容器自動搬送装置1であって、移送ユニット200が、調理工程ラインに沿って設けられていることにより、調理容器保持ユニットが、調理容器Cの上方環状周壁部分C3と容器外周面C1cとに当接して調理容器Cの自重による偏荷重を分担して片持ち保持し、例えば、洗浄工程において調理容器Cの上下姿勢を片持ち状態の軸心を中心に容器底部を上向きとなるように反転させたり、食材供給装置において調理容器Cを水平面内で旋回させたり、上下方向に昇降させ、制御ユニット300により駆動制御する移送ユニット200が、調理工程ラインに沿って配置された各種の調理位置へ調理容器保持ユニット100を効率よく移送するため、調理容器Cの上下姿勢を反転させる際に生じがちな調理容器Cのガタツキや調理容器Cを水平面内で旋回させる際に生じがちな調理容器Cの旋回方向のガタツキを解消するとともに、調理容器Cの上下反転動作、旋回動作、昇降動作に要する時間を著しく短縮し、しかも、例えば、麺供給装置、茹で器、洗浄機、加熱調理装置、調理容器待機部、食材供給装置、及び、盛付装置などで構成される調理工程ラインにおいて迅速かつ安定した調理容器Cの取り扱い、所謂、使い勝手の良い調理容器Cの取り回しを実現し、調理効率の良いレイアウト設計を達成することができるなど、その効果は甚大である。
【0097】
<変形例>
以上、本発明の実施形態に係る調理容器保持ユニット及び調理容器自動搬送装置を説明したが、各実施形態は本発明の技術思想を具体化するための調理容器保持ユニット及び調理容器自動搬送装置を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、その他の実施形態のものにも等しく適用し得るものであり、また、これらの実施形態の一部を省略、追加、変更することや、実施形態の各態様を組み合わせることも可能である。
【0098】
例えば、上述した実施形態では、周壁当接部分としての容器嵌着溝が上部容器保持部に設けられているが、容器嵌着溝が下部容器保持部に設けられてもよい。この場合、上部容器保持部には容器嵌着溝を設けてもよいが、把持力を確保できる場合には、上部容器保持部には容器嵌着溝を設けなくてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、外周面当接部分としてのローラが上部容器保持部および下部容器保持部の両方に設けられているが、ローラが上部容器保持部および下部容器保持部のいずれか一方に設けられてもよい。
例えば、調理容器を上下反転させない場合、調理容器が容器外周面の上部領域を上部容器保持部から離れるように傾き易く、上部領域を上部容器保持部に近づけるように傾き難くなるため、下部容器保持部のみにローラを設けるようにしてもよい。
また、外周面当接部分は、ローラ以外にも、上部保持本体あるいは下部保持本体の一部によって構成してもよい。例えば、上部保持本体の一部に突出部を設け、外周面当接部分を構成してもよい。
【0100】
さらに、上述した実施形態では、上方環状周壁部分C3の内周面C3aを円弧状溝壁面112dに面接触させる例を説明したが、これは内周面C3aと円弧状溝壁面112dとの曲率が完全に一致する場合にのみ成り立つものであり、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば内周面C3aの曲率が、円弧状溝壁面112dの曲率よりも大きい場合には、両者は1箇所での線接触の状態となる。また、例えば内周面C3aの曲率が、円弧状溝壁面112dの曲率よりも小さい場合には、両者は2か所での線接触の状態となる。
【0101】
上述した実施形態では、円弧状溝壁面112bと112dとの間の容器嵌着溝112の幅寸法については、深さ方向のどこでも同一であるものとして説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、容器嵌着溝112の幅寸法を、深い所ほど(円弧状溝壁面112cに近付くほど)狭くすることができる。この時、容器嵌着溝112の深い所での幅寸法を極端に狭くしていった場合には、容器嵌着溝112溝の深い所では式1の関係が成り立たなくなることがある。すなわち、上方環状周壁部分C3の先端部分において、
W1=Wc1<Wc2=W2 (式2)
となり、さらに深い部分では、
Wc1≦W1<W2≦Wc2 (式3)
となることもある。
【0102】
また、この面接触以外の態様による保持の場合、環状周壁部分を円弧状溝壁面の溝壁面のいずれかの部分で当接させることができ、例えば容器嵌着溝は、対向する溝壁面を溝内方に向けての間隔を狭く形成し、溝内に嵌め込まれた環状周壁部分の先端部が対向する溝壁面に2点で当接するように構成してもよい。調理容器Cの上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112の溝壁面112a、112b、112cのいずれかの部分に2箇所で、点接触ないし線接触により当接されるように調整しておけば、上下一対の外周面当接部分113、123のいずれか一方と合わせて調理容器Cを3箇所での保持、すなわち3点支持により安定した保持が可能となる。なお、
図5aにおいては、上下一対の外周面当接部分113、123によって調理容器Cを2点で支持しているため、調理容器Cの上方環状周壁部分C3が容器嵌着溝112の溝壁面112a、112b、112cに少なくとも1点で当接できれば、調理容器Cを3点で安定に支持することが可能となる。
【0103】
本実施形態では、フランジ部C2の先端には上方環状周壁部分C3及び下方環状周壁部分C4が設けられ、環状周壁部分はフランジ部C2と合わせて断面T字状の環状であるものとして説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。環状周壁部分の環状とは、連続的な環状を意味するものではなく、断続的な環状形状であってもよい。すなわち、環状周壁部分に孔、切り欠き、空隙等が設けられていてもよい。また、上方環状周壁部分C3及び下方環状周壁部分C4だけでなく、フランジ部C2にも、貫通孔C2a、切り欠き、空隙等が設けられていてもよい。
また、環状周壁部分は、断面T字状に限られるものではなく、例えば断面L字状(上向きL字状、下向きL字状)、断面十字状等であってもよい。例えば、断面下向きL字状の場合について、
図2の環状周壁部分から、上方環状周壁部分C3を省略して、フランジ部C2及び下方環状周壁部分C4からなる形状となる。このような断面下向きL字状の環状周壁部分である場合、例えば、下部容器保持部120に下方環状周壁部分C4を嵌合保持するための容器嵌着溝を設け、下部容器保持部120が、該容器嵌着溝により下方環状周壁部分C4保持し、調理容器Cの容器外周面C1cを下方の外周面当接部材123により保持することにより、調理容器Cを安定に保持することが可能である。この場合、例えばフランジ部C2の上方を保持する上部容器保持部110を設け、フランジ部C2の上面を、上部容器保持部110の下面により保持することにより、上方下方の外周面当接部材123、下部容器保持部120及び上部容器保持部110によって調理容器Cを保持することにより、調理容器Cの姿勢制御時にも調理容器保持ユニット100により調理容器Cをより安定して保持することが可能となる。
【0104】
また、上述した実施形態では、調理容器の環状周壁部分に当接される周壁当接部分が容器嵌着溝であるものを例示したが、外周面当接部分とあわせて調理容器に対して3点で当接することができれば、溝以外にも下部容器保持部に設けたような容器規制壁であっても何ら構わない。
【符号の説明】
【0105】
1 ・・・調理容器自動搬送装置
100 ・・・調理容器保持ユニット
110 ・・・容器保持部(上部容器保持部)
111 ・・・上部保持本体
112 ・・・容器嵌着溝(周壁当接部分)
112a、112b、112c・・・溝壁面
112d ・・・円弧状溝壁面
112e ・・・溝内誘導面
120 ・・・容器保持部(下部容器保持部)
121 ・・・下部保持本体
122 ・・・押し込み片
122a ・・・円弧状壁面
122b ・・・保持面
113、123 ・・・外周面当接部分
130 ・・・保持用駆動部
131 ・・・トグル機構
131a~131d ・・・回り対偶
131e~131h ・・・節
132 ・・・回転モーター(駆動源)
140 ・・・保持部支持体
150 ・・・腕状部
160 ・・・容器変位用駆動部
161 ・・・昇降用駆動機構
161a ・・・昇降用回転モーター(駆動源)
162 ・・・回転用駆動機構
162a ・・・回転モーター(駆動源)
163 ・・・旋回用駆動機構
163a ・・・旋回用回転モーター(駆動源)
170 ・・・ユニット本体
200 ・・・移送ユニット
210 ・・・移送ガイド枠
220 ・・・スライダー
221 ・・・ユニット載置台
222 ・・・レール連結部分
230 ・・・ガイドレール
240 ・・・スライダー駆動部
241 ・・・回転モーター
242 ・・・駆動ベルト
243 ・・・連結金具
300 ・・・制御ユニット
C ・・・調理容器
C1 ・・・容器本体
C1c ・・・容器外周面
C2 ・・・フランジ部
C2a ・・・貫通孔
C3、C4 ・・・環状周壁部分
C3a、C4a ・・・内周面
C3b、C4b ・・・外周面