(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】可溶性ポリペプチド、および白血病抑制因子の活性を阻害するためのその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/715 20060101AFI20241105BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241105BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241105BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241105BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241105BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241105BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241105BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241105BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241105BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241105BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
C07K14/715
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/17
A61P35/00
C07K19/00
A61K39/395 Y
(21)【出願番号】P 2021502769
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 US2019042648
(87)【国際公開番号】W WO2020018932
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(74)【代理人】
【識別番号】100201189
【氏名又は名称】安原 二良
(74)【代理人】
【識別番号】100230710
【氏名又は名称】小川 輝
(72)【発明者】
【氏名】ハンター、ショーン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コクラン、 ジェニファー アール.
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-501941(JP,A)
【文献】特表平06-504438(JP,A)
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2003年,Vol.278, No.18,p.16253-16261
【文献】The EMBO Journal,1991年,Vol.10, No.10,p.2839-2848
【文献】Eur. J. Biochem.,2002年,Vol.269,p.2716-2726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/715
C07K 19/00
C12N 15/12
C12N 15/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドであって、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含み、
以下のアミノ酸置換:
(a) L218P、V262A、T273I、およびN277D;または
(b) L218P、N242D、I257V、およびN277D
を含み、
ここで位置の識別は、配列番号2に対するものであり、前記LIFRポリペプチドが、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加された結合親和性を示す、可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項2】
L218Pアミノ酸置換、V262Aアミノ酸置換、T273Iアミノ酸置換、N277Dアミノ酸置換、H240Rアミノ酸置換、
およびI257Vアミノ酸置換を含む、請求項
1に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項3】
I217Vアミノ酸置換
、N242Dアミノ酸置換
、I260Vアミノ酸置換、V262Aアミノ酸置換
、またはそのいずれかの組合せを含む、請求項1
または2に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項4】
さらにI217Vアミノ酸置換、N242Dアミノ酸置換、
およびI260Vアミノ酸置
換を含む、請求項
2に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項5】
配列番号2に対して少なくとも95%の同一性であるアミノ酸配列を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項6】
前記可溶性LIFRポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項7】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプチドを含む、請求項
6に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項8】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、請求項
7に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項9】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、配列番号4に対して少なくとも90%の同一性であるアミノ酸配列を含む可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドを含み、前記gp130ポリペプチドが、対応する野生型gp130ポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加された結合親和性を示し、前記可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドがリンカーを介して融合されている、請求項
6~8のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項10】
第2の請求項1~
9のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドと二量体化されている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項11】
各可溶性LIFRポリペプチドがFcドメインに融合されており、二量体化が前記Fcドメインを介している、請求項
10に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドをコードする核酸。
【請求項13】
請求項
12に記載の核酸を含む、細胞。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドと、
薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
治療有効量の前記医薬組成物を、必要とする個体に投与することを含む方法における使用のための、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記必要とする個体が、がんを有する個体である、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記がんが、膵臓がんである、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項
14~17のいずれか一項に記載の医薬組成物と、必要とする個体に前記医薬組成物を投与するための説明書とを含む、キット。
【請求項19】
前記医薬組成物が、2つ以上の単位剤形で存在する、請求項
18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月20日に出願された米国仮特許出願第62/701,399号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
白血病抑制因子(LIF)は、IL-6スーパーファミリーに属する多機能サイトカインである。Il-6スーパーファミリーの他のメンバーとしては、オンコスタチンM(OSM)、IL-6、IL-11、毛様体神経栄養因子(CNTF)、およびカルジオトロフィン-1(CT-1)が挙げられる。LIF遺伝子は、ヒトとマウスとの間で高度に保存されている(約75%)。LIFタンパク質は、グリコシル化によって修飾されることが多い単量体タンパク質である。グリコシル化されていないLIFタンパク質の分子量は、20~25kDaであり、一方、グリコシル化タンパク質の分子量は、37~63kDaの範囲である。
【0003】
LIFは、自己分泌様式および傍分泌様式の両方により機能する。LIFは、その特異的な受容体(白血病抑制因子受容体-LIFR)に結合し、次いで、糖タンパク質130(gp130)を動員して、JAK/STAT3シグナル伝達経路を含む下流のシグナル経路の活性化を誘導する高親和性受容体複合体を形成する(
図1)。
【0004】
LIFは、腫瘍の発生および進行において、何らかの役割を果たす。白血球細胞の成長を阻害する際のその役割とは対照的に、LIFは、多くの種類の固形腫瘍の発生および進行を促進することが多い。LIFの過剰発現は、培養されたヒトがん細胞の増殖を促進し、様々なヒト腫瘍細胞によって形成される異種移植腫瘍の成長を増加させる。加えて、LIFは、腫瘍細胞の移動および浸潤性を高め、乳がんおよび横紋筋肉腫の転移を促進する。低酸素症は、固形腫瘍におけるLIFの過剰発現に重要な役割を果たす。IL-6およびIL-1βなどのサイトカインも、LIF発現を誘導することができる。
【0005】
加えて、LIFは、膵臓がんにおいて注目され始めている因子である。最近の研究は、遺伝子操作によるまたは抗体阻害を介してかのいずれかで膵臓がんモデルにおけるLIFの阻害が、マウスの寿命を改善し、腫瘍量を減らし、発がんイニシエーションを制限することを示す。最も致命的ながんの1つであるにもかかわらず、膵臓がんの治療選択肢は不足している。LIFを阻害する現在の方法は、抗LIF抗体を採用する。しかしながら、抗体は、LIFの1つの特異的な面を標的とすることのみができるため、受容体結合と完全には競合することができない。さらに、LIFとその受容体との間の内因性相互作用の親和性は非常に高く(約50~100pM)、抗体のみを使用して真に競合するには困難なレベルの親和性である。したがって、LIFを標的とし、LIFの活性/シグナル伝達を阻害する改善された方式が必要である。
【発明の概要】
【0006】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチド、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む可溶性融合タンパク質および二量体が提供される。可溶性ポリペプチドは、白血病抑制因子(LIF)に結合する。特定の態様では、可溶性ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドと比較して、LIFに対して増加した結合親和性を示す。そのような可溶性ポリペプチドをコードする核酸、そのような核酸を含む発現ベクター、ならびにそのような核酸および/または発現ベクターを含む細胞もまた提供される。LIF活性の阻害を必要とする個体(例えば、がんを治療するため)においてLIF活性を阻害する方法を含む、可溶性ポリペプチドを使用する方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】LIFRとgp130を介したLIFシグナル伝達の概略図。
【
図2】本開示の一実施形態による、可溶性ポリペプチドの二量体を使用するLIF活性の阻害の概略図。
【
図3】パネルA:複数のソーティングから単離されたLIFR Ig様ドメインバリアントで観察されたコンセンサス突然変異。パネルB:低い(10pM、100pM)LIF濃度での正規化された合計蛍光結合値から計算されるLIFRバリアントの結合スコア。すべてのスコアは、野生型に対して、酵母表面での差次的発現について正規化された。
【
図4】パネルA:部位特異的突然変異誘発を使用して生成されたLIFRバリアントのまとめ。パネルB:LIFRバリアントの結合スコア。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。
【
図5】ヒトLIFR(青色)に結合するヒトLIF(桃色)のPyMOLモデル化構造において示される、
図4のパネルAからのコンセンサス突然変異。突然変異は赤色で示され、PyMOLを使用して導入される。ループ1、2および3における突然変異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
【
図6】パネルA:複数のソーティングから単離されたgp130 CBMドメインバリアントで観察されたコンセンサス突然変異。パネルB:部位特異的突然変異誘発を使用して生成された変異体gp130バリアントのまとめ。パネルC:gp130バリアントの結合スコア。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。
【
図7】gp130 ELDME構造におけるコンセンサス突然変異。ヒトgp130(桃色)に結合するヒトLIF(青色)の解析された構造において示される、
図6のパネルAからのコンセンサス突然変異の選択。PyMOLを使用して挿入された突然変異は、青緑色で示される。ゾーン1および2における突然変異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
【
図8】ヒトLIFに対する、酵母ディスプレイされたLIFR VPRVVAIDおよびgp130 ELDMEの結合。パネルA:ヒトLIFに結合する、LIFR野生型(WT)(丸)、「PDD」バリアント(L218P-N42D-N277D)(四角)、およびVPRVVAIDバリアント(
図4のパネルAの突然変異)(三角)。VPRVVAIDバリアントのK
Dは、30pMで測定され、これは野生型(WT)と比較して32倍高い親和性である。パネルB:ヒトLIFに結合する、gp130野生型(WT)(丸)、「8M」バリアント(E4K-K5R-N14D-K45E-F46L-K83R-Y95D-N100S)(四角)、およびELDMEバリアント(
図4のパネルAの突然変異)(三角)。ELDMEバリアントのK
Dは、5nMで測定され、これは野生型(WT)と比較して12倍高い親和性である。
【
図9】本開示のホモ二量体およびヘテロ二量体の可溶性LIFRおよび/またはgp130融合構築物の例の概略図(パネルC~F)。パネルA:gp130結合面を標的とする抗LIFモノクローナル抗体「G1」。パネルB:LIFR結合面を標的とする抗LIFモノクローナル抗体「L1」。パネルC:gp130 CBMドメイン(ELDME)Fc融合体。パネルD:LIFR CBMI-Ig様CBMIIドメイン(VPRVVAID)Fc融合体。パネルE:LIFR CBMI-Ig様CBMIIドメイン(VPRVVAID)-gp130 CBMドメイン(ELDME)Fc融合体。これはホモ二量体であり、5x Gly4Serリンカーを使用して融合されたLIFRおよびgp130を有する。パネルF:LIFR CBMI-Ig様CBMIIドメイン(VPRVVAID)-gp130 CBMドメイン(ELDME)ヘテロ二量体Fc融合体。このバリアントは、Fcの一方のアームにLIFRを有し、Fcの他方のアームにgp130を有する。すべてのバリアントは、首尾良く発現され、精製された。
【
図10】精製されたLIF阻害剤の結合。KinExAを使用して測定される、可溶性ヒトLIFに結合するLIFR CBMI-Ig様CBMII野生型Fc融合体(丸)、LIFR CBMI-Ig様CBMII(VPRVVAID)Fc融合体(三角)、およびLIFR CBMI-Ig様CBMII(VPRVVAID)-gp130 CBM(ELDME)Fc融合体(ひし形)。K
D値は、KinExAソフトウェアによってから計算され、近似曲線が示される。
【
図11】ホモ二量体LIF阻害剤は、一度に複数のLIFに結合する。パネルA:複数LIFの結合アッセイの概略図。LIFが酵母表面上に提示される。阻害剤は、飽和濃度でインキュベートされ、過剰分は洗い流される。次に、LIF-Hisを、10nMおよび100nMの濃度で阻害剤結合酵母と共に培養する。結合は、LIFのHis-タグドメインを介して検出され、これは阻害剤が一度に複数のLIFに結合することができ、「ブリッジ」として作用する場合にのみ存在するはずである。パネルB:複数LIFの結合実験からの結果。LIFが酵母上に提示され、LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-Fc、または抗LIF mAbであるL1が、提示されたLIF-Hisと可溶性LIF-Hisとの間の結合ブリッジとして使用された。各条件での抗His蛍光抗体からの蛍光発光が、LIF-Hisを添加していない対照に対して正規化された。
【
図12】競合体の存在下でLIFに結合するとき、組換え阻害剤は、WTと比較して改善されたオフレートを示す。パネルA:競合LIF結合アッセイの概略図。LIFが酵母表面上に提示される。阻害剤は、飽和濃度でインキュベートされ、過剰分は洗い流される。次に、LIF-Hisを、10nMおよび100nMの濃度で阻害剤結合酵母と共に培養する。結合は、阻害剤Fc融合体のFcドメインを介して検出され、これは、高濃度の可溶性LIF-Hisによって、酵母提示されたLIFから競合的に離される。パネルB:競合LIF結合実験からの結果。LIFが酵母上に提示され、LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-Fc、または抗LIF mAbであるL1が結合パートナーとして添加された。過剰な阻害剤を洗い流し、可溶性LIFを競合体として24時間添加した。各条件での抗Fc蛍光抗体からの蛍光発光は、過剰な阻害剤が除去されず可溶性LIFが添加されていない対照に対して正規化された。
【
図13】LIF阻害剤は、LIFに同時に結合する。パネルA:同時結合アッセイの概略図。gp130(示される)およびLIFRが酵母表面上に提示される。LIFは、飽和濃度でインキュベートされ、過剰分は洗い流される。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示される)を、LIF結合酵母と共培養する。結合は、阻害剤のFcドメインを介して検出され、これは、LIFを「ブリッジ」として使用して同時の受容体結合が起こる場合にのみ存在するはずである。パネルB:同時結合実験からの結果。LIFRまたはgp130のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIFが結合ブリッジとして使用された。蛍光発光は、LIFを添加していない対照に対して正規化された、抗Fc蛍光抗体の読み取り値である。LIFR-VPRVVAID-Fc、gp130-ELDME-Fc、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc、LIFR-gp130ホモ二量体融合体-Fc、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の同時結合が示される。
【
図14】LIF阻害剤は、競合して野生型受容体からLIFを分離させる。パネルA:競合結合アッセイの概略図。野生型gp130またはLIFR(示される)が酵母表面上に提示される。ヒトLIF-Hisが飽和濃度でインキュベートされる。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示される)を、過剰量で、LIF結合酵母と共培養する。LIF結合は、LIF上のHis6-タグを介して検出される。阻害剤インキュベーション後に結合したままのLIFが少ないほど、阻害剤はよく競合してWT受容体からLIFを分離させることができている。パネルB:競合結合実験からの結果。野生型LIFRまたはgp130のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIF-Hisで飽和された。結合した比率は、阻害剤無添加に対して正規化された、LIF-Hisから検出された蛍光発光である。LIFR-WT-Fc、gp130-ELDME-Fc(組換え)、LIFR-VPRVVAID-Fc(組換え)、LIFR-gp130融合体-Fc(組換え)、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc(組換え)、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の競合結合が示される。
【
図15】組換え阻害剤は、HeLaルシフェラーゼレポーター細胞における下流STAT3シグナル伝達をブロックする。パネルA:HeLaレポーター細胞におけるLIFシグナル伝達の概略図。LIFは、LIFRとgp130の二量体化を促進し、STAT3のリン酸化、下流のシグナル伝達の活性化、および最終的なSTAT3応答エレメント制御下でのルシフェラーゼの産生を引き起こす。パネルB:異なる濃度のLIFR VPRVVAID Fc、LIFR-gp130融合体組換えFc、およびLIFR WT Fcによる、LIF由来ルシフェラーゼ活性の阻害。パネルC:LIFR Fcまたは融合体Fcの遅延添加時のLIF由来ルシフェラーゼシグナル。パネルD:何桁にもわたる[阻害剤]におけるLIF由来ルシフェラーゼ活性の阻害。LIFR VPRVVAID Fc IC50=35pM、LIFR WT Fcに対して53倍の改善。パネルE:イラスト図-IL-6ファミリーメンバーのLIFおよびOSMに結合するLIFR。グラフ-LIFR VPRVVAID FcまたはLIFR WT Fcと共にインキュベートされた、LIFまたはOSMに由来するルシフェラーゼシグナルの測定値。
【
図16】LIF阻害剤は、膵臓がん細胞におけるLIFシグナル伝達を除去する。パネルA:LIFシグナル伝達の概略図。LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、受容体のヘテロ二量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、チロシン705上のSTAT3をリン酸化する。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、および転写プログラミングの活性化が起こる。したがって、pSTAT3-Y705は、LIFシグナル伝達の読み取り値である。パネルB:135pMのヒトLIFおよび異なる濃度のLIFR-VPRVVAID-Fc(組換え)、LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fc、およびL1抗LIF mAbに曝露された、PANC1(ヒト膵臓がん細胞株)溶解物のウェスタンブロット。パネルC:チューブリンシグナルに対して正規化された、pSTAT3シグナルの定量化。
【発明を実施するための形態】
【0008】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチド、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む可溶性融合タンパク質および二量体が提供される。可溶性ポリペプチドは、白血病抑制因子(LIF)に結合する。特定の態様では、可溶性ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドと比較して、LIFに対して増加した結合親和性を示す。そのような可溶性ポリペプチドをコードする核酸、そのような核酸を含む発現ベクター、ならびにそのような核酸および/または発現ベクターを含む細胞もまた提供される。LIF活性の阻害を必要とする個体(例えば、がんを治療するため)においてLIF活性を阻害する方法を含む、可溶性ポリペプチドを使用する方法もまた提供される。
【0009】
本開示の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法をより詳細に記載する前に、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法が、記載される特定の実施形態に限定されず、当然のことながら変更され得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため、限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。
【0010】
ある範囲の値が提供される場合、文脈上明確に指示されていない限り、下限の単位の10分の1まで、各間に含まれる値は、その範囲の上限と下限との間であり、その記載された範囲内の任意の他の述べられている値またはその間に含まれる値は、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲内に含まれてもよく、また、記載される範囲内の任意の特定の除外される限界を条件として、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法内にも包含される。述べられる範囲が限界の一方または両方を備える場合、それらの含まれる限界のうちのいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法に含まれる。
【0011】
特定の範囲は、数値の前に用語「約」が付された状態で本明細書に提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数字、およびその用語が先行する数字に近接または近似する数字に逐語的支持を提供するために本明細書において使用される。数が特定の列挙された数に近いかほぼ等しいかを決定するにあたり、近似または近似の列挙されていない数は、それが提示されている文脈において具体的に列挙された数と実質的に等価な数であり得る。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法もまた、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の実施または試験において使用され得るが、代表的な例示的な可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法をここで記載する。
【0013】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示かつ記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示のためのものであり、提供される刊行日は、個別に確認を必要とし得る実際の刊行日とは異なる場合があるので、本発明の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法が、その刊行物よりも先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲はいかなる任意選択的な要素も排除するように起草されてもよいことにさらに留意されたい。このように、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使用のための先行基準としての役割を果たすことを意図する。
【0015】
明瞭さのために別の実施形態の文脈中で記載された、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の特定の特徴はまた、単一の実施形態と組み合わせて提供され得ることが認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の様々な特徴は、別々にまたは任意の好適なサブコンビネーションで提供されてもよい。実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、本明細書において、このような組み合わせが実施可能なプロセスおよび/または組成物を内包する程度まで、ありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように開示される。加えて、そのような変数を記載している実施形態に列挙されるすべてのサブコンビネーションも、本発明の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法によって具体的に包含され、そのようなありとあらゆるサブコンビネーションが、個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【0016】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明され例証された個々の実施形態の各々は、本開示の方法の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、または組み合わせられ得る個別の構成要素および特徴を有する。いかなる列挙された方法も、列挙された事象の順序で、または論理的に可能なあらゆる他の順序で実行され得る。
【0017】
可溶性ポリペプチド
上にまとめたように、本開示の態様は、可溶性ポリペプチドを含む。可溶性ポリペプチドは、白血病抑制因子(LIF)(UniProtKB-P15018(ヒト)およびUniProtKB-P09056(マウス))に結合し、LIF活性を阻害する。LIFは、多機能サイトカインであり、その受容体としては、白血病抑制因子受容体(LIFR)(UniProtKB-P42702(ヒト)およびUniProtKB-P42703(マウス))、ならびに糖タンパク質130(gp130)(UniProtKB-P40189(ヒト)およびUniProtKB-Q00560(マウス))が挙げられる。
【0018】
図1、
図15のパネルA、および
図16のパネルAに概略的に示されるように、LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、受容体のヘテロ二量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、チロシン705上のSTAT3をリン酸化する。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、および転写プログラミングの活性化が起こる。
【0019】
本発明のポリペプチドは、LIFRおよび/またはgp130の細胞外(したがって可溶性)部分に基づき、様々な状況での使用が見出される。例えば、可溶性ポリペプチドは、LIF活性の阻害を必要とする個体、例えば、LIF活性の阻害が有益であるがんまたは他の医学的状態を有する個体に投与される場合、治療薬としての使用が見出される。可溶性ポリペプチドは、LIFリガンドの「トラップ」として作用する「デコイ」受容体として使用され得るため、細胞(例えば、がん細胞)の表面上のその天然受容体に結合するためのLIFの利用可能性が、実質的に減少するか、またはなくなり、それによって、LIF活性/シグナル伝達が減少するか、またはなくなる。一実施形態に係るそのようなLIFリガンドトラップの概略図は、
図2に概略的に示される。この例では、可溶性ポリペプチドは二量体化されており、この二量体の各単量体は、フラグメント結晶化可能(Fc)ドメイン208(例えば、ヒトIgG1 Fcドメイン、マウスIgG2a Fcドメインなど)に(直接的または間接的に)融合されたLIFR部分202(ここでは、ヒトLIFRの最初の3つのドメインを含む部分(サイトカイン結合モチーフI-Ig様-サイトカイン結合モチーフII))を含む。
図2に示されるように、二量体は、細胞210の表面上のその天然LIFRおよびgp130受容体からLIFを隔離するLIFリガンドトラップとして作用し、それにより、LIFシグナル伝達/活性を阻害する。本開示の可溶性ポリペプチドはまた、例えば、がん(例えば、膵臓がん)検出のバイオマーカーとしてのLIFを検出するための診断用途において、また、例えば、LIFの生物学的効果を決定するためにLIFシグナル伝達/活性を阻害するための研究用途において、使用が見出される。次に、本開示の可溶性ポリペプチドについてさらに詳細に説明する。
【0020】
可溶性LIFRポリペプチド
本開示は、可溶性LIFRポリペプチドを提供する。「可溶性LIFRポリペプチド」とは、例えば、可溶性LIFRポリペプチドがLIFRの細胞外部分またはそのフラグメントのみを含むために、細胞膜に組み込まれないLIFRポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、可溶性LIFRポリペプチドは、LIFRの最初の3つのドメインを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、それはN末端からC末端に向かう順序で、(1)サイトカイン結合モチーフI(CBMI)ドメイン、(2)Ig様ドメイン、および(3)サイトカイン結合モチーフII(CBMII)ドメインである。以下の表1に、野生型ヒトLIFRのアミノ酸配列(シグナル配列を除く)が示される。下線が引かれているアミノ酸は、CBMI、Ig様、およびCBMIIドメインを構成する。
【表1】
【0021】
特定の態様では、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列の400~489、420~489、440~489、460~489、470~489、475~489、480~489、または485~489の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含む。
【0022】
可溶性LIFRポリペプチドは、野生型LIFRアミノ酸配列を有してもよい。他の態様では、可溶性LIFRポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、LIFに対する結合親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換(例えば、LIFに対するLIFRの結合親和性を増加させる本明細書に記載されるいずれかのアミノ酸置換の1つ以上)、またはそれらの組み合わせを含む「バリアント」である。本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、アミノ酸が、同様の特性を有する別のアミノ酸で置換されたものであり、その結果、ペプチド化学の当業者が、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性の性質が実質的に変わらないと予想するところのものである。特定の実施形態で想定されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造において、改変がなされてもよく、ポリペプチドは、所望な特徴を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子を少なくともほぼ有し、それを依然として得るポリペプチドを含む。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更して、同等の、またはさらに改良されたバリアントポリペプチドを作成することが望ましい場合、当業者は、例えば、コードするDNA配列のコドンの1つ以上を変更することができる。
【0023】
上にまとめたように、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2と少なくとも70%の同一性であるアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、LIFRポリペプチドは、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、LIFに対して増加した結合親和性を示す。本明細書で使用される場合、「対応する」野生型ポリペプチドは、1つ以上の親和性を増加させるアミノ酸置換を含むように組換えされた、親の野生型ポリペプチド(ヒト、マウスなどに由来する)である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「増加した結合親和性」とは、可溶性LIFRポリペプチドまたは可溶性gp130ポリペプチドが、対応する野生型ポリペプチドと比較して、LIFに対して、より強い結合を示す(より低いKD値によって示される)ことを意味する。LIFに対する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドの結合親和性を測定するための方法が利用可能である。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore(商標)2000装置を使用する)、KinExA(登録商標)結合平衡除外アッセイ(Sapidyne Instruments)、Bio-Layer Interferometry(BLI)技術(例えば、ForteBio Octet(登録商標))、または他の同様のアッセイ/技術を用いて、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドが所望な結合親和性を示すかどうかを決定してもよい。本開示の文脈において結合親和性を測定するための好適な手法は、例えば、Hunter,S.A.and Cochran,J.R.(2016)Methods Enzymol.580:21-44に記載されるものを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、直接結合アッセイにおいて、平衡結合定数(KD)は、フルオロフォアまたは放射性同位体に接合した可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド、または標識された抗体による検出のためのN末端またはC末端エピトープタグを含む可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを使用して測定されてもよい。標識またはタグが実行可能ではないか、または望ましくない場合、競合結合アッセイを使用して、標識された競合体の最大シグナルの50%が検出可能である標識されていない可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドの量である、最大半値阻害濃度(IC50)を決定することができる。次いで、測定されたIC50値からKD値を計算することができる。
【0026】
特定の態様では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRポリペプチドは、L218位のアミノ酸置換、およびN277位のアミノ酸置換の一方または両方を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2に対するものである。L218位およびN277位のアミノ酸置換の非限定的な例としては、L218Pアミノ酸置換、およびN277Dアミノ酸置換の一方または両方を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRポリペプチドは、I257位のアミノ酸置換、V262位のアミノ酸置換、およびT273位のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2に対するものである。I257位、V262位、およびT273位のアミノ酸置換の例としては、限定されないが、I257Vアミノ酸置換、V262Aアミノ酸置換、およびT273Iアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含む。
【0028】
特定の態様では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRポリペプチドは、I217位のアミノ酸置換、H240位のアミノ酸置換、およびI260位のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2に対するものである。I217位、H240位およびI260位のアミノ酸置換の非限定的な例としては、I217Vアミノ酸置換、H240Rアミノ酸置換、およびI260Vアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRポリペプチドは、N242位のアミノ酸置換を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2に対するものである。N242アミノ酸置換の非限定的な例は、N242Dアミノ酸置換である。
【0030】
特定の態様では、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列の400~489、420~489、440~489、460~489、470~489、475~489、480~489、または485~489の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性LIFRポリペプチドは、I217位、L218位、H240位、I257位、I206位、V262位、T271位、およびN277位のいずれかに、任意の組み合わせで1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列の400~489、420~489、440~489、460~489、470~489、475~489、480~489、または485~489の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性LIFRポリペプチドは、LIFに対してLIFRの結合親和性を増加させる本明細書に記載のいずれかのアミノ酸置換のうちの1つ以上、例えば、本明細書の他の箇所で記載されるように、任意の組み合わせで、アミノ酸置換I217V、L218P、H240R、I257V、I206V、V262A、T271I、およびN277Dの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または各々を含む。
【0032】
可溶性gp130ポリペプチド
可溶性gp130ポリペプチドもまた、本開示によって提供される。「可溶性gp130ポリペプチド」とは、例えば、可溶性gp130ポリペプチドがgp130の細胞外部分またはそのフラグメントのみを含むために、細胞膜に組み込まれないgp130ポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、可溶性gp130ポリペプチドは、gp130のサイトカイン結合モチーフ(CBM)ドメインを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。以下の表2に、野生型ヒトgp130のアミノ酸配列(シグナル配列を除く)が示される。下線が引かれているアミノ酸は、CBMドメインを構成する。
【表2】
【0033】
特定の態様では、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号4に記載されるアミノ酸配列の150~200、160~200、170~200、180~200、185~200、190~200、または195~200の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含む。
【0034】
可溶性gp130ポリペプチドは、野生型gp130アミノ酸配列を有してもよい。他の態様では、可溶性gp130ポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換、対応する野生型gp130ポリペプチドと比較して、LIFに対する結合親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換(例えば、LIFに対するgp130の結合親和性を増加させる本明細書に記載されるいずれかのアミノ酸置換の1つ以上)、またはそれらの組み合わせを含む「バリアント」である。
【0035】
上にまとめたように、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも70%の同一性であるアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、gp130ポリペプチドは、対応する野生型gp130ポリペプチドと比較して、LIFに対して増加した結合親和性を示す。
【0036】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性gp130ポリペプチドは、K45位のアミノ酸置換を含み、ここで、位置の識別は、配列番号4に対するものである。K45位のアミノ酸置換の非限定的な例は、K45Eアミノ酸置換である。
【0037】
特定の態様では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性gp130ポリペプチドは、Y95位のアミノ酸置換、およびK184位のアミノ酸置換の一方または両方を含み、ここで、位置の識別は、配列番号4に対するものである。Y95位およびK184位のアミノ酸置換の非限定的な例としては、Y95Dアミノ酸置換、およびK184Eアミノ酸置換の一方または両方を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性gp130ポリペプチドは、F46位のアミノ酸置換、およびI130位のアミノ酸置換の一方または両方を含み、ここで、位置の識別は、配列番号4に対するものである。F46位およびI130位のアミノ酸置換の例としては、限定されないが、F46Lアミノ酸置換、およびI130Mアミノ酸置換の一方または両方を含む。
【0039】
特定の態様では、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号4に記載されるアミノ酸配列の150~200、160~200、170~200、180~200、185~200、190~200、または195~200の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性gp130ポリペプチドは、K45位、F46位、Y95位、I130位、およびK184位のいずれかに、任意の組み合わせで1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号4に記載されるアミノ酸配列の150~200、160~200、170~200、180~200、185~200、190~200、または195~200の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性gp130ポリペプチドは、LIFに対してgp130の結合親和性を増加させる本明細書に記載のいずれかのアミノ酸置換のうちの1つ以上、例えば、本明細書の他の箇所で記載されるように、任意の組み合わせで、アミノ酸置換K45E、F46L、Y95D、I130M、およびK184Eの1つ、2つ、3つ、4つ、または各々を含む。
【0041】
融合および二量体タンパク質
本開示の可溶性LIFRポリペプチドまたは可溶性gp130ポリペプチドのいずれかを含む融合タンパク質も提供される。「融合タンパク質」とは、アミノ酸の単一の連続鎖の一部として、1つ以上の異種ポリペプチドに融合した可溶性LIFRポリペプチドまたは可溶性gp130ポリペプチドを含む融合体を意味し、この鎖は、天然には存在しない。特定の態様では、1つ以上の異種ポリペプチドは、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。特定の態様では、融合タンパク質は、可溶性gp130ポリペプチドに融合した可溶性LIFRポリペプチドを含む。
【0042】
本開示の融合タンパク質の2つ以上のドメインは、直接的または間接的に融合されてもよい。例えば、可溶性LIFRポリペプチドは、リンカーを介して間接的に可溶性gp130ポリペプチドに融合されてもよい。また、例として、可溶性LIFRポリペプチドまたは可溶性gp130ポリペプチドは、リンカーを介して異種ポリペプチド(例えば、Fcドメイン)に融合されてもよい。好適なリンカーとしては、限定されないが、ペプチドリンカーが挙げられる。特定の態様では、ペプチドリンカーは、グリシンおよびセリンを含むリンカー、例えば、GlySerリンカーである。目的のGlySerリンカーとしては、限定されないが、(Gly4Ser)nリンカーが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種ポリペプチドは、Fcドメイン、例えば、ヒトFcドメインまたはマウスFcドメインを含む。Fcドメインは、全長Fcドメインまたはそのフラグメントであってもよい。本開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかに融合し得るヒトFcドメインの非限定的な例は、以下の表3に記載の配列(配列番号5)を有するヒトIgG1 Fcドメイン、またはそのフラグメントである。
【表3】
【0044】
本開示の融合タンパク質の例のアミノ酸配列(シグナル配列を除く)は、表4に提供される。リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部))を介してヒトIgG1 Fcドメイン(イタリック体)に融合したgp130ドメイン(下線部)を含む融合タンパク質(「gp130 ELDME hIgG1」)のアミノ酸配列が提供される(配列番号6)。gp130ドメインは、本明細書の他の箇所で記載されるように、アミノ酸置換K45E、F46L、Y95D、I130M、およびK184E(「ELDME」)を含む。この融合タンパク質は、
図9のパネルCに概略的に示される二量体タンパク質の単量体に対応する。リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部))を介してヒトIgG1 Fcドメイン(イタリック体)に融合したLIFRサイトカイン結合モチーフI(CBMI)-サイトカイン結合モチーフII(CBMII)ドメイン(下線部)を含む融合タンパク質(「LIFR VPRVVAID hIgG1」)のアミノ酸配列も表4に提供される(配列番号7)。LIFRサイトカイン結合モチーフI(CBMI)-サイトカイン結合モチーフII(CBMII)ドメインは、本明細書の他の箇所で記載されるように、アミノ酸置換I217V、L218P、H240R、I257V、I206V、V262A、T271I、およびN277D(「VPRVVAID」)を含む。この融合タンパク質は、
図9のパネルDに概略的に示される二量体タンパク質の単量体に対応する。表4は、リンカー(ここでは、5x グリシン
4-セリン
1(G
4S)リンカー、波線の下線部)を介して「gp130 ELDME hIgG1」融合タンパク質のELDME gp130ドメイン(二重下線部)に融合した「LIFR VPRVVAID hIgG1」融合タンパク質のVPRVVAID LIFRドメイン(下線部)を含む融合タンパク質(「LIFR-gp130 VPRVVAID-ELDME hIgG1」)のアミノ酸配列であって、ここで、ELDME gp130ドメインは、リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部)を介してヒトIgG1 Fcドメイン(イタリック体)に融合した、アミノ酸配列も提供する(配列番号8)。この融合タンパク質は、
図9のパネルEに概略的に示される二量体タンパク質の単量体に対応する。表4は、さらに、
図9のパネルFに概略的に示される二量体タンパク質の融合タンパク質単量体のアミノ酸配列を提供する。第1のモノマーは、リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部)を介してヒトIgG1 Fcノブ-イン-ホール(KiH)CH3Aドメイン(イタリック体)に融合した「LIFR VPRVVAID hIgG1」融合タンパク質のVPRVVAID LIFRドメイン(下線部)を含む(配列番号9)。第2のモノマーは、リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部)を介してヒトIgG1 Fcノブ-イン-ホール(KiH)CH3Bドメイン(イタリック体)に融合した「gp130 ELDME hIgG1」融合タンパク質のELDME gp130ドメイン(下線部)を含む(配列番号10)。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0045】
可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、またはこれらを含む融合タンパク質のいずれかと二量体化された、可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、またはこれらを含む融合タンパク質(例えば、表4の融合タンパク質のいずれか、またはそのLIF結合性バリアント)のいずれかを含む二量体タンパク質も提供される。いくつかの実施形態では、各単量体は、Fcドメインを含む融合タンパク質であり、単量体の二量体化は、Fcドメインを介して行われる。本開示の例示的な二量体タンパク質としては、以下の実験の章に記載されるもの、および
図9に概略的に示されるものが挙げられる。
【0046】
可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドの組換え/開発および産生
1つ以上の所望な機能性を有するさらなる可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを組換え/開発する方法も、本開示によって提供される。可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドが開発される様式は、様々であってもよい。合理的かつ組み合わせのアプローチを使用して、新規な特性、例えば、LIFに対して増加した結合親和性および/または特異性を有する可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドを組換えすることができる。例えば、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを開発するために、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのライブラリーを作成し、例えば、細菌ディスプレイ、ファージディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、蛍光活性化細胞選別(FACS)、および/または任意の他の好適なスクリーニング方法によってスクリーニングしてもよい。
【0047】
酵母表面ディスプレイは、新規の分子認識特性、増加した標的結合親和性、適切な折り畳み、および改善された安定性を有するタンパク質を設計するために使用されてきた強力なコンビナトリアル技術である。このプラットフォームでは、所望の生化学的および生物物理学的特性を有する変異体を単離するために、タンパク質変異体のライブラリーがハイスループット様式で生成およびスクリーニングされる。以下の実験の章に示されるように、本願発明者らは、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドを組換えするための酵母表面ディスプレイを首尾良く用いてきた。酵母表面ディスプレイは、真核生物分泌経路、シャペロンの補助による折り畳み、および効率的なジスルフィド結合形成の品質管理機構から利益を得る。
【0048】
目的の望ましい特性を有する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを開発するための1つの例示的な方法は、酵母接合アグルチニンタンパク質Aga2pに可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを遺伝子的に融合することを含み、このタンパク質は、酵母細胞壁タンパク質Aga1pに対して2つのジスルフィド結合によって接続する。このAga2p融合構築物、および染色体に組み込まれたAga1p発現カセットは、ガラクトース誘導性プロモーター等の好適なプロモーターの制御下で発現させることができる。蛍光標識された一次または二次抗体を使用するフローサイトメトリーによって細胞表面発現レベルを測定するために、N末端またはC末端のエピトープタグを含めることができる。この構築物は、最も広く使用されるディスプレイフォーマットを表し、ここで、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのN末端は、Aga2pに融合されてもよいが、酵母表面ディスプレイプラスミドのいくつかの代替変形例が記載されており、本開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを開発するために使用されてもよい。ファージディスプレイまたはmRNAディスプレイで使用されるパニングに基づく方法に勝る、このスクリーニングプラットフォームの利点の1つは、2色FACSを使用して、特定の標的に対する結合親和性がわずか2倍程異なるクローンを定量的に識別することができることである。
【0049】
DNAレベルでLIFRまたはgp130を選択的に突然変異させるために、アプローチの一例は、エラープローンPCRであり、これを使用して、プルーフリーディング(すなわち、エキソヌクレアーゼ)活性を有しないポリメラーゼを使用すること、ヌクレオシドアナログのトリホスフェート誘導体の混合物を使用すること、変化させた比率のdNTPを使用すること、マグネシウムまたはマンガンの濃度を変えることなどを含め、任意の数の変化させた反応条件によって突然変異を導入することができる。代替的に、例えば、オーバーラップエクステンションPCRを使用してオリゴヌクレオチドアセンブリによって、縮重コドンを導入することができる。次いで、酵母における相同組換えのために酵母ディスプレイベクターと十分に重複する隣接プライマーを使用して遺伝物質が増幅され得る。これらの方法により、比較的低コストおよび少ない労力で、LIFRまたはgp130ライブラリーを作成することが可能になる。ライブラリー組成に対する規定された制御を可能にする合成ライブラリーおよび最新の方法が開発されている。
【0050】
特定の態様では、ディスプレイライブラリー(例えば、酵母ディスプレイライブラリー)は、FACSによって目的の標的(例えば、LIF)に対する結合についてスクリーニングされる。ライブラリースクリーニングのために2色FACSを使用してもよく、ここで、1つの蛍光標識を使用してc-mycエピトープタグを検出することができ、他方を使用して、目的の結合標識に対する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドの相互作用を測定することができる。単一細胞分解能で2つの蛍光体の励起および発光特性を測定するために、異なる機器レーザーおよび/またはフィルターセットを使用することができる。これにより、結合と共に酵母の発現レベルを正規化することが可能になる。すなわち、低い酵母発現を示すが大量の標的に結合する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを、高レベルで発現されるが標的に対して弱く結合する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドと区別することができる。したがって、結合対発現の二次元フローサイトメトリープロットでは、対角線上に、標的抗原に結合する酵母細胞の集団が現れる。高親和性結合剤は、ライブラリー選別ゲートを使用して単離することができる。代替的に、初期のソーティングラウンドにおいて、所望な長さのポリペプチドを発現しない望ましくないクローンのライブラリーを除去することが有用であり得る。
【0051】
目的の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドをコードするクローンについての可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドライブラリーの富化後、酵母プラスミドが回収され、配列決定される。高い選別ストリンジェンシー下で、さらなるラウンドのFACSを実施することができる。次いで、酵母に提示されたLIFRまたはgp130ポリペプチドクローンの結合親和性または動的オフレートを測定してもよい。
【0052】
目的のLIFRまたはgp130ポリペプチドが、表面ディスプレイ(例えば、酵母表面ディスプレイ)によって同定されたら、組換え可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド、またはこれを含む任意の融合タンパク質が、好適な方法を使用して産生されてもよい。特定の態様では、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド、またはこれを含む任意の融合タンパク質は、組換えDNAアプローチを使用して産生される。様々な宿主細胞型において、組換え方法を使用してポリペプチドを生成するための戦略が開発されてきた。例えば、機能的な可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドは、E.coliペリプラズム空間における折り畳みを促進し有用な精製ハンドルとして機能するバルナーゼを遺伝子融合パートナーとして用いて産生されてもよい。特定の実施形態によれば、組換え可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドは、酵母(例えば、酵母株Pichia pastorisまたはSaccharomyces cerevesiae)または哺乳動物細胞(例えば、ヒト胎児由来腎臓細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞)において発現される。発現構築物は、1つ以上のタグ(例えば、金属キレートクロマトグラフィー(Ni-NTA)による精製のためのC末端ヘキサヒスタジンタグ)をコードしてもよい。次いで、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、凝集物、誤って折り畳まれた多量体等を除去することができる。
【0053】
本開示の態様は、本開示の可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチド(およびこれを含む任意の融合タンパク質)をコードする核酸を含む。すなわち、本明細書に記載の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかを含む、本開示の可溶性LIFRもしくはgp130ポリペプチドまたは融合タンパク質のいずれかをコードする核酸が提供される。ある特定の態様において、そのような核酸は発現ベクター中に存在する。発現ベクターは、薬剤(例えば、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、プロモーターは、この薬剤を発現するために選択された宿主細胞の種類に基づいて選択される。好適な発現ベクターは、典型的には、エピソームとしてまたは宿主染色体DNAに統合された部分として宿主生物内で複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたこれらの細胞の検出を可能にするために選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、ネオマイシン耐性等)を含む。
【0054】
本明細書に記載の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかを含み、本開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかをコードする核酸を含む宿主細胞、ならびにこれを含む任意の発現ベクターも提供される。大腸菌(Escherichia coli)は、本開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドをコードする核酸をクローニングするために使用することができる原核生物宿主細胞の一例である。使用に好適な他の微生物宿主には、枯草菌等の桿菌、およびサルモネラ菌、セラチア、および様々なシュードモナス種等の他の腸内細菌科が含まれる。これらの原核生物宿主において、発現ベクターを作製することもでき、それは典型的には、宿主細胞と適合性のある発現制御配列(例えば複製起点)を含有するであろう。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはλファージ由来のプロモーター系等の、任意の数の様々な周知のプロモーターが存在するであろう。プロモーターは、典型的には、任意選択的にオペレーター配列を用いて発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了するためのリボソーム結合部位配列等を有するであろう。
【0055】
酵母等の他の微生物もまた、発現に有用である。Saccharomyces(例えばS.cerevisiae)およびピキア(Pichia)は、必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製起点、終結配列等を有する好適なベクターを含む好適な酵母宿主細胞の例である。典型的なプロモーターには、3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖系酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターには、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素からのプロモーターが含まれる。
【0056】
微生物に加えて、哺乳動物細胞(例えば、インビトロ細胞培養で成長させた哺乳動物細胞)を使用して、本開示の可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドを発現し、産生することもできる。好適な哺乳動物宿主細胞には、ヒト細胞系、非ヒト霊長類細胞系、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)細胞系等が含まれる。好適な哺乳動物細胞系として、HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH 3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RAT1細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー等の発現制御配列、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列等の必要なプロセシング情報部位を含み得る。好適な発現制御配列の例は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターである。
【0057】
(例えば、組換えによって)合成されると、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製、ゲル電気泳動等を含む、当該技術分野で既知の標準的な手順に従って精製され得る。主題の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドは、実質的に純粋、例えば、少なくとも約80%~85%純粋、少なくとも約85%~90%純粋、少なくとも約90%~95%純粋、または98%~99%以上純粋であってもよく、例えば、細胞片、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド以外の高分子などの混入物質を含まない。
【0058】
組成物
本開示の可溶性LIFRおよび/または可溶性gp130ポリペプチド(これらを含む任意の融合および/または二量体タンパク質を含む)を含む組成物も提供される。
【0059】
特定の態様では、組成物は、液体媒体中に存在する本開示の可溶性LIFRおよび/または可溶性gp130ポリペプチドを含む。液体媒体は、水、緩衝溶液等の水性液体媒体であってもよい。1つ以上の添加剤、例えば、塩(例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4)、緩衝剤(トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)等)、プロテアーゼ阻害剤、グリセロール等が、そのような組成物中に存在してもよい。
【0060】
医薬組成物もまた提供される。医薬組成物は、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質(これらはいずれも、本明細書で「LIF結合剤」と呼ばれ得る)と、薬学的に許容される担体と、を含む。医薬組成物は、一般に、治療有効量のLIF結合剤を含む。「治療有効量」とは、所望の結果をもたらすのに十分な投薬量、例えば、LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害(例えば、がん、例えば膵臓がん)を有する個体における細胞増殖の減少など、有益または所望な治療(予防を含む)効果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0061】
本開示のLIF結合剤は、治療的投与のために様々な製剤に組み込まれ得る。より具体的には、LIF結合剤は、適切な薬学的に許容される賦形剤または希釈剤と組み合わせることによって、医薬組成物に製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾル剤等の固体、半固体、液体、または気体形態の製剤に製剤化することができる。
【0062】
個体への投与に好適な(例えば、ヒト投与に好適な)本開示のLIF結合剤の製剤は、一般に滅菌であり、選択される投与経路に従って個体に投与するには禁忌である検出可能な発熱物質または他の混入物質をさらに含まない状態であり得る。
【0063】
医薬剤形において、LIF結合剤は、単独で、または他の薬学的に活性な化合物との適切な会合において、および組み合わせて、投与することができる。以下の方法および賦形剤は単なる例であり、決して限定するものではない。
【0064】
経口製剤の場合、LIF結合剤は、単独で、または適切な添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン等の従来の添加剤;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン等のバインダー;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム等の崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;および所望な場合、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香味剤と組み合わせて使用され、錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を作製してもよい。
【0065】
LIF結合剤は、植物油もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高次脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコール等の水性溶媒もしくは非水性溶媒にLIF結合剤を溶解、懸濁または乳化することによって、また、所望な場合、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および防腐剤等の従来の添加剤を用いて、注射用製剤に製剤化することができる。
【0066】
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態、または凍結乾燥形態から再構成された液体形態であってもよく、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌溶液で再構成されるべきである。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的な手順は、一定量の純水(典型的には、凍結乾燥中に除去された体積と当量である)を加え戻すことであるが、非経口投与用の医薬組成物の産生に抗菌剤を含む溶液が使用されてもよい。
【0067】
LIF結合剤の水性製剤は、例えば、約4.0~約7.0、または約5.0~約6.0の範囲のpH、または代替的に約5.5のpH緩衝液中で調製することができる。この範囲内のpHに好適である緩衝液の例には、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液および製剤の所望の張性に応じて、約1mM~約100mM、または約5mM~約50mMであり得る。
【0068】
使用方法
本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質(これらはいずれも、本明細書で「LIF結合剤」と呼ばれ得る)を使用する方法も提供される。特定の実施形態によれば、LIF活性の阻害を必要とする個体に、治療有効量の本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質、または任意のこのようなLIF結合剤を含む医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。特定の態様では、LIF活性の阻害を必要とする個体は、LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有し、投与は、細胞増殖性障害を治療するのに有効である。ある特定の態様において、細胞増殖性疾患はがんである。目的のがんとしては、限定されないが、膵臓がんが挙げられる。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態では、本開示のLIF結合剤または医薬組成物は、LIF結合剤または医薬組成物が有効量で投与される場合に、宿主におけるがん細胞の成長、転移および/または浸潤を阻害する。「がん細胞」とは、例えば、異常な細胞成長、異常な細胞増殖、密度依存的増殖阻害の損失、足場非依存性の増殖能力、免疫無防備状態の非ヒト動物モデルにおける腫瘍の増殖および/もしくは発生を促進させる能力、ならびに/または細胞形質転換の任意の適切な指標のうちの1つ以上によって特徴付けることができる、新生物細胞表現型を示す細胞を意味する。本明細書において「がん細胞」は、「腫瘍細胞」、「悪性細胞」または「がん性細胞」と互換的に使用され得、固形腫瘍、半固形腫瘍、原発腫瘍、転移性腫瘍などのがん細胞を包含する。
【0070】
本開示の方法を使用して治療可能ながんとしては、限定されないが、固形腫瘍、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、大腸がん、腎細胞がん、および本開示のLIF結合剤または医薬組成物を使用して治療され得る任意の他の種類のがんが挙げられる。
【0071】
LIF結合剤は、単独で(例えば、単剤療法において)、または1つ以上のさらなる治療薬剤と組み合わせて(例えば、併用療法において)、投与され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、有効量のLIF結合剤(またはこれを含む医薬組成物)は、単独で(例えば、単剤療法において)、または1つ以上のさらなる治療薬剤と組み合わせて(例えば、併用療法において)、1回以上の用量で投与されたときに、LIF結合剤または医薬組成物を用いる治療が存在しない状態での個体における症状と比較して、個体における細胞増殖性障害(例えば、がん)の症状を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上減少するのに有効な量である。
【0073】
特定の態様では、本開示の方法は、LIF結合剤または医薬組成物が有効量で投与される場合、個体におけるがん細胞の成長、転移および/または浸潤を阻害する。
【0074】
LIF結合剤または医薬組成物は、インビボおよびエクスビボでの方法、および全身および局所的な投与経路を含め、薬物送達に好適な任意の利用可能な方法および経路を使用して、個体に投与されてもよい。従来のおよび医薬的に許容される投与経路としては、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、眼内、静脈内、動脈内、経鼻、経口、および他の経腸および非経口投与経路が含まれる。投与経路は、所望な場合、組み合わされてもよく、またはLIF結合剤および/または所望な効果に応じて調節されてもよい。LIF結合剤または医薬組成物は、単回投与または複数回投与で投与することができる。いくつかの実施形態では、LIF結合剤または医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、LIF結合剤または医薬組成物は、例えば、全身送達(例えば、静脈内注入)のために、または局所部位に、注射によって投与される。
【0075】
様々な個体が本方法に従って治療可能である。一般に、そのような対象は「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳類綱内の生物を説明するために広く使用される。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0076】
「治療すること」または「治療」とは、個体の細胞増殖性疾患(例えば、がん)に関連する症状の少なくとも改善を意味し、改善は、あるパラメータ、例えば、治療される細胞増殖性疾患に関連する症状の程度における少なくとも軽減を指すために広義で使用される。したがって、治療はまた、個体が細胞増殖性疾患、または少なくとも細胞増殖性疾患を特徴付ける症状にそれ以上苦しむことがないように、病的状態または少なくともそれに関連する症状が完全に抑制された、例えば、発生するのを防止された、または停止された、例えば、中止された状況も含む。
【0077】
投薬は、治療される疾患状態の重症度および応答性に依存する。最適な投薬スケジュールは、患者の体内における薬物蓄積の測定値から計算することができる。投与する医師は、最適な投薬量、投薬方法および反復率を決定することができる。最適な投薬量は、個々のLIF結合剤の相対的な効力に応じて変わってもよく、一般に、インビトロおよびインビボでの動物モデルなどにおいて有効であることがわかっているEC50に基づいて推定され得る。一般に、投薬量は、体重1kgあたり0.01μg~100gであり、1日、1週間、1ヶ月、または1年に1回以上投与され得る。治療する医師は、測定された滞留時間、および体液または組織中の薬物の濃度に基づいて、投与の繰り返し率を推定することができる。治療が成功した後、疾患状態の再発を防止するために、維持療法を対象に受けさせることが望ましい場合があり、LIF結合剤または医薬組成物は、体重1kgあたり0.01μg~100gの範囲の維持用量で、1日に1回以上、数ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回、毎年1回、または任意の他の好適な頻度で投与される。
【0078】
本開示の治療方法は、対象に1種類のLIF結合剤を投与することを含んでもよく、または異なるLIF結合剤のカクテルの投与によって、2種類以上のLIF結合剤を対象に投与することを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有するものとして個体を同定することを含む方法が提供される。LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有するものとして個体を同定することは、種々のアプローチおよびそれらの組み合わせを使用して実施され得る。特定の態様では、同定することは、個体から得られた試料(例えば、体液試料、腫瘍生検等)におけるLIF存在量に基づく。いくつかの実施形態では、LIF存在量は、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質をLIF捕捉剤として使用して定量化される。
【0080】
特定の態様では、同定することは、個体から得られる試料中のLIFシグナル伝達のレベルに基づく。LIFシグナル伝達のレベルは、Jak-STATシグナル伝達経路における分子を含む、1つ以上のLIFシグナル伝達経路分子のリン酸化状態に基づいてもよく、その非限定的な例は、pSTAT3(例えば、pSTAT3-Y705)である。ある特定の実施形態によれば、同定することはイムノアッセイに基づく。ELISA、フローサイトメトリーアッセイ、組織切片試料に対する免疫組織化学、組織切片試料に対する免疫蛍光、ウエスタン分析等を含む様々な好適なイムノアッセイフォーマットが利用可能である。
【0081】
いくつかの実施形態において、同定することは核酸配列決定に基づく。例えば、対象とするタンパク質をコードするmRNAに対応する配列決定リードの数が、そのタンパク質の発現レベルを決定するために使用され得る。特定の態様では、配列決定は、次世代配列決定システムを使用して、例えば、Illumina(登録商標)(例えば、HiSeq(商標)、MiSeq(商標)および/またはGenome Analyzer(商標)配列決定システム);Oxford Nanopore Technologies(例えば、MinION(商標)、GridIONx5(商標)、PromethION(商標)、またはSmidgION(商標)ナノポア配列決定デバイス)、Ion Torrent(商標)(例えば、Ion PGM(商標)および/またはIon Proton(商標)配列決定システム);Pacific Biosciences(例えば、PACBIO RS II配列決定システム);Life Technologies(商標)(例えば、SOLiD配列決定システム);Roche(例えば、454 GS FLX+および/またはGS Junior配列決定システム);または目的の任意の他の配列決定プラットフォームによって提供される配列決定プラットフォームで行われる。組織または体液試料から核酸を単離するためのプロトコル、および所望の配列決定プラットフォームに適した配列決定アダプターを有する配列決定ライブラリーを調製するためのプロトコルが容易に利用可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有するものとして個体を同定することを含む方法は、個体から試料を得ることをさらに含む。
【0083】
個体から得られる試料は、個体がLIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有するかどうかを決定するのに好適な任意の試料であってもよい。ある特定の態様において、試料は、全血、血清、血漿等の体液試料である。いくつかの実施形態において、試料は組織試料である。対象とする組織試料として腫瘍生検試料等が挙げられるが、これに限定されない。
【0084】
キット
キットもまた、本開示によって提供される。いくつかの実施形態では、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質のいずれかを含む医薬組成物を含むキットが提供される。キットは、LIF活性の阻害を必要とする個体、例えば、細胞増殖性障害(例えば、がん、例えば膵臓がん)、またはLIF活性の阻害が有益である他の医学的状態を有する個体に医薬組成物を投与するための説明書をさらに含んでもよい。特定の態様では、キットは、1つ以上(例えば、2つ以上)の単位剤形で存在する医薬組成物を含む。
【0085】
特定の態様では、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質のいずれかを含むキットが提供され、このようなキットは、試料(例えば、体液試料、組織試料など)中のLIFを検出するためにこれらを使用するための説明書をさらに含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質のいずれかを含むキットが提供され、このようなキットは、例えば、研究目的のために、インビトロまたはインビボでLIFシグナル伝達/活性を抑制するためのこれらを使用するための説明書をさらに含む。
【0087】
キットの成分は、別々の容器内に存在してもよく、または複数の成分が単一の容器内に存在してもよい。好適な容器は、単一チューブ(例えば、バイアル)、1つ以上のウェルのプレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレートなど)などを含む。
【0088】
キットの説明書は、好適な記録媒体に記録することができる。例えば、説明書は、紙またはプラスチック等の基材上に印刷することができる。そのため、説明書は、添付文書としてキット内に、キットまたはその成分の容器のラベル内(すなわち、包装または副次的な包装と関連して)等に存在していてもよい。他の実施形態では、説明書は、ポータブルフラッシュドライブ、DVD、CD-ROM、ディスケットなどの好適なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する、電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の説明書は、キット内には存在しないが、例えばインターネットを介してリモートソースから説明書を取得するための手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を閲覧することができ、かつ/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るための手段は、好適な基材上に記録される。
【0089】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は、以下の条項によっても定義される。
1.可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドであって、配列番号2と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、LIFRポリペプチドが、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加した結合親和性を示す、可溶性LIFRポリペプチド。
【0090】
2.
L218位のアミノ酸置換、および
N277位のアミノ酸置換、の一方または両方を含み、
位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0091】
3.
L218Pアミノ酸置換、および
N277Dアミノ酸置換、の一方または両方を含む、第2の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0092】
4.
I257位のアミノ酸置換、
V262位のアミノ酸置換、および
T273位のアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含み、
位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1~3の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0093】
5.
I257Vアミノ酸置換、
V262Aアミノ酸置換、および
T273Iアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含む、第4の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0094】
6.
I217位のアミノ酸置換、
H240位のアミノ酸置換、および
I260位のアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含み、
位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1~5の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0095】
7.
I217Vアミノ酸置換、
H240Rアミノ酸置換、および
I260Vアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含む、第6の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0096】
8.N242位のアミノ酸置換を含み、位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1~7の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0097】
9.N242Dアミノ酸置換を含む、第8の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0098】
10.配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、第1~9の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0099】
11.配列番号2と少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、第1~9の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0100】
12.可溶性LIFRポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合している、第1~11の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0101】
13.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプチドを含む、第12の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0102】
14.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、第13の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0103】
15.1つ以上の異種ポリペプチドが、第27~38の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドを含む、第12~14の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0104】
16.可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドが、リンカーを介して融合されている、第15の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0105】
17.リンカーが、GlySerリンカーを含む、第16の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0106】
18.GlySerリンカーが、(Gly4Ser)nリンカーを含む、第17節に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0107】
19.第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドと二量体化されている、第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0108】
20.各可溶性LIFRポリペプチドがFcドメインを含み、二量体化がFcドメインを介している、第19の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0109】
21.第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドをコードする核酸。
【0110】
22.第21の条項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0111】
23.細胞であって、
第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド、
第21の条項に記載の核酸、
第22の条項に記載の発現ベクター、または
それらの任意の組み合わせを含む、細胞。
【0112】
24.第1~18節のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドを製造する方法であって、
細胞が可溶性LIFRポリペプチドを産生する条件下で、第22の条項に記載の発現ベクターを含む細胞を培養することを含む、方法。
【0113】
25.細胞を培養する前に、細胞に発現ベクターを導入することをさらに含む、第24の条項に記載の方法。
【0114】
26.細胞を培養した後に、細胞からLIFRポリペプチドを精製することをさらに含む、第24の条項または第25の条項に記載の方法。
【0115】
27.可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドであって、配列番号4と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、gp130ポリペプチドが、対応する野生型gp130ポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加した結合親和性を示す、可溶性gp130ポリペプチド。
【0116】
28.K45位にアミノ酸置換を含み、位置の識別は、配列番号4に対するものである、第27の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0117】
29.K45Eアミノ酸置換を含む、第28の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0118】
30.
Y95位のアミノ酸置換、および
K184位のアミノ酸置換、の一方または両方を含み、
位置の識別は、配列番号4に対するものである、第27~29の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0119】
31.
Y95Dアミノ酸置換、および
K184Eアミノ酸置換、の一方または両方を含む、第30の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0120】
32.
F46位のアミノ酸置換、および
I130位のアミノ酸置換、の一方または両方を含み、
位置の識別は、配列番号4に対するものである、第27~31の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0121】
33.
F46Lアミノ酸置換、および
I130Mアミノ酸置換、のうちの一方または両方を含む、第32の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0122】
34.配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、第27~33の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0123】
35.配列番号4と少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、第27~33の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0124】
36.可溶性gp130ポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合している、第27~35の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0125】
37.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプチドを含む、第36の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0126】
38.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、第37の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0127】
39.1つ以上の異種ポリペプチドが、第1~14の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドを含む、第36~38の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0128】
40.可溶性gp130ポリペプチドおよび可溶性LIFRポリペプチドが、リンカーを介して融合されている、第39の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0129】
41.リンカーが、GlySerリンカーを含む、第40の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0130】
42.GlySerリンカーが、(Gly4Ser)nリンカーを含む、第41の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0131】
43.第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドと二量体化されている、第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0132】
44.各可溶性gp130ポリペプチドがFcドメインを含み、二量体化がFcドメインを介している、第43の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0133】
45.第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドをコードする核酸。
【0134】
46.第45の条項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0135】
47.細胞であって、
第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド、
第45の条項に記載の核酸、
第46の条項に記載の発現ベクター、または
それらの任意の組み合わせを含む、細胞。
【0136】
48.第27~42節のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドを製造する方法であって、
細胞が可溶性gp130ポリペプチドを産生する条件下で、第46の条項に記載の発現ベクターを含む細胞を培養することを含む、方法。
【0137】
49.細胞を培養する前に、細胞に発現ベクターを導入することをさらに含む、第48の条項に記載の方法。
【0138】
50.細胞を培養した後に、細胞から可溶性gp130ポリペプチドを精製することをさらに含む、第48の条項または第49の条項に記載の方法。
【0139】
51.ヘテロ二量体タンパク質であって、
第27~38の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドと二量体化された、第1~14の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドを含む、ヘテロ二量体タンパク質。
【0140】
52.可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドがそれぞれ二量体化ドメインを含み、前記二量体化ドメインを介して前記可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドが二量体化される、第51の条項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【0141】
53.二量体化ドメインが、Fcドメインを含む、第52の条項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【0142】
54.医薬組成物であって、
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号2と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0143】
55.医薬組成物であって、
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号4と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0144】
56.医薬組成物であって、
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号4と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドと二量体化された、白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号2と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0145】
57.医薬組成物であって、
第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0146】
58.医薬組成物であって、
第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0147】
59.医薬組成物であって、
第51~53の条項のいずれか1つに記載のヘテロ二量体タンパク質と、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0148】
60.治療有効量の第54~59の条項のいずれか1つに記載の医薬組成物を、必要とする個体に投与することを含む、方法。
【0149】
61.必要とする個体が、がんを有する個体である、第60の条項に記載の方法。
【0150】
62.がんが、膵臓がんである、第61の条項に記載の方法。
【0151】
63.キットであって、
第54~59の条項のいずれか1つに記載の医薬組成物と、
必要とする個体に前記医薬組成物を投与するための説明書と、を含む、キット。
【0152】
64.医薬組成物が、1つ以上の単位剤形で存在する、第63の条項に記載のキット。
【0153】
65.医薬組成物が、2つ以上の単位剤形で存在する、第63の条項に記載のキット。
【0154】
66.必要とする個体が、がんを有する個体である、第63~65の条項のいずれか1つに記載のキット。
【0155】
67.がんが、膵臓がんである、第66の条項に記載のキット。
【実施例】
【0156】
以下の実施例は、限定ではなく例示として提供される。
【0157】
実験
実施例1-組換え可溶性LIFRポリペプチド
この実施例では、LIFRバリアントが、酵母表面上に提示されたヒトLIFRのIg様ドメインのライブラリーから同定され、FACSを使用して、ヒトLIFに対して最適な結合体についてソーティングされた。複数回のソーティング後、バリアントが選択され、配列決定され、特性決定された。ソーティングから単離されたLIFRバリアントは、
図3にまとめられる。
【0158】
図3のパネルAは、複数のソーティングから単離されたLIFR Ig様ドメインバリアントで観察されたコンセンサス突然変異を示す。番号付けは、LIFRサイトカイン結合モチーフI(CBMI)ドメインの先頭から始まる。
図3のパネルBは、低い(10pM、100pM)LIF濃度での正規化された合計蛍光結合値から計算されるLIFRバリアントの結合スコアを示す。すべてのスコアは、野生型に対して、酵母表面での差次的発現について正規化された。
【0159】
同定されたLIFR突然変異(
図3のパネルAに示される)に基づき、いずれのソーティングでも観察されなかった、可能な変異体LIFRバリアントの複数の組み合わせを、部位特異的突然変異誘発を使用して作成した。
図4のパネルAは、部位特異的突然変異誘発を使用して生成されたバリアントをまとめたものである。
図4のパネルBは、
図3のパネルBについて上に記載されるように計算された、このようなバリアントの結合スコアを示す。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。この分析から、VPRVVAID(I217V-L218P-H240R-I257V-I206V-V262A-T271I-N277D)が、最適なLIFRバリアントとして同定された。
【0160】
図5では、
図4のパネルAからのコンセンサス突然変異が、ヒトLIFR(青色)に結合するヒトLIF(桃色)のPyMOLモデル化構造において示される。突然変異は赤色で示され、PyMOLを使用して導入されている。ループ1、2および3における突然変異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
【0161】
実施例2-組換え可溶性gp130ポリペプチド
この実施例では、gp130バリアントが、酵母表面上に提示されたヒトgp130のCBMドメインのライブラリーから同定され、FACSを使用して、ヒトLIFに対して最適な結合体についてソーティングされた。複数回のソーティング後、バリアントが選択され、配列決定され、特性決定された。ソーティングから単離されたgp130バリアントは、
図6にまとめられる。
【0162】
図6のパネルAは、複数のソーティングから単離されたgp130 CBMドメインバリアントで観察されたコンセンサス突然変異を示す。番号付けは、gp130サイトカイン結合モチーフI(CBM)ドメインの先頭から始まる。
図6のパネルBは、部位特異的突然変異誘発を使用して生成された変異体gp130バリアントのまとめを示す。
図6のパネルCは、低LIF濃度として100pMおよび1nMを使用して、
図3のパネルBに記載されているように計算されたgp130バリアントの結合スコアを示す。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。この分析から、ELDME(K45E-F46L-Y95D-I130M-K184E)が、最適なgp130バリアントとして同定された。
【0163】
図7では、
図6のパネルAから選択されたコンセンサス突然変異が、ヒトgp130(桃色)に結合するヒトLIF(青色)の解析された構造において示される。PyMOLを使用して挿入された突然変異は、青緑色で示される。ゾーン1および2における突然変異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
【0164】
実施例3-ヒトLIFに対するLIFRおよびgp130バリアントの結合
この実施例では、LIFRおよびgp130のバリアントが、酵母表面上に提示された。ヒトLIFに対する結合は、フローサイトメトリーを使用して蛍光抗体検出によって測定された。
【0165】
図8のパネルAは、ヒトLIFに対する、酵母に提示された野生型LIFRおよびLIFRバリアントの結合結果を示す。LIFR野生型(WT)(丸)、「PDD」バリアント(L218P-N42D-N277D)(四角)、およびVPRVVAIDバリアント(
図4のパネルAの突然変異)(三角)の結果が示される。VPRVVAIDバリアントのK
Dは、30pMで測定され、これは野生型(WT)と比較して32倍高い親和性である。
【0166】
図8のパネルBは、ヒトLIFに対する、酵母に提示された野生型gp130およびgp130バリアントの結合結果を示す。gp130野生型(WT)(丸)、「8M」バリアント(E4K-K5R-N14D-K45E-F46L-K83R-Y95D-N100S)(四角)、およびELDMEバリアント(
図4のパネルAの突然変異)(三角)の結果が示される。ELDMEバリアントのK
Dは、5nMで測定され、これは野生型(WT)と比較して12倍高い親和性である。
【0167】
実施例4-ホモ二量体とヘテロ二量体の可溶性LIFRおよびgp130融合ポリペプチド
この実施例では、ホモ二量体およびヘテロ二量体の、可溶性LIFRおよび/またはgp130 Fc融合構築物を生成した。
図9のパネルAおよびBは、それぞれ、LIFのgp130結合面およびLIFR結合面を標的とする、抗LIFモノクローナル抗体G1およびL1を概略的に示す。これらの抗体は、有効性のベンチマークとして機能する。
【0168】
図9のパネルCに概略的に示されるのは、gp130サイトカイン結合モチーフ(CBM)バリアント(ELDME)Fc融合ホモ二量体であり、二量体化は、Fcドメインを介して行われる。この構築物は、「gp130 ELDME Fc」と呼ばれる場合がある。
【0169】
図9のパネルDは、LIFRサイトカイン結合モチーフ1-Ig様-サイトカイン結合モチーフ2(CBMI-Ig様-CBMII)バリアント(VPRVVAID)Fc融合ホモ二量体を概略的に示し、ここで、二量体化は、Fcドメインを介して行われる。この構築物は、「LIFR VPRVVAID Fc」と呼ばれる場合がある。
【0170】
図9のパネルEに概略的に示されるのは、5x Gly4Serリンカーを介してgp130 CBM ELDMEバリアントに融合したLIFR CBMI-Ig様-CBMII VPRVVAIDバリアントを各単量体が含む、ホモ二量体である。Fcドメインは、gp130部分に対してC末端にあり、二量体化は、Fcドメインを介して行われる。この構築物は、「LIFR-gp130 V-E融合対Fc」と呼ばれる場合がある。
【0171】
図9のパネルFは、Fcドメインを介して二量体化された、パネルCに示されるgp130 ELDME Fc単量体とパネルDに示されるLIFR VPRVVAID Fc単量体とを含むヘテロ二量体を概略的に示す。
【0172】
図9のパネルC~Fに概略的に示される構築物の各々は、首尾よく発現され、精製された。
【0173】
可溶性LIFに対する、精製されたLIF阻害剤の結合を、KinExAを使用して試験した。
図10には、(1)各単量体としてWT LIFR CBMI-Ig様-CBMII Fc融合体を有するホモ二量体、(2)各単量体としてLIFR VPRVVAID Fcを有するホモ二量体、および(3)各単量体としてLIFR-gp130 V-E融合体Fcを有するホモ二量体に対する結合結果が示される。K
D値は、KinExAソフトウェアから計算され、近似曲線が示される。LIFR-VPRVVAID-Fcは、ヒトLIFに対して23pMの親和性、LIFR-WT-Fcと比較して43倍の改善を有する。
【0174】
実施例5-複数LIFの結合アッセイ
結合アッセイを
図11のパネルAに概略的に示されるように実施し、LIFに結合した受容体デコイがもう1つのLIF分子にも係合することができるかどうかを決定した。目標は、Fc融合体としてホモ二量体である阻害剤が、二量体の各アームで同時にLIFに結合することができるかどうかを示すことであった。このアッセイによって、LIFが、酵母表面上に提示される。Fc融合体阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示されている)を飽和濃度で導入し、提示されたリガンドに結合させ、過剰分は洗い流される。次に、可溶性LIF-Hisを、Fc融合体結合酵母と共培養する。LIF結合は、LIF-HisのHis-タグドメインを介して検出され、これは、「ブリッジ」として作用するホモ二量体を用い、Fc融合体に対する複数のLIF結合が起こる場合にのみ存在するはずである。
【0175】
複数LIFの結合アッセイの結果を
図11のパネルBに示す。LIFが酵母上に提示され、Fc融合体阻害剤が、提示されたLIFと可溶性LIFとの間の結合ブリッジとして使用された。各条件での抗His6タグ蛍光抗体からの蛍光発光は、LIF-Hisを添加していない対照に対して正規化された。提示されたLIFに対するFc融合体結合も、抗Fcタグ蛍光抗体を使用して確認された(
図12のパネルBに示されるデータ)。LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-Fc、および抗LIF mAb L1についての複数LIFの結合結果を示す。
【0176】
これらの結果から、試験した4種類すべてのホモ二量体が、複数のLIF分子に結合することができることが決定される。組換えLIFR-Fcは、おそらくLIFに対する改善された親和性および遅いオフレート(実施例6で説明される)に起因して、LIFR-WT-Fcと比較して改善された複数LIF結合を示す。LIFR-gp130融合体-Fcは、おそらく4つのLIF結合ドメインが存在することに起因して、最大の複数LIF結合能を示す。両方の組換えFc融合体は、抗LIF mAb、L1と比較した場合、潜在的に高い親和性に起因して、より大きな複数LIF結合を示す。全体として、これらの結果は、Fc融合体として、阻害剤が、2:1のLIF:阻害剤の化学量論でLIFに結合することができることを暗示しており、複数LIFの結合および隔離を介するさらに大きな治療利益の可能性を与える。
【0177】
実施例6-競合LIF結合アッセイ
結合アッセイを
図12のパネルAに概略的に示されるように実施し、LIFに結合した受容体デコイが、過剰な可溶性LIF競合剤の存在下でどの程度LIFに結合したままであるかを決定した。目標は、組換え受容体が、過剰な競合剤による競合に対する改善された耐性によって示されるように、より遅いオフレート(off-rate)を引き起こすかどうかを決定することであった。このアッセイによって、LIFが、酵母表面上に提示される。Fc融合体阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示されている)を飽和濃度で導入し、提示されたリガンドに結合させ、過剰分は洗い流される。次に、可溶性LIF-Hisを、Fc融合体結合酵母と共培養する。Fc融合体結合は、阻害剤のFcドメインを介して検出され、これは、高濃度の可溶性LIF-Hisによって競合され、酵母提示されたLIFから分離され得る。
【0178】
競合LIF結合アッセイの結果を
図12のパネルBに示す。LIFが酵母上に提示され、結合パートナーとしてLIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-Fc、または抗LIF mAbであるL1が添加された。過剰な阻害剤を洗い流し、可溶性LIFを競合体として24時間添加した。各条件での抗Fc蛍光抗体からの蛍光発光は、過剰な阻害剤が除去されず可溶性LIFが添加されていない対照に対して正規化された。
【0179】
これらの結果から、組換えLIFR-FcおよびLIFR-gp130融合体-Fcが、LIFR-WT-Fcと比較したときに、劇的に改善されたオフレートを有すると決定される。このことは、高レベル(100nM)のLIF-His競合剤存在下で最も顕著であり、組換え受容体は、50%より多くが結合したままであり、一方、LIFR-WT-Fcは、酵母提示されたLIFからほぼ完全に競合で分離している。結合したままのFc融合体の相対量は、抗LIF mAb、L1に匹敵する。組換えFc融合体によって示される改善されたオフレートは、おそらく改善された親和性を部分的に説明し、より大きな治療有効性につながるはずである。
【0180】
実施例7-同時受容体結合アッセイ
結合アッセイを
図13のパネルAに概略的に示されるように実施し、LIFに結合した受容体デコイがgp130またはLIFRとも同時に係合することができるかどうかを決定した。目標は、阻害剤が、LIFに結合することにおいて、LIFR、gp130、またはその両方と競合するかどうかを示すことであった。このアッセイによって、gp130(示されている)またはLIFRが、酵母表面上に提示される。LIFを飽和濃度で導入し、提示された受容体に結合させ、過剰分は洗い流される。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示される)を、LIF結合酵母と共培養する。結合は、阻害剤のFcドメインを介して検出され、これは、「ブリッジ」としてLIFを使用して同時受容体結合が起こる場合にのみ存在するはずである。阻害剤の結合が検出されない場合は、提示された受容体が共にインキュベートされた阻害剤と競合関係にあり、したがってLIFに対する阻害剤の結合を妨げていると決定される。
【0181】
同時結合アッセイの結果を
図13のパネルBに示す。LIFRまたはgp130のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIFが結合ブリッジとして使用された。蛍光発光は、LIFを添加していない対照に対して正規化された、抗Fc蛍光抗体の読み取り値である。提示された受容体に対するLIF結合も、抗His6タグ蛍光抗体を使用して確認された(データは示されず)。LIFR-VPRVVAID-Fc、gp130-ELDME-Fc、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc、LIFR-gp130ホモ二量体融合体-Fc、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の同時結合の結果が示される。
【0182】
これらの結果から、LIFR-FcがLIF-gp130複合体に結合することができ(およびはるかに少ない程度で、そしていくぶん驚くべきことに、LIF-LIFR複合体とも)、一方、gp130-Fcは、LIF-LIFR複合体にのみ結合することができると決定される。このことは、LIFR-Fcが、LIFRがLIFに結合することを効果的にブロックし、一方、gp130-Fcは、gp130がLIFに結合することをブロックすることを意味する。両方の受容体(ヘテロ二量体Fcおよび融合体Fc)を有するポリペプチドは、両方の提示された受容体に対する同時結合を比較的等しい程度で示す。抗LIFモノクローナル抗体(mAb)L1およびG1は、各1つの提示された受容体LIF複合体-すなわちそれぞれgp130-LIFまたはLIFR-LIFとしか同時に結合することができない。このことは、L1が、LIFRと競合し(LIFRが提示されるときに阻害剤の結合が観察されない)、一方、G1は、gp130と競合する(gp130が提示されるときに阻害剤の結合が観察されない)ことを意味する。したがって、阻害機構の観点から、L1はLIFR-Fcに匹敵し、一方、G1はgp130-Fcに匹敵する。すべての場合において、LIFが存在しない状態では結合が観察されず、このことは、同時結合にLIFが必要であることを示す。
【0183】
実施例8-競合結合アッセイ
競合結合アッセイを
図14のパネルAに概略的に示されるように実施した。このアッセイによれば、野生型gp130またはLIFR(示される)が酵母表面上に提示される。ヒトLIF-Hisが飽和濃度で導入される。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示される)を、過剰量で、LIF結合酵母と共培養する。LIF結合は、LIF上のHis6-タグを介して検出される。阻害剤インキュベーション後に結合したままのLIFが少ないほど、阻害剤は、よりよく競合してWT受容体からLIFを離すことができている。
【0184】
競合結合アッセイの結果を
図14のパネルBに示す。野生型LIFRまたはgp130のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIF-Hisで飽和された。結合した比率は、阻害剤無添加に対して正規化された、LIF-Hisから検出された蛍光発光である。LIFR-WT-Fc、gp130-ELDME-Fc(組換え)、LIFR-VPRVVAID-Fc(組換え)、LIFR-gp130融合体-Fc(組換え)、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc(組換え)、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の競合結合が示される。
【0185】
これらの結果から、野生型LIFR-Fcは競合して野生型LIFRから、そして予想外にgp130からも、LIFを分離させると決定される。組換えLIFR-Fcは、この観点で野生型LIFR-Fcよりも改善されており、強力に競合してLIFをLIFRおよびgp130の両方から分離させることができる。組換えgp130-Fcは、gp130とはよく競合してLIFを分離させるが、予想されるように、LIFRがLIFに結合する能力には影響を有さない。ホモ二量体およびヘテロ二量体の両方としてのLIFRおよびgp130の融合体は、同じ阻害剤中に両方の組換え受容体を有することによって予想されるように、LIFRおよびgp130の両方と競合してLIFを分離させる強い能力を示す。抗LIFモノクローナル抗体L1およびG1は、各1つの受容体、すなわちそれぞれLIFRおよびgp130のみと効果的に競合してLIFを分離させるが、実際のところ、逆の受容体すなわちそれぞれgp130およびLIFRに対するLIF結合は強化させている。
【0186】
実施例9-HeLaルシフェラーゼレポーター細胞における下流LIFシグナル伝達の遮断
LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、LIFRおよびgp130のヘテロ二量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、STAT3をリン酸化する。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、およびSTAT3応答エレメントを介した転写プログラミングの活性化が起こる。STAT3応答エレメントによって先行されるルシフェラーゼの遺伝子を含むように細胞株を改変して、pSTAT3の活性化によってルシフェラーゼが産生するようにすることができる。この状況では、ルシフェリンを用いる標準的なルシフェラーゼアッセイを使用して決定されるルシフェラーゼ活性は、細胞内のLIFシグナル伝達と直接的に相関し得る。
図15のパネルAは、HeLa細胞におけるこのLIFレポーター細胞系を概略的に示す。
【0187】
図15のパネルBに示されるのは、ルシフェラーゼアッセイからの結果であり、HeLaレポーター細胞は、0.5nMのLIFおよび異なる濃度のLIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fc、およびLIFR-WT-Fcに曝露された。細胞を5時間インキュベートした後、溶解させ、ルシフェラーゼアッセイを行った。結果は、阻害剤無添加に対して正規化される。
図15のパネルCは、遅延阻害剤添加アッセイからの結果を示す。このアッセイによれば、0.5nMのLIFがHeLaレポーター細胞に1.5時間添加され、次いで、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-WT-Fc、またはLIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fcのいずれかを5nM、25nM、または50nMでウェルに直接添加する。ルシフェラーゼレベルは、LIF添加から20時間後に測定される。結果は、ベースラインを差し引き、阻害剤無添加に対して正規化される。
図15のパネルDは、LIFR-VPRVVAID-FcについてのIC
50を、LIFR-WT-Fcと比べて決定するための広範囲の阻害剤濃度にわたるLIF由来ルシフェラーゼ阻害を示す。組換え後、改善された阻害の53倍のシフトが観察される。
図15のパネルEは、HeLaレポーター細胞が、LIFの近縁種であるオンコスタチン-M(OSM)を含め複数のIL-6ファミリーメンバーサイトカインに応答する能力を利用する。細胞を、0.5nMのLIFまたはOSMおよび1μMのLIFR-VPRVVAID-FcまたはLIFR-WT-Fcのいずれかと共に5時間インキュベートし、ルシフェラーゼレベルを測定した。
【0188】
まとめると、これらの結果は、LIFR-VPRVVAID-FcおよびLIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fcが、低い濃度であっても、LIFが媒介する下流のシグナル伝達を強力に低減させ、LIFが媒地中に既に存在した後に添加される場合に、LIFシグナル伝達を大幅にブロックすることができることを示し、これは治療薬のための有望な兆候である。LIFR-WT-Fcと比較した場合、両方の組換え阻害剤がはるかに優れた阻害を示し、LIFR-WT-Fcと比べてLIFR-VPRVVAID-FcによるIC50に53倍の改善があったほどである。WTおよび組換えLIFR-Fcの両方が、LIFに対して高度な特異性を示し、OSMはLIFRに結合することができるという事実にもかかわらず、高い受容体濃度であっても、OSM由来ルシフェラーゼシグナルの低減は示さない。組換え阻害剤が、その高い親和性に起因して、WTよりも、LIFに対してさらに選択的であるという事実は、治療薬としてのこの組換えトラップに付随するオフターゲット毒性がない可能性が高いことを示す。
【0189】
実施例10-膵臓がん細胞におけるLIFシグナル伝達の除去
LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、LIFRおよびgp130のヘテロ二量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、チロシン705上のSTAT3をリン酸化する。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、および転写プログラミングの活性化が起こる。したがって、pSTAT3-Y705は、LIFシグナル伝達の読み取り値である。
図16のパネルAは、LIFシグナル伝達を概略的に示す。
【0190】
図16のパネルBに示されるのは、135pMのヒトLIFおよび異なる濃度のLIFR-VPRVVAID-Fc(「LIFR Fc組換え」)、LIFR-WT-Fc(「LIFR Fc WT」)、LIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fc(「融合体Fc組換え」)、およびL1抗LIF mAb(「抗LIF mAb」)に曝露されたPANC1(ヒト膵臓がん細胞株)由来の溶解物のウェスタンブロットの結果である。細胞を37℃で20分間インキュベートした後、プロテアーゼおよびホスファターゼの阻害剤の存在下で溶解した。タンパク質濃度を正規化し、SDS-PAGEによって、ゲル上に流した。ウェスタンブロットでホスホ-STAT3(Y705)、STAT3(全体)、およびβ-チューブリンの染色が行われた。
図16のパネルCは、チューブリンシグナルに対して正規化された、pSTAT3シグナルの定量化を示す。
【0191】
これらの結果は、わずか約3倍過剰量でインキュベートされた場合であっても、LIFR-VPRVVAID-FcおよびLIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fcが、がん細胞においてLIFが媒介するpSTAT3レベルを減少させることができ、治療に関連するようにより過剰量でインキュベートされる場合には、LIFシグナル伝達を完全に除去することができることを示す。阻害の程度は、定量化(パネルC)に示されるように、抗LIF mAb、L1よりも改善されている。LIFR-WT-Fcは、LIF由来のシグナル伝達をブロックする効果がはるかに低く、このことは、親和性操作によって得られる利点を示している。強力なシグナル阻害は、KP4ヒト膵臓がん細胞(図示せず)でも観察された。
【0192】
このように、上述の内容は、単に本開示の原理を説明しているにすぎない。本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨および範囲内に含まれる様々な構成を当業者であれば工夫することができることが理解されよう。さらに、本明細書に列挙されたすべての例および条件的文言は、主として本発明の原理および発明者らにより当該技術分野の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、このような具体的に列挙された例および条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体的な例を列挙する本明細書におけるすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図する。加えて、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たすあらゆる開発要素も含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示および記載の例示的な実施形態に限定されることを意図しない。
【配列表】