(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】3次元歯科走査システムおよび走査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20241105BHJP
G01B 11/25 20060101ALI20241105BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01B11/25 H
A61C19/04 J
(21)【出願番号】P 2022517333
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 GB2020052255
(87)【国際公開番号】W WO2021053338
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-25
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501323583
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ リーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】キーリング、アンドリュー ジェームズ
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第4301538(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/033823(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科対象物を走査するための3次元(3D)歯科走査のシステムであって、前記システムは、
前記歯科対象物を支持するように構成された走査面と、
前記歯科対象物の3D走査をキャプチャするように構成された走査部と、
前記走査面を実質的に水平な平面に保持しながら、前記走査面と前記走査部とを5つの運動軸で相対移動させるように構成された動作部と、および
前記動作部および前記走査部を制御することで、前記歯科対象物の3D走査を取得するように構成された制御部と、
を備えて
おり、
前記制御部は、
[a]所定詳細レベル未満の詳細レベルでキャプチャされた前記歯科対象物の点群の領域を識別する工程と、
[b]前記識別された領域をキャプチャするための走査位置を識別する工程と、および
[c]前記識別された領域を走査するべく前記走査面および前記走査部を移動させるように前記動作部を制御する工程と、
を行うように構成されて
おり、
前記制御部はさらに、
前記点群をサーフェス化することで、3Dモデルを生成する工程と、
サーフェス化された前記3Dモデルを一様にサンプリングすることで、一様にサンプリングされた点群を生成する工程と、
前記一様にサンプリングされた点群内の各点に対する、前記点群内の最近点を識別する工程と、
前記一様にサンプリングされた点群内の点と、前記識別された最近点との間の距離が閾値距離を超えたことに応答して、前記一様にサンプリングされた点群内の点に対して前記所定詳細レベル未満としてフラグ付けする工程と、
を行うように構成されている
、システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記フラグ付けされた各点に対する最適視認位置を判定するように構成されている、
請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記走査部から見たときに前記フラグ付けされた点が隠れていないことを判定するべく、前記各最適視認位置を検証するように構成されている、
請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記最適視認位置が隠れていると判定するとともに、隠れていない位置に到達するように前記最適視認位置を調整するように構成されている、
請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部は、そこから見えるフラグ付き点の数に従って、前記各最適視認位置をランク付けするように構成されている、
請求項
2~
4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記歯科対象物の前記点群は、工程[a]~[c]の以前の反復によって得られた点群である、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記歯科対象物の前記点群は、予めプログラムされた走査シーケンスによって得られた点群である、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記5つの運動軸は、
第1水平方向への並進と、
前記第1水平方向に対して垂直な第2水平方向への並進と、
垂直方向への並進と、
前記走査面の回転と、および
前記走査部の傾きと、
を備えている、請求項1~
7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記走査部は、
構造化光パターンを前記歯科対象物に投影するように構成されたプロジェクタと、および
カメラと、
を備えている、請求項1~
8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムはさらに、同じ平面上に配置された2つのカメラを備えている、
請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは2つのカメラを備えており、
前記2つのカメラのうちの第1カメラと前記プロジェクタとは、第1想定線によって接続されており、
前記2つのカメラのうちの第2カメラと前記プロジェクタとは、第2想定線によって接続されており、
前記第1想定線と前記第2想定線とは非共線である、
請求項
9に記載のシステム。
【請求項12】
前記走査部は、
前記第1カメラと前記プロジェクタとが起動される第1モードと、
前記第2カメラと前記プロジェクタとが起動される第2モードと、および
前記第1カメラ、前記第2カメラ、および前記プロジェクタが起動される第3モードと、
のうちの少なくとも2つにおいて選択的に動作可能である、
請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記走査部は、第1カメラ、第2カメラ、および前記プロジェクタが動作する三焦点モードで動作可能であり、
前記第1カメラ、前記第2カメラ、および前記プロジェクタの各々は、光学中心を形成する、
請求項
9~
12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記走査面は実質的に平面である、
請求項1~
13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、前記歯科対象物を前記走査面に固定するための固定手段を備えていない、
請求項1~
14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記動作部は、前記走査面の中心に対する前記走査部の運動の自由を許容するように構成されている、
請求項1~
15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記走査部は、前記垂直方向において、前記歯科対象物と前記走査面とのうちの少なくとも一方に実質的に同じ、またはより低い水平面内にある位置に移動可能である、
請求項
8に記載のシステム。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれか一項に記載の3D歯科走査システムを使用することで、前記歯科対象物の3D走査をキャプチャする工程を備えている、3次元(3D)走査の方法。
【請求項19】
前記方法はさらに、
所定詳細レベル未満の詳細レベルでキャプチャされた前記歯科対象物の点群の領域を識別する工程と、
識別された領域をキャプチャするための走査位置を識別する工程と、
前記識別された領域を走査するべく前記走査面および前記走査部を移動させるように前記動作部を制御する工程と、
を備えている、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科対象物(デンタルオブジェクト)を走査(スキャン)するための3次元歯科走査システムと、歯科対象物を走査する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
幅広い用途において、患者の口腔内構造(すなわち、歯および歯肉)の3次元(3D)モデルを正確にキャプチャ(撮像。撮影)することが望ましい。例えば、そのような3Dモデルは、歯科補綴物(dentalprostheses。デンタルプロテーゼ)やインプラントの製造に有用であるので、研究室(ラボ)は、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを使用することで、3Dモデルに基づきそのような補綴物を設計するとともに、その後、補綴物またはインプラントを製造することになる。そのため、キャプチャされた3Dモデルが患者の口腔内構造を正確に反映するとともに、製造された補綴物やインプラントが患者に適切にフィットすることが非常に望ましい。
【0003】
一般的なワークフローでは、歯科医師は歯科口腔外科で患者の口腔内構造の歯科印象材(デンタルインプレッション。歯型)を採取(テイク)する。これは、患者の口の中に印象材を置くとともに、患者が印象材を噛んで変形させることによって、口腔内構造の陰刻(ネガティブインプリント)を作成することで実現される。この印象材は、歯科ラボに送られる(ポストされる)。歯科ラボでは、印象材からモデル(模型)を作製する。鋳造モデルは歯科スキャナに固定されるとともに、モデルをキャプチャ(撮影)するべく走査ヘッドに対して鋳造モデルを移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/161250号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Richard Hartley and Andrew Zisserman(2003)、「Online Chapter:三焦点テンソル(PDF)、コンピュータビジョンにおける多視点幾何学(MultipleView Geometry in computer vision)」、CambridgeUniversity Press、ISBN 978-0-521-54051-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯科印象材は、輸送中または保管中に、例えば温度変化によって変形することがありうるので、得られる鋳造モデル(キャストモデル)およびキャプチャされた3Dモデルの正確さが損なわれるという困難が生じうる。さらに、モデルを鋳造する処理が、印象材の変形を引き起こす虞れがある。
【0007】
3Dスキャナは、走査された対象物を完全にカバーするべく、事前にプログラムされた動作経路を使用する傾向があるので、さらなる困難が生じる。しかし、対象物の領域が欠落(missed)することがあるので、オペレータは欠落した領域(missingregions)をカバーするべく手動で走査を追加する必要がある。よって、比較的正確に走査を行うには、訓練が必要になる場合がある。
【0008】
別の典型的なワークフローでは、口腔内3Dスキャナは、歯科外科で患者の口の中に置かれるとともに、患者の口の周りを移動することで3Dモデルをキャプチャする。しかし、このような装置は法外に高価であるとともに、また精度に欠ける虞れがある。
【0009】
本開示の目的は、上記の困難、および本明細書の説明から当業者に明らかな他の困難を克服することにある。本開示のさらなる目的は、操作する上で専門家スキルまたは訓練を必要とせずに、歯科印象材などの歯科対象物を走査するための費用対効果の高い正確な3Dスキャナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載された装置および方法が提供される。本発明の他の特徴は、従属請求項、および以下に続く説明から明らかになるであろう。
本開示の第1態様によれば、歯科対象物を走査するための3次元(3D)歯科走査システムが提供される。前記システムは、
歯科対象物を支持するように構成された走査面(スキャニングサーフェス)と、
歯科対象物の3D走査(3Dスキャン)をキャプチャするように構成された走査部(スキャニングセクション)と、および
走査面を実質的に水平面に保持したまま、走査面と走査部とを5つの運動軸(ファイブアクシスオブモーション)で互いに対して相対移動させるように構成された動作部(モーションセクション)と、を備えている。
【0011】
前記システムは、前記動作部および前記走査部を制御することで、前記歯科対象物の3D走査を得るように構成された制御部(コントロールユニット)を備えてもよい。
制御部は、
所定(予め定められた。predetermined)詳細レベル未満の詳細レベルでキャプチャされた歯科対象物の点群の領域を識別する工程と、
識別された領域をキャプチャするための走査位置を識別する工程と、および
前記識別された領域を走査するべく前記走査面および前記走査部を移動させるように前記動作部を制御する工程と、を実行するように構成されてもよい。
【0012】
制御部は、点群をサーフェス化することで3Dモデルを生成するとともに、サーフェス化されたモデルを一様(ユニフォームリー)にサンプリングすることで一様にサンプリングされた点群を生成するように構成されてもよい。制御部は、一様にサンプリングされた点群内の各点に対する、点群内の最近点を識別するとともに、一様にサンプリングされた点群内の点と、識別された最近点との距離が閾値距離を超えたことに応答して、一様にサンプリングされた点群内の点を所定詳細レベル未満としてフラグ付けする、ように構成されてもよい。
【0013】
制御部は、各フラグ付き点に対する最適視認位置を判定するように構成されてもよい。最適視認位置は、走査部の最適焦点距離に基づいてもよい。最適視認位置は、フラグ付けされた点から延びる法線に基づいてもよい。制御部は、各最適視認位置を検証することで、走査部から見たときにフラグ付き点が隠れて(occludedして)いないと判定するように構成されていてもよい。
【0014】
制御部は、最適視認位置が隠れていると判定するとともに、隠れていない位置になるように最適視認位置を調整するように構成されてもよい。最適視認位置は、法線の角度を調整することで調整されてもよい。最適視認位置は、法線に沿った位置を調整することで調整されてもよい。最適視認位置は、隠れていない位置(unoccludedposition)に到達するまで繰り返し調整されてもよい。制御部は、そこから見えるフラグ付き点の数に応じて、各最適視認位置をランク付けするように構成されてもよい。
【0015】
制御部は、所定詳細レベル未満の詳細レベルでキャプチャされた歯科対象物の点群の領域を識別するとともに、識別された領域をキャプチャするための走査位置を識別するとともに、動作部を制御することで走査面および走査部を移動させて第2態様の識別された領域を走査することを反復して行うように構成されてもよい。したがって、歯科対象物の点群は、本明細書で定義された工程の以前の反復によって得られた点群であってもよい。歯科対象物の点群は、初期点群であってもよく、予めプログラムされた走査シーケンスによって得られてもよい。
【0016】
動作部は、走査面と走査部とを互いに対して相対移動させるように構成された複数のアクチュエータを備えてもよい。制御部は、複数のアクチュエータを制御するように構成されてもよい。
【0017】
5つの運動軸は、X方向であってよい第1水平方向への並進(translation)、好ましくは走査面の並進を備えてよい。動作部は、走査面をX方向に並進させるように構成された第1リニアアクチュエータを備えてもよい。
【0018】
5つの運動軸は、第2水平方向への走査面の並進、好ましくは走査面の並進を備えていてもよい。第2水平方向は、第1水平方向に対して垂直であってよく、Y方向であってもよい。動作部は、走査面をY方向に並進させるように構成された第2リニアアクチュエータを備えていてもよい。第1リニアアクチュエータは、第2リニアアクチュエータをX方向に並進させるように構成されてもよい。
【0019】
5つの運動軸は、好ましくは走査部の、垂直方向への並進を備えてもよい。垂直方向は、Z方向であってもよい。動作部は、走査部をZ方向に並進させるように構成された垂直リニアアクチュエータを備えていてもよい。走査部は、歯科対象物および/または走査面に実質的に同じ水平面内にある垂直方向の位置まで移動可能であってもよい。垂直リニアアクチュエータの下端は、歯科対象物および/または走査面と同じ水平面内の位置またはそれよりも下の位置まで延びていてもよい。
【0020】
5つの運動軸は、走査面の回転を備えてもよい。走査面の回転は、走査面の平面に対して垂直な実質的な垂直軸を中心とした回転であってもよい。動作部は、走査面を回転させる回転アクチュエータを備えてもよい。
【0021】
5つの運動軸は、走査部の傾き(tilt)を備えてもよい。動作部は、走査部を傾けるように構成された傾斜アクチュエータ(チルトアクチュエータ)を備えてもよい。傾斜アクチュエータは、走査部のピッチを変更するように構成されてもよい。傾斜アクチュエータは、実質的な水平軸を中心として走査部を傾斜させるように構成されてもよい。実質的な水平軸は、走査部の下方に配置されてもよい。
【0022】
動作部は、走査面の中心に対する走査部の移動の自由を許容するように構成されてもよい。複数のアクチュエータは、それぞれ独立して動作していてもよい。走査面と走査部とは、固定的な関係で、好適には走査面の中心が走査部の視野(ビュー。視認)の中心に保持される関係で、保持されていなくてもよい。
【0023】
走査部は、構造化光パターンを歯科対象物に投影するように構成されたプロジェクタを備えていてもよい。走査部は、カメラ、好ましくは2つのカメラを備えてもよい。複数のカメラは、同じ水平面上に配置されてもよい。
【0024】
走査部は、構造化光パターンを歯科対象物に投影するように構成されたプロジェクタを備えてもよい。走査部は、カメラ、好ましくは2つのカメラを備えてもよい。2つのカメラのうちの第1カメラとプロジェクタとは、第1想定線(notionalline)によって接続されてもよい。2つのカメラのうちの第2カメラとプロジェクタとは、第2想定線によって接続されてもよい。第1想定線と第2想定線とは、非共線(non-colinear)であってもよい。第1想定線と第2想定線とは、直交していてもよい。2つのカメラのうちの第1カメラとプロジェクタとは、同じ(同一の)水平面内に配置されていてもよい。2つのカメラのうちの第2カメラとプロジェクタとは、同じ垂直面内に配置されてもよい。2つのカメラとプロジェクタとは、L字型に配置されるとともに、プロジェクタはL字の頂点(vertex)に配置されてもよい。
【0025】
走査部は、第1カメラおよびプロジェクタが起動される第1モードで動作するように構成されてもよい。第1カメラおよびプロジェクタは、それらの間に延在する第1ベースラインを有するステレオペアを形成してもよい。第1モードにおいて、プロジェクタは、第1ベースラインに対して直交する構造化光パターンを投影してもよい。第1モードは、本明細書では、水平モードと呼ばれることがある。第1ベースラインは、水平ベースラインであってもよい。
【0026】
走査部は、第2カメラおよびプロジェクタが起動される第2モードで動作するように構成されてもよい。第2カメラおよびプロジェクタは、それらの間に延在する第2ベースラインを有するステレオペアを形成してもよい。第2モードにおいて、プロジェクタは、第2ベースラインに対して直交する構造化光パターンを投影してもよい。第2モードは、本明細書では、垂直モードと呼ばれることがある。第2ベースラインは、垂直ベースラインであってもよい。
【0027】
走査部は、第1カメラ、第2カメラ、およびプロジェクタが起動される第3モードで動作するように構成されてもよい。第1カメラおよび第2カメラは、それらの間に延在する第3ベースラインを有するステレオペアを形成してもよい。第3モードでは、プロジェクタは、第3ベースラインに対して直交する構造化光パターンを投影してもよい。第3モードは、本明細書において、対角線モード(斜めモード。ダイアゴナルモード)と呼ばれることがある。第3ベースラインは、対角線ベースラインであってもよい。
【0028】
走査部は、第1カメラ、第2カメラ、およびプロジェクタが起動(activated)されるとともに第1カメラ、第2カメラ、およびプロジェクタの各々が光学中心(opticcentre)を形成する、三焦点(trifocal)モードで動作するように構成されてもよい。システムは、三焦点モードにおいて三焦点テンソルを判定するように構成されてもよい。
【0029】
走査部は、水平モードと垂直モードとで選択的に動作可能であってもよい。
走査装置は、走査面と、走査部と、および動作部とを備えている筐体を備えてもよい。
走査面は、実質的に平面であってもよい。走査システムは、歯科対象物を走査面に固定するための固定手段を備えなくてもよい。
【0030】
走査面は、走査面の運動中(動作中)に歯科対象物を所定位置に保持するための高摩擦面を備えていてもよい。
いくつかの例では、システムの要素またはその部品は、互いに遠隔に配置されるとともに、適切な通信媒体によって接続されてもよい。例えば、要素または部品は、ネットワーク接続を介して接続されてもよい。ネットワーク接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、専用線(leasedlines)、またはインターネットのうちの1つまたは複数を備えてもよい。ネットワーク接続は、有線および/または無線リンクを備えてもよい。他の例では、要素同士は、USBリンクまたはFireWire(登録商標)リンクなどの有線通信プロトコルによってリンクされてもよい。
【0031】
システムは、走査装置と、走査装置を制御するように動作可能にした制御装置とを備えていてもよい。走査装置は、走査面、走査部、および動作部を備えてもよい。
本開示の第2態様によれば、第1態様に定義される3D歯科走査システムを用いることで歯科対象物の3D走査をキャプチャする工程を備えている、3次元(3D)走査方法が提供される。
【0032】
3D走査方法は、
所定(予め定められた)詳細レベル未満の詳細レベルでキャプチャされた歯科対象物の点群の領域を識別する工程と、
識別された領域をキャプチャするための走査位置を識別する工程と、および
前記動作部を制御することで、前記走査面および前記走査部を移動させるとともに、前記識別された領域を走査する工程と、を備えていることができる。
【0033】
本方法は、点群をサーフェス化することで3Dモデルを生成する工程と、サーフェス化されたモデルを一様に(uniformly)サンプリングすることで一様にサンプリングされた点群を生成する工程とを備えてもよい。
【0034】
本方法は、
一様サンプリングされた点群内の各点に対する、点群内の最近点を識別する工程と、および
前記一様にサンプリングされた点群内の点と前記識別された最近点との間の距離が閾値距離を超える場合、前記一様にサンプリングされた点群内の点を所定詳細レベル未満であるとフラグ付けする工程と、を備えていることができる。
【0035】
本方法は、各フラグ付けされた点に対する最適視認位置(最適ビューイング位置)を判定する工程を備えてもよい。最適視認位置は、走査部の最適焦点距離に基づいてもよい。最適視認位置は、フラグ付けされた点から延びる法線に基づいてもよい。
【0036】
本方法は、各最適視認位置を検証することで、走査部から見たときにフラグ付き点が隠れないことを判定する工程を備えてもよい。この方法は、レイキャスティングを備えていてもよい。
【0037】
本方法は、最適視認位置が隠れていると判定する工程と、隠れていない位置に到達するように最適視認位置を調整する工程とを備えてもよい。最適視認位置は、法線の角度を調整することで調整されてもよい。最適視認位置は、法線に沿った位置を調整することで調整されてもよい。最適視認位置は、隠れていない位置に到達するまで繰り返し調整されてもよい。
【0038】
本方法は、そこから見えるフラグ付き点の数に従って、各最適視認位置をランク付けする工程を備えてもよい。
第2態様の方法は、反復的に実施されてもよい。したがって、歯科対象物の点群は、本方法の以前の反復(繰り返し)によって得られた点群であってもよい。
【0039】
歯科対象物の点群は、初期点群であってもよく、予めプログラムされた走査シーケンスによって得られてもよい。
本開示の第3態様によれば、
歯科対象物の第1点群における置換のための領域を識別する工程と、および
歯科対象物の第2点群から対応する領域で置換のための領域をパッチングする(パッチする)工程と、を備えている3次元走査方法が提供される。
【0040】
第1点群および第2点群のうちの一方は、歯科印象材の点群であってもよく、第1点群および第2点群のうちの他方は、歯科印象材からの鋳造物(キャスト)の点群であってもよい。
【0041】
本方法は、第1点群をサーフェス化する工程と、サーフェス化されたモデルを一様にサンプリングすることで一様にサンプリングされた点群を生成する工程とを備えてもよい。
前記方法は、
一様にサンプリングされた点群内の各点に対する、第1点群内の最近点を識別する工程と、
前記一様にサンプリングされた点群内の点と前記識別された最近点との間の距離が閾値距離を超える場合、交換するために前記一様にサンプリングされた点群内の点をフラグ付けする工程と、を備えていることができる。
【0042】
本方法は、第2点群を反転させるとともに、第1点群と整列させる工程を備えてもよい。
本方法は、印象材点群の反転および整列された(反転され整列された)点群内の各点に対する、一様にサンプリングされた点群内の最近点を判定する工程を備えてもよい。本方法は、判定された最近点が交換のためのフラグ付けされた点であることに応答して、その点を一時的点群に追加する工程を備えてもよい。
【0043】
本方法は、第2点群の近隣点を含めるべく、一時的点群を編集する工程を備えてもよい。
本方法は、一時的点群をクラスタリングすることで、複数のパッチを形成する工程を備えてもよい。本方法は、各パッチを第1点群に整列させる工程を備えてもよい。
【0044】
第3態様の方法は、第1態様の3次元(3D)歯科走査システムによって実行可能であってよい。
本発明の第4態様によれば、コンピュータによって実行されると、コンピュータに本明細書で定義される方法のいずれかを実行させる命令を備えているコンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、有形および/または非一時的であってよい。
【0045】
本発明の第5態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに本明細書で定義される方法のいずれかを実行させる命令を備えているコンピュータプログラム製品が提供される。
【0046】
本発明は、本明細書に開示された方法のいずれかを実行するように構成されたメモリおよびプロセッサを有するコンピュータ装置にも及ぶ。
本発明をよりよく理解するべく、また、その実施例がどのように実施され得るかを示すべく、次に、例示として、添付の斜視図面を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】例示的な3D歯科走査システムの概略的なブロック図。
【
図2】3D歯科スキャナの例示的な走査装置の斜視図。
【
図3】スキャナの内部を明らかにするべく筐体の一部が取り外された、
図2の例示的な走査装置の斜視図。
【
図6】使用中の例示的な走査装置の扉(ドア)を通した側面図。
【
図7】
図1~
図6の例示的な3D歯科スキャナの第1例示的な走査部の斜視図。
【
図8A】
図1~
図6の例示的な3D歯科スキャナの第2例示的な走査部の斜視図。
【
図8B】
図1~
図6の例示的な3D歯科スキャナの第2例示的な走査部の斜視図。
【
図9】第1例示的な走査方法の模式的なフローチャート。
【
図10】
図9の第1例示的な走査方法をさらに詳細に示す概略フローチャート。
【
図11】
図9の第1例示的な走査方法をさらに詳細に示す概略フローチャート。
【
図12】第2例の走査方法を示す概略フローチャート。
【
図13】
図12の第2例の走査方法をさらに詳細に示す概略フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面において、対応する参照文字は、対応する構成要素を示す。当業者は、図中の要素が単純化および明確化のために図示されるとともに、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解するであろう。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、様々な例示的な実施例の理解を深めるべく、他の要素に対して誇張されている場合がある。また、商業的に実現可能にした実施例において有用であるかまたは必要である一般的であるがよく理解されている要素は、これらの様々な実施例の視界をあまり妨げないようにするべく描かれていないことが多い。
【0049】
概要において、本開示の実施例は、歯科対象物を走査するための3D歯科スキャナを提供するとともに、スキャナは、歯科対象物を実質的に水平面に保持しながら、歯科対象物と走査部との間に5軸の相対運動を提供する。その結果、歯科対象物を所定位置に固定するためのクランプ、治具、または他の固定機構が不要である。これによって、歯科印象材(デンタルインプレッション)などのように、クランプで固定すると変形してしまうような歯科対象物でも、正確に走査することが可能になる。
【0050】
図1~
図6は、本開示の一実施例による3D歯科走査システム1を示す図である。3D歯科走査システム1は、走査装置100と、制御装置200とを備えている。
走査装置100は、
図2~
図5に詳細に示される。走査装置100は、走査装置100の他の構成要素を保持し支持する筐体110を備えている。示された例では、筐体110は、底壁111、上壁112、および4つの実質的に垂直な側壁113a~113dを有する、実質的に立方体のハウジングの形態をとる。側壁113のうちの前壁113aは、筐体110の内部にアクセスするための扉(ドア)114を備えている。例えば、扉114は、引き戸(スライドドア)であってもよい。
【0051】
筐体110の寸法は、底壁111と上壁112との間の高さが約440mm、左右の側壁113bと側壁113dとの間の寸法が約580mm、前壁113aと後壁113cとの間の寸法が約450mmであってよい。これらの寸法は、走査装置100を、例えば歯科外科の、デスクトップまたは作業面上に配置することを許容する。
【0052】
次に
図3~
図5に目を向けると、走査装置100は、動作部(モーションセクション)120を備えている。動作部120は、複数のアクチュエータを備えてもよい。
動作部120は、第1リニアアクチュエータ121を備えて構成されている。第1リニアアクチュエータ121は、底壁111に取り付けられ、第1水平方向(以下、X方向と称する)に運動可能に構成されている。
【0053】
また、動作部120は、第1リニアアクチュエータ121に搭載される第2リニアアクチュエータ122を備えて構成されている。従って、第1リニアアクチュエータ121は、第2リニアアクチュエータ122をX方向に並進させるように構成されている。
【0054】
プレート支持要素123は、第2リニアアクチュエータ122に取り付けられている。プレート支持要素123は、
図6で最もよく見ることができるプレート124を支持するように構成されている。プレート124は、歯科対象物Dがその上に置かれ得る走査面124aを画定する。プレート124は、平面視で円形であり、実質的に水平な平面内に配置される、実質的に平面的な表面の形態をとることができる。
【0055】
一実施例では、走査面124aは、高摩擦面を備えている。例えば、滑り止めマットが走査面124a上に配置されてもよい。高摩擦面は、例えば、走査面124aとその上に配置された歯科対象物Dとの間の摩擦を増加させるリッジ、バンプ、または他の突起を備えてもよい。したがって、歯科対象物Dは、プレート124の運動中、走査面124a上の位置に留まる。
【0056】
第2リニアアクチュエータ122は、プレート支持要素123をひいてはプレート124を、第2水平方向に移動させるように構成されている。第2水平方向は、第1水平方向に対して垂直であり、以下、Y方向と称する。したがって、第1リニアアクチュエータ121と第2リニアアクチュエータ122は、プレート支持要素123とプレート124をX方向およびY方向に水平に並進させるように協働する。
【0057】
さらに、動作部120は、ロータリーアクチュエータ125を備えて構成されている。ロータリーアクチュエータ125は、垂直軸Vを中心にプレート124を回転方向R1に回転させるように構成されている。この軸(垂直軸V)は、例えば、走査面124aの中心を通過していてもよい。
【0058】
動作部120は、さらに、第3リニアアクチュエータ126を備える。第3リニアアクチュエータ126は、例えば側壁113dの内側に垂直に取り付けられる。第3リニアアクチュエータ126は、走査部取付部127を有するとともに、この走査部取付部127に走査部130が取り付けられることができる。走査部130については、本明細書においてさらに詳細に説明する。第3リニアアクチュエータ126は、走査部取付部127を、X方向とY方向とに対して実質的に垂直な垂直方向に移動させるように構成されている。以下、垂直方向(鉛直方向)をZ方向と称することがある。
【0059】
第3リニアアクチュエータ126は、走査部130が歯科対象物Dに実質的に同じ水平面にある位置まで、走査部取付部127を移動させるように構成されている。例えば、第3リニアアクチュエータ126の下端は、プレート124の平面とほぼ同じ水平面、またはプレート124の平面よりも下方に終端していても良い。これによって、走査部130が実質的に水平方向に走査することで、歯科対象物Dの側面が正確にキャプチャ(撮影)され得る。
【0060】
さらに、動作部120は、走査部取付部127を傾斜させるように構成された傾斜(チルト)アクチュエータ(不図示)を備える。従って、傾斜アクチュエータは、走査部130のピッチを変更するように構成されている。特に、
図5に点線で示すように、走査部取付部127は、第1位置と第2位置との間で移動させることができる。第1位置では、走査部取付部127は、第3リニアアクチュエータ126の平面に実質的に平行な垂直面内に配置される。第2位置では、走査部取付部127の上部は、回転方向R2に第3リニアアクチュエータ126の平面から離れるように回転される。したがって、走査部取付部127は、水平傾斜軸Tを中心に傾斜するように構成されている。一例では、水平傾斜軸Tは走査部取付部127の底部を通過している。
【0061】
従って、プレート124および走査部130は、X方向、Y方向、およびZ方向の並進、プレート124の回転、および走査部130の傾斜の5つの運動軸において相対移動するように構成されている。
【0062】
さらに、プレート124と走査部130は、独立した相対的な移動のために構成されてもよい。すなわち、各アクチュエータが独立に動作して(アクチュエートされて)もよい。したがって、プレート124と走査部130は、プレート124(ひいては歯科対象物D)の中心が走査部130の視野の中心に保持される関係などの固定的な関係で保持されることはない。従って、走査部130がプレート124の中心に対して移動の自由度を有することで、プレート124の中心からオフセットした位置に走査部130を移動させることができる。これによって、ひいては、走査部130がプレート124の中心を中心とした画像しかキャプチャ(撮影)できない場合にはキャプチャできないような、関心領域のキャプチャを許容しうる。
【0063】
アクチュエータは、プレート124または走査部130を並進または回転させるための任意の適切な機構を備えてもよいことが理解されるであろう。例えば、アクチュエータは、駆動ネジ、ピストンジャッキ、またはスクリュージャッキを備えてもよい。いくつかの例では、アクチュエータは、モータによって駆動される。いくつかの実施例では、各アクチュエータはそれぞれのモータによって駆動されるが、他の実施例では、2つ以上のアクチュエータが1つのモータによって駆動されてもよいことが理解されるであろう。
【0064】
次に、
図7に目を向けると、走査部130の一例が詳細に示されている。走査部130は、プロジェクタ131と一対のカメラ132,133とを備えている構造化光スキャナを備えている。
【0065】
プロジェクタ131は、構造化光パターンを歯科対象物Dに投影するように構成されている。カメラ132,133は、プロジェクタ131の上方に配置される。カメラ132,133は、同じ水平面内に配置されている。各カメラ132,133は、プロジェクタ131から等距離に配置されている。従って、カメラ132,133とプロジェクタ131のレンズは、上辺が水平な想定逆三角形で接続することができる。カメラ132,133は、互いの焦点位置が収束するような角度を有している。
【0066】
図1に戻り、走査装置は、制御部140をさらに備える。制御部140は、走査部(走査装置)130の動作を制御するように構成されている。例えば、制御部140は、動作部120および走査部130を制御することで、歯科対象物の3D走査を得るように構成されている。
【0067】
制御部140は、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィック処理装置)、またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などの演算素子を備えている。
走査装置100は、さらに、ストレージ150を備える。ストレージ150は、走査装置100の動作に必要な任意のデータおよび/または命令を一時的または永続的に格納することができる。ストレージは、ROM、RAM、EEPROM、ソリッドステートドライブおよびハードディスクドライブを含む揮発性および/または不揮発性メモリを備えてもよい。
【0068】
一実施例では、制御部140およびストレージ150は、ミニPC141に備えられてもよい。また、制御部140およびストレージは、マイクロコントローラ(例えば、Arduino(登録商標))に備えられてもよい。例えば、ミニPC141は、走査部130を制御するとともに、マイクロコントローラに制御指示を送り、マイクロコントローラが動作部120の動作を制御してもよい。
【0069】
走査装置100は、通信インタフェース160をさらに備えてもよい。通信インタフェース160は、制御装置200からデータおよび命令を送受信するように構成されている。例えば、通信インタフェース160は、有線または無線ネットワークインタフェースなどのネットワークインタフェースを備えている。他の例では、通信インタフェース160は、シリアル接続、USB接続、または他の任意の適切なデータ伝送機構を備えてもよい。
【0070】
再び
図1に戻り、制御装置200は、制御部210、ストレージ220、通信インタフェース230、およびユーザインタフェース240を備えている。制御部210は、CPU(CentralProcessing Unit)、GPU(GraphicsProcessing Unit)、FPGA(FieldProgrammable GateArray)などの演算素子を備えている。ストレージ220は、制御装置200の動作に必要な任意のデータおよび/または命令を一時的または永続的に格納してもよい。ストレージは、ROM、RAM、EEPROM、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブを含む揮発性および/または不揮発性メモリを備えてもよい。
【0071】
通信インタフェース230は、走査装置100からデータおよび命令を送受信するように構成されている。例えば、通信インタフェース230は、有線または無線ネットワークインタフェースなどのネットワークインタフェースを備えている。他の例では、通信インタフェース230は、シリアル接続、USB接続、または他の任意の適切なデータ伝送機構を備えてもよい。
【0072】
ユーザインタフェース240は、ユーザが走査装置100に制御命令を入力するとともに、および/または走査から得られる結果モデルを見ることを許容する任意の適切な入力および出力デバイスの形態をとってもよい。例えば、ユーザインタフェース240は、モニタまたは他のスクリーン、キーボード、マウスおよびタッチスクリーンインタフェースのうちの1つまたは複数を備えてもよい。制御装置200は、デスクトップまたはラップトップコンピュータの形態をとってもよい。
【0073】
使用時には、走査装置100の扉114が開かれるとともに、鋳造モデルや歯科印象材などの歯科対象物Dが、プレート124の上に置かれる。次に、例えばユーザがユーザインタフェース240を介して適切なユーザ入力を行うことによって、歯科対象物の走査ルーチンが開始される。
【0074】
その後、制御部(コントローラ)140は、動作部120および走査部130を制御するとともに、それらが所望の走査位置に移動するようにするとともに、その際、歯科対象物の所望の部分が所望の視野角で走査部130に見えるようにする。
【0075】
動作部120は、第1または第2リニアアクチュエータ121または122を動作させることによって、プレート124をX方向またはY方向に並進させることができる。また、動作部120は、ロータリーアクチュエータ125を使用してプレート124を回転させてもよい。さらに、動作部120は、第3リニアアクチュエータ126を用いて走査部130をZ方向に並進させてもよく、傾斜(チルト)アクチュエータを用いて走査部130を傾斜(チルト)させてもよい。
【0076】
動作部120がプレート124と走査部130とを所望の走査位置に移動させると、プロジェクタ131が光パターンを歯科対象物に投影するとともに、カメラ132、133の一方または両方によって画像がキャプチャ(撮影)される。
【0077】
キャプチャされた一つまたは複数の画像から、構造化光走査技術に従って、3D点群が導出される。キャプチャされた画像から3D点群を導出する処理の一部は、制御部(コントローラ)140によって実施されるとともに、さらなる処理は制御部(コントローラ)210によって実施されてもよいことが理解されよう。
【0078】
歯科対象物Dおよび走査部130を所望の走査位置に配置するように動作部120を制御する処理は、複数の所望の走査位置からモデルの走査をキャプチャするように、複数回繰り返されてもよい。異なる走査位置から得られた点群同士は、歯科対象物Dの点群を形成するべく結合されてもよい。複数の走査がキャプチャされるとともに結合される走査方法の例は、
図9および10に関して以下でさらに詳細に説明される。
【0079】
従って、動作部120および走査部130は、5軸の動作で互いに対して相対移動されてもよい。これによって、走査部130は、非常に広い範囲の位置から走査をキャプチャすることができ、したがって、高度に詳細で広範な走査を提供することができる。さらに、歯科対象物Dをプレート124にクランプ等で固定する必要がなく、走査をキャプチャすることができる。
【0080】
図8Aおよび
図8Bは、第2実施例の走査部1130を示す。走査部130と同様に、走査部1130は、プロジェクタ1131と一対のカメラ1132、1133とを備えている。2つのカメラ1132、1133のうちの第1カメラ1132と、プロジェクタ1131とは、同じ水平面内に配置されている。また、2つのカメラのうちの第2カメラ1133と、プロジェクタ1131とは、同じ垂直面内に配置されている。従って、2つのカメラ1132、1133およびプロジェクタ1131のレンズは、想定される「L」字型に配置されている。
【0081】
走査部1130は、第1カメラ1132およびプロジェクタ1131を走査に用いる、本明細書において水平モードと呼ぶことができる第1モードで動作するように構成されている。したがって、第1カメラ1132およびプロジェクタ1131は、それらの間に延在する水平ベースラインを有するステレオペアを形成する。水平モードでは、プロジェクタ1131は、水平ベースラインに対して直交する構造化光パターン(例えば、一連のライン)を投影してもよい。
【0082】
また、走査部1130は、本明細書において垂直モードと呼ばれることがある、第2カメラ1133およびプロジェクタ1131が走査に使用される第2モードで動作するように構成されている。したがって、第2カメラ1133およびプロジェクタ1131は、それらの間に延在する垂直ベースラインを有するステレオペアを形成する。垂直モードでは、プロジェクタ1131は、垂直ベースラインに対して直交する構造化光パターン(例えば、一連のライン)を投影してもよい。
【0083】
また、走査部1130は、第1カメラ1132および第2カメラ1133の両方が走査に使用される、第3モード(本明細書では対角線モードと呼ぶことがある)で動作するように構成されている。このモードでは、第1カメラ1132および第2カメラ1133は、それらの間に延びる対角線ベースラインを有するステレオペアを形成する。プロジェクタ1131は、対角線ベースラインに対して直交する構造化光パターンを投影する。
【0084】
一実施例では、走査部1130は、三焦点モードで動作するように構成されている。このモードでは、2つの光学中心を有するステレオ走査ペアを利用するのではなく、第1カメラ1132、第2カメラ1133、およびプロジェクタ1131の各々が光学中心を形成する。三焦点走査モードでは、2つの画像に基づく基本行列(二焦点テンソルとも呼ばれる)を計算するのではなく、3つの光学中心からキャプチャ(撮影)された画像同士間の点での対応関係を表す三焦点テンソルが計算される。三焦点テンソルは、例えば非特許文献1に示される方法で算出することができ、その内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0085】
使用時、制御部(コントローラ)140は、垂直モードまたは水平モードのいずれかで選択的に動作するように、走査部1130を制御する。これによって、走査装置100は、走査部130を使用して走査した場合、さもなければ隠れるであろう歯科モデルの領域を正確に走査するとともに、それによって、走査の適用範囲および3Dモデルの精度を向上させることができる。
【0086】
走査部1130は、第1カメラ1132とプロジェクタ1131とを結ぶ第1想定線と、第2カメラ1133とプロジェクタ1131とを結ぶ第2想定線とが非共線である一例の構成であることが理解されよう。例示の走査部1130では、第1想定線と第2想定線は直交しており、第1想定線は実質的に水平である。しかし、さらなる例では、走査部は、第1想定線および第2想定線が非共線である他の方法を備えてもよい。例えば、線同士間の角度は、鋭角であっても鈍角であってもよい。さらに、想定線は、水平面および/または垂直面に一致する必要はない。
【0087】
図9は、例示的な走査方法のフローチャートである。走査方法は、歯科対象物の高カバレッジ走査を提供するように、走査位置のシーケンスを生成する。
ステップS901では、歯科対象物の入力点群が分析されるとともに、予め定められた十分な詳細レベル未満の詳細レベルで走査された対象物の領域が識別される。ステップS902では、識別された領域をキャプチャするための走査位置が判定される。ステップS903では、動作部120および走査部130を走査位置に移動させるとともに、識別された領域をキャプチャ(撮像)する。
【0088】
図10は、ステップS901の処理をさらに詳細に説明する図である。第1ステップS1001では、入力された点群(ポイントクラウド)をサーフェス化させる。これは、点群内の点に基づき歯科対象物の3次元表面(3Dサーフェス)を再構築する処理である。例えば、ポアソンサーフェシングアルゴリズムを使用することで、3Dモデルからサーフェスを生成する。この結果、サーフェス化されたメッシュが生成される。
【0089】
続いて、ステップS1002において、一様にサンプリングされた点群を生成するように、サーフェス化されたメッシュが一様な距離でサンプリングされる。一例では、サンプリング距離は0.5mmである。この距離は変化させてもよく、距離が小さいほど処理速度を犠牲にするとともに精度を高めることができる。
【0090】
続いて、ステップS1003では、一様にサンプリングされた点群内の各点に対する、入力点群内の最近点が識別される。
続いて、ステップS1004において、一様にサンプリングされた点群内の点と、識別された最近点との間の距離が閾値距離を超える場合、入力点群のこの領域が十分な詳細レベルではキャプチャされていないことが示される。閾値距離を超える各点は、例えば点の色を変更することで、フラグ付けられる。
【0091】
閾値は例えば0.3mmであるが、サンプリング距離と同様に、より小さいまたはより大きい距離を採用することができる。
また、入力点群内の最近点が比較的大きな距離(例えば、10mm以上)離れている場合、その点は、一様にサンプリングされた点群から除去されてもよい。そのような大きな距離は、モデルのサーフェシング(サーフェス化)が不正確であり、したがって使用されるべきではない一様にサンプリングされた点群の領域を示すことがある。
【0092】
一実施例では、歯科モデルは、例えば黒色または高反射部分を有する走査不可能な領域を備えてもよい。走査不可能な領域に対応する一様にサンプリングされた点群の領域は、入力点群内に近接対応点を有さないことになる。そこで、走査不可能な領域を繰り返し走査することを避けるべく、歯科対象物の走査が既に得られている以前のすべての走査位置のリストが維持される。これらの以前の走査位置のそれぞれからレイキャストを実行するとともに、以前の視認(ビュー)が既に未視認点をキャプチャしているはずであるかどうかを確認する。レイキャストが、その見えない点が以前の走査位置から見えていたことを示す場合、その点は走査不可能な点であると判定されてもよい。いくつかの例では、その点をキャプチャすべきであったがキャプチャしなかった所定数(例えば2)の以前のビューが存在する場合、その点は走査不可能であると判定されてもよい。これによって、1つのビューのみにおける異常な反射のために走査不可能な点を破棄(廃棄)してしまうことを、回避することができる。
【0093】
図11は、ステップS902の処理をさらに詳細に説明するための図である。最初のステップS1101では、与えられたフラグ付き点について、最適視認位置(最適ビューイング位置)が判定される。一例では、最適視認位置は、まず、フラグ付き点から法線を投影することで判定される。法線は、フラグ付き点の接平面に対して垂直な線である。そして、フラグ付き点から走査部130,1130の最適焦点距離に相当する距離にある法線上の点を、フラグ付き点の最適視認位置と判定する。
【0094】
第2ステップS1102では、走査部130,1130のカメラから見たときにフラグ付き点が隠れることがないように最適視認位置が検証される。例えば、走査部を最適視認位置に仮想的に配置するとともに、カメラの中心の仮想位置からフラグ付き点までのレイキャスト(ray-cast)を実施する。
【0095】
レイキャストの結果、カメラがフラグ付けされた点に対して明確な視線(line-of-sight)を持つことが分かった場合、このカメラ位置が走査部候補位置のリストに格納される(S1103)。
【0096】
上述したように、走査部1130は、1つまたは複数のカメラおよびプロジェクタが動作している、複数のモードのうちの1つで動作してもよいことが理解されよう。したがって、一例では、現在の走査モードで使用されているすべてのカメラからの明確な視線は、必要とされる。さらなる実施例では、走査モードの1つにおいて明確な視線が利用可能である場合、カメラの位置は、明確(明瞭)な視線が利用可能であるモードの記録と共に記憶される。従って、走査方法は、特定の点をキャプチャするべく最も適切な走査モードを自動的に選択することができる。いくつかの例では、利用可能にした最良の走査モードが使用されるように、所定のランキング(順位)が定義されてもよい。例えば、両方のカメラとプロジェクタが明確な視線を有する場合、この方法は、三焦点または対角線モードを選択するとともに、水平モードおよび垂直モードはフォールバック(縮退運転)として機能することができる。
【0097】
プロジェクタは、すべての走査モードにおいてアクティブであるので、一実施例では、プロジェクタからの視線は、いずれかのカメラからの視線よりも先に判定されてもよい。これは、プロジェクタが隠されている場合に、カメラへのレイキャストの計算を回避する、効率的な第1フィルタとして機能する。
【0098】
一方、明確な視線がない場合、法線の角度を繰り返し調整する。例えば、法線の角度を1軸ずつ1度ずつ調整することで、視線が確保できる位置に到達する(S1104)。これによって、円錐の頂点にある点と、カメラの位置が円錐の底を形成する円錐パターンがトレースされる。円錐の底の半径を徐々に大きくしていくことで、明確な視線を見つけることができる。したがって、この方法は、ブルートフォースサーチと、理想的な位置に基づく最適化とを効果的に組み合わせている。
【0099】
別の例では、明確な視線がない場合、カメラの位置を法線に沿って反復的に調整するとともに、最適焦点距離よりも点に近づけるか、または近づけなくすることができる。これによって、点のビュー(視界。視認)を妨げずに理想的な位置に近い位置に到達する、もう一つの可能にした手段が得られる。
【0100】
次に、調整された位置は、走査部候補位置のリストに格納される(S1103)。
ステップS1105において、走査部候補位置は、そこから見えるフラグ付き点の数に従ってランク付けされる。
【0101】
例えば、各候補位置に対して、その位置から見える全てのフラグ付き点が格納される。このフラグ付き点のリストは、次に、以下のうちの1つまたは複数を除去するべく刈り込まれる(pruned)ことがある。
【0102】
・すべてのカメラの2Dスクリーン座標内にない点。
・3次元法線が各カメラから離れる方向に向く点。カメラからの角度が70度などの閾値角度を用いることで、点を破棄することができる。
【0103】
・カメラの格納された被写界深度パラメータに基づき、いずれかのカメラから遠すぎる点、または近すぎる点。
・いずれかのカメラの投影から隠されている点。
【0104】
次に、走査位置の候補は、フラグ付けされた点の数に基づきランク付けされる。
一実施例では、候補位置のリストが所定の閾値サイズを超える場合、ステップS1105が実行される前に、候補位置がランダムにサンプリングされていることでリストサイズが縮小される。ランダムサンプリングは特定の点を見逃す結果になるかもしれないが、アルゴリズムの繰り返し反復の結果、その点は後の反復でキャプチャされる可能性が高くなる。閾値は例えば1000とすることができる。
【0105】
一例として、ランキングは、特定のフラグ付けされた点が特定の走査に現れたら、繰り返しカウントされないようにするものである。すなわち、或る走査位置に既に現れている点は、その後、他の下位のランキングの走査位置で見える点のカウントに寄与することはない。
【0106】
一例では、走査位置の候補の完全なリストが返される(リターンされる)ことがある。他の例では、最初のn個の視認(ビュー)が返されてもよい。或る実施例では、フラグ付き点の所定割合に対応する走査位置を備えているリストが返されてもよい。次に、動作部は、不十分な詳細レベルの識別された領域を走査するべく、走査位置に移動される。
【0107】
いくつかの実施例では、
図9の方法は反復的に実施される。したがって、本方法の1つの反復の出力として得られた点群は、本方法の後続の反復のための入力点群を形成する。
いくつかの例では、初期点群は、予めプログラムされた走査シーケンスによって得られてもよい。この初期点群は、その後、本方法の入力点群を形成することができる。
【0108】
図9~
図11の例示的な方法は、3D歯科走査システム1によって実施されてもよい。それは例えば、制御装置200によって実施されてもよい。
次に、別の例示的な走査方法を、
図12を参照して説明する。
【0109】
上述したように、歯科印象材は、患者の口腔内構造のネガ型インプリントであり、そこから歯科モデルが鋳造され得る。鋳造された歯科モデルを走査すると、歯科印象材ではより容易に見えるかもしれない詳細レベルの重要な領域が欠落する虞れがある。例えば、歯冠準備の周囲の近位間領域および後退した歯肉溝の詳細な領域は、正確にキャプチャされない場合がある。逆に、歯科印象材では正確に走査することが困難な領域でも、鋳造モデルでは容易に見ることができる場合がある。
【0110】
本走査方法では、歯科印象材を走査することで得られた3Dモデル(以下、「印象材3Dモデル」)と、印象材から鋳造された歯科モデルを走査することで得られた3Dモデル(以下、「鋳造3Dモデル」)とを組み合わせることができる。しかし、例えばモデルを流し込む処理に起因する、鋳造3Dモデルと印象材3Dモデルとの間の差異によって、印象材3Dモデルを単に反転させて鋳造3Dモデルに結合することは不正確である場合がある。
【0111】
本例の方法は、歯科印象材から鋳造された歯科モデルを走査することで得られた3Dモデルにおいて、欠陥領域(ディフェクティブリージョン。不良領域)を検出するステップS1201を備えている。
【0112】
一実施例では、欠陥領域は、上記ステップS901における不十分な詳細レベルで走査された領域の検出と同様の方法で検出される。例えば、鋳造された3Dモデルの点群をサーフェス化するとともに、次に一様にサンプリングすることで一様にサンプリングされた点群を生成してもよい。鋳造3Dモデルの点群内の最近点からの距離が閾値距離以上である、一様にサンプリングされた点群内の点は、欠陥(不良)としてフラグ付けられる。この例では、走査処理中にモデルの大きな領域が欠落(missing)する虞れが低いという理由で、より小さな閾値が使用されるかもしれない。例えば、閾値は0.1mmとすることができる。
【0113】
さらなる例では、エッジ検出技術を使用することで、鋳造3Dモデルの点群内の穴(holes)を識別することができる。
例示的な方法は、ステップS1202を備えており、このステップでは欠陥領域は、歯科印象材の走査から得られる歯科対象物の3Dモデルから対応する領域でパッチされる。
【0114】
図13は、ステップS1202をさらに詳細に示している。
第1ステップS1301において、印象材3Dモデルの法線は反転されるとともに、グローバル登録アルゴリズムを使用することで、鋳造(キャスト)3Dモデルに整列される。
【0115】
第2ステップS1302では、印象材3Dモデルの反転および整列された点群内の各点に対する、一様にサンプリングされた点群内の最近点が識別される。一様にサンプリングされた点群内の最近点が欠陥であるとフラグ付けされる場合、印象材3Dモデルの反転および整列された点群内の点は、新しい一時的(テンポラリー)点群に追加される。したがって、この一時的点群は、鋳造3Dモデルの欠陥領域に対応する印象材3Dモデルの反転および整列された点群内のすべての点によって入力(populated)される。
【0116】
次のステップS1303では、一時的点群は、印象材3Dモデルの近隣点(neighbouring points)を含むように膨張(swollen)される。印象材3Dモデルの反転・整列点群内の各点のうち、一時的点群の所定距離(例えば0.5mm)未満の最近近隣点を有する点も、一時的点群に追加される。
【0117】
次のステップS1304では、一時的点群を、複数のより小さな点群にクラスタリングする。これは最近傍探索(nearest neighbour search)に基づいてもよく、探索基準(サーチクライテリア)の例は0.3mmである。他のクラスタリングアルゴリズムが一時的点群の分割に適用されてもよいことが理解されよう。結果として得られる複数のより小さい点群はそれぞれ、鋳造3Dモデルに適用されるパッチを形成する。
【0118】
次のステップS1305において、各パッチは、鋳造3Dモデルに整列されるとともに、そこに組み込まれる。例えば、反復最近点アルゴリズムのような整列(アライメント)アルゴリズムが採用され得る。
【0119】
図12および
図13の方法は、所望であれば、印象材3Dモデルを鋳造3Dモデルでパッチすることでも同様に実施できることが理解されるであろう。
さらなる例では、
図12および
図13の方法は、様々な歯科対象物の2つの走査を結合するべく適用されてもよい。
【0120】
一例では、本方法は、印象材が同じ患者のものである、2つの印象材走査を結合するべく使用されてもよい。例えば、診療中の歯科医は、第1印象材が歯の特定の領域を十分な詳細レベルでキャプチャしていないことが明らかである、第2印象材を採取(take)することができる。
【0121】
別の例では、本方法は、鋳造モデルの2つの走査を結合するべく適用することができる。例えば、歯科実験室(ラボ)は、鋳造モデルを採取した第1走査を採取してもよい。その後、鋳造モデルは、例えば、それに補綴物(プロテーゼ)を装着するべく、ラボによって作業されてもよい。補綴物を準備する処理において鋳造モデルは取り扱われるとともに、モデルの領域に、特に補綴物に近接していない領域に、小さな損傷が発生することがある。したがって鋳造モデルの第1走査を、後続の走査と組み合わせることが望ましい場合があるので、この方法は第1走査を、補綴物を備えている鋳造モデルの第2走査でパッチするものである。
【0122】
いくつかの例では、モデルの領域は、ユーザによって、他のモデルの中にパッチされる領域として機能すべきドナー領域としてマークされ得る。例えば、領域は、ユーザインタフェース240を介して選択されてもよい。ドナー領域に対応しないモデルの領域は、またはドナー領域から所定距離内にないモデルの領域は、上記で概説した方法を適用する前に、モデルから切り取られ(croppedされ)てもよい。
【0123】
図9~
図11の例示的な方法は、3D歯科走査システム1によって実施されてもよい。例えば、制御装置200によって実施されてもよい。
本明細書に記載された実施例に対して様々な修正または変更がなされてもよい。例えば、走査装置100および制御装置200のコントローラの機能を入れ替えてもよいことが理解されよう。言い換えれば、いくつかの実施例において、制御部140によって実施されるものとして本明細書に記載された機能性は、制御部210によって実施されてもよく、その逆もまた然りである。いくつかの実施例では、制御装置200の機能は走査装置100に統合されるとともに、制御装置が不要になるようにしてもよい。筐体110の形状および構造は様々であってよいことが理解されよう。
【0124】
本明細書に記載された走査システムおよび方法は、有利には、歯科印象材のような柔軟な材料の広い観点の範囲からの正確な走査を、その歪みの原因になり得る印象材のクランプなしで許容する。さらに、走査システムの構造は、歯科手術室に容易に設置することができるようになっている。
【0125】
さらに、本明細書に記載の走査方法は、走査システムのオペレータからの最小限の介入で、歯科対象物の高品質モデルを自動的に導出することができる。従って、走査システムは、例えば外科の歯科看護師または歯科医師によって、最小限の訓練で容易に操作することができる。スキャナが最小限の訓練で、かつ歯科印象材に使用できるという事実は、歯科印象材を歯科ラボに送付(ポスト)する必要性をなくし得る。従って、患者の歯の正確なモデルを迅速に作成することができる。
【0126】
本明細書に記載された実施例の少なくともいくつかは、部分的または全体的に、専用の特殊用途のハードウェアを使用して構築することができる。本明細書で使用される「構成要素」、「モジュール」または「ユニット」(部)などの用語は、特定のタスクを実行するかまたは関連する機能を提供する、ディスクリートまたは集積構成要素の形態の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)またはアプリケーション特定集積回路(ASIC)などのハードウェアデバイスを備え得るが、これだけに限定されるわけではない。いくつかの例では、記載された要素は、有形で永続的なアドレス指定可能にした記憶媒体に常駐するように構成されてもよく、1つまたは複数のプロセッサ上で実行されるように構成されてもよい。これらの機能的要素は、いくつかの例では、一例として、ソフトウェア構成要素、オブジェクト指向ソフトウェア構成要素、クラス構成要素、およびタスク構成要素などの構成要素、処理、関数、属性、手続き、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバー、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ、および変数を備えてもよい。実施例は、本明細書で論じた構成要素、モジュール、およびユニットを参照して説明したが、このような機能要素は、より少ない要素に結合されてもよいし、追加の要素に分離されてもよい。本明細書では、オプション機能の様々な組み合わせについて説明したが、説明した機能は、任意の適切な組み合わせで組み合わせることができることが理解されよう。特に、任意の1つの実施例の特徴は、そのような組み合わせが相互に排他的である場合を除き、適宜、任意の他の実施例の特徴と組み合わせてもよい。本明細書を通じて、用語「を備えている」または「含む」は、指定された構成要素(複数可)を含むが、他の構成要素の存在を排除するものでないことを意味する。
【0127】
本願に関連して本明細書と同時またはそれ以前に提出されるとともに、本明細書とともに公開されているすべての論文および文書に注意が向けられ、すべてのかかる論文および文書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0128】
本明細書(添付の請求項、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の全て、および/またはそのように開示された方法または処理の全ての工程(ステップ)は、かかる特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除くとともに、任意の組み合わせで組み合わせることが可能である。
【0129】
本明細書(添付の請求項、要約書、および図面を含む)に開示された各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同一、同等、または類似の目的を果たす代替的特徴に置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の一般的な一連の一例のみである。
【0130】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の請求項、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の新規なもの、または新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法または処理の工程(ステップ)の新規なもの、または新規な組み合わせに及ぶものである。