(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】坑菌、抗真菌、抗炎活性及び歯牙齲蝕抑制活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス菌株KCCM13161P及びこれを含む口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20241105BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241105BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20241105BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241105BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241105BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20241105BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241105BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241105BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20241105BHJP
C12R 1/46 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A61P31/10
A61P31/04
A61P1/02
A61K35/74 A
A61K35/74 G
A61K35/744
A61Q11/00
A61K8/99
C12R1:46
(21)【出願番号】P 2023118547
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2023-0038272
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年12月23日にJournal of Korean Academy of Oral Health, 2022, 46(4): 1-5において論文発表
【微生物の受託番号】KCCM KCCM13161P
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523275983
【氏名又は名称】グリーンストア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】パン、チェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ドン ホン
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517439(JP,A)
【文献】Accession: FJ154800, Definition: Streptococcus salivarius strain CCUG 25922 16S ribosomal RNA gene, partial,[online], 掲載日: 2009.11.24, 検索日: 2024.4.16, Database: GenBank , <URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/FJ154800.1/>
【文献】Appl. Environ. Microbiol.,2012年,Vol. 78, No. 7,pp.2190-2199
【文献】Clin. Exp. Dent. Res.,2020年,Vol. 6,pp.207-214
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレプトコッカスサリバリウスG7、寄託番号:KCCM13161P(Streptococcus salivarius G7、寄託番号:KCCM13161P)菌株
を含む口腔細菌抑制用坑菌組成物であって、
前記坑菌の坑菌活性は、アグリゲイティバクターアクチノミセスコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、アクチノミセスイスラエリ(Actinomyces israelii)、アクチノミセスネスランディ(Actinomyces naeslundii)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ポルフィロモナスジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラインターメディア(Prevotella intermedia,Bacteroides intermedius)、プレボテラニグレセンス(Prevotella nigrescens)
、アクチノミセスビスコーサス(Actinomyces viscosus)、大腸菌(Escherichia coli)、及び黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)からなる群から選ばれる1以上に対する坑菌活性
を有する
ことを特徴とする菌株。
【請求項2】
ストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株又はその培養物を含む
ことを特徴とする口腔カンジダ症の治療又は改善用薬学組成物。
【請求項3】
前記口腔カンジダ症の治療又は改善用薬学組成物は、カンジダアルビカンス(Candida albicans)に対する抗真菌活性を有するものである
請求項2に記載の口腔カンジダ症の治療又は改善用薬学組成物。
【請求項4】
ストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株又はその培養物を含む
ことを特徴とする口臭抑制用組成物。
【請求項5】
口臭抑制は、硫化水素(H
2
S)及び硫化メチル(CH
3
SH)の濃度を抑制することによって行われる
請求項4に記載の口臭抑制用組成物。
【請求項6】
前記口臭抑制用組成物は、歯磨き粉、うがい製品、ガム、あめ類、カラメル類、ジェリー類、口腔スプレー、口腔用軟膏、口腔洗浄剤、口腔清浄剤及び歯牙美白剤からなる群から選ばれる一つに製品化されるものである
請求項4に記載の口臭抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑菌、抗真菌、抗炎活性及び歯牙齲蝕抑制活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス菌株及びこれを含む口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内感染性疾患は、歯肉(歯茎、gingival)と歯牙(歯、dental)性疾患とに区別でき、このような感染性疾患は、多種の細菌で形成されたバイオフィルム(biofilm)と関連がある。健康な人にとって、バイオフィルムは、共生バクテリアの比率が高い多種細菌によってバランスして形成される。しかし、このようなバランスが崩れて特定細菌が増殖してしまうと、これは口腔疾患につながる。
【0003】
アクチノミセスイスラエリ(Actinomyces israelii)とアクチノミセスネスランディ(Actinomyces naeslundii)は代表的な歯肉炎原因菌であり、ストレプトコッカスミュータンス(虫歯菌、Streptococcus mutans)とストレプトコッカスソブリヌス(Streptococcus sobrinus)は、歯牙齲蝕性細菌として知られている(Howell A.et al.,1962;Loesche WJ.et al.,1978)。それらの細菌は、酸生成能(acidogenesis)と酸耐性能(aciduricity)の特徴を有しており、歯牙齲蝕症を誘発する(Conrads G et al.,2014)。また、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)は、ヒト腸内球菌の優勢種で、抗生剤耐性特性によって根管感染、歯周炎、インプラント周囲炎などの口腔疾患に関与する(Dahlen G.,et al.,1993;Rams TE.,et al.,2013)。(非特許文献1-5)
【0004】
一方、一部の菌株は口腔内使用を目的とするプロバイオティクスとして利用可能である(Li X.,2021;Hale JDF.,et al.,2022)。このような細菌は、細菌間の生息場所を競う過程でバクテリオシン(bacteriocin)を生産して周辺の細菌を抑制する。ストレプトコッカスサリバリウス(Streptococcus salivarius)もバクテリオシンと類似なsalivaricin A、salivaricin B、salivaricin 9及びsalivaricin G3216-18のような種々のランチビオティクス(lantibiotics)を生産する(Wescombe PA.,et al.,2006)。ストレプトコッカスサリバリウス(Streptococcus salivarius)は、グラム陽性通性嫌気性細菌で、人の粘膜表面に生息する共生細菌として活動しながら(Aas JA.,et al.,2005)病源体に対する障壁を形成し、付着及び集落を減少させる重要な生態学的役割を担い(Wescombe PA.,et al.,2006)、よって、口腔用プロバイオティクス使用可能性は着実に提起されている。(非特許文献6-10)
【0005】
また、近年、様々な研究論文から、口腔内存在している有害菌が全身疾患(ループス、全身硬化症、炎症性腸疾患、認知症など)に悪影響を及ぼすという結果が発表されており、口腔内微生物バランスを維持することが、歯牙健康の他に全身健康にも影響を及ぼし得るという概念に拡張されている。
【0006】
全身疾患は、一般に、人体に正常細菌叢のバランス崩壊又は外部微生物の侵入及び増殖によって発生するものと知られている。したがって、微生物の生長を抑制する抗生剤を使用するよりは、坑菌効果を有しながらも微生物生態系を保持させ得る口腔用プロバイオティクスを用いる方が、国民健康を増進させることに役立ち得る。
【0007】
このため、広い坑菌活性を有する口腔用プロバイオティクスの開発が至急な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2022-0139280号、新規ラクトバチルスプランタルム菌株を含む口腔用組成物、2022年10月14日。公開。
【文献】韓国登録特許第2022年10月14日号、人体口腔由来ラクトバチルスファーメンタムOK菌株を含む口臭又は虫歯改善、予防又は治療用組成物、2020年12月29日。登録。
【文献】韓国公開特許第10-2023-0017372号、スーパーオキシドディスムターゼ及び/又はバチルス菌株胞子を含む組成物及びその口腔健康改善用用途、2023年02月03日。公開。
【文献】韓国登録特許第2023年02月03日号、人体口腔由来ラクトバチルスガセリHHuMIN Dを含む口臭又は虫歯改善、予防又は治療用組成物、2020年12月29日。登録。
【非特許文献】
【0009】
【文献】Howell A,Stephan RM,Paul F.Prevalence of Actin-omyces israelii,A.naeslundii,Bacterionema matruchotii,and Candida albicans in selected areas of the oral cavity and saliva.J Dent Res 1962;41:1050-1059.
【文献】Loesche WJ,Syed SA.Bacteriology of human experimental gingivitis:effect of plaque and gingivitis score.Infect Immun1978;21:830-839.
【文献】Conrads G,de Soet JJ,Song L,Henne K,Sztajer H,Wagner-Dobler I,et al.,Comparing the cariogenic species Streptococcus sobrinus and S.mutans on whole genome level.J Oral Microbiol 2014;6:26189.
【文献】Dahlen G.Role of suspected periodontopathogens in microbiological monitoring of periodontitis.Adv Dent Res 1993;7:163-174.
【文献】Rams TE,Feik D,Mortensen JE,Degener JE,Winkelhoff AJ.Antibiotic susceptibility of periodontal Enterococcus faecalis.J Periodontol 2013;84:1026-1033.
【文献】Aas JA,Paster BJ,Stokes LN,Olsen I,Dewhirst FE.Defining the normal bacterial flora of the oral cavity.J Clin Microbiol 2005;43:5721-5732.
【文献】Wescombe PA,Burton JP,Cadieux PA,Klesse NA,Hyink O,Heng NC,et al.Megaplasmids encode differing combinations of lantibiotics in Streptococcus salivarius.Antonie Van Leeuwenhoek 2006;90:269-280.
【文献】Li X,Fields FR,Ho M,Marshall-Hudson A,Gross R,Casser ME,et al.Safety assessment of Streptococcus salivarius DB-B5as a probiotic candidate for oral health.Food Chem Toxicol 2021;153:112277.
【文献】Hale JDF,Jain R,Wescombe PA,Burton JP,Simon RR,Tagg JR.Safety assessment of Streptococcus salivarius M18a probiotic for oral health.Benef Microbes 2022;13:47-60.
【文献】Wescombe PA,Upton M,Renault P,Wirawan RE,Power D,Burton JP,Chilcott CN,Tagg JR.Salivaricin 9,a new lantibiotic produced by Streptococcus salivarius.Microbiology 2011;157:1290-1299.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い坑菌、抗真菌、抗炎効果を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス菌株及びこれを含む口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株を提供する。
【0012】
前記坑菌活性は、アグリゲイティバクターアクチノミセスコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、アクチノミセスイスラエリ(Actinomyces israelii)、アクチノミセスネスランディ(Actinomyces naeslundii)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ポルフィロモナスジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラインターメディア(Prevotella intermedia,Bacteroides intermedius)、プレボテラニグレセンス(Prevotella nigrescens)、ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカスソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、アクチノミセスビスコーサス(Actinomyces viscosus)、大腸菌(Escherichia coli)及び黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)からなる群から選ばれる1以上に対する坑菌活性を含むが、これに限定されるものではない。
【0013】
本発明において、「アグリゲイティバクターアクチノミセスコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)」は、代表的な歯肉炎誘発細菌の一つであり、局所攻撃性歯周炎と関連するグラム陰性、通性嫌気性非運動性バクテリアである。A.actinomycetemcomitansはまれに心内膜炎のような非口腔感染を起こし、外毒素としてロイコトキシン(leukotoxin,LT)と細胞毒性膨脹性毒素(cytolethal distending toxin,Cdt)を生成させる。外毒素LTは、単核球(monocyte)、中性球(好中球)及び一部のリンパ球の原形質膜に穴を形成して細胞を損傷させることによって免疫を阻害し、CdtはDNA分解酵素で、上皮細胞、歯肉線維芽細胞及びリンパ球を含む様々な細胞の細胞分裂を抑制し、細胞分裂の抑制された一部の細胞では細胞の自然死(apoptosis)を誘導させる。内毒素としては脂質多糖類(lipopolysaccharide,LPS)を分泌し、大食細胞の前炎症性サイトカイン(IL-1,TNF)生成を誘導し、骨吸収と膠様質破壊を誘導する。
【0014】
本発明において「アクチノミセスイスラエリ(Actinomyces israelii)」は、正常人の膣、結腸及び口で共生し、個体免疫力が低下した時に感染病を起こす機会主義病原性細菌で、歯肉炎を誘発する。また、放線菌症は、A.israeliiによって最も多く発生し、抗生剤で治療できる。
【0015】
本発明において「アクチノミセスネスランディ(Actinomyces naeslundii)」は、細菌性膣炎がある女性及びヒトの口で発見されるグラム陽性の棒状バクテリアで、虫歯を含む様々な歯周疾患と関連があり、特に歯肉炎を誘発しやすい。また、A.naeslundiiは、放線菌症の原因となり、浮腫と膿を分泌し得る膿瘍を形成し、組織線維症を伴うことがある。A.naeslundiiは、口、顔及び首にしばしば感染されるが、まれに、胸部、腹部、骨盤及び中枢神経系にも感染を起こすことがある。
【0016】
本発明において「エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)」は、人と他の哺乳動物の胃腸管に生息するグラム陽性、共生細菌で、代表的な歯根端炎症誘発細菌の一つである。歯牙の根管(歯根管)治療をした歯牙において一般に保菌率の30~90%の範囲で発見され、再感染された歯根管治療歯牙は、1次感染の場合に比べて、E.faecalisを保有する可能性が約9倍も高いことが知られている。まれに、心内膜炎、敗血症、尿路感染(UTI)、髓膜炎及びその他ヒトの感染を誘発することがあり、多く使用される抗菌剤であるアミノグリコシド、アズトレオナム、セファロスポリン、クリンダマイシン、半合成ペニシリン類ナフシリンとオキサシリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾールに抵抗性を示す多重薬物耐性(Multi drug resistance,MDR)を有することが知られている。
【0017】
本発明において「フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)」は、ヒトの口腔に共生するグラム陰性細菌であって、歯周炎を誘発する代表的な細菌の一つであり、口腔内の他のバクテリア種と凝集する能力によって歯周プラークを構成する主要要素となる。その他にも多くの研究から胎児の早産、結腸直膓癌との連関性が立証された。
【0018】
本発明において「ポルフィロモナスジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)」は、非運動性、グラム陰性、棒状、嫌気性、病原性バクテリアで、代表的な歯周炎誘発細菌である。P.gingivalisは、歯周炎のある口腔と上部胃腸管、呼吸器官及び結腸から発見され、アルツハイマー病及びリウマチ関節炎とも関連があることが知られている。
【0019】
本発明において「プレボテラインターメディア(Prevotella intermedia,Bacteroides intermedius)」は、歯肉炎及び歯周炎を含む歯周感染に関与するグラム陰性絶対嫌気性病原性細菌であり、しばしば急性壊死性潰瘍性歯肉炎から発見される。P.intermediaはステロイドホルモンを成長因子とすることにより、妊産婦に相対的に多く見られ、細菌性膣炎を持つ女性からも分離される。
【0020】
本発明において「プレボテラニグレセンス(Prevotella nigrescens)」は、グラム陰性菌であって、正常口腔細菌叢の一部であり、機会性歯周炎誘発細菌の一つで、歯周疾患以外にも鼻咽頭及び腹腔内感染、頚動脈粥状動脈硬化症と関連があるものと知られている。
【0021】
本発明において「アクチノミセスビスコーサス(Actinomyces viscosus)」は、成人の70%の口に生息するグラム陽性、通性嫌気性細菌である。A.viscosusは、動物において歯周疾患を起こし、人の歯石及び歯根表面齲蝕症の他に心内膜炎を起こすこともあり、非常にまれには肺感染を起こすことがある。
【0022】
本発明において「ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)」は、虫歯菌とも知られており、ラクトバチルスと共に虫歯の主原因菌である。S.mutansは歯牙齲蝕を誘発し、歯牙を黒い色に変色させて虫歯にする。
【0023】
本発明において「ストレプトコッカスソブリヌス(Streptococcus sobrinus)」は、グラム陽性、非運動性及び嫌気性細菌で、S.mutansと結合して歯牙内虫歯形成を促進する。特に、S.sobrinusは、齲蝕の有病率においてS.mutansに比べてより密接な関連があるものと知られている。
【0024】
本発明において「肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)」は、グラム陽性及び溶血性を示す連鎖状球菌の一種である。健康な人々には症状を起こさないが、免疫力の弱い子供や老人に肺炎と髓膜炎を起こす主原因であり、上気道疾患を誘発する。
【0025】
本発明において「ストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)」は、化膿性連鎖状球菌で、グラム陽性の好気性細菌である。S.pyogenesは、咽喉、生殖器粘膜、直腸及び皮膚に生息して連鎖球菌咽頭炎、リウマチ熱、リウマチ性心臓病、猩紅熱のような様々な疾病を起こすことがあり、上気道疾患を誘発する。
【0026】
本発明において「大腸菌(Escherichia coli)」は、代表的なグラム陰性病原性細菌で、大腸菌が含まれた食べ物を食べたり、それに感染された動物を触る場合に感染され、腹部痙攣痛、ムカツキ、嘔吐などを誘発する。
【0027】
本発明において「黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)」は、代表的なグラム陽性病原性細菌で、化膿性疾患及び食中毒の原因菌である。S.aureusは、鼻、呼吸系統、皮膚に存在し、S.aureusによる食中毒は、菌が食品内に増殖しながら生成された毒素を摂取することによって発生する毒素型食中毒である。
【0028】
本発明において、抗真菌活性は、カンジダアルビカンス(Candida albicans)に対する抗真菌活性であるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明において「カンジダアルビカンス(Candida albicans)」は、機会病原性真菌で、ヒト腸内細菌叢の共通構成員である。健康な成人の40~60%で胃腸管及び口から発見されるが、免疫の弱化した個体で病原性になってカンジダ症を起こす。カンジダ症は、世界的に3位又は4位に頻繁な病原感染であり、特に、皮膚及び生殖器の他に口腔及び食道感染も起こし、全身感染に対してアンフォテリシンB、エキノカンジン又はフルコナゾールなどで治療する。
【0030】
本発明の新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株は、従来のストレプトコッカスサリバリウスK12(Streptococcus salivarius K12)及びストレプトコッカスサリバリウス(Streptococcus salivarius ATCC7073(type strain))と比較して4~8倍も高い坑菌効果を有する。
【0031】
本発明の新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株は、従来のストレプトコッカスサリバリウスK12(Streptococcus salivarius K12)及びストレプトコッカスサリバリウス(Streptococcus salivarius ATCC7073(type strain))と比較して高い口臭抑制効果を有する。本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)培養液は、P.gingivalis培養液の口臭誘発揮発性硫黄化合物である硫化水素(H2S)及び硫化メチル(CH3SH)の濃度を低減させることによって口腔疾患による口臭を顕著に抑制できる。
【0032】
本発明は、前記坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株;その破砕物;その濃縮物;その乾燥物;その培養物;その抽出物;その熱処理培養乾燥物;及びその分画物のうち一つ以上を含む口腔疾患の予防又は改善用組成物を提供する。
【0033】
前記口腔疾患は、歯肉炎(gingivitis)、歯周炎(periodontitis)、歯牙齲蝕症(dental caries)、口臭(halitosis)、しみる歯(sensitive teeth)、口腔カンジダ症(oral candidiasis)、上気道疾患(upper respiratory tract disease)及び歯根端疾患(periapical disease)からなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記口腔疾患は、口腔内又は上気道内病原菌又は真菌の感染によって誘発されることがあり、本発明の組成物は、坑菌、抗炎活性によって前記口腔疾患を予防又は改善することができる。
【0035】
前記口腔疾患の予防又は改善用組成物は、歯磨き粉、うがい製品、ガム、あめ類、カラメル類、ジェリー類、口腔スプレー、口腔用軟膏、口腔洗浄剤、口腔清浄剤及び歯牙美白剤からなる群から選ばれる一つに製品化できるが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明は、前記坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株又はその培養物を含む口腔用プロバイオティクス組成物を提供する。前記口腔用プロバイオティクス組成物は、錠剤、カプセル、丸、顆粒、液状、粉末、片状、ペースト状、シロップ、ゲル、ジェリー、ガム類及びあめ類からなる群から選ばれる一つ以上の剤形であるが、これに限定されるものではない。前記プロバイオティクスに含み得る担体、賦形剤及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、マルトデキストリン、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、一般に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、甘味剤、酸味剤などの希釈剤又は賦形剤を使用することができる。
【0037】
本発明は、前記坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株;その破砕物;その濃縮物;その乾燥物;その培養物;その抽出物;その熱処理培養乾燥物;及びその分画物のうち一つ以上を含む口腔疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0038】
前記口腔疾患は、歯肉炎(gingivitis)、歯周炎(periodontitis)、歯牙齲蝕症(dental caries)、口臭(halitosis)、しみる歯(sensitive teeth)、口腔カンジダ症(oral candidiasis)、上気道疾患(upper respiratory tract disease)及び歯根端疾患(periapical disease)からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0039】
前記新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株;その破砕物;その濃縮物;その乾燥物;その培養物;その抽出物;その熱処理培養乾燥物;及びその分画物は、全体薬学組成物の全重量に対して、好ましくは0.001~50重量%、より好ましくは0.001~40重量%、最も好ましくは0.001~30重量%で添加されてよい。
【0040】
前記薬学的組成物は、それぞれ、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、液剤、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤の形態で剤形化して使用されてよい。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、少なくとも一つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製できる。また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0041】
本発明の薬学的組成物の投与量は、治療対象の年齢、性別、体重と、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって変わってよく、このような因子に基づく投与量の決定は、当業者のレベル内にあり、一般に、投与量は、1×106CFU/日~略1×1011CFU/日の範囲である。好ましい投与量は、1×108CFU/日~1×1011CFU/日であり、より好ましい投与量は、1×108CFU/日~1×1010CFU/日である。投与は、1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量はいかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。本発明の薬学的組成物は、ネズミ、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与されてよい。
【0042】
前記組成物は、前記坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株;その破砕物;その濃縮物;その乾燥物;その培養物;その抽出物;その熱処理培養乾燥物;及びその分画物のうち一つ以上を含む口腔疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0043】
前記健康機能食品は、前記坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株;その破砕物;その濃縮物;その乾燥物;その培養物;その抽出物;その熱処理培養乾燥物;及びその分画物のうち一つ以上が全体食品全重量に対して、好ましくは0.001~50重量%、より好ましくは0.001~30重量%、最も好ましくは0.001~10重量%で添加されてよい。
【0044】
前記健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、粉末、丸剤又は液剤などの形態を含み、本発明の抽出物を添加できる食品には、例えば、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、坑菌、抗真菌、抗炎活性を有する新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株及びこれを含む口腔疾患の予防又は改善用組成物、口腔用プロバイオティクスに関し、具体的には、新規なストレプトコッカスサリバリウス(S.salivarius G7,KCCM13161P)菌株は、歯周疾患を誘発する菌株に強い坑菌活性及び抗炎活性によって歯周疾患を予防、治療及び改善し、口腔疾患によって発生する口臭を抑制して口腔健康改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)16S rRNA配列(配列番号1)を示す図である。
【
図2】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の系統図である。
【
図3】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の歯肉炎誘発細菌A.actinomycetemcomitans、A.israelii、A.naeslundii及び歯根端炎症誘発細菌E.faecalisに対する坑菌力実験結果である。
【
図4】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の歯周炎誘発細菌F.nucleatum,P.gingivalis,P.intermedia及びP.nigrescensに対する坑菌力実験結果である。
【
図5】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の歯牙齲蝕誘発細菌A.viscosus、S.mutans及びS.sobrinus、上気道疾患誘発細菌S.pneumoniae及びS.pyogenesに対する坑菌力実験結果である。
【
図6】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の代表的なグラム陰性病原菌E.coli及びグラム陽性病原菌S.aureusに対する坑菌力実験結果である。
【
図7】Streptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の口腔カンジダ症誘発真菌C.albicansに対する抗真菌力実験結果である。
【
図8】本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の細胞表面物質を含む細胞破砕物の病毒力を確認したものである。A.TNF-α mRNA発現、B.IL-8mRNA発現、C.TNF-α生成、D.IL-8生成
【
図9】P.gingivalis LPSによって誘導された炎症性サイトカインに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが及ぼす効果を示すグラフである。A.TNF-α mRNA発現、B.IL-8mRNA発現、C.TNF-α生成、D.IL-8生成
【
図10】T.forsythia LPSによって誘導された炎症性サイトカインに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが及ぼす効果を示すグラフである。A.TNF-α mRNA発現、B.IL-8mRNA発現、C.TNF-α生成、D.IL-8生成
【
図11】F.alocis LTAによって誘導された炎症性サイトカインに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが及ぼす効果を示すグラフである。A.TNF-α mRNA発現、B.IL-8mRNA発現、C.TNF-α生成、D.IL-8生成
【
図12】本発明のS.salivarius G7(寄託番号CCM13161P)LTAによるLPS及びLTAの細胞付着抑制能を示す流細胞分析結果である。A.P.gingivalis LPS結合、B.T.forsythia LPS結合、C.F.alocis LTA結合。
【
図13】本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAによる歯周炎関連細菌物質CD14及びLBP付着抑制能を示すグラフである。A、B、C.P.gingivalis、T.forsythia、F.alocisのCD14付着抑制;D、E.F.P.gingivalis、T.forsythia、F.alocisのLBP付着抑制。
【
図14】本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)培養液のP.gingivalis由来揮発性硫黄化合物H
2S及びCH
3SHの濃度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図15】本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)菌株のP.gingivalis由来揮発性硫黄化合物H
2S及びCH
3SHの濃度に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図16】本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)処理の有無による齲蝕原性バイオフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3次元イメージである。(緑色は、生きている細菌、赤色は、死んだ細菌)
【
図17】本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)処理濃度による齲蝕原性バイオフィルム内全細菌数、S.mutans及びS.salivarius G7の菌数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、ここで紹介される内容は、本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0048】
<実施例1.ストレプトコッカスサリバリウスストレインの準備>
【0049】
本発明のStreptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、健康な韓国男性の歯肉縁下サンプルから分離して同定及び特性化し、韓国口腔微生物資源銀行(Korean Collection for Oral Microbiology,KCOM)に登録したし(Streptococcus salivarius KCOM 2137)、前記菌株が、坑菌、抗炎活性、歯牙齲蝕抑制活性及び口臭抑制活性において、従来Streptococcus salivariusに比べて特に優れていることを確認し、韓国微生物保存センター(社団法人韓国種菌協会)に特許寄託した(寄託番号:KCCM1316P、寄託日:2023.04.21.)。
【0050】
本発明のStreptococcus salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の16SrRNA配列(配列番号1)を
図1に示し、それに基づいて系統発生学的分析を行い、その結果を
図2に示した。
【0051】
比較菌株としてStreptococcus salivarius K12は販売中の製品で分離同定し、Streptococcus salivarius ATCC7073(type strain)はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection,ATCC)から購入して使用した。
【0052】
<実施例2.坑菌、抗真菌活性評価>
【0053】
2.1 細菌培養
【0054】
前記菌株の坑菌力試験のための口腔細菌は総12種の微生物であり、表1のように、口腔内疾患関連グラム陽性及びグラム陰性細菌、代表的な坑菌試験菌株、そして真菌で構成した。歯牙齲蝕菌関連細菌としては、Streptococcus mutansATCC25175、S.sobrinusATCC27607はトリプチケースソイブイヨン培地(trypticase soy broth(TSB);BD bioscience,San jose,CA,USA)を用い、Actinomyces naeslundii ATCC 12104は、ブレインハートインフュージョン(brain heart infusion(BHI);BD bioscience)液体培地を用いて培養した。歯肉及び歯周疾患関連細菌としては、Actinomyces israelii(ATCC 12102)、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(ATCC 43718)はブレインハートインフュージョン(BD bioscience)を用い、Fusobacterium nucleatum(ATCC 25586)、Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)、Prevotella intermedia(ATCC 25611)、Prevotella nigrescens(ATCC 33563)はヘミン(hemin;1μg/ml)とビタミンK(0.2μg/ml)を添加したBHI液体培地を用いて、37℃嫌気状態(H 25%、CO2 10%、N2 85%)で培養した。歯根端炎関連細菌であるEnterococcus faecalis(ATCC 29212)は、BHI液体培地を用いて37℃嫌気状態(H 25%、CO2 10%、N2 85%)で培養した。真菌であるCandida albicans(ATCC10231)は、TSBを用いて好気状態で培養した。上気道疾患関連細菌であるStreptococcus pyogenes(ATCC12344)及びS.pneumoniae(ATCC49416)は、todd hewitt broth(BD bioscience)を用いて好気状態で培養した。最後に、代表的なグラム陽性及びグラム陰性細菌であるStaphylococcus aureus(ATCC 23235)及びEscherichia coli(ATCC 53868)は、TSBを用いて好気状態で培養した。本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、M17(BD bioscience)液体培地を用いて培養した。
【0055】
【0056】
2.2 坑菌力試験
【0057】
坑菌力試験は、臨床検査標準研究所(Clinical & Laboratory Standard Institute)推奨の方法を用いて行った。液体培地で培養された細菌を4,000×gで5分間遠心分離し、清潔な液体培地を入れ、バクテリア計数チャンバー(Bacterial counting chamber)を用いて細菌量を測定した。測定された細菌浮遊液に清潔な培地を用いて嫌気性細菌は1.5×106cell/ml、好気性及び通性嫌気性細菌は1.0×106cell/mlとなるように調整して実験に使用した。
【0058】
96ウェルプレートにそれぞれの培地を180μlずつ入れ、最初の列に準備された本発明のG7(寄託番号KCCM13161P)及びS.salivarius K12とS.salivarius ATCC7073を20μlずつ入れた後、それぞれ2倍ずつ連続希釈法で希釈し、嫌気培養器で24時間又は36時間培養した。その後、分光光度計を用いて660nmで吸光度を測定して細菌成長を分析し、
図3~
図6に示した。
【0059】
図3に見られるように、本発明に係るS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、歯肉炎誘発細菌A.actinomycetemcomitans、A.israelii、A.naeslundii及び歯根端炎症誘発細菌E.faecalisに対して、周知のS.salivarius菌株であるS.salivarius ATCC7073(type strain)又はS.salivarius K12に比べて優れた坑菌力を示した。A.actinomycetemcomitansは歯肉炎を起こし、青少年に対しては歯周炎を誘発することもある。本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、A.actinomycetemcomitansを16倍希釈した培養された培地で成長が抑制されることが観察されたし、8倍希釈した培養された培地で完壁に成長を抑制させた。A.israeliiも、8倍希釈した培養された培地で成長が抑制されることが観察されたし、4倍希釈した培養された培地で成長を完壁に抑制させ、また、A.naeslundiiに対しては8倍希釈した培養された培地で成長が抑制されることが観察されたし、4倍希釈した培養された培地で成長を完壁に抑制させた。E.faecalisは、16倍希釈した培養された培地で成長が有意に抑制されることが観察されたし、8倍希釈した培養された培地で完壁に成長を抑制させた。このような結果は、従来菌株に比べて8倍以上の坑菌力を有することを示唆する。
【0060】
図4に見られるように、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、歯周炎誘発細菌F.nucleatum、P.gingivalis、P.intermedia及びP.nigrescensに対して、周知のS.salivarius菌株であるS.salivarius ATCC7073(type strain)又はS.salivarius K12に比べて優れた坑菌力を示した。S.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、F.nucleatum、P.gingivalis、P.intermedia及びP.nigrescensに対して16倍希釈した培養された培地で成長が有意に抑制されることが観察されたし、8倍希釈した培養された培地で成長を完壁に抑制させることが見られた。このような結果は、従来菌株に比べて8倍以上の坑菌力を有することを示唆する。
【0061】
図5に見られるように、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、歯牙齲蝕誘発細菌A.viscosus、S.mutans及びS.sobrinusと上気道疾患誘発細菌S.pneumoniae及びS.pyogenesに対して、周知のS.salivarius菌株であるS.salivarius ATCC7073(type strain)又はS.salivarius K12に比べて優れた坑菌力を示した。S.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、A.viscosus、S.mutans及びS.sobrinusとS.pneumoniae及びS.pyogenesに対して16倍希釈した培養された培地で成長が有意に抑制されることが観察されたし、8倍希釈した培養された培地で成長を完壁に抑制させることが見られた。このような結果は、従来菌株に比べて8倍以上の坑菌力を有することを示唆する。
【0062】
図6に見られるように、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、代表的なグラム陰性病原菌E.coli及びグラム陽性病原菌S.aureusに対して、周知のS.salivarius菌株であるS.salivarius ATCC7073(type strain)又はS.salivarius K12に比べて優れた坑菌力を示した。S.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、E.coli及びS.aureusに対して8倍希釈した培養された培地で成長が有意に抑制されることが観察されたし、4倍希釈した培養された培地で成長を完壁に抑制させることが見られた。このような結果は、従来菌株に比べて4倍以上の坑菌力を有することを示唆する。
【0063】
2.3 抗真菌力試験
【0064】
前記坑菌試験と同じ方法で口腔カンジダ症誘発真菌C.albicansに対する抗真菌力実験を行い、その結果を
図7に示した。
【0065】
図7に見られるように、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)はC.albicansに対して、周知のS.salivarius菌株であるS.salivarius ATCC7073(type strain)又はS.salivarius K12に比べて優れた抗真菌力を示した。S.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、C.albicansに対して8倍希釈した培養された培地で成長が有意に抑制されることが観察されたし、4倍希釈した培養された培地で成長を完壁に抑制させることが見られた。このような結果は、従来菌株に比べて4倍以上の坑菌力を有することを示唆する。
【0066】
<実施例3.抗炎症活性評価>
【0067】
歯肉線維芽細胞を用いて本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の炎症抑制効果を確認した。炎症誘発物質としては、下記表2のように、Porpyromonas gingivalis由来LPS(lipopolysaccharide)又はTannerella forsythia由来LPS(lipopolysaccharide)又はFilifactor alocis由来LTA(lipoteichoic acid)を使用した。
【0068】
【0069】
P.gingivalis LPS、T.forsythia LPS及びF.alocis LTAはそれぞれ、口腔内細胞膜のTLR4及びTLR2との結合を始めに信号伝達を開始しながら炎症を誘発する。LPS又はLTAがTLR4及びTLR2に付着するためにはCD14とLBP(Lipopolysaccharide-binding Protein)が必要である。S.salivarius LTAは、歯周炎細菌のLPS及びLTAがCD14とLBPへの付着を競合的に抑制してTLRに付着することを防止することによって、LPS及びLTAの炎症誘導活性を抑制することができる。
【0070】
12ウェルポリスチレンプレートに歯肉線維芽細胞株HGF-1を接種して80%程度満たされるまで培養した後に培地を除去し、2%ヒト血清(Sigma-aldrich Co.,San Jose,CA,USA)とペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone)添加のDMEM培地を1mlを入れた。その後、超音波器を用いて本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)を破壊し、得られた細胞破砕物を処理し、炎症誘発物質であるLPS又はLPAを100μg混合処理した後、12時間培養した。その後、培養液は、ELISAキットを用いてTNF-α及びIL-8を分析した。また、細胞は、TRIzol(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて全RNAを抽出し、抽出されたRNAは、Nanodrop(Invitrogen)を用いて純度及び濃度を測定し、1μgの全RNAをMaxime RT premix(IntronBiotech.,Gyeonggi)を用いてcDNAを合成し、炎症関連サイトカインを実時間遺伝子増幅器(AB7500Real-time PCR instrument system;Applied biosystems)を用いて調査し、
図8~
図11に示した。本実験に使用した炎症性サイトカインのプライマー情報は、下記表3の通りである。
【0071】
【0072】
図8は、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の細胞表面物質を含む細胞破砕物の病毒力を確認したものである。ヒト歯肉線維芽細胞株HGF-1に大腸菌由来リポポリサッカリド(Ec LPS)、S.salivarius type strain(ATCC7073)由来リポタイコ酸(Ss type LTA)、S.salivarius type strain(ATCC7073)由来表面タンパク(Ss type SP)、本発明に係るS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)由来LTA(SS G7LTA)、本発明に係るS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)由来SP(SS G7SP)を処理し、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量を
図8に示した。
図8に見られるように、大腸菌由来LPS(Ec LPS)の処理時にのみTNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が増加したし、S.salivarius種のLTA又はSPは毒力因子として作用しないことを確認した。
【0073】
図9は、P.gingivalis LPSによって誘導された炎症性サイトカインに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが及ぼす効果を示すグラフである。
図9に見られるように、歯肉線維芽細胞株HGF-1にP.gingivalis LPS(Pg LPS)を処理した場合に、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が増加したし、S.salivarius type strain及び本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAを共に処理する場合に、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が抑制された。特に、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTAは、S.salivarius type strainと比較してTNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量を顕著に抑制することを確認した。
【0074】
図10は、T.forsythia LPSによって誘導された炎症性サイトカインに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが及ぼす効果を示すグラフである。
図10に見られるように、歯肉線維芽細胞株HGF-1にT.forsythia LPS(Tf LPS)を処理した場合に、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が増加したし、S.salivarius type strain及び本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAを共に処理する場合に、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が抑制された。特に、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTAは、S.salivarius type strainと比較してTNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量を顕著に抑制することを確認した。
【0075】
図11は、F.alocis LTAによって誘導された炎症性サイトカインに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが及ぼす効果を示すグラフである。
図11に見られるように、歯肉線維芽細胞株HGF-1にF.alocis LTA(FaLTA)を処理した場合に、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が増加したし、S.salivarius type strain及び本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAを共に処理する場合に、TNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量が抑制された。特に、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTAは、S.salivarius type strainと比較してTNF-α及びIL-8のmRNA及びタンパク質生成量を顕著に抑制することを確認した。
【0076】
上記の結果から、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)は、歯周炎誘発細菌によって誘導される炎症を抑制できることを確認した。
【0077】
<実施例4.歯周炎関連細菌の物質細胞付着抑制能評価>
【0078】
4.1流細胞分析
【0079】
上記の結果に基づいて、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAが、歯周炎誘発細菌に由来するLPS又はLTAが細胞に付着することを抑制できるかを評価した。P.gingivalis LPS、T.forsythia LPS及びF.alocis LTAに蛍光物質を付着させた後、S.salivarius type strain(ATCC7073)由来LTA(Ss type LTA)又は本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAをそれぞれ共にヒト歯肉線維芽細胞株HGF-1に処理して培養し、細胞の蛍光程度を流細胞分析(flow cytometry)で確認して
図12に示した。
【0080】
P.gingivalis及びT.forsythia由来LPS(1mg)及びF.alocis由来LTAを4℃で30分間冷たいメタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応させた後、標準RC透析膜チューブ(standard RC dialysis membrane tubing)(Spectrum Laboratories Inc.,Ranch Dominaquez,CA,USA)に反応液を入れ、100mM酢酸ナトリウム(pH 5.5)で12時間透析した。前記LPS及びLTAを含む溶液を200mM KClに溶解させて製造した10mM Alexa FluorTM-488ヒドラジド(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)と混合してカップリング緩衝液(0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.2)で6時間室温で放置し、1Lの内毒素がない水で12時間3回透析後に、蛍光標識されたLPS及びLTAを新しいチューブに移して-20℃に保管した。
【0081】
その後、前記Alexa FluorTM 488で標識されたLPS又はLTAを、様々な濃度のS.salivarius G7表面抽出物の存在又は不在下に37℃で1時間ヒト単核球細胞株であるTHP-1細胞株に処理した。その後、CO2インキュベーターで前記細胞を500xgで3分間遠心分離して得、冷たいDPBS(Dulbecco’s phosphate buffered saline,pH7.2)で3回洗浄した。その後、前記細胞に対するAlexa 488標識されたLPS及びLTAの結合を流動細胞測定法(FACS calibur,BD biosciences,Sparks,MD,USA)で分析した。10,000個の細胞を計数してデータを収集したし、Alexa FluorTM 488標識されたLPSとLTAの結合がFL-1チャネルから検出されたし、CellQuestソフトウェア(BD biosciences)を用いてデータを分析した。
【0082】
図12に見られるように、P.gingivalis LPS、T.forsythia LPS及びF.alocis LTAの処理により、蛍光を帯びる細胞、すなわち、LPS及びLTAが付着された細胞が大きく増加したし、S.salivarius type strain(ATCC7073)由来LTA(Ss type LTA)又は本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)LTAを共に培養した場合に、蛍光を示す細胞数が大きく減少した。特に、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTAは、S.salivarius type strainと比較して、LPS及びLTAが付着された細胞が顕著に減少することを確認した。
【0083】
4.2 CD14及びLBP付着抑制分析
【0084】
前記P.gingivalis LPS、T.forsythia LPS又はF.alocis LTAはそれぞれ、TLR4及びTLR2によって炎症性サイトカインを誘発するためには、まず、LPS及びLTAが口腔内細胞膜のCD14及びLBPと結合しなければならない。S.salivarius LTAは、歯周炎細菌のLPS及びLTAがCD14とLBPへの付着を競合的に抑制するかを確認した。
【0085】
蛍光物質が付着されたP.gingivalis LPS、T.forsythia LPS又はF.alocis LTAを、濃度別S.salivarius type strain(ATCC7073)由来LTA(Ss type LTA)又は本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTAの存在下にCD14又はLBPタンパク質と培養して付着程度を測定し、その結果を
図13に示した。
【0086】
Anti-LBP mAb(MAB870,R&D systems,Minneapolis,MN,USA)及びAnti-CD14Ab(AF982,R&D systems)をDPBSに1μg/mlの濃度で溶解させ、抗体(50ng/well)は、EIAプレート(Corning Co.,Corning,NY,USA)に分注した後に4℃で12時間コートした。前記抗体のコートされたEIAプレートを、0.1% tween20を含むリン酸緩衝溶液(PBST)で5回洗浄し、1%牛血清アルブミン(BSA)が含まれているDPBSTを分注した後、弱い振盪条件で2時間不活性化させた。その後、組換えヒトLBP(rhLBP,R&Dシステム)及びヒトCD14(rhCD14,R&Dシステム)を、2μg/mlの濃度でDPBSに溶解させ、前記抗体がコートされたEIAプレートのウェルに添加した。前記プレートを室温で4時間放置後にPBSTで5回洗浄した後、ビオチン標識された(biotin-labelled)LPS又はLTAを、S.salivarius LTAとそれぞれ又は共同で用意されたウェルに処理し、室温で2時間放置した。rhLBP及びrhCD14に結合したビオチン標識されたLPS及びLTAを測定するために、2% BSAを含有するPBSTで50μlのHRP標識されたストレプトアビジン(1μg/ml)と1時間反応させた。PBSTで5回洗浄した後、3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB)溶液を前記ウェルに入れて室温で30分間放置し、酵素反応を1N硫酸で停止させた。マイクロプレートリーダ機(Biotek,Winooski,VT,USA)で450nm波長で吸光度を測定した。
【0087】
図13に見られるように、S.salivarius type strain(ATCC7073)由来LTA(Ss type LTA)又は本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTA濃度が増加するほど、P.gingivalis LPS、T.forsythia LPS又はF.alocis LTAのCD14又はLBPの結合が減少した。特に、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)のLTAは、S.salivarius type strainと比較してLPS又はLTAのCD14又はLBPの結合を顕著に抑制することを確認した。
【0088】
<実施例5.揮発性硫黄化合物抑制能評価>
【0089】
本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)が口臭抑制効果を有するかを確認するために、揮発性黄化合物を生産するP.gingivalisの培地を用いて実験を行った。1mlのP.gingivalis(1×10
8cell/ml)を10ml新しい培地に接種し、48時間培養後に、細菌培養液300μlを清潔な50ml円周チューブに移した後、前記P.gingivalis培養液が入っている円周チューブに、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)培養液300μl又は600μl又は生菌10
7又は10
8cellを入れ、最終量が5mlとなるように培地を追加した。その後、前記円周チューブをvertical shakerを用いて1分間振盪し、5分間室温に放置した。その後、1ml注射器を用いて溶液表面の真上にある空気1mlを取得し、ガスクロマトグラフィー(OralchromaTM;Nissha FIS,Inc,Osaka,Japan)を用いて硫化水素(H
2S)及び硫化メチル(CH
3SH)の濃度を測定し、その結果を
図14及び
図15に示した。
【0090】
図14に見られるように、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)培養液は、P.gingivalis培養液の口臭誘発揮発性硫黄化合物である硫化水素(H
2S)及び硫化メチル(CH
3SH)の濃度を濃度依存的に減少させた。
【0091】
また、
図15に見られるように、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)菌株自体も、濃度依存的に硫化水素(H
2S)及び硫化メチル(CH
3SH)の濃度を減少させた。
【0092】
上記の結果から、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)がP.gingivalisによって生成される口臭を効果的に抑制できることを確認した。
【0093】
<実施例6.バイオフィルム形成抑制評価>
【0094】
6.1 バイオフィルム形成抑制効果
【0095】
本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)が実質的にバイオフィルム形成を抑制するかを評価した。10名の歯周炎を有しない成人の唾液を集めて混合した後、2本のチューブに分けて入れた。まず、唾液コートされたプレートを製造するために、前記チューブのいずれか一方に同量のリン酸緩衝溶液を入れ、4℃6,000×gで10分間遠心分離し、上澄液を清潔なチューブに移した。唾液細菌は、残り他方のチューブの唾液混合液に同量のBHI培地を入れて2,000×gで10分間遠心分離し、上澄液を清潔なチューブに移して用意した。
【0096】
前記コーティング用唾液を8ウェルガラスプレートに200μl分注し、40℃オーブンで乾燥させる過程を10回反復した。前記で作製した唾液コートされたプレートはUV滅菌器に入れて滅菌させた。その後、2%ショ糖が含まれている10mlの唾液細菌浮遊液に、齲蝕原性バイオフィルムを形成するために100μlのS.mutans(1×10
8cell/ml)を添加した後、8ウェルガラスプレート及び12ウェルポリスチレンプレートにそれぞれ400μl及び1mlを入れ、好気状態で培養した。その後、対照群は毎日、2%ショ糖が含まれているBHI培地のみを用いて培地を交換しながら7日間培養したし、実験群は、2%ショ糖が含まれているBHIに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)を10
7及び10
8の菌株数を含むように2つの濃度で接種し、培地を交換しながら7日間培養した。その後、バイオフィルム量を調べるために、8ウェルプレートは、Bacterial live/dead staining kit(Invitrogen)を用いて染色し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて3D観察して
図16に示した。
【0097】
図16に見られるように、唾液コートされたプレートに唾液菌株とS.mutansが複合的にバイオフィルムを形成したし、ここに本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)を追加する場合に、死滅されたバイオフィルム形成菌株が増加しながらバイオフィルムが緩むことを確認した。
【0098】
6.2 バイオフィルム内の細菌数測定
【0099】
前記形成されたバイオフィルム内の全細菌数(Oral streptococci)、S.mutans及びS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)の細菌数を測定した。上記で12ウェルプレートに1mlのDPBSを入れて培養されたバイオフィルムを物理的に落とした。これを、5,000×gで1分間遠心分離して細菌沈殿物を得た後、前記細菌沈殿物からG-spinゲノムDNA抽出キット(iNtRON Biotechnology,Gyeonggi,Korea)を用いて総DNAを抽出した後、実時間遺伝子増幅器を用いて細菌定量を行った。
【0100】
実時間遺伝子分析は、当該標準定量DNAとサンプルを共に行った。TB green premix(Takara Co.,Tokyo,Japan)、ROX II染料、プライマー及びDNAを混合して94℃で5分間予熱(pre-heating)後に、95℃で10秒(denaturation stage)、60℃で10秒(annealing stage)及び72℃で33秒(extension stage)を40回反復し、非特異的結合を調べるために生成物溶解曲線を用いて調べた。標準容量DNAを用いてCt値と細菌量に対する標準曲線を形成し、これに基づいてサンプルDNAのCt値を用いて細菌数を計算し、その結果を
図17に示した。この時に使用したプライマーを表4に示す。
【0101】
【0102】
図17に見られるように、バイオフィルム内S.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)量は、処理した量が増加するにつれてその菌数は増加したが、歯牙齲蝕原因菌であるS.mutansは、本発明のS.salivarius G7(寄託番号KCCM13161P)処理した量が増加するにつれて有意に減少したことを確認した。
【受託番号】
【0103】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(KCCM)
受託番号:KCCM13161P
受託日:2022年4月21日
【配列表】