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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】水処理システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20241105BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20241105BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20241105BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20241105BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20241105BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D61/10
C02F1/50 510A
C02F1/50 520A
C02F1/50 531P
C02F1/50 540B
C02F1/50 550C
C02F1/50 560B
C02F1/50 560E
C02F1/50 550L
C02F1/50 560C
C02F1/50 550H
C02F1/50 550B
C02F1/28 D
C02F1/28 F
C02F1/76 A
C02F1/50 540C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023170478
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2023-09-29
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517039483
【氏名又は名称】WOTA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷田部 博之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 史郎
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176088(JP,A)
【文献】特開2003-080265(JP,A)
【文献】特開2008-073622(JP,A)
【文献】特開2021-186775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
C02F 1/50
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を貯留する原水貯留槽と、
前記原水貯留槽に貯留される原水を送水する第1送水手段と、
送水された前記原水を透過水と濃縮水とに分離させる逆浸透膜と、
前記透過水をろ過する活性炭フィルターと、
前記活性炭フィルターを通過した水に塩素を添加して貯留する処理水貯水槽と、
前記処理水貯水槽に貯留される水の塩素濃度を測定する塩素計と、
前記処理水貯水槽に貯留される水の塩素濃度が所定の濃度に達しない場合、前記処理水貯水槽に貯留される水を前記原水貯留槽へ送水する第2送水手段と
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記処理水貯水槽に貯留される水は、洗面、調理、風呂、シャワー、又は飲用に使用される請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記濃縮水は、トイレの流し水、散水用水、修景用水、又は非常用水として使用される請求項1記載の水処理システム。
【請求項4】
前記処理水貯水槽から前記原水貯留槽へ送水された水のうち、前記原水貯留槽で貯留できない余剰水は、屋外にて使用される請求項1記載の水処理システム。
【請求項5】
原水貯留槽に貯留される原水を第1送水手段により送水し、
送水された前記原水を、逆浸透膜により、透過水と濃縮水とに分離し、
前記透過水を、活性炭フィルターによりろ過し、
前記活性炭フィルターを通過した水に塩素を添加して処理水貯水槽に貯留し、
前記処理水貯水槽に貯留される水の塩素濃度を測定し、
前記処理水貯水槽に貯留される水の塩素濃度が所定の濃度に達しない場合、前記処理水貯水槽に貯留される水を前記原水貯留槽へ送水する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水処理システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
学校のプール等の原水を、残留塩素を基準範囲内にした飲料水をつくる浄水装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で記載される浄化装置は、往復式手動ポンプにより原水を吸い上げ、吸い上げた原水を浄化して供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-176088公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、逆浸透膜が利用されているが、逆浸透膜を利用した浄化は、時間がかかり、すぐに所定量を使用したい場合には適していない。
【0006】
本開示の目的は、雨水等の原水を逆浸透膜等を用いて浄化しつつ、必要な量の処理水を必要なタイミングで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
原水を貯留する原水貯留槽と、原水貯留槽に貯留される原水を送水する第1送水手段と、送水された原水を透過水と濃縮水とに分離させる逆浸透膜と、透過水をろ過する活性炭フィルターと、活性炭フィルターを通過した水に塩素を添加して貯留する処理水貯水槽とを備える水処理システム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、雨水等の原水を逆浸透膜等を用いて浄化しつつ、必要な量の処理水を必要なタイミングで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】原水貯留槽21に貯留された原水を浄化する際の制御装置36の動作例を示すフローチャートである。
図3】処理水貯水槽31に貯留された処理水を原水貯留槽21へ送出する際の制御装置36の動作例を示すフローチャートである。
図4】活性炭フィルター18を設置している場合と設置していない場合とにおけるTOCとT-Nとの推移を表すグラフである。
図5】本実施形態に係るシステムのその他の構成例を示すブロック図である。
図6】処理水貯水槽31に貯留された処理水を原水貯留槽21へ送出する際の制御装置36の動作のその他の例を示すフローチャートである。
図7】原水貯留槽21に貯留された原水を浄化する際の制御装置36の動作のその他の例を示すフローチャートである。
図8】コンピュータ90の基本的なハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
<概要>
本実施形態に係るシステムは、雨水、表流水、地下水等の原水をろ過した処理水を、飲用水又は生活用水等として使用するシステムである。本実施形態において、飲用水は、例えば、洗面、調理等に用いる水を含んでもよい。本実施形態において、生活用水は、例えば、お風呂、シャワー、洗濯、食器洗い等の、生活において用いられる水を表す。システムは、原水貯留槽にためられた原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水に分離させる。システムは、透過水を、活性炭フィルターを通過させて処理水貯水槽へ供給する。処理水貯水槽には塩素が投入されており、雑菌の繁殖が抑えられている。システムは、処理水貯水槽の塩素濃度を計測し、所定値に達しない場合、処理水貯水槽の水を原水貯留槽へ戻す。
【0012】
<システム構成>
本実施形態に係るシステム1の全体構成について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るシステムの構成例を示すブロック図である。図1において、システム1は、例えば、建築物100の屋内、屋外、又はこれらの両方に設けられる。建築物100の屋外には、例えば、建築物100の地下も含まれる。また、システム1の一部が地中に埋められていてもよい。図1では、原水が、建築物100によって取水される雨水である場合を例に説明するが、原水は雨水に限定されない。
【0014】
建築物100は、例えば、雨どい101、ゴミ除け102を備える。建築物100に降った雨は、雨どい101を伝って集約され、ゴミ除け102によってゴミが除かれて取水される。
【0015】
建築物100の屋内には、例えば、原水貯留槽21が設置されている。なお、原水貯留槽21は、建築物100の屋外に設置されていてもよい。原水貯留槽21は、供給される原水を貯留する槽(タンク)である。原水貯留槽21は、例えば、数人の家族が、数日間生活可能な程度の原水を貯留可能な容量である。原水貯留槽21には、雨どい101、及びゴミ除け102を介して取水された雨水が供給される。また、原水貯留槽21には、ポンプ24により送出された水が供給される。
【0016】
原水貯留槽21には、例えば、オゾン発生器22が設置されている。オゾン発生器22は、例えば、原水貯留槽21内の水の殺菌等を行うためのオゾンガスを発生させる。オゾン発生器22は、発生させたオゾンガスを原水貯留槽21へ供給する。具体的には、オゾン発生器22は、オゾンガスを、原水貯留槽21内の原水中、すなわち、原水貯留槽21の液相に供給する。なお、オゾン発生器22は、オゾンガスを、原水貯留槽21の気相にも供給してもよい。
【0017】
オゾン発生器22によるオゾンガスの発生方式は、例えば、放電法(無声放電方式)、電気分解法(水電解セル方式)、紫外線法(水銀UVランプ方式・無水銀UVランプ(エキシマランプ)方式)等がある。このうち、紫外線法(無水銀UVランプ(エキシマランプ)方式)が好ましい。紫外線法(無水銀UVランプ(エキシマランプ)方式)は、オゾンガス生成時に大気中に存在する窒素から有害な窒素酸化物を生成せず、不純物の少ないオゾンガスを生成することが可能である。そのため、特に、家庭等に設置される小型のシステムに搭載するオゾン発生器で採用する方式として適している。
【0018】
不純物の少ないオゾンガスを生成することで、オゾン発生器22の稼働時間を低減でき、電力消費を抑えると共に、オゾン発生器22の長寿命化を図ることが可能である。不純物の少ないオゾンガスを生成することで、システム設備の小型化、劣化・損傷箇所の削減が可能であるため、保守頻度低減にもつながる。
【0019】
原水貯留槽21には、水位計(図示せず)が設置されている。水位計は、例えば、電位を計測することで、原水貯留槽21内の水位を検知する。例えば、水位計により所定の第1水位が検知される場合、ドレインが開放されて原水貯留槽21内の処理水が排出され、水位が所定の第2水位になると、ドレインが閉止される。
【0020】
原水貯留槽21に接続される配管にはポンプ23が取り付けられている。ポンプ23は、システム1の制御装置36の制御により駆動され、原水貯留槽21で貯留されている原水を、膜処理モジュール10へ送出する。
【0021】
膜処理モジュール10は、自立型の膜処理モジュールであり、屋内、屋外等様々な場所に設置され得る。具体的には、膜処理モジュール10は、例えば、複数のフィルターカートリッジが交換可能に取り付けられている。膜処理モジュール10は、例えば、ユーザが建築物100内に居ながら、使用期限を迎えたフィルターカートリッジを交換可能なように、建築物100の屋内に配置される。また、膜処理モジュール10は、例えば、建築物100内にスペースがない場合には、屋外に配置されてもよい。膜処理モジュール10は、車輪等の移動機構を有し、移動可能な構成をしていてもよい。この場合、膜処理モジュール10は、所定の位置に一旦配置されたとしても任意のタイミングで配置を変更可能である。
【0022】
膜処理モジュール10は、導電率センサ11、圧力センサ12、第1フィルター13、センサ群15、逆浸透膜16、センサ群17、活性炭フィルター18、バルブ19、排水貯水槽110を備える。なお、膜処理モジュール10の構成は、これらに限定されるものではない。例えば、膜処理モジュール10は、これら以外の装置を備えていてもよいし、これらの装置のいずれかを備えていなくてもよい。
【0023】
導電率センサ11は、ポンプ23から排出されて、膜処理モジュール10へ供給される水の電気伝導度を検知する。圧力センサ12は、ポンプ23から排出されて、膜処理モジュール10へ供給される水の圧力を検知する。
【0024】
第1フィルター13は、ポンプ23から送出される水に対し、例えば、固形分、又は/及び水質汚濁成分等を除去する。本実施形態では、第1フィルター13として、糸巻フィルターが採用されているがこれに限らない。例えば、セディメントフィルター、MF(精密ろ過膜)、UF(限外ろ過膜)、NF(ナノろ過膜)、セラミックフィルター、イオン交換フィルター、金属膜、のうち、少なくともいずれかを選択しても良い。
【0025】
センサ群15は、逆浸透膜16の前段に配置されている。センサ群15は、逆浸透膜16に供給される水の成分、又は物性等を検知する。図示の例では、センサ群15は、圧力センサ、流量センサ、及び導電率センサを有している。
【0026】
圧力センサは、逆浸透膜16に供給される水の圧力を検知する。流量センサは、逆浸透膜16に供給される水の流量を検知する。導電率センサは、逆浸透膜16に供給される水の電気伝導度を検知する。
【0027】
センサ群15は、上記のセンサの他に、以下に列挙する少なくともいずれかをセンシングするセンサを有してもよい。
(1)pH、酸化還元電位、アルカリ度、イオン濃度、硬度
(2)濁度、色度、粘度、溶存酸素
(3)臭気、アンモニア態窒素・硝酸態窒素・亜硝酸態窒素・全窒素・残留塩素・全リン・全有機炭素・全無機炭素・全トリハロメタン
(4)微生物センサの検知結果、化学的酸素要求量、生物学的酸素要求量、
(5)シアン、水銀、油分、界面活性剤
(6)光学センサの検知結果、TDS(Total Dissolved Solids)センサの検知結果
(7)質量分析結果、微粒子、ゼータ電位、表面電位
【0028】
逆浸透膜16は、供給された水を、溶存成分が除去された透過水と、溶存成分が濃縮された濃縮水とに分離する。逆浸透膜16は、例えば、スパイラル型の逆浸透膜により実現される。逆浸透膜16は、例えば、クロスフロー型のろ過膜の一例である。クロスフロー型のろ過膜とは、膜面に対し平行な流れを作ることで、膜に供給される被排水中の懸濁物質やコロイドが膜面に堆積するのを抑制しながらろ過を行うろ過膜を指す。言い換えれば、クロスフロー型のろ過膜とは、膜の浸透圧よりも高い圧力で排水を圧送することにより、ろ過を行う膜を指す。このようなクロスフロー型のろ過膜として、逆浸透膜に代えて、ナノろ過膜(NF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、又は精密ろ過膜(MF膜)等を採用してもよい。逆浸透膜16により分離された透過水は、センサ群17へ供給される。逆浸透膜16により分離された濃縮水は、バルブ19を介して排水貯水槽110へ排出される。排水貯水槽110に貯留される濃縮水は、例えば、トイレの流し水、非常用水、洗濯用水等に利用される。排水貯水槽110は、例えば、生活雑排水貯留槽と称してもよい。
【0029】
センサ群17は、逆浸透膜16の後段に配置されている。センサ群17は、逆浸透膜16により分離された透過水の成分、又は物性等を検知する。図示の例では、センサ群17は、導電率センサ、流量センサ、及び圧力センサを有している。
【0030】
導電率センサは、逆浸透膜16により分離された透過水の電気伝導度を検知する。圧力センサは、逆浸透膜16により分離された透過水の圧力を検知する。流量センサは、逆浸透膜16により分離された透過水の流量を検知する。
【0031】
センサ群17は、上記のセンサの他に、センサ群15で示した(1)~(7)の少なくともいずれかをセンシングするセンサを有してもよい。
【0032】
逆浸透膜16が稼働された直後の透過水は、所定の要件を満たすまで、センサ群17による測定の後、排水貯水槽110へ供給される。例えば、所定の弁が取り付けられており、流路を切り替えるようにしている。所定の要件は、例えば、透過水の水質が安定すること(例えば、センサ群17の導電率センサの値が安定すること)、又は、センサ群17の導電率センサの値がセンサ群15の導電率センサの値より小さくなること等である。
【0033】
活性炭フィルター18は、例えば、逆浸透膜16からセンサ群17を介した後段に配置されている。活性炭フィルター18は、例えば、逆浸透膜16から排出される透過水に含まれ得る有機物を除去する。逆浸透膜16のクリープ現象により、逆浸透膜16から供給される透過水には有機物が混じることがある。活性炭フィルター18は、透過水に含まれ得る有機物が処理水貯水槽31へ到達することを防ぐ。活性炭フィルター18を通過した水は、処理水貯水槽31へ排出される。
【0034】
導電率センサ11、圧力センサ12、センサ群15、センサ群17により検知された情報は、膜処理モジュール10に設置される記憶部(図示せず)に記憶される。記憶部に記憶された情報は、所定の要求に応じて出力される。情報の出力は、所定のインタフェースに取り付けられたメディアを介して実行されてもよいし、膜処理モジュール10に設置される通信部(図示せず)により所定のプロトコルに則って実行されてもよい。情報の出力は、ユーザからの指示に応じて実行されてもよいし、所定の周期で自動的に実行されてもよい。
【0035】
処理水貯水槽31は、例えば、建築物100の屋内に設置されている。処理水貯水槽31は、建築物100の屋外に設置されていてもよい。処理水貯水槽31は、供給される処理水を貯留する槽(タンク)である。処理水貯水槽31は、例えば、数人の家族が、数日間生活可能な程度の処理水を貯留可能な容量である。処理水貯水槽31は、原水貯留槽21と同程度の容量であってもよい。処理水貯水槽31には、活性炭フィルター18を通過した処理水が供給される。
【0036】
処理水貯水槽31には、塩素計32が設置されている。塩素計32は、処理水貯水槽31に貯留される処理水における残留塩素濃度を測定する。残留塩素濃度は、塩素系薬剤(以下、塩素水と称する。)が供給された後、時間の経過に伴い、徐々に低下していく。なお、塩素系薬剤は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、又は次亜塩素酸水等の、消毒効果のある薬剤である。
【0037】
処理水貯水槽31には、塩素供給部33から塩素水が供給される。塩素供給部33は、例えば、塩素タンクと塩素ポンプとにより実現される。塩素タンクは、塩素水を貯留するためのタンクである。塩素水は、例えば、塩素タンクに給水された水に、次亜塩素酸タブレットが溶かされることで生成される。また、塩素水は、塩素タンクに給水された水に食塩が溶かされ、食塩水が電気分解されることで生成されてもよい。食塩水に対して電気分解を行って、塩素水を生成する電気分解ユニットを、塩素タンクの下流側に別途設けてもよい。
【0038】
塩素ポンプは、制御装置36の制御により駆動され、塩素タンクで貯留される塩素水を処理水貯水槽31へ添加する。具体的には、例えば、制御装置36は、浄化後初期の処理水貯水槽31内の残留塩素濃度が所定値を超えるように塩素ポンプを駆動させる。このことは、制御装置36は、浄化後初期の処理水貯水槽31に予め設定された量の塩素水を添加すると換言可能である。所定値は、例えば、水道水質基準値である0.1ppmに基づいて1ppmと設定する。なお、所定値は、1ppmに限定されず、他の値であってもよい。例えば、所定値は、2ppmとしてもよい。また、制御装置36は、ポンプ24を駆動させ、処理水貯水槽31に貯留されていた処理水を、原水貯留槽21を介して循環させて処理水貯水槽31に貯留させた際、循環後の処理水貯水槽31内の残留塩素濃度が所定値を超えるように塩素ポンプを駆動させる。このことは、制御装置36は、循環後の処理水貯水槽31に予め設定された量の塩素水を添加すると換言可能である。
【0039】
なお、塩素水は、処理水貯水槽31に直接添加されるのではなく、活性炭フィルター18を通過した処理水に添加されてもよい。このとき、塩素水が添加された処理水が、処理水貯水槽31へ供給される。
【0040】
処理水貯水槽31には、水位計(図示せず)が設置されている。水位計は、例えば、電位を計測することで、処理水貯水槽31内の水位を検知する。例えば、水位計により所定の第1水位が検知される場合、ドレインが開放されて処理水貯水槽31内の処理水が排出され、水位が所定の第2水位になると、ドレインが閉止される。
【0041】
処理水貯水槽31には、建築物100で暮らす需要家へ処理水を供給するための配管が接続されている。この配管には、ポンプ34が取り付けられている。ポンプ34は、制御装置36の制御により駆動され、処理水貯水槽31で貯留されている処理水を、建築物100で暮らす需要家へ供給する。具体的には、例えば、制御装置36は、建築物100において需要家による処理水の要求信号を検知すると、ポンプ34を駆動させる。需要家による処理水の要求信号は例えば、以下である。
・処理水の吐水口に対する処理水の供給要求(例えば、蛇口をひねる、吐水口に設けられた赤外線センサに近づく等)
・洗濯機、お風呂、トイレ、食洗器等のデバイスに対する動作要求(例えば、ボタンの押下等)
・洗濯機、お風呂等のデバイスに対して設定された動作予約に基づく処理水の供給要求
【0042】
UV殺菌部35は、処理水貯水槽31と、ポンプ34との間に配置されている。UV殺菌部35は、処理水貯水槽31から吸引される処理水に対して紫外線を照射することで、当該水に対する殺菌処理を行う。UV殺菌部35を通過した処理水は、需要家へ供給される。
【0043】
センサ37は、ポンプ34の後段に設置されている。センサ37は、需要家に水が供給されたか否かを検出する。具体的には、センサ37は、例えば、配管内の静電容量を検知する静電容量センサにより実現される。ポンプ34が駆動され、需要家に処理水が供給される場合、センサ37は、静電容量の変化に基づき、需要家へ水が供給されたことを検出する。なお、センサ37は、ポンプ34と需要家との間でなく、需要家側の排水口に設置されていてもよい。ポンプ34と需要家との間には、所定の成分を除去するためのフィルターが設置されていてもよい。
【0044】
処理水貯水槽31と原水貯留槽21とには、処理水貯水槽31に貯留される処理水を原水貯留槽21へ供給するための配管が接続されている。この配管には、ポンプ24が取り付けられている。ポンプ24は、制御装置36の制御により駆動され、処理水貯水槽31に貯留されている処理水を、原水貯留槽21へ供給する。制御装置36は、例えば、塩素計32で計測される残留塩素濃度が所定の閾値未満である場合、ポンプ24を駆動させる。また、制御装置36は、処理水貯水槽31の水量が所定量以下になった場合、ポンプ24を駆動させる。所定量とは、例えば、処理水貯水槽31に処理水がほぼなくなったことを表してもよい。具体的には、例えば、制御装置36は、処理水貯水槽31の水位が所定の水位に達した場合、ポンプ24を駆動させる。
【0045】
制御装置36は、例えば、原水貯留槽21が満水になるまでポンプ24を駆動させる。また、制御装置36は、処理水貯水槽31が所定の水位になるまでポンプ24を駆動させてもよい。ここでの所定の水位には、水位が略零になることが含まれてもよい。また、制御装置36は、処理水貯水槽31に貯留される処理水を所定容量だけ原水貯留槽21へ送出させるようにポンプ24を駆動させてもよい。
【0046】
処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給することで原水貯留槽21が満水になった場合、処理水貯水槽31から送水された水の余剰水は、例えば、屋外で使用される。具体的には、余剰水は、例えば、日用器具等の洗浄及び掃除用水、庭木等の水やり、打ち水、ビオトープ等の散水用水、修景用水として利用される。処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給することで原水貯留槽21が満水になった場合、制御装置36は、例えば、ポンプ23を駆動させ、原水貯留槽21の原水の浄化を実施する。また、処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給することで原水貯留槽21が満水になった場合、制御装置36は、ポンプ24を停止させ、原水貯留槽21のドレインを開放することで原水貯留槽21に貯留される原水を放出させてもよい。制御装置36は、原水貯留槽21の原水を放出させた後、ポンプ24の駆動を再開し、処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給する。また、処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給することで原水貯留槽21が満水になった場合、制御装置36は、ポンプ24を停止させ、処理水貯水槽31のドレインを開放させてもよい。
【0047】
制御装置36は、プロセッサがストレージに記憶されるプログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開したプログラムに含まれる命令を実行することにより実現される。プロセッサは、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。ストレージは、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。メモリは、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0048】
制御装置36は、例えば、ポンプ23、24、34の動作を制御する。また、制御装置36は、例えば、塩素供給部33の塩素ポンプの動作を制御する。
【0049】
<動作>
システム1における制御処理について説明する。
【0050】
(原水の浄化処理)
図2は、原水貯留槽21に貯留された原水を浄化する際の制御装置36の動作例を示すフローチャートである。制御装置36は、例えば、システム1を起動させた後、原水を最初に浄化する場合、又は、処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ移動させた後に原水を浄化する場合に図2に示す処理を実行する。原水貯留槽21には、例えば、雨水が貯留される。制御装置36は、例えば、所定のタイミングでオゾン発生器22を駆動させ、原水貯留槽21内の原水をオゾン殺菌する。
【0051】
具体的には、まず、ステップS11において、制御装置36は、ポンプ23を駆動させる。具体的には、例えば、制御装置36は、ユーザからの指示に応じ、ポンプ23を駆動させる。ユーザは、例えば、原水貯留槽21に十分な量の原水が溜まったことを確認し、原水の浄化の開始を指示する。ユーザの指示は、原水が所定水位だけ溜まることを条件に実行される浄化の開始予約であってもよい。また、ユーザは、例えば、処理水貯水槽31の処理水が所定の水位になったことを確認し、原水の浄化の開始を指示してもよい。ユーザの指示は、処理水貯水槽31の処理水が所定水位に達したことを条件に実行される浄化の開始予約であってもよい。
【0052】
ポンプ23が駆動されると、原水貯留槽21から原水が膜処理モジュール10へ供給される。膜処理モジュール10は、第1フィルター13により、原水に含まれる、例えば、固形分、又は/及び水質汚濁成分等を除去する。膜処理モジュール10は、逆浸透膜16により、第1フィルター13により処理された水を、透過水と、濃縮水とに分離する。膜処理モジュール10は、活性炭フィルター18により、逆浸透膜16により分離された透過水に含まれる有機物を除去する。膜処理モジュール10は、浄化した水を処理水貯水槽31へ供給する。
【0053】
ステップS12において、制御装置36は、処理水貯水槽31の水位が所定値に達したか否かを判断する。具体的には、例えば、処理水貯水槽31には、所定の水位を検出可能な位置に水位計が取り付けられている。水位計は、処理水貯水槽31内の水位が当該所定の水位に達すると、制御装置36へ検出信号を送信する。制御装置36は、検出信号を受信すると、処理水貯水槽31内の水位が所定値に達したと判断する。処理水貯水槽31内の水位が所定値に達したと判断した場合、制御装置36は、処理をステップS13に移行させる。処理水貯水槽31内の水位が所定値に達したと判断しない場合、制御装置36は、処理をステップS11に移行させ、ポンプ23の駆動を維持する。
【0054】
ステップS13において、制御装置36は、ポンプ23を停止させる。これにより、制御装置36は、処理水貯水槽31に所定量の処理水が貯留されるまで、原水の浄化を連続的に実施し、処理水貯水槽31に処理水を貯留させる。所定のタイミングで、処理水貯水槽31が略満水になるまで、原水貯留槽21の原水を一気に浄化するため、ポンプの稼働が抑えられ、使用電力量を抑えることが可能となる。
【0055】
ステップS14において、制御装置36は、塩素供給部33を駆動させる。具体的には、制御装置36は、塩素供給部33の塩素ポンプを駆動させる。制御装置36により駆動されると、塩素ポンプは、塩素タンクで貯留される塩素水を処理水貯水槽31へ添加する。
【0056】
ステップS15において、制御装置36は、処理水貯水槽31の残留塩素濃度が所定値に達したか否かを判断する。具体的には、例えば、塩素計32は、処理水貯水槽31に貯留される処理水の残留塩素濃度を測定し、測定結果を制御装置36へ送信する。制御装置36は、塩素計32から送信される測定結果を参照し、処理水貯水槽31の残留塩素濃度が所定値、例えば、水道水質基準値である0.1ppmに基づく1ppmに達したか否かを判断する。処理水貯水槽31の残留塩素濃度が所定値に達した場合、制御装置36は、処理をステップS16へ移行させる。処理水貯水槽31の残留塩素濃度が所定値に達していない場合、制御装置36は、処理をステップS14へ移行させ、塩素ポンプの駆動を維持する。
【0057】
ステップS15において、制御装置36は、処理水貯水槽31へ予め設定した量の塩素水を添加したか否かを判断するようにしてもよい。処理水貯水槽31へ予め設定した量の塩素水を添加した場合、制御装置36は、処理をステップS16へ移行させる。処理水貯水槽31へ予め設定した量の塩素水を添加していない場合、制御装置36は、処理をステップS14へ移行させ、塩素ポンプの駆動を維持する。
【0058】
ステップS16において、制御装置36は、塩素ポンプを停止させる。これにより、制御装置36は、処理水貯水槽31に貯留された処理水の残留塩素濃度が所定値に達するようになる。
【0059】
なお、図2の説明では、制御装置36は、ステップS13でポンプ23を停止させた後、ステップS14で塩素ポンプを駆動させるようにしている。しかしながら、制御装置36は、ステップS13でポンプ23を停止させた後、ステップS14以外の動作を実行してもよい。例えば、制御装置36は、ステップS13でポンプ23を停止させた後、塩素計32により、処理水貯水槽31で貯留される循環後の処理水の残留塩素濃度を測定してもよい。制御装置36は、例えば、このとき測定した残留塩素濃度が、例えば、水道水質基準値である0.1ppm未満である場合、異常が発生したと判断し、システム1の全ての動作を停止させる。制御装置36は、異常が発生したと判断したときに膜処理モジュール10により計測されたセンシングデータを、異常発生時のデータとして記憶する。
【0060】
(循環処理)
図3は、処理水貯水槽31に貯留された処理水を原水貯留槽21へ送出する際の制御装置36の動作例を示すフローチャートである。制御装置36は、例えば、システム1において、処理水貯水槽31に十分な処理水が貯留され、通常の動作状態である場合に図3に示す処理を実行する。
【0061】
ステップS31において、制御装置36は、ポンプ24を停止させている。
【0062】
ステップS32において、制御装置36は、処理水貯水槽31の処理水の残留塩素濃度が所定値未満であるか否かを判断する。処理水貯水槽31の処理水の残留塩素濃度は、時間の経過、及びその他の環境的な要因により減少する。本実施形態では、通常の環境下においては、所定の期間が経過しても、残留塩素濃度は所定値未満にはならないように設定されている。塩素計32により、残留塩素濃度が所定値未満であることが検知されると、制御装置36は、処理をステップS33へ移行させる。残留塩素濃度が所定値以上である場合、制御装置36は、処理をステップS34へ移行させる。塩素計32は、例えば、1日1回等の所定の周期で、残留塩素濃度を測定する。
【0063】
ステップS33において、制御装置36は、ポンプ24を駆動させる。ポンプ24は、処理水貯水槽31から処理水を吸引し、吸引した処理水を原水貯留槽21へ送出する。ポンプ24を駆動させると制御装置36は、処理をステップS36へ移行させる。
【0064】
ステップS34において、制御装置36は、処理水貯水槽31内の処理水の水位が所定値に達したか否かを判断する。制御装置36は、処理水貯水槽31内の処理水の量が所定量に達したか否かを判断すると換言してもよい。具体的には、例えば、処理水貯水槽31には、所定の水位(ほぼ水がなくなったことを表す水位)を検出可能な位置に水位計が取り付けられている。水位計は、処理水貯水槽31内の水位が当該所定の水位に達すると、制御装置36へ検出信号を送信する。制御装置36は、検出信号を受信すると、処理水貯水槽31内の水位が所定値に達したと判断する。処理水貯水槽31内の水位が所定値に達したと判断した場合、制御装置36は、処理をステップS35に移行させる。処理水貯水槽31内の水位が所定値に達したと判断しない場合、制御装置36は、処理をステップS31に移行させ、ポンプ24の停止を維持させる。
【0065】
ステップS35において、制御装置36は、ポンプ24を駆動させる。駆動されるとポンプ24は、処理水貯水槽31の処理水を吸引し、吸引した処理水を原水貯留槽21へ送出する。ポンプ24を駆動させると制御装置36は、処理をステップS36へ移行させる。
【0066】
ステップS36において、制御装置36は、処理水貯水槽31の処理水の水位が所定値に達したか否かを判断する。具体的には、ポンプ24が駆動されると、処理水貯水槽31の処理水が吸引されるため、処理水貯水槽31の処理水の水位は減少していく。処理水貯水槽31の水位計は、処理水貯水槽31の処理水が所定の水位に達したことを検知する。所定の水位は、水位零であってもよいし、その他の水位であってもよい。所定の水位に達したことを検知すると、水位計は、検知信号を送信する。水位計からの検知信号を受信すると制御装置36は、処理水貯水槽31の処理水の水位が所定値に達したと判断し、処理をステップS31へ移行させ、ポンプ24を停止させる。水位計からの検知信号がない場合、制御装置36は、処理水貯水槽31の処理水の水位が所定値に達していないと判断し、処理をステップS35へ移行させ、ポンプ24の駆動を維持させる。
【0067】
これにより、処理水貯水槽31の処理水の水位が所定値に達するまで、処理水貯水槽31から原水貯留槽21へ処理水が供給されることになる。なお、処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給することで原水貯留槽21が満水になった場合、制御装置36は、ポンプ24を停止させてもよい。この場合、原水貯留槽21のドレインを開放することで原水貯留槽21に貯留される原水を放出させた後、ポンプ24の駆動を再開し、処理水貯水槽31の処理水を原水貯留槽21へ供給してもよい。
【0068】
以上のように、上記実施形態では、原水貯留槽21は、原水を貯留する。ポンプ23は、原水貯留槽21に貯留される原水を吸引し、送水する。逆浸透膜16は、送水された原水を透過水と濃縮水とに分離させる。活性炭フィルター18は、透過水をろ過する。処理水貯水槽31は、活性炭フィルター18を通過した水に塩素を添加して貯留する。これにより、逆浸透膜16、活性炭フィルター18により浄化された処理水が、需要に先行して処理水貯水槽31に貯留されることになる。
【0069】
したがって、上記実施形態によれば、雨水等の原水を逆浸透膜等を用いて浄化しつつ、必要な量の処理水を必要なタイミングで提供できる。
【0070】
また、活性炭フィルター18を逆浸透膜16の後段に設置することで、逆浸透膜16のクリープ現象により発生する有機物が処理水貯水槽31へ到達することを防ぐことが可能となる。そのため、処理水貯水槽31への消毒剤(塩素水)の添加量を抑えることが可能となる。このため、消毒剤の過剰添加による弊害、例えば、水循環系内の塩濃度上昇(次亜塩素酸ナトリウム由来のNa塩の増加)、副生物(クロロ酢酸、トリハロメタン、塩素酸等)の発生等を抑えることが可能になる。
【0071】
図4は、活性炭フィルター18を設置している場合と設置していない場合とにおけるTOC(全有機炭素)とT-N(全窒素)との推移を表すグラフである。図4に示すグラフは、処理水貯水槽31で貯留される処理水のTOCとT-Nとを、TOC/TN計により計測した結果を示す。図4において、横軸は逆浸透膜16の稼働回数を表し、縦軸はTOC及びT-Nを表す。図4において、実線は活性炭フィルター18が取り付けられている際のTOCを表し、破線は活性炭フィルター18が取り付けられている際のT-Nを表し、一点鎖線は活性炭フィルター18が取り付けられていない際のTOCを表し、二点鎖線は活性炭フィルター18が取り付けられていない際のT-Nを表す。
【0072】
図4で示されるように、活性炭フィルター18の有無により、処理水貯水槽31で貯留される処理水におけるTOC、T-Nの値が異なる。逆浸透膜16の後段に活性炭フィルター18を設置することで、TOC及びT-Nが除去され、処理水貯水槽31で貯留される処理水は、活性炭フィルター18が設置されていない場合よりも良好な水質の水になる。
【0073】
また、上記実施形態では、ポンプ24は、処理水貯水槽31に貯留される水の塩素濃度が所定の濃度に達しない場合、処理水貯水槽31に貯留される水を原水貯留槽21へ送水する。つまり、処理水貯水槽31において塩素濃度が閾値未満となると、塩素水等の消毒剤を追加添加するのではなく、原水貯留槽21へ送水し、膜処理モジュール10による浄化を再度実施する。塩素不足による水の汚れは、循環処理することで、ほぼ浄化することが可能である。また、処理水を処理水貯水槽31に貯留した後に必要十分量の塩素を添加することで、循環系全体における塩素の添加(使用)量を結果的に抑制可能となる。これにより、添加塩素量を抑制しつつ、良好な水質を維持することが可能となる。また、消毒効果のある塩素系薬剤の添加過多による、雨水処理システム系内における塩素系薬剤由来のNaイオン濃度の増加を抑制することが可能になる。
【0074】
<変形例>
上記実施形態では、原水貯留槽21から送出された原水を処理水貯水槽31へ処理水として供給する際、逆浸透膜16が原水から透過水と濃縮水との分離を1回実施する場合を例に説明した。原水貯留槽21から送出された原水を浄化して処理水貯水槽31へ給水する際の逆浸透膜16の処理は1回に限定されない。例えば、処理水を何に利用するかにより、求められる水質は異なる。図5に示されるように、求められる水質に応じ、逆浸透膜16で分離された透過水を、再度逆浸透膜16を通過させるようにしてもよい。より具体的には、例えば、処理水を生活用水として使用する場合、逆浸透膜16による分離を1回実施する。一方、処理水を飲用水として用いる場合、水質をより高める必要がある。そのため、処理水を飲用水として用いる場合、逆浸透膜16で分離された透過水を、設定した回数だけ逆浸透膜16に戻し、分離処理を繰り返すことで、透過水の水質を高める。なお、逆浸透膜16における処理の回数は3回以上であってもよく、2回に限定される必要はない。また、予め設定された回数に限らず、所定のセンシングデータに基づいて、逆浸透膜16による処理を繰り返してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、処理水貯水槽31が一つだけ設置される場合を例に説明した。しかしながら、システム1に設置される処理水貯水槽31は、一つに限定されない。飲用水、生活用水等の用途に応じ、別々の処理水貯水槽31が設置されていてもよい。具体的には、飲用水を貯留するための処理水貯水槽があり、生活用水を貯留するための処理水貯水槽があってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、塩素計32により検知される残留塩素濃度に基づいて循環処理が実施される場合を例に説明した。しかしながら、循環処理は、残留塩素濃度に基づくものに限定されない。例えば、浄化後初期の処理水貯水槽31内の残留塩素濃度が所定値を超えるように塩素水を添加した場合、一般的な環境下であれば、所定の期間は、残留塩素濃度が所定の閾値未満とならないように設定されている。本実施形態では、所定の閾値は、例えば、水道水質基準値である0.1ppmを指す。また、所定値は、例えば、0.1ppmに基づいて設定される1ppmである。このとき、所定の期間は、例えば、1週間(7日)と設定し得る。制御装置36は、例えば、所定の期間が経過すると、ポンプ24を駆動させる。
【0077】
図6は、処理水貯水槽31に貯留された処理水を原水貯留槽21へ送出する際の制御装置36の動作のその他の例を示すフローチャートである。図6において、図3と同じ処理については同じ符号を付している。
【0078】
ステップS41において、制御装置36は、所定の期間が経過したか否かを判断する。塩素水を添加することで達成させる残留塩素濃度の目標値と、所定の期間とは、残留塩素濃度についての閾値に基づいて設定されている。つまり、通常の環境下においては、塩素水を添加することで残留塩素濃度が目標値に達すれば、所定の期間が経過したとしても、残留塩素濃度は閾値未満にならないように設定されている。そのため、所定の期間毎に、処理水貯水槽31に貯留される処理水を膜処理モジュール10で浄化させれば、処理水は清潔に維持されることになる。
【0079】
制御装置36は、前のタイミングで処理水貯水槽31から原水貯留槽21へ処理水を送出してから、所定の期間が経過したか否かを判断する。本実施形態において、所定の期間は、例えば、7日である。所定の期間が経過している場合、制御装置36は、処理をステップS33へ移行させる。所定の期間が経過していない場合、制御装置36は、処理をステップS31へ移行させ、ポンプ24の停止を維持させる。
【0080】
また、上記実施形態では、原水貯留槽21が満水になるか、処理水貯水槽31の貯留量が少なくなると、原水貯留槽21に貯留される原水の浄化を実施する場合を例に説明した。しかしながら、原水を浄化するタイミングはこれらに限定されない。制御装置36は、処理水貯水槽31の処理水が使用されるとポンプ23を駆動させ、原水の浄化を実施してもよい。具体的には、例えば、制御装置36は、処理水貯水槽31に貯留されている処理水が建築物100で暮らす需要家に供給されたことを検知すると、ポンプ23を駆動させる。
【0081】
図7は、原水貯留槽21に貯留された原水を浄化する際の制御装置36の動作のその他の例を示すフローチャートである。図7では、処理水貯水槽31に貯留される処理水の使用に応じ、原水貯留槽21に貯留される原水が膜処理モジュール10により浄化される場合の動作を示している。制御装置36は、例えば、システム1において、処理水貯水槽31に十分な処理水が貯留され、通常の動作状態である場合に図7に示す処理を実行する。
【0082】
ステップS21において、制御装置36は、ポンプ23を停止させている。
【0083】
ステップS22において、制御装置36は、センサ37により水が検知されたか否かを判断する。具体的には、例えば、建築物100に設置される吐水口には、赤外線センサーが設置されている。需要家が水を使用する際、吐水口に接近し、赤外線センサーに自身を検知させる。赤外線センサーは、需要家を検知すると検知信号を制御装置36へ送信する。検知信号を受信すると制御装置36は、需要家から要求信号があったと判断する。検知信号を受信すると制御装置36は、ポンプ34を駆動させる。ポンプ34は、制御装置36により駆動されると、UV殺菌部35を介し、処理水貯水槽31から処理水を吸引する。ポンプ34は、吸引した処理水を、センサ37を介して需要家へ供給する。
【0084】
センサ37は、静電容量の変化に基づき、水が流れたことを検知する。センサ37は、水を検知すると、検知信号を制御装置36へ送信する。センサ37からの検知信号を受信すると制御装置36は、センサ37により水が検知されたと判断し、処理をステップS23へ移行させる。センサ37からの検知信号を受信しない場合、制御装置36は、センサ37により水が検知されていないと判断し、処理をステップS21へ移行させ、ポンプ23の停止を維持する。
【0085】
ステップS23において、制御装置36は、ポンプ23を駆動させる。
【0086】
ステップS24において、制御装置36は、センサ37により水が検知されたか否かを判断する。具体的には、例えば、需要家は、水の使用が完了すると、吐水口から手を離す。吐水口から手が離されると、赤外線センサーは、需要家を検知しなくなる。需要家を検知しなくなると、赤外線センサーは、検知信号を停止する。検知信号が停止されると制御装置36は、ポンプ34を停止させる。
【0087】
センサ37は、静電容量の変化に基づき、水の供給が停止されたことを検知する。センサ37は、水の供給が停止されたことを検知すると、検知信号を停止する。センサ37からの検知信号が停止されると制御装置36は、センサ37により水が検知されていないと判断し、処理をステップS21へ移行させ、ポンプ23を停止させる。センサ37からの検知信号を受信している場合、制御装置36は、センサ37により水が検知されていると判断し、処理をステップS23へ移行させ、ポンプ23の駆動を維持する。
【0088】
これにより、需要家へ水が供給されている間、原水貯留槽21から原水が膜処理モジュール10へ供給されることになる。また、例えば、ポンプ23により送出される原水の流量と、ポンプ34により送出される処理水の流量とが略同一になるようにポンプ23とポンプ34とを制御することで、需要家へ供給される水量分だけ原水貯留槽21から原水が送出されることになり、ポンプ34に貯留される処理水の量は維持されるようになる。このため、適量の処理水が処理水貯水槽31に常に貯留されるようになる。
【0089】
なお、水の使用に応じて浄化を実施する場合であっても、塩素の添加を都度することはしない。浄化処理の度に処理水貯水槽31に塩素を追加すると、循環系内の塩素量が徐々に上昇し、塩素による配管・設備の腐食や、塩素の副生物等が生じやすくなるためである。
【0090】
<コンピュータの基本ハードウェア構成>
図8は、コンピュータ90の基本的なハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータ90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、通信IF99(インタフェース、Interface)を少なくとも備える。これらはバスにより相互に電気的に接続される。
【0091】
プロセッサ91とは、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアである。プロセッサ91は、演算装置、レジスタ、周辺回路等から構成される。
【0092】
主記憶装置92とは、プログラム、及びプログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものである。例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0093】
補助記憶装置93とは、データ及びプログラムを保存するための記憶装置である。例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0094】
通信IF99とは、有線又は無線の通信規格を用いて、他のコンピュータとネットワークを介して通信するための信号を入出力するためのインタフェースである。
ネットワークは、インターネット、LAN、無線基地局等によって構築される各種移動通信システム等で構成される。例えば、ネットワークには、3G、4G、5G移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)、所定のアクセスポイントによってインターネットに接続可能な無線ネットワーク(例えばWi-Fi(登録商標))等が含まれる。無線で接続する場合、通信プロトコルとして例えば、Z-Wave(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等が含まれる。有線で接続する場合は、ネットワークには、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等により直接接続するものも含む。
【0095】
なお、各ハードウェア構成の全部または一部を複数のコンピュータ90に分散して設け、ネットワークを介して相互に接続することによりコンピュータ90を仮想的に実現することができる。このように、コンピュータ90は、単一の筐体、ケースに収納されたコンピュータ90だけでなく、仮想化されたコンピュータシステムも含む概念である。
【0096】
<コンピュータ90の基本機能構成>
図8に示すコンピュータ90の基本ハードウェア構成により実現されるコンピュータの機能構成を説明する。コンピュータは、制御部、記憶部、通信部の機能ユニットを少なくとも備える。
【0097】
なお、コンピュータ90が備える機能ユニットは、それぞれの機能ユニットの全部または一部を、ネットワークで相互に接続された複数のコンピュータ90に分散して設けても実現することができる。コンピュータ90は、単一のコンピュータ90だけでなく、仮想化されたコンピュータシステムも含む概念である。
【0098】
制御部は、プロセッサ91が補助記憶装置93に記憶された各種プログラムを読み出して主記憶装置92に展開し、当該プログラムに従って処理を実行することにより実現される。制御部は、プログラムの種類に応じて様々な情報処理を行う機能ユニットを実現することができる。これにより、コンピュータは情報処理を行う情報処理装置として実現される。
【0099】
記憶部は、主記憶装置92、補助記憶装置93により実現される。記憶部は、データ、各種プログラム、各種データベースを記憶する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置92または補助記憶装置93に確保することができる。また、制御部は、各種プログラムに従ってプロセッサ91に、記憶部に記憶されたデータの追加、更新、削除処理を実行させることができる。
【0100】
データベースは、リレーショナルデータベースを指し、行と列によって構造的に規定された表形式のテーブルと呼ばれるデータ集合を、互いに関連づけて管理するためのものである。データベースでは、表をテーブル、表の列をカラム、表の行をレコードと呼ぶ。リレーショナルデータベースでは、テーブル同士の関係を設定し、関連づけることができる。
通常、各テーブルにはレコードを一意に特定するためのキーとなるカラムが設定されるが、カラムへのキーの設定は必須ではない。制御部は、各種プログラムに従ってプロセッサ91に、記憶部に記憶された特定のテーブルにレコードを追加、削除、更新を実行させることができる。
【0101】
通信部は、通信IF99により実現される。通信部は、ネットワークを介して他のコンピュータ90と通信を行う機能を実現する。通信部は、他のコンピュータ90から送信された情報を受信し、制御部へ入力することができる。制御部は、各種プログラムに従ってプロセッサ91に、受信した情報に対する情報処理を実行させることができる。また、通信部は、制御部から出力された情報を他のコンピュータ90へ送信することができる。
【0102】
以上、本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0103】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0104】
(付記1)
原水を貯留する原水貯留槽と、原水貯留槽に貯留される原水を送水する第1送水手段と、送水された原水を透過水と濃縮水とに分離させる逆浸透膜と、透過水をろ過する活性炭フィルターと、活性炭フィルターを通過した水に塩素を添加して貯留する処理水貯水槽とを備える水処理システム。
(付記2)
処理水貯水槽に貯留される水の塩素濃度が所定の濃度に達しない場合、処理水貯水槽に貯留される水を原水貯留槽へ送水する第2送水手段を備える(付記1)に記載の水処理システム。
(付記3)
処理水貯水槽に貯留される水は、洗面、調理、風呂、シャワー、又は飲用に使用される(付記1)に記載の水処理システム。
(付記4)
濃縮水は、トイレの流し水、散水用水、修景用水、又は非常用水として使用される(付記1)に記載の水処理システム。
(付記5)
処理水貯水槽から原水貯留槽へ送水された水のうち、原水貯留槽で貯留できない余剰水は、屋外にて使用される(付記2)に記載の水処理システム。
(付記6)
逆浸透膜は、水の用途に応じた回数だけ、分離した透過水を通過させる(付記1)に記載の水処理システム。
(付記7)
原水貯留槽に貯留される原水を第1送水手段により送水し、送水された原水を、逆浸透膜により、透過水と濃縮水とに分離し、透過水を、活性炭フィルターによりろ過し、活性炭フィルターを通過した水に塩素を添加して処理水貯水槽に貯留する方法。
(付記8)
処理水貯水槽に貯留される水の塩素濃度が所定の濃度に達しない場合、処理水貯水槽に貯留される水を原水貯留槽へ送水するように第2送水手段を制御する(付記7)に記載の方法。
【符号の説明】
【0105】
1…システム
100…建築物
10…膜処理モジュール
11…導電率センサ
12…圧力センサ
13…第1フィルター
15…センサ群
16…浸透膜
17…センサ群
18…活性炭フィルター
19…バルブ
110…排水貯水槽
21…原水貯留槽
22…オゾン発生器
23…ポンプ
24…ポンプ
31…処理水貯水槽
33…塩素供給部
34…ポンプ
35…UV殺菌部
36…制御装置
37…センサ
【要約】
【課題】雨水等の原水を逆浸透膜等を用いて浄化しつつ、必要な量の処理水を必要なタイミングで提供する。
【解決手段】原水を貯留する原水貯留槽と、原水貯留槽に貯留される原水を送水する第1送水手段と、送水された原水を透過水と濃縮水とに分離させる逆浸透膜と、透過水をろ過する活性炭フィルターと、活性炭フィルターを通過した水に塩素を添加して貯留する処理水貯水槽とを備える水処理システム。
【選択図】図1
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図8