(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】電動式スクイズ装置
(51)【国際特許分類】
B22C 15/02 20060101AFI20241105BHJP
B22C 15/06 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B22C15/02 B
B22C15/06
(21)【出願番号】P 2023510469
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2022043397
(87)【国際公開番号】W WO2023195200
(87)【国際公開日】2023-10-12
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022063677
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】下村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】船木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金平 諭三
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-164444(JP,A)
【文献】特開昭51-079065(JP,A)
【文献】特開平03-238200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 15/02
B22C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳枠内に充填された鋳物砂を上方向から圧縮して鋳型を造型する電動式スクイズ装置であって、
前記鋳物砂に加圧力を付与するスクイズフレームと、
前記スクイズフレームの上方側に位置して、
前記スクイズフレームに斜め荷重が生じにくい角度であって、回転中心に対して所定の
前記角度で往復動する揺動アームと、
前記揺動アームの前記回転中心から回転半径Aの位置に一端側が連結され、他端側が前記スクイズフレームに連結されたリンクと、
前記揺動アームの前記回転中心から回転半径Bの仮想円弧に沿って形成された従動ギヤと、
前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤと、
前記駆動ギヤを回転駆動させる電動モーターと、
を備え、
前記電動モーターを正逆回転させることで前記揺動アームおよび
前記リンクを介して前記スクイズフレームを上下動させるとともに、前記回転半径Bの寸法が前記回転半径Aの寸法よりも大きく設定され、前記スクイズフレームに付与される下向きの加圧力が高められている電動式スクイズ装置。
【請求項2】
前記揺動アームが往復動する前記角度は、50度以下である請求項1に記載の電動式スクイズ装置。
【請求項3】
前記従動ギヤは噛み合い部が円弧状に湾曲して設けられたラック状ギヤで構成され、前記駆動ギヤはピニオンギヤで構成されている、請求項1に記載の電動式スクイズ装置。
【請求項4】
前記揺動アームにおける前記リンクとの連結部が、前記回転中心よりも前記従動ギヤ側に位置している、請求項1
または3に記載の電動式スクイズ装置。
【請求項5】
前記スクイズフレームに形成されたシリンダ部に嵌合し、前記鋳物砂に対する接離方向に進退可能なスクイズフートと、
前記スクイズフートが前記鋳物砂を加圧した際、前記スクイズフートの後端側に作用する背圧を検出し、前記背圧が、
前記鋳物砂を圧縮するのに必要とされる目標加圧力に対応する所定の閾値を超えた場合に前記シリンダ部と連通した油路から油を排出して前記閾値となるように減圧する背圧調整手段と、
を更に備えている、請求項1
または3に記載の電動式スクイズ装置。
【請求項6】
前記スクイズフレームに形成されたシリンダ部に嵌合し、前記鋳物砂に対する接離方向に進退可能なスクイズフートと、
前記スクイズフートが前記鋳物砂を加圧した際、前記スクイズフートの後端側に作用する背圧を検出し、前記背圧が
前記鋳物砂を圧縮するのに必要とされる目標加圧力に対応する所定の閾値を超えた場合に前記シリンダ部と連通した油路から油を排出して前記閾値となるように減圧する背圧調整手段と、
を更に備えている、請求項
4に記載の電動式スクイズ装置。
【請求項7】
前記目標加圧力に相当する前記背圧の値が、前記閾値として設定されており、
前記目標加圧力よりも高い加圧力で前記スクイズフレームを下降させたとき、前記鋳物砂と接した後の前記スクイズフートが前記シリンダ部側に後退するとともに、前記鋳物砂への加圧力が前記目標加圧力となるように制御される、請求項
5に記載の電動式スクイズ装置。
【請求項8】
前記目標加圧力に相当する前記背圧の値が、前記閾値として設定されており、
前記目標加圧力よりも高い加圧力で前記スクイズフレームを下降させたとき、前記鋳物砂と接した後の前記スクイズフートが前記シリンダ部側に後退するとともに、前記鋳物砂への加圧力が前記目標加圧力となるように制御される、請求項
6に記載の電動式スクイズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳枠内に充填された鋳物砂を上方向から圧縮して鋳型を造型する電動式スクイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳枠内に充填された鋳物砂を上方向から圧縮して鋳型を造型するスクイズ装置においては、鋳物砂をスクイズする際に高い加圧力を必要とする。この加圧力を発生させるための動力源として、油圧ポンプ、圧力制御弁、方向切換え弁等を積載した油圧ポンプユニットが用いられている。しかしながら、油圧ポンプユニットを用いた場合、装置が大型化するとともに、造型動作中は常時油圧ポンプを運転させるため、使用電力量が嵩んでしまう。このような問題を解決するため、油圧ポンプユニットに代えて、電動モーターを用いて加圧力を発生させる電動式のスクイズ装置が用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-164444号公報
【文献】特開2004-17089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式のスクイズ装置としては、例えば上記特許文献1に示されたものがある。この特許文献1に記載されたスクイズ装置は、電動モーターの回転運動を、ボールネジ機構を用いた回転運動変換手段により直線運動に変換する。しかしながら、ボールネジ機構は精密な部品で構成されており、鋳物工場内に設けられた場合には粉塵の影響による不具合が懸念され、保全管理上の煩わしさが生じてしまう。
【0005】
また、電動モーターの回転運動を直線運動に変換する他の構成としてクランク軸を用いる構成も考えられる(例えば上記特許文献2参照)。しかしながら、クランク軸を用いた場合、直線運動するコンロッドのストローク量は、回転するクランク軸の偏心量によって規定されてしまう。そのため、鋳枠高さが高くなると盛砂量が増え、圧縮ストロークも増加する。圧縮ストロークを増加させるためには、クランク軸の偏心量を大きくする必要があり、クランク軸の回転トルクも大きくしなければならず、クランク軸を回転させる電動モータの出力が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、簡素な部品で構成され、保全管理やストローク量の変更を容易に行うことが可能な電動式スクイズ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明に想到した。
この発明の第1の局面の電動式スクイズ装置は次のように規定される。即ち、
鋳枠内に充填された鋳物砂を上方向から圧縮して鋳型を造型する電動式スクイズ装置であって、
前記鋳物砂に加圧力を付与するスクイズフレームと、
前記スクイズフレームの上方側に位置して、回転中心に対して所定の角度で往復動する揺動アームと、
前記揺動アームの前記回転中心から回転半径Aの位置に一端側が連結され、他端側が前記スクイズフレームに連結されたリンクと、
前記揺動アームの前記回転中心から回転半径Bの仮想円弧に沿って形成された従動ギヤと、
前記従動ギヤに噛合する駆動ギヤと、
前記駆動ギヤを回転駆動させる電動モーターと、
を備え、
前記電動モーターを正逆回転させることで前記揺動アームおよびリンクを介して前記スクイズフレームを上下動させるとともに、前記回転半径Bの寸法が前記回転半径Aの寸法よりも大きく設定され、前記スクイズフレームに付与される下向きの加圧力が高められている。
【0008】
このように規定される第1の局面の電動式スクイズ装置は、加圧力を発生させるための動力源として、油圧ポンプユニットに代えて電動モーターを用いるとともに、電動モーターとスクイズフレームとの間に介在する揺動アームにおける回転半径Bの寸法を回転半径Aの寸法よりも大きく設定することで(てこの原理に基づき)、スクイズフレームに付与される下向きの加圧力が高められている。この電動式スクイズ装置は、ボールネジ等を使用せず簡素な部品で構成されており、保全管理上の煩わしさを軽減することができる。また、盛砂量の増減等によりスクイズフレームの昇降ストロークを変更する必要が生じた場合であっても、駆動ギヤと噛み合っている従動ギヤの移動量を変えることでストロークの変更に容易に対応することができる。
【0009】
ここで、前記従動ギヤを、噛み合い部が円弧状に湾曲して設けられたラック状ギヤで構成し、前記駆動ギヤをピニオンギヤで構成することができる(第2の局面)。
【0010】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面または第2の局面で規定の電動式スクイズ装置において、前記揺動アームにおける前記リンクとの連結部が、前記回転中心よりも前記従動ギヤ側に位置している。
このように規定される第3の局面の電動式スクイズ装置によれば、装置の設置スペースを増大させることなく、回転半径Aに対する回転半径Bの寸法比を大きくすることができ、スクイズフレームに付与される下向きの加圧力を更に高めることができる。
【0011】
この発明の第4又は第5の局面は次のように規定される。即ち、
第4の局面に対応する第1又は第2の局面、又は第5の局面に対応する第3の局面で、規定の電動式スクイズ装置において、前記スクイズフレームに形成されたシリンダ部に嵌合し、前記鋳物砂に対する接離方向に進退可能なスクイズフートと、
前記スクイズフートが前記鋳物砂を加圧した際、前記スクイズフートの後端側に作用する背圧を検出し、前記背圧が所定の閾値を超えた場合に前記シリンダ部と連通した油路から油を排出して前記閾値となるように減圧する背圧調整手段と、
を更に備えている。
【0012】
このように規定される第4又は第5の局面の電動式スクイズ装置によれば、スクイズフートの後端側に作用する背圧が背圧調整手段によって調整され、鋳物砂に加えられる加圧力を所定の値に維持することができる。
【0013】
この発明の第6又は第7の局面は次のように規定される。即ち、
第6の局面に対応する第4の局面、又は第7の局面に対応する第5の局面で、規定の電動式スクイズ装置において、目標加圧力に相当する前記背圧の値が、前記閾値として設定されており、
前記目標加圧力よりも高い加圧力で前記スクイズフレームを下降させたとき、前記鋳物砂と接した後の前記スクイズフートが前記シリンダ部側に後退するとともに、前記鋳物砂への加圧力が前記目標加圧力となるように制御される。
【0014】
造型作業においては、鋳型を構成する鋳物砂の圧縮代を安定させるため、鋳物砂に対し目標加圧力を所定時間維持することが望ましい。第6又は第7の局面の電動式スクイズ装置によれば、スクイズフレームの下降動作中において、鋳物砂に対し目標加圧力を所定時間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動式スクイズ装置の縦断面図である。
【
図4】
図1の電動式スクイズ装置における造型時の動作手順の説明図である。
【
図5】
図4に続く説明図で、加圧状態の電動式スクイズ装置を示した図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る電動式スクイズ装置の縦断面図である。
【
図7】
図6の電動式スクイズ装置を加圧状態で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0017】
先ず、本発明の第1実施形態に係る電動式スクイズ装置1について、
図1~
図4を用いて説明する。電動式スクイズ装置1は、鋳枠23等を支持するスクイズテーブル4と、鋳枠23内の鋳物砂Sに加圧力を付与するスクイズフレーム5と、スクイズフレーム5の上方側に位置する揺動アーム7と、スクイズフレーム5と揺動アーム7との間に配設されたリンク8と、揺動アーム7を揺動させるピニオンギヤ10と、ピニオンギヤ10を回転駆動させる電動モーター12と、電動モーター12などの動作を制御する制御部Cと、を含んで構成され、鋳枠23内に充填された鋳物砂Sを上方向から圧縮して鋳型を造型する。
【0018】
本実施形態では、造型される鋳型の形状が、方形状の板である模型板21と、模型板21の上面に取り付けられた模型22と、模型板21の外形に対応し模型22の周囲を囲む鋳枠23と、鋳枠23の上端部に重ねられた盛枠25と、で規定されている。即ち、これらの部材で組み立てられた型枠Kの内部に鋳型の形状に相当する造型空間KSが形成され、かかる造型空間KSに鋳物砂Sが投入されている。型枠Kおよびその内部に投入された鋳物砂Sは、
図1が記載された紙面と直交する方向に移動するキャリアプレート14を介してスクイズテーブル4にて支持されている。
【0019】
なお、型枠K内に投入される鋳物砂Sは、鋳枠23に重ねられた盛枠25の分だけ多く投入されるが、その後、鋳物砂Sが加圧されることで、投入された鋳物砂Sは略鋳枠23内に収まる体積にまで圧縮され、突き固められた鋳型が造型される。
【0020】
スクイズフレーム5は、造型空間KS内に投入された鋳物砂Sに対して加圧力を付与するための部材で、スクイズテーブル4に対向して配置されている。このスクイズフレーム5は、装置フレームの一部を構成するコラム16に取り付けられた摺動ガイド17に沿って上下方向に摺動可能とされるとともに、上部に取り付けられた連結軸48を介してリンク8の下端部8bに相対回転可能に連結されている。
【0021】
スクイズフレーム5の下面側には、その先端を造型空間KSに向けた複数のスクイズフート32が進退可能に垂設されている。スクイズフート32は後端側のフートピストン部33と先端側の加圧ヘッド34とを備えた部材で、後端側のフートピストン部33がスクイズフレーム5に形成されたシリンダ部27内に収容されている。シリンダ部27内には油が充填されており、スクイズフート32がその先端の加圧ヘッド34で鋳物砂Sを加圧する際、その加圧力は、シリンダ部27内の油圧(即ち、フートピストン部33に作用する背圧)により規定される。
【0022】
スクイズフレーム5には複数のシリンダ部27が形成されている。これらシリンダ部27はその上端部に形成された連通穴28により相互に接続されており、全てのシリンダ部27において同じ油圧が作用する。このためシリンダ部27に嵌合する全てのスクイズフート32において、均等な加圧力が生じるようになっている。このように構成されたスクイズフート32は、
図1及び
図3で示すように、鋳枠23内の造型空間KSの略全域に対応するように、前後および左右方向に並列配置されており、鋳枠23内に投入された鋳物砂Sを満遍なく加圧可能とされている。
【0023】
図1において、36は、フートピストン部33に作用する背圧を調整する背圧調整手段である。背圧調整手段36は、シリンダ部27と連通する油路37と、油路37上に設けられその圧力を検出する圧力センサ38と、油路37の油を外部に排出する圧力制御弁39と、これら圧力センサ38および圧力制御弁39が接続された制御部Cと、を含んで構成されている。
【0024】
背圧調整手段36では、スクイズフート32が鋳物砂Sを加圧した際、スクイズフート32の後端側に作用する背圧を圧力センサ38で検出するとともに、検出された背圧が所定の閾値を超えた場合に、シリンダ部27と連通する油路37から油を排出して、設定された閾値まで背圧を低下させることができる。
【0025】
また、油路37の末端部分には、逆止弁40を介して油圧ポンプ41が配設されている。油圧ポンプ41は、後述する鋳物砂Sを加圧する動作においてシリンダ部27側に後退したスクイズフート32を、当初の位置である前進端にまで戻す際に使用されるもので、その吐出圧は1MPa程度の低圧とされている。
【0026】
揺動アーム7は、スクイズフレーム5の上方側に位置して、回転中心O周りに所定の角度で往復動する部材である。
図1,2で示すように、コラム16の上端に固定された上板18から更に上方に延びる二つ側板19,19を跨ぐように固定軸43が取り付けられており、揺動アーム7は、この固定軸43に対して揺動可能に連結されている。
【0027】
揺動アーム7は、
図1で示す正面視において、回転中心Oを通って径方向に延びる第1延出部44と、第1延出部44の端部から周方向に延びる第2延出部45とを有している。揺動アーム7における回転中心Oは、スクイズフレーム5における左右方向の中心を通って上下方向に延びる軸線Pから図中右側にずれた位置とされている。そして、第1延出部44の、軸線Pと交差する先端部には、回転中心Oから回転半径Aの位置に連結軸47が取り付けられ、この連結軸47に対しリンク8の上端部8aが相対回転可能に連結されている。このように連結されたリンク8の上端部8aは、揺動アーム7が揺動した際、回転半径Aの軌跡に沿って移動する。
【0028】
本実施形態では、駆動ギヤとしてのピニオンギヤ10と従動ギヤとしてのラック状ギヤ49が、電動モーター12の駆動力を揺動アーム7に伝達するための動力伝達機構を構成する。駆動ギヤとしてのピニオンギヤ10は、電動モーター12の出力軸12aに接続されている。このピニオンギヤ10と噛合するラック状ギヤ49は、揺動アーム7の第2延出部45に形成されており、回転中心Oから回転半径Bの仮想円弧に沿って、その噛み合い部が円弧状に湾曲している。詳しくは、噛み合い部を構成する複数のピンが、回転半径Bの仮想円弧に沿って連設されている。
そして、ピニオンギヤ10が出力軸12a周りに回転すると、ピニオンギヤ10と噛合するラック状ギヤ49および揺動アーム7は、回転半径Bの仮想円弧に沿って移動せしめられる。
なお本実施形態では、ラック状ギヤ49、ピニオンギヤ10および電動モーター12は、
図2で示すように、第2延出部45の前面45a側及び後面45b側のそれぞれに設けられている。
【0029】
このように構成された本実施形態では、電動モーター12によりピニオンギヤ10を正逆回転させると、揺動アーム7が回転中心O周りに揺動し、揺動アーム7の第1延出部44に連結されたリンク8を介してスクイズフレーム5が上下方向に昇降移動することとなる。スクイズフレーム5に所定の昇降ストロークを生ぜしめるための揺動アーム7の揺動角度は、スクイズフレーム5に対してリンク8による大きな斜め荷重を生じないためには、例えば50度以下の範囲とすることが望ましい。
【0030】
スクイズフレーム5に付与される下向きの加圧力は、電動モーター12の駆動力の他、揺動アーム7における回転半径Aと回転半径Bとの比率によっても変化する。本実施形態によれば、回転半径Bの寸法が回転半径Aの寸法よりも大きく設定されており、スクイズフレーム5に付与される下向きの加圧力が高められている。
【0031】
なお、本実施形態では、電動モーター12としてサーボモーターが用いられている。二つの電動モーター12を用いて揺動アーム7を揺動させるに際し、これら電動モーター12を同期制御するため、二つの電動モーターの内、一方をマスタとし、他方をスレーブとして駆動させることが望ましい。なお、場合によってはこれら電動モーター12としてインバータ制御モーターを用いることも可能である。
【0032】
次に、電動式スクイズ装置1における造型手順を、
図1,4,5を用いて説明する。ここでは、造型時、鋳物砂Sを圧縮するのに必要とされる加圧力(目標加圧力)に対応する背圧が、背圧調整手段36の閾値として予め制御部Cに設定登録されている。また、電動モーター12を回転駆動させた際に、揺動アーム7を介してスクイズフレーム5に付与される下向き加圧力は、前記目標加圧力よりも高いものとされている。
【0033】
先ず、鋳枠23を含む型枠Kがスクイズテーブル4にて支持された状態において(
図1参照)、電動モーター12を駆動させ、ピニオンギヤ10、ラック状ギヤ49を介して、揺動アーム7を回転中心O周りに(反時計方向に)揺動させることで、スクイズフレーム5が下降を開始する。そして、
図4で示すように、スクイズフート32の先端が鋳物砂Sの上面に当接する。
【0034】
スクイズフレーム5が更に下降して、スクイズフート32で鋳物砂Sが加圧され始めると、
図5で示すように、スクイズフート32がシリンダ部27側に後退し、シリンダ部27の油圧(スクイズフート32に作用する背圧)が上昇する。そして、背圧が予め設定された閾値に達したことが圧力センサ38によって検出されると、圧力制御弁39が開いて油路37から油が放出され、設定された閾値まで背圧が低下する(閾値まで低下した後、圧力制御弁39は閉じられる)。このように本実施形態では、スクイズフレーム5の下降動作中に、圧力センサ38によって閾値(目標加圧力)が検出されてからは、鋳物砂に対する加圧力として目標加圧力(詳しくは目標加圧力もしくはそれに近い加圧力)が所定時間維持され、鋳物砂Sが突き固められた鋳型が造型される。目標加圧力が維持される時間は、制御部Cによって制御される。
【0035】
なお各スクイズフート32は、同じ加圧力で鋳物砂Sを加圧するが、
図5で示すように、模型22が配置され鋳物砂Sの深さが浅くなっている箇所ではスクイズフート32による押込みは浅く、模型22が配置されておらず鋳物砂Sの深さが深くなっている箇所ではスクイズフート32による押込みは深くなる。このため、加圧の動作が終了した後の、それぞれのスクイズフート32の位置は異なったものとなる。
【0036】
加圧の動作が終了した後は、電動モーター12を逆回転させてスクイズフレーム5を上昇させる。続いて図示しない慣用手段によって鋳枠23を上昇させて、鋳型と鋳枠23との分離(離型)が行なわれる。
【0037】
一方、加圧の動作によりシリンダ部27側に後退したスクイズフート32については、油圧ポンプ41を起動させ、シリンダ部27内の圧力を高めることで、
図1で示した当初の位置に復帰させる。
以上のような一連の動作は、制御部Cによる制御の下で実施される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の電動式スクイズ装置1によれば、加圧力を発生させるための動力源として、油圧ポンプユニットに代えて電動モーター12を用いるとともに、電動モーター12とスクイズフレーム5との間に介在する揺動アーム7における回転半径Bの寸法を回転半径Aの寸法よりも大きく設定することで(てこの原理に基づき)、スクイズフレーム5に付与される下向きの加圧力が高められている。この電動式スクイズ装置1は、ボールネジ等を使用せず簡素な部品で構成されており、保全管理上の煩わしさを軽減することができる。
【0039】
また本実施形態の電動式スクイズ装置1は、スクイズフレーム5に形成されたシリンダ部27に嵌合し、鋳物砂Sに対する接離方向に進退可能なスクイズフート32と、スクイズフート32が鋳物砂Sを加圧した際、スクイズフート32の後端側に作用する背圧を検出し、背圧が所定の閾値を超えた場合にシリンダ部27と連通した油路37から油を排出して閾値となるように減圧する背圧調整手段36と、を備えている。
【0040】
このため電動式スクイズ装置1によれば、スクイズフート32の後端側に作用する背圧が背圧調整手段36によって調整され、鋳物砂Sに加えられる加圧力を所定の値に維持することができる。
【0041】
また本実施形態の電動式スクイズ装置1は、目標加圧力に相当する背圧の値が、閾値として設定されており、目標加圧力よりも高い加圧力でスクイズフレーム5を下降させると、鋳物砂Sと接した後のスクイズフート32がシリンダ部27側に後退するとともに、鋳物砂Sへの加圧力が背圧調整手段36により目標加圧力となるように制御される。
このため、スクイズフレーム5の下降動作中において、鋳物砂Sに対し目標加圧力を所定時間維持することができる。
【0042】
次に、第2実施形態に係る電動式スクイズ装置1Bについて、
図6,7を用いて説明する。
図6で示すように、電動式スクイズ装置1Bは、スクイズテーブル4と、スクイズフレーム5と、揺動アーム7Bと、リンク8と、ピニオンギヤ10と、電動モーター12と、制御部Cと、を含んで構成され、鋳枠23内に充填された鋳物砂Sを上方向から圧縮して鋳型を造型する。これらの構成各部のうち、第1実施形態に係る電動式スクイズ装置1の構成と共通する構成については同じ符号を用いて示すとともに、その説明を省略する。
【0043】
この電動式スクイズ装置1Bでは、
図6で示す正面視において、揺動アーム7Bにおける回転中心Oが、スクイズフレーム5における左右方向の中心を通って上下方向に延びる軸線Pから図中左側にずれた位置とされている。換言すれば、揺動アーム7Bにおけるリンク8との連結部(連結中心O
1)が、回転中心Oよりもラック状ギヤ49側に位置している。
【0044】
電動式スクイズ装置1Bでは、
図7で示すように、電動モーター12を駆動させて、揺動アーム7Bを回転中心O周りに(時計方向に)揺動させることで、スクイズフレーム5が下降し、所定の加圧力で鋳物砂Sを圧縮することができる。
【0045】
このように構成された本実施形態の電動式スクイズ装置1Bによれば、
図1(第1実施形態)との比較で明らかなように、装置の設置スペースを増大させることなく、回転半径Aに対する回転半径Bの寸法比を大きくすることができ、スクイズフレーム5に付与される下向きの加圧力を更に高めることができる。
【0046】
以上本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。例えば、電動モーターの駆動力を揺動アームに伝達するための動力伝達機構については、上記実施形態のラック状ギヤとピニオンギヤとに代えて、ウォームギヤを使った機構を用いることも可能である等、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0047】
また、本発明の実施形態は、模型の上方から鋳物砂を押圧することで、鋳物砂を突き固める、いわゆる「背面本スクイズ」に使用するものとしたが、これに限定されない。例えば、模型の上方から鋳物砂を背面本スクイズよりも小さな力で予備的に押圧する「予備スクイズ」、模型面を鋳物砂に対して相対的に上昇させて行う、いわゆる「模型面スクイズ」および「前記背面本スクイズ」の三段階でおこなうスクイズにも使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1B…電動式スクイズ装置
4…スクイズテーブル
5…スクイズフレーム
7,7B…揺動アーム
8…リンク
8a…上端部(一端側)
8b…下端部(他端側)
10…ピニオンギヤ(駆動ギヤ)
12…電動モーター
23…鋳枠
27…シリンダ部
32…スクイズフート
33…フートピストン部
36…背圧調整手段
37…油路
49…ラック状ギヤ(従動ギヤ)
A,B…回転半径
O…回転中心
S…鋳物砂