(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】中性剥離剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 9/00 20060101AFI20241105BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241105BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20241105BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20241105BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20241105BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20241105BHJP
C11D 3/18 20060101ALI20241105BHJP
C11D 1/52 20060101ALI20241105BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20241105BHJP
C11D 3/32 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C09D9/00
C09D7/63
C09J5/00
C11D3/43
C11D3/20
C11D1/04
C11D3/18
C11D1/52
C11D3/34
C11D3/32
(21)【出願番号】P 2023575647
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2022027260
(87)【国際公開番号】W WO2024013802
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2023-12-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】重枝 治
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雅之
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131651(JP,A)
【文献】特開平11-021482(JP,A)
【文献】特開2022-095500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0036988(US,A1)
【文献】米国特許第03664962(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(F)を含有する中性剥離剤組成物。
(A)SP値が9~12.4である極性溶媒(但し、下記(B)に該当するものは除く。)
であり、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、フェネチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種
(B)両親媒性グリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒
(C)炭素数12~18の脂肪酸塩
(D)パラフィン系炭化水素
(E)アルカノールアミド型非イオン界面活性剤
(F)水
【請求項2】
上記両親媒性グリコール系及び/またはグリコールエーテル系溶媒(B)が、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項
1記載の中性剥離剤組成物。
【請求項3】
上記脂肪酸塩(C)が、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1
又は2記載の中性剥離剤組成物。
【請求項4】
上記パラフィン系炭化水素(D)が、動粘度130mm
2/s以下の流動パラフィンである請求項1~
3いずれか1に記載の中性剥離剤組成物。
【請求項5】
アルミニウム層及び/又はポリエステル層を有する複層樹脂成形体から、アルミニウム及び/又はポリエステルを回収する方法であって、請求項1~
4いずれか1に記載の中性剥離剤組成物を、アルミニウム層及び/又はポリエステル層を有する複層樹脂成形体に付与し、各層を剥離し、分離する工程を有する回収方法。
【請求項6】
パルプ及び高吸水性ポリマーを含む吸収体、不織布並びにフィルムを、少なくとも構成部材として備える使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法であって、請求項1~
4いずれか1に記載の中性剥離剤組成物を用いて、各構成部材を分離し、ポリエステル素材を回収する工程を有する使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法。
【請求項7】
請求項1~
4いずれか1に記載の中性剥離剤組成物を用いて、アルミニウム製の反応器具又は金型に付着した樹脂を剥離する、反応器具又は金型の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性剥離剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装材料として性能を満たすために、異種材料を組み合わせた複層樹脂成形体が多数上市されている。しかしながら、複層樹脂成形体は性質の異なるフィルムや金属箔等を積層しているため、これらの材料は分離が困難であり、それに伴って、マテリアルリサイクルを難しくしている。
また、モノマーや樹脂を製造する際に使用する反応釜等の反応器具や、樹脂成型に使用する金型では、使用後、その内部にゲル化物や樹脂が付着するため、定期的に洗浄して、それらを除去する必要がある。従来、反応釜を洗浄するにあたっては、人が釜内に入り、ヘラ等を用いて不要物を削り落とし、除去する等といった手作業に頼らざるを得ない場合があり、煩雑さや危険が伴うことがあった。また、手作業では洗浄が不十分であったり、洗浄に多くの時間を費やなければばらなかったり、洗浄効率が必ずしも高いものとはいえなかった。
【0003】
従来、剥離剤として、例えば、水酸化アルカリ、芳香族系アルコール、アルカノールアミン、グリコール類、及び水を含有することを特徴とする水溶性塗料剥離剤が提案されている(特許文献1)。
しかし、このような剥離剤は、強アルカリ性である為に、使用する材料によっては分解、腐食及び溶解等を起こす恐れがあり、用途が限定されるものであった。
【0004】
一方、例えば、特許文献2には、金属加工、電子部品加工または光学部品加工等の際に必要な油脂性物質、あるいはこれらの加工の際に付着した油脂性物質を取り除くために、第1成分としての3-メトキシ-3-メチルブタノール10~84重量%と、第2成分としての水90~16重量%とからなることを特徴とする非引火性洗浄剤組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、フロアーポリッシュ等の艶消剤等に対する剥離剤として、脂肪酸類と、アミン類と、溶剤類と、α-ヒドロキシ酸類とを主成分とする、中性からアルカリ性に調整された剥離剤が開示されている。
【0006】
特許文献4には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコールから選ばれる少なくとも1種の揮発性溶剤85重量%乃至98重量%と、ベンジルアルコール1重量%乃至10重量%と、アミルシナミックアルデヒド1重量%乃至5重量%とからなる樹脂ワックス皮膜層の剥離剤組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5には、詳しくは金属やガラス素材などの硬質表面を持つ部材に付着した各種の異なる固体汚染物質を、安全且つ有効に除去するために、(A)ベンジルアルコール、(B)特定の水溶性グリコールエーテル、(C)HLBが12~18であるノニオン界面活性剤、(D)水を配合して全体を100重量%としてなることを特徴とする工業用洗浄剤組成物が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記先行文献において、上記洗浄剤や剥離剤等は、複層樹脂成形体を各層に剥離するために使用することは記載されていない。また、複層樹脂成形体を剥離するにあたっては、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-275394号公報
【文献】特開平6-346094号公報
【文献】特開2005-28515号公報
【文献】特開2006-282976号公報
【文献】特開2020-8080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、複層樹脂成形体等に対し、優れた剥離性能を有する中性剥離剤組成物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、複層樹脂成形体等を構成する基材の分解、腐食及び溶解を防ぐことができる中性剥離剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(A)~(F)を含有する中性剥離剤組成物である。
(A)SP値が9~12.4である極性溶媒(但し、下記(B)に該当するものは除く。)であり、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、フェネチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種
(B)両親媒性グリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒
(C)炭素数12~18の脂肪酸塩
(D)パラフィン系炭化水素
(E)アルカノールアミド型非イオン界面活性剤
(F)水
【0013】
上記両親媒性グリコール系及び/またはグリコールエーテル系溶媒(B)が、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
上記脂肪酸塩(C)が、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記パラフィン系炭化水素(D)が、動粘度130mm2/s以下の流動パラフィンであることが好ましい。
【0015】
本発明は、アルミニウム層及び/又はポリエステル層を有する複層樹脂成形体から、アルミニウム及び/又はポリエステルを回収する方法であって、上記中性剥離剤組成物を、アルミニウム層及び/又はポリエステル層を有する複層樹脂成形体に付与し、各層を剥離し、分離する工程を有する回収方法でもある。
【0016】
本発明は、パルプ及び高吸水性ポリマーを含む吸収体、不織布並びにフィルムを、少なくとも構成部材として備える使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法であって、上記中性剥離剤組成物を用いて、各構成部材を分離し、ポリエステル素材を回収する工程を有する使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法でもある。
【0017】
本発明は、上記中性剥離剤組成物を用いて、アルミニウム製の反応器具又は金型に付着した樹脂を剥離する、反応器具又は金型の洗浄方法でもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の中性剥離剤組成物は、pHを中性としながら、アルカリ性薬剤と同等の剥離性能を有するものである。また、中性であることから、複層樹脂成形体等を構成する基材の分解、腐食及び溶解を防ぐことができるものである。
本発明の中性剥離剤組成物を使用することで、複層樹脂成形体や吸収性物品の分離では、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の基材の回収が可能となる。また、反応釜等の反応器具や樹脂成型に使用する金型においては、アルミニウム素材等への使用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の中性剥離剤組成物は、下記(A)~(F)を含有するものである。
(A)SP値が9~13である極性溶媒
(B)両親媒性グリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒
(C)炭素数12~18の脂肪酸塩
(D)パラフィン系炭化水素
(E)アルカノールアミド型非イオン界面活性剤
(F)水
なお、本発明において、「中性」とは、剥離剤組成物のpHが6.0~8.0であることを意味するものである(以下、中性域と表することがある)。
【0020】
これまで、種々の樹脂層、アルミニウム層、接着層及び印刷層等を有する複層樹脂成形体を剥離するにあたって、強アルカリ性の剥離剤が用いられていたのは、中性あるいは微アルカリ性では、接着剤等の剥離が十分行えないためであった。
しかしながら、本発明においては、特定のSP値を持つ極性溶媒(A)と両親媒性グリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒(B)と共に、特定の脂肪酸塩(C)、パラフィン系炭化水素(D)及びアルカノールアミド型非イオン界面活性剤(E)を配合した水性の組成物とすることで、中性域での、複層樹脂成形体の各層の剥離を可能とする剥離剤組成物を見出したものである。
【0021】
特に、特定の脂肪酸塩(C)及びパラフィン系炭化水素(D)を配合することで、中性域での複層樹脂成形体の各層の剥離が可能となる。本発明においては、上記脂肪酸塩(C)とパラフィン系炭化水素(D)を併用することで、複層樹脂形成体中の接着層及び印刷層等を十分に溶解又は脱離させることができるものである。
【0022】
また、本発明においては、中性域での剥離を可能としたことで、複層樹脂成形体や吸収性物品等の分離においては、アルカリ性に弱い、アルミニウム、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート等の樹脂が、分解、腐食又は溶解することがなく、これら基材の回収が可能となる。
また、反応釜等の反応器具や、樹脂成型に使用する金型においては、アルミニウム素材への使用が可能となる。
【0023】
本発明において使用する極性溶媒(A)は、SP値が9~13であることが必要である。
SP値(溶解パラメータ(δ))は、ヒルデブラントによって導入された正則溶液論により定義された値であり、1cm3の液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根(cal/cm3)1/2から計算されるものである。
【0024】
本発明において、SP値がこの範囲である極性溶媒を使用することで、複層樹脂成形体等の基材を侵すことなく接着層及び印刷層を脱離させることができる。
本発明において用いる極性溶媒のSP値は、10以上であることが好ましい。一方、SP値は、13以下であることが好ましい。
【0025】
上記SP値を有する極性溶媒(A)として、具体的には、ベンジルアルコール(SP値:10.8)、フェニルグリコール(SP値:12.4)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(SP値:11.2)、イソプロパノール(SP値:11.5)、ジメチルホルムアミド(DMF)(SP値:11.9)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(SP値:12.0)、フェネチルアルコール(SP値:11.2)等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
中でも、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、フェネチルアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)が好ましく、特に、ベンジルアルコールが好ましい。
【0026】
本発明において使用する両親媒性グリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒(B)は、上記極性溶媒(A)、脂肪酸塩(C)及びパラフィン系炭化水素(D)と水(F)との相溶化剤として機能するものである。したがって、水との親和性が大きい部分(親水基)と親和性が小さい部分(疎水基)の両方を持ち合わせている、両親媒性のグリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒であることが必要である。
【0027】
本発明において使用する両親媒性グリコール系及び/又はグリコールエーテル系溶媒(B)として、具体的には、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
中でも、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0028】
本発明において使用する炭素数12~18の脂肪酸塩(C)は、具体的には、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、リノール酸カリウム、リノレン酸カリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
中でも、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが好ましい。
【0029】
また、本発明において使用するパラフィン系炭化水素(D)は、一般式CnH2n+2(nは、15以上整数である。)で表される炭化水素であることが好ましい。
具体的には、例えば、流動パラフィン等が挙げられる。上記流動パラフィン等のような、油状液体であるパラフィン系炭化水素(D)を使用することで、溶液として混合した際に均一な状態を保つことができる。
上記流動パラフィンは、動粘度130mm2/s以下であることが好ましい。
なお、上記動粘度は、JIS K2231-1993及びJIS K2283に基づき、ガラス製毛管式粘度計を使用し、40℃で測定した値である。
【0030】
また、本発明において、アルカノールアミド型非イオン界面活性剤(E)を配合することで、剥離剤組成物中の配合成分の分散性を良好とし、剥離性に寄与するものである。特に、希釈安定性を持たせることが可能となり、希釈時に配合成分を均一に分散させ、十分な剥離性能を発揮させることを可能とするものである。
【0031】
本発明において使用する、アルカノールアミド型非イオン系界面活性剤(E)は、そのHLBが、5.0~16.0であることが好ましい。
なお、本発明において、HLBは、グリフィン法により、次の算出式で定義される値である。
HLB値=20×[親水部の化学式量の総和]/分子量
【0032】
上記アルカノールアミド型非イオン界面活性剤(E)としては、具体的に、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、イソステアリン酸モノエタノールアミド、イソステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン(EO2~5モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの中でも、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(HLB10.1)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(HLB15.5)、ラウリン酸モノエタノールアミド(HLB10.7)、ラウリン酸ジエタノールアミド(HLB12.5)、ステアリン酸モノエタノールアミド(HLB7.5)、ステアリン酸ジエタノールアミド(HLB9.1)、オレイン酸モノエタノールアミド(HLB7.5)、オレイン酸ジエタノールアミド(HLB9.1)、が好ましい。
【0033】
上記極性溶媒(A)は、中性剥離剤組成物中、10~80質量%含まれていることが好ましい。含有量の下限は、より好ましくは、20質量%であり、更に好ましくは、30質量%である。一方、含有量の上限は、より好ましくは70質量%であり、更に好ましくは60質量%である。
極性溶媒(A)が上記範囲であれば、溶液として混合した際に均一な状態を保つことができ、かつ良好な剥離性を発現することが出来る。
【0034】
また、上記成分(B)は、中性剥離剤組成物中、1~50質量%含まれていることが好ましい。含有量の下限は、より好ましくは、3質量%である。一方、含有量の上限は、より好ましくは40質量%であり、更に好ましくは30質量%である。
成分(B)が、上記範囲であれば、成分(A)、(C)、(D)及び(F)を溶液として混合した際に均一な状態を保つことができる。
【0035】
また、上記成分(C)は、中性剥離剤組成物中、1~40質量%含まれていることが好ましい。含有量の下限は、より好ましくは、5量%である。一方、含有量の上限は、より好ましくは30質量%であり、更に好ましくは20質量%である。
成分(C)が、上記範囲であれば、溶液として混合した際に均一な状態を保つことができ、かつ良好な剥離性を発現することが出来る。
【0036】
また、上記成分(D)は、中性剥離剤組成物中、1~30質量%含まれていることが好ましい。含有量の下限は、より好ましくは、1質量%である。一方、含有量の上限は、より好ましくは20質量%であり、更に好ましくは10質量%である。
成分(D)が、上記範囲であれば、溶液として混合した際に均一な状態を保つことができ、かつ良好な剥離性を発現することが出来る。
【0037】
また、上記成分(E)の含有量は、中性剥離剤組成物中、5~30質量%含まれていることが好ましい。
成分(E)が、上記範囲であれば、成分(A)、(C)及び(D)を可溶化でき、剥離剤組成物の水での希釈安定性を保持することができる。
【0038】
本発明の中性剥離剤組成物は、水溶液である。
中性剥離剤組成物中の水(F)の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上である。
一方、上限は、好ましくは40質量%であり、より好ましくは、30質量%である。
水(F)含有量が、上記範囲内であれば、溶液として混合した際に均一な状態を保つことができ、かつ良好な剥離性を発現することが出来る。
【0039】
本発明の中性剥離剤組成物は、通常の方法により、上記各原料を、適宜混合・撹拌することにより調製すればよい。
【0040】
本発明において中性剥離剤組成物を使用する対象となる複層樹脂成形体は、特に限定されるものではなく、例えば、包装用フィルムやシート、包装容器等の包装材料、ガソリン等の燃料タンク、冷媒輸送用ホース、光学材料等、一般的に使用されているものが挙げられる。
特に、アルミニウム層やポリエチレンテレフタレート等のポリエステル層を有する複層樹脂形成体に好適に使用できる。
【0041】
これら複層樹脂成形体は、2種以上の樹脂層、アルミニウム層及びパルプ層等を組み合わせて積層体としたもの等が挙げられる。
【0042】
複層樹脂成形体の樹脂層としては、例えば、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)からなるオレフィン系フィルム群、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム等が使用されている。本発明においては、いずれが使用されていても良い。
【0043】
また、上記複層樹脂成形体は各層を、接着剤を用いて接着してなるものであってもよい。接着剤としては、一般的に使用されているポリウレタン接着剤組成物、ポリオレフィン接着剤組成物等が挙げられる。これらの接着剤により形成される接着層は、本発明の剥離剤組成物によって溶解又は脱離するので、複層樹脂成形体の剥離は、問題なく行うことができる。
【0044】
また、上記複層樹脂成形体は、印刷層を有するものであってもよい。印刷層も、本発明の中性剥離剤組成物によって溶解又は脱離するので、複層樹脂成形体の剥離は、問題なく行うことができる。
【0045】
上記印刷層は、印刷インキから形成されるものをいい、スクリーンインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキ、オフセットインキその他の印刷インキを好適に挙げることができる。
中でも、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキの使用が好ましく、グラビアインキおよび/またはフレキソインキの使用がなお好ましい。
【0046】
上記印刷層に含まれるバインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを好適に挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
上記の中でもポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂およびセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー樹脂を含有することが好ましい。更には、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂とセルロース樹脂、またはアクリル樹脂とセルロース樹脂等の組み合わせからなる二種樹脂を、バインダー樹脂総質量中に50質量%以上有するバインダー樹脂であることが好ましく、質量比率は前者:後者が95:5~30:70であることがなお好ましい。
【0048】
上記印刷層は着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては顔料であることが好ましく、例えば、有機顔料では、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が好適に挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等好適に挙げられる。なお、カラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを適宜使用することができる。
【0049】
本発明の中性剥離剤組成物を使用し、複層樹脂成形体を各層に分離する方法は、従来公知の方法により行えばよい。例えば、上記剥離剤組成物に、複層樹脂成形体を所望時間浸漬する方法が好適である。
本発明の中性剥離剤組成物は、使用時に、更に水で希釈して使用するようにしてもよい。
【0050】
浸漬する複層樹脂成形体の形態は、任意に設定すればよく、成形体のままでも、適宜破砕、粉砕等することにより、小片状、粒状等にしてから浸漬してもよい。
【0051】
また、剥離工程時の溶液の温度は、常温でも良いが、60~90℃とすることが好ましい。また、オートクレーブ等を使用しても良い。
また、剥離工程時には、複層樹脂成形体を浸漬した溶液を撹拌したり、振動を与えたり等を、することが好適である。
【0052】
本発明は、アルミニウム層及び/又はポリエステル層を有する複層樹脂成形体から、アルミニウム及び/又はポリエステルを回収する方法であって、上記中性剥離剤組成物を、アルミニウム層及び/又はポリエステル層を有する複層樹脂成形体に付与し、各層を剥離し、分離する工程を有する回収方法でもある。
【0053】
本発明の中性剥離剤組成物を用いることにより、良好に、複層樹脂成形体を各層に剥離し、分離することができる。また、アルミニウム層やポリエチレンテレフタレート層等のポリエステル層等の分解、腐食及び溶解を防ぐことができるので、これら基材を回収し、再利用することが可能となる。
【0054】
分離した各層は、それぞれ回収し、乾燥機等を用いて乾燥する等すればよい。
【0055】
また、本発明の中性剥離剤組成物は、パルプ及び高吸水性ポリマーを含む吸収体、不織布並びにフィルムを、少なくとも構成部材として備える使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法においても、使用することができる。
【0056】
上記吸収性物品としては、例えば、紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシーツ、ペットシーツ等が挙げられる。
また、使用済み吸収性物品とは、使用者によって使用された吸収性物品であり、通常、使用者の液体の排泄物を吸収した状態の吸収性物品である。ただし、本実施の形態では、使用済み吸収性物品は、使用されたが排泄物を吸収していないものを含む。また、未使用吸収性物品は、工場の製造過程において不良品となったもの等を含む。
【0057】
上記吸収体に含まれるパルプとしては、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば、木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。
また、上記吸収体に含まれる高吸収性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系等の吸水性ポリマーが挙げられる。上記高吸収性ポリマーは、通常、粒子状で、パルプ中に分散している。
【0058】
上記不織布やフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0059】
上記不織布及びフィルムは、目的に応じて、液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート、または液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これら不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が使用される。
【0060】
上記吸収性物品の構成例として、例えば、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備えるものが挙げられる。上記表面シート及び裏面シートには、上記不織布又はフィルム等が使用される。
【0061】
上記構成例において、例えば、吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。
【0062】
上記接着剤としては、例えば、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤などが挙げられる。
【0063】
本発明においては、上記中性剥離剤組成物を用いて、上記のような使用済み吸収性物品を、各構成部材に分解できる。上記中性剥離剤組成物は、吸収性物品に使用されている接着剤等を溶解又は脱離させる。また、ポリエチレンタレフタレート(PET)等のポリエステル素材等が使用されている場合には、これらの回収が良好に行える。
【0064】
すなわち、本発明は、パルプ及び高吸水性ポリマーを含む吸収体、不織布並びにフィルムを、少なくとも構成部材として備える使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法であって、上記中性剥離剤組成物を用いて、分解された各構成部材を分離し、ポリエステル素材を回収する工程を有する使用済みもしくは未使用吸収性物品を処理する方法でもある。
【0065】
本発明の使用済みもしくは未使用の吸収性物品を処理する方法は、例えば、上記吸収性物品に、上記中性剥離剤組成物を付与して、上記吸収性物品を上記構成部材毎に分解する工程(1)、
工程(1)で分解された各構成部材を分離し、回収する工程(2)
を有する方法が挙げられる。
【0066】
上記工程(1)において、上記中性剥離剤組成物を、吸収性物品に付与する方法は、特に限定されるものではなく、適宜行えばよい。例えば、中性剥離剤組成物の入った容器やタンク等に、吸収性物品を投入することにより、中性剥離組成物に吸収性物品を浸漬する。
このとき、上記浸漬温度が70~80℃であることが好ましい。この温度範囲であれば、接着剤の除去が問題なく行える。また、浸漬時間は、30~60分間であることが好ましい。
また、必要に応じて、プロペラを回転させること等により撹拌するようにしてもよい。
【0067】
上記工程(1)において、中性剥離剤組成物により、構成部材同士を接合している接着剤が溶解又は脱離し、吸収体、不織布、フィルム等の構成部材に分解する。本方法では、不織布やフィルムと、他の構成部材(フィルム又は不織布や吸収体等)との接合部分の接着剤を中性剥離剤組成物により除去するので、不織布やフィルムと他の構成部材とを、破断等せずにそのままの形状を維持したまま、それぞれに分解することができる。したがって、吸収性物品の不織布やフィルム等の構成部材を効率よく回収することができる。また、フィルムや不織布に接着剤を残さずに、分離することができることにより、不織布やフィルムを純度の高い樹脂として再利用可能となり、また、不織布やフィルムの再利用のときに接着剤が悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0068】
次に、工程(2)において、分解された各構成部材を分離し、回収する。分離する方法は、特に限定されるものではない。例えば、工程(1)で得られた混合液から、構成部材の浮力差を利用することによって、又は、不織布や篩等を用いて濾過することによって、それぞれの構成部材を分離し、回収する。
なお、本発明の処理方法においては、パルプと高吸収性ポリマーとは分離しておらず、これらが一体となっている吸収体として分離・回収される。
また、工程(2)においては、上記分離する前もしくは分離中に、又は、回収後に、水で洗浄するようにしてもよい。
【0069】
各々回収された、不織布、フィルム等は、必要に応じて、脱水し、加熱乾燥、すなわち室温よりも高い温度の雰囲気又は熱風により適宜乾燥させるとよい。
【0070】
本発明の方法を行うにあたっては、予め、使用済みもしくは未使用の吸収性物品を、洗浄剤等を含有する水で洗浄する工程を設けてもよいし、本方法が洗浄工程を兼ねたものであってもよい。
【0071】
上記のようにして回収された、不織布及びフィルムは、接着剤が付着していないため、再生利用に適したものである。
【0072】
また、回収された吸収体中のパルプと高吸水性ポリマーは、適宜公知の方法により、それぞれ分離し、回収するようにすればよい。回収されたパルプと高吸水性ポリマーは、それぞれ再利用され得る。
【0073】
本発明の中性剥離剤組成物は、反応器具や金型等の洗浄にも有効なものである。
洗浄する上記反応器具としては、金属製等の反応釜、バッフル板、撹拌翼、導管、接続治具等の装置部材等が挙げられる。
また、上記金型は、樹脂等を成型する際に使用する金属製金型等が挙げられる。
特に、アルミニウム製の反応器具又は金型の場合に、アルミニウムが腐食又は溶解することがなく、好適である。
【0074】
すなわち、本発明は、上記中性剥離剤組成物を用いて、アルミニウム製の反応器具又は金型に付着した樹脂を剥離する、反応器具又は金型の洗浄方法でもある。
【0075】
本発明において洗浄の対象となる樹脂等の不要物は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物等のモノマーの製造時に発生するゲル化物、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂等の残留樹脂やそれら樹脂由来のゲル化物、シリカ等が挙げられる。
【0076】
反応釜内に付着するものとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の残留樹脂やそれら樹脂由来のゲル化物、アクリル酸、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物等のモノマーを製造時に発生するゲル化物、シリカ等が挙げられる。また、装置部材に付着または堆積するものとして、エポキシ系樹脂由来の汚れ、イソシアネート系化合物由来の汚れ、シリコーン樹脂由来の汚れ等が挙げられる。また、金型に付着するものとして、シリコーン樹脂、各種ゴム等が挙げられる。
【0077】
本発明においては、従来の水系又は溶剤系の洗浄剤では除去が難しかった、カルボン酸等(由来)のゲル化物も良好に洗浄することができる。
特に、本発明は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の洗浄に効果的である。
【0078】
本発明の反応器具又は金型の洗浄方法は、適宜公知の方法で行えばよい。例えば、上記中性剥離剤組成物を用いて、反応器具又は金型に付着した不要物に上記水系洗浄剤を付与して、不要物を膨潤・剥離させる工程(1)、
工程(1)で剥離した不要物を除去する工程(2)
を有する方法が挙げられる。
【0079】
洗浄時の中性剥離剤組成物の温度は、60~100℃とすることが好ましい。より好ましくは、70~90℃である。なお、不要物の付着状態等によっては、常温でもよい。
【0080】
浸漬時間は、不要物の種類や付着具合により適宜設定すればよく、例えば、1分間~2時間程度が好適である。より好ましくは、30分間~1時間である。
また、浸漬時には、反応釜であれば、釜内を、プロペラを回転させること等により撹拌し、水流を発生させることが好適である。このようにすることで、より早く洗浄することができる。
【0081】
上記のように、不要物を本発明の中性剥離剤組成物に浸漬することにより、中性剥離剤組成物が不要物に浸透し、徐々に不要物が膨潤し、反応器具や金型から剥離する。
【実施例】
【0082】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、「部」「%」とある場合は、特に限定のない限りは、「質量部」「質量%」をあらわす。
【0083】
〔実施例1〕
ベンジルアルコール35質量%、プロピレングリコール5質量%、オレイン酸ナトリウム10質量%、流動パラフィン(動粘度1.8~2.6mm2/s)5質量%、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド(HLB15.5)20質量%及び水25質量%の剥離剤組成物を調製した。
得られた剥離剤組成物のpHは、6.8であった。
また、下記方法により、剥離性と可溶化性の評価を行った。
【0084】
(複層樹脂成形体)
剥離性試験においては、下記構成の複層樹脂成形体を使用した。
剥離対象物:酒パック(黒霧島 霧島酒造株式会社)
構成:ポリエチレン/接着層/ポリエチレンテレフタレート/接着層/アルミ箔/接着層/ポリエチレン/パルプ/ポリエチレン/印刷層
【0085】
(剥離性試験)
1.上記の複層樹脂成形体を20×20mm程度に切断した。
2.常圧及び加温80℃の条件下で、複層樹脂成形体を剥離剤に浸漬して撹拌し、目視にて剥離性及び可溶化性を確認し、下記基準により評価した。その結果を表1に示す。
(剥離性)
〇:5時間以内にすべての層が剥離した。
△:20時間以内にすべての層が剥離した。
×:48時間で一部剥離が見られるものの、不十分であった。
【0086】
(可溶化性)
〇:剥離剤組成物は透明であった。
△:剥離剤組成物は濁っており、72時間以内で分離した。
×:剥離剤組成物は濁っており、すぐに分離した。
【0087】
〔実施例2~6〕
剥離剤組成物の組成を、表1に示すようにした他は、実施例1と同様にして、各試験を行った。
結果を表1に併せて示す。
【0088】
〔比較例1~8〕
剥離剤組成物の組成を、表2に示すようにした他は、実施例1と同様にして、各試験を行った。
結果を表2に併せて示す。
【0089】
【0090】
【0091】
表1、2の結果から、実施例の剥離剤組成物は、複層樹脂成形体の剥離に優れたものであった。一方、比較例の組成物は、いずれも満足のいく結果は得られなかった。
実施例においては、接着層によって積層されていた各基材層は、複層樹脂成形体の接着層が溶解し、それぞれ剥離した。また、印刷層も、インキがポリエチレンフィルムから脱離していた。また、ポリエチレンフィルムとパルプとの積層部分においては、パルプ内に一部入り込んだ状態で接着していたポリエチレンフィルムが、剥離剤組成物の水分と油分の作用によりパルプから分離し、両者は完全に剥離していた。
更に、複層樹脂成形体中のポリエチレンテレフタレートとアルミ箔は、分解、腐食又は溶解等することなく回収できた。
【0092】
<ホットメルト接着剤除去試験>
市販紙おむつ(花王製リリーフ(登録商標))を5cm×5cmにカットし、剥離剤50gに、温度80℃で30分間浸漬させた後、下記の評価を行った。
〇:30分以内にホットメルト接着剤が完全に除去されており、構成部材表面にべたつきがなかった。
△:1時間以内にホットメルト接着剤が完全に除去されており、構成部材表面にべたつきがなかった。
×:1時間以内に紙おむつの構成部材毎に分解されているが、構成部材表面にべたつきが多くあった。もしくは、分解しない。
【0093】
〔実施例7~12〕
剥離剤組成物の組成を、表3に示すようにした他は、実施例1と同様にして、剥離剤組成物を調製し、上記ホットメルト接着剤除去試験を行った。
結果を表3に併せて示す。
【0094】
〔比較例9~16〕
剥離剤組成物の組成を、表4に示すようにした他は、実施例1と同様にして、剥離剤組成物を調製し、上記ホットメルト接着剤除去試験を行った。
結果を表4に併せて示す。
【0095】
【0096】
【0097】
表3、4の結果から、実施例の剥離剤組成物は、ホットメルト接着剤除去性に優れたものであった。一方、比較例の組成物は、いずれも満足のいく結果は得られなかった。
【0098】
<金型洗浄試験>
(剥離試験)
1.30×50mmのステンレス板(JISG4305 SUS304)にアクリル樹脂0.1gを塗布し、800℃で20分間焼き付け、これを試験片とした。
2.剥離洗浄剤120gを80℃に昇温した後、(1)の試験片を浸漬し剥離状態を確認した。
〇:2時間以内に100%剥離
△:5時間以内に100%剥離
×:5時間でも剥離せず
【0099】
〔実施例13~18〕
剥離剤組成物の組成を、表5に示すようにした他は、実施例1と同様にして、剥離剤組成物を調製し、上記剥離試験を行った。
結果を表5に併せて示す。
【0100】
〔比較例17~24〕
剥離剤組成物の組成を、表6に示すようにした他は、実施例1と同様にして、剥離剤組成物を調製し、上記剥離試験を行った。
結果を表6に併せて示す。
【0101】
【0102】
【0103】
表5、6の結果から、実施例の剥離剤組成物は、アクリル樹脂の剥離性に優れたものであった。一方、比較例の組成物は、いずれも満足のいく結果は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、複層樹脂成形体等を各層に剥離することを可能するものである。また、あらゆる樹脂層やアルミニウム層の回収を可能とするものであり、地球環境保護等に役立てられる。