(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤、ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤希釈液、ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤、ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤、及びポリエステル系短繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/188 20060101AFI20241105BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20241105BHJP
D06M 13/244 20060101ALI20241105BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
D06M13/188
D06M13/17
D06M13/244
D06M15/53
(21)【出願番号】P 2024084649
(22)【出願日】2024-05-24
【審査請求日】2024-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松永 光晴
(72)【発明者】
【氏名】高山 義弘
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/098124(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/108206(WO,A1)
【文献】特開2015-145545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)を含有することを特徴とするポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤
であって、
前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で25質量%以上90質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を5質量%以上65質量%以下の割合で含有するポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
【請求項2】
前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が、それぞれ50質量%以下である請求項1に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
【請求項3】
前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤中の前記脂肪酸誘導体(A)の質量をAm、前記脂肪酸誘導体(B)の質量をBmとしたとき、その質量比Am/Bmの値が0.01以上0.4以下である請求項1に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
【請求項4】
前記有機リン酸エステル塩(C)が、炭素数11以上13以下のアルキル基を有するリン酸エステルの塩である請求項1に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
【請求項5】
前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で30質量%以上70質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を10質量%以上60質量%以下の割合で含有する請求項1に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
【請求項6】
更に、下記のジエステル(D)を含有する請求項1に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
ジエステル(D):分子量200以上800以下のポリエチレングリコールと、炭素数12以上20以下の1価脂肪酸とのジエステル。
【請求項7】
前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で30質量%以上70質量%以下、前記有機リン酸エステル塩(C)を10質量%以上60質量%以下、及び前記ジエステル(D)を2質量%以上10質量%以下の割合で含有する請求項6に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤、及び水を含有することを特徴とするポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤希釈液。
【請求項9】
有機リン酸エステル塩(C)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤と併用されるポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤であって、
下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択で下記のジエステル(D)を含有
し、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤と混合されたポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で25質量%以上90質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を5質量%以上65質量%以下の割合で含有するように前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤と併用されることを特徴とするポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤。
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
ジエステル(D):分子量200以上800以下のポリエチレングリコールと、炭素数12以上20以下の1価脂肪酸とのジエステル。
【請求項10】
下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択で下記のジエステル(D)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤と併用されるポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤であって、
有機リン酸エステル塩(C)を含有
し、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤と混合されたポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で25質量%以上90質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を5質量%以上65質量%以下の割合で含有するように前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤と併用されることを特徴とするポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤。
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
ジエステル(D):分子量200~800のポリエチレングリコールと、炭素数12~20の1価脂肪酸とのジエステル。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤が付着していることを特徴とするポリエステル系短繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤、ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤希釈液、ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤、ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤、及びポリエステル系短繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸工程、延伸工程、仕上げ工程等において、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。また、一般に、ローラーカードを用いたカード工程によって合成繊維のローラーカードウェブを作製した後、スパンレース工程によってローラーカードウェブを構成する繊維同士を交絡させて不織布を製造することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1は、スパンレース用の不織布製造用処理剤について、炭素数が4~11の脂肪酸、有機リン酸エステル、ノニオン界面活性剤等を含むことを記載している。上記不織布製造用処理剤を用いることによって、絡合性及びスカム抑制に優れたものとなるとともに、スパンレース工程での起泡を少なくできることを記載している。
【0004】
特許文献2は、スパンレース法不織布製造用繊維処理剤について、二塩基酸とジオールのエステル化合物と、アルキルリン酸エステルを含有することを記載している。上記スパンレース法不織布製造用繊維処理剤を用いることによって、繊維に優れた平滑性や柔軟性を付与することができるとともに、スパンレース工程での起泡を抑制できることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6605833号公報
【文献】特許第4139130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、繊維用処理剤が付与されたポリエステル系短繊維には、制電性の向上と、カード工程で得られるローラーカードウェブの均一性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の脂肪酸誘導体と有機リン酸エステル塩を含むポリエステル系短繊維処理剤がまさしく好適であることを見出した。
【0008】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)を含有することを要旨とする。また、ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤は、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で25質量%以上90質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を5質量%以上65質量%以下の割合で含有する。
【0009】
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
【0010】
態様2は、態様1に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が、それぞれ50質量%以下である。
【0011】
態様3は、態様1又は2に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤において、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤中の前記脂肪酸誘導体(A)の質量をAm、前記脂肪酸誘導体(B)の質量をBmとしたとき、その質量比Am/Bmの値が0.01以上0.4以下である。
【0012】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤において、前記有機リン酸エステル塩(C)が、炭素数11以上13以下のアルキル基を有するリン酸エステルの塩である。
【0013】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤において、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で30質量%以上70質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を10質量%以上60質量%以下の割合で含有する。
【0014】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤において、更に、下記のジエステル(D)を含有する。
ジエステル(D):分子量200以上800以下のポリエチレングリコールと、炭素数12以上20以下の1価脂肪酸とのジエステル。
【0015】
態様7は、態様6に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤において、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で30質量%以上70質量%以下、前記有機リン酸エステル塩(C)を10質量%以上60質量%以下、及び前記ジエステル(D)を2質量%以上10質量%以下の割合で含有する。
【0016】
態様8のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤希釈液は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤、及び水を含有することを要旨とする。
【0017】
態様9のポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤は、有機リン酸エステル塩(C)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤と併用され、下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択で下記のジエステル(D)を含有することを要旨とする。また、ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤は、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤と混合されたポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で25質量%以上90質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を5質量%以上65質量%以下の割合で含有するように前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤と併用される。
【0018】
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
【0019】
ジエステル(D):分子量200以上800以下のポリエチレングリコールと、炭素数12以上20以下の1価脂肪酸とのジエステル。
態様10のポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤は、下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択で下記のジエステル(D)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤と併用され、有機リン酸エステル塩(C)を含有することを要旨とする。また、ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤は、前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤と混合されたポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の不揮発分において、前記脂肪酸誘導体(A)及び前記脂肪酸誘導体(B)を合計で25質量%以上90質量%以下、及び前記有機リン酸エステル塩(C)を5質量%以上65質量%以下の割合で含有するように前記ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤と併用される。
【0020】
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
【0021】
ジエステル(D):分子量200~800のポリエチレングリコールと、炭素数12~20の1価脂肪酸とのジエステル。
態様11のポリエステル系短繊維は、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤が付与されたポリエステル系短繊維について、制電性と、ローラーカードウェブの均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の処理剤は、下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)を含有する。
【0024】
(脂肪酸誘導体(A))
脂肪酸誘導体(A)は、リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物である。
【0025】
アルキレンオキサイドは、炭素数が2以上4以下であることが好ましく、炭素数2もしくは3であることがより好ましい。炭素数が2以上4以下であるアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド(以下、EOともいう。)、プロピレンオキサイド(以下、POともいう。)、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0026】
アルキレンオキサイドの付加モル数は、特に制限されないが、好ましくは0.1モル以上20モル以下であり、より好ましくは0.5モル以上18モル以下であり、さらに好ましくは0.5モル以上15モル以下である。
【0027】
アルキレンオキサイドの付加モル数は、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、1種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、2種類以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0028】
脂肪酸誘導体(A)は、アルキレンオキサイドの両末端にリノール酸やリノレン酸が結合したジカルボン酸であってもよいし、アルキレンオキサイドの片方の端部にリノール酸やリノレン酸が結合したモノカルボン酸であってもよい。脂肪酸誘導体(A)は、モノカルボン酸であることが好ましい。
【0029】
脂肪酸誘導体(A)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合は、50質量%以下であることが好ましい。脂肪酸誘導体(A)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が50質量%以下であると、スパンレース工程において高圧水流を噴射した際に、水流の泡立ちを抑制しやすくなる。言い換えれば、抑泡性を向上させることができる。
【0030】
(脂肪酸誘導体(B))
脂肪酸誘導体(B)は、オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物である。
【0031】
アルキレンオキサイドは、上記脂肪酸誘導体(A)におけるアルキレンオキサイドと同様のものを用いることができる。
脂肪酸誘導体(B)は、アルキレンオキサイドの両末端にオレイン酸やステアリン酸が結合したジカルボン酸であってもよいし、アルキレンオキサイドの片方の端部にオレイン酸やステアリン酸が結合したモノカルボン酸であってもよい。脂肪酸誘導体(B)は、モノカルボン酸であることが好ましい。ただし、脂肪酸誘導体(B)に、後述するジエステル(D)は含まれないものとする。
【0032】
脂肪酸誘導体(B)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合は、50質量%以下であることが好ましい。脂肪酸誘導体(B)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が50質量%以下であると、スパンレース工程において高圧水流を噴射した際に、抑泡性を向上させることができる。
【0033】
脂肪酸誘導体(A)及び脂肪酸誘導体(B)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が、それぞれ50質量%以下であることがより好ましい。脂肪酸誘導体(A)及び脂肪酸誘導体(B)の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が、それぞれ50質量%以下であると、抑泡性をより向上させることができる。
【0034】
脂肪酸誘導体(A)及び脂肪酸誘導体(B)のいずれか一方の分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合が、50質量%以下であってもよい。
(有機リン酸エステル塩(C))
有機リン酸エステル塩(C)としては、例えばアルキルリン酸エステル、アルケニルリン酸エステル等の塩が挙げられる。アルキルリン酸エステルを構成するアルキル基又はアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。
【0035】
有機リン酸エステル塩(C)の原料となるアルコールとしては、1価の脂肪族アルコールが挙げられる。1価の脂肪族アルコールの具体例としては、例えば(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、2-デシルテトラデカノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、オレイルアルコール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール等が挙げられる。
【0036】
有機リン酸エステル塩(C)を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル塩(C)の塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0037】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0038】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0039】
有機リン酸エステル塩(C)の具体例としては、例えば、ウンデシルリン酸エステルカリウム塩、ドデシルリン酸エステルカリウム塩、トリデシルリン酸エステルカリウム塩、ドデシルリン酸エステルナトリウム塩、オクタデシルリン酸エステルカリウム塩、オクチルリン酸エステルカリウム塩等が挙げられる。
【0040】
有機リン酸エステル塩(C)は、炭素数11以上13以下の脂肪族アルコールのリン酸エステルの塩であることが好ましい。言い換えれば、有機リン酸エステル塩(C)は、炭素数11以上13以下のアルキル基を有するリン酸エステルの塩であることが好ましい。有機リン酸エステル塩(C)が、炭素数11以上13以下のアルキル基を有するリン酸エステルの塩であることによって、ポリエステル系短繊維の制電性をより向上させることができる。
【0041】
これらの有機リン酸エステル塩(C)は、1種類の有機リン酸エステル塩(C)を単独で使用してもよいし、2種類以上の有機リン酸エステル塩(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0042】
有機リン酸エステル塩(C)の酸価は、適宜設定されるが、好ましくは5~100KOH-mg/gであり、より好ましくは10~80KOH-mg/gである。
なお、有機リン酸エステル塩(C)の酸価は、有機リン酸エステル塩(C)をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置にセットして、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の数式から算出される値である。
【0043】
酸価(KOH-mg/g)=(R×f×56.11×0.1)/S
数式において、
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:試料採取量(g、固形分換算量)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用量(mL)
(含有量)
処理剤中の脂肪酸誘導体(A)の質量をAm、脂肪酸誘導体(B)の質量をBmとしたとき、その質量比Am/Bmの値が0.01以上0.4以下であることが好ましい。
【0044】
質量比Am/Bmの値が上記数値範囲であると、ポリエステル系短繊維のローラーカードウェブの均一性(以下、ローラーカードウェブ均一性ともいう。)をより向上させることができる。
【0045】
なお、ローラーカードウェブ均一性とは、処理剤を付与したポリエステル系短繊維を用いて、ローラーカード工程によってウェブを作製した際に、ウェブの地合に乱れがなく、見た目が良好なウェブが得られる性質を意味するものとする。
【0046】
処理剤の不揮発分において、脂肪酸誘導体(A)及び脂肪酸誘導体(B)を合計で30質量%以上70質量%以下、及び有機リン酸エステル塩(C)を10質量%以上60質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0047】
脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)の含有量が上記数値範囲であると、制電性、抑泡性、親水性のいずれも向上させることができる。
処理剤の不揮発分において、脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)の合計は、必ずしも100質量%でなくてもよい。例えば、後述するように、ジエステル(D)や、その他成分(E)を含んでいてもよい。
【0048】
なお、処理剤の不揮発分とは、処理剤を105℃で2時間加熱処理した後の残渣を意味するものとする。以下も同様であるとする。
処理剤は、更に、下記のジエステル(D)を含有してもよい。
【0049】
(ジエステル(D))
ジエステル(D)は、分子量200以上800以下のポリエチレングリコールと、炭素数12以上20以下の1価脂肪酸とのジエステルである。
【0050】
処理剤が、上記ジエステル(D)を含有することによって、ポリエステル系短繊維の親水性と、ローラーカードウェブ均一性をより向上させることができる。
なお、上記分子量は、質量平均分子量を意味するものとする。
【0051】
炭素数12以上20以下の1価脂肪酸としては、例えば、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸等が挙げられる。
【0052】
ジエステル(D)の具体例としては、例えば、質量平均分子量200のポリエチレングリコールとオレイン酸のジエステル(以下、ポリオキシエチレン(質量平均分子量200)ジオレアートともいう)、質量平均分子量800のポリエチレングリコールとオレイン酸のジエステル(以下、ポリオキシエチレン(質量平均分子量800)ジオレアートともいう)、質量平均分子量400のポリエチレングリコールとラウリン酸のジエステル(以下、ポリオキシエチレン(質量平均分子量400)ジラウラートともいう)、質量平均分子量600のポリエチレングリコールとラウリン酸のジエステル(以下、ポリオキシエチレン(質量平均分子量600)ジラウラートともいう)等が挙げられる。
【0053】
これらのジエステル(D)は、1種類のジエステル(D)を単独で使用してもよいし、2種類以上のジエステル(D)を適宜組み合わせて使用してもよい。
ジエステル(D)の質量平均分子量の測定方法は制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定することができる。
【0054】
(含有量)
処理剤の不揮発分において、脂肪酸誘導体(A)及び脂肪酸誘導体(B)を合計で30質量%以上70質量%以下、有機リン酸エステル塩(C)を10質量%以上60質量%以下、及びジエステル(D)を2質量%以上10質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0055】
処理剤の不揮発分において、脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、有機リン酸エステル塩(C)、及びジエステル(D)の合計は、必ずしも100質量%でなくてもよい。例えば、後述するように、その他成分(E)を含んでいてもよい。
【0056】
脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、有機リン酸エステル塩(C)、及びジエステル(D)の含有量が上記数値範囲であると、ポリエステル系短繊維のローラーカードウェブ均一性や、処理剤の乳液安定性をより向上させることができる。
【0057】
(その他成分(E))
本実施形態の処理剤は、その他成分(E)を含有してもよい。その他成分(E)としては、例えば、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、pH調整剤、高級アルコール等の通常処理剤に用いられる成分が挙げられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤が挙げられる。なお、高級アルコールは、炭素数が6以上の一価アルコールを意味するものとする。
【0058】
その他成分(E)の具体例としては、例えば、ヒマシ油1モルに対し、EO9モル、PO9モルをランダム付加させた化合物、ヒマシ油1モルに対し、EO7モル、PO3モルをランダム付加させた化合物、硬化ヒマシ油1モルに対し、EO5モル、PO5モルをランダム付加させた化合物、硬化ヒマシ油1モルに対し、EO9モル、PO9モルをランダム付加させた化合物、炭素数11以上14以下の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルアルコール、オレイン酸、オクタン酸カリウム塩、セバシン酸1モルに対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:質量平均分子量13000、EO成分比75質量%)0.1モルと、ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)0.5モル、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)0.4モルとを脱水縮合して得られたエステル化合物、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテルリン酸エステルカリウム塩、ポリオキシエチレン(質量平均分子量400)モノラウラート等が挙げられる。
【0059】
これらのその他成分(E)は、1種類のその他成分(E)を単独で使用してもよいし、2種類以上のその他成分(E)を適宜組み合わせて使用してもよい。言い換えれば、その他成分(E)は、上記のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0060】
その他成分(E)の含有量は特に制限されず、本発明の効果を阻害しない範囲内において含有させることができる。
処理剤の不揮発分において、その他成分(E)の含有量は、例えば、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、0質量%とすることができる。また、5質量%以上、10質量%以上とすることができる。その他成分(E)の含有量は、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0061】
(保存形態)
処理剤は、上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性や保存安定性を向上させる観点から、以下に示されるような2剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0062】
2剤型の処理剤は、脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択でジエステル(D)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤(以下、第1処理剤ともいう。)と、有機リン酸エステル塩(C)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤(以下、第2処理剤ともいう。)と、を含むセットとして構成される。その他成分(E)は、第1処理剤及び第2処理剤のいずれか一方又は両方に含有されてもよい。
【0063】
2剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、該第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。2剤型処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0064】
(溶媒)
第1実施形態の処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤含有組成物、又はポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤希釈液が調製され、これらポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤含有組成物等の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0065】
溶媒は、一気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。水の具体例としては、イオン交換水、蒸留水、硬水、軟水等が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類の溶媒を単独で使用してもよいし、2種類以上の溶媒を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0066】
<第1実施形態の作用及び効果>
(1-1)上記第1実施形態の処理剤は、上述した脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)を含有している。したがって、処理剤が付与されたポリエステル系短繊維の制電性と、ローラーカードウェブ均一性を向上させることができる。
【0067】
(1-2)更に、上述したジエステル(D)を含有することによって、処理剤が付与されたポリエステル系短繊維の親水性と、ローラーカードウェブ均一性をより向上させることができる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、本発明のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤希釈液(以下、単に希釈液ともいう。)を具体化した第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態の希釈液は、上記処理剤と、水を含有する。希釈液は、処理剤と水を混合することによって、乳化物として使用する。水の具体例としては、例えばイオン交換水、蒸留水、硬水、軟水等が挙げられる。これらの中でもイオン交換水、蒸留水を用いることが好ましい。
【0070】
希釈液の調製方法は特に制限されず、例えば、予め計量した水に対して、所定量の処理剤を添加する方法が挙げられる。さらに、公知のホモミキサーやホモジナイザー等を用いた公知の機械的乳化方法によって調製することができる。
【0071】
希釈液は、水以外に公知の溶媒を含有してもよい。水以外の溶媒としては、例えば、上記の有機溶媒が挙げられる。
希釈液における処理剤の濃度は、特に制限されない。処理剤の濃度は、例えば、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上とすることができる。また、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下とすることができる。処理剤の濃度は、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0072】
<第2実施形態の作用及び効果>
第2実施形態では、第1実施形態の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を有する。
【0073】
(2-1)上記第2実施形態の希釈液は、上述した処理剤と、水を含有する。したがって、処理剤を乳化物の形態でポリエステル系短繊維に付与することができる。また、溶媒として水を含有することによって、希釈液のハンドリング性が良好になる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明のポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤(第1処理剤)を具体化した第3実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。第1処理剤は、脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択でジエステル(D)を含有する。
【0075】
第1処理剤は、有機リン酸エステル塩(C)を含有するポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤(以下、単に第2処理剤ともいう。)と併用される。つまり、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された処理剤としての混合物が調製される。
【0076】
脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、有機リン酸エステル塩(C)、及びジエステル(D)は、それぞれ第1実施形態において説明した成分と同一である。第1処理剤は、上記したその他成分(E)を含有してもよい。
【0077】
(溶媒)
第3実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤希釈液(以下、第1処理剤希釈液ともいう。)が調製される。第1処理剤は、第1処理剤希釈液の形態で、保存又は流通させてもよい。かかる構成により、使用時に溶媒で希釈する際又は第2処理剤と混合する際、混合性を向上させるとともに、組成物の安定性を向上させる。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0078】
<第3実施形態の作用及び効果>
第3実施形態では、第1,2実施形態の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を有する。
【0079】
(3-1)第3実施形態の第1処理剤では、脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択でジエステル(D)を含有し、使用時に有機リン酸エステル塩(C)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、保存時又は流通時等において、第1処理剤の製剤安定性や保存安定性を向上させることができる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0080】
<第4実施形態>
次に、本発明のポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤(第2処理剤)を具体化した第4実施形態を説明する。以下、第1~3実施形態との相違点を中心に説明する。第2処理剤は、有機リン酸エステル塩(C)を含有する。第2処理剤は、脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択でジエステル(D)を含有する第1処理剤と併用される。つまり、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された処理剤としての混合物が調製される。
【0081】
脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、有機リン酸エステル塩(C)、及びジエステル(D)は、それぞれ第1実施形態において説明した成分と同一である。第2処理剤は、上記したその他成分(E)を含有してもよい。
【0082】
(溶媒)
第4実施形態の第2処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤希釈液(以下、第2処理剤希釈液ともいう。)が調製される。第2処理剤は、第2処理剤希釈液の形態で、保存又は流通させてもよい。かかる構成により、使用時に溶媒で希釈する際又は第1処理剤と混合する際、混合性を向上させるとともに、組成物の安定性を向上させる。溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0083】
<第4実施形態の作用及び効果>
第4実施形態では、上記実施形態の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を有する。
【0084】
(4-1)第4実施形態の第2処理剤では、有機リン酸エステル塩(C)を含有し、使用時に脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、及び任意選択でジエステル(D)を含有する第1処理剤と併用される。したがって、保存時又は流通時等において、第2処理剤の製剤安定性や保存安定性を向上させることができる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第2処理剤のみを第1処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0085】
<第5実施形態>
次に、本発明のポリエステル系短繊維を具体化した第5実施形態について説明する。
本実施形態のポリエステル系短繊維は、第1実施形態の処理剤が表面に付着している処理済みポリエステル系短繊維である。処理剤がポリエステル系短繊維の表面に付着することにより改質ポリエステル系短繊維が得られる。
【0086】
(ポリエステル系短繊維の長さ)
ポリエステル系短繊維は、一般にステープルや、ショートカットと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。ステープルは、繊維の長さが長さ3cm以上7cm以下程度の短繊維をいう。ショートカットは、繊維の長さが1cm以下の短繊維をいう。すなわち、ポリエステル系短繊維は、繊維の長さが7cm以下程度の短繊維を意味するものとする。
【0087】
なお、後述のように、ポリエステル系短繊維を用いてスパンレース不織布を作製した際に、不織布を構成する繊維に上記長繊維が含まれていてもよいものとする。すなわち、本発明の処理剤は、ポリエステル系短繊維のみに適用されるのではなく、不織布に混合されたポリエステル系短繊維以外の長繊維に適用されていてもよい。
【0088】
(ポリエステル系短繊維の種類)
ポリエステル系短繊維の具体例としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート・イソフタラート、ポリエーテルポリエステル等が挙げられる。
【0089】
(処理剤の付着処理)
第1実施形態の処理剤をポリエステル系短繊維に付着させる割合に特に制限はない。処理剤は、溶媒を含まない処理剤としてポリエステル系短繊維に対し0.1質量%以上2質量%以下となるように付着させることが好ましく、0.3質量%以上1.2質量%以下となるように付着させることがより好ましい。
【0090】
処理剤をポリエステル系短繊維に付着させる方法としては、例えば、第2実施形態の希釈液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0091】
(不織布の製造方法)
本実施形態のポリエステル系短繊維を用いて、更に以下の方法によって不織布が製造されてもよい。具体的には、以下の工程を経ることにより得られる。
【0092】
工程1:第1実施形態の処理剤を、ポリエステル系短繊維に対し付着させる工程。
工程2:前記工程1で処理剤を付着させたポリエステル系短繊維を、ローラーカード機に通過させてローラーカードウェブを得る工程。工程2は、カード工程ともいう。
【0093】
工程3:前記工程2で得られたローラーカードウェブに高圧水流を噴射するスパンレース法によって、繊維同士を交絡させて不織布を得る工程。工程3は、スパンレース工程ともいう。
【0094】
以上の工程を経ることにより、不織布を製造できる。不織布は、スパンレース法によって繊維同士を交絡させていることから、スパンレース不織布と言い換えることができる。
工程1において、2剤型の処理剤を用いる場合、水等の溶媒と、第3実施形態の第1処理剤と、第4実施形態の第2処理剤とを含む処理剤の希釈液を調製して、ポリエステル系短繊維に付与する。希釈液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤、及び第2処理剤を添加する方法が挙げられる。
【0095】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、各剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。
【0096】
第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、特に制限されないが、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=95/5~5/95であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上させることができる。
【0097】
処理剤を乳化するために、各処理剤と溶媒とを混合し、公知の撹拌機、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等を用いて撹拌してもよい。
上記のように得られた希釈液を、例えばポリエステル系短繊維の紡糸工程、延伸工程、及び仕上工程の少なくとも1つの工程等においてポリエステル系短繊維に付与することによって、処理剤が付着したポリエステル系短繊維を得ることができる。
【0098】
<第5実施形態の作用及び効果>
第5実施形態では、上記実施形態の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を有する。
【0099】
(5-1)ポリエステル系短繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している。したがって、ポリエステル系短繊維の制電性とローラーカードウェブ均一性を向上させることができる。ポリエステル系短繊維の制電性が向上することによって、カード工程におけるポリエステル系短繊維の工程通過性が良好になる。また、ポリエステル系短繊維のローラーカードウェブ均一性が向上することによって、次のスパンレース工程において厚みや密度のばらつきが小さく、より品質の良い不織布を得ることができる。そのため、本発明のポリエステル系短繊維を用いて作製した不織布を、例えば、ウエットティッシュや、マスク等の用途に好適に適用することができる。
【0100】
(5-2)また、多剤型の場合、使用直前に第1処理剤及び第2処理剤が溶媒に添加されて調製されるため、製剤安定性や保存安定性を良好にすることができる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、%は質量%を意味し、部は質量部を意味する。
【0102】
試験区分1(ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の調製)
(実施例1-1)
950gの水を50℃に加温し、撹拌しながら、脂肪酸誘導体(A)として、リノール酸1モルに対し、EO3モルを付加させた化合物(A-1)3.5g、脂肪酸誘導体(B)として、オレイン酸1モルに対し、EO3モルを付加させた化合物(B-1)16.5g、有機リン酸エステル塩(C)として、ウンデシルリン酸エステルカリウム塩(C-1)20g、ジエステル(D)として、ポリオキシエチレン(質量平均分子量200)ジオレアート(D-1)2g、ポリオキシエチレン(質量平均分子量800)ジオレアート(D-2)0.5g、その他成分(E)として、ヒマシ油1モルに対し、EO9モル、PO9モルをランダム付加させた化合物(E-1)1.5g、ヒマシ油1モルに対し、EO7モル、PO3モルをランダム付加させた化合物(E-2)5g、硬化ヒマシ油1モルに対し、EO5モル、PO5モルをランダム付加させた化合物(E-3)1gを添加、混合して実施例1のポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の5質量%水性液を得た。
【0103】
(実施例1-2~1-20、比較例1~5)
実施例1-2~1-20、及び比較例1~5の各処理剤は、表1に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0104】
各例の処理剤中における脂肪酸誘導体(A)の種類と含有量、脂肪酸誘導体(B)の種類と含有量、有機リン酸エステル塩(C)の種類と含有量、ジエステル(D)の種類と含有量、その他成分(E)の種類と含有量、及び脂肪酸誘導体(A)と脂肪酸誘導体(B)の質量比は、表1の「脂肪酸誘導体(A)」欄、「脂肪酸誘導体(B)」欄、「有機リン酸エステル塩(C)」欄、「ジエステル(D)」欄、「その他成分(E)」欄、及び「Am/Bm」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0105】
【0106】
表1に記載する脂肪酸誘導体(A)、脂肪酸誘導体(B)、有機リン酸エステル塩(C)、ジエステル(D)、及びその他成分(E)の詳細は以下のとおりである。
<脂肪酸誘導体(A)>
脂肪酸誘導体(A)は、下記表2に示されるA-1~A-5を使用した。
【0107】
脂肪酸誘導体(A)の種類、及び分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合を、表2中の「脂肪酸誘導体(A)の種類」欄、「オキシアルキレン基の質量割合」欄にそれぞれ示す。
【0108】
【0109】
<脂肪酸誘導体(B)>
脂肪酸誘導体(B)は、下記表3に示されるB-1~B-5を使用した。
脂肪酸誘導体(B)の種類、及び分子構造におけるオキシアルキレン基の質量割合を、表3中の「脂肪酸誘導体(B)の種類」欄、「オキシアルキレン基の質量割合」欄にそれぞれ示す。
【0110】
【0111】
<有機リン酸エステル塩(C)>
有機リン酸エステル塩(C)は、下記表4に示されるC-1~C-6を使用した。
有機リン酸エステル塩(C)のアルキル基直鎖率、アルキル基炭素数、酸価、P核NMR積分比率を、表4中の「アルキル基直鎖率」欄、「アルキル基炭素数」欄、「酸価」欄、「P核NMR積分比率」欄にそれぞれ示す。なお、表4において、「モノ体」、「ジ体」、「ポリ体」は、それぞれ「モノエステル体」、「ジエステル体」、「二リン酸エステル体」を意味するものとする。P核NMR積分比率は、公知の方法によって測定することができる。
【0112】
【0113】
<ジエステル(D)>
D-1:ポリオキシエチレン(質量平均分子量200)ジオレアート
D-2:ポリオキシエチレン(質量平均分子量800)ジオレアート
D-3:ポリオキシエチレン(質量平均分子量400)ジラウラート
D-4:ポリオキシエチレン(質量平均分子量600)ジラウラート
<その他成分(E)>
E-1:ヒマシ油1モルに対し、EO9モル、PO9モルをランダム付加させた化合物
E-2:ヒマシ油1モルに対し、EO7モル、PO3モルをランダム付加させた化合物
E-3:硬化ヒマシ油1モルに対し、EO5モル、PO5モルをランダム付加させた化合物
E-4:硬化ヒマシ油1モルに対し、EO9モル、PO9モルをランダム付加させた化合物
E-5:炭素数11~14の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩
E-6:ラウリルアルコール
E-7:オレイン酸
E-8:オクタン酸カリウム塩
E-9:セバシン酸1モルに対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:質量平均分子量13000、EO成分比75質量%)0.1モルと、ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)0.5モル、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)0.4モルとを脱水縮合して得られたエステル化合物
E-10:プロピレングリコール
E-11:エチレングリコールモノブチルエーテルリン酸エステルカリウム塩
E-12:ポリオキシエチレン(質量平均分子量400)モノラウラート
試験区分2(ポリエステル系短繊維処理綿の調製)
試験区分1で調製したポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤の5質量%水性液を、ポリエステル系短繊維(繊度1.5dtex、繊維長38mm)に対する処理剤の不揮発分の付着量が0.14質量%になるようにスプレー給油法で付着させた。その後、処理剤を付着させた原綿を80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃で40%RHの雰囲気下に一夜調湿した。調湿したものを、ポリエステル系短繊維処理綿(以下、処理綿ともいう。)とした。
【0114】
試験区分3(制電性)
前記の処理綿5gを、20℃で45%RHの恒温室内で24時間調湿した後、電気抵抗(Ω)を、電気抵抗測定器(東亜電波工業社製のSM-5E型)を用いて測定し、下記の評価基準で評価した。結果を表1の「制電性」欄に示す。
【0115】
・制電性の評価基準
3(良好):表面抵抗が1.0×109Ω未満
2(可):表面抵抗が1.0×109Ω以上1.0×1010Ω未満
1(不可):表面抵抗が1.0×1010Ω以上
試験区分4(ローラーカードウェブ均一性)
前記の処理綿20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、公知のローラーカード機に供した。排出されたローラーカードウェブの地合を目視判定にて評価し、下記の評価基準で評価した。結果を表1の「ウェブ均一性」欄に示す。
【0116】
・ローラーカードウェブ均一性の評価基準
4(優れる):ローラーカードウェブの地合の乱れがなく、見た目が非常に良好である。
【0117】
3(良好):ローラーカードウェブの地合の乱れが少なく、見た目が良好である。
2(可):ローラーカードウェブの地合に乱れが少し見られる。
1(不可):ローラーカードウェブの地合に乱れが見られる。
【0118】
試験区分5(抑泡性)
前記の処理綿15gを150gの水に投入し、2時間後に公知のハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25mL共栓付きメスシリンダーに入れ、30秒間強く振った。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測定し、下記の評価基準で評価した。結果を表1の「抑泡性」欄に示す。
【0119】
・抑泡性の評価基準
3(良好):泡立ちが3mm未満
2(可):泡立ちが3mm以上10mm未満
1(不可):泡立ちが10mm以上
試験区分6(親水性)
前記の処理綿5gを3gの金属製のカゴに入れ、1Lの水に投入した。処理綿が完全に水に浸漬するまでの時間を測定し、下記の評価基準で評価した。結果を表1の「親水性」欄に示す。
【0120】
・親水性の評価基準
3(良好):完全に水に浸漬するまでの時間が5秒未満
2(可):完全に水に浸漬するまでの時間が5秒以上10秒未満
1(不可):完全に水に浸漬するまでの時間が10秒以上
試験区分7(乳液安定性)
各例の処理剤5質量%水性液20gを直径18mmの試験管に入れ、20℃の恒温室内で静置した。24時間後の水性液の状態を目視で確認し、下記の評価基準で評価した。結果を表1の「乳液安定性」欄に示す。
【0121】
・乳液安定性の評価基準
3(良好):沈殿や分離がなく均一な状態である。
2(可):沈殿は見られないものの、分離が起こっている。
【0122】
1(不可):沈殿が発生しており、不均一な状態である。
試験区分8(2剤型処理剤の第1処理剤希釈液の調製)
(第1処理剤希釈液(I-1)~(I-20))
表5に示す含有割合となるように、各成分を秤量し、これらを撹拌し、混合して、ポリエステル系短繊維スパンレース用第1処理剤希釈液(第1処理剤希釈液(I-1)~(I-20))を調製した。
【0123】
第1処理剤希釈液(I-1)~(I-20)における脂肪酸誘導体(A)の種類と含有量、脂肪酸誘導体(B)の種類と含有量、ジエステル(D)の種類と含有量、その他成分(E)の種類と含有量、水の含有量は、表5の「脂肪酸誘導体(A)」欄、「脂肪酸誘導体(B)」欄、「ジエステル(D)」欄、「その他成分(E)」欄、「溶媒」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0124】
【0125】
試験区分9(2剤型処理剤の第2処理剤希釈液の調製)
表6に示す含有割合となるように、各成分を秤量し、これらを撹拌し、混合して、ポリエステル系短繊維スパンレース用第2処理剤希釈液(第2処理剤希釈液(II-1)~(II-6))を調製した。
【0126】
第2処理剤希釈液(II-1)~(II-6)における有機リン酸エステル塩(C)の種類と含有量、水の含有量は、表6の「有機リン酸エステル塩(C)」欄、「溶媒」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0127】
【0128】
試験区分10(第1処理剤希釈液及び第2処理剤希釈液の製剤安定性の評価)
調製した各例の第1処理剤希釈液及び第2処理剤希釈液をそれぞれ試験管に10mL取り分け、目視観察して安定性を以下の基準で判定した。結果を表5,6の「製剤安定性」欄に示す。
【0129】
・製剤安定性の評価基準
2(可):調製直後に分離や沈殿物がない場合
1(不可):調製直後から分離や沈殿物が認められる場合
試験区分11(第1処理剤希釈液と第2処理剤希釈液から処理剤希釈液の調製)
(実施例2-1)
表6に示される前記の第2処理剤希釈液(II-1)を、約50℃に加温した所定量の半量の水に撹拌下で加えて完全に溶解させる。溶解後、表5に示される前記の第1処理剤希釈液(I-1)を撹拌下で加えて完全に溶解させる。溶解後、加温を止め、約25℃の残り半量の水を一気に加えて均一になるまで撹拌して、実施例2-1の処理剤希釈液の5質量%水性液を得た。
【0130】
(実施例2-2~2-20)
実施例2-1と同様にして、表5に示される第1処理剤希釈液と、表6に示される第2処理剤希釈液とを混合して各例の処理剤希釈液を調製した。
【0131】
第1処理剤希釈液の種類と含有量、第2処理剤希釈液の種類と含有量を、表7の「第1処理剤希釈液」欄、「第2処理剤希釈液」欄にそれぞれ示す。
【0132】
【0133】
試験区分12(2剤型の処理剤希釈液の評価)
得られた実施例2-1等の各例の処理剤希釈液を用いて、実施例1-1の処理剤と同様の方法にて制電性、ローラーカードウェブ均一性、抑泡性、親水性、及び乳液安定性について評価した。結果を表7の「制電性」欄、「ウェブ均一性」欄、「抑泡性」欄、「親水性」欄、「乳液安定性」欄にそれぞれ示す。
【0134】
上記表の結果から、本発明によれば、処理剤が付与された繊維の制電性、ローラーカードウェブ均一性、抑泡性、親水性をそれぞれ向上できる。また、処理剤希釈液の乳液安定性を向上できる。
【要約】
【課題】ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤を付与したポリエステル系短繊維の制電性と、ローラーカードウェブ均一性を向上させる。
【解決手段】ポリエステル系短繊維スパンレース用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体(A)、下記の脂肪酸誘導体(B)、及び有機リン酸エステル塩(C)を含有する。
脂肪酸誘導体(A):リノール酸、及びリノレン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
脂肪酸誘導体(B):オレイン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキサイド付加物。
【選択図】なし