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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】フィルター
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20241105BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C02F1/28 D
B01J20/20 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024524749
(86)(22)【出願日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2024002016
【審査請求日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2023009133
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】河内 昭典
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一臣
(72)【発明者】
【氏名】藤木 博規
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/032633(WO,A1)
【文献】特開2020-110801(JP,A)
【文献】国際公開第2022/255249(WO,A1)
【文献】特開2020-121288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/20-20/28
B01J 20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であり、細孔径1.0nm以下の細孔容積(cc/g)が0.15cc/g以上0.285cc/g以下であり、
前記フィルターは、被処理水中の含フッ素有機化合物を除去するために用いられる、フィルター。
【請求項2】
活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であり、細孔径1.0nm以下の細孔容積(cc/g)が0.15cc/g以上0.285cc/g以下であり、細孔径4.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.05cc/g以上0.13cc/g以下である、フィルター。
【請求項3】
活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であり、細孔径1.0nm以下の細孔容積(cc/g)が0.15cc/g以上0.285cc/g以下であり、細孔径1.0~1.5nmの範囲の細孔径の細孔容積(cc/g)が0.106cc/g以上0.20cc/g以下である、フィルター。
【請求項4】
活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であり、細孔径4.0nm以上の細孔容積(cc/g)が0.05cc/g以上0.13cc/g以下である、フィルター。
【請求項5】
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.0nm以下の細孔容積(cc/g)が0.15cc/g以上0.23cc/g以下である、請求項1~4のいずれかに記載のフィルター。
【請求項6】
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.65nm以下の細孔容積(cc/g)が0.015cc/g以上0.07cc/g以下である、請求項1~4のいずれかに記載のフィルター。
【請求項7】
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.0~1.5nmの範囲の細孔径の細孔容積(cc/g)が0.106cc/g以上0.20cc/g以下である、請求項1、2、又は4に記載のフィルター。
【請求項8】
下記方法で測定される、前記活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量が15L/cm3以上である、請求項1~4のいずれかに記載のフィルター。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2021(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水中のPFOS及びPFOAの合計水中濃度が0.00007mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とする。
【請求項9】
被処理水中の含フッ素有機化合物を除去するために用いられる、請求項2~4のいずれかに記載のフィルター。
【請求項10】
活性炭を含む活性炭成型体を含み、
前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であり、細孔径1.0nm以下の細孔容積(cc/g)が0.15cc/g以上0.285cc/g以下であるフィルターに、含フッ素有機化合物を含む被処理水を通水して、被処理水中の含フッ素有機化合物を除去する工程を含む、含フッ素有機化合物の除去方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれかに記載のフィルターに、含フッ素有機化合物を含む被処理水を通水して、被処理水中の含フッ素有機化合物を除去する工程を含む、含フッ素有機化合物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭を含む活性炭成型体を構成部材として含むフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水の水質に関する安全衛生上の関心が高まっており、種々の有害物質を除去することが望まれている。水質管理上、健康への悪影響が懸念される物質として、特に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に代表されるパーフルオロアルキルスルホン酸、及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)に代表されるパーフルオロアルキルカルボン酸が挙げられ、健康及び環境リスク低減のために飲用水等からこれらを除去する取り組みが世界的に始まっている。日本においては、PFOS及びPFOAは、浄水場における水質管理を適切に行う観点から、2020年4月1日からPFOSおよびPFOAの合計として50ng/Lの目標値(暫定)が設定されるとともに、「要検討項目」から「水質管理目標設定項目」へと位置づけが変更された(令和2年(2020年)3月30日付け生食発0330第1号厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知「水質基準に関する省令の一部改正等について(施行通知)」)。
【0003】
これまで、被処理水(処理対象となる水)から含フッ素有機化合物(パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物、以下、「PFAS」ともいう)を除去する技術として、活性炭を含むフィルターを用いる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ベンゼン吸着量が30~60%であり、ビタミンB12吸着量が50.0mg/g超であり、かつ、窒素吸着等温線からBJH法により算出したメソ孔の細孔容積が0.13~0.30cm3/gである、炭素質材料からなる含フッ素有機化合物除去材が開示されている。当該除去材は、浄水器用途でも使用できる、PFAS(PFOS、PFOA等)除去性能が高いものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2022/085550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、炭素質材料のメソ孔(細孔径が2~50nmの範囲である細孔)の細孔容積が0.130~0.30cm3/gの範囲であり、それによりPFASの吸着により適した炭素質材料となることが記載されている。しかし、本発明者等が検討したところ、ろ過において被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合(例えば、SVが2500h-1程度である場合)に、単にメソ孔の細孔容積を上記範囲とするのみでは、含フッ素有機化合物の除去性能が十分でない場合があることを知得した。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能に優れるフィルターを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題について検討した。ある文献には、PFASの分子サイズは2nm以下であると記載されている。このことからは、一見、細孔径1.0nm以下の細孔の容積を高くすることが有効だとも考えられる。しかし、本発明者等が検討を重ねた結果、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合(例えば、SVが2500h-1程度である場合)は、フィルターにおいて、細孔径が2nm以下の細孔の細孔容積を特定値以上としつつ、メソ孔の中でも特定の細孔径の範囲、すなわち細孔径が3.0~3.5nmである細孔を含むことが重要であること、及び細孔径が3.0~3.5nmである細孔の細孔容積を特定値以上となるよう制御することが重要であることを知得した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成した発明である。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上である、フィルター。
項2.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.65nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.015cc/g以上0.08cc/g以下である、項1に記載のフィルター。
項3.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.15cc/g以上0.35cc/g以下である、項1又は2に記載のフィルター。
項4.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.25cc/g以上0.5cc/g以下である、項1~3のいずれかに記載のフィルター。
項5.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以上の範囲の細孔径の細孔容積Cが0.05cc/g以上0.8cc/g以下である、項1~4のいずれかに記載のフィルター。
項6.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.65~0.8nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.05cc/g以上0.1cc/g以下である、項1~5のいずれかに記載のフィルター。
項7.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.8~1.0nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.05cc/g以上0.25cc/g以下である、項1~6のいずれかに記載のフィルター。
項8.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.0~1.5nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.08cc/g以上0.20cc/g以下である、項1~7のいずれかに記載のフィルター。
項9.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.3~1.5nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.001cc/g以上0.08cc/g以下である、項1~8のいずれかに記載のフィルター。
項10.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.5~2.0nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.001cc/g以上0.10cc/g以下である、項1~9のいずれかに記載のフィルター。
項11.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0~2.5nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.1cc/g以下である、項1~10のいずれかに記載のフィルター。
項12.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.15cc/g以下である、項1~11のいずれかに記載のフィルター。
項13.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径3.5~4.0nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.1cc/g以下である、項1~12のいずれかに記載のフィルター。
項14.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径3.0~4.0nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.01cc/g以上0.35cc/g以下である、項1~13のいずれかに記載のフィルター。
項15.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径4.0~4.5nmの範囲の細孔径の細孔容積が0.1cc/g以下である、項1~14のいずれかに記載のフィルター。
項16.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径4.0nm以上の範囲の細孔径の細孔容積が0.05cc/g以上0.13cc/g以下である、項1~15のいずれかに記載のフィルター。
項17.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tは、0.4cc/g以上1.2cc/g以下である、項1~16のいずれかに記載のフィルター。
項18.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)が、0.3~0.9である、項1~17のいずれかに記載のフィルター。
項19.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)が、0.02~0.25である、項1~18のいずれかに記載のフィルター。
項20.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の比(B/A)が、0.02~0.6である、項1~19のいずれかに記載のフィルター。
項21.前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以上の細孔容積C(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の比(B/C)が、0.15~0.4である、項1~20のいずれかに記載のフィルター。
項22.前記活性炭成型体は、メソ細孔容積率が10~70%である、項1~21のいずれかに記載のフィルター。
項23.前記活性炭成型体は、比表面積が700~1600m2/gである、項1~22のいずれかに記載のフィルター。
項24.下記方法で測定される、前記活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量が15L/cm3以上である、項1~23のいずれかに記載のフィルター。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2021(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水中のPFOS及びPFOAの合計水中濃度が0.00007mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とする。
項25.下記方法で測定される、前記活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量が、30L/g以上である、項1~24のいずれかに記載のフィルター。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2021(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水中のPFOS及びPFOAの合計水中濃度が0.00007mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の総重量で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量(L/g)とする。
項26.下記方法で測定される、前記活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量が4L/cm3以上である、項1~25のいずれかに記載のフィルター。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2022(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水中のPFOSおよびPFOAの合計水中濃度が0.00002mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とする。
項27.下記方法で測定される、前記活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量が、10L/g以上である、項1~26のいずれかに記載のフィルター。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2022(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水中のPFOSおよびPFOAの合計水中濃度が0.00002mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の総重量で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量(L/g)とする。
項28.被処理水中の含フッ素有機化合物を除去するために用いられる、項1~27のいずれかに記載のフィルター。
項29.前記被処理水は、水道水である、項28に記載のフィルター。
項30.前記含フッ素有機化合物は、パーフルオロオクタンスルホン酸及び/又はパーフルオロオクタン酸を含む、項28又は29に記載のフィルター。
項31.活性炭を含む活性炭成型体を含み、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であるフィルターに、含フッ素有機化合物を含む被処理水を通水して、被処理水中の含フッ素有機化合物を除去する工程を含む、含フッ素有機化合物の除去方法。
項32.空塔速度(SV)が2500h-1以上の条件下で被処理水を通水する、項31に記載の含フッ素有機化合物の除去方法。
項33.被処理水中の含フッ素有機化合物を除去するための、活性炭を含む活性炭成型体を含み、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であるフィルターの使用。
項34.含フッ素有機化合物除去フィルターの製造のための、活性炭を含み、かつQSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上である活性炭成型体の使用。
項35.項1~30のいずれかに記載のフィルターの製造方法であって、
少なくとも活性炭を含有するスラリーをネット上に流し、脱水し、乾燥して、シート状成型体を作製する工程を含む、フィルターの製造方法。
項36.項1~30のいずれかに記載のフィルターの製造方法であって、
少なくとも活性炭を含有するスラリー中に、表面に多数の吸引用小孔を有する芯体、両端部に着脱可能なフランジ、及び一方の端部に濾液排出口を有する成型用型枠を浸漬し、前記濾液排出口から前記吸引用小孔を通じて前記スラリーを吸引しながら濾過して、前記スラリーを前記芯体の表面に付着させてスラリー成型体を得て、得られたスラリー成型体を前記成型用型枠から取り出し、乾燥して、活性炭成型体を作製する工程を含む、フィルターの製造方法。
項37.項1~30のいずれかに記載のフィルターの製造方法であって、
少なくとも活性炭を含有するスラリー中に、表面に多数の吸引用小孔を有する芯体、前記芯体上に設けられた不織布コア、両端部に着脱可能なフランジ、及び一方の端部に濾液排出口を有する成型用型枠を浸漬し、前記濾液排出口から前記吸引用小孔を通じて前記スラリーを吸引しながら濾過して、前記スラリーを前記不織布コアの表面に付着させてスラリー成型体を得て、得られたスラリー成型体を前記成型用型枠から取り出し、乾燥して、不織布コアと活性炭成型体とを含む積層活性炭成型体を作製する工程を含む、フィルターの製造方法。
項38.スラリーは、バインダー繊維を含む、項35~37のいずれかに記載のフィルターの製造方法。
項39.スラリー中の活性炭の含有量は、固形分全体に対して、60質量%以上である、項35~38のいずれかに記載のフィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルターは、活性炭を含む活性炭成型体を構成部材として含んでおり、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であることから、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合(例えば、SVが2500h-1程度である場合)においても、含フッ素有機化合物の除去性能に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出されるlog微分細孔容積分布を示すグラフである。
図2】実施例2のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出されるlog微分細孔容積分布を示すグラフである。
図3】実施例3のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出されるlog微分細孔容積分布を示すグラフである。
図4】比較例1のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出されるlog微分細孔容積分布を示すグラフである。
図5】比較例2のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出されるlog微分細孔容積分布を示すグラフである。
図6】実施例1のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出される積算細孔容積分布を示すグラフである。
図7】実施例2のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出される積算細孔容積分布を示すグラフである。
図8】実施例3のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出される積算細孔容積分布を示すグラフである。
図9】比較例1のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出される積算細孔容積分布を示すグラフである。
図10】比較例2のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出される積算細孔容積分布を示すグラフである。
図11】スラリー吸引法で使用される成型用型枠の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルターは、活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上である。以下、本発明のフィルターについて詳しく説明する。
【0012】
<活性炭成型体の物性>
本発明において、活性炭成型体の特定の細孔径範囲の細孔容積は、QSDFT法によって算出されるものである。QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔容積分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔容積分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB6」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔容積分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔容積分布を計算することで、活性炭成型体の特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。
【0013】
当初、本発明者等の検討によれば、PFOA等の含フッ素有機化合物は、その分子サイズから細孔径が2.0nm以下のミクロ細孔に吸着しやすいと考えられた。しかしながら、本発明者等は、大きな空塔速度(SV)の条件下において含フッ素有機化合物分子のろ過を検討する場合には、含フッ素有機化合物分子が細孔内に拡散する速度も重要な要素であると考えた。そして、本発明者らは、これらの観点から検討を重ね、フィルターを構成する活性炭成型体の細孔径及びその細孔容積を制御し、細孔径が2.0nm以下の細孔の細孔容積を特定範囲のものとし、且つ細孔内への拡散に寄与する細孔として細孔径が3.0nm以上3.5nm以下の細孔の細孔容積を特定範囲のものとすることで、大きな空塔速度(SV)の条件下においても、優れた含フッ素有機化合物の除去性能を有するフィルターが得られることを見出したのである。
【0014】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、0.35cc/g以上0.80cc/g以下が好ましく、0.35cc/g以上0.660cc/g以下がより好ましい。
【0015】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であり、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、0.04cc/g以上0.30cc/g以下が好ましく、0.15cc/g以上0.25cc/g以下がより好ましい。
【0016】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.65nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は0.015cc/g以上0.08cc/g以下が好ましく、0.04cc/g以上0.07cc/g以下がより好ましい。
【0017】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は0.15cc/g以上0.35cc/g以下が好ましく、0.18cc/g以上0.23cc/g以下がより好ましい。
【0018】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は0.25cc/g以上0.5cc/g以下が好ましく、0.27cc/g以上0.35cc/g以下がより好ましい。
【0019】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以上の範囲の細孔径の細孔容積Cは0.05cc/g以上0.8cc/g以下が好ましく、0.2cc/g以上0.6cc/g以下がより好ましい。
【0020】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.65~0.8nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.05cc/g以上0.1cc/g以下が好ましく、0.055cc/g以上0.063cc/g以下がより好ましい。
【0021】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径0.8~1.0nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.05cc/g以上0.25cc/g以下が好ましく、0.06cc/g以上0.10cc/g以下がより好ましい。
【0022】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.0~1.5nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.08cc/g以上0.20cc/g以下が好ましく、0.08cc/g以上0.16cc/g以下がより好ましい。
【0023】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.3~1.5nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.001cc/g以上0.08cc/g以下が好ましく、0.02cc/g以上0.07cc/g以下がより好ましく、0.02cc/g以上0.04cc/g以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径1.5~2.0nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.001cc/g以上0.10cc/g以下が好ましく、0.05cc/g以上0.10cc/g以下がより好ましい。
【0025】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0~2.5nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.1cc/g以下が好ましく、0.02cc/g以上0.09cc/g以下がより好ましく、0.06cc/g以上0.09cc/g以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.5~3.0nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.15cc/g以下が好ましく、0.02cc/g以上0.13cc/g以下がより好ましく、0.10cc/g以上0.13cc/g以下がさらに好ましい。
【0027】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径3.5~4.0nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.1cc/g以下が好ましく、0.02cc/g以上0.10cc/g以下がより好ましく、0.06cc/g以上0.10cc/g以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径3.0~4.0nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.01cc/g以上0.35cc/g以下が好ましく、0.07cc/g以上0.30cc/g以下がより好ましく、0.23cc/g以上0.30cc/g以下がさらに好ましい。
【0029】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径4.0~4.5nmの範囲の細孔径の細孔容積は0.1cc/g以下が好ましく、0.03cc/g以下がより好ましい。
【0030】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径4.0nm以上の範囲の細孔径の細孔容積は0.05cc/g以上0.13cc/g以下が好ましく、0.09cc/g以上0.12cc/g以下がより好ましい。
【0031】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される全細孔容積Tは、0.4cc/g以上1.2cc/g以下が好ましく、0.6cc/g以上1.1cc/g以下がより好ましく、0.85cc/g以上1.1cc/g以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)の割合(A/T)は、0.3~0.9が好ましく、0.35~0.7がより好ましく、0.35~0.45がさらに好ましい。
【0033】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の割合(B/T)は、0.02~0.25が好ましく、0.08~0.25がより好ましく、0.17~0.25がさらに好ましい。
【0034】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の比(B/A)は、0.02~0.6が好ましく、0.1~0.6がより好ましく、0.4~0.6がさらに好ましい。
【0035】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以上の細孔容積C(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)の比(B/C)は、0.15~0.4が好ましく、0.24~0.4がより好ましく、0.32~0.38がさらに好ましい。
【0036】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能により優れたものとしやすくする観点から、メソ細孔容積率が10~70%が好ましく、30~70%がより好ましく、50~70%がさらに好ましい。なお、本発明において、メソ細孔容積率は、下記式により算出される値である。
(式)・・・(メソ細孔容積率(%))=((QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g))-(QSDFT法によって算出される細孔容積のうち細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)))/(QSDFT法によって算出される全細孔容積T(cc/g)×100
【0037】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、前述した細孔分布を得やすくする観点から、比表面積が700~1600m2/gであることが好ましく、900~1400m2/gがより好ましく、1000~1300m2/gがさらに好ましい。ここで、活性炭成型体の比表面積は、77.4Kにおいて窒素吸着等温線に基づいて算出される値である。具体的には、次のようにして窒素吸着等温線を作成する。測定する活性炭成型体のサンプルを77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して容量法により窒素ガスの吸着量V[cc/g]を測定する。このとき、導入する窒素ガスの圧力P[hPa]を徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P0[hPa]で除した値を相対圧力P/P0として、各相対圧力に対する吸着量をプロットすることにより窒素吸着等温線を作成する。窒素ガスの吸着量は、市販の自動ガス吸着量測定装置(例えば、商品名「AUTOSORB6」(QUANTACHROME製)など)を用いて実施できる。本発明では、窒素吸着等温線に基づき、BET法に従って比表面積を求める。この解析は、上記装置に付属する解析プログラム等の公知の手段を用いることができる。
【0038】
<活性炭成型体の含有成分>
(活性炭)
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、少なくとも活性炭を含む。活性炭の形態は特に限定されないが、例えば、粒状活性炭、粉末状活性炭、及び繊維状活性炭等が挙げられる。これらの活性炭は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
活性炭としては、前記物性の活性炭成型体が得られることを限度として、特に制限されない。前述した活性炭成型体の細孔径及びその細孔容積、メソ細孔容積率、並びに比表面積は、基本的に、原料である活性炭の細孔径及びその細孔容積、メソ細孔容積率、並びに比表面積に由来するため、原料である活性炭の細孔径及びその細孔容積、メソ細孔容積率、並びに比表面積を適宜調整することにより、前述した物性を有する活性炭成型体を得ることができる。また、細孔径及びその細孔容積等が異なる2種以上の活性炭を組み合わせて用いることにより、活性炭成型体の物性を目的とする値に調整してもよい。活性炭の細孔径及びその細孔容積、メソ細孔容積率、並びに比表面積は、活性炭を製造する際の賦活条件(賦活温度、賦活ガス等)を適宜調整することにより、目的とする値に調整することができる。活性炭の細孔径及びその細孔容積、メソ細孔容積率、並びに比表面積は、前述の<活性炭成型体の物性>の欄で記載した方法と同様の方法で測定することができる。また、前述した物性を有する活性炭成型体を得るための市販の活性炭としては、例えば、株式会社アドール製の商品名「W-15W」(繊維状活性炭)、大阪ガスケミカル株式会社製の商品名「TC-100N」(粒状活性炭)などが挙げられる。
【0040】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の含有割合としては、特に制限されないが、通常60質量%程度以上であり、前述した物性を有する活性炭成型体を得やすくする観点、及び含フッ素有機化合物の除去性能を向上させる観点から、好ましくは60~98質量%、より好ましくは70~98質量%が挙げられる。
【0041】
(バインダー繊維)
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、バインダー繊維を含んでもよい。バインダー繊維とは、活性炭と一体化されることにより、活性炭を絡めてフィルター状に賦形するものである。バインダー繊維としては、例えば、熱融着性繊維、及びパルプ等が挙げられる。
【0042】
熱融着性繊維とは、加熱によって融着特性を示す繊維である。熱融着性繊維に含まれる熱融着性成分としては、融点が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等の共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。また、熱融着性繊維として、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性繊維が挙げられる。中でも、活性炭成型体の強度をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維が好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維において、芯部成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の熱融着性成分の融点よりも20℃以上高い合成樹脂が挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。前記鞘部の熱融着性成分としては、例えば、イソフタル酸が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。熱融着性繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
熱融着性繊維の繊度については、特に制限されないが、例えば、0.5~5.0dtex程度、好ましくは1.0~3.0dtexが挙げられる。本発明において、熱融着性繊維の繊度は、JIS L 1015:2021(化学繊維ステープル試験方法)の「8.5.1 正量繊度」に規定されている「A法」に基づいて測定して得られる値(5回の平均値)である。
【0044】
熱融着性繊維の繊維長については、特に制限されないが、例えば、10~100mm程度、好ましくは30~70mmが挙げられる。本発明において、熱融着性繊維の繊維長は、JIS L 1015:2021(化学繊維ステープル試験方法)の「8.4.1 平均繊維長」に規定されている「直接法(C法)」に基づいて測定して得られる値(200本の平均値)である。
【0045】
熱融着性繊維の繊維径については、特に制限されないが、例えば、1~20μm程度、好ましくは5~15μmが挙げられる。本発明において、熱融着性繊維の繊維径は、熱融着性繊維の断面を顕微鏡で観察し、その長さを測定して得られる値である。
【0046】
パルプは、活性炭成型体において、機械的強度をより向上させるのに寄与する。パルプの濾水度は特に制限されないが、好ましくは1~300ml、より好ましくは10~200mlである。本発明において、パルプの濾水度は、JIS P 8121-2:2012(パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法)に基づいて測定して得られる値(2回の測定結果の平均値)である。パルプの繊維長は特に制限されないが、好ましくは0.1~3mmである。パルプとしては、例えば、アクリル系パルプ、ポリオレフィン系パルプ、アラミド系パルプ、木質パルプ、麻パルプ等が挙げられる。
【0047】
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体に含まれるバインダー繊維の含有量は、活性炭成型体の細孔容積、メソ細孔容積率、及び比表面積に影響を及ぼすため、活性炭成型体の細孔容積、メソ細孔容積率、及び比表面積が目的の値になるように適宜調整する必要がある。本発明のフィルターを構成する活性炭成型体に含まれるバインダー繊維の合計含有割合は、活性炭成型体の細孔容積、メソ細孔容積率、及び比表面積を目的の値に調整しやすくするために、通常40質量%程度以下であり、前述した物性を有する活性炭成型体をより得やすくする観点、活性炭成型体の機械的強度を向上させる観点、及び含フッ素有機化合物の除去性能を向上させる観点から、好ましくは2~35質量%、より好ましくは3~30質量%である。また、活性炭成型体が熱融着性繊維を含有する場合、熱融着性繊維の含有割合は、例えば、1~30質量%程度であり、前記観点から、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%、より好ましくは10~20質量%である。また、活性炭成型体がパルプを含有する場合、パルプの含有割合は、例えば、1~20質量%程度であり、前記観点から、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~10質量%である。
【0048】
(その他の成分)
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体は、前記活性炭及び前記バインダー繊維以外に、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、鉛を除去し得る成分等が挙げられる。鉛を除去し得る成分としては、イオン交換繊維、イオン交換樹脂、キレート繊維、キレート樹脂、ケイ酸チタニウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明のフィルターを構成する活性炭成型体に含まれるその他の成分の含有割合としては、特に制限されないが、通常5質量%程度以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0049】
<活性炭成型体の製造方法>
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体の製造方法としては、特に制限されず、前記活性炭と、必要により前記バインダー繊維及び/又はその他の成分を用いて、公知の方法を適用することができる。本発明のフィルターを構成する活性炭成型体の製造方法としては、例えば、湿式法、乾式法、及びスラリー吸引法などが挙げられる。
【0050】
湿式法によってシート状の活性炭成型体を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、次のような方法が挙げられる。先ず、活性炭、及び必要に応じて配合されるバインダー繊維及び/又はその他の成分を、パルパー、ビーター、リファイナー等の装置を用いて混合、せん断し、均一に水に分散したスラリーを作製する。スラリー中の活性炭の含有量は、前述した物性を有する活性炭成型体を得やすくする観点から、固形分(水以外の成分)全体に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは60~98質量%、さらに好ましくは70~98質量%である。得られたスラリーを所定の流量でネット(ワイヤー)上に流し、脱水することで坪量を調整する。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取る等の公知の技術でシート(不織布)状に成型し、シート状成型体である活性炭成型体を得る。シート状成型体の厚さは、熱プレスローラー等で所望の厚さに調整することができる。また、円筒状の活性炭成型体は、例えば、湿式法によって作製したシート状成型体を、円筒状の芯に所定の厚さとなるように複数回捲回し、その状態で熱処理し、冷却し、その後、芯を除去することにより得ることができる。円筒状の活性炭成型体を作製する場合、繊維状活性炭を含むことが好ましく、また、バインダー繊維として熱融着性短繊維を含むことが好ましい。
【0051】
乾式法によってシート状の活性炭成型体を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、活性炭、及び必要に応じて配合されるバインダー繊維及び/又はその他の成分を用いて、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により短繊維構造体のシート(不織布)状に成型し、シート状成型体である活性炭成型体を得る方法、及び当該シート状成型体にニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチシート(ニードルパンチ不織布)状に成型し、積層シート状成型体である活性炭成型体を得る方法などが挙げられる。また、円筒状の活性炭成型体は、例えば、乾式法によって作製したシート状成型体又は積層シート状成型体を、円筒状の芯に所定の厚さとなるように複数回捲回し、その状態で熱処理し、冷却し、その後、芯を除去することにより得ることができる。円筒状の活性炭成型体を作製する場合、繊維状活性炭を含むことが好ましく、また、バインダー繊維として熱融着性短繊維を含むことが好ましい。
【0052】
スラリー吸引法によって活性炭成型体を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、活性炭、及び必要に応じて配合されるバインダー繊維及び/又はその他の成分を水と混合してスラリーを得る。スラリー中の活性炭の含有量は、前述した物性を有する活性炭成型体を得やすくする観点から、固形分(水以外の成分)全体に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは60~98質量%、さらに好ましくは70~98質量%である。次に、スラリー中に成型用型枠を浸漬する。成型用型枠1としては、例えば、図11に示すような、円筒状の芯体2の表面に多数の吸引用小孔3を有し、両端に着脱可能なフランジ4、4’を有し、一方の端部に濾液排出口5が設けられているものが挙げられる。そして、吸引ポンプ等を用いて濾液排出口5から吸引用小孔3を通じてスラリーを吸引しながら濾過することで、スラリーを芯体2の表面に付着させて、スラリー成型体を得る。得られたスラリー成型体を乾燥させることにより、活性炭成型体が得られる。または、芯体2に、後述する円筒状の不織布コアをセットし、前記と同様の方法でスラリーを不織布コアの表面に付着させて、不織布コアと活性炭層(活性炭成型体となる層)が一体になったスラリー成型体を得てもよい。得られたスラリー成型体を乾燥させることにより、不織布コアと活性炭成型体が一体になった積層活性炭成型体が得られる。得られる活性炭成型体、及び積層活性炭成型体としては、例えば、活性炭が、パルプ等のバインダー繊維と絡み合うことにより形状保持されるものが挙げられる。スラリー成型体は、必要に応じて、加熱処理、圧縮処理に供してもよい。また、スラリー吸引法においては、活性炭成型体の形状は、成型用型枠又は不織布コアの形状に対応する形状となるため、成型用型枠又は不織布コアの形状を変更することにより、活性炭成型体の形状を種々の形状とすることができる。
【0053】
<活性炭成型体の形態>
本発明のフィルターを構成する活性炭成型体の形態としては、特に制限されないが、例えば、シート状、ディスク状、円柱状、及び円筒状が挙げられ、好ましくは円筒状である。
【0054】
活性炭成型体が円筒状である場合、活性炭成型体の高さとしては、特に制限されないが、例えば、10~250mmが挙げられ、好ましくは20~100mmが挙げられる。また、活性炭成型体の外径としては、特に制限されないが、例えば、10~50mmが挙げられ、好ましくは20~45mmが挙げられる。また、活性炭成型体の内径としては、特に制限されないが、例えば、5~30mmが挙げられ、好ましくは10~20mmが挙げられる。また、活性炭成型体の厚さとしては、特に制限されないが、例えば、5~45mmが挙げられ、好ましくは10~35mmが挙げられる。また、活性炭成型体の体積としては、例えば、1~500cm3が挙げられ、好ましくは10~100cm3が挙げられ、より好ましくは10~50cm3が挙げられる。
【0055】
<フィルターの構成部材>
本発明のフィルターは、少なくとも前記活性炭成型体を含むものである。前記活性炭成型体が円筒状である場合、円筒状コアを含んでいてもよい。円筒状コアは、被処理水を通水可能な細孔を有しており、芯部材としてフィルターの強度を高める役割を果たし、また、活性炭成型体からの炭塵の脱落を低減する役割を果たすものである。
【0056】
円筒状コアの材質としては特に制限されず、公知のものが使用でき、例えば、多孔質セラミック、多孔質金属フィルター、不織布等が挙げられる。また、樹脂、金属等を原料として、細孔を持つ部材を円筒状に成型した円筒状コアを使用してもよい。これらの中でも、不織布コアが好ましく、不織布を圧縮成型して得られたものがより好ましい。また、不織布コアは、活性炭成型体と一体化して、積層活性炭成型体の一部を構成してもよい。不織布を構成する繊維材料としては、特に制限されないが、例えば、合成繊維が挙げられ、ポリエステル繊維が好ましく挙げられる。また、円筒状コアは、活性炭を含まないものとすることができる。
【0057】
円筒状の不織布コアとしては、例えば、熱融着性短繊維を含む不織布が捲回されてなり、該熱融着性短繊維の熱融着性成分の少なくとも一部が他の熱融着性短繊維と熱融着した状態で含まれる成型体が挙げられる。不織布コアをかかる構成とすることにより、熱融着性短繊維が3次元にランダムに配列し、さらに熱融着性繊維に熱処理を加えることで熱融着性繊維は比較的硬い状態で、かつ繊維軸方向が一部厚さ方向に配向した状態で不織布内に存在することとなる結果、流量の低減を抑制させやすくなる。熱融着性短繊維における熱融着性成分としては、融点(融点が存在しないものは軟化点、以下同じ。)が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等の共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、親水性が比較的高く、水なじみ性がより良好となることで、流量がより向上するという観点から、熱融着性成分はポリエステル系が好ましく、イソフタル酸が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。なお、本発明において、融点とは、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とする。熱融着性短繊維は、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性短繊維が挙げられる。中でも、フィルターの強度をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維が好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維において、芯部成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の熱融着性成分の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられる。前記合成樹脂成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。前記鞘部の熱融着性成分としては、例えば、イソフタル酸が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。熱融着性短繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明のフィルターは、活性炭成型体に積層されたカバー層を備えることができる。カバー層は、被処理水を通水可能な細孔を有しており、活性炭成型体からの炭塵の脱落を低減する役割を果たす。活性炭成型体が円筒状の場合は、円筒の外周面及び/又は内周面を覆うカバー層を備えることができる。カバー層としては、特に制限されないが、織物、編物、不織布等の布が好ましく挙げられ、不織布が好ましく挙げられる。中でも、引裂強度が比較的高く、取り扱い性や加工性がより優れるという観点から、長繊維又は連続繊維からなる不織布が好ましい。
【0059】
本発明のフィルターは、活性炭成型体を円筒状とする場合、円筒の上面及び下面を覆うエンドキャップを備えることができる。エンドキャップとしては特に制限されず、例えばステンレス、ゴム、樹脂などの、長期の通水に耐え得るものが挙げられる。エンドキャップの接着には、ウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着剤などの、長期の通水の際の耐久性を有し、かつ樹脂単独でフィルターの端面のシール性が高いものが挙げられる。
【0060】
<フィルターの物性>
本発明のフィルターは、活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、前記活性炭成型体のQSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であることから、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能に優れるものである。
【0061】
本発明のフィルターが備える含フッ素有機化合物の除去性能としては、下記方法で測定される、前記活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)が、好ましくは15L/cm3以上が挙げられ、より好ましくは20L/cm3以上が挙げられ、さらに好ましくは40L/cm3以上が挙げられる。上限値としては特に制限されないが、例えば80L/cm3が挙げられ、また60L/cm3が挙げられる。
【0062】
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2021(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水(フィルターを通過した水)中のPFOS及びPFOAの合計水中濃度が0.00007mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とする。
【0063】
また、本発明のフィルターが備える含フッ素有機化合物の除去性能としては、下記方法で測定される、前記活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量が、好ましくは30L/g以上が挙げられ、より好ましくは100L/g以上が挙げられ、さらに好ましくは150L/g以上が挙げられる。上限値としては特に制限されないが、例えば300L/gが挙げられ、また250L/gが挙げられる。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2021に準じて測定される、本発明のフィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)の測定方法と同様にして、流出水中のPFOSおよびPFOAの合計水中濃度が0.00007mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の総重量で割った値を、本発明のフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量(L/g)とする。
【0064】
また、本発明のフィルターが備える含フッ素有機化合物の除去性能としては、下記方法で測定される、前記活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)が、好ましくは4L/cm3以上が挙げられ、より好ましくは6L/cm3以上が挙げられ、さらに好ましくは20L/cm3以上が挙げられる。上限値としては特に制限されないが、例えば60L/cm3が挙げられ、また50L/cm3が挙げられる。
【0065】
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2022(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じて、以下の方法で測定する。前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填する。活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とする。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水し、フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定する。流出水(フィルターを通過した水)中のPFOSおよびPFOAの合計水中濃度が0.00002mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とする。
【0066】
また、本発明のフィルターが備える含フッ素有機化合物の除去性能としては、下記方法で測定される、前記活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量が、好ましくは10L/g以上が挙げられ、より好ましくは30L/g以上が挙げられ、さらに好ましくは100L/g以上が挙げられる。上限値としては特に制限されないが、例えば250L/gが挙げられ、また200L/gが挙げられる。
<測定方法>
NSF/ANSI 53-2022に準じて測定される、本発明のフィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)の測定方法と同様にして、流出水中のPFOSおよびPFOAの合計水中濃度が0.00002mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求める。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の総重量で割った値を、本発明のフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量(L/g)とする。
【0067】
前記測定方法において、活性炭フィルター及び中空糸膜としては市販のものを使用すればよい。また、TOC計としては、例えば、株式会社島津製作所製の商品名TOC-5000が挙げられる。
【0068】
<フィルターの用途等>
本発明のフィルターは、被処理水中に含まれる種々の有害物質、特にPFASを除去するための浄水フィルターとして使用される。被処理水としては、水道水、工場排水、及び生活排水などが挙げられ、好ましくは水道水である。PFASとしては、例えば、PFOA、及びPFOSの他、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、パーフルオロカルボン酸類(PFCAs)、パーフルオロヘキサン酸(PFHxA)、パーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)等が挙げられる。本発明のフィルターは、特にPFOS及びPFOAの除去性能に優れるため、PFOS及び/又はPFOAを含む被処理水から、PFOS及び/又はPFOAを除去するために好適に用いられる。
【0069】
本発明のフィルターは、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合、例えば、SVが2500h-1以上、3000h-1以上、あるいは3500h-1以上の条件においても、PFASの除去性能に優れるものである。
【0070】
本発明の含フッ素有機化合物の除去方法は、活性炭を含む活性炭成型体を含み、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であるフィルターに、含フッ素有機化合物を含む被処理水を通水して、被処理水中の含フッ素有機化合物を除去する工程を含むことを特徴とする。前記被処理水は、水道水であることが好ましい。また、前記含フッ素有機化合物は、パーフルオロオクタンスルホン酸及び/又はパーフルオロオクタン酸を含むことが好ましい。
【0071】
また、本発明は、被処理水中の含フッ素有機化合物を除去するための、活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターの使用であって、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であることを特徴とする。
【0072】
また、本発明は、含フッ素有機化合物除去フィルターの製造のための、活性炭成型体の使用であって、前記活性炭成型体は、活性炭を含み、かつQSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であることを特徴とする。
【0073】
また、前記の本発明の含フッ素有機化合物の除去方法及び本発明のフィルターの使用において、被処理水の空塔速度(活性炭成型体の体積に対する流量)としては、2500h-1以上とすることができる。
【実施例
【0074】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0075】
<実施例1>
1.活性炭成型体の原材料の準備
活性炭成型体を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・繊維状活性炭A(株式会社アドール製商品名「W-15W」)
・繊維状活性炭B(株式会社アドール製商品名「A-15」)
・熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)
・パルプ(日本エクスラン工業株式会社製商品名ビィパル(登録商標)、フィブリル化されたアクリル繊維、濾水度:50ml)
【0076】
2.活性炭成型体となる不織布の製造
上記準備した各原材料を、活性炭成型体中の各原材料の質量比が表1のようになるようにしてパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取った。その後、熱プレスローラーでシートを110℃で熱プレスし、活性炭を含む湿式不織布を得た。
【0077】
3.活性炭成型体の製造
芯として外径が10mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、作製した活性炭を含む湿式不織布を、所定の厚さとなるように複数回捲回した。そして、湿式不織布を捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で60mmの長さにカットし、活性炭成型体を得た。なお、得られた活性炭成型体の高さ(長さ)は60mm、外径は30mm、内径は10mm、質量は10.3g、活性炭成型体に含まれる活性炭の質量は7.5gであった。
【0078】
<実施例2>
1.活性炭成型体の原材料の準備
活性炭成型体を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・繊維状活性炭A(株式会社アドール製商品名「W-15W」)
・パルプ(日本エクスラン工業株式会社製商品名ビィパル(登録商標)、フィブリル化されたアクリル繊維、濾水度:50ml)
【0079】
2.不織布コアの製造
熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)をカーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度170℃で熱プレス処理、冷却することにより、不織布を得た。次に、芯として外径が10mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、上記不織布を、不織布コアの外径が12mmとなるように所定の厚さとなるように複数回捲回し、炉に入れ、雰囲気温度150℃で1時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で56mmの長さにカットし、不織布コアを得た。得られた不織布コアは、内径が10mm、外径が12mm、見かけ密度が0.35g/cm3であった。
【0080】
3.積層活性炭成型体の製造
上記準備した原材料を活性炭成型体中の各原材料の質量比が表1のようになるようにして水に分散させてスラリーを得た。図11に示す成型用型枠1の芯体2に作製した不織布コアをセットし、スラリー中に当該成型用型枠を浸漬した。そして、吸引ポンプを用いて濾液排出口5から吸引用小孔3を通じてスラリーを吸引しながら濾過することで、スラリーを不織布コアの表面に付着させて、不織布コアと活性炭層(活性炭成型体となる層)が一体になったスラリー成型体を得た。得られたスラリー成型体を成型用型枠から引き抜き、スラリー成型体を120℃の乾燥炉で15時間乾燥させて、外径30mm、内径12mm、長さ56mmの円筒状の積層活性炭成型体(不織布コアと活性炭成型体との積層体)を得た。得られた活性炭成型体の質量は9.9g、活性炭成型体に含まれる活性炭の質量は9.4gであった。
【0081】
<実施例3>
1.活性炭成型体の原材料の準備
活性炭成型体を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・粒状活性炭C(大阪ガスケミカル株式会社製商品名「TC-100N」)
・パルプ(日本エクスラン工業株式会社製商品名ビィパル(登録商標)、フィブリル化されたアクリル繊維、濾水度:50ml)
【0082】
2.不織布コアの製造
熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)をカーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度170℃で熱プレス処理、冷却することにより、不織布を得た。次に、芯として外径が10mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、上記不織布を、不織布コアの外径が12mmとなるように所定の厚さとなるように複数回捲回し、炉に入れ、雰囲気温度150℃で1時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で30mmの長さにカットし、不織布コアを得た。得られた不織布コアは、内径が10mm、外径が12mm、見かけ密度が0.35g/cm3であった。
【0083】
3.積層活性炭成型体の製造
上記準備した原材料を活性炭成型体中の各原材料の質量比が表1のようになるようにして水に分散させてスラリーを得た。図11に示す成型用型枠1の芯体2に作製した不織布コアをセットし、スラリー中に当該成型用型枠を浸漬した。そして、吸引ポンプを用いて濾液排出口5から吸引用小孔3を通じてスラリーを吸引しながら濾過することで、スラリーを不織布コアの表面に付着させて、不織布コアと活性炭層(活性炭成型体となる層)が一体になったスラリー成型体を得た。得られたスラリー成型体を成型用型枠から引き抜き、スラリー成型体を120℃の乾燥炉で15時間乾燥させて、外径40mm、内径12mm、長さ30mmの円筒状の積層活性炭成型体(不織布コアと活性炭成型体との積層体)を得た。得られた活性炭成型体の質量は15.0g、活性炭成型体に含まれる活性炭の質量は13.8gであった。
【0084】
<比較例1>
1.活性炭成型体の原材料の準備
活性炭成型体を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・繊維状活性炭D(株式会社アドール製商品名「A-7」)
・粒状活性炭E(株式会社キャタラー製商品名「FM-150」)
・熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)
・パルプ(日本エクスラン工業株式会社製商品名ビィパル(登録商標)、フィブリル化されたアクリル繊維、濾水度:50ml)
【0085】
2.活性炭成型体となる不織布の製造
上記準備した各原材料を、活性炭成型体中の各原材料の質量比が表1のようになるようにしてパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取った。その後、熱プレスローラーでシートを110℃で熱プレスし、活性炭を含む湿式不織布を得た。
【0086】
3.活性炭成型体の製造
芯として外径が10mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、作製した活性炭を含む湿式不織布を、所定の厚さとなるように複数回捲回した。そして、湿式不織布を捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で60mmの長さにカットし、活性炭成型体を得た。なお、得られた活性炭成型体の高さ(長さ)は60mm、外径は30mm、内径は10mm、質量は13.8g、活性炭成型体に含まれる活性炭の質量は10.5gであった。
【0087】
<比較例2>
1.活性炭成型体の原材料の準備
活性炭成型体を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・繊維状活性炭B(株式会社アドール製商品名「A-15」)
・熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に、配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)
【0088】
2.活性炭成型体とする不織布の製造
上記準備した各原材料を、カーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度163℃で熱処理、冷却することにより、ニードルパンチ不織布を得た。
【0089】
3.活性炭成型体の製造
芯として外径が10mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、作製した活性炭を含むニードルパンチ不織布を、所定の厚さとなるように複数回捲回した。そして、ニードルパンチ不織布を捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で60mmの長さにカットし、活性炭成型体を得た。なお、得られた活性炭成型体の高さ(長さ)は60mm、外径は33mm、内径は10mm、質量は9.6g、活性炭成型体に含まれる活性炭の質量は7.9gであった。
【0090】
<物性の測定>
1.活性炭成型体の細孔容積及び比表面積
得られた活性炭成型体の長さ方向中心部において、質量0.1gとなるように測定サンプルを採取した。採取した測定サンプルを用いて、Quantachrome社製「AUTOSORB-6」を用いて77Kにおける窒素吸着等温線より測定した。比表面積はBET法によって相対圧0.1の測定点から計算した。全細孔容積及び表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、測定した窒素脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔容積分布を計算することで、解析した。具体的に、表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、図6~10に示した積算細孔容積分布を示すグラフの読み取り値又は該読み取り値から計算される値である。より具体的に、細孔径0.65nm以下の細孔容積は、積算細孔容積分布図の横軸Pore Widthが0.65nmにおけるCumulative Pore Volume(cc/g)の読み取り値である。同様にして、細孔径0.8nm以下の細孔容積、細孔径1.0nm以下の細孔容積、細孔径1.3nm以下の細孔容積、細孔径1.5nm以下の細孔容積、細孔径2.0nm以下の細孔容積、細孔径2.5nm以下の細孔容積、細孔径3.0nm以下の細孔容積、細孔径3.5nm以下の細孔容積、細孔径4.0nm以下の細孔容積、細孔径5.0nm以下の細孔容積、細孔径5.5nm以下の細孔容積、を得た。細孔径2.0nm以上の細孔容積は、QSDFT法により得られる全細孔容積から上記細孔径2.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径2.0nm以上2.5nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径2.5nm以下の細孔容積から上記細孔径2.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径2.5nm以上3.0nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径3.0nm以下の細孔容積から上記細孔径2.5nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径3.0nm以上3.5nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径3.5nm以下の細孔容積から上記細孔径3.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径3.5nm以上4.0nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径4.0nm以下の細孔容積から上記細孔径3.5nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径4.0nm以上4.5nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径4.5nm以下の細孔容積から上記細孔径4.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径4.0nm以上の範囲の細孔容積は、QSDFT法により得られる全細孔容積から上記細孔径4.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径0.65nm以上0.8nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径0.8nm以下の細孔容積から上記細孔径0.65nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径0.8nm以上1.0nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径1.0nm以下の細孔容積から上記細孔径0.8nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径1.0nm以上1.5nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径1.5nm以下の細孔容積から上記細孔径1.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径1.3nm以上1.5nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径1.5nm以下の細孔容積から上記細孔径1.3nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径1.5nm以上2.0nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径2.0nm以下の細孔容積から上記細孔径1.5nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。
【0091】
2.フィルターが備える含フッ素有機化合物の除去性能
(1)NSF/ANSI 53-2021(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じた測定
まず、前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填した。次に、市販の活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計(株式会社島津製作所製TOC-5000)で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とした。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水をおこなった。フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定した(厚生労働省「水質管理目標設定項目の検査方法(平成15年10月10日付け健水発第1010001号)、目標31 ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)」に基づいて測定した。)。流出水(フィルターを通過した水)中のPFOS及びPFOAの合計水中濃度が0.00007mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求めた。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とした。また、得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の総重量で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量(L/g)とした。なお、含フッ素有機化合物の除去性能の測定において、空塔速度は、実施例1が3183h-1、実施例2が3609h-1、実施例3が3498h-1、比較例1が3183h-1、比較例2が2574h-1であった。
【0092】
(2)NSF/ANSI 53-2022(DRINKING WATER TREATMENT UNITS-HEALTH EFFECTS、米国ミシガン州に拠点を置くNSFインターナショナルによる規格)に準じた測定
まず、前記フィルターをステンレス製ハウジングに装填した。次に、市販の活性炭フィルターと中空糸膜によって、全有機物濃度(TOC)(TOC計(株式会社島津製作所製TOC-5000)で測定される、炭素(C)に換算された有機物濃度)を0.5mg/L以下とした水道水に、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)を、PFOAの濃度が0.0005±0.00005mg/L、PFOSの濃度が0.001±0.00010mg/Lとなるように添加したもの(pH=7.5±0.5、温度20±2.5℃、硫酸イオン200±40mg/L、塩化物イオン100±20mg/L、アルカリ度200±40mg/L、濁度1NTU未満)を調整原水とした。前記ステンレス製ハウジングに装填したフィルターに、前記調整原水をろ過流量2L/分で連続通水をおこなった。フィルター通過前後でのPFOS及びPFOAの濃度を固相抽出液体クロマトグラフ質量分析法にて定量測定した(厚生労働省「水質管理目標設定項目の検査方法(平成15年10月10日付け健水発第1010001号)、目標31 ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)」に基づいて測定した。)。流出水(フィルターを通過した水)中のPFOSおよびPFOAの合計水中濃度が0.00002mg/L以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)を求めた。得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体の体積(cm3)で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体1cm3あたりのろ過水量(L/cm3)とした。また、得られた総ろ過水量(L)をフィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭の総重量で割った値を、フィルターを構成する活性炭成型体に含まれる活性炭1gあたりのろ過水量(L/g)とした。
【0093】
得られたフィルターの物性等について表1に示す。また、図1~5に、実施例1~3、比較例1~2のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出されるlog微分細孔容積分布図を示す。log微分細孔容積分布(dV/dlogD)は、差分細孔容積dVを、細孔径の対数扱いの差分値dlogDで割った値を求め、これを細孔径に対してプロットしたものである。図6~10に、実施例1~3、比較例1~2のフィルターを構成する活性炭成型体のQSDFT法によって算出される積算細孔容積分布図を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1から明らかなように、実施例1~3のフィルターは、活性炭を含む活性炭成型体を含むフィルターであって、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上であることから、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能に優れたものであった。
【0096】
一方、比較例1において、活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.3cc/g未満であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g未満であることから、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合には、含フッ素有機化合物の除去性能に劣るものであった。
【0097】
また、比較例2において、活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g未満であることから、被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合には、含フッ素有機化合物の除去性能に劣るものであった。
【符号の説明】
【0098】
1:成型用型枠
2:芯体
3:吸引用小孔
4、4’:フランジ
5:濾液排出口
【要約】
被処理水の空塔速度(SV)が大きい場合においても、含フッ素有機化合物の除去性能に優れるフィルターを提供することを主な課題とする。本発明のフィルターは、活性炭を含む活性炭成型体を含み、前記活性炭成型体は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、細孔径2.0nm以下の細孔容積A(cc/g)が0.30cc/g以上であり、細孔径3.0~3.5nmの範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.01cc/g以上である。
図1
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