(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーシステムの作動の最適化における改善およびその関連
(51)【国際特許分類】
G01N 30/00 20060101AFI20241105BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20241105BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20241105BHJP
B01D 15/14 20060101ALI20241105BHJP
B01D 15/18 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01N30/00 A
G01N30/26 M
G01N30/46 E
B01D15/14
B01D15/18
(21)【出願番号】P 2021550259
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020054748
(87)【国際公開番号】W WO2020173862
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・タウンゼント
(72)【発明者】
【氏名】イアン・スキャンロン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/094096(WO,A1)
【文献】再公表特許第2017/033256(JP,A1)
【文献】特表2015-515633(JP,A)
【文献】特表2016-534373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
B01D 15/00 -15/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーシステムにおいて少なくとも1つの目標生成物を含む供給物を精製するための方法であって、
前記クロマトグラフィーシステムは、
複数の吸着精製ユニット(1~5)であって、精製ユニットの各々が入口および出口を有する、吸着精製ユニットと、
出口ポートおよび入口ポートを有するバルブアセンブリ(40;12)と、
を有しており、
前記精製ユニットの各々の前記入口および前記出口は、前記バルブアセンブリ(40;12)のそれぞれのポートに接続され、
a)前記精製ユニットの各々を前記バルブアセンブリの前記入口ポートに順次接続することによって、前記バルブアセンブリ(40;12)の前記入口ポートを通して供給される供給物を複数の前記精製ユニットにロードする(S10)ステップと、
b)ステップa)が完了した場合に、前記精製ユニットの各々を前記バルブアセンブリの前記入口ポートに順次接続することによって、前記バルブアセンブリの前記入口ポートを通して提供される溶出のための溶液を使用して複数の前記精製ユニットを溶出する(S12)ステップと、
c)前記バルブアセンブリの前記出口ポートから少なくとも1つの目標生成物を回収する(S14)ステップと、
を含み、
前記供給物および前記溶出のための溶液は、前記バルブアセンブリの同じ入口ポートを介して提供されることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの目標生成物は、少なくとも第1の目標生成物を含み、かつ、
前記第1の目標生成物を回収するために、ステップc)は、前記クロマトグラフィーシステムがフロースルーモードで動作する場合はステップa)の間に実施され、またはステップc)は、前記クロマトグラフィーシステムが結合および溶出モードで動作する場合はステップb)の間に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの目標生成物は、少なくとも第1の目標生成物および第2の目標生成物を含み、ステップc)は、前記第1の目標生成物を回収するために、前記クロマトグラフィーシステムがフロースルーモードで動作する場合はステップa)の間に実行され、かつステップc)は、前記第2の目標生成物を回収するために、前記クロマトグラフィーシステムが結合および溶出モードで動作する場合はステップb)で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クロマトグラフィーシステムの前記精製ユニットの各々は膜吸着装置であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記膜吸着装置は
、エレクトロスピニング材料を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記精製ユニットの各々は、クロマトグラフィー樹脂を備えるカラムまたは膜精製ユニットであるように選択されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロマトグラフィーシステムは、前記バルブアセンブリの前記入口ポートに対して前処理デバイスがさらに設けられており、
前記バルブアセンブリの前記入口ポートに供給物が入る前に供給物を調整するステップ(S10a)をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前処理デバイスは、選択された材料を除去することによって前記供給物を調整するように構成されたフィルターまたはクロマトグラフィーカラムであるように選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、ステップb)が完了した場合に、前記精製ユニットの各々を前記バルブアセンブリの前記入口ポートに順次接続することによって、前記バルブアセンブリの前記入口ポートを通して提供される溶液を使用して複数の前記精製ユニットを洗浄するステップ(S11)をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)は、複数の前記精製ユニットを溶出する前に、前記精製ユニットの各々を前記バルブアセンブリの前記入口ポートに順次接続することによって、前記バルブアセンブリの前記入口ポートを通して提供される溶液を使用して複数の前記精製ユニットを洗浄するステップ(S13)をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、追跡ラインを使用して前記バルブアセンブリの前記入口ポートに供給物を提供して溶出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)からc)は、少なくとも20回、好ましくは少なくとも100回繰り返され、
繰り返される各サイクルの間に、同じ供給物の一部が同じ精製ユニットを使用して精製されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
複数の前記精製ユニットは同じタイプの精製ユニットであるように選択されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの目標生成物を含む供給物を生成するためのクロマトグラフィーシステムであって、
前記クロマトグラフィーシステムは、
複数の精製ユニット(1~5)であって、前記精製ユニットの各々が入口および出口を有する、精製ユニットと、
出口ポート(42)および入口ポート(41)を有するバルブアセンブリ(40;12)と、
を有しており、
前記精製ユニットの各々の前記入口および前記出口は、前記バルブアセンブリ(40;12)のそれぞれのポート(43、44)に接続され、前記クロマトグラフィーシステムは:
a)前記精製ユニットの各々(1~5)を前記バルブアセンブリ(40;12)の前記入口ポート(41)に順次接続することによって、複数の前記精製ユニット(1~5)に前記バルブアセンブリの前記入口ポート(41)を通して提供される供給物をロードし、
b)ステップa)が完了した場合に、前記精製ユニット(1~5)の各々を前記バルブアセンブリ(40;12)の前記入口ポート(41)に順次接続することによって、前記バルブアセンブリの前記入口ポート(41)を通して提供される溶出のための溶液を使用して複数の前記精製ユニット(1~5)を溶出し;かつ
c)前記バルブアセンブリ(40;12)の前記出口ポート(42)から少なくとも1つの目標生成物を回収する
よう構成された制御ユニット(45)をさらに備え、
前記供給物および前記溶出のための溶液は、前記バルブアセンブリの同じ入口ポートを介して提供されることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの目標生成物は、少なくとも第1の目標生成物を含み、前記制御ユニット(45)は、前記クロマトグラフィーシステムがフロースルーモードで動作する場合、前記a)の間に前記第1の目標生成物を回収し、または前記クロマトグラフィーシステムが結合および溶出モードで動作する場合、前記b)の間に前記第1の目標生成物を回収するようさらに構成されていることを特徴とする請求項14に記載のクロマトグラフィーシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの目標生成物は、少なくとも第1の目標生成物および第2の目標生成物を含み、
前記制御ユニット(45)は、前記クロマトグラフィーシステムがフロースルーモードで動作する場合、前記a)の間に前記第1の目標生成物を回収し、かつ前記クロマトグラフィーシステムが結合および溶出モードで動作する場合、前記b)の間に前記第2の目標生成物を回収するようさらに構成されていることを特徴とする請求項14に記載のクロマトグラフィーシステム。
【請求項17】
クロマトグラフィーシステムにおいて目標生成物を含む供給物を精製するためのコンピュータプログラムであって、少なくとも1つのプロセッサで遂行される場合に、少なくとも1つの前記プロセッサに請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載の、目標生成物を含む供給物を精製するためのコンピュータプログラムを保有するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記膜吸着装置は、セルロース系材料を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の精製ユニットを有するクロマトグラフィーシステムにおいて、少なくとも1つの目標生成物を含む供給物を精製するためのバルブアセンブリを使用するクロマトグラフィーシステムの作動の最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
固定相と移動相との間での分配によって物質分離が起こる物理的分離法は、クロマトグラフィーとの用語で知られている。そうしたクロマトグラフィー法の例は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーである。
【0003】
ゲル浸透クロマトグラフィーでは、分離カラムは、通常、多孔質の高度に架橋された材料のビーズで満たされている。分子サイズの異なる物質を含む流体が、この材料を通るよう誘導される。分子サイズがより小さい物質つまり流体力学的容積がより小さい物質は、溶媒界面またはゲルの細孔内へ拡散し、これら物質が溶媒界面または細孔から戻るよう拡散するまでそこに留まる。より大きな分子が細孔容積の一部から排除されるため、つまり細孔内部の停滞容積内に存在する時間が短くなるため、分別が発生する。初めに大きな溶質が溶出する。
【0004】
そのためゲル浸透クロマトグラフィーは、化学および医薬品の開発および製造の両方において一般的に使用される分離方法であり、より具体的には、例えば微生物でのプロテインの製造中または血液などの生体液からの個別の成分の単離中に発生する複雑な混合物からの生体分子の単離に使用される。
【0005】
ゲル浸透クロマトグラフィーとは対照的に、(膜)吸着クロマトグラフィーでは、流体の構成成分、例えば個別の分子、付随物または粒子が、流体と接触している固体の表面に結合する。
【0006】
吸着可能な固体は「吸着体」と称され、吸着される構成成分は「吸着質」と称される。吸着は、吸着材料の分離のために工業的に使用でき、「吸着器」と称される装置で行われる。吸着質は、流体から回収することが意図される場合は「目標生成物」と称され、流体から除去することが意図される場合は「不純物」と称される。第1のケースでは吸着は可逆的である必要があり、当該吸着に続いて、方法の第2のステップとして流体の変更可能な条件(構成成分および/または温度)の下で吸着質が溶出する。目標物質は流体中に単一の構成成分として存在することができ、そのため材料の分離は単なる濃縮となるか、あるいは分離される複数の構成成分が存在する。このケースでは、方法のステップの少なくとも1つは、選択的である、つまり分離される構成成分のためにさまざまな範囲で実施される必要がある。
【0007】
膜吸着の材料の例は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献1に開示されている。参照により本明細書に組み込まれる特許文献2から5は、固定相を形成する1つ以上のエレクトロスピニングされたポリマーナノファイバーを含むクロマトグラフィー媒体を開示する。別の例は、Sartoriusから入手可能なSartobind(登録商標)である。
【0008】
GE Healthcareから入手可能なA(アーウムラウト)KTA(商標)pure system(29-0211-96 AE)などの従来の液体クロマトグラフィーシステムでは、さまざまな動作モード:ロード、洗浄、溶出の間で切り替えるためにバルブが使用される。動作モードを切り替える場合、バルブおよび配管は、先のステップの残留物を含むことがあり、これはクリーニングおよび緩衝液の使用量の増加を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2018/037244号パンフレット
【文献】米国特許第9802979号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0288089号明細書
【文献】国際公開第2018/0372444号パンフレット
【文献】国際公開第2018/011600号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上で特定された欠点を排除するかまたは少なくとも低減するための改善されたプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、入口および出口を各々が有する複数の精製ユニットと、出口ポートおよび入口ポートを有するバルブアセンブリ(40;12)と、を有するクロマトグラフィーシステムにおいて少なくとも1つの目標生成物を含む供給物を精製するための方法によって達成される。各精製ユニットの入口および出口は、バルブアセンブリのそれぞれのポートに接続されている。前記方法は、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される供給物を複数の精製ユニットにロードするステップと;すべての精製ユニットのロードが完了した場合に、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通じて提供される溶出のための溶液を使用して複数の精製ユニットを溶出するステップと、バルブアセンブリの出口ポートから少なくとも1つの目標生成物を回収するステップと、を含む。ここで、「順次接続する」とは、例えば1つのユニットの後に別のユニット、または2つ(もしくは複数の)のユニットを接続し、続いて別の2つ(もしくは複数)のユニットを順番に接続することを意味する。
【0012】
本発明の利点は、液体クロマトグラフィーシステムにおける生産性が向上することおよび緩衝液の使用量が低減されることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2a】バルブに接続された5つの構成要素の概略図である。
【
図2b】3つの精製ユニットに接続されたバルブアセンブリの第1の例の概略図である。
【
図2c】3つの精製ユニットに接続されたバルブアセンブリの第2の例の概略図である。
【
図3】複数のカラム(この例では5つのカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステムを示す図である。
【
図4】一連のクロマトグラフィー工程を示す図である。
【
図5】5つのカラムの半連続工程を概略的に示す図である。
【
図6】5つのカラムの半連続工程における容量の関数としてのUV、pH、および圧力を示す図である。
【
図7】5つのカラムの半連続工程における容量の関数としてのUV、pH、および圧力を示す図である。
【
図8】セルロース系繊維材料と比較した標準樹脂の滞留時間についての関数としての容量を示す図である。
【
図9】供給物を精製するための方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、複数の精製ユニットを採用するさまざまなタイプのクロマトグラフィーシステムに適用することができる。上述のように、クロマトグラフィー法の例には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および吸着クロマトグラフィー(吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーなど)がある。さまざまな様式が使用されてもよく、そのすべてのタイプが樹脂ベースおよび膜ベースの両方の精製ユニットに存在し得る。さらに、本発明は、以下で説明されるように、「結合溶出」分離および「フロースルー」分離の両方に対して機能する。
【0015】
その概念は、MabSelectプロテインAレジンなどの標準樹脂;またはプロテインAリガンドで機能化されたセルロース系繊維などの高流量材料を含むさまざまなタイプの精製ユニット/カラムに使用されてもよい。高流量材料の一例がFIBRO PrismAであり、
図9に示されており、結合容量に対する滞留時間の影響は、標準樹脂Mabselect PrismAとFIBRO PrismAとの間で比較される。
【0016】
FIBROは、生産性の高いプロテインAクロマトグラフィー技術であり、プロセス展開におけるリードタイムを低減し、臨床製造におけるプロテインAのコストを削減し、柔軟な製造機会のためにキャプチャークロマトグラフィーにおける使い捨てを実現可能にする。この技術は、膜の流量とクロマトグラフィー樹脂の容量とを組み合わせたプロテインAクロマトグラフィーデバイスであり、大きな表面積(高容量)と高いマクロ多孔率(高流量)を提供する繊維構造を有する。対流質量移行は、滞留時間とはおおむね関係のない結合容量をもたらす。これは
図8に例示される。
【0017】
以下は、本発明で使用され得るクロマトグラフィー様式のリストである:アフィニティークロマトグラフィーは、プロテイン-プロテイン相互作用アフィニティーリガンド(例えばプロテインA)、プロテインフラグメント/ペプチド-プロテイン相互作用アフィニティー、例えばウイルス精製のためのAVBリガンド、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、ニッケル-Hisタグ、レクチンなどを含むがこれらに限定されない。
【0018】
陰イオン交換(AEX)および陽イオン交換(CEX)を含むイオン交換クロマトグラフィー(短所および長所の両方があるIEX)の例は、Capto S ImpAcなどを含む。
【0019】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)において、リガンドは多様であり、メチル、エチル、プロピル、オクチル、フェニル、ブチルなどの範囲のさまざまな疎水性基から構成されている。
【0020】
混合モードクロマトグラフィー:上記様式の2つ以上の組み合わせ;例えば、色素リガンドまたはCapto MMC。
【0021】
本発明の重要な態様は、少なくとも1つの目標生成物を含む供給物の効率的な精製のために、クロマトグラフィーシステムにおいて直列または並列に接続された1つ以上のクロマトグラフィーカラムなどの複数の精製ユニットを、バルブアセンブリの入口ポートに順次接続することができるバルブアセンブリである。参照符号1から3で示される3つの精製ユニットをともに備えるバルブアセンブリ40の第1の例が
図2bに開示される。バルブアセンブリは、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートおよび出口ポートに一度に1つずつ接続するように構成されている。供給物、緩衝液(溶媒)などの媒体は、入口ポートを通って進入し、矢印の方向において精製ユニット1、2および3を通ってそれぞれのユニットの出口ポートまで流れ、バルブは一度に1つずつ精製ユニットに対して順番に配置される。プロセスフローは
図5に関連してより詳細に説明される。
【0022】
図2bは、複数の精製ユニットを有する供給物を精製するためのクロマトグラフィーシステムの一部を開示する。各精製ユニットは入口および出口を有しており、バルブアセンブリ40は出口ポート42および入口ポート41を有しており、各精製ユニットの入口および出口は、バルブアセンブリ40のそれぞれのポート43、44に接続されている。当該システムは、各精製ユニットの入口ポート43をバルブ入口ポート41に、そして同じ精製ユニットの出口ポート44をバルブ出口ポート42に順次接続するために、バルブアセンブリ40を制御するよう構成された制御ユニット45をさらに備える。
【0023】
図2cは、別個の入口バルブ46および別個の出口バルブ47を有するバルブアセンブリ48(破線で示される)の第2の例を例示する。入口バルブ46および出口バルブ47は、各精製ユニットの入口ポートをバルブ入口ポート41に、そして同じ精製ユニットの出口ポートをバルブ出口ポート42に順次接続するように構成された制御ユニット45によって制御される。
【0024】
バルブアセンブリは、(
図2aに関連して開示されるような)単一のロータリーバルブまたは(
図2cに関連して開示されるような)精製ユニットを順次接続するよう構成された複数のバルブを備えてもよい。バルブアセンブリは、他の関連するタイプのバルブ、例えばメンブレンバルブ、ピンチバルブなどを備えてもよい。
【0025】
バルブは、流体の移行を伴うデバイスで一般的に使用される。例えば、液体クロマトグラフィーシステム(LCS)などの中程度のサイズの研究室システムで使用される典型的なタイプのバルブは、ロータリーバルブである。
【0026】
基本的に、ロータリーバルブは、本明細書ではステータと称される固定体を有しており、これは、本明細書ではロータと称される回転体と協働する。
【0027】
ステータには、いくつかの入口ポートおよび出口ポートが設けられている。これらポートは、ボアを介して、内側ステータ面における対応する1セットのオリフィスと流体連通する。内側ステータ面は、ロータの内側ロータ面と液密状態で接触するステータの内面である。ロータは、通常、ディスクとして形成されており、かつ回転時に協働する内側ステータ面に押し付けられる。内側ロータ面は、ステータに対するロータの回転位置に応じてさまざまなオリフィスと相互接続する1つ以上の溝を設けられている。
【0028】
ロータリーバルブは、高圧(30MPaを超える圧力など)に耐えるように設計することができる。これらロータリーバルブは、ステンレススチール、高性能ポリマー材料およびセラミックなどのさまざまな範囲の材料から構成できる。
【0029】
入口/出口の数ならびにロータまたはステータにおける溝の設計は、特定のバルブの意図された目的を反映する。
【0030】
多目的バルブの例は、
図1に例示されるValco Instruments Co. Inc.から入手可能な6ポートSTバルブである
【0031】
毛細管ループとして本明細書で例示されている4つの構成要素121から124がバルブのステータに接続されていてもよい。バルブステータはまた、入口ポート132および出口ポート131を有する。バルブロータは2つの溝125、126を有する。入口ポート132と流体連通する外側溝125は半径方向内向きに延在する部分を有しており、当該部分は、選択された構成要素124の一端127に接続する。同時に、出口ポート131と流体連通する内側溝126は半径方向外向きに延在する部分を有しており、当該部分は、選択された構成要素124の他端128に接続する。
【0032】
したがって、ユーザは、他の構成要素がバルブの入口/出口から隔離される一方で、選択された構成要素を介して流れを通過させることができる。バルブを通る流れの方向が常に同じであるならば、各構成要素を通る流れの方向は、どのようにバルブに接続されるかによって決定される。
【0033】
なお、時にはユーザは構成要素を通る流れの方向を交互に変更することを所望する。例えば、時には、構成要素がクロマトグラフィーカラムである場合、カラムを一方向にロードし、続いて逆の流れ方向を使用して捕捉された内容物を溶出することが望まれる。このとき、上記バルブと同様の従来技術のバルブを用いて、流れ再方向付けバルブ(flow redirecting valve)などの付加的な手段を使用して流れの再方向付けをする必要がある。
【0034】
別の多目的バルブの例は、
図2に関連して開示されており、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8186381号明細書にも開示されている。
図2は、5つの精製ユニット1~5(例えば毛細管ループまたはクロマトグラフィーカラム)がどのようにロータリーバルブに接続されるかを示す。このケースでは、バルブロータは、第3の構成要素3が選択された位置で示されている。
【0035】
図3は、(ここではカラムとして、この例では5つのカラムとして実施される)複数の精製ユニット11を備える液体クロマトグラフィーシステム10を示す。バルブアセンブリ(ここでは単一カラムバルブ12として示されている)が、カラムを交互に選択しかつ/またはカラムをバイパスするために使用される。カラムバルブは、米国特許第8186381号明細書に開示されるロータリーバルブとして実装されてもよい。UV検出器13は、カラムの下流かつ出口バルブ14の手前に配置され、UV検出器を通過する液体をフラクションコレクタ15に回収するかまたは液体を廃棄物として除去する必要があるかを選択する。pHメータ(図示せず)は、UV検出器と直列に実装されてもよい。
【0036】
動作中、これらカラム11は順番に動作されてもよい、つまり各カラムは、次のカラムに切り替える前に、ロード、洗浄、および溶出を含む工程を受ける。これは、クロマトグラフィーが順番に実行されることを示す
図4に例示される。曲線21はUV信号を示し、かつ曲線22は容量(ml)の関数としてのいくつかのクロマトグラフィー工程に関するpH信号を示しており、各工程は参照符号20によって示される。この例では、すべてのカラムの全容量を使用するべく、300ml以上がUV検出器13およびpHメータを通過する。
【0037】
この量の液体を使用する主な理由は、クロマトグラフィー工程のさまざまな段階の間で切り替える際にバルブをクリーニングすることに関連する。バルブおよびパイプにおける死容量によって、適切な動作を確保するために必要なバッファー(または溶媒)の量が増大する。
【0038】
使用される容量は
図4ではx軸に示され、各工程20では約67mlに等しく、これは5回工程が実行されると容量の合計が335mlになることを意味する。
【0039】
図3のシステムでは死容量を低減するために、バルブの切り替えは、以下で説明されるように、半連続工程でカラムを動作するように変更される。
【0040】
図5は、5つの精製ユニットを使用する概念を概略的に例示する。各精製ユニットは参照符号1、2、3、4および5によって示されており、「ステージ1」中に各精製ユニットは順番にロードされ、「ステージ2」中に各精製ユニットは順番に洗浄され、「ステージ3」中に各精製ユニットは回収のために順番に溶出される。これによって、半連続工程が発生し、バルブの切り替えの回数が低減し、それによって使用される溶媒の量が減るだけでなく動作時間が短縮される。
【0041】
例えばセルロース系材料などの膜吸着体の使用により、ユーザは非常に迅速に捕捉ステップを実行することができ、あるいは、樹脂を充填した充填層カラムと比較してはるかに小さな精製ユニットを使用することができる。システムでは、
図3に関連して説明されるように、容量が小さなプロテインA精製ユニット(充填層と比較して20から50倍の削減)が使用され、かつ1の作動日の間にバイオリアクターの精製が最大で200回繰り返される。膜吸着体を使用することで、2から6時間のサイクルタイムを伴う従来のクロマトグラフィーと比較して、各精製サイクルは約5分となる。
【0042】
図6および
図7は、5つの精製ユニットの半連続工程における容量の関数としてUV31、pH32および圧力33を示しており、各精製ユニットは、
図4の容量消費量を例示するために使用される5つの精製ユニットと同じ容量を有する。この例では、5×250μlの精製ユニットが、50ml/分の流れおよび4.5分の総工程時間で使用される。5つの精製ユニットのロードおよび洗浄は、約65mlの容量を必要とする。これらカラムについて、その後、新しいクロマトグラフィー工程を開始する前にシステムをクリーニングするための洗浄ステップでクロマトグラフィー工程が終了する前に、溶出が連続して実行される。
【0043】
図6および
図7に例示されるように、半連続工程においてシステムを作動する場合の使用容量は約140mlであり、これは
図4に示される使用容量(335ml)と比較すべきである。半連続動作時における容量はおおむね2.4の係数まで(連続動作時と比較して容量の単に42%)減少される。さらに、プロセスの速度も向上し、それによって処理量/期間が増加する。これに関して、次の段階が開始されかつ液体がシフトされる前にすべての精製ユニットについてロードが実施されるため、異なる動作段階つまりロード段階と溶出段階との間で洗浄する必要があるパイプやポンプなどの内部の滞留容量を減少させるという重要な理由がある。
【0044】
図4で使用される精製ユニットがこの例における容量およびタイプと同じ容量およびタイプのものであるため、こうした結論が確立され得る。さらに、同じ基本設定つまり同じロード量、同じ洗浄量などが2つの工程全体で使用されており、これらの量をより詳細に説明する。ロード中、洗浄中、溶出中などに精製ユニット間の切り替えが行われる場合、洗浄が不要なため省力が実現される。
【0045】
上記概念は、5つの精製ユニットを有するクロマトグラフィーシステムで説明されているが、複数の精製ユニットを備える任意のシステムが、クロマトグラフィー工程の各段階がx回繰り返される「x」個の精製ユニットを連続して動作させる場合に有益となり得る。したがって、3つの精製ユニットのセットアップでは、そのプロセスは:充填-充填-充填-溶出-溶出-溶出-洗浄-洗浄-洗浄-、充填-充填-充填-溶出-溶出-・・・、となり得る。
【0046】
充填と溶出との間に洗浄を含む別のプロセスが使用されてもよい:充填-充填-充填-洗浄-洗浄-洗浄-溶出-溶出-溶出-洗浄-洗浄-洗浄、充填-充填-充填-溶出-洗浄-・・・。
【0047】
図9は、複数の精製ユニットを有するクロマトグラフィーシステムにおいて、目標生成物を含む供給物を精製するための方法を例示するフローチャートであり、各精製ユニットは、入口および出口を有し、かつバルブは、出口ポートおよび入口ポートを有する。各精製ユニットの入口および出口は、バルブのそれぞれのポートに接続されている。
【0048】
ステップS10において、複数の精製ユニットは、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される供給物をロードされる。その後、次のステップS12の前に任意選択的なステップS11が続き、ステップS11は、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される溶出のための溶液を使用して複数の精製ユニットを洗浄するステップを含む。
【0049】
ステップS10および任意選択的にはステップS11が完了した場合、ステップS12において、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される溶液を使用して複数の精製ユニットを溶出するステップを含む。いくつかの実施形態によれば、任意選択的なステップS13は、ステップS12が完了した場合に実行され、ステップS13は、各精製ユニットをバルブの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される溶液を使用して複数の精製ユニットを洗浄するステップを含む。
【0050】
ステップS14において、少なくとも1つの目標生成物が、各精製ユニットをバルブアセンブリの出口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの出口ポートから回収される。
【0051】
少なくとも1つの目標生成物が少なくとも第1の目標生成物を含み、かつクロマトグラフィーシステムがフロースルーモードで動作する場合、第1の目標生成物は、ローディングステップS10の間に回収される。フロースルーモードでは、不純物が精製ユニットに結合され、かつ第1の目標生成物は、回収されるよう出口ポートへ向けて流れる。
【0052】
その一方で、少なくとも1つの目標生成物が少なくとも第1の目標生成物を含み、クロマトグラフィーシステムが結合および溶出モードで動作する場合、第1の目標生成物は、ローディングステップS10中に精製ユニットに結合され、第1の目標生成物は、溶出ステップS12中に回収される。
【0053】
代替実施形態では、少なくとも1つの目標生成物は、第1の目標生成物および第2の目標生成物を含み、かつクロマトグラフィーシステムは、複合モードで動作する。これは、システムがフロースルーモードで動作する場合、ローディングステップS10中に第1の目標生成物が回収され、かつシステムが結合および溶出モードで動作する場合、溶出ステップS12中に第2の目標生成物が回収されることを意味する。
【0054】
留意すべきことに、少なくとも1つの目標生成物の回収は、回収のために目標生成物を含むピークを移動させるよう、
図3における出口バルブ14によって制御される。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、クロマトグラフィーシステムの各精製ユニットは、好ましくはセルロース系材料などのエレクトロスピニング材料を備える膜精製ユニットである。いくつかの実施形態によれば、各精製ユニットは、クロマトグラフィー樹脂を備えるカラムまたは膜精製ユニットであるように選択される。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、クロマトグラフィーシステムは、バルブの入口へ向けて前処理デバイスをさらに設けられており、かつステップS10は、供給物がバルブの入口に入る前に、供給物を調整するステップS10aをさらに含む。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、前処理デバイスは、DNAなどの選択された材料を除去することによって供給物を調整するよう構成されたフィルターまたはクロマトグラフィーカラムであるように選択される。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、ステップS10からS14は、ステップS15によって例示されるように、必要に応じて繰り返される。ステップS10からS14は、少なくとも20回繰り返され、より好ましい実施形態によれば、少なくとも100回繰り返される。繰り返される各サイクル中、同じ供給物の一部が同じ精製ユニットを使用して精製される。これは、精製ユニットはプロセス実行中は維持され、その実行が完了するまで交換されないことを意味する。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、精製ユニットは、同じタイプであるように選択される。これは、同様の量、リガンド様式などを意味する。
【0060】
目標生成物を含む供給物を精製するための、複数の精製ユニットを有するクロマトグラフィーシステムはまた、
a)各精製ユニットをバルブの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される供給物を複数の精製ユニットにロードするステップと;
b)ステップa)が完了した場合に、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される溶出のための溶液を使用して複数の精製ユニットを溶出するステップと;
c)各精製ユニットをバルブアセンブリの出口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの出口ポートから目標生成物を回収するステップと;
を実行するためにバルブアセンブリ40;48を制御するよう構成された制御ユニット45を設けられている。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、制御ユニットは、ステップc)が完了した場合に、各精製ユニットをバルブの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される溶液を使用して複数の精製ユニットを洗浄するようにさらに構成される。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、制御ユニットは、ステップb)で複数の精製ユニットを溶出する前に、各精製ユニットをバルブアセンブリの入口ポートに順次接続することによって、バルブアセンブリの入口ポートを通して提供される溶液を使用して複数の精製ユニットを洗浄するようにさらに構成される。
【0063】
図9に関連して説明される方法は、クロマトグラフィーシステムにおいて目標生成物を含む供給物を精製するためのコンピュータプログラムで実施されてもよく、当該コンピュータプログラムは、少なくとも1つのプロセッサで実行される場合に少なくとも1つのプロセッサに上記方法を実施させる命令を含む。さらに、コンピュータ可読記憶媒体は、目標生成物を含む供給物を精製するためのコンピュータプログラムを保有できる。
【符号の説明】
【0064】
11 カラム
12 カラムバルブ
13 検出器
14 出口バルブ
15 フラクションコレクタ
40 バルブアセンブリ
41 バルブ入口ポート
42 バルブ出口ポート
43 精製ユニットの入口ポート
44 精製ユニットの出口ポート
45 制御ユニット
46 入口バルブ
47 出口バルブ
48 バルブアセンブリ
【図 】