(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】アガー又はアガロースビーズを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/12 20060101AFI20241105BHJP
B01J 2/10 20060101ALI20241105BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20241105BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20241105BHJP
C08J 3/16 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C08B37/12 A
B01J2/10 A
B01F25/40
B01F23/41
C08J3/16 CEP
(21)【出願番号】P 2021564360
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020061790
(87)【国際公開番号】W WO2020221762
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-28
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】スサンナ・リンドベリ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス・グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】リン・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】アンデルシュ・ハグヴァール
(72)【発明者】
【氏名】エーリク・リングベリ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィド・ヤンソン
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525138(JP,A)
【文献】国際公開第89/011493(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103194008(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)40~100℃の温度でアガー又はアガロースの水性溶液を含む水相を提供する工程;
b)40~100℃の温度で水非混和性溶媒及び乳化剤を含む油相を提供する工程;
c)前記油相中で前記水相を乳化して、油中水型エマルションを形成する工程;
d)前記油中水型エマルションを前記アガー又はアガロースのゲル化温度未満の温度まで冷却して、固化したアガー又はアガロースビーズの分散体を形成する工程;及び
e)前記分散体からアガー又はアガロースビーズを回収する工程
を含む、アガー又はアガロースビーズを製造する方法であって、
前記乳化剤は、アルコキシル化脂肪アルコールのリン酸エステルを含む、方法。
【請求項2】
前記水非混和性溶媒が、トルエン又はキシレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油相が、0.1質量%未満のアルキルフェノール又はアルキルフェノール誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記油相が、アルキルフェノール及びアルキルフェノール誘導体を含まない、又は実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記乳化剤が、前記アルコキシル化脂肪アルコールのリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪アルコールが、一つ又は複数のC10~C20直鎖状若しくは分岐状の、第一級若しくは第二級、アルカノール又はアルケノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコキシル化脂肪アルコールが、構造
R
1-O-(R
2-O)
n-H (I)
(式中:
R
1は、飽和若しくは不飽和の、直鎖状若しくは分岐状、脂肪族C
10~C
20炭化水素であり、
R
2は、-CH
2-CH
2-又は-CH
2-CH
2-及び-CH
2(CH
3)-CH
2-の混合物であり、
nは2~20である)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記乳化剤が、
R
1-O-(R
2-O)
n-P(O)(OH)-OH 及び (II)
R
1-O-(R
2-O)
n-P(O)(OH)-(O-R
2)
n-O-R
1 (III)
(式中:
R
1は、飽和若しくは不飽和の、直鎖状若しくは分岐状、脂肪族C
10~C
20炭化水素であり、
R
2は、-CH
2-CH
2-又は-CH
2-CH
2-及び-CH
2(CH
3)-CH
2-の混合物であり、
nは2~20である)
の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式中、R
1は、飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族C
10~C
18炭化水素である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式中、nは2~10
(例えば2~5
)である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記乳化剤が、C
10~C
16アルカノールの混合エチレンオキシド+プロピレンオキシド付加物のリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記乳化剤が、オレス-3-リン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アガー又はアガロースの水性溶液は、1~8質量%のアガー又はアガロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記油相は、0.01~2質量%の前記乳化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程c)が、攪拌槽内で前記水相及び前記油相を混合して、油中水型エマルションを形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程c)が、ローターステーターミキサーを介して前記油中水型エマルションを通過させて、前記油中水型エマルションの液滴径を低減させる工程をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
工程c)が、スタティックミキサーを介して前記油中水型エマルションを通過させて、前記油中水型エマルションの液滴径を低減させる工程をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
工程c)が、多孔質膜を介して前記油中水型エマルションを通過させて、前記油中水型エマルションの液滴径を低減させる工程をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
工程c)が、多孔質膜を介して前記水相を前記
油相中に通過させて、油中水型エマルションを形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
工程d)が、攪拌槽内で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
工程d)が、縦方向に減少する温度勾配を有する導管を介して前記油中水型エマルションを通過させることにより実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程e)が、前記分散体に水又は水性溶液を添加する工程、前記油相を注ぎ移す工程、及び前記アガー又はアガロースビーズを沈殿物として回収する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
工程e)が、水又は水性溶液で前記アガー又はアガロースビーズを洗浄して、残留する乳化剤を回収する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
工程e)の後、前記アガー又はアガロースビーズを架橋する工程f)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
工程e)の後、リガンドを前記アガー又はアガロースビーズにカップリングする工程g)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アガー/アガロースビーズ、より詳細にはアガー又はアガロースビーズを製造する方法に関する。また、本発明は、本方法での使用に好適な乳化剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
アガロースビーズは、数十年間、タンパク質及び他の生体マクロ分子のクロマトグラフ分離での固定相として使用されている。それらは、典型的には、逆懸濁ゲル化によって調製され、そこではアガロース又はアガーの高温の水性溶液が高温の油相中で乳化され、油中水型(W/O)エマルションが形成される。その後、エマルションはアガロース/アガーのゲル化温度未満に冷却されて、ゲルビーズが作られ、その後それらは回収されて分離目的のために使用され得る。このようのプロセスは、例えば、S HjertenによるBiochim Biophys Acta 79(2)、393-398頁、1964年、国際公開第1989011493号及び米国特許第20180171484号において記載されており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。ゲル化後の硫酸基の加水分解によりアガービーズがアガロースビーズに変換されている変形例(variant)は、米国特許第20100084345号に記載されており、これもまた、参照によりその全体が組み込まれている。
【0003】
プロセスにおいて、乳化剤を使用することがW/Oエマルションの安定化のために不可欠である。また、乳化剤は、得られるビーズのサイズ分布及びそれらの形状にとっても重要であることがある。さらに、乳化剤は、洗浄によりビーズから容易に取り除かれる必要があり、環境への負担が小さく、ビーズを医薬品の製造に使用する場合、有毒な浸出物を生み出さないことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第1989011493号
【文献】米国特許第20180171484号
【文献】米国特許第20100084345号
【非特許文献】
【0005】
【文献】S Hjerten : Biochim Biophys Acta 79(2)、393-398頁、1964年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した乳化剤は、これらの態様のうちのいくつかが欠けており、したがって、さらなる乳化剤の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、アガー又はアガロースビーズを製造する方法を提供することである。これは、
a)40~100℃の温度でアガー又はアガロースの水性溶液を含む水相を提供する工程;
b)40~100℃の温度で水非混和性溶媒及び乳化剤を含む油相を提供する工程;
c)油相中で水相を乳化して、油中水型(W/O)エマルションを形成する工程;
d)W/Oエマルションをアガー又はアガロースのゲル化温度未満の温度まで冷却して、固化したアガー又はアガロースビーズの分散体を形成する工程;及び
e)分散体からアガー又はアガロースビーズを回収する工程
を含む方法であって、
乳化剤は、アルコキシル化脂肪アルコールのリン酸エステルを含む、方法で達成される。
【0008】
一つの利点は、工程d)の間のビーズの凝集が防止されることであり、その結果、真球度が高く十分に分散されたビーズが製造される。さらなる利点は、乳化剤が水溶性であり、水洗浄による除去を容易にすること、及びそれがアルキルフェノール誘導体等の内分泌かく乱物質を含まないことである。
【0009】
本発明のさらなる態様は、上述の方法により得られるアガー又はアガロースビーズを提供することである。
【0010】
本発明のさらに好適な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、十分に安定化されたW/Oアガロースエマルションから形成された十分に分散した球状のアガロースビーズの一例を示す。
【
図2】
図2は、W/Oアガロースエマルションの冷却の間に形成される可能性がある凝集体(矢印で指し示されている)を有するアガロースビーズの一例を示す。
【
図3】
図3は、非球形で、部分的に融合したビーズ(矢印で指し示されている)を有するアガロースビーズの一例を示す。
【
図4】
図4は、О/W/О二重エマルションの形成により生じた、ビーズ内の球形の内包物(矢印で指し示されている)を有するアガロースビーズの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一態様において、本発明は、アガー又はアガロースビーズを製造する方法を開示する。本方法は、以下の工程を含む。
【0013】
a)40~100℃の温度でアガー又はアガロースの水性溶液を含む水相を提供する工程。水相は、例えば、1~8質量%のアガー又はアガロース、例えば2~7質量%、例えば約2質量%、約4質量%、又は約6質量%のアガー又はアガロースを含んでもよい。水相は、弱塩基等の一つ又は複数のバッファー成分をさらに含み得る。アガー又はアガロースは、天然(native)アガー、天然アガロース又はアガー若しくはアガロースの誘導体、例えば、アリルアガロース若しくはヒドロキシエチルアガロース、さらには米国特許第6602990号及び米国特許第7396467号に記載されているものであってもよく、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0014】
b)40~100℃の温度(好適には溶媒の沸点未満の温度)で水非混和性溶媒及び乳化剤を含む油相を提供する工程。水非混和性溶媒は、例えば炭化水素、エステル又はケトンであり得る。効率的な溶媒回収を容易にするために、溶媒は、大気圧下で、約90~170℃の範囲、例えば90~150℃、又は100~120℃の沸点を有してもよい。それは、例えばトルエン(沸点111℃)又はキシレン(沸点約140℃:m-キシレンについて139℃及びo-キシレンについて144℃)であり得る。あるいは、それは環状ケトン、例えば2-メチルシクロヘキサノン(沸点162~163℃)であり得る。また、鉱油又は植物油等の高沸点溶媒を使用することも可能であるが、その場合、溶媒の回収がより困難になることがある。乳化剤の特性は、以下でさらに記載する。乳化剤は単独の乳化剤であってもよく、油相はいくつかの乳化剤の混合物を含んでもよい。油相中の乳化剤の濃度(又は全乳化剤の濃度)は、例えば0.01~2質量%、例えば0.015~1質量%であってもよい。好適には、乳化剤のいずれも、アルキルフェノール又はアルキルフェノール誘導体を含まない。油相は、例えば、0.1質量%未満、例えば、0.01質量%未満、又は0.001質量%未満のアルキルフェノール又はアルキルフェノール誘導体を含み得る。アルキルフェノール及びアルキルフェノール誘導体を含まないことさえもあり得る。
【0015】
c)油相中で水相を乳化して、油中水型(W/O)エマルションを形成する工程。乳化は、攪拌槽内で水相及び油相を混合して、W/Oエマルションを形成する工程を含んでもよい。工程はさらに、ローターステーターミキサー、スタティックミキサー又は多孔質膜を介してW/Oエマルションを通過させて、W/Oエマルションの液滴径を低減させる工程をさらに含んでもよい。エマルションを形成する代替的方法において、水相を多孔質膜又はふるい板を介して油相中に通過させ、W/Oエマルションを形成し得る。
【0016】
d)W/Oエマルションをアガー又はアガロースのゲル化温度未満の温度まで冷却して、固化したアガー又はアガロースビーズの分散体を形成する工程。この工程は、攪拌槽内でエマルションを徐々に冷却することにより実行され得るか、又は、縦方向に減少する温度勾配を有する導管を介してW/Oエマルションを通過させることにより連続モードで実行され得る。
【0017】
e)分散体からアガー又はアガロースビーズを回収する工程。回収は、工程d)で得た分散体に水又は水性溶液を添加する工程、油相を注ぎ移す工程、及びアガー又はアガロースビーズを沈殿物として回収する工程を含んでもよい。ビーズは、さらに水又は水性溶液で洗浄され、残留する乳化剤及び/又はその他の物質を取り除いてもよい。有機溶媒での洗浄もまた、乳化剤の残留物及びその他の浸出物(leachable)の除去に適用され得る。
【0018】
工程e)の後、架橋剤、例えばエピクロロヒドリンを添加することにより、ビーズは工程f)で架橋されてもよい。それらはさらに、当業者に知られる方法を用いて、工程g)においてリガンドで官能化されてもよく、ここでリガンドは共有結合している。工程g)は工程f)の後に好適に実行され得るが、非架橋のビーズ上でリガンドを結合することも可能である。
【0019】
本プロセスにより調製されるビーズは、クロマトグラフ分離プロセスにおいて、又はバッチ吸着プロセスにおいて使用され得る。それらは例えば、5~500μm、例えば10~350μm、又は30~120μmの範囲の直径(体積加重メジアン径d50、vとして表される)を有してもよい。
【0020】
上述した乳化剤は、アルコキシル化脂肪アルコールのリン酸エステルを含む。典型的には、それは、アルコキシル化脂肪アルコールのリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物を含み得る。脂肪アルコールは、一つ又は複数のC10~C20直鎖状若しくは分岐状の、第一級若しくは第二級、アルカノール又はアルケノールを含んでもよく、及び/又はエトキシル化脂肪アルコールは、構造I
R1-O-(R2-O)n-H (I)
(式中:
R1は、飽和若しくは不飽和の、直鎖状若しくは分岐状、脂肪族C10~C20炭化水素、例えば飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族C10~C18炭化水素であり、
R2は、-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-及び-CH2(CH3)-CH2-の混合物であり、
nは2~20、例えば2~10又は2~5である)
を有してもよい。
【0021】
この構造は、平均アルコキシル化度がnである、エトキシル化又は混合エトキシル化/プロポキシル化脂肪アルコールを表す。次に、アルコキシル化脂肪アルコールは、構造II及びIIIのリン酸エステルに変換され、ここでIIはリン酸モノエステルであり、IIIはリン酸ジエステルである:
R1-O-(R2-O)n-P(O)(OH)-OH (II)
R1-O-(R2-O)n-P(O)(OH)-(O-R2)n-O-R1 (III)
(式中:
R1は、飽和若しくは不飽和の、直鎖状若しくは分岐状、脂肪族C10~C20炭化水素、例えば、飽和又は不飽和の直鎖状脂肪族C10~C18炭化水素であり、
R2は、-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-及び-CH2(CH3)-CH2-の混合物であり、
nは2~20、例えば2~10又は2~5である)。
【0022】
リン酸モノエステルII及びジエステルIIIの両方は、解離され得る酸性水素を有する酸性化合物である。したがって、本発明のリン酸エステル乳化剤は、酸性の形態で或いは中和された形態で(例えば、ナトリウム塩として、又は代替的にはカリウム塩若しくはアンモニウム塩として)供給され得る。酸性の形態の乳化剤が使用される場合、アガー及びアガロースは、酸性条件下での分解に敏感であるため、塩基を水相に好適に添加して、pHを中性付近に調整してもよい。モノエステルIIおよびジエステルIIIに加えて、乳化剤はまた、アルコキシル化脂肪アルコール及び遊離の非エステル化アルコキシル化脂肪アルコールの対応するリン酸トリエステルを含んでもよい。これらの化合物は両方とも非酸性であり、例えば、乳化剤の25質量%未満又は15質量%未満等の少量で通常は存在する。
【0023】
特に、乳化剤は、C10~C16アルカノールの混合エチレンオキシド+プロピレンオキシド付加物のリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物を含んでもよい。そのような製品は、Lubrhophos(登録商標)LF-800(Solvay)の名前で市販されている。あるいは、乳化剤は、n=3(オレイルアルコールあたりのエチレングリコール単位の平均数)を有するエトキシル化オレイルアルコールのリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物を含んでもよい。そのような製品は、オレス-3-リン酸のINCI(化粧品成分の国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients))名の名前で通常知られており、Crodafos(登録商標)O3A(Croda)の商品名で市販されている。
【実施例】
【0024】
乳化方法
490mlの水中の35gのアガロースの溶液を95℃で調製し、続いて7.0mMのリン酸塩(phosphate)を添加した後70℃に冷却して、pH7.0とした。850mlトルエン中の乳化剤の溶液を調製して、3Lの恒温ジャケット付き円筒状ガラスリアクター内で60℃に加熱した。オーバーヘッド撹拌機での攪拌の下、80rpmで攪拌しながらアガロース溶液をリアクターに添加し、60℃でrpmを段階的に増加させながら攪拌を続け、取り出したサンプルから評価し、レーザー回折により分析したアガロースの液滴径が約100μmになるまで撹拌した。これらのサンプルは、分析前の融合(coalescence)/凝集を防ぐために、氷で急速に冷却した。次に、リアクタージャケットの温度を20℃に下げ、アガロースの液滴を固化した。得られたアガロースビーズをトルエン及び/又は水で洗浄し、洗浄液を注ぎ移し、アガロースビーズを沈殿物として回収した。
【0025】
評価方法
分散剤としてエチルセルロースを用いたエタノール分散液中のアガロースビーズに対して、マスターサイザー3000レーザー回析機器(Malvern Panalytical)を用いて、粒子径分布を測定した。分布は、体積対直径の示差曲線としてプロットされ、各分布のモード(mode)を機器により計算した。モードは分布のピーク、すなわち分布曲線において見られる最も高いピークである。したがって、モードは、分布の中で最も一般的に見いだされる粒子径を表す。エマルションの冷却の前後の両方でサンプルを取り、冷却後のモードと冷却前のモードの間の差をΔモードで示した。これは、冷却の間の粒子径の増加の尺度であり、感度の高い冷却段階の間に発生する融合及び/又は凝集を示す。
【0026】
ビーズはまた、ビーズ中の内包物(油中水中油型(oil-in-water-in-oil)二重エマルションの形成に起因する可能性がある)及び球形の形状(球形からのずれは、液滴の部分的な融合に起因する可能性がある)に関して顕微鏡で視覚的に評価した。凝集、非球形ビーズ、及び内包物を有するビーズの例は、
図2~4に示される。
【0027】
乳化剤
【0028】
【0029】
実施例1-乳化剤の比較
【0030】
【0031】
基本的に、試験した材料の全てが乳化剤として機能する。しかしながら、それらの間に差がある。3つのソルビタンエステルで例示されるように、非イオン性乳化剤は、良好な結果を得るためには2%の濃度で使用する必要がある。これは、回収の間にビーズから大量の乳化剤を洗い流す必要があることを意味し、それは、特にこれらの乳化剤は水溶性でなく溶媒を用いて洗い流さなければならないため、望ましくない。リン酸エステルは低い濃度(0.2%未満)で使用することができ、一般的に水溶性である。Lubrhoph LF-800、Lubrhoph LB-400、Rhodafac PA/35、Crodafos CS2A及びCrodafos O3Aで特に良好な結果が得られ、Lubrhophos LF-800及びCrodafos O3Aが最有力候補として選択された。Rhodafac RM-510もまた、良好な結果を与えたが、アルキルフェノールエトキシレートをベースとしているため、環境上の理由のために除外された。
【0032】
実施例2-溶媒としての2-メチルシクロヘキサノン
【0033】
上述のように2つの実験を行ったが、トルエンの代わりに2-メチルシクロヘキサノンを用いた。乳化剤はLubrhophos LF-800であり、乳化剤の量はそれぞれ0.017wt./vol.%及び0.23wt./vol.%であった。100μmの目的粒子径に達し、ビーズの外観は良好であった。しかし、いくつかの凝集が冷却の間に起こった。
【0034】
この明細書は、最良の態様を含む本発明を開示するために、また、任意の装置又はシステムの作成及び使用、並びに任意の組み込まれた方法の実行することを含めて、当業者が本発明を実施できるようにするために、実施例を使用するものである。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲に記載されており、当業者が思いつく他の実施例を含んでもよい。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの言葉とは異なっていない構造要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文字通りの言葉と実質的に異なる同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることを意図している。本文中で述べられている全ての特許及び特許出願は、個別で組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。