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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20241105BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20241105BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20241105BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241105BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20241105BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60W20/16
F01N3/24 R
B60L50/61
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020182442
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072799
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】前山 裕哉
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154142(JP,A)
【文献】特開2007-218102(JP,A)
【文献】特開2004-176710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045185(US,A1)
【文献】特開2010-064679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0079314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60K 6/46
B60W 20/16
F01N 3/24
B60L 50/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として内燃機関及び電動機が搭載されたハイブリッド車両を制御するものであって、
ファイアリングして運転していた内燃機関を停止させることができる所定の条件が成立した場合において当該条件の成立から実際に内燃機関を停止させるまでの遅延期間中に空燃比を理論空燃比またはその近傍の目標空燃比に制御し、前記遅延期間中のエンジン回転数は遅延期間前のエンジン回転数と同等に制御し、この遅延期間の長さを変更できることとし、
前記条件が成立したとき、発電用電動機に対する発電電力の要求または走行用電動機に対する駆動力の要求に応じて前記内燃機関をあるエンジン回転数以上、またはあるエンジン負荷率以上で高負荷運転していた場合に、そうでない場合と比較してより長い前記遅延期間を設けるハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及び電動機が搭載された車両を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、内燃機関及び電動機の二種の動力源を備えるハイブリッド車両が一定の普及を見ている。シリーズ方式のハイブリッド車両(例えば、下記特許文献を参照)は、内燃機関により発電用モータジェネレータを駆動して発電を行い、発電した電力を蓄電装置、即ちリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等のバッテリ及び/またはキャパシタに蓄えるとともに、走行用モータジェネレータに供給する。そして、走行用モータジェネレータによって車両の駆動輪を回転させて走行する。
【0003】
発電用モータジェネレータのみならず、走行用モータジェネレータもまた、回生制動により発電を行い、発電した電力を蓄電装置に蓄えることができる。蓄電装置の容量一杯まで既に電荷が蓄えられている場合には、回生制動により得られる電力を敢えて発電用モータジェネレータに供給し、これを電動機として作動させて内燃機関を回転駆動するモータリングを行うことで、余剰の電力を消費する。
【0004】
ハイブリッド車両では、内燃機関が燃料を燃焼させて回転駆動力を発生させるファイアリングを行わなくとも、走行用モータジェネレータが出力する回転駆動力により車両を走行させることが可能である。よって、車両の運用中であっても、内燃機関の回転を停止している状態が継続することがある。
【0005】
蓄電装置に蓄えている電荷の量が減少したときや、走行用モータジェネレータに対する要求出力が大きいときには、内燃機関を始動し気筒に燃料を供給してこれを燃焼させ、内燃機関の出力する回転駆動力により発電用モータジェネレータを駆動し、発電を行って蓄電装置を充電、または走行用モータジェネレータに供給する電力を増強する。
【0006】
シリーズ方式のハイブリッド車両にあって、発電用モータジェネレータは、停止した内燃機関を始動する準備として内燃機関をモータリング、即ちクランキングする役割を兼ねる。クランキング時には、蓄電装置から必要な電力の供給を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-156134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、内燃機関の排気通路には、気筒から排出される排気ガス中に含まれる有害物質HC、CO、NOxを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている。
【0009】
触媒の温度が顕著に高い状況で内燃機関の運転が停止し、排気が触媒を流通しなくなり、かつ触媒内の雰囲気が酸素過多(空燃比リーン)となっていると、触媒の劣化が起こる。ハイブリッド車両ではない(専ら内燃機関が出力するエンジントルクを駆動輪に入力して走行する)従来型の車両では、その運用中、短時間の燃料カットやアイドルストップを除いて、常時内燃機関をファイアリングして運転しており、仮に触媒が高温であるとしても、理論空燃比に近い排気が流通し続けている。
【0010】
これに対し、ハイブリッド車両では、その運用中に内燃機関が断続的に運転される。つまり、内燃機関のトータルでの運転時間の長さは削減される一方で、内燃機関の再始動と停止とが繰り返されることから、触媒が高温状態でありながら排気が触媒を流通しない期間が長くなる。結果、従来形の車両に比して、触媒の劣化が早く、大きく進行することとなる。
【0011】
本発明は、以上の問題に初めて着目してなされたものであり、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の排気浄化用の触媒の劣化の進行を抑制することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、動力源として内燃機関及び電動機が搭載されたハイブリッド車両を制御するものであって、ファイアリングして運転していた内燃機関を停止させることができる所定の条件が成立した場合において当該条件の成立から実際に内燃機関を停止させるまでの遅延期間中に空燃比を理論空燃比またはその近傍の目標空燃比に制御し、前記遅延期間中のエンジン回転数は遅延期間前のエンジン回転数と同等に制御し、この遅延期間の長さを変更できることとし、前記条件が成立したとき、発電用電動機に対する発電電力の要求または走行用電動機に対する駆動力の要求に応じて前記内燃機関をあるエンジン回転数以上、及び/または、あるエンジン負荷率以上で高負荷運転していた場合に、そうでない場合と比較してより長い前記遅延期間を設けるハイブリッド車両の制御装置を構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の排気浄化用の触媒の劣化の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるシリーズ方式のハイブリッド車両及び制御装置の概略構成を示す図。
図2】同実施形態のハイブリッド車両に搭載される内燃機関の概要を示す図。
図3】同実施形態の制御装置による制御の内容を説明するタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態におけるハイブリッド車両の主要システムの概略構成を示している。このハイブリッド車両は、内燃機関1と、内燃機関1により駆動されて発電を行う発電用モータジェネレータ2と、発電用モータジェネレータ2が発電した電力を蓄える蓄電装置3と、発電用モータジェネレータ2及び/または蓄電装置3から電力の供給を受けて車両の駆動輪62を駆動する走行用モータジェネレータ4とを備えている。
【0016】
本実施形態のハイブリッド車両は、内燃機関1を発電にのみ使用するシリーズハイブリッド方式の電気自動車であり、車両の駆動輪62には専ら走行用モータジェネレータ4から走行のための駆動力を供給する。内燃機関1と駆動輪62との間は機械的に切り離されており、元来両者の間で回転駆動力の伝達がなされない。従って、内燃機関1は、走行用モータジェネレータ4及び駆動輪62から完全に独立して回転し、また完全に独立して停止することが可能である。従って、イグニッションスイッチ(パワースイッチ、またはイグニッションキー)がONに操作されている車両の運用中、運転者がアクセルペダルを踏むことで車両が走行可能な状態にあっても、蓄電装置3が充分な電荷を蓄え、かつブレーキブースタ15が充分な負圧を蓄えている状況下では、燃料の燃焼を伴う内燃機関1の運転を実施しないことがある。
【0017】
内燃機関1の回転軸であるクランクシャフトは、発電用モータジェネレータ2の回転軸と歯車機構を介して機械的に接続している。そして、内燃機関1が出力する回転駆動力を発電用モータジェネレータ2に入力することで、発電用モータジェネレータ2が発電する。発電した電力は、蓄電装置3に充電し、及び/または、走行用モータジェネレータ4に供給する。また、発電用モータジェネレータ2は、自らが回転駆動力を発生させて内燃機関1のクランクシャフトを回転駆動するモータリング用の電動機としても機能する。例えば、発電用モータジェネレータ2は、停止している内燃機関1を始動する準備としてのクランキングを実行する。
【0018】
走行用モータジェネレータ4は、車両の走行のための駆動力を発生させ、その駆動力を減速機61を介して駆動輪62に入力する。また、走行用モータジェネレータ4は、駆動輪62に連れ回されて回転することで発電し、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収する。この回生制動により発電した電力は、蓄電装置3に充電する。
【0019】
尤も、既に蓄電装置3の容量一杯まで電荷が蓄えられており、それ以上の充電が困難であるならば、走行用モータジェネレータ4が回生発電した電力を敢えて発電用モータジェネレータ2に供給し、発電用モータジェネレータ2を電動機として稼働させて内燃機関1を回転駆動する。これにより、車両の制動性能を維持しながら、余剰の電力を消尽する。また、このとき、内燃機関1の回転が保たれることから、内燃機関1の気筒への燃料供給を一時的に停止する燃料カットを実行することができる。
【0020】
発電機インバータ21は、発電用モータジェネレータ2が発電する交流電力を直流電力に変換する。そして、その直流電力を蓄電装置3または駆動機インバータ41に入力する。並びに、発電機インバータ21は、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させる際に、蓄電装置3及び/または駆動機インバータ41から供給される直流電力を交流電力に変換した上で発電用モータジェネレータ2に入力する。
【0021】
駆動機インバータ41は、蓄電装置3及び/または発電機インバータ21から供給される直流電力を交流電力に変換した上で走行用モータジェネレータ4に入力する。並びに、駆動機インバータ41は、車両の回生制動を行うときに走行用モータジェネレータ4が発電する交流電力を直流電力に変換した上で蓄電装置3または発電機インバータ21に入力する。発電機インバータ21及び駆動機インバータ41は、PCU(Power Control Unit)の一部をなす。
【0022】
蓄電装置3は、バッテリ及び/またはキャパシタ等である。バッテリは、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等の、エネルギ密度の大きい高電圧の二次電池である。蓄電装置3は、発電用モータジェネレータ2及び走行用モータジェネレータ4の各々が発電する電力を充電して蓄える。並びに、蓄電装置3は、発電用モータジェネレータ2及び走行用モータジェネレータ4の各々を電動機として作動させるための電力を放電し、それらモータジェネレータ2、4に必要な電力を供給する。
【0023】
図2に、本実施形態のハイブリッド車両に搭載される内燃機関1の概要を示している。内燃機関1は、火花点火式の4ストロークエンジンであり、複数の気筒11(例えば、三気筒。図1には、そのうち一つを図示)を包有している。各気筒11の吸気ポート近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ111を設けている。また、各気筒11の燃焼室の天井部に、点火プラグ112を取り付けてある。点火プラグ112は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。
【0024】
吸気を供給するための吸気通路13は、外部から空気を取り入れて各気筒11の吸気ポートへと導く。吸気通路13上には、エアクリーナ131、電子スロットルバルブ132、サージタンク133、吸気マニホルド134を、上流からこの順序に配置している。エアクリーナ131は、吸気通路13における最上流の位置、即ち空気を取り入れる吸気口に所在する。吸気口は、冷たい空気を取り入れて内燃機関の充填効率を上げるために、車両の前方に開口している。
【0025】
排気を排出するための排気通路14は、気筒11内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒11の排気ポートから外部へと導く。この排気通路14上には、排気マニホルド142及び排気浄化用の三元触媒141を配置している。
【0026】
内燃機関1、発電用モータジェネレータ2、蓄電装置3、インバータ21、41及び走行用モータジェネレータ4の制御を司る制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECU、即ち内燃機関1を制御するEFI(Electronic Fuel Injection)ECU01、発電用モータジェネレータ2及び発電機インバータ21を制御する発電機ECU02、蓄電装置3を制御するBMS(Battery Management System)ECU03、走行用モータジェネレータ4及び駆動機インバータ41を制御する駆動機ECU04等、並びに、それらの制御を統括する上位のコントローラであるHV(Hybrid Vehicle)ECU00が、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものである。
【0027】
ECU0に対しては、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関1のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、運転者によるアクセルペダルの踏込量をアクセル開度(いわば、運転者が車両(の走行用モータジェネレータ4)に対して要求している駆動力)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、運転者がブレーキペダルを踏んでいることを検出するスイッチ、運転者によるブレーキペダルの踏込量を検出するセンサまたはマスタシリンダ16から吐出されるブレーキ液の圧力であるマスタシリンダ圧を検出するセンサから出力されるブレーキ踏量信号d、内燃機関1の気筒11に連なる吸気通路13(特に、サージタンク133または吸気マニホルド134)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、内燃機関1の冷却水の温度を検出する水温センサから出力される冷却水温信号f、蓄電装置3に蓄えている電荷量を検出するセンサ(特に、バッテリ電流及び/またはバッテリ電圧センサ)から出力されるバッテリSOC(State Of Charge)信号g、ブレーキブースタ15の定圧室に蓄えている負圧を検出する負圧センサから出力される負圧信号h等が入力される。
【0028】
そして、ECU0は、各種センサを介してセンシングしている、運転者が操作するアクセルペダルの踏込量や、現在の車両の車速、蓄電装置3が蓄えている電荷の量等に応じて、走行用モータジェネレータ4が出力する回転駆動力、内燃機関1が出力する回転駆動力、及び発電用モータジェネレータ2が発電する電力の大きさを増減制御する。
【0029】
原則として、蓄電装置3が現在充分な電荷を蓄えており、走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が小さいならば、内燃機関1への燃料の供給を遮断して内燃機関1を運転しない。翻って、蓄電装置3が蓄えている電荷の量が閾値を下回り、または走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が大きいならば、内燃機関1を始動し気筒11に燃料を供給してこれを燃焼させるファイアリングを実行し、内燃機関1の出力する回転駆動力により発電機モータジェネレータ2を駆動し、発電を実施して蓄電装置3を充電し、または走行用モータジェネレータ4に供給する電力を増強する。
【0030】
因みに、ECU0の一部をなすEFI ECU01は、内燃機関1の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒11に吸入される空気量を推算する。そして、吸入空気量に見合った(目標空燃比を具現するために必要な)要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)等といった内燃機関1の運転パラメータを決定する。このEFI ECU01は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを、出力インタフェースを介して点火プラグ112のイグナイタ、インジェクタ111、スロットルバルブ132、EGRバルブ123等に対して出力する。
【0031】
上述の通り、既に蓄電装置3に閾値以上の量の電荷を蓄えており、及び/または、走行用モータジェネレータ4に対する要求駆動力または要求出力が閾値よりも低い場合等に、内燃機関1の回転を停止させ、走行用モータジェネレータ4のみにより車両を走行させることができ、あるいは車両を停車させることができる。そのような条件が成立した場合において、本実施形態では、必ずしも直ちに内燃機関1を停止させず、ある程度の期間内燃機関1の運転を継続することがある。
【0032】
図3に、本実施形態のECU0による内燃機関1の制御の内容を示す。図3中、時点t0が、内燃機関1を停止させることができる条件が成立した時点である。破線は、時点t0における触媒141の温度が顕著に高くないときの制御の模様を表している。現在の触媒141の温度が高くないならば、即時に内燃機関1を停止させたとしても、触媒141の劣化は起こりにくい。よって、時点t0直後に内燃機関1を停止させることが許される。
【0033】
対して、図3中の実線は、時点t0における触媒141の温度が顕著に高いときの制御の模様を表している。このときに内燃機関1を停止させてしまうと、排気が触媒141を流通しなくなって触媒141の温度がなかなか降下せず高温に保たれる上に、触媒141内の雰囲気が酸素過多となるため、触媒141の劣化が起こる。そこで、本実施形態のECU0は、時点t0での触媒の141の温度が高いとき、時点t0での触媒の141の温度がより低いときと比較して、時点t0から実際に内燃機関1を停止させる時点t1までの期間を延長する。
【0034】
ECU0は、現在の触媒141の現在の温度を反復的に推定している。触媒141の温度の推定の手法は、既知のものを採用することができる。具体例を挙げると、内燃機関1の運転中の触媒141の温度に関しては、まず、内燃機関の運転領域[エンジン回転数,エンジン負荷率(または、スロットルバルブ132の開度)]を基に、触媒141に流入する排気の温度の基本値を求める。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域と排気温度の基本値との関係を規定したマップデータ格納されている。ECU0は、現在の運転領域のパラメータをキーとして当該マップを検索し、排気温度の基本値を知得する。
【0035】
しかして、排気温度の基本値を、そのときの火花点火タイミング、混合気の空燃比、車速等に応じて補正する。排気温度は、点火タイミングが遅角するほど上昇し、空燃比が理論空燃比から乖離するほど低下し、車速が高くなるほど(エンジンルームに吹き込む走行風の流量が増加して排気通路14がより空冷されることから)低下する。
【0036】
さらに、触媒141に流入した排気の持つ熱が触媒141に伝わり触媒141を昇温させるのに要する時間を加味して、触媒141の推定温度を算出する。加えて、この推定温度に、触媒141の経年劣化を考慮した補正を加えてもよい。基本的には、触媒141の経年劣化の度合いが大きいほど、触媒141の推定温度を割り引く。
【0037】
無論、触媒141の温度を検出するセンサを排気通路14に設置しているシステムでは、当該センサを介して現在の触媒141の温度を実測することが可能である。
【0038】
内燃機関1を停止させるべき条件が成立した時点t0から、実際に内燃機関1を停止させる時点t1までの遅延期間中は、内燃機関1のファイアリングを続行し、排気ガスが触媒141を流通する状態を維持して、触媒141の温度降下を促す。遅延期間中の混合気及び排気ガスの空燃比は、理論空燃比またはその近傍の目標空燃比に設定する(そのように燃料噴射量を調整する)。遅延期間中のエンジン回転数は、遅延期間前のエンジン回転数と同等としてもよく、遅延期間前のエンジン回転数よりも低下させてもよい。遅延期間中のエンジン負荷率(または、スロットルバルブ132の開度)もまた、遅延期間前のエンジン負荷率と同等としてもよく、遅延期間前のエンジン負荷率よりも小さくしてもよい。遅延期間中、内燃機関1をアイドル運転またはアイドル運転に近い低回転低負荷の領域で運転することもあり得よう。
【0039】
遅延期間を通じて、触媒141の温度がある値(例えば、約750℃)以下に低下したと考えられるならば、遅延期間を終了し、内燃機関1のファイアリングを止めて、内燃機関1の回転を停止させる。結局、実際に内燃機関1を停止させる時点t1が、触媒141の温度に応じて前後することになる。なお、時点t0にて既に触媒141の温度がある値以下であるならば、即時に内燃機関1を停止させてよく、この場合には遅延期間の長さが実質的に0となる。
【0040】
遅延期間中に、蓄電装置3の蓄電量が減少し、または運転者によるアクセルペダルの踏込量が増大した場合には、発電用モータジェネレータ2による発電を再開することとなるので、内燃機関1の運転を停止せず、発電用モータジェネレータ2を駆動するべくそのままファイアリングし続けることになる。その際には、遅延期間中と比較して、エンジン回転数を上昇させ、及び/または、エンジン負荷率を増大させることがある。
【0041】
本実施形態では、ファイアリングして運転していた内燃機関1を停止させることができる所定の条件が成立した場合、そのときの排気浄化用の触媒141の温度の高低に応じて、当該条件の成立から実際に内燃機関1を停止させるまでの期間の長さを変更するハイブリッド車両の制御装置0を構成した。
【0042】
本実施形態によれば、ハイブリッド車両にあって、触媒141が顕著な高温でありながら、排気が触媒141を流通せず、かつ触媒141内の雰囲気が酸素過多となっている状況が継続することを回避できる。ひいては、触媒141の劣化の進行を効果的に抑制し、長期に亘り触媒141による有害物質の浄化能率を維持することができる。
【0043】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、ファイアリングして運転していた内燃機関1を停止させるにあたり、現在の触媒141の温度値を具体的に推定または実測し、これを基に実際に内燃機関1を停止させるまでの遅延期間の長さを決定していた。
【0044】
これ以外に、触媒141の温度値を具体的に推定または実測せず、内燃機関1を停止させるべき条件が成立する以前の内燃機関1の運転領域に応じて、実際に内燃機関1を停止させるまでの遅延期間の長さを決定してもよい。例えば、発電用モータジェネレータ2に対する発電電力の要求または走行用モータジェネレータ4に対する駆動力の要求が大きく、内燃機関1をあるエンジン回転数以上、及び/または、あるエンジン負荷率以上で高負荷運転していた場合には、そうでない場合と比較してより長い遅延期間を設けることが考えられる。内燃機関1の停止条件の成立以前に高負荷運転していた場合には、必然的に触媒141が顕著な高温となっていると推認されるからである。
【0045】
翻って、内燃機関1をそのように高負荷運転してなかった場合には、より短い遅延期間を設けるか、遅延期間を実質的に0として、速やかに内燃機関1を停止させる。内燃機関1の停止条件の成立以前に高負荷運転していなかった場合には、触媒141がそれほど高温ではないと推認されるからである。
【0046】
また、本発明を適用する対象は、シリーズ方式のハイブリッド車両には限定されない。
【0047】
その他、各部の具体的な構成や処理の内容は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ハイブリッド車両の制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
0…制御装置(ECU)
1…内燃機関
2…発電機、モータリング用電動機(発電用モータジェネレータ)
3…蓄電装置
4…走行用電動機(走行用モータジェネレータ)
62…駆動輪
図1
図2
図3