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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20241105BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241105BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620C
B60J5/06 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021034942
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022060135
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020167837
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井口 杉之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓将
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陸哉
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光伸
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1480(JP,A)
【文献】特開2013-38852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車両本体からスライドドアに配策されるワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスを前記車両本体の側で支持する本体側ユニットと、
前記ワイヤハーネスを前記スライドドアの側で支持するドア側ユニットと、を備え、
前記ドア側ユニットが、
前記ワイヤハーネスの長手方向と交差するとともに前記スライドドアに沿った互いに平行な一対の回動軸を有し、前記ワイヤハーネスにおける前記スライドドアの側の一部を支持するロータと、
前記スライドドアに固定されて前記一対の回動軸それぞれを回動可能に軸支することで前記ロータを支持するとともに、前記スライドドアの全閉時には前記ロータが前記スライドドアに沿った姿勢となるように前記一対の回動軸を位置付け、前記スライドドアが開かれる際には、まず、第1回動軸を、第2回動軸を中心として移動させて前記ロータを前記車両本体の側へと傾け、その後、移動先の前記第1回動軸を中心として前記ロータが回動するように、前記一対の回動軸それぞれを案内するガイド軸受と、を備えたことを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記ガイド軸受には、
前記第1回動軸の端部が嵌入され、前記ロータが前記スライドドアに沿った姿勢になったときの前記第2回動軸を中心として前記第1回動軸を移動させることで前記ロータを前記車両本体の側へと傾かせる第1スリットと、
前記第2回動軸の端部が嵌入されて移動先の前記第1回動軸を中心として前記第2回動軸を移動させることで前記ロータを回動させる第2スリットと、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記ガイド軸受には、
前記第1回動軸の端部が嵌入され、前記ロータが前記スライドドアに沿った姿勢になったときの前記第2回動軸を中心として前記第1回動軸を移動させることで前記ロータを前記車両本体の側へと傾かせる第1ガイド孔部分と、
前記第1ガイド孔部分と交差して延在し、前記第2回動軸の端部が嵌入されて移動先の前記第1回動軸を中心として前記第2回動軸を移動させることで前記ロータを回動させる第2ガイド孔部分と、
が一体に繋がったガイド孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
【請求項4】
前記第1回動軸が、前記第2回動軸よりも太い軸であり、
前記第2ガイド孔部分における、前記第2回動軸の移動方向と交差する幅方向の孔幅が、前記第1回動軸の太さ寸法よりも短いことを特徴とする請求項3に記載の給電装置。
【請求項5】
前記第1回動軸が、前記ロータにおける前記ワイヤハーネスの延出側に対する反対側端部に設けられ、
前記第2回動軸が、前記ロータにおいて前記第1回動軸よりも前記ワイヤハーネスの延出側にあって全閉時の前記スライドドアと対面する外周面に設けられていることを特徴とする請求項1~4のうち何れか一項に記載の給電装置。
【請求項6】
前記ワイヤハーネスが、電線及び当該電線を内側に通す筒状の外装部材を有し、
前記ロータが、前記外装部材における前記スライドドアの側の端部を保持する筒状に形成され、当該端部から出て前記スライドドアの側へと配策される前記電線を内側に通し、
前記第1回動軸が筒状に形成されて前記電線を内側に通し、
前記第2回動軸が棒状に形成されることを特徴とする請求項1~5のうち何れか一項に記載の給電装置。
【請求項7】
前記ロータが、前記ワイヤハーネスの一部を内側に収める溝状の第1カバー部分と、当該第1カバー部分における溝開口を覆う蓋状の第2カバー部分と、を有し、
前記第1回動軸が、前記第1カバー部分及び前記第2カバー部分のそれぞれから互いに同軸で逆向きに突出した一対の軸部分を有し、
前記第2回動軸が、前記第1カバー部分及び前記第2カバー部分のうちの一方における側壁に形成された1本の軸であることを特徴とする請求項1~6のうち何れか一項に記載の給電装置。
【請求項8】
前記ガイド軸受が、前記スライドドアに対面して延在し、当該スライドドアに固定される固定板部分と、当該固定板部分から前記車両本体の側へと互いに対面しつつ一対が延出し、各々に前記一対の回動軸それぞれの軸支構造が設けられた一対の軸支板部分と、を備え、前記スライドドアに沿った方向からの側面視でC字形状を有していることを特徴とする請求項1~7のうち何れか一項に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアに搭載された各種機器にワイヤハーネスを介して電源を供給する給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドドアに対する給電装置として、ワイヤハーネスをU字状に曲げながらスライドドアの開閉に追随させる給電装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この給電装置では、スライドドアが開かれる際にワイヤハーネスがスムーズに曲がるように、スライドドアの側において、全閉時に車両本体の側へと傾けられた状態でワイヤハーネスが支持されている。このような支持により、スライドドアが開かれる際には、ワイヤハーネスにおけるスライドドアでの支持部分がスライドドアの動きに追随して車両本体の側へと回動して反転し易くなり、ワイヤハーネスがスムーズに曲がるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-192258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにスライドドアの側で車両本体の側へと傾けられた状態でワイヤハーネスが支持されていると、全閉時にワイヤハーネスが車室寄りに位置付けられて搭乗者の目に留まり易くなってしまう。このような状態は、車室内の見映えの上から望ましいものではない。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、スライドドアが開かれる際にワイヤハーネスをスムーズに曲げることができるとともに、全閉時にはワイヤハーネスを搭乗者の目に留まり難くすることができる給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、給電装置が、自動車の車両本体からスライドドアに配策されるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスを前記車両本体の側で支持する本体側ユニットと、前記ワイヤハーネスを前記スライドドアの側で支持するドア側ユニットと、を備え、前記ドア側ユニットが、前記ワイヤハーネスの長手方向と交差するとともに前記スライドドアに沿った互いに平行な一対の回動軸を有し、前記ワイヤハーネスにおける前記スライドドアの側の一部を支持するロータと、前記スライドドアに固定されて前記一対の回動軸それぞれを回動可能に軸支することで前記ロータを支持するとともに、前記スライドドアの全閉時には前記ロータが前記スライドドアに沿った姿勢となるように前記一対の回動軸を位置付け、前記スライドドアが開かれる際には、まず、第1回動軸を、第2回動軸を中心として移動させて前記ロータを前記車両本体の側へと傾け、その後、移動先の前記第1回動軸を中心として前記ロータが回動するように、前記一対の回動軸それぞれを案内するガイド軸受と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の給電装置によれば、スライドドアの全閉時にはワイヤハーネスにおけるスライドドアの側の一部を支持するロータがスライドドアに沿った姿勢となり、スライドドアが開かれる際の初期段階でロータが車両本体の側へと傾けられる。即ち、初期段階でロータが傾けられることでその後のワイヤハーネスのスムーズな曲がりを担保しつつ、全閉時にはワイヤハーネスがスライドドアに沿った姿勢で車両本体から離されるので、搭乗者の目に留まり難くなる。このように、上記の給電装置によれば、スライドドアが開かれる際にワイヤハーネスをスムーズに曲げることができるとともに、全閉時にはワイヤハーネスを搭乗者の目に留まり難くすることができる。尚、ここにいう「スライドドアに沿った姿勢」は、ロータとスライドドアとのなす角度が0°となる姿勢に限るものではなく、ロータがスライドドアに対して例えば10°未満等の角度で若干傾いた姿勢も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】給電装置の第1実施形態を示す模式図である。
図2図1に示されているドア側ユニットの拡大図である。
図3図1及び図2に示されているドア側ユニットの分解斜視図である。
図4】スライドドアが図1に示されている全閉位置にあるときのドア側ユニットを示す図である。
図5】スライドドアが開かれる際の初期段階のドア側ユニットを示す図である。
図6】スライドドアが図1に示されている全開位置に達した全開時のドア側ユニットを示す図である。
図7図1図6に示されている給電装置に対する比較例の給電装置を示す模式図である。
図8図7に示されている比較例の給電装置におけるドア側ユニットの拡大図である。
図9】給電装置のワイヤハーネスが全閉時のスライドドアに収められる様子を示す模式図である。
図10図7図9に示されている比較例の給電装置のワイヤハーネスが、全閉時にスライドドアの側で車両本体の側に傾けられて支持された様子を示す図である。
図11図1図8に示されている第1実施形態の給電装置のワイヤハーネスが、全閉時にスライドドアの側で支持された様子を示す図である。
図12】第2実施形態の給電装置におけるドア側ユニットを示す模式図である。
図13】スライドドアが全閉位置にあるときのドア側ユニットを示す図である。
図14】スライドドアが開かれる際の初期段階のドア側ユニットを示す図である。
図15】スライドドアが全開位置に達した全開時のドア側ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、給電装置の一実施形態について説明する。まず、第1実施形態について説明する。
【0010】
図1は、給電装置の第1実施形態を示す模式図である。
【0011】
この図1に示されている給電装置1は、スライドドアDR1を有する自動車C1に搭載されて、スライドドアDR1に搭載された各種機器にワイヤハーネス11を介して電源を供給する装置である。図1における左右方向が自動車C1の前後方向D11に相当し、図中右側が前方に相当し、図中左側が後方に相当する。給電装置1は、ワイヤハーネス11と、本体側ユニット12と、ドア側ユニット13と、を備えている。
【0012】
ワイヤハーネス11は、自動車C1の車両本体C11からスライドドアDR1に配策される。ワイヤハーネス11は、電線111及び当該電線111を内側に通す筒状の外装部材112を有している。本体側ユニット12はワイヤハーネス11を車両本体C11の側で支持する部材であり、ドア側ユニット13はワイヤハーネス11をスライドドアDR1の側で支持する部材である。
【0013】
スライドドアDR1が自動車C1の前方側の全閉位置P11から後方側の全開位置P12へと開方向D111に開かれる際、逆に全開位置P12から全閉位置P11へと閉方向D112に閉じられる際、にはワイヤハーネス11がその動きに追随する。この給電装置1では、スライドドアDR1が全閉位置P11にあるときには、ワイヤハーネス11は本体側ユニット12を出て前方へと湾曲し、全閉位置P11のスライドドアDR1に沿って前後方向D11について前方へと直線状に延びた全閉姿勢となる。他方、スライドドアDR1が全開位置P12にあるときには、ワイヤハーネス11は本体側ユニット12を出て後方へと湾曲し、全開位置P12のスライドドアDR1に向かって斜め後方へと斜行して延びた全開姿勢となる。そして、スライドドアDR1が開閉される際には、スライドドアDR1の移動途中で、ドア側ユニット13において反転回動しつつU字状に曲がりながらスライドドアDR1の開閉に追随する。ここで、本実施形態の給電装置1では、本体側ユニット12はワイヤハーネス11における車両本体C11の側を固定的に支持している。他方で、ドア側ユニット13はワイヤハーネス11におけるスライドドアDR1の側を回動可能に支持している。以下、ドア側ユニット13について詳細に説明する。
【0014】
図2は、図1に示されているドア側ユニットの拡大図であり、図3は、図1及び図2に示されているドア側ユニットの分解斜視図である。尚、図2には、ドア側ユニット13が、スライドドアDR1が全閉位置P11にあるときの状態で示されており、図3には、ドア側ユニット13が、逆にスライドドアDR1が全開位置P12にあるときの状態で示されている。また、図2ではスライドドアDR1の図示が省略され、図3ではスライドドアDR1及びワイヤハーネス11の図示が省略されている。
【0015】
ドア側ユニット13は、ワイヤハーネス11におけるスライドドアDR1の側を回動可能に支持する部材であり、ロータ131及びガイド軸受132を備えている。
【0016】
ロータ131は、ワイヤハーネス11におけるスライドドアDR1の側の一部を、スライドドアDR1の開閉に追随して回動するように支持する部材である。このロータ131には、回動中心の役割を果たす一対の回動軸131a,131bが設けられている。一対の回動軸131a,131bは、各々、ワイヤハーネス11の長手方向D12と交差するとともにスライドドアDR1に沿った互いに平行な軸となっている。
【0017】
一対の回動軸131a,131bのうちの第1回動軸131aは、ロータ131、つまりワイヤハーネス11におけるスライドドアDR1の側を反転回動させるときの回動中心の役割を果たす。また、第2回動軸131bは、スライドドアDR1が開かれる際の初期段階において、ロータ131、つまりワイヤハーネス11におけるスライドドアDR1の側を車両本体C11の側へと傾けるときの回動中心の役割を果たす。第1回動軸131aは、ロータ131におけるワイヤハーネス11の延出側に対する反対側端部131cに設けられている。また、第2回動軸131bは、ロータ131において第1回動軸131aよりもワイヤハーネス11の延出側にあって全閉時のスライドドアDR1と対面する外周面131dに設けられている。
【0018】
ここで、本実施形態では、ロータ131は、ワイヤハーネス11の延出側に対する反対側端部131cが閉塞した四角筒状に形成され、ワイヤハーネス11の外装部材112におけるスライドドアDR1の側の端部112aを開口側で保持する構成となっている。図2に示されているように、この四角筒状のロータ131の内部には、外装部材112の端部112aから出てスライドドアDR1の側へと配策される電線111が通される。そして、第1回動軸131aは、円筒状に形成されて電線111を内側に通す配策通路を兼ねており、第2回動軸131bは、第1回動軸131aの中心軸と平行に延在する棒状に形成されている。
【0019】
また、図3に示されているように、ロータ131は、第1カバー部分131eと第2カバー部分131fとを有し、これらが組み合わされて構成されている。第1カバー部分131eは、ワイヤハーネス11の一部である外装部材112の端部112aと、当該端部112aを出た電線111と、を内側に収める溝状の部材である。また、第2カバー部分131fは、溝状の第1カバー部分131eにおける溝開口131e-4を覆う蓋状の部材である。
【0020】
第1カバー部分131eは、底壁131e-1と、この底壁131e-1におけるワイヤハーネス11の延出側を除いた3辺に立設された側壁131e-2と、を有している。また、第2カバー部分131fは、第1カバー部分131eの溝開口131e-4を塞ぐ天井壁131f-1と、この天井壁131f-1におけるワイヤハーネス11の延出側を除いた3辺から垂下した側壁131f-2と、を有している。第2カバー部分131fは、その側壁131e-2が、第1カバー部分131eの側壁131f-2の内側に収まるように第1カバー部分131eに被せられる。そして、第2カバー部分131fの側壁131f-2に設けられた3つの係止爪131f-3が、第1カバー部分131eの側壁131e-2に設けられた3つの係止孔131e-3に係止することで、四角筒状のロータ131が構築される。
【0021】
そして、第1回動軸131aが、第1カバー部分131e及び第2カバー部分131fのそれぞれから互いに同軸で逆向きに突出した一対の軸部分131a-1,131a-2を有している。これら一対の軸部分131a-1,131a-2のうち、第2カバー部分131fに設けられた天井側軸部分131a-1が、円筒状に形成されて電線111の配策通路となっている。また、第1カバー部分131eに設けられた底側軸部分131a-2は、十字状のリブ131a-3で塞がれている。
【0022】
他方、第2回動軸131bは、第1カバー部分131e及び第2カバー部分131fのうちの一方である第1カバー部分131eの側壁131e-2に形成された1本の軸となっている。
【0023】
このような構造を有したロータ131を回動可能に支持するガイド軸受132は、スライドドアDR1に固定されて一対の回動軸131a,131bそれぞれを回動可能に軸支することでロータ131を支持する。また、ガイド軸受132は、スライドドアDR1の全閉時にはロータ131がスライドドアDR1に沿った姿勢となるように一対の回動軸131a,131bを位置付ける。尚、ここにいう「スライドドアDR1に沿った姿勢」は、ロータ131とスライドドアDR1とのなす角度が0°となる姿勢に限るものではなく、ロータ131がスライドドアDR1に対して例えば10°未満等の角度で若干傾いた姿勢も含むものである。そして、スライドドアDR1が開かれる際には、ガイド軸受132は、まず、第1回動軸131aを、第2回動軸131bを中心として移動させてロータ131を車両本体C11の側へと傾ける。その後、ガイド軸受132は、移動先の第1回動軸131aを中心としてロータ131が回動するように、一対の回動軸131a,131bそれぞれを案内する。このスライドドアDR1が開かれる際のガイド軸受132による一対の回動軸131a,131bの案内については、別図を用いて再度説明する。
【0024】
ガイド軸受132には、第1回動軸131aを回動可能に軸支するとともに案内する第1スリット132aと、第2回動軸131bを回動可能に軸支するとともに案内する第2スリット132bと、が設けられている。
【0025】
第1スリット132aは、第1回動軸131aにおける一対の端部が嵌入されるように一対が設けられている。各第1スリット132aは、ロータ131がスライドドアDR1に沿った姿勢になったときの第2回動軸131bを中心とした円弧状の第1回動方向D13に第1回動軸131aを移動させるように案内する。この案内により、各第1スリット132aは、ロータ131を車両本体C11の側へと傾かせる。各第1スリット132aは、ガイド軸受132における後述の軸支板部分132dの中央からスライドドアDR1寄りの位置まで短円弧状に延びている。
【0026】
第2スリット132bは、第2回動軸131bにおける一対の端部が嵌入されるように一対が設けられている。各第2スリット132bは、第1スリット132aにおける第1回動方向D13の端部まで移動した移動先の第1回動軸131aを中心とした円弧状の第2回動方向D14に第2回動軸131bを移動させる。この案内により、各第2スリット132bは、ロータ131を第2回動方向D14に回動させる。各第2スリット132bは、後述の軸支板部分132dにおいて、第1スリット132aよりもワイヤハーネス11の延出側でスライドドアDR1寄りとなる位置から延びている。即ち、各第2スリット132bは、上記位置から、一旦はスライドドアDR1から離れつつ円弧を描いてスライドドアDR1に近づくように長円弧状に延びている。
【0027】
また、ガイド軸受132は、固定板部分132cと、一対の軸支板部分132dと、を備え、スライドドアDR1に沿った矢印D15方向からの側面視でC字形状を有した部材となっている。固定板部分132cは、スライドドアDR1に対面して延在し、当該スライドドアDR1に固定される部位である。軸支板部分132dは、固定板部分132cから車両本体C11の側へと、相互間にロータ131の配置空間を空けて互いに対面しつつ一対が延出した部位である。各軸支板部分132dには、上記の一対の回動軸131a,131bそれぞれの軸支構造として第1スリット132a及び第2スリット132bが設けられている。また、一対の軸支板部分132dのうち、円筒状で電線111の配策通路となっている天井側軸部分131a-1を軸支する図中上方の軸支板部分132dには、天井側軸部分131a-1を出た電線111を案内する案内壁132eが設けられている。この案内壁132eは、第1スリット132aにおける第1回動方向D13の端部に連通して図中上方に延びた角溝状の壁部分となっている。
【0028】
次に、本実施形態の給電装置1のドア側ユニット13において、ガイド軸受132によってスライドドアDR1が開かれる際に行われる、一対の回動軸131a,131bの案内と、その案内によるロータ131の回動について説明する。
【0029】
図4は、スライドドアが図1に示されている全閉位置にあるときのドア側ユニットを示す図であり、図5は、スライドドアが開かれる際の初期段階のドア側ユニットを示す図である。また、図6は、スライドドアが図1に示されている全開位置に達した全開時のドア側ユニットを示す図である。
【0030】
まず、図4に示されているように、スライドドアDR1が全閉位置P11にあるときのドア側ユニット13では、ロータ131における第1回動軸131aは、ガイド軸受132における第1スリット132aの軸支板部分132d中央寄りの端部に当接している。また、第2回動軸131bは、第2スリット132bにおける電線111の延出側でスライドドアDR1寄りの端部に当接している。第1回動軸131aや第2回動軸131bのこのような位置付けは、ワイヤハーネス11を支持するドア側ユニット13が、全閉位置P11まで閉じられたスライドドアDR1によって自動車C1の前方へと牽引されることで行われる。このような全閉時には、第1回動軸131aや第2回動軸131bの上記の位置付けにより、ロータ131がスライドドアDR1に沿った姿勢となり、その結果、ワイヤハーネス11もスライドドアDR1に沿って直線状に前方へと延びた状態となる。
【0031】
次に、スライドドアDR1が開かれる際の初期段階では、図5に示されているように、第2スリット132bの端部に当接した第2回動軸131bを中心に、第1回動軸131aが第1スリット132aに案内されて第1回動方向D13に回動する。この時の回動は、第1回動軸131aが第1スリット132aにおけるスライドドアDR1寄りの端部に当接するまで続けられる。このような回動により、ロータ131が車両本体C11の側へと矢印D16方向に傾けられ、その結果、ワイヤハーネス11のスライドドアDR1寄りの部分も、図1に示されているように車両本体C11の側へと傾けられる。ワイヤハーネス11のスライドドアDR1寄りの部分がこのように傾けられることで、ワイヤハーネス11は、この後のスライドドアDR1の移動に追随して図1に示されているように前方側へと反転回動して、前方側に凸のU字状にスムーズに曲がるようになる。
【0032】
図5に示されている初期段階を経てスライドドアDR1が開かれると、図6に示されているように、第1スリット132aの端部に当接した第1回動軸131aを中心にロータ131が矢印D17方向に反転回動する。第2スリット132bは、このときのロータ131の動きを妨げずに安定させるべくロータ131の回動軌道に沿って円弧状に設けられている。これにより、ロータ131は、スライドドアDR1の動きに追随して安定した軌道で回動する。また、第2スリット132bは、スライドドアDR1が全開位置P12に達するまでのロータ131の軌道長に対して、余裕をもって長めに形成されている。このため、スライドドアDR1が全開位置P12に達しても、図6に示されているように、第2回動軸131bは第2スリット132bの端部に当接することなく、両者間には間隙が空いた状態となる。
【0033】
また、スライドドアDR1が全開位置P12から全閉位置P11へと閉じられる際には、ワイヤハーネス11が途中でU字状に曲がりつつ、ドア側ユニット13において逆向きに反転回動し、図1に示されている全閉時の状態に至る。
【0034】
以上に説明した第1実施形態の給電装置1によれば、スライドドアDR1の全閉時にはワイヤハーネス11におけるスライドドアDR1の側の一部を支持するロータ131がスライドドアDR1に沿った姿勢となる。そして、スライドドアDR1が開かれる際の初期段階でロータ131が車両本体C11の側へと傾けられる。即ち、初期段階でロータ131が傾けられることでその後のワイヤハーネス11のスムーズな曲がりが担保されることとなる。ここで、本実施形態の給電装置1によって得られる効果について更に説明する前に、当該給電装置1に対する比較例について説明する。
【0035】
図7は、図1図6に示されている給電装置に対する比較例の給電装置を示す模式図であり、図8は、図7に示されている比較例の給電装置におけるドア側ユニットの拡大図である。図7及び図8における左右方向が自動車C5の前後方向D51に相当し、図中右側が前方に相当し、図中左側が後方に相当する。
【0036】
比較例の給電装置5も、上述の第1実施形態と同様に、ワイヤハーネス51と、本体側ユニット52と、ドア側ユニット53と、を備えている。ワイヤハーネス51は、自動車C5の車両本体C51からスライドドアDR5に配策される。ワイヤハーネス51は、電線511及び外装部材512を有している。このワイヤハーネス51が、本体側ユニット52によって車両本体C51の側で支持され、ドア側ユニット53によってスライドドアDR5の側で支持されて給電装置5が構成されている。
【0037】
ここで、本比較例では、図8に示されているように、ドア側ユニット53におけるロータ531には、回動軸531aが一軸のみ設けられており、この回動軸531aを介してロータ531が軸受532に回動自在に支持されている。そして、この軸受532において、ロータ531は、全閉時のスライドドアDR5に対して車両本体C51の側へと所定の傾き角θ5で傾くように支持されている。これにより、スライドドアDR5が開かれる際には、スライドドアDR5の動きに追随してロータ531がスムーズに反転回動し、図7に示されているように、ワイヤハーネス51が自動車C5の前方側に凸のU字状に曲げられることとなる。
【0038】
ところで、給電装置5のワイヤハーネス51は、全閉時には、搭乗者の目になるべく留まらないように、スライドドアDR1の側で次のように収められた状態となる。
【0039】
図9は、給電装置のワイヤハーネスが全閉時のスライドドアに収められる様子を示す模式図である。この図9には、給電装置5と全閉時のスライドドアDR5について、車室内から見た模式的な平面図と、当該平面図におけるV51-V51線に沿った模式的な断面図と、が示されている。
【0040】
この図9に示されているように、スライドドアDR5の車室側には、全閉時に概ね自動車C5の前後方向D51に略直線状に延びるワイヤハーネス51を内側に収める収納溝DR51が設けられている。ワイヤハーネス51は、スライドドアDR5に固定されたドア側ユニット53から車両本体C51に固定された本体側ユニット52へと、収納溝DR51の内側に収められた状態で延在し、搭乗者の目から隠されることとなる。
【0041】
このとき、上述したように本比較例のドア側ユニット53では、スライドドアDR5が開かれる際にワイヤハーネス51がスムーズに曲がるように、全閉時にワイヤハーネス51におけるスライドドアDR5の側が車両本体C51の側に傾けられて支持されている。
【0042】
図10は、図7図9に示されている比較例の給電装置のワイヤハーネスが、全閉時にスライドドアの側で車両本体の側に傾けられて支持された様子を示す図である。
【0043】
この図10に示されているように、ドア側ユニット53によって、スライドドアDR5の側で車両本体C51の側に傾けられて支持された給電装置5のワイヤハーネス51は、スライドドアDR5の収納溝DR51の内側で次のような姿勢となる。即ち、ワイヤハーネス51は、ドア側ユニット53の近傍において車両本体C51の側へと矢印D52方向に凸となるように若干湾曲した後で本体側ユニット52へと向かう。このような状態では、全閉時にワイヤハーネス51が車室寄りに位置付けられて搭乗者の目に留まり易くなってしまう。このような状態は、車室内の見映えの上から望ましいものではない。
【0044】
以上、図7図10を参照して説明した比較例の給電装置5に対し、図1図8に示されている第1実施形態の給電装置1では、スライドドアDR1の全閉時にはドア側ユニット13においてロータ131がスライドドアDR1に沿った姿勢で支持される。即ち、本実施形態の給電装置1では、全閉時におけるワイヤハーネス11が次のような姿勢となる。
【0045】
図11は、図1図8に示されている第1実施形態の給電装置のワイヤハーネスが、全閉時にスライドドアの側で支持された様子を示す図である。
【0046】
この図11に示されているように、全閉時にドア側ユニット13のロータ131がスライドドアDR1に沿った姿勢となることで、収納溝DR11の内側のワイヤハーネス11は、前後方向D12に略直線状の姿勢で延在して本体側ユニット12に至る。このような姿勢のワイヤハーネス11は、収納溝DR11の内側でスライドドアDR1に沿った姿勢で車両本体C11から離されるので、搭乗者の目に留まり難くなる。そして、スライドドアDR1が開かれる際には、上述したように、その初期段階でロータ131が車両本体C11の側へと傾けられることでその後のワイヤハーネス11のスムーズな曲がりが担保される。このように、本実施形態の給電装置1によれば、スライドドアDR1が開かれる際にワイヤハーネス11をスムーズに曲げることができるとともに、全閉時にはワイヤハーネス11を搭乗者の目に留まり難くすることができる。
【0047】
ここで、本実施形態では、ガイド軸受132には、第1回動軸131aを移動させてロータ131を傾かせる第1スリット132aと、第2回動軸131bを移動させてロータ131を回動させる第2スリット132bと、が設けられている。この構成によれば、一対の回動軸131a,131bを有するロータ131について、スライドドアDR1が開かれる際の初期段階での傾けとその後の回動を、第1スリット132a及び第2スリット132bによる案内を介してスムーズに行わせることができる。
【0048】
また、本実施形態では、第1回動軸131aが、ロータ131におけるワイヤハーネス11の延出側に対する反対側端部131cに設けられている。また、第2回動軸131bは、第1回動軸131aよりもワイヤハーネス11の延出側にあって全閉時のスライドドアDR1と対面する外周面131dに設けられている。この構成によれば、第1回動軸131aよりもワイヤハーネス11の延出側でスライドドアDR1の側の第2回動軸131bを中心とすることで、ロータ131を車両本体C11の側へと傾けるように第1回動軸131aをスムーズに移動させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、ロータ131がワイヤハーネス11の外装部材112の端部を保持する筒状に形成されて内側に電線111を通し、第1回動軸131aが筒状に形成されて電線111を内側に通し、第2回動軸131bが棒状に形成されている。この構成によれば、筒状のロータ131の内側と筒状の第1回動軸131aの内側とにワイヤハーネス11の電線111を通すことで、ドア側ユニット13を小型化しつつワイヤハーネス11を良好に配策することができる。
【0050】
また、本実施形態では、ロータ131が溝状の第1カバー部分131eと蓋状の第2カバー部分131fとを有している。また、第1回動軸131aが、第1カバー部分131e及び第2カバー部分131fのそれぞれから互いに同軸で逆向きに突出した一対の軸部分131a-1,131a-2を有している。そして、第2回動軸131bは、第1カバー部分131eにおける側壁131e-2に形成された1本の軸となっている。
【0051】
この構成によれば、ロータ131が溝状の第1カバー部分131eと蓋状の第2カバー部分131fとを有することで、ドア側ユニット13の組立時等の際に、ロータ131によるワイヤハーネス11の支持を良好な作業性の下で行うことができる。そして、第1回動軸131aが、第1カバー部分131e及び第2カバー部分131fのそれぞれから突出した一対の軸部分131a-1,131a-2を、例えばワイヤハーネス11の配策経路の一部として筒状に形成すること等が可能となる。更に、第2回動軸131bが形成された1本の軸であるので、スライドドアDR1が開かれる際の初期段階でロータ131を傾ける際の中心軸を安定させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、ガイド軸受132が、固定板部分132cと、一対の軸支板部分132dと、を備え、側面視でC字形状を有している。この構成によれば、ガイド軸受132において、スライドドアDR1への良好な固定と、ロータ131の一対の回動軸131a,131bそれぞれの良好な軸支と、をコンパクトにまとめて両立させることができる。
【0053】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、ドア側ユニットの構成が上述の第1実施形態と異なっており、以下では、第2実施形態について、この第1実施形態との相違点であるドア側ユニットに注目して説明を行う。
【0054】
図12は、第2実施形態の給電装置におけるドア側ユニットを示す模式図である。
【0055】
この図12には、第1実施形態におけるドア側ユニット13を示す図2と同様に、給電装置2におけるドア側ユニット23が、スライドドアが全閉位置にあるときの状態で示されている。図12では、スライドドアの図示が省略されている。
【0056】
図12に示されているドア側ユニット23は、ワイヤハーネス21におけるスライドドアの側を回動可能に支持する部材であり、ロータ231及びガイド軸受232を備えている。
【0057】
ロータ231は、ワイヤハーネス21におけるスライドドアの側の一部を支持する部材であり、第1実施形態と同様に一対の回動軸231a,231bが設けられている。
【0058】
第1回動軸231aが、ワイヤハーネス21におけるスライドドアの側を反転回動させるときの回動中心であり、第2回動軸231bが、その初期段階において、ワイヤハーネス21におけるスライドドアの側を車両本体の側へと傾けるときの回動中心である。
【0059】
ロータ231は、ワイヤハーネス21の外装部材212におけるスライドドアの側の端部212aを開口側で保持する構成となっている。第1回動軸231aは、電線211を内側に通す配策通路を兼ねており、第2回動軸231bは、第1回動軸231aの中心軸と平行に延在する棒状に形成されている。
【0060】
ここで、本実施形態では、後述するガイド軸受232におけるコンパクトな構造を受けて、第1回動軸231a及び第2回動軸231bが、第1実施形態における第1回動軸131a及び第2回動軸131bよりも互いに接近して設けられている。
【0061】
このような構造を有したロータ231を回動可能に支持するガイド軸受232は、スライドドアに固定されて一対の回動軸231a,231bそれぞれを回動可能に軸支することでロータ231を支持する。そして、スライドドアが開かれる際には、ガイド軸受232は、まず、第1回動軸231aを、第2回動軸231bを中心として移動させてロータ231を車両本体の側へと傾ける。その後、ガイド軸受232は、移動先の第1回動軸231aを中心としてロータ231が回動するように、一対の回動軸231a,231bそれぞれを案内する。このスライドドアが開かれる際のガイド軸受232による一対の回動軸231a,231bの案内については、別図を用いて再度説明する。
【0062】
ここで、本実施形態では、このガイド軸受232に、第1回動軸231a及び第2回動軸231bの軸支と案内を行う一のガイド孔232aが設けられている。このガイド孔232aは、第1回動軸231aを軸支して案内する第1ガイド孔部分232a-1と、第2回動軸231bを軸支して案内する第2ガイド孔部分232a-2とが一体に繋がった孔となっている。
【0063】
第1ガイド孔部分232a-1は、第1回動軸231aの端部が嵌入される。そして、ロータ231がスライドドアに沿った姿勢になったときの第2回動軸231b、即ち、第2ガイド孔部分232a-2における図中の左端に位置する第2回動軸231bを中心とした短く太い円弧状の孔となっている。この円弧状の孔である第1ガイド孔部分232a-1に沿って第1回動軸231aが第1回動方向D21として矢印で示されているように短い円弧状に移動することで、ロータ231が車両本体の側へと傾くこととなる。
【0064】
第2ガイド孔部分232a-2は、第1ガイド孔部分232a-1においてロータ231が傾いたときに移動先の第1回動軸231aが位置する一端側を中心とした円弧状の孔となっている。この第2ガイド孔部分232a-2は、第1ガイド孔部分232a-1における上記の一端側を中心とし、他端側を通るように第1ガイド孔部分232a-1と交差して細く長い円弧状に延在している。第2ガイド孔部分232a-2が、第1ガイド孔部分232a-1におけるこの他端側で第1ガイド孔部分232a-1と一体に繋がって、短い矢印のような形状のガイド孔232aが形成されている。この円弧状の孔である第2ガイド孔部分232a-2に、第2回動軸2311bの端部が嵌入される。そして、第2ガイド孔部分232a-2に沿って第2回動軸231bが第2回動方向D22として矢印で示されているように長い円弧状に移動することで、ロータ231が同方向に回動することとなる。
【0065】
ガイド軸受232は、上述の第1実施形態と同様、スライドドアに対する固定板部分232cと一対の軸支板部分232dと、を備え、スライドドアに沿った矢印D23方向からの側面視でC字形状を有した部材となっている。そして、上述の第1ガイド孔部分232a-1と第2ガイド孔部分232a-2とが一体に繋がったガイド孔232aが、一対の軸支板部分232dそれぞれに、互いに対面するように設けられている。ロータ231がこれら一対の軸支板部分232dの相互間に配置されるとともに、ロータ231に設けられた一対の回動軸231a,231bの各端部がガイド孔232aに嵌入されている。
【0066】
次に、本実施形態の給電装置2のドア側ユニット23において、ガイド軸受232によってスライドドアが開かれる際に行われる、一対の回動軸231a,231bの案内と、その案内によるロータ231の回動について説明する。
【0067】
図13は、スライドドアが全閉位置にあるときのドア側ユニットを示す図であり、図14は、スライドドアが開かれる際の初期段階のドア側ユニットを示す図である。また、図15は、スライドドアが全開位置に達した全開時のドア側ユニットを示す図である。
【0068】
まず、図13に示されているように、スライドドアDR2が全閉位置P21にあるときのドア側ユニット23では、ロータ231における第1回動軸231aは、次のような状態となっている。即ち、この全閉位置P21での第1回動軸231aは、ガイド軸受232のガイド孔232aの第1ガイド孔部分232a-1における、第2ガイド孔部分232a-2との交差側の端部に当接するように位置している。他方、第2回動軸231bは、第2ガイド孔部分232a-2における図中の上側でスライドドアDR2寄りの端部に当接するように位置している。第1回動軸231aや第2回動軸231bのこのような位置付けは、ワイヤハーネス21を支持するドア側ユニット23が、全閉位置P21まで閉じられたスライドドアDR2によって自動車C2の前方へと牽引されることで行われる。このような全閉時には、第1回動軸231aや第2回動軸231bの上記の位置付けにより、ロータ231がスライドドアDR2に沿った姿勢となり、その結果、ワイヤハーネス21もスライドドアDR2に沿って直線状に前方へと延びた状態となる。
【0069】
次に、スライドドアDR2が開かれる際の初期段階では、図14に示されているように第1回動軸231aが回動する。即ち、第1回動軸231aは、第2ガイド孔部分232a-2の端部に当接した第2回動軸231bを中心に、第1ガイド孔部分232a-1に案内されて第1回動方向D21に回動する。この時の回動は、第1回動軸231aが第1ガイド孔部分232a-1におけるスライドドアDR2寄りの端部に当接するまで続けられる。このような回動により、ロータ231が車両本体の側へと矢印D24方向に傾けられ、その結果、ワイヤハーネス21のスライドドアDR2寄りの部分も車両本体の側へと傾けられる。ワイヤハーネス21のスライドドアDR2寄りの部分がこのように傾けられることで、ワイヤハーネス21は、この後のスライドドアDR2の移動に追随して前方側へと反転回動して、前方側に凸のU字状にスムーズに曲がるようになる。
【0070】
図14に示されている初期段階を経てスライドドアDR2が開かれると、図15に示されているように、第2回動軸231bが回動する。即ち、第2回動軸231bは、ガイド軸受232において、第1ガイド孔部分232a-1の端部に当接した第1回動軸231aを中心に、第2ガイド孔部分232a-2に案内されて第2回動方向D22に回動する。このような回動により、ロータ231が矢印D25方向に反転回動する。第2ガイド孔部分232a-2は、このときのロータ231の動きを妨げずに安定させるべくロータ231の回動軌道に沿って円弧状に設けられている。これにより、ロータ231は、スライドドアDR2の動きに追随して安定した軌道で回動する。第2ガイド孔部分232a-2に案内された第2回動軸231bの回動は、スライドドアDR2が全開位置P22に至るまで続けられる。本実施形態では、第2ガイド孔部分232a-2が、スライドドアDR2が全開位置P22に達したときに第2回動軸231bが端部に位置する長さに形成されている。尚、この第2ガイド孔部分は、本実施形態とは異なり、スライドドアDR2が全開位置P22に達したときに第2回動軸231bが端部に位置する長さよりも長く、全開位置P22で第2回動軸231bが円弧の途中に位置するような長さで形成されてもよい。
【0071】
また、スライドドアDR2が全開位置P22から全閉位置P21へと閉じられる際には、ワイヤハーネス21が途中でU字状に曲がりつつ、ドア側ユニット23において逆向きに反転回動して全閉時の状態に至る。
【0072】
以上に説明した第2実施形態の給電装置2によれば、まず、上述の第1実施形態の給電装置1と同様の効果が得られることは言うまでもない。即ち、本実施形態の給電装置2によっても、スライドドアDR2が開かれる際にワイヤハーネス21をスムーズに曲げることができるとともに、全閉時にはワイヤハーネス21を搭乗者の目に留まり難くすることができる。
【0073】
ここで、本実施形態では、ガイド軸受232には、第1回動軸231aをガイドする第1ガイド孔部分232a-1と、第2回動軸231bをガイドする第2ガイド孔部分232a-2と、が一体に繋がったガイド孔232が設けられている。この構成によれば、ガイド軸受232における第1回動軸231a及び第2回動軸231bのガイド部分が、第1ガイド孔部分232a-1及び第2ガイド孔部分232a-2が分離している場合に比べてコンパクトにまとまっている。このようにガイド部分がまとまっていることにより、ガイド軸受232を小型化することができ、スライドドアDR2における、ガイド軸受232を含むハーネス端部の収容に要するスペースを抑えることができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1回動軸231aが、第2回動軸231bよりも太い軸として形成されている。そして、図12に示されているように、第2ガイド孔部分232a-2における、第2回動軸231bの移動方向である第2回動方向D22と交差する幅方向の孔幅W21が、第1回動軸231aの太さ寸法よりも短くなっている。この構成によれば、第1回動軸231aを中心とした第2回動軸231bの移動の際に、第1回動軸231aが第1ガイド孔部分232a-1から第2ガイド孔部分232a-2へと移動してしまう等といった事態を効果的に回避することができる。
【0075】
尚、以上に説明した第1及び第2実施形態は給電装置の代表的な形態を示したに過ぎず、給電装置は、これらに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0076】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、給電装置の一例として、ワイヤハーネス11,21における車両本体C11の側を固定的に支持する本体側ユニット12を備えた給電装置1,2が例示されている。しかしながら、給電装置は、これに限るものではなく、回動軸を有してワイヤハーネスを支持するロータを本体側ユニットにも設け、スライドドアの開閉に追随して本体側ユニットの側でもワイヤハーネスが回動するもの等であってもよい。
【0077】
また、上述の第1実施形態では、ガイド軸受の一例として、第1回動軸131aを移動させる第1スリット132aと、第2回動軸131bを移動させる第2スリット132bと、が設けられたガイド軸受132が例示されている。また、上述の第2実施形態では、第1回動軸231a用の第1ガイド孔部分232a-1と、第2回動軸131b用の第2ガイド孔部分232a-2と、が一体となったガイド孔232aが設けられたガイド軸受232が例示されている。しかしながら、ガイド軸受において第1回動軸や第2回動軸を案内する構造はスリットやガイド孔を用いた上記構造に限るものではなく、例えば溝やレール等を用いて回動軸を案内するもの等であってもよい。ただし、ガイド軸受132に第1スリット132aと第2スリット132bとを設けることで、スライドドアDR1が開かれる際の初期段階でのロータ131の傾けとその後の回動の双方をスムーズに行わせることができる点は第1実施形態において上述した通りである。また、第1ガイド孔部分232a-1と第2ガイド孔部分232a-2とが一体となったガイド孔232aを設けることで、スライドドアDR2におけるハーネス端部の収容スペースを抑えることができる点は第2実施形態において上述した通りである。尚、上述の第1実施形態では、第1スリット及び第2スリットの各一例として、円弧状の第1スリット132a及び円弧状の第2スリット132bが例示されている。また、上述の第2実施形態では、第1ガイド孔部分及び第2ガイド孔部分の各一例として、円弧状の第1ガイド孔部分232a-1及び第2ガイド孔部分232a-2が例示されている。しかしながら、第1スリット及び第2スリットや第1ガイド孔部分及び第2ガイド孔部分は、第2回動軸を中心として第1回動軸を移動させ、第1回動軸を中心として第2回動軸を移動させるものであれば、その形状は円弧状に限るものではない。例えば、各回動軸を中心とした円弧状の移動を妨げない程度の余裕を幅に持たせた直線状のスリットや孔等であってもよい。
【0078】
また、上述の第1実施形態では、ロータにおける第1回動軸の一例として、ワイヤハーネス11の延出側に対する反対側端部131cに設けられた第1回動軸131aが例示されている。更に、ロータにおける第2回動軸の一例として、第1回動軸131aよりもワイヤハーネス11の延出側にあって全閉時のスライドドアDR1と対面する外周面131dに設けられた第2回動軸131bが例示されている。しかしながら、ロータにおける第1回動軸及び第2回動軸はこれらに限るものではない。第1回動軸及び第2回動軸は、スライドドアが開かれる際にロータの反転回動の中心となる第1回動軸と、初期段階でロータを傾ける際の中心となる第2回動軸と、であればその具体的な位置関係等は任意に設定し得るものである。ただし、ロータ131に上述した位置関係で第1回動軸131a及び第2回動軸131bを設けることで、ロータ131を車両本体C11の側へと傾けるように第1回動軸131aをスムーズに移動させることができる点は第1実施形態において上述した通りである。尚、上述の第2実施形態では、ロータ231における第1回動軸231a及び第2回動軸231bの形成位置については説明及び図示が割愛されている。ただし、この第2実施形態のロータ231における第1回動軸231a及び第2回動軸231bについても、その具体的な位置関係等は任意に設定し得る点は第1実施形態と同様である。
【0079】
また、上述の第1実施形態では、給電装置におけるワイヤハーネスの一例として、電線111及び外装部材112を有したワイヤハーネス11が例示されている。そして、給電装置の一例として、筒状のロータ131の内側と、そのロータ131に設けた筒状の第1回動軸131aの内側と、に電線111が通され、第2回動軸131bは棒状に形成されている給電装置1が例示されている。しかしながら、給電装置は、これに限るものではなく、ワイヤハーネスが外装部材を備えず電線のみからなるものであってもよく、ロータや第1回動軸の内側に電線を通ず、電線経路は別途に設けることとしてもよい。ただし、上述のワイヤハーネス11を用い、ロータ131や第1回動軸131aの内側を電線経路とすることで、ドア側ユニット13を小型化しつつワイヤハーネス11を良好に配策することができる点は第1実施形態において上述した通りである。
【0080】
また、上述の第1実施形態では、ロータの一例として、第1カバー部分131eと第2カバー部分131fを有したロータ131が例示されている。また、第1回動軸の一例として、各カバー部分から突出した一対の軸部分131a-1,131a-2を有した第1回動軸131aが例示されている。そして、第2回動軸の一例として、第1カバー部分131eにおける側壁131e-2に形成された1本の軸である第2回動軸131bが例示されている。しかしながら、ロータ、第1回動軸、及び第2回動軸、はこれらに限るものではない。ロータを一体成形の筒状物等としてもよく、第1回動軸を1本の軸としてもよく、第2回動軸を2つのカバー部分それぞれから突出した一対の軸部分を有するものとしてもよい。ただし、2つのカバー部分を有するロータ131を用いることで、ロータによるワイヤハーネスの支持を良好な作業性の下で行うことができる点は第1実施形態において上述した通りである。また、2つのカバー部分それぞれから突出した一対の軸部分131a-1,131a-2を有した第1回動軸131aを用いることで、第1回動軸131aをワイヤハーネス11の配策経路の一部として利用可能となる点も第1実施形態において上述した通りである。そして、第2回動軸131bを1本の軸とすることで、ロータ131を傾ける際の中心軸を安定させることができる点も第1実施形態において上述した通りである。
【0081】
また、上述の第1及び第2実施形態では、ガイド軸受の一例として、固定板部分132c,232cと一対の軸支板部分132d,232dとを備え、側面視でC字形状を有したガイド軸受132,232が例示されている。しかしながら、ガイド軸受は、これに限るものではなく、2軸のロータを軸支/案内可能なものであれば、その具体的な形状等は任意に設定し得るものである。ただし、上述したC字形状のガイド軸受132,232を用いることで、スライドドアへの良好な固定と、ロータの良好な軸支と、をコンパクトにまとめて両立させることができる点は上述した通りである。
【0082】
また、第1ガイド孔部分と第2ガイド孔部分とが一体に繋がったガイド孔を設ける上述の第2実施形態では、第1回動軸及び第2ガイド孔部分の一例として、次のような形態が例示されている。即ち、第2実施形態では、第2回動軸231bよりも太い第1回動軸231a、及び、孔幅W21が第1回動軸231aの太さ寸法よりも短い第2ガイド孔部分232a-2が例示されている。しかしながら、第1ガイド孔部分と第2ガイド孔部分とが一体に繋がったガイド孔を設けるにしても、第1回動軸の太さや第2ガイド孔部分の孔幅等は任意に設定し得るものである。ただし、上記寸法の第1回動軸231aや第2ガイド孔部分232a-2を採用することで、回動中心としての動作中に第1回動軸231aが第2ガイド孔部分232a-2へ移動してしまう等といった事態を効果的に回避できる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0083】
1,2 給電装置
11,21 ワイヤハーネス
12 本体側ユニット
13,23 ドア側ユニット
111,211 電線
112,212 外装部材
112a,212a 端部
131,231 ロータ
131a,231a 第1回動軸
131a-1 天井側軸部分
131a-2 底側軸部分
131b,231b 第2回動軸
131c 反対側端部
131d 外周面
131e 第1カバー部分
131e-1 底壁
131e-2,131f-2 側壁
131e-3 係止孔
131e-4 溝開口
131f 第2カバー部分
131f-1 天井壁
131f-3 係止爪
132,232 ガイド軸受
132a 第1スリット
132b 第2スリット
132c,232c 固定板部分
132d,232d 軸支板部分
132e 案内壁
232a ガイド孔
232a-1 第1ガイド孔部分
232a-2 第2ガイド孔部分
C1,C2 自動車
C11 車両本体
DR1,DR2 スライドドア
P11,P21 全閉位置
P12,P22 全開位置
D11 前後方向
D12 長手方向
D13,D21 第1回動方向
D14,D22 第2回動方向
D15,D16,D17 矢印
D111 開方向
D112 閉方向
W21 孔幅
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