(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】砂防堰堤構造及び砂防堰堤構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
E02B7/02 B
(21)【出願番号】P 2023170182
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399035386
【氏名又は名称】株式会社本久
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小布施 栄
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-138581(JP,A)
【文献】特開2008-169630(JP,A)
【文献】特開2018-021303(JP,A)
【文献】特開2015-101830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設堰堤と、
一端側が前記既設堰堤と連結された支持部材と、
前記支持部材の他端側と連結され前記既設堰堤との間に空間を形成して配置された外部保護材と、
前記既設堰堤と前記外部保護材の間に配置された構造体と、
を備え、
前記外部保護材には排水孔が形成され、
前記構造体は、現地発生土砂、あるいは現地発生土砂に砕石と製鋼スラグの少なくともいずれかの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬して生成された砂防ソイルセメント材が前記既設堰堤と前記外部保護材の間に打設され固化した砂防ソイルセメント流動タイプにより形成されている、
ことを特徴とする砂防堰堤構造。
【請求項2】
前記構造体内に配置され、前記排水孔と接続された水抜きパイプを備えている、
ことを特徴とする
請求項1に記載の砂防堰堤構造。
【請求項3】
前記水抜きパイプは、周面に形成された開口部を有している、
ことを特徴とする
請求項2に記載の砂防堰堤構造。
【請求項4】
既設堰堤と、一端側が前記既設堰堤と連結された支持部材と、前記支持部材の他端側と連結され前記既設堰堤の外壁面と対向配置された外部保護材と、前記既設堰堤と前記外部保護材の間に配置された構造体と、を備えた砂防堰堤構造の構築方法であって、
既設堰堤の外壁面に支持部材の一端側を連結し、
前記支持部材の他端側に
排水孔が形成された外部保護材を連結して前記既設堰堤と前記
外部保護部材の間に空間を形成し、
前記既設堰堤と前記外部保護材の間の空間に、現地発生土砂、あるいは現地発生土砂に砕石と製鋼スラグの少なくともいずれかの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬して生成された砂防ソイルセメント材を打設、固化させて砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体を形成する、
ことを特徴とする砂防堰堤構築方法。
【請求項5】
前記外部保護材とともに、
前記排水孔と接続される水抜きパイプを前記排水孔と対応させて設置する、
ことを特徴とする
請求項4に記載の砂防堰堤構築方法。
【請求項6】
前記外部保護材とともに、
周面に開口部が形成され前記排水孔と接続される水抜きパイプを前記排水孔と対応させて設置する、
ことを特徴とする
請求項5に記載の砂防堰堤構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
既設砂防堰堤の堤体に腹付けすることにより構築される砂防堰堤構造及び砂防堰堤構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、気温上昇に伴い土砂災害が頻発かつ激甚化する傾向にある。こうした状況を受け砂防施設の建設などハード対策のさらなる充実が求められる一方で、既存ストックの有効活用の推進が進められているところであり、既存ストックである砂防施設を現行基準に適合するように腹付けを行って改築することが行われている。
【0003】
既設砂防堰堤を改築して腹付けをする際には、例えば、
図6(A)、
図6(B)に示すように、既設堰堤11にコンクリート強度を確保するための線材(鉄筋)21を多数(およそ縦横1mピッチ)で埋込み、線材21に形状確保用の型枠22を取付けてすき間を形成し、このすき間にコンクリート23を打設して腹付け部20を構築することが一般的である。
【0004】
一方、既設堰堤にプレキャストブロックを配置し、間詰コンクリートによりプレキャストブロックを既設堰堤に固定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、腹付け部20のコンクリートが収縮すると既設堰堤11からの漏水(着色部)Wが腹付け部20の内部や既設堰堤11と腹付け部20の境界に侵入するとコンクリートが劣化する虞がある。
また、既設砂防堰堤の腹付けに生コンクリートを用いる場合、砂防堰堤が生コンクリート工場から遠方である場合や現場へのアクセスが容易でない場合がある。さらに、今後は担い手不足や労働時間や残業時間の短縮等、労働政策の転換によりさらにコンクリートの調達に支障が生ずることが考えられる。
【0007】
そこで、既設堰堤に腹付けをする改築工事で改築された砂防堰堤の腹付け部の劣化の抑制が可能な施工ができる砂防堰堤構造及び砂防堰堤構築方法に関する技術が望まれている。
【0008】
本発明はかかる技術的背景に基づいて創案されたものであって、既設の砂防堰堤に適用され、改築された砂防堰堤の腹付け部の劣化が抑制可能な施工ができる砂防堰堤構造及び砂防堰堤構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は、既設の砂防堰堤を改築したときに腹付け部の劣化が抑制可能な砂防堰堤を構築する技術につき鋭意研究した結果、既設堤体にアンカーを設置し,既設堤体の外側に配置した外部保護材とアンカーと一体をなす支持部材(引張材)との連結により形成された空間に、現地発生土砂,あるいは現地発生土砂に砕石や製鋼スラグなどの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬することにより生成された砂防ソイルセメント流動タイプを打設して既設堰堤の堤体と砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体を一体性を有する構造とすることが有効であるとの知見を得た。
また、砂防ソイルセメントはコンクリートと異なり、水セメント比が多くなることや現地発生土砂に細粒分を不規則に含み、母材の品質をコントロールできない。しかも、現地発生土砂に含まれる礫も安定したものから風化したものなど多様な性質を持つことから、砂防ソイルセメント流動タイプは、生コンクリートと比べると、収縮やひび割れを起こしやすい。さらに既設堤体が劣化し水ミチを形成している場合は、収縮やひび割れ等により生じた隙間に水が浸入することで、破壊に至る可能性も考えられることから、砂防堰堤の改築材料として用いた砂防ソイルセメント流動タイプの収縮やひび割れやすさといった特性に起因する不具合についても対応することとした。
【0010】
本発明は、
既設堰堤と、
一端側が前記既設堰堤と連結された支持部材と、
前記支持部材の他端側と連結され前記既設堰堤との間に空間を形成して配置された外部保護材と、
前記既設堰堤と前記外部保護材の間に配置された構造体と、
を備え、
前記外部保護材には排水孔が形成され、
前記構造体は、現地発生土砂、あるいは現地発生土砂に砕石と製鋼スラグの少なくともいずれかの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬して生成された砂防ソイルセメント材が前記既設堰堤と前記外部保護材の間に打設され固化した砂防ソイルセメント流動タイプにより形成されている、
ことを特徴とし、
または、
前記構造体内に配置され、前記排水孔と接続された水抜きパイプを備えている、
ことを特徴とし、
または、
前記水抜きパイプは、周面に形成された開口部を有している、
ことを特徴とし、
または、
既設堰堤と、一端側が前記既設堰堤と連結された支持部材と、前記支持部材の他端側と連結され前記既設堰堤の外壁面と対向配置された外部保護材と、前記既設堰堤と前記外部保護材の間に配置された構造体と、を備えた砂防堰堤構造の構築方法であって、
既設堰堤の外壁面に支持部材の一端側を連結し、
前記支持部材の他端側に排水孔が形成された外部保護材を連結して前記既設堰堤と前記外部保護部材の間に空間を形成し、
前記既設堰堤と前記外部保護材の間の空間に、現地発生土砂、あるいは現地発生土砂に砕石と製鋼スラグの少なくともいずれかの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬して生成された砂防ソイルセメント材を打設、固化させて砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体を形成する、
ことを特徴し、
または、
前記外部保護材とともに、
前記排水孔と接続される水抜きパイプを前記排水孔と対応させて設置する、
ことを特徴し、
または、
前記外部保護材とともに、
周面に開口部が形成され前記排水孔と接続される水抜きパイプを前記排水孔と対応設置する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る砂防堰堤構造及び砂防堰堤構築方法によれば、砂防ソイルセメントは母材の品質によって収縮やひび割れを生ずる可能性が指摘されるが、砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体が外部保護材と支持部材により緊結されることから一体性を有することで構造体の引張強度は内部の水圧等に対して安全であり、砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体の内部材料の品質の不安定さに関係なく安全な施設構築が可能となる。
また、砂防堰堤構造に水抜き構造を形成することにより、砂防ソイルセメントは母材の品質によって収縮やひび割れが発生しても有害な水を排水させ劣化の抑制が可能となる。
また、砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体により腹付けすることにより建設地近傍にある土砂の有効活用が促進できるだけでなく、生コンクリートの流通に左右されない施設構築が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る砂防堰堤構造の概略構成を説明する堤長方向に沿ってみた概念図である。
【
図2】一実施形態に係る砂防堰堤構造に適用される外部保護材の一例を説明する
図1に矢視IIで示す概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る砂防堰堤構造に適用される水抜きパイプの一例を説明する概略構成図である。
【
図4】一実施形態に係る砂防堰堤構造に適用される水抜きパイプの変形例を説明する概略構成図である。
【
図5】一実施形態に係る砂防堰堤構築方法を説明する堤長方向に沿ってみた概念図である。
【
図6】従来の改築堰堤における課題を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る砂防堰堤構造について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る砂防堰堤構造の概略構成を説明する堤長方向に沿ってみた概念図であり、
図2は砂防堰堤構造に適用される外部保護材の一例を説明する
図1に矢視IIで示す概略構成図である。また、
図3は一実施形態に係る砂防堰堤構造に適用される水抜きパイプの一例を説明する概略構成図であり、
図4は水抜きパイプの変形例を説明する概略構成図である。図において、符号1は砂防堰堤構造を、符号11は既設堰堤を、符号12は支持部材を、符号13は外部保護材を、符号14、14Aは水抜きパイプを、符号15は砂防ソイルセメント構造体を示している。
【0014】
砂防堰堤構造1は、
図1に示すように、例えば、既設堰堤11と、支持部材12と、外部保護材13と、水抜きパイプ14と、ソイルセメント15と、を備えている。また、この実施形態では既設堰堤11の外壁面11Aは土石流が発生した場合における下流側に位置されている。
【0015】
既設堰堤11は、例えばコンクリートにより構築され、堤長方向に見たときに下側が幅広とされ上方に向かうにしたがって幅が狭くなる略台形に形成された堤体を有している。
既設堰堤11は、例えば土砂災害が懸念される山間部等に設置され、経年劣化が進んだものや基準を満足しない施設が数多く存在している。
また、土砂災害により土砂が流出し、砂防堰堤や流域に多量に堆砂する土砂の処分に苦慮する場所に設置された既設堰堤11では、こうした土砂を材料として活用できることから合理的である。
なお、既設堰堤11の設置場所や設置後経過年数については任意に設定してもよい。また、生コンクリートの運搬が困難な場所(例えば輸送経路の道幅や輸送時間が長い遠方地域等)の既設堰堤に適用することは特に有効である。
【0016】
支持部材12は任意に設定することが可能であるが、例えば異形丸鋼により構成されていて一端側が一体的なアンカー部とされている。そして、支持部材12は、一端側のアンカー部が既設堰堤11の外壁面11Aからコンクリート又は砂防ソイルセメントで構成された堤体に埋設、固定されている。
支持部材12のアンカー部の深さや太さは水圧や凍結に対して安全となるように決定することが望ましい。
【0017】
具体的には、既設堰堤11に予め掘削したアンカー穴に接着剤を注入して、アンカー穴に一端側を挿入することで接着剤を介して既設堰堤11を構成するコンクリート又は砂防ソイルセメントに対して直接的に固定されている。なお、支持部材12の既設堰堤11への固定については任意に設定することが可能であり、既設堰堤11に圧入してもよいし、外壁面11Aに連結されたブラケットをアンカー部材を用いて既設堰堤11に固定してもよい。
また、支持部材12は、例えば既設堰堤11の外壁面11Aに横方向及び高さ方向にそれぞれ1m間隔に設定された格子の交差部に配置されている。
【0018】
なお、支持部材12の配置、支持部材12同士の間隔は任意に設定可能であり、横方向と高さ方向の間隔を異なる寸法に設定としてもよいし、横方向、高さ方向のいずれか一方又は両方につき一部の支持部材12同士の間隔を大きくし又は小さくして一定間隔でない配置(局所的に密又は疎)に設定してもよい。また、支持部材12の長さ、埋設寸法、大きさ(例えば、直径等)についても任意に設定することができる。
【0019】
外部保護材13は、例えば矩形の鋼板により形成されていて、
図2に示すように、砂防堰堤構造1における横方向(X方向)と、縦方向(Y方向)のそれぞれに一定間隔を空けて設定され、外部保護材13を厚さ方向に貫通する複数の排水孔13Hが形成されている。
また、外部保護材13は支持部材12の先端(他端側)に溶接部を介して連結され、既設堰堤11の外壁面11Aと間隔を空けて対向して配置されている。
さらに、外部保護材13は、型枠として構造体15の形状を確保するだけではなく、劣化保護、断面確保の機能を有するとともに、構造体15と密着して構造体15の一部のように作用することにより既存堰堤11と構造体15とを一体化する機能を有している。(
【0020】
外部保護材13と支持部材12の連結については溶接による溶接部に限定されず任意に設定することが可能であり、例えば、支持部材12に固定されたブラケットに締結部材(例えばボルト等)を用いて連結してもよい。
また、外部保護材13の構成(形状、厚さ、横方向、縦方向寸法等)は任意に設定可能であり、鋼板に限定されずコンクリート、エキスパンドメタル、擬石、修景用部材やこれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0021】
排水孔13Hの配置、数、大きさは任意に設定してもよい。
また、砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体15が外部保護材13と既設堰堤11の堤体で拘束されるため、硬化した砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体15に収縮等でひび割れが入る可能性があり、ひび割れからに水が入って凍結や膨張で破壊されることを抑制するために一定の形式(等間隔等)で設定することが好適である。
【0022】
排水孔13Hを既設堰堤11のひび割れ等に基づいて追加で形成してもよい。
既設堤11は経年劣化でひび割れが入っている場合があり、これらは施工する際の表面観察で日々確認可能であり、そのひび割れに水が浸透している場合は色の変化で水の侵入を確認してもよく、水の侵入が認められる場合にはそのひび割れは水ミチとなる可能性が高いことから、観察結果や深刻度に応じて排水穴13H水抜きパイプ14を設置してもよい。
【0023】
水抜きパイプ14は、例えば塩化ビニル等の樹脂材料により形成された一端側14Rと他端側14Fを連通する円筒形に形成されていて、
図3に示すように、周面には厚さ方向に貫通し内周面と外周面を接続する開口部14Hが長手方向及び周方向に形成されている。
具体的には、開口部14Hは、例えば長手方向における同位置で周方向に90°間隔で形成されるとともに、長手方向における隣接する位置では周方向における位置が45°ずれて形成されている。
また、水抜きパイプ14は外部保護材13の排水孔13Hと対応する位置に、例えば接着剤により連結されている。
水抜きパイプ14によれば、周方向全周にわたって開口部14Hが形成されているので、水抜きパイプ14の下方を通過する水についても水抜きパイプ14内に取り込むことができる。
【0024】
また、
図4に変形例として示す水抜きパイプ14Aのように、円筒形の周方向における半分につき、周方向および長手方向に開口部14Hが形成されていてもよい。
水抜きパイプ14Aによれば、周方向の半分に開口部14Hが形成されているので、開口部14Hが形成された部分を上側に配置することにより水抜きパイプ14A内の水が構造体15に漏れるのを抑制することで水抜きパイプ14Aを効率的に通過させて外部保護材13の排水孔13Hから排出させることが可能となる。
【0025】
なお、水抜きパイプ14については、材質(樹脂、鉄等の金属)、長手方向に沿ってみたときの断面形状(角パイプ等の矩形や多角形)、大きさ、長さ、開口部14Hの配置(ピッチや周方向角度)等、範囲、数、大きさ等について任意に設定してもよい。また、開口部14Hが形成されていない水抜きパイプを適用してもよい。
また、排水穴13H、水抜きパイプ14は、既設堰堤11の堤体に水ミチとなる可能性を有するひび割れが生じている場合は進入水が排水穴13Hに誘導されるように配置することが好適である。
【0026】
構造体15は、例えば現地発生土砂に砕石と製鋼スラグからなる改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬することにより生成された砂防ソイルセメント材を既設堰堤11の外壁面11Aと外部保護部材13の間に形成された空間に打設、固化させたソイルセメント流動タイプにより形成されている。
改質材として製鋼スラグを用いると構造体15の重量が増大する点で好適である。
なお、構造体15を現地発生土砂に砕石とセメントミルクを混錬することにより生成された砂防ソイルセメント材を打設、固化させたソイルセメント流動タイプにより形成してもよいし、砕石と製鋼スラグの少なくともいずれか一方から成る改質材を適用してもよいし、砕石と製鋼スラグのいずれか一方又は双方からなる改質材に加えて他の改質材を混入し又は砕石や製鋼スラグに代えて他の改質材を混入してもよい。
【0027】
以下、
図5を参照して、一実施形態に係る砂防堰堤構築方法について説明する
図5は、一実施形態に係る砂防堰堤構築方法の一例を説明する堤長方向に沿ってみた概念図である。
【0028】
(1)既設堰堤11と支持部材12の連結
既設堰堤11と支持部材12の連結は、
図5(A)に示すように、既設堰堤11の外壁面11Aから支持部材12のアンカー部(一端側)を埋設する。
支持部材12を配置する際には、横方向(水平方向)及び縦方向(高さ方向)に予め設定した間隔の格子の交差部と対応させて配置する。なお、支持部材12を配置する際に、既設堰堤の外壁面11Aにおける水の通過にともなって生じる変色等を観察して支持部材12の配置を設定してもよいし、上記交差部に加えて変色により決定した位置に支持部材12を追加配置してもよい。
【0029】
(2)外壁面11Aと
外部保護部材13の間の空間の形成
図5(B)に示すように、支持部材12の先端(他端側)に外部保護材13を連結して既設堰堤11の外壁面11Aと
外部保護部材13の間に空間を形成する。
外部保護材13は、例えば溶接により支持部材12に連結する。
支持部材12に連結する外部保護材13は、予め工場等で排水孔13Hが形成されたものを用いることが効率的である。なお、現地で外壁面11Aの変色等に基づいて排水孔13Hを追加で形成してもよい。
また、、施工完了後に管理箇所(排水穴部13H)以外からの漏水が認められた場合等においては,予期せぬことが発生した場合の対応策として、追加で排水穴133Hを削孔してもよい(この場合、砂防ソイルセメント材は硬化していることから水抜きパイプ14は設置しない場合もある。
【0030】
(3)水抜きパイプ14の設置
水抜きパイプの設置は、
図5(C)に示すように、支持部材12に
外部保護部材13を溶接(連結)した後に、水抜きパイプ14を排水孔13Hと対応させて接着(連結)する。
なお、水抜きパイプ14を排水孔13Hと対応させて
外部保護部材13の裏面(外壁面11A側の面)に接着(連結)して後に支持部材12に
外部保護部材13を溶接(連結)してもよいし、外部保護材13の連結に先立って既設堰堤11の外壁面11Aに水抜きパイプ14を仮置きした後にに支持部材12に
外部保護部材13を溶接(連結)してもよい。
【0031】
(4)砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体の形成
既設堰堤11と外部保護材13の間の空間に砂防ソイルセメント流動タイプから成る構造体を形成する際には、例えば現地発生土砂に砕石と製鋼スラグからなるの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬して砂防ソイルセメント材を生成する。砂防ソイルセメント材は、砂防ソイルセメント便覧に基づき、例えば設計基準強度3N/mm
2以上とし、凍結による影響や劣化影響を加味して設定することが好適である。
そして、
図5(D)に示すように、既設堰堤11と外部保護材13の間の空間に生成された砂防ソイルセメント材を打設、固化させて砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体を形成する。
【0032】
一実施形態に係る砂防堰堤構造1、砂防堰堤構築方法によれば、砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体15が外部保護材13と支持部材12により緊結されることから一体性を有することで構造体15の引張強度は内部の水圧等に対して安全となり、構造体15の内部材料の品質の不安定さに関係なく安全な砂防堰堤構造1を構築することができる。
また、砂防ソイルセメント流動タイプを用いることにより改築現場近傍にある土砂の有効活用が促進できるだけでなく、生コンクリートの流通に左右されるのを防止することができる。
また、砂防堰堤構造1は構造体15が砂防ソイルセメント流動タイプで形成されているので、コンクリートと同様に密実性に優れた構造体15を形成することができる。
【0033】
また、砂防堰堤構造1が一定間隔に配置された複数の排水孔13H、水抜きパイプ14を備えているので、砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体15が外部保護材13と既設堰堤11の堤体で拘束されて、硬化した砂防ソイルセメント流動タイプからなる構造体15に収縮等でひび割れが生じることに起因してひび割れから入った水が凍結や膨張して構造体15が破壊されるのを抑制することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、砂防堰堤構造1が排水孔13Hが形成された外部保護材13と、水抜きパイプ14とを備えている場合について説明したが、水抜きパイプ14を備えない構成としてもよいし、排水孔13Hが形成されていない外部保護材13を備えた構成としてもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、外部保護材13に予め排水孔13Hが形成されている場合について説明したが、支持部材12に外部保護材13を連結した後に水抜き穴13Hを形成してもよい。
また、上記実施形態においては、既存堰堤11の堤体がコンクリートにより構成されている場合について説明したが、コンクリートに限定されずソイルセメント(砂防ソイルセメント)等により構成されていてもよい。
また、上記実施形態においては、既設堰堤11の下流側の外壁面11Aに腹付けされた砂防堰堤構造1について説明したが、例えば既設堰堤11の上流側に腹付けをし、又は既設堰堤11の下流及び上流の両側に腹付けされた改築堰堤に適用してもよい。また、上記堰堤構造に加えてかさ上げ部を有する改築堰堤に適用してもよい。
【0036】
また、上記実施形態に関して記載した砂防堰堤構築方法は一例でありこれに限定されることなく任意にに設定してもよいい。例えば、各構成部材の設置順序、連結方法については適宜設定してもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、外部保護材13に予め排水孔13Hが形成されている場合について説明したが、支持部材12に外部保護材13を連結した後に排水穴を形成してもよい。
また、上記実施形態においては、支持部材12の先端部に連結した後に、水抜きパイプ14を外部保護材13の排水孔13Hと対応させて接着(連結)する場合について説明したが、例えば予め水抜きパイプ14を接続した外部保護材13を支持部材12の先端部に連結してもよいし、外部保護材13を設置する前に水抜きパイプ14を外壁面11Aに仮置きしてその後外部保護材13を支持部材12に連結してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 砂防堰堤構造
11 既設堰堤
12 支持部材
13 外部保護材
13H 排水孔
14 水抜きパイプ
14H 開口部
15 砂防ソイルセメント構造体
【要約】
【課題】本発明は、既設の砂防堰堤に適用され、改築された砂防堰堤の腹付け部の劣化が抑制可能な施工ができる砂防堰堤構造及び砂防堰堤構築方法を提供する。
【解決手段】本発明は、既設堰堤11と、一端側が前記既設堰堤11と連結された支持部材12と、前記支持部材12の他端側と連結され前記既設堰堤11との間に空間を形成して配置された外部保護材13と、前記既設堰堤11と前記外部保護材13の間に配置された構造体15と、を備え、前記構造体15は、現地発生土砂、あるいは現地発生土砂に砕石と製鋼スラグの少なくともいずれかの改質材を混入した母材とセメントミルクを混錬して生成された砂防ソイルセメント材が前記既設堰堤と前記外部保護材の間に打設され固化した砂防ソイルセメント流動タイプにより形成されている、ことを特徴とする砂防堰堤構造である。
【選択図】
図1