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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ケース
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/02 20120101AFI20241105BHJP
   F16H 57/03 20120101ALI20241105BHJP
【FI】
F16H57/02
F16H57/03
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024509152
(86)(22)【出願日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2023011172
(87)【国際公開番号】W WO2023182340
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2022045106
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】遠山 寿志
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-47230(JP,A)
【文献】特開2000-136868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力伝達装置を内装するケースであって、
前記ケースは、駆動力を伝達するシャフトが貫通する貫通孔が設けられた壁部を有し、
前記シャフトの軸方向から見て、前記壁部には、前記貫通孔を囲む円環部と、当該円環部から径方向外側に放射状に延びる複数の第1リブと、前記シャフトの軸中心を通る鉛直線を一方側から他方側に横断する第2リブと、が設けられており、
前記軸方向から見て、前記壁部には、当該壁部の下端面に開口する凹部が設けられており、
前記凹部は、前記鉛直線に沿う向きに窪んでおり、
前記軸方向から見て、前記凹部の底面は、前記鉛直線から離れている方が、前記下端面側に位置する形状を有しており、
前記壁部における前記凹部が設けられた領域は、前記第2リブの一端部に接続している、ケース。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹部の底面は、前記鉛直線から離れるほど前記下端面に近づく向きに傾斜する傾斜面である、ケース。
【請求項3】
請求項2において、
前記軸方向から見て、前記壁部の下端面には、複数の前記凹部が開口しており、
前記軸方向から見て、複数の前記凹部は、前記鉛直線に交差する方向に並んでおり、
前記鉛直線から離れた位置に設けられる凹部ほど、前記底面は、前記下端面側に位置する、ケース。
【請求項4】
請求項3において、
隣り合う凹部の底面は、前記鉛直線から離れるほど下端面に近づく向きに連続的に傾斜する傾斜面である、ケース。
【請求項5】
請求項1において、
前記凹部の底面は、前記鉛直線から離れるにつれて、前記下端面に段階的に近づく階段状である、ケース。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一において、
前記軸方向から見て、前記壁部には、前記鉛直線方向における前記円環部と前記第2リブとの間に第3リブが設けられており、
前記第3リブは、前記第1リブから分岐すると共に、前記鉛直線に近づく向きに延びており、
前記第3リブが分岐する前記第1リブの一端部は、前記壁部における前記凹部が設けられた領域に接続している、ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フランジ部と弧状リブとを備えるトランスミッションケースを開示している。特許文献1のトランスミッションケースは、鋳造時において、フランジ部と弧状リブに溶湯を通すことで流体抵抗を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-047230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のケースは、ドライブシャフトを支持する円環部と、当該円環部から放射状に延びるリブと、を有する。トランスミッションケースは、円環部の周りに部品を通すための穴や、油路を通すための肉厚部が設けられることがある。そのため、リブを設けられない場所が生じることがある。
そして、この種のケースは、鋳造により形成される。鋳造時において、鋳型内の溶湯は、リブに対応する凹部を介して各部に供給される。リブに対応する凹部のない所には溶湯は供給されにくい。その結果、鋳型内の溶湯の流れにアンバランスが生じ、成型後のケースに鋳巣が発生するおそれがある。鋳巣が発生すると、ケースの歩留まりが低下する。
【0005】
そこで、鋳巣の発生を低減し、歩留まりが向上するケースを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様におけるケースは、
駆動力伝達装置を内装するケースであって、
前記ケースは、駆動力を伝達するシャフトが貫通する貫通孔が設けられた壁部を有し、
前記シャフトの軸方向から見て、前記壁部には、前記貫通孔を囲む円環部と、当該円環部から径方向外側に放射状に延びる複数の第1リブと、前記シャフトの軸中心を通る鉛直線を一方側から他方側に横断する第2リブと、が設けられており、
前記軸方向から見て、前記壁部には、当該壁部の下端面に開口する凹部が設けられており、
前記凹部は、前記鉛直線に沿う向きに窪んでおり、
前記軸方向から見て、前記凹部の底面は、前記鉛直線から離れている方が、前記下端面側に位置する形状を有しており、
前記壁部における前記凹部が設けられた領域は、前記第2リブの一端部に接続している。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、鋳巣の発生を低減し、歩留まりが向上するケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、自動変速機ケースを説明する図である。
図2図2は、トランスミッションケースを説明する図である。
図3図3は、トランスミッションケースを説明する図である。
図4図4は、トランスミッションケースを説明する図である。
図5図5は、トランスミッションケースを説明する図である。
図6図6は、トランスミッションケースを説明する図である。
図7図7は、トランスミッションケースの要部拡大図である。
図8図8は、鋳型を説明する図である。
図9図9は、鋳型を説明する図である。
図10図10は、鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図11図11は、鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図12図12は、鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図13図13は、鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図14図14は、比較例に係るトランスミッションケースを説明する図である。
図15図15は、比較例に係る鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図16図16は、比較例に係る鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図17図17は、比較例に係る鋳型内の溶湯の流れを説明する図である。
図18図18は、変形例に係るトランスミッションケースを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。本実施形態では、ケースの一態様として、車両用のトランスミッションケース1を説明する。
なお、図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
【0010】
「所定方向から見て、第1要素(部品、部分等)は、第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向から見て、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
軸方向から見て、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0012】
「軸方向」とは、装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。「周方向」とは、装置を構成する部品の回転軸周りの周方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構等である。
【0013】
図1は、自動変速機ケース4を説明する図である。
図2は、トランスミッションケース1を説明する図である。図2では、トランスミッションケース1を断面で示すと共に、トランスミッション51、アウトプットシャフト53、コントロールバルブCV及びオイルパンOPを破線で示してある。
図3は、トランスミッションケース1を説明する図である。図3は、図2のA-A矢視図である。なお、図3では、コントロールバルブCV及びオイルパンOPとの接合面にクロスハッチングを付してある。
図4は、トランスミッションケース1を説明する図である。図4は、図2のB-B矢視図である。なお、図4では、シャフト支持部151及び接合部12にクロスハッチングを付してある。また、リブ6、7、8及び膨出部9にもクロスハッチングを付してある。
図5は、トランスミッションケース1を説明する図である。図5は、図4のA-A断面の模式図である。
図6は、トランスミッションケース1を説明する図である。図6は、トランスミッションケース1を車両後方側から見た斜視図である。
図7は、トランスミッションケース1を説明する図である。図7は、図5のA-A断面の模式図である。
なお、図面中、鉛直線VL方向と水平線HL方向は、トランスミッションケース1の車載状態を基準とした方向である。
【0014】
図1に示すように、自動変速機ケース4は、駆動力伝達装置5であるトルクコンバータ50と、インプットシャフト52と、トランスミッション51と、アウトプットシャフト53(シャフト)と、を収容する(図1における破線参照)。
【0015】
駆動力伝達装置5では、エンジン(図示せず)の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、トルクコンバータ50と、インプットシャフト52と、トランスミッション51と、アウトプットシャフト53と、が設けられている。駆動力伝達装置5は、回転軸Xを車両前後方向に沿わせた状態で車両に搭載される。回転軸Xは、アウトプットシャフト53の軸中心を構成する。
【0016】
駆動力伝達装置5では、エンジンの出力回転は、トルクコンバータ50からインプットシャフト52を介してトランスミッション51に伝達される。トランスミッション51に伝達された出力回転は、トランスミッション51を構成する複数の摩擦締結要素(図示せず)の締結/開放の組み合わせを変更することで、変速される。トランスミッション51で変速された出力回転は、アウトプットシャフト53を介して、図示しない車両の駆動輪に伝達される。
【0017】
図1に示すように、自動変速機ケース4は、回転軸Xに沿う向きに設けられている。自動変速機ケース4は、ブラケット3を介して車両のメンバMBに固定される。
自動変速機ケース4は、コンバータハウジング2と、トランスミッションケース1と、を有する。コンバータハウジング2は、トルクコンバータ50を収容する。トランスミッションケース1は、トランスミッション51を収容する。コンバータハウジング2、トランスミッションケース1は、回転軸X方向における車両前方側から車両後方側に向かってこの順番で配置される。
【0018】
自動変速機ケース4の車両への設置状態を基準として、鉛直線VL方向(図中、上下方向)におけるトランスミッションケース1の下部には、潤滑油(図示せず)を貯留するオイルパンOPが固定されている。
【0019】
トランスミッションケース1は、回転軸Xを囲む筒壁部10を有している。
筒壁部10は、回転軸X方向における一端10a側(車両前方側)と他端10b側(車両後方側)にそれぞれ接合部11、12を有している。
【0020】
接合部11には、回転軸X方向から、コンバータハウジング2の接合部20が当接している。これら接合部11、20は、ボルトBで互いに連結されている。
【0021】
接合部12には、回転軸X方向から、ブラケット3の接合部30が当接している。トランスミッションケース1の接合部12とブラケット3の接合部30は、ボルトBで互いに連結されている。
【0022】
図2に示すように、筒壁部10の他端10b側には、内径側に延びる壁部15が設けられている。壁部15は、回転軸Xに交差する向きで設けられている。
筒壁部10は、回転軸X方向における壁部15から一端10a側の内部空間でトランスミッション51(図中、破線参照)を収容する。筒壁部10は、回転軸X方向における壁部15より他端10b側の領域が、前記したブラケット3(図1参照)との接合部12となっている。
【0023】
壁部15は、外径側から内径側に向かうにつれて、回転軸X方向で筒壁部10の他端10b側に段階的に近づく向きに膨出している。回転軸X方向における壁部15の厚みは、T1に設定されている。
【0024】
壁部15は、回転軸Xと交差する領域に貫通孔150が形成されている。貫通孔150には、アウトプットシャフト53(図中、破線参照)が貫通する。アウトプットシャフト53は、壁部15を車両前方側から後方側に横断する。
【0025】
壁部15には、貫通孔150を囲むシャフト支持部151が設けられている。シャフト支持部151は、壁部15の車両後方側(図中、右側)の面15aに設けられている。
シャフト支持部151は、回転軸X方向における車両後方側(図2におけるB-B矢視方向)から見て円環形状を成している(図4参照)。すなわち、シャフト支持部151は円環部を構成する。
なお、以下の説明において、「回転軸X方向における車両後方側から見て」との記載を、単に「回転軸X方向から見て」と表記する。
【0026】
図2に示すように、シャフト支持部151の内周には、ベアリングB1が設けられている。アウトプットシャフト53の外周が、ベアリングB1を介してシャフト支持部151で支持されている。
【0027】
図2に示すように、鉛直線VL方向における筒壁部10の下部には、筒壁部10の内部と外部とを連通する連通孔105が形成されている。壁部15は鉛直線VL方向において連通孔105よりも下側まで延びている。鉛直線VL方向における壁部15の下端面15bには、後記する油路Ha~Hcが開口している(図3参照)。
【0028】
壁部15の下端面15b側には、フランジ部152が設けられている。フランジ部152は、壁部15の面15aから回転軸X方向に突出している。鉛直線VL方向におけるフランジ部152の下端面152aは、壁部15の下端面15bと面一である(以下の説明では、フランジ部152の下端面152aと壁部15の下端面15bとをまとめて、単に壁部15の下端面15bと表記する)。
【0029】
筒壁部10の一端10a側には、壁部13が設けられている。壁部13は、鉛直線VL方向において連通孔105よりも下側まで延びている。鉛直線VL方向において、壁部13の下端面13aは、壁部15の下端面15bと面一である。
【0030】
図3に示すように、トランスミッションケース1を鉛直線VL方向下側から見ると、壁部13、15は回転軸Xの径方向に沿う向きに設けられている。壁部13、15の端部同士は、接続壁14、16でそれぞれ接続されている。接続壁14、16は、回転軸Xに沿う向きに設けられている。これら壁部13、壁部15、接続壁14、接続壁16は、連通孔105を囲む連続壁を構成する。
【0031】
これら壁部13、壁部15、接続壁14、接続壁16には、鉛直線VL方向下側からオイルパンOP(図2における破線参照)が接合される。
図2に示すように、鉛直線VL方向におけるトランスミッションケース1とオイルパンOPとの間の空間には、コントロールバルブCVが収容される(図2における破線参照)。
【0032】
図3に示すように、壁部15の下端面15bには、3つの油路Ha、Hb、Hcが開口している。油路Ha、Hb、Hcは、回転軸Xの径方向に沿って並んでいる。
【0033】
図2に示すように、油路Hcは、壁部15の内部を鉛直線VL方向に延びている。鉛直線VL方向における油路Hcの下端は、コントロールバルブCVに設けられた油路(図示せず)と連通している。油路Hcの上端は、トランスミッションケース1内を通るケース内油路(図示せず)と連通している。なお、図2では、油路Hcを図示しているが、油路Ha、Hbも同様である。
【0034】
図3に示すように、壁部15における油路Ha、Hb、Hcが通る領域には、回転軸X方向に厚みを増した肉厚部155、156、157が設けられている。
【0035】
図3に示すように、鉛直線VL方向下側から見て、壁部15には、回転軸Xの径方向における肉厚部155の外径側に膨出部9が設けられている。膨出部9は、壁部15の面15aから回転軸X方向に膨出している。回転軸X方向における膨出部9の厚みT2は、壁部15の厚みT1よりも厚い(T2>T1)。膨出部9は、回転軸Xの径方向において、肉厚部155と接合部12とに跨って設けられている。なお、詳細は後記するが、膨出部9には、リブ6Aとリブ7が接続される(図4参照)。膨出部9は、これらリブ6Aとリブ7の剛性強度を高めるために設けられている。
【0036】
図4に示すように、回転軸Xを通る水平線HLよりも下側の領域では、壁部15から肉厚部155、156、157及び膨出部9が紙面手前側に膨出している。
また、壁部15における肉厚部157と回転軸X周りの周方向で隣り合う位置には、肉厚部158が設けられている。肉厚部158もまた、壁部15から紙面手前側に膨出している。
【0037】
肉厚部158は、回転軸Xの径方向に延びて貫通孔150とコントロールバルブCVの収容空間(図2参照)とを連通する油路(図示せず)が通る領域に設けられている。
さらに、壁部15における肉厚部158と回転軸X周りの周方向で隣り合う位置には、貫通孔159Aが設けられている。壁部15における肉厚部156と肉厚部157の間には、貫通孔159Bが設けられている。これら貫通孔159A、159Bには図示しない電装品のハーネス等が挿通される。
【0038】
ここで、図4に示すように、トランスミッションケース1を車両後方側から見ると、接合部12は、シャフト支持部151を覆う弧状を成している。回転軸X周りの周方向における接合部12の一端部12aと他端部12bは、回転軸Xを通る水平線HLよりも下側に位置している。接合部12の一端部12aと他端部12bは、壁部15のフランジ部152に接続している。フランジ部152は、回転軸Xを通る水平線HLに平行な直線HL1に沿う向きに延びている。回転軸X方向からみて、接合部12及びフランジ部152は、シャフト支持部151を囲む1つの連続壁を形成している。
【0039】
図4に示すように、トランスミッションケース1は、シャフト支持部151周りの剛性を高めるために、壁部15にリブ6、7、8を有している。
【0040】
[リブ6(第1リブ)]
図4に示すように、回転軸Xの径方向において、接合部12とシャフト支持部151との間には、複数のリブ6(第1リブ)が設けられている。リブ6は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。リブ6は、シャフト支持部151から放射状に延びている。リブ6は、回転軸Xの径方向内径側でシャフト支持部151に接続され、回転軸Xの径方向外径側で接合部12に接続している。リブ6は、壁部15の面15aから回転軸X方向に突出している(図2参照)。
【0041】
本実施形態では、壁部15のうち、肉厚部156、157、158及び貫通孔159Aが設けられた領域には、リブ6は設けられていない。また、複数のリブ6のうち、肉厚部156に最も近い位置するリブ6Aは、シャフト支持部151と膨出部9とに接続している。図5に示すように、リブ6Aの一端部61は、鉛直線VL方向で膨出部9の上面9aに接続している。
【0042】
[リブ7(第2リブ)]
図4に示すように、壁部15のうち、鉛直線VL方向におけるリブ6Aとフランジ部152の間には、リブ7(第2リブ)が設けられている。図4に示すように、鉛直線VLは、回転軸Xを通る直線である。
リブ7は、水平線HLに平行な直線HL2に沿う向きに延びると共に、回転軸Xを通る鉛直線VLを一方側から他方側に横切って設けられている。具体的には、リブ7は、壁部15における肉厚部156、157、158が設けられた領域を直線HL2方向に横断して設けられている。
リブ7の一端部71と他端部72は、接合部12の一端部12aと他端部12bにそれぞれ接続している。
【0043】
図5に示すように、リブ7の一端部71は、膨出部9にも接続されている。リブ7の一端部71は、回転軸X方向で膨出部9の側面9bに接続している。また、リブ7は、壁部15の面15aから回転軸X方向に突出している(図2参照)。
【0044】
図4に示すように、リブ7は、3つの分岐リブ73、74、75を有する。これら分岐リブ73、74、75は、直線HL2方向に間隔をあけて並んでいる。3つの分岐リブ73、74、75は、リブ7から鉛直線VL方向下向きに延びて、フランジ部152に接続している。本実施形態では、3つの分岐リブ73、74、75のうち、中央に位置する分岐リブ74が、リブ7よりも幅広に形成されている。
【0045】
[リブ8(第3リブ)]
図4に示すように、鉛直線VL方向におけるシャフト支持部151とリブ7との間には、リブ8(第3リブ)が設けられている。リブ8は、リブ6Aにおけるシャフト支持部151と膨出部9の間から分岐している。リブ8は、水平線HLに平行な直線HL3方向に延びて肉厚部156に接続している。リブ8は、壁部15の面15aから回転軸X方向に突出している(図6参照)。
【0046】
[膨出部9]
図3に示すように、膨出部9の内部には、2つの凹部91、92が設けられている。これら凹部91、92は、膨出部9を軽量化するための肉抜き穴である。
図7に示すように、凹部91、92は、直線HL1方向に並んでいる。凹部91、92は、直線HL1方向で隣り合っている。直線HL1方向において、凹部92は、凹部91よりも、回転軸Xを通る鉛直線VLから離れた位置に設けられている。
【0047】
図7に示すように、凹部91は、壁部15の下端面15bに開口していると共に、下端面15bから鉛直線VL方向上向きに深さd1で窪んでいる。凹部91の底面91aは、鉛直線VLから離れるにつれて深さd1が浅くなる向き(下端面15bに近づく向き)に傾斜している。
【0048】
凹部92は、壁部15の下端面15bに開口していると共に、下端面15bから鉛直線VL方向上向きに深さd2で窪んでいる。凹部92の深さd2は、凹部91の深さd1よりも浅く設定されている。凹部92の底面92aは、鉛直線VLから離れるにつれて、深さd2が浅くなる向き(下端面15bに近づく向き)に傾斜している。回転軸X方向から見て、凹部92の底面92aは、凹部91の底面91aよりも下側に位置する。
【0049】
凹部91の底面91aと凹部92の底面92aは、共通の直線Loに沿って傾斜している。直線Loは、鉛直線VLから離れるにつれて、下端面15bに近づく向きに傾斜する直線である。回転軸X方向から見て、膨出部9は、鉛直線VLから離れるにつれて、上面9aと、底面91a、92aとの間の厚みTが増すように形成されている。
【0050】
以下、トランスミッションケース1の鋳造について説明する。
図8は、トランスミッションケース1の鋳造に用いる鋳型を説明する図である。
図9は、トランスミッションケース1の鋳造に用いる鋳型を説明する図である。図9は、図8のA-A矢視図である。
図10は、鋳型M内の溶湯Qの流れを説明する図である。
図11は、鋳型M内の溶湯Qの流れを説明する図である。図11は、図10のA-A矢視図である。
図12図13は、鋳型M内の溶湯Qの流れを順番に説明する図である。
なお、図8図13では、トランスミッションケース1の形状に対応した鋳型Mの内部空間を破線で示している。また、図10図13では、鋳型M内における溶湯Qが供給された領域にハッチングを付している。
【0051】
トランスミッションケース1は、鋳型Mに溶湯Qを流し込むことで鋳造により製造される。溶湯Qの成分は、マグネシウム合金である。
鋳型Mは、トランスミッションケース1の形状に対応した内部空間(トランスミッションケース1’、図8図9における破線参照)を有する。以下の説明では、鋳型Mの内部空間におけるトランスミッションケース1の各部に対応した部分の符号に「’」をつけて表記する。
【0052】
図8に示すように、鋳型Mは、回転軸Xを鉛直線VL方向に沿わせて配置される。
具体的には、トランスミッションケース1’は、筒壁部10’の他端10b’側が鉛直線VL方向上側に配置され、一端10a’側が鉛直線VL方向下側に配置される。
【0053】
図8及び図9に示すように、鋳型Mには、3か所の溶湯Qの入口M1、M2、M3と、1か所の溶湯Qの出口M4が設けられている。入口M1、M2、M3及び出口M4は、鋳型Mの内部と外部とを連通する貫通孔である。
【0054】
図8に示すように、入口M1は、鉛直線VL方向における鋳型Mの下側(一端10a’側)で、壁部13’に接続されている。入口M1は、回転軸Xに沿う向きに設けられている。
【0055】
図8図9に示すように、入口M2、M3は、鉛直線VL方向における鋳型Mの上側(他端10b’側)で、壁部15’の下端面15b’に接続されている。入口M2、M3は、鉛直線VL方向において同じ位置に設けられている。入口M2、M3は、回転軸Xに直交する直線Lmに沿う向きに設けられている。
【0056】
図9に示すように、鉛直線VL方向上側から見て、入口M2は、接合部12’の他端部12b’側に接続されている。入口M3は、接合部12’の一端部12a’側に接続されている。
【0057】
図8に示すように、出口M4は、鉛直線VL方向における鋳型Mの上側(他端10b’側)で、回転軸Xを挟んで入口M2、M3と反対側に設けられている。出口M4は、直線Lmに沿う向きに設けられている。
具体的には、図9に示すように、出口M4は、接合部12’と直線Lmとの交点に接続されている。なお、図8及び図9に示すように、鋳型Mに3か所の溶湯Qの入口M1、M2、M3が有る場合を、本発明の実施形態として説明したが、本発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではなく、鋳造の必要条件によって、入口M1と入口M2との間、入口M1と入口M3との間に更に入口を1つ又は複数設けても良い。
【0058】
かかる構成のトランスミッションケース1の鋳造時の作用効果について説明する。
図10及び図11に示すように、鋳型M内の空間(トランスミッションケース1’)には、入口M1~M3から溶湯Qが射出される。溶湯Qの多くは、まずトランスミッションケース1’内を、溶湯Qの射出方向に沿う向きに流れる。なお、図11の拡大図では、鋳型M内の空間のうち、図5のA-A断面に対応する領域を示している。
【0059】
図10に示すように、入口M1から射出された溶湯Qの多くは、壁部13’に流入したのち、接続壁14’を通って、回転軸X方向に沿って流れる(矢印A)。これにより、壁部13’、接続壁14’周りが溶湯Qで満たされる。その後、溶湯Qは、回転軸Xの径方向に沿って壁部13’、接続壁14’側から筒壁部10’側に流れる(矢印B)。
なお、図示は省略するが、壁部13’に流入した溶湯Qは、接続壁16’(図3参照)側にも流れる。接続壁16’内においても、接続壁14’と同様の流れとなる(図10における矢印A、B)。
【0060】
また、図10に示すように、入口M2から射出された溶湯Qは、回転軸Xの径方向に沿って下端面15b’側から筒壁部10’側に流れる(矢印C)。入口M3から射出された溶湯Qも同様に、矢印C方向に流れる(図11参照)。
【0061】
図11に示すように、入口M2、M3から供給された直後の溶湯Qは、まず接合部12’の一端部12a’と他端部12b’周りに充填される。その後、膨出部9’、壁部15’、リブ6’などへ流れる。
【0062】
接合部12、膨出部9及びリブ6は、壁部15から回転軸X方向に突出して設けられている(図2図3参照)。よって、鋳型M内の空間(トランスミッションケース1’)では、膨出部9’やリブ6’が設けられた領域は、壁部15’よりも溶湯Qが通流する流路としての断面積が広くなっている。
従って、接合部12’の一端部12a’と他端部12b’周りに充填された溶湯Qは、壁部15’よりも膨出部9’やリブ6’を優先的に通りやすい(図11における矢印C、D)。
【0063】
ここで、壁部15’のうち、肉厚部157’、158’が設けられている領域には、リブ6’に相当するものが設けられていない。
従って、壁部15’における肉厚部157’、158’周りの領域は、リブ6’が設けられた領域よりも溶湯Qの供給速度が遅くなる。そうすると、図11に示すように、トランスミッションケース1’内の溶湯Qは、壁部15’における肉厚部157’、158’周りの領域が、直線Lm方向における出口M4から離れる方向に窪んだ状態となる。
【0064】
溶湯Qからは、ガスGが発生する。ガスGは、鋳型M内に順次供給される溶湯Qによって押し出されて、出口M4から排出される(図12参照)。
詳細は後記するが、鋳型M内の各部への溶湯Qの供給速度に差(アンバランス)が生じると、ガスGを適切に押し出せずに、ガスGを含んだまま鋳造されることがある(図17参照)。巻き込まれたガスGは、鋳造後のトランスミッションケースに鋳巣として現れる。鋳巣は、溶湯Qの供給速度の差が大きくなるほど発生しやすくなる。
【0065】
そこで、溶湯Qの供給速度に差(アンバランス)が生じることを低減するために、本実施形態にかかるトランスミッションケース1では、リブ6Aを膨出部9に接続させている。さらに、膨出部9内の凹部91の底面91aと凹部92の底面92aを、共通の直線Loに沿って傾斜させている。これにより、膨出部9では、上面9aと、底面91a、92aとの間の厚みTが、鉛直線VLから離れるにつれて厚くなっている(図7参照)。
【0066】
従って、図11の拡大領域に示すように、鋳型M内において、膨出部9’は、上面9a’と凹部91’、92’の底面91a’、92a’との間隔T’が、直線Lmから離れるにつれて広くなっている。よって、上面9a’と、凹部91’、92’の底面91a’、92a’との間の空間は、接合部12’側に大きく開口している。
【0067】
図11の拡大領域に示すように、鋳型M内において、入口M3から接合部12’の一端部12a’に充填された溶湯Qは、矢印C方向に流れると共に、膨出部9’側にも流れる。この場合において、上面9a’と、底面91a’、92a’との間の空間は、接合部12’側に大きく開口しているため、多くの溶湯Qが膨出部9’側に取り込まれる(矢印D方向)。
【0068】
膨出部9’内の溶湯Qは、接合部12’の一端部12a’側から順次流れてくる溶湯Qによって押されて、凹部92’側から凹部91’側に移動する。凹部91’側に移動した溶湯Qは、さらにリブ6A’とリブ7’に分岐して流れる(矢印D1、D2)。
【0069】
矢印D1に沿ってリブ6A’を流れる溶湯Qは、さらにシャフト支持部151’側へ向かう流れ(矢印D11)と、リブ8’側へ向かう流れ(矢印D12)に分岐する。矢印D12に沿ってリブ8’を流れる溶湯Qは、肉厚部156’を経由して、肉厚部157’、158’側に到達する。
【0070】
矢印D2に沿ってリブ7’を流れる溶湯Qは、肉厚部156’を経由して、肉厚部157’、158’側に到達する。
ここで、リブ7’は、分岐リブ73’、74’、75’を介してフランジ部152’にも接続している。入口M1(図10参照)から供給されて、矢印A方向に移動する溶湯Qの一部は、フランジ部152’に到達する。フランジ部152’に到達した溶湯Qは、さらに分岐リブ73’、74’、75’を通ってリブ7’へ供給される(矢印A1)。これにより、肉厚部157’、158’側へより多くの溶湯Qが供給される。
【0071】
このように、直線Lmに近づく向きの溶湯Qの流れ(矢印D、D2、D12)を形成することで、溶湯Qの届きにくい肉厚部157’、158’周りへの溶湯Qの供給を促進できるようになっている。これにより、溶湯Qの供給速度に差(アンバランス)が生じることを低減し、溶湯Qから発生するガスGを、出口M4側に向かって、順次押し出すことができる。よって、鋳造後のトランスミッションケース1に鋳巣が発生することを低減している(図12図13参照)。
【0072】
[比較例]
図14は、比較例に係るトランスミッションケース100を説明する図である。
図15図17は、鋳型MA内の溶湯Qの流れを順番に説明する図である。以下の比較例では、本実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0073】
図14に示すように、比較例にかかるトランスミッションケース100では、リブ7、及びリブ8を有しない点で、本実施形態と相違する。膨出部900内には、2つの凹部98、99が設けられている。回転軸X方向から見て、2つの凹部98、99は、同じ深さで形成されている点で本実施形態と相違する。
【0074】
具体的には、2つの凹部98、99は、下端面15bから鉛直線VL方向上向きに同じ深さd1だけ窪んでいる。凹部98、99の底面98a、99aは、共通の直線Lp上に沿う向きに設けられている。直線Lpは、水平線HLと平行な直線である。
【0075】
膨出部900では、鉛直線VL方向における上面9aと、凹部98、99の底面98a、99aとの間の厚みTaは、均一に形成されている。
【0076】
図15図17に示すように、トランスミッションケース100は、当該トランスミッションケース100の形状に対応した空間(トランスミッションケース100’、図15図17における破線参照)を有する鋳型MAに溶湯Qを流し込むことで形成される。
【0077】
図15の拡大領域に示すように、鋳型MA内において、直線Lm方向における膨出部900’の上面9a’と底面98a’、99a’との間隔Ta’は、均一である。接合部12’側において、膨出部900’の間隔Ta’は、本実施形態の間隔T’(図11参照)よりも狭い(Ta’<T’)。
【0078】
鋳型MA内において、入口M3から接合部12’の一端部12a’に充填された溶湯Qは、矢印C方向に流れると共に、リブ6A’と膨出部900’にも流れる(矢印D、E方向)。しかしながら、上面9a’と、凹部98’、99’の底面98a’、99a’との間の空間は、本実施形態のように接合部12’側に大きく開口しているものではない。そのため、膨出部900’側に流れる溶湯Q(矢印E方向)の量が少なくなり、リブ6A’側に多くの量の溶湯Qが流れる(矢印D方向)。
【0079】
さらに、比較例に係るトランスミッションケース100では、リブ7とリブ8を備えていないため、鋳造時において膨出部900’から直線Lmに近づく向きの溶湯Qの流れは本実施形態よりも生じにくい。従って、比較例に係るトランスミッションケース100’では、溶湯Qは、壁部15’における肉厚部157’、158’周りの領域へ供給されにくい。
【0080】
図15に示すように、リブ6A’を通流する溶湯Q(矢印D)は、膨出部900’を通る溶湯Q(矢印E)が肉厚部157’、158’周りの領域へ到達するよりも先に、シャフト支持部151’に到達する。
【0081】
そうすると、図16に示すように、先にシャフト支持部151’に到達した溶湯Qが壁となって、肉厚部157’、158’周りの領域から発生するガスGは、直線Lm方向における出口M4側に向かって押し出されることが阻害される。そうすると、鋳型MA内にガスGが取り残された状態となる。そのため、鋳造後のトランスミッションケース100には、溶湯Q内に取り残されたガスGが、鋳巣となって現れる(図17参照)。
【0082】
これに対して、図7に示すように、本実施形態に係るトランスミッションケース1では、膨出部9内の凹部92の深さd2を凹部91の深さd1よりも浅くすることで、鋳型M内において膨出部9’の接合部12’側を大きく開口させている(図11参照)。これにより、膨出部9’内に溶湯Qを取り込みやすくしている。さらに、リブ7、8を設けることで、リブ6の設けられていない肉厚部158、157側にも、鋳造時に溶湯Qが供給しやすくしている。
【0083】
これにより、鋳型M内の各部への溶湯Qの供給速度の差が小さくなり、溶湯Qから発生するガスGを巻き込んでしまうことを低減できる。よって、トランスミッションケース1の歩留まりが向上する。
【0084】
ここで、鋳巣の発生を低減するためには、凹部91、92を有しない膨出部9として、膨出部9の容積を大きくすることも考えられる。しかしながら、この場合、トランスミッションケース1の重量が増加する。本実施形態では、凹部91、92を設けることで、鋳巣の発生の低減しつつ、トランスミッションケース1の軽量化も実現している。
【0085】
なお、本実施形態では、膨出部9内に2つの凹部91、92が設けられた場合を例示したが、凹部の数は2つに限られない。少なくとも凹部91または凹部92の1つを備えていれば、トランスミッションケース1の軽量化と歩留まりの向上を実現できる。もちろん、凹部は3つ以上であってもよい。
【0086】
以下に、本発明のある態様におけるトランスミッションケース1の例を列挙する。
(1)トランスミッションケース1(ケース)は、駆動力伝達装置5のトランスミッション51を内装する。
トランスミッションケース1は、駆動力を伝達するアウトプットシャフト53が貫通する貫通孔150が設けられた壁部15を有する。
アウトプットシャフト53の回転軸X方向から見て、壁部15には、貫通孔150を囲むシャフト支持部151(円環部)と、当該シャフト支持部151から径方向外側に放射状に延びる複数のリブ6(第1リブ)と、回転軸X(シャフトの軸中心)を通る鉛直線VLを一方側から他方側に横断するリブ7(第2リブ)と、が設けられている。
壁部15には、凹部92が設けられている。
回転軸X方向から見て、凹部92は、壁部15の下端面15bに開口する。
凹部92は、鉛直線VLに沿う向きに窪んでいる。
回転軸X方向から見て、凹部92の底面92aは、鉛直線VLから離れている方が、鉛直線VL方向における下端面15b側に位置する形状を有している。
壁部15における凹部92が設けられた領域である膨出部9は、リブ7の一端部71に接続している。
【0087】
このように構成すると、鋳巣の発生を低減し、歩留まりが向上するトランスミッションケース1を提供できる。
具体的には、凹部92の底面92aは、鉛直線VLから離れるほど下端面15b側に位置する形状を有している。これにより、鋳造時において、膨出部9’内に溶湯Qを取り込みやすくなる。これにより、リブ6’を設けることができない肉厚部157’、158’周りの領域にも、膨出部9’からリブ7’を介して、溶湯Qの供給を促進できる。これにより、鋳型M内の各部への溶湯Qの供給速度の差を小さくできる。よって、溶湯Qから発生するガスGを巻き込んで、鋳巣が発生することを低減できる。
ここで、鋳巣の発生を低減するためには、凹部92を有しない膨出部9として、単に膨出部9の容積を大きくすることも考えられる。しかしながら、この場合、トランスミッションケース1の重量が増加する。本実施形態では、凹部92を設けることで、鋳巣の発生の低減しつつ、トランスミッションケース1の軽量化も実現している。
【0088】
(2)凹部92の底面92aは、鉛直線VLから離れるほど下端面15bに近づく向きに傾斜する傾斜面である。
具体的には、凹部92の底面92aは、直線Loに沿う向きに設けられている。直線Loは、鉛直線VLから離れるにつれて、下端面15bに近づく向きに傾斜する直線である。
【0089】
このように構成すると、鋳造時において、膨出部9’内で溶湯Qの渦が発生することなくスムーズにリブ7’側に送り出すことができる。また、本実施例では、凹部92の底面92a全体が下端面15bに近づく向きに傾斜する場合について説明したが、底面92aの一部が下端面15bに近づく向きに傾斜するように形成してもよい。
【0090】
(3)回転軸X方向から見て壁部15の下端面15bには、凹部91、92(複数の凹部)が開口している。
回転軸X軸方向から見て、凹部91、92は、鉛直線VLに交差する直線HL1に沿う向きに並んでいる。凹部92は、凹部91よりも鉛直線VLから離れた位置に設けられている。
凹部92の底面92aは、凹部91の底面91aよりも下端面15b側に位置する。
【0091】
凹部の数を増やすことで、トランスミッションケース1をより軽量化することができる。そこで、上記のように構成することで、トランスミッションケース1をより軽量化しつつ、鋳巣が発生することも低減できる。
【0092】
(4)凹部91、92は、鉛直線VLに交差する直線HL1方向で隣り合っている。
凹部91の底面91aと、凹部92の底面92aは、鉛直線VLから離れるほど下端面に近づく向きに連続的に傾斜する傾斜面である。
具体的には、凹部91、92の底面91a、92aは、直線Loに沿う向きに設けられている。直線Loは、鉛直線VLから離れるにつれて、下端面15bに近づく向きに傾斜する直線である。
【0093】
このように構成すると、凹部を複数設けた場合であっても、鋳造時において、膨出部9’内で溶湯Qの渦が発生することなく、スムーズにリブ7’側に送り出すことができる。
【0094】
(6)回転軸X方向から見て、壁部15には、鉛直線VL方向におけるシャフト支持部151とリブ7との間にリブ8(第3リブ)が設けられている。
リブ8は、複数のリブ6のうち、リブ6Aから分岐すると共に、鉛直線VLに近づく向きに延びている。
リブ6Aの一端部61は、膨出部9に接続している。
【0095】
このように構成すると、膨出部9’からリブ6A’を通った溶湯Qの一部を、リブ8’を介して、肉厚部157’、158’周りの領域へ供給できる。これにより、鋳型M内の各部への溶湯Qの供給速度の差を小さくできる。よって、溶湯Qから発生するガスGを巻き込んで、鋳巣が発生することを低減できる。
【0096】
[変形例]
前記した実施形態では、凹部91の底面91a、凹部92の底面92aが共通の直線Loに沿う傾斜面である場合を例示したが、この態様に限定されない。例えば、凹部の底面は、階段状であってもよい。なお、以下の変形例では、本実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0097】
図18は、変形例に係るトランスミッションケース1Aを説明する図である。
図18に示すように、トランスミッションケース1Aは、1つの凹部94が設けられた膨出部9Aを有する。
【0098】
凹部94は、壁部15の下端面15bに開口していると共に、下端面15bから鉛直線VL方向上向きに窪んでいる。凹部91の底面は、深さd1の底面94aと、深さd2の底面94bと、これら底面94aと底面94bとを接続する段差面94cと、から構成される。
【0099】
底面94a、94bは、直線HL1方向に沿う向きに設けられている。凹部94の底面94bは、底面94aよりも鉛直線VLから離れた位置に設けられている。
すなわち、凹部94の底面94a、94b及び段差面94cは、前記鉛直線VLから離れるにつれて、下端面15bに段階的に近づく階段状である。
【0100】
トランスミッションケース1Aでは、膨出部9Aの上面9aと底面94bとの間の厚みTが、膨出部9Aの上面9aと底面94aとの間の厚みよりも厚くなる(図18参照)。
従って、鋳型内において、膨出部9A’は、接合部12’側に大きく開口することになる。よって、鋳造時において、膨出部9A’内に溶湯Qを取り込みやすくなる。膨出部9A’に取り込まれた溶湯Qは、底面94a’側に移動したのち、リブ6A’、リブ7’及びリブ8’側に移動する。
【0101】
このようにすることによっても、溶湯Qの届きにくい肉厚部157’158’周りへの溶湯Qの供給を促進できるようになっている。これにより、溶湯Qの供給速度に差(アンバランス)が生じることを低減し、溶湯Qから発生するガスGを、出口M4側に向かって、順次押し出すことができる。よって、鋳造後のトランスミッションケース1Aに鋳巣が発生することを低減できる。
【0102】
変形例1におけるトランスミッションケース1A、例えば、以下の構成を有する。
(5)凹部94の底面94a、94b、及び段差面94cは、鉛直線VLから離れるにつれて、下端面15bに段階的に近づく階段状に形成されている。
【0103】
このように構成すると、膨出部9A’内に溶湯Qを取り込みやすくなる。これにより、リブ6’を設けることができない肉厚部157、158周りの領域への、溶湯Qの供給を促進できる。よって、軽量化しつつ、鋳巣の発生を低減し、歩留まりも向上するトランスミッションケース1Aを提供できる。また、複数の凹部を設けると共に、各凹部の底面を直線HL1方向に沿う方向で形成し、複数の凹部の底面により鉛直線VLから離れるにつれて、下端面15bに段階的に近づく階段状に形成してもよい。また、底面は、それぞれの凹部に傾斜面と直線HL1方向に沿う方向で形成してもよく、傾斜面と階段状とを組み合わせてもよい。
【0104】
なお、本実施形態では、ケースの一例として、車両用のトランスミッションケース1を例示したが、この態様に限定されない。鋳造により成型されるケースであれば、車両用のトランスミッションケース以外にも適用することができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0106】
1、1A トランスミッションケース(ケース)
5 駆動力伝達装置
6、6A リブ(第1リブ)
61 一端部
7 リブ(第2リブ)
71 一端部
8 リブ(第3リブ)
9 膨出部(壁部における凹部が設けられた領域)
15 壁部
151 シャフト支持部(円環部)
15b 下端面
53 アウトプットシャフト(シャフト)
91 凹部
92 凹部
94 凹部
91a 底面
92a 底面
94a 底面
94b 底面
94c 段差面
VL 鉛直線
X 回転軸(シャフトの軸中心)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18