(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241105BHJP
【FI】
F16H57/04 F
F16H57/04 J
(21)【出願番号】P 2024509229
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011613
(87)【国際公開番号】W WO2023182450
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022047610
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】湯川 洋久
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-315518(JP,A)
【文献】特開2011-21666(JP,A)
【文献】特開2001-107715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00-57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられていると共に、前記動力伝達機構を支持する隔壁部と、
前記隔壁部内に設けられていると共に、前記ハウジング内に貯留されたオイルが、ストレーナを介して吸引された後に供給される第1油路と、
前記隔壁部内に設けられた第2油路と、
前記隔壁部に設けられた凹部と、
前記凹部に配置されるフィルタ部材と、を有し、
前記凹部は、前記動力伝達機構の回転軸方向に開口を向けて設けられており、
前記第1油路と前記第2油路が、前記凹部を介して連通している、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記動力伝達装置の回転軸方向において前記凹部は、前記隔壁部の厚みを利用して設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項
1において、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て、前記凹部は、前記動力伝達機構を構成する第1回転体の回転軸と第2回転体の回転軸との間に位置している、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1回転体は、バリエータのプライマリプーリであり、
前記第2回転体は、前記バリエータのセカンダリプーリであり、
前記動力伝達装置の回転軸の径方向から見て、前記凹部は、前記バリエータとオーバーラップしている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールユニットを備え、
前記コントロールユニットは、前記動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線方向に沿う向きで設けられており、
前記動力伝達装置の回転軸方向において前記凹部は、前記コントロールユニットと前記セカンダリプーリとの間に位置している、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記セカンダリプーリの回転を規制する回転規制機構を備え、
前記鉛直線方向における前記凹部の下側に、前記プライマリプーリが位置しており、
前記凹部の前記コントロールユニット側で、前記回転規制機構の構成要素が、前記動力伝達装置の回転軸方向に沿う向きで設けられており、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て、前記第1油路は、前記プライマリプーリと前記回転規制機構の構成要素との干渉を避けた位置を、前記コントロールユニットから前記凹部まで斜めに延びている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て、前記回転規制機構の他の構成要素と、前記凹部とが重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記動力伝達装置の回転軸方向において前記フィルタ部材は、前記他の構成要素と、前記隔壁部との間に位置している、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8の何れか一項において、
前記動力伝達装置の回転軸方向において前記フィルタ部材は、前記隔壁部と、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリに巻き掛けられたベルトとの間に位置している、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項5から請求項
8の何れか一項において、
前記隔壁部は、前記ハウジング内の空間を、前記動力伝達装置の回転軸方向で隣接する第1室と第2室に区画しており、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て前記隔壁部における前記第2室側の面では、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリの潤滑用のオイルの通流路が、前記凹部の近傍で開口しており、
前記隔壁部における前記第1室側の面には、前記第2油路と前記通流路が開口していると共に、前記第2油路と前記通流路とを連絡する連絡溝が形成されており、
前記隔壁部における前記第1室側の面に取り付けられて、前記第2油路の開口と前記通流路の開口と前記連絡溝の開口を覆うカバー部材により、前記凹部と前記通流路とを連絡させる連絡路が形成されている、動力伝達装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記カバー部材の内部には、前記連絡溝との対向部に開口する分岐路が設けられており、
前記分岐路に流入したオイルは、前記動力伝達機構における前記第1回転体と前記第2回転体を除いた他の要素に供給される、動力伝達装置。
【請求項12】
請求項
10において、
前記凹部の開口を塞ぐカバーを有し、
前記凹部は、前記第2室に開口している、動力伝達装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記カバーは、前記隔壁部に支持されている、動力伝達装置。
【請求項14】
請求項
12において、
前記動力伝達装置の回転軸方向で、前記カバーは、前記隔壁部と、
前記バリエータのベルトとの間に位置している、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャッチタンクを内部に備える動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この動力伝達装置では、動力伝達機構がハウジング内に収容されている。ハウジング内には、動力伝達機構を構成する回転体の他に、回転体が掻き上げたオイルを貯留するキャッチタンクが設けられている。キャッチタンクには、動力伝達装置の各部にオイルを供給するための油路が複数接続されている。
【0005】
特許文献1では、油路の各々にフィルタを配置して、オイルに含まれる異物を除去することを示唆している。しかし、どのように油路をレイアウトして、フィルタを配置するのかについては言及がない。
【0006】
動力伝達装置に、フィルタを単純に追加すると、動力伝達装置が大型化する。
そこで、動力伝達装置の大型化を避けつつ、フィルタを配置できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられていると共に、前記動力伝達機構を支持する隔壁部と、
前記隔壁部内に設けられた第1油路と、
前記隔壁部内に設けられた第2油路と、
前記隔壁部に設けられた凹部と、
前記凹部に配置されるフィルタ部材と、を有し、
前記凹部は、前記動力伝達機構の回転軸方向に開口を向けて設けられており、
前記第1油路と前記第2油路が、前記凹部を介して連通している、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、動力伝達装置の大型化を避けつつ、フィルタを配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、車両における動力伝達装置の配置を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ケースを第2カバー側から見た図である。
【
図4】
図4は、ケースを第1カバー側から見た図である。
【
図5】
図5は、収容室を車両前方から見た図である。
【
図6】
図6は、コントロールバルブ内の油圧制御回路の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、隔壁部に設けた油路を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、隔壁部におけるオイルフィルタ周りの断面図である。
【
図9】
図9は、第2室に配置されたパーキングポール周りを模式的に示した図である。
【
図10】
図10は、第2室におけるオイルフィルタの配置を説明する図である。
【
図11】
図11は、変形例にかかる動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。なお、動力伝達装置が、モータの出力回転を伝達する装置である場合、本明細書における用語「コントロールユニット」は、インバータを意味する。
【0011】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0015】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0016】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。
【0017】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0018】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0019】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0020】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0021】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0022】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0023】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両Vにおける動力伝達装置1の配置を説明する模式図である。
図2は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0024】
図1に示すように、車両Vの前部において動力伝達装置1は、左右のフレームFR、FRの間に配置される。動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
図2に示すように、ハウジングHSの内部に、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
【0025】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0026】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0027】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0028】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合しており、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0029】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3(第3軸)上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4(第4軸)上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0030】
図3は、ケース6を、第2カバー8側から見た平面図である。
なお、
図3の拡大図では、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの図示を省略して、隔壁部62に設けた接続部625、627周りを示している。
【0031】
図3に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
図2に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第2室S2である。
【0032】
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第2室S2には、バリエータ3が収容される。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止される。第2室S2側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止される。
ケース6では、第1カバー7と第2カバー8との間の空間(第1室S1、第2室S2)の下部に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルが貯留される。
【0033】
図3に示すように、ケース6は、第2カバー8側(紙面手前側)の端面が、第2カバー8との接合部611となっている。接合部611は、隔壁部62の第2カバー8側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部611には、第2カバー8側の接合部811(
図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第2カバー8は、互いの接合部611、811同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。
これにより、ケース6の開口が第2カバー8で封止された状態で保持されて、閉じられた第1室S1が形成される。
【0034】
図3に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を、間隔をあけて囲む周壁部641と、が設けられている。
図3において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
【0035】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0036】
図3に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0037】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔622を囲む円筒状の支持壁部632が設けられている。
図3において支持壁部632は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
支持壁部632の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0038】
図3に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0039】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、支持穴623を囲む円筒状の支持壁部633が設けられている。
図3において支持壁部633は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部633は、支持穴623の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部633の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(
図2参照)が、回転可能に支持されている。
【0040】
図3に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0041】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。
図3において支持壁部634は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部634は、貫通孔624の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(
図2参照)が、回転可能に支持されている。
図2に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0042】
図3に示すようにケース6では、前記した弧状の周壁部641の下側であって、ファイナルギア45よりも車両前方側の領域に、ストレーナ10が配置されている。
図3に示すように隔壁部62では、周壁部641の下側にストレーナ10との接続部625と、メカオイルポンプMOPとの接続部627が設けられている。
接続部625の接続口625aと接続部627の接続口627aは、同一方向を向いて開口している。接続部625の接続口625aは、隔壁部62内に設けた油路626に連絡している。接続部627の接続口627aは、隔壁部62内に設けた油路628に連絡している。
油路626、628は、隔壁部62内を収容部68側(図中、右側)に、直線状に延びている。油路626は、ケース6内の油路を介して、収容部68内に収容された電動オイルポンプEOPに接続されている。油路628は、ケース6内の油路を介して、収容部68内に設置されたコントロールバルブCV(
図2参照)に連絡している。
【0043】
図3に示すように、隔壁部62における車両前方側の下部では、前記した油路626と周壁部61とが交差した領域の近傍に、ボス部645、646が設けられている。
ボス部645、646は、それぞれ第1油路635と第2油路636を囲む筒状部材である。
ボス部645、646は、紙面手前側(第2カバー8側)に突出している。ボス部645、646は、周壁部61の近傍で、上下に並んで配置されている。ボス部645のほうが、ボス部646よりも鉛直線VL方向の上側に位置している。周壁部61から見て、ボス部645、646とは反対側(図中、右側)には、コントロールバルブCVの収容部68が位置している。
【0044】
ボス部645内の第1油路635と、ボス部646内の第2油路636は、それぞれコントロールバルブCVに接続されている。
第1油路635と第2油路636は、紙面手前側(第2カバー8側)に開口を向けて設けられている。
【0045】
隔壁部62における周壁部641の上側には、開口部620が設けられている。開口部620は、車両前方側の周壁部61の近傍に設けられている。開口部620は、隔壁部62を厚み方向に貫通しており、ケース6内の第1室S1と第2室S2とを連通させている。
【0046】
図4は、ケース6を第1カバー7側から見た平面図である。なお、
図4では、開口部620の領域に交差したハッチングを付している。
図4の拡大図では、オイルフィルタ69と噴射部材70を取り外した状態を示している。
図4の拡大図では、オイルフィルタ69と噴射部材70の裏側にある取付領域R1、R2に交差したハッチングを付して示している。
図4に示すように、ケース6の第1カバー7側の面では、第2室S2を囲む周壁部61の内側に、開口部620と、貫通孔621、622が開口している。
【0047】
周壁部61における第1カバー7側の端面には、第1カバー7との接合部612が設けられている。接合部612は、隔壁部62の第1カバー7側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部612の内側が、隔壁部62となっている。
接合部612には、第1カバー7側の接合部711(
図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第1カバー7は、互いの接合部612、711同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の開口が第1カバー7で封止された状態で保持されて、閉じられた第2室S2が形成される。
【0048】
開口部620は、車両前方側の周壁部61の近傍で、周壁部61の上辺に沿って設けられている。
開口部620から見て車両後方側には、オイルフィルタ69が設けられている。
オイルフィルタ69は、開口部620に隣接する位置に設けられている。
【0049】
隔壁部62では、開口部620とオイルフィルタ69の下側に、貫通孔621が位置している。貫通孔622は、貫通孔621から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
開口部620は、貫通孔621の中心(回転軸X1)を通る鉛直線VLの車両前方側に位置している。オイルフィルタ69と貫通孔622は、鉛直線VLよりも車両後方側に位置している。
【0050】
回転軸X1方向から見てオイルフィルタ69は、貫通孔621の中心(回転軸X1)と、貫通孔622の中心(回転軸X2)との間に位置している。車両前後方向においてオイルフィルタ69は、回転軸X1寄りの位置に配置されている。オイルフィルタ69は、回転軸X1と回転軸X2を結ぶ直線Lmよりも上側であって、直線Lmに直交する直線Lnと交差する位置に設けられている。直線Lnは、直線Lm上の回転軸X1と回転軸X2の中間となる位置で、直線Lmに直交している。
オイルフィルタ69の車両後方側には、潤滑用のオイルOLの噴射部材70が設けられている。噴射部材70は、オイルフィルタ69よりも下側の車両後方側に位置している。
【0051】
図4の拡大図に示すように、隔壁部62では、周壁部61の近傍にオイルフィルタ69の取付領域R1が設けられている。取付領域R1は、回転軸X1に直交する平坦面であり、この取付領域R1に、凹部690が設けられている。
凹部690は、隔壁部62の厚みを利用して設けられており、紙面奥側に窪んでいる。凹部690は、第2室S2(紙面手前側)に開口している。凹部690は、動力伝達装置1の回転軸X(プライマリプーリ31の回転軸X1、セカンダリプーリ32の回転軸X2)方向に開口を向けている。
凹部690を間に挟んだ両側には、ボルトBLの取付穴629、629が設けられている。取付穴629には、凹部690の開口をカバー697で封止した際に、カバー697を貫通したボルトBL、BLが螺入する。
【0052】
噴射部材70の取付領域R2は、取付領域R1の斜め下方で、取付領域R1との間に間隔を空けて設けられている。取付領域R2は、紙面手前側(第2室S2)側に突出している。取付領域R2は、回転軸X1に直交する平坦面であり、油路694と、ボルト穴701が開口している。ボルト穴701には、噴射部材70の取付プレート73がビス留めされる。この状態において噴射部材70の噴射部72は、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32に巻き掛けられたベルト30との干渉を避けるために、ベルト30よりも直線Lm側に配置されている。
【0053】
図2に示すように、ケース6では、車両前方側の側面に、収容部68が付設されている。
収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。回転軸X1の径方向から見て収容部68は、ケース6の周壁部61の領域から、第1カバー7の側方まで及ぶ回転軸X1方向の範囲を持って形成されている。
【0054】
図2に示すように収容部68の底壁部682は、エンジンENG側の略半分の領域が、周壁部61と一体になっている。底壁部682の反対側の略半分の領域は、周壁部61の延長上で、第1カバー7の外周との間に隙間を開けて設けられている。
【0055】
図5に示すように、車両前方側から見て収容部68は、底壁部682の外周を全周に亘って混む囲繞壁681を有している。囲繞壁681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。接合部683は、囲繞壁681の第3カバー9側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。
図2に示すように、接合部683には、第3カバー9側の接合部911が全周に亘って接合される。収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、収容部68の開口が第3カバー9で封止された状態で保持されて、閉じられた収容室S3が形成される。
【0056】
収容室S3内には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが収容される。
図2に示すように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路95(
図6参照)が形成されている。油圧制御回路95には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁(スプール弁)が設けられている。
【0057】
図5に示すように、収容室S3内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、手前奥方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
収容室S3では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)調圧弁SP(スプール弁)の進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
【0058】
これにより、コントロールバルブ内のスプール弁の進退移動方向が、水平線方向に沿う向きで配置される。さらに、コントロールバルブ内のスプール弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置される。よって、スプール弁の進退移動が阻害されないようにしつつ、収容室S3が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0059】
図5に示すように、車両前方側から見てコントロールバルブCVは、矩形形状のバルブボディ921に切欠部923を設けた略L字形状を成している。収容室S3において切欠部923は、第1カバー7と重なる領域の下部に位置している。
車両前方側から見て切欠部923には、電動オイルポンプEOPが収容されている。
【0060】
電動オイルポンプEOPは、制御部931と、モータ部932と、ポンプ部933が、モータの回転軸Z1方向で直列に並んだ基本構成を有する。
電動オイルポンプEOPは、回転軸Z1を、動力伝達装置1の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。この状態において、ポンプ部933は、収容室S3内の最下部に位置している。ポンプ部933の吸入口933aと吐出口933bは、モータ部932との境界側に位置しており、ケース内油路にそれぞれ接続されている。
【0061】
吸入口933aは、ケース内油路と、前記した隔壁部62内の油路626(
図3参照)とを介してストレーナ10に接続されている。
ストレーナ10は、コントロールバルブCVの収容室S3とは別の第1室S1に収容されている(
図3参照)。
図5では、車両前方側から見てストレーナ10は、収容室S3の紙面の奥側の破線で示す位置に配置されている。
本実施形態では、電動オイルポンプEOPのポンプ部933を、収容室S3内の最下部に位置させることで、ポンプ部933の吸入口933aと、ストレーナ10との鉛直線VL方向の位置が近づくようにしている。
これにより、ストレーナ10と電動オイルポンプEOPの吸入口933aとを接続する油路の油路長が最短となるようにしている。
【0062】
コントロールバルブCVの上部側は、電動オイルポンプEOPの上方まで及んでいる。鉛直線VL方向(電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向)から見ると、電動オイルポンプEOPが、コントロールバルブCVと重なる位置関係で設けられている。
【0063】
コントロールバルブCVは、前記したケース内の油路(第1油路635、第2油路636)との接続口65、66を有している。
接続口65、66は、第2カバー8寄り(図中、左寄り)の位置に開口している。
動力伝達装置1の下部では、オイルクーラ20が、ケース6側の収容部68に隣接して設けられている。
オイルクーラ20は、第2カバー8の車両前方側の側面に付設されている。オイルクーラ20における第2カバー8との対向面には、オイルOLの入口205と出口206が開口している。
第2カバー8の内部には、オイルクーラ20の入口205と第1油路635とを接続する第1接続路835と、オイルクーラ20の出口206と第1油路635とを接続する第2接続路836が設けられている。
【0064】
第1接続路835と第2接続路836は、ケース6に第2カバー8を組み付けた際に、それぞれ、ケース6側のボス部645、646(
図3参照)に接合される位置に設けられている。
そのため、ケース6に第2カバー8を組み付けた際に、オイルクーラ20とコントロールバルブCVとを接続する油路(第1油路635および第1接続路835と、第2油路636および第2接続路836)が完成する。
さらに、オイルクーラ20とコントロールバルブCVとが、動力伝達装置の回転軸X方向で隣接している。すなわち、コントロールバルブCVとオイルクーラ20とを接続する油路(第1油路635および第1接続路835と、第2油路636および第2接続路836)の油路長が最短となるように、オイルクーラ20が位置決めされている。
そのため、油路を通流するオイルOLに作用する油路抵抗を低減できる。これにより、オイルポンプ(電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP)に対する負荷の低減が期待できる。
【0065】
コントロールバルブCV内の油圧制御回路95(
図6参照)は、オイルポンプで発生させた油圧から、動力伝達機構(トルクコンバータT/Cなど)の作動油圧を調圧する。
【0066】
動力伝達装置1は、オイルポンプとして、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPを1つずつ備えている。これらオイルポンプは、ハウジングHS内の下部に貯留されたオイルOLを吸引、加圧して、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95(
図6参照)に供給する。
【0067】
図6は、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95の一例を説明する図であり、油圧制御回路95におけるトルクコンバータT/Cに供給される油圧の調圧に関わる部分を示した図である。
【0068】
第1調圧弁951は、当該第1調圧弁951でのオイルOLのドレン量を調整することで、オイルポンプOPで発生させた油圧からライン圧PLを調整する。
第1調圧弁951により調整されたライン圧PLは、第2調圧弁952で調圧されたのち、ロックアップ制御弁960に供給される。
ロックアップ制御弁960は、図示しない制御装置からの指令に従って、ロックアップ制御圧を調整し、トルクコンバータT/Cに供給する。これにより、ロックアップクラッチの締結/解放の切替えが行われる。
【0069】
さらに、第1調圧弁951により調整されたライン圧PLは、第3調圧弁953からのドレン量を調整することで調圧されたのち、切替弁961に供給される。
切替弁961は、第3調圧弁953から供給されたオイルOLのトルクコンバータT/Cの入力ポートへの供給と、出力ポートから戻されたオイルOLのオイルクーラ20側への供給との切替えを行う。
【0070】
切替弁961から、オイルクーラ20側に向かうオイルOLは、ケース6側の第1油路635と第2カバー8側の第1接続路835とを通ってオイルクーラ20に供給される。オイルクーラ20で冷却されたオイルOLは、第2接続路836と第2油路636を通って、コントロールバルブCV内の油圧制御回路95に戻される。
コントロールバルブCVに戻されたオイルOLは、動力伝達装置1における潤滑が必要な部位に供給されて、動力伝達装置1の構成要素(例えば、プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)を潤滑する。
【0071】
図5に示すように、コントロールバルブCVの上部には、潤滑用のオイルOLの排出口67が、底壁部682との対向部に設けられている。この排出口67は、ケース6側の隔壁部62に対向する領域に位置しており、排出口67から排出されたオイルOLが、ケース6(隔壁部62)内の油路691(
図7参照)に排出されるようになっている。
【0072】
図7は、
図5におけるA-A線に沿って、ケース6を切断した断面を模式的に示した図である。
図8は、
図7におけるA-A線に沿って、オイルフィルタ69周りを切断した断面を模式的に示した図である。
【0073】
図7に示すように隔壁部62では、コントロールバルブCVの排出口67に対向する部位に、油路691が開口している。
油路691は、隔壁部62に設けた凹部690に、オイルOLを供給するために設けられている。
油路691の一端691aから見て凹部690は、車両後方側の上側に位置している。
隔壁部62内において油路691は、貫通孔621と開口部620との間の領域を、車両後方側の斜め上方に向けて直線状に延びている。
【0074】
凹部690は、隔壁部62の回転軸X方向の厚みを利用して設けられている。凹部690は、第2室S2(紙面手前側)に開口を向けた有底穴である。
凹部690の内周には、油路691の他端691bが開口している。凹部690の開口方向から見て、凹部690の中央には、円筒状の嵌合部698が設けられている。
【0075】
図8に示すように嵌合部698には、フィルタ部材696が外嵌して取り付けられている。フィルタ部材696は、オイルOLを通過可能な開口径を持つ樹脂または金属製の材料で、有底筒状に形成されている。そのため、フィルタ部材696は、円筒状の内部空間S5を有している。
本実施形態では、油路691から凹部690内の空間S4に流入したオイルOLが、フィルタ部材696の外側から、フィルタ部材696の内側の内部空間S5内に流入するようになっている。この際に、オイルOL内に含まれる夾雑物が、フィルタ部材696の表面に濾し取られることで、夾雑物が取り除かれたオイルOLが、内部空間S5に流入するようになっている。
【0076】
ここで、有底筒状のフィルタ部材696は、油路の途中に単純に配置するフィルタよりも表面積が大きく、かつ形状安定性が優れている。
そのため、フィルタ部材696は、油路の途中に単純に配置するフィルタよりも、目詰まりを起こし難い。さらにフィルタを配置した油路における流路抵抗も低く抑えることができる。
【0077】
本実施形態では、ケース6(隔壁部62)におけるケース内油路(油路691と、油路692、693)の経路上となる位置に、凹状の穴(凹部690)を形成して、有底筒状のフィルタ部材696を、油路の経路上に配置できるようにしている。
このように、ケース6(隔壁部62)の側面に凹状の穴を形成し、形成した凹状の穴にフィルタ部材696を設けている。
これにより、フィルタをケース内油路に単純に充填配置する場合に比べて、フィルタの表面積を増やしつつ、目詰まりを起こし難くできる。
ケース内油路は、他部品との干渉を避けるなどのレイアウトの都合で、流路断面積を大きく確保することが難しい。そのため、フィルタの有効な表面積が小さくなる傾向があり、目詰まりを起こしやすい。
【0078】
嵌合部698の内部には、油路692が設けられている。油路692は、回転軸Xに沿う向きで第1室S1側(図中、右側)に向けて延びる有底穴である。油路692の第1室S1側には、周壁部641から延びる油路693が連絡している。
図3に示すように、周壁部641は、前後進切替機構2の外周を囲む環状壁である。周壁部641の紙面手前側の端面641aには、油路693、694が開口している。さらに、周壁部641の紙面手前側の端面641aには、油路693から油路694まで延びる連絡溝695が設けられている。
なお、油路693を省略して、油路692が、周壁部641の端面641aに開口するようにしてもよい。この場合には、周壁部641の連絡溝695を、油路692から油路694まで延びるように設けることになる。
【0079】
図8に示すように、周壁部641の端面641aには、回転軸X方向からダミーカバー21が取り付けられている。
連絡溝695は、周壁部641に固定されたダミーカバー21で閉じられており、連絡溝695の部分が油路693と油路694とを連絡させる連絡路となっている。
なお、ダミーカバー21における連絡溝695との対向部には、ダミーカバー21内の油路210が開口している。
【0080】
前記したように、油路692内には、フィルタ部材696を通過したオイルOLが流入する。そのため、油路692から供給されるオイルOLが、油路694と油路210の間で分配されるようになっている。油路210内に流入したオイルOLは、前後進切替機構2を構成する摩擦締結要素の潤滑などに利用される。
【0081】
油路694は、動力伝達装置1の回転軸Xに沿う向きで設けられている。油路694の一端694aは、第2室S2に開口している。油路694の一端694aには、噴射部材70が取り付けられている。噴射部材70は、筒状部材71を有しており、筒状部材71の一端71aは、油路694の一端694a側に挿入されている。
筒状部材71の一端71a側には、筒状部材71を固定するための取付プレート73が設けられている。取付プレート73が、図示しないビスにより隔壁部62に固定されることで、噴射部材70の隔壁部62からの脱落が阻止されている。
筒状部材71の他端71bには、噴射穴72aを持つ噴射部72が設けられている。
筒状部材71は、長手方向の複数個所で湾曲しており、噴射部72を、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32に巻き掛けられたベルト30(
図4参照)の内側に挿入した位置で、位置決めしている。
【0082】
そのため、油路694に分配されたオイルOLは、筒状部材71の噴射部72に到達したのち、噴射部72の噴射穴72aから、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32に巻き掛けられたベルト30に向けて噴射される。これにより、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32とベルト30とが、噴射部72から噴射されたオイルOLで冷却および潤滑されるようになっている。
【0083】
図9は、ケース6におけるオイルフィルタ69が設けられた領域の拡大図である。
図9では、オイルフィルタ69の紙面手前側に位置するパークロック機構75のパーキングポール79とサポートアクチュエータ78とパーキングロッド77を重畳表示している。
図10は、
図9のA-A線に沿う断面を模式的に示した図である。
【0084】
図10に示すように、ケース6では、開口部620を利用してパークロック機構75が設けられている。
パークロック機構75は、マニュアルプレート76と、パーキングロッド77と、サポートアクチュエータ78と、パーキングポール79と、を有する。
【0085】
ケース6においてマニュアルプレート76は、第1室S1内で回動軸Z2周りに回動可能に設けられている。回動軸Z2は、鉛直線VLに沿う軸線である。マニュアルプレート76は、鉛直線VL方向に延びるマニュアルシャフト760に連結されている。マニュアルプレート76は、マニュアルシャフト760の回動に連動して回動軸Z2周りに回動する。
マニュアルプレート76では、基部761の外周に、位置決め用のディテントスプリング765が係合している。マニュアルプレート76は、連結片762を有している。連結片762は、基部761の外周から回動軸Z2の径方向外側に延びている。連結片762の先端側には、パーキングロッド77の基端が回動可能に連結されている。
【0086】
パーキングロッド77は、ケース6の開口部620を第1室S1から第2室S2に貫通している。パーキングロッド77の先端77a側は、第1カバー7に固定されたサポートアクチュエータ78に載置させている。サポートアクチュエータ78は、プレート785を貫通したボルトBL1により、第1カバー7に固定されている。
【0087】
パーキングロッド77の基端が連結された連結片762は、マニュアルシャフト760の回動に連動して、回動軸Z2周りの周方向に変位する。この変位に連動して、パーキングロッド77が、動力伝達装置1の回転軸X方向に進退移動する。これによりパーキングロッド77が、カム771を、サポートアクチュエータ78に乗り上げた位置と、カム771を、サポートアクチュエータ78から離脱させた位置との間で変位する。
【0088】
図9に示すように、サポートアクチュエータ78の上面には、図示しないスプリングの付勢力で、パーキングポール79の被操作部792が当接している。サポートアクチュエータ78のカム面781にカム771が乗り上げると、カム771がカム面781と被操作部792との間に挿入される。そうすると、パーキングポール79が、回転軸X2に並行な回動軸X5周りに回動する。その結果、パーキングポール79の先端側の係合部791が、セカンダリプーリ32に設けられたパーキングギア323に係合して、セカンダリプーリ32の回転を規制する。
【0089】
図10に示すように、セカンダリプーリ32の可動プーリ322の径方向外側(車両前方側:図中、左側)では、パーキングロッド77との間に空間的な余裕がある。本実施形態では、パーキングロッド77と可動プーリ322の間の空間を利用して、オイルフィルタ69(フィルタ部材696)を配置している。
そのため、鉛直線VL方向から見てオイルフィルタ69は、パーキングロッド77と、パーキングポール79と、可動プーリ322とで囲まれた空間内に位置している。
よって、オイルフィルタ69は、回転軸X1に直交する水平線方向(図中、矢印A方向)から見て、パーキングロッド77およびセカンダリプーリ32の可動プーリ322と、重なる位置関係で設けられている。さらに、回転軸X1に沿う水平線方向(図中、矢印B方向)から見て、オイルフィルタ69は、パーキングポール79と重なる位置関係で設けられている。
【0090】
なお、
図10では、オイルフィルタ69の紙面奥側(鉛直線VL方向の下側)にプライマリプーリ31の固定プーリ311が位置している。そのため、鉛直線VL方向から見てオイルフィルタ69は、プライマリプーリ31の固定プーリ311と重なる位置関係で設けられている。
【0091】
図10に示すように、本実施形態では、回転軸X1方向でオイルフィルタ69は、パーキングポール79よりも第1室S1側(隔壁部62側)に位置している。さらに、回転軸X1方向でオイルフィルタ69は、バリエータ3のベルト30よりも第1室S1側(隔壁部62側)に位置している。
このように、オイルフィルタ69は、第2室S2内で、バリエータ3(ベルト30)とパークロック機構75との間の隙間を有効に利用して、これらとの干渉を避けつつ設けられている。これにより、オイルフィルタ69を設けるために、ハウジングHS(第2室S2)の形状を大きく変更せずに済むようになっている。これにより、ハウジングHSの大型化を抑制している。
【0092】
以上の通り、本実施形態の車両用の動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)からの駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHSと、
ハウジングHS内に設けられていると共に、動力伝達機構を支持する隔壁部62と、
隔壁部62内に設けられた油路691(第1油路)と、
隔壁部62内に設けられた油路692、693(第2油路)と、
隔壁部62に設けられた凹部690と、
凹部690に配置されるフィルタ部材696と、を有する。
凹部690は、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸X方向に開口を向けて設けられている。
油路691と油路692が、凹部690を介して連通している。
【0093】
このように構成すると、隔壁部62に凹部690を設けると共に、隔壁部62内に油路691、692、693を設けているので、ハウジングHS内の空間を有効に利用できる。
油路691、692、693を隔壁部62の外部に設ける場合には、ハウジングHS内に油路691、692、693を設けるための空間を確保する必要があり、ハウジングHSが大型化する可能性がある。隔壁部62内に油路691、692、693を設けているので、ハウジングHSが大型化する可能性を低減できる。
【0094】
(2)動力伝達装置1の回転軸X方向において凹部690は、隔壁部62の厚みを利用して設けられている。凹部690は、隔壁部62の一方側の空間(第2室S2)に開口している。
【0095】
このように構成すると、フィルタ部材696を隔壁部62から大きく突出させずに設けることができる。ハウジングHSが回転軸方向に大型化する程度を抑えることができる。
【0096】
(3)動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、凹部690は、動力伝達機構を構成するプライマリプーリ31(第1回転体)の回転軸X1とセカンダリプーリ32(第2回転体)の回転軸X2との間に位置している。
【0097】
動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、回転軸X1と回転軸X2とを結ぶ直線Lm(
図4参照)よりも上側に、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32との干渉を避けることが可能な空間がある。
この空間にオイルフィルタ69を設けるための凹部690を形成して、凹部690にフィルタ部材696を配置することで、オイルフィルタ69を、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32との干渉を避けつつ、車両前後方向における回転軸X1と回転軸X2との間のデッドスペースに配置できる。これにより、回転軸X1と回転軸X2との間のデッドスペースを有効利用できる。
さらに、オイルフィルタ69を、回転軸X1と回転軸X2との間で、ベルト30との干渉を避けつつ、直線Lmに近づけて配置できる(
図4参照)。これにより、オイルフィルタ69を、直線Lmに直交する直線Ln方向に大きくはみ出さずに配置できる。
よって、オイルフィルタ69を設けるために、ハウジングHSが大型化する程度を低減できる。
【0098】
(4)第1回転体は、バリエータ3のプライマリプーリ31であり、
第2回転体は、バリエータ3のセカンダリプーリ32であり、
動力伝達装置1の回転軸Xの径方向から見て、凹部690は、バリエータ3とオーバーラップしている。
具体的には、
図4における矢印A方向から見て、オイルフィルタ69(凹部690)は、バリエータ3のセカンダリプーリ32とオーバーラップしており、鉛直線VL方向に重なる範囲R32を持って設けられている。
図4における矢印C方向から見て、オイルフィルタ69(凹部690)は、バリエータ3のプライマリプーリ31とオーバーラップしており、車両前後方向に重なる範囲R31を持って設けられている。
すなわち、回転軸Xの径方向(鉛直線VL方向、車両前後方向)から見て、オイルフィルタ69(凹部690)は、バリエータ3とオーバーラップしている。
【0099】
このように構成すると、凹部690が、回転軸X1と回転軸X2との間で、回転軸X1と回転軸X2を結ぶ直線Lmに近づけて配置される。これにより、オイルフィルタ69を設けるための凹部690がバリエータ3に近接して配置されるので、オイルフィルタ69を通過したオイルOLを短い距離でバリエータ3に供給して、バリエータ3を潤滑できる。
バリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の潤滑には、汚れが少なく、比較的に低温のオイルOLが必要である。オイルフィルタ69には、オイルクーラ20で冷却されたオイルOLが、コントロールバルブCVと油路691を介して供給される。
オイルフィルタ69を、バリエータ3の近くに配置できるので、オイルフィルタ69を通過したオイルOLを速やかにバリエータ3に供給して、バリエータ3を潤滑できる。
【0100】
(5)動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブCV(コントロールユニット)を備える。
コントロールバルブCVは、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向に沿う向きで設けられている。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、凹部690は、コントロールバルブCVと、セカンダリプーリ32との間に位置している。
【0101】
ここで、本明細書における用語「鉛直線VL方向に沿う向き」とは、コントロールバルブCVが厳密に鉛直に設けられる態様にのみ限定されない。鉛直線VLに対して所定の角度を持って設けられていれば良い。例えば、コントロールバルブCVの車両前後方向(水平線方向)範囲が、鉛直線VL方向の範囲よりも小さくなり、かつ、コントロールバルブCV内のスプール弁が進退移動する方向Xp(
図5参照)が、水平線方向に沿う向きで配置されていれば良い。
【0102】
コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ積層構造を有している。コントロールバルブCVは、積層方向の厚みが薄いので、コントロールバルブCVを鉛直線VL方向に沿う向きで配置すると、コントロールバルブCVの積層方向が水平線HL方向に沿う向きとなる。そうすると、油路691にオイルOLを供給するための排出口67を、鉛直線VL方向における所望の位置に開口させることができる。よって、排出口67は、オイルフィルタ69(凹部690)が位置する上側で開口させることができる(
図7参照)。すなわち、車両前方から見たときに、排出口67を、オイルフィルタ69(凹部690)に近づけて、より好ましくはオイルフィルタ69(凹部690)に重なる位置で開口させることができる。
そうすると、コントロールバルブCV(排出口67)と凹部690とを繋ぐ油路691の油路長を短くできる。例えば、排出口67が、鉛直線VL方向でオイルフィルタ69から離れた位置で開口している場合には、油路691の油路長が長くなる。そうすると、流路抵抗が高くなってオイルポンプ(電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP)への負荷が高くなる。そうすると、オイルポンプの効率が低下する。上記のように構成することで、オイルポンプの効率の向上が期待できる。
【0103】
(6)セカンダリプーリ32の回転を規制するパークロック機構75(回転規制機構)を備える。
鉛直線VL方向における凹部690の下側に、プライマリプーリ31が位置している。
凹部690のコントロールバルブCV側を、パークロック機構75の構成要素であるパーキングロッド77が、動力伝達装置1の回転軸X方向に沿う向きで設けられている。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見ると、凹部690とコントロールバルブCVとの間に、パーキングロッド77を挿通させる開口部620が位置している(
図4参照)。
図10に示すように、パーキングロッド77は、開口部620を回転軸X方向に貫通しており、コントロールバルブCV側(
図10における矢印A側)から見てパーキングロッド77は、回転軸Xに沿う向きで設けられている。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、隔壁部62内の油路691は、プライマリプーリ31とパーキングロッド77との干渉を避けて、開口部620よりも下側の位置を、コントロールバルブCVから凹部690まで斜めに延びている(
図7、
図10)。
【0104】
このように構成すると、プライマリプーリ31およびパーキングロッド77との干渉を避けた位置を通して、コントロールバルブCVとオイルフィルタ69(凹部690)との接続距離を短くできる。これにより、流路抵抗の上昇を抑制できるので、オイルポンプ(電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP)への負荷を低減できる。これにより、オイルポンプの効率の向上が期待できる。
【0105】
(7)動力伝達装置1の回転軸X方向から見てパークロック機構75のパーキングポール79(他の構成要素)と、隔壁部62に設けた凹部690とが重なる位置関係で設けられている(
図9参照)。
【0106】
図10に示すように、パーキングポール79と隔壁部62との間には、空間的な余裕がある。上記のように構成すると、この余裕がある空間を利用して、オイルフィルタ69を配置できる。
オイルフィルタ69を設けるに当たり、既存の余裕のある空間内にオイルフィルタ69を納めることができるので、ハウジングHSが大型化する可能性を低減できる。
また、フィルタ部材696の交換を行いやすくなる。
【0107】
(8)動力伝達装置の回転軸X方向においてフィルタ部材696は、パークロック機構75のパーキングポール79(他の構成要素)と、隔壁部62との間に位置している(
図10参照)。動力伝達装置の回転軸X方向において、隔壁部62と、フィルタ部材696と、パーキングポール79と、がこの順番で並んで配置される。
【0108】
このように構成すると、第2室S2内で、パーキングポール79と、隔壁部62との間の隙間を有効に利用して、オイルフィルタ69(フィルタ部材696)を、パークロック機構75(パーキングポール79)との干渉を避けつつ設けることができる。これにより、オイルフィルタ69を設けるために、ハウジングHS(第2室S2)の形状を大きく変更せずに済むので、ハウジングHSの大型化を抑制できる。
【0109】
(9)動力伝達装置1の回転軸X方向においてフィルタ部材696は、隔壁部62と、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32に巻き掛けられたベルト30との間に位置している(
図10参照)。
動力伝達装置の回転軸X方向において、隔壁部62と、フィルタ部材696と、ベルト30、がこの順番で並んで配置される。
【0110】
このように構成すると、第2室S2内で、バリエータ3(ベルト30)と隔壁部62との間の隙間を有効に利用して、オイルフィルタ69を、バリエータ3(ベルト30)との干渉を避けつつ設けることができる。これにより、オイルフィルタ69を設けるために、ハウジングHS(第2室S2)の形状を大きく変更せずに済むので、ハウジングHSの大型化を抑制できる。
【0111】
(10)隔壁部62は、ハウジングHS内の空間を、動力伝達装置1の回転軸X方向で隣接する第1室S1と第2室S2に区画している(
図2参照)。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見て隔壁部62における第2室S2側の面では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32の潤滑用のオイルOLの油路694(通流路)が、凹部690の直線Lm側の近傍で開口している(
図4参照)。
隔壁部62における第1室S1側の面(周壁部641の端面641a)には、油路693(第2油路)と油路694が開口していると共に、油路693と油路694とを連絡する連絡溝695が形成されている(
図3参照)。
隔壁部62における第1室S1側の面(周壁部641の端面641a)に取り付けられて、油路693、694の開口と連絡溝695の開口を覆うダミーカバー21(カバー部材)により、凹部690と油路694とを連絡させる連絡路が形成されている(
図8参照)。
【0112】
このように構成すると、隔壁部62の内部に回転軸Xの径方向に延びる油路を形成する必要がないので、隔壁部62における油路の取り回しが複雑化することを好適に防止できる。
また、凹部690と油路694とを短距離で結ぶことができるので、オイルフィルタ69を通過した直後の比較的に低い温度のオイルOLを、バリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)に供給できる。これにより、バリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)の潤滑と冷却を好適に行える。
【0113】
(11)ダミーカバー21の内部には、連絡溝695との対向部に開口する油路210(分岐路)が設けられている(
図8参照)。
油路210に流入したオイルOLは、動力伝達装置1におけるバリエータ3(プライマリプーリ31、セカンダリプーリ32)を除いた他の要素に供給される。
【0114】
このように構成すると、前後進切替機構2の摩擦締結要素などの潤滑を適切に行うことができる。
また、オイルフィルタ69を通過した後にオイルOLを、各供給先に分配することで、各供給先に接続する油路の各々にオイルフィルタを設ける場合に比べて、ハウジングHSが大型化することを好適に防止できる。
【0115】
(12)オイルフィルタ69は、
凹部690の開口を塞ぐカバー697を有する。
凹部690は、第2室S2に開口している。
【0116】
このように構成すると、
図10に示すように、隔壁部62の第2室S2側には、パークロック機構75(パーキングロッド77、パーキングポール79)、バリエータ3(プライマリプーリ31の固定プーリ311、セカンダリプーリ32の可動プーリ322、ベルト30)で囲まれた空間がある。この空間に対向する位置に凹部690を設けることで、第2室S2内の空間を有効に活用できる。
【0117】
(13)カバー697は、隔壁部62に支持されている。
【0118】
このように構成すると、カバー697を隔壁部62に取り付けるだけで、隔壁部62の厚みを利用して設けた凹部690の開口を塞ぐことができる。
オイルフィルタ69を隔壁部62とは別体に設ける場合には、ハウジングHS内の設置できる場所に制限があり、ハウジングHSが大型化する一因となる場合がある。
オイルフィルタ69が、隔壁部62を利用して、隔壁部62と一体に設けられるので、ハウジングHS内の空間にオイルフィルタ69が影響する程度を抑えることができる。これにより、ハウジングHSが大型化する可能性を低減できる。
【0119】
(14)動力伝達装置1の回転軸X方向で、カバー697は、隔壁部62と、バリエータ3のベルト30との間に位置している。
動力伝達装置の回転軸X方向において、隔壁部62と、フィルタ部材696と、ベルト30、がこの順番で並んで配置される。
【0120】
このように構成すると、第2室S2内で、バリエータ3(ベルト30)と隔壁部62との間の隙間を有効に利用して、オイルフィルタ69を、バリエータ3(ベルト30)との干渉を避けつつ設けることができる。これにより、オイルフィルタ69を設けるために、ハウジングHS(第2室S2)の形状を大きく変更せずに済むので、ハウジングHSの大型化を抑制できる。
【0121】
図11は、変形例にかかる動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
前記した実施形態では、ストレーナ10を収容する第1室S1と、電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVを有用する収容室S3とが、完全に分かれている場合を例示した。
図11に示すように、第1室S1と収容室S3とが開口684を介して連通しているケース6Aを採用した動力伝達装置1Aとしても良い。
この動力伝達装置1Aでは、コントロールバルブCVが開口684を塞いで、第1室S1と収容室S3とを区画するように配置される。
このような構成の動力伝達装置1Aであっても、動力伝達装置1Aの大型化を防ぎつつ、ハウジングHS内に空間的な余裕が生じさせて、ハウジングHS内のレイアウト性を向上させることができる。
【0122】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、収容室S3に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0123】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0124】
1、1A :動力伝達装置
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
21 ダミーカバー(カバー部材)
210 油路(分岐路)
3 バリエータ(動力伝達機構)
31 プライマリプーリ(第1回転体)
32 セカンダリプーリ(第2回転体)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(動力伝達機構)
ENG エンジン(駆動源)
WH 駆動輪
HS ハウジング
T/C トルクコンバータ(動力伝達機構)
690 凹部
691 油路(第1油路)
692 油路(第2油路)
693 油路(第2油路)
694 油路(通流路)
695 連絡溝(連絡路)
696 フィルタ部材
696 フィルタ部材
75 パークロック機構(回転規制機構)
77 パーキングロッド
77(回転規制機構の構成要素)
79 パーキングポール(回転規制機構の他の構成要素)
CV コントロールバルブ(コントロールユニット)
X 動力伝達装置の回転軸
X1~X4 回転軸
S1 第1室(他方側の空間)
S2 第2室(一方側の空間)