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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/02 20120101AFI20241105BHJP
【FI】
F16H57/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024509232
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011616
(87)【国際公開番号】W WO2023182453
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022047613
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】湯川 洋久
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 智雄
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/089073(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/123079(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するケースと、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給する電動ポンプと、を有する動力伝達装置であって、
前記ケースは、
前記動力伝達機構を収容する第1室と、
前記第1室に隣接配置された第2室と、を有し、
前記コントロールバルブと前記電動ポンプは、前記第2室内で縦置き配置されており、
前記ケースでは、前記電動ポンプの回転軸に沿う上方から見て前記電動ポンプと重なる領域に、前記電動ポンプの上方から前記電動ポンプ側に窪んだ第1凹部が設けられており、
前記電動ポンプのコネクタが、相手側コネクタとの接続部を、前記第1凹部内で上方を向けて配置させている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電動ポンプと前記コントロールバルブは、前記第2室内で前記動力伝達装置の回転軸方向に並んでいる、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電動ポンプは、上下方向の長さが、前記コントロールバルブの前記上下方向の長さよりも短い、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項において、
前記ケースでは、前記電動ポンプの回転軸方向から見て、前記コントロールバルブと重なる領域に第2凹部が設けられており、
前記第2凹部内では、前記電動ポンプの制御コネクタが、相手側コネクタとの接続部を、前記電動ポンプとは反対側に向けて配置させており、前記第1凹部内に配置した前記コネクタは、前記電動ポンプの給電コネクタである、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1凹部と、前記第2凹部は、前記動力伝達装置の回転軸方向に位置をずらして設けられている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項において、
前記ケースは、
前記第2室の外周を囲む周壁部と、
前記周壁部の開口を塞ぐカバー部と、を有し、
前記第1凹部は、前記周壁部に設けられており、前記第2凹部は、前記カバー部に設けられている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項において、
前記ケースは、
前記動力伝達機構の回転軸を支持する支持壁と、
前記支持壁の一方側の前記第1室と、前記第2室とを区画する区画壁と、を有しており、
前記区画壁は、前記支持壁の他方側の第3室の側方まで及んでおり、
前記動力伝達機構の回転軸の径方向から見て前記区画壁は、前記第1室と重なる領域が、前記コントロールバルブが取り付けられる第1領域、前記第3室と重なる領域が、前記電動ポンプが取り付けられる第2領域であり、前記第2領域の上部に、前記第1凹部内に配置した前記コネクタの取付孔が開口している、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記動力伝達機構の回転軸の径方向から見て、前記第2領域は、前記電動ポンプと重なる領域が、前記第3室側に膨出する膨出部となっており、前記膨出部の上側が前記第1凹部となっている、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記電動ポンプの回転軸方向から見て、前記膨出部は、前記第3室と重なる位置まで膨出している、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-173943公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駆動装置では、電動オイルポンプが、ケースの外側に一部を露出させた状態でケースの下部に配置されている。駆動装置では、給電用の外部コネクタが、ケースの上部に設けられている。電動オイルポンプと外部コネクタとを接続する給電ケーブルは、ケース内の下部から上部まで配索されている。
【0005】
ケース内には、回転体などの駆動装置の構成要素が設けられている。給電ケーブルは、構成要素との干渉を避けつつ配索する必要がある。そのため、給電ケーブルの取り回しが複雑になる。
そこで、ケース内での給電ケーブルの配索をより簡便に行えるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するケースと、
前記動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブにオイルを供給する電動ポンプと、を有する動力伝達装置であって、
前記ケースは、
前記動力伝達機構を収容する第1室と、
前記第1室に隣接配置された第2室と、を有し、
前記コントロールバルブと前記電動ポンプは、前記第2室内で縦置き配置されており、
前記ケースでは、前記電動ポンプの回転軸に沿う上方から見て前記電動ポンプと重なる領域に、前記電動ポンプの上方から前記電動ポンプ側に窪んだ第1凹部が設けられており、
前記電動ポンプのコネクタが、相手側コネクタとの接続部を、前記第1凹部内で上方を向けて配置させている、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、ケース内での給電ケーブルの配索をより簡便に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、ケースを第1カバー側から見た模式図である。
図3図3は、収容部を車両前方側から見た模式図である。
図4図4は、ハウジングの要部断面図である。
図5図5は、ハウジングの要部断面図である。
図6図6は、ハウジングの要部断面図である。
図7図7は、ハウジングの要部断面図である。
図8図8は、ハウジングの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0010】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0014】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0015】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁(弁体)を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0016】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0017】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0018】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0019】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
図1に示すように、車両Vに搭載された動力伝達装置1は、動力伝達機構を収容するハウジングHSを有する。ハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
ハウジングHSの内部には、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、などの動力伝達機構が収容される。
さらに、ハウジングHSの内部には、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
【0021】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0022】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0023】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0024】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3(第3軸)上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4(第4軸)上で同軸に配置される。
動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも標記する。
【0025】
図2は、ケース6を第1カバー7側から見た平面図である。図2では、後記する第1凹部10内に位置する給電コネクタ90の配置を判り易くするために、給電コネクタ90に交差したハッチングを付して示している。
図2に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。
周壁部61は、動力伝達装置1の回転軸Xに沿う向きで設けられており、動力伝達装置の外壁部を構成する。隔壁部62は、周壁部61の内側で、動力伝達装置1の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
【0026】
図1に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
【0027】
ケース6と第2カバー8は、互いの接合部611、811同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の一方の開口が第2カバー8で封止された状態で保持されて、閉じられた第1室S1が形成される。
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。
【0028】
ケース6と第1カバー7は、互いの接合部612、711同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の他方の開口が第1カバー7で封止された状態で保持されて、閉じられた第3室S3が形成される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
【0029】
図2に示すように、ケース6を第1カバー7側から見ると、周壁部61の内側に貫通孔621、622が開口している。周壁部61の外側で貫通孔624が開口している。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。プライマリプーリ31の入力軸34(図1参照)が、貫通孔621を貫通する。
貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。セカンダリプーリ32の出力軸33(図1参照)が、貫通孔622を貫通する。
貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。駆動軸55A(図1参照)が、貫通孔624を貫通する。
【0030】
プライマリプーリ31は、セカンダリプーリ32よりも車両前方側の下方に位置している。そのため、周壁部61は、プライマリプーリ31の外周を囲む部分が、最も車両前方側に位置している。そして、周壁部61におけるプライマリプーリ31よりも下側の領域は、下側に向かうにつれて車両後方側に位置するように、車両後方側に窪んでいる。
なお、ケース6に紙面手前側から組み付けられる第1カバー7も、周壁部61に回転軸X方向から組み付けられる周壁部71を有している(図4参照)。回転軸X方向から見て、周壁部71は、周壁部61と整合する形状で形成されている。
【0031】
図2に示すように、ケース6では、車両前方側の側面に、収容部68が付設されている。収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。
【0032】
図3は、収容部68を車両前方側から見た図である。この図3では、車両前方側から見た第2室S2を、ハウジングHSの他の構成要素(ケース6および第1カバー7)と共に模式的に示している。また、紙面手前側に位置する接合部683の領域に交差したハッチングを付して示している。コントロールバルブCVの外観を模式的に示している。
電動オイルポンプEOPと給電コネクタ90とを接続する電力供給線97と、制御コネクタ98とコントロールバルブCVや電動オイルポンプEOPとを接続する信号線96を、模式的に示している。
【0033】
図3に示すように、車両前方側から見て収容部68は、壁部682と、壁部682の外周を全周に亘って囲む周壁部681を有している。周壁部681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。
図1に示すように、接合部683には、第3カバー9側の接合部911が全周に亘って接合される。収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、閉じられた第2室S2が形成される。第2室S2には、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが収容される。
【0034】
図3に示すように、収容部68の壁部682は、動力伝達装置1の回転軸Xに沿う向きで設けられている。収容部68は、ケース6の周壁部61に隣接する領域から、第1カバー7の側方まで及ぶ回転軸X方向(図中、左右方向)の範囲を持って形成されている。
【0035】
図1に示すように、収容部68の壁部682は、第2カバー8側(図中、右側)の略半分の領域(第1領域)が、ケース6側の周壁部61と一体になっている。第1カバー7側の略半分の領域(第2領域)は、第1カバー7の車両前方側で、第1カバー7の外周との間に隙間を開けて設けられている。
【0036】
図1に示すようにコントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁(スプール弁SP)が設けられている。
【0037】
図3に示すように、第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、手前奥方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
第2室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数のスプール弁SPが、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)スプール弁SPの進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
【0038】
これにより、コントロールバルブ内のスプール弁の進退移動方向が、水平線方向に沿う向きで配置される。さらに、コントロールバルブ内のスプール弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置される。よって、スプール弁の進退移動が阻害されないようにしつつ、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0039】
車両前方側から見てコントロールバルブCVは、略矩形形状のバルブボディ921に切欠部923を設けた略L字形状を成している。切欠部923は、電動オイルポンプEOPとの干渉を避けるために設けられている。
車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、第2カバー8側(図中、左側)の一部が切欠部923に収容されている。
ここで、鉛直線VL方向におけるコントロールバルブCVの長さL_CVは、鉛直線VL方向における電動オイルポンプEOPの長さL_OPより長い(L_CV>L_OP)。
そのため、鉛直線VL方向から見ると、電動オイルポンプEOPの一部が、コントロールバルブCVと重なる位置関係で設けられている。
【0040】
図3に示すように、第2室S2内では、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPとが、動力伝達装置1の回転軸X方向(図中、左右方向)に並んでいる。
車両前方側から見てコントロールバルブCVは、ケース6と重なる位置関係で設けられている。車両前方側から見て電動オイルポンプEOPは、第1カバー7と重なる位置関係で設けられている。
【0041】
電動オイルポンプEOPは、制御部51と、モータ部52と、ポンプ部53が、モータMの回転軸Z1方向で直列に並んだ基本構成を有する。
電動オイルポンプEOPは、回転軸Z1を、動力伝達装置1の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。この状態において、電動オイルポンプEOPは、ポンプ部53を第2室S2内の下部側に、制御部51を第2室S2内の上部側に、それぞれ位置させる向きで縦置きされている。
【0042】
図4は、図3におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。図4では、第2室S2における膨出部69の部分の断面が、車両後方側に位置する第1カバー7の周壁部71の断面と共に、模式的に示されている。
図5は、図4におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。図5では、電動オイルポンプEOPのモータ部52周りの断面が、模式的に示されている。
図6は、図4におけるB-B線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。図6では、収容部68に設けた第1凹部10と、第1凹部10における給電コネクタ90の配置が、模式的に示されている。
図7は、図4におけるC-C線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。図7では、収容部68に設けた第1凹部10と、第3カバー9に設けた第2凹部20の位置関係が模式的に示されている。
なお、図7では、第1凹部10の紙面奥側に位置する上壁部693に隠れる構成要素(底壁部691、側壁部694、側壁部695、モータ部52)を破線で示している。第1凹部10と、これら構成要素との位置関係を明確にするためである。
図8は、図7におけるA-A線に沿ってハウジングHSを切断した断面を模式的に示した図である。図8では、エンジンENG側から見た第2凹部20周りが示されている。
【0043】
なお、図3図4図6図7では、電力供給線97を介した給電コネクタ90と電動オイルポンプEOPとの接続態様と、信号線96を介した制御コネクタ98と電動オイルポンプEOPおよびコントロールバルブCVとの接続態様を、説明の便宜上、簡略的に表記している。
【0044】
図3に示すように、収容部68の壁部682では、車両前方側から見たときに第1カバー7と重なる領域に電動オイルポンプEOPの収容部として機能する膨出部69が設けられている。
図4および図5に示すように膨出部69は、壁部682を第1カバー7側(図4における右側)に膨出させて形成される。膨出部69の底壁部691は、壁部682から見て、第1カバー7側に深さD69だけ離れて位置している。
【0045】
本実施形態では、電動オイルポンプEOPの第1カバー7側の一部が、膨出部69内に収容される。電動オイルポンプEOPの一部が膨出部69に収容されることにより、電動オイルポンプEOPの車両前方側の側縁51aと、コントロールバルブCVの車両前方側の側面921aとが、ほぼ面一となるように、電動オイルポンプEOPが第2室S2内に配置される。
【0046】
図4に示すように、膨出部69は、電動オイルポンプEOPを収容可能な回転軸Z1方向の長さL69で形成されている。膨出部69の下壁部692は、収容部68の周壁部681の延長上に位置している。膨出部69の上壁部693は、電動オイルポンプEOPの上側を車両前方側に延びている。上壁部693は、回転軸Z1よりも車両前方側で、収容部68側の第1壁部684に接続している。
【0047】
収容部68では、回転軸Z1方向における膨出部69の上側に、第1凹部10が形成されている。
図7に示すように、第1凹部10は、回転軸Z1方向から見て電動オイルポンプEOPと重なる領域の一部を、回転軸Z1方向における下側と、車両前方側(図中、上側)に窪ませて形成した空間である。
すなわち、収容部68における電動オイルポンプEOPの回転軸Z1に沿う鉛直線VL方向(上下方向)で、収容部68における電動オイルポンプEOPの上側に位置する領域を、電動オイルポンプEOP側の下方に窪ませて形成されている。
【0048】
回転軸Z1方向から見て第1凹部10は、収容部68側の第1壁部684および第2壁部685と、ケース6側の隔壁部62と、第1カバー7側の周壁部71とで、囲まれた空間である。よって、第1凹部10は、ハウジングHS内の第1室S1と、第2室S2と、第3室S3にも囲まれている。
第1凹部10の紙面奥側には、前記した電動オイルポンプEOPを収容するための膨出部69の上壁部693(図4参照)が位置している。
【0049】
そのため、第1凹部10は、動力伝達装置1の上方に開口を向けて形成されている。さらに、第1凹部10は、車幅方向の一方(図7における左方向)にも開口している。第1凹部10内には、給電用のコネクタ(給電コネクタ90)が位置している。
図6に示すように、給電コネクタ90は、相手側コネクタとの接続部901を有している。接続部901は、第1凹部10内で、相手側コネクタとの接続口を上方に向けて設けられている。
【0050】
鉛直線VL方向における上側から見て、給電コネクタ90の接続部901は、第1凹部10と完全に重なる位置関係で設けられている。さらに、接続部901は、動力伝達装置1の回転軸X方向から見て第1凹部10と完全に重なる位置に設けられている(図4参照)。そのため、給電コネクタ90の接続部901は、ハウジングHS(第3カバー9、第1カバー7、収容部68)の外周から外側に突出することなく設けられている。すなわち、接続部901は、ハウジングHSの外枠から外側に突出することなく、ハウジングHSの外枠よりも内側に位置する第1凹部10内に収容されている。
【0051】
接続部901の紙面奥側の下部は、基部902(図6参照)に接続されている。基部902は、第1壁部684に設けた取付孔684aを貫通している。基部902における第2室S2内に位置する領域は、電力供給線97との接続部903に接続している。給電コネクタ90は、電力供給線97を介して、電動オイルポンプEOPの制御部51(接続部510)に電気的に接続されている。
【0052】
図4に示すように、第1壁部684において取付孔684aは、膨出部69の上壁部693から上側に離れた位置に設けられている。
そのため、図3に示すように給電コネクタ90は、電動オイルポンプEOPの上側に位置している。
【0053】
本実施形態では、鉛直線VL方向における電動オイルポンプEOPの長さL_OPは、鉛直線VL方向におけるコントロールバルブCVの長さL_CVよりも短い(L_OP<L_CV)。そのため、第2室S2内において、コントロールバルブCVの下端925と、電動オイルポンプEOPの下端53aを揃えて配置すると、電動オイルポンプEOPの上側であってコントロールバルブCVの側方に、利用可能な空間が確保される。
【0054】
本実施形態では、この利用可能な空間に、給電コネクタ90を配置している。
ここで、電動オイルポンプEOPは、電力供給線97との接続部510を鉛直線VL方向の上側に向けて配置されている。そのため、給電コネクタ90の直下に、接続部510が位置している。よって、電動オイルポンプEOPの接続部510と、給電コネクタ90とを、最短距離で電気的に接続できる。これにより、電力供給線97を短くできる。さらに、第2室S2内に電動オイルポンプEOPを設置した後の電動オイルポンプEOPと給電コネクタ90との接続を容易に行えることになる。
【0055】
図4に示すように、給電コネクタ90が取り付けられた第1壁部684は、車幅方向から見て、コントロールバルブCVと重なる位置を、回転軸Z1に沿って上方に延びている。第1壁部684では、取付孔684aよりも上側の領域に、第3カバー9の周壁部91が車両前方側から当接している。図4に示す断面では、コントロールバルブCVの上辺924を超えた高さ位置で、第1壁部684と周壁部91とが接触している。
【0056】
図7に示すように、第1壁部684は、収容部68の接合部683の延長上を、コントロールバルブCVに近づく方向(図中、右方向)に延びている。第1壁部684は、車幅方向におけるコントロールバルブCVの一方側で、第2壁部685に接続している。第2壁部685は、コントロールバルブCVの側縁に沿って第1カバー7側(図中、下側)に延びている。第2壁部685は、車両前方側から壁部682に接続している。
【0057】
回転軸Z1方向から見て第2壁部685は、前記した膨出部69の側壁部694と重なる位置関係で設けられている。膨出部69における反対側の側壁部695は、収容部68の周壁部681の延長上を、第1カバー7側(図中、下側)に延びている。
回転軸Z1方向から見て、収容部68では、コントロールバルブCVを支持する壁部682を基準とすると、第1壁部684と第2壁部685が、壁部682よりも車両前方側に窪むように位置している。このように第1壁部684と第2壁部685を設けることで、第1凹部10の形成に関与している。
【0058】
第1壁部684から見て車両後方側には、第1カバー7の周壁部71が位置している。
第1凹部10は、車両前後方向における第1壁部684と周壁部71の間に形成されている。第1凹部10の紙面奥側には、前記した膨出部69の上壁部693が位置している。
【0059】
図4に示すように、上壁部693と底壁部691との接続部691aは、回転軸Z1に沿う断面視において円弧状の外周を成している。接続部691aは、第1カバー7の周壁部71と鉛直線VL方向で重なる位置に達している。そして、収容部68と周壁部71との間の隙間が、接続部691aの部分で最小幅Wminとなっている。
【0060】
底壁部691と周壁部71の車両前後方向の間隔Whは、鉛直線VL方向の上方に向かうにつれて狭くなっている。鉛直線VL方向の下側から見ると(図中、矢印D参照)、底壁部691における接続部691a側の領域と、周壁部71が、重なる位置関係で設けられている。
そのため、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時に、石などの異物が跳ね上げられて、底壁部691と周壁部71との間に進入しても、膨出部69の上側に位置する第1凹部10に到達し難くなっている。
【0061】
収容部68の車両前方側の開口を覆う第3カバー9は、第2室S2の開口を覆う大きさのカバー部92と、カバー部92の外周を全周に亘って囲む周壁部91と、を有する。
図7に示すように、第3カバー9では、回転軸Z1方向におけるコントロールバルブCVの上側の領域に、第2凹部20が形成されている。
回転軸Z1方向から見て第2凹部20は、第3カバー9におけるコントロールバルブCVと重なる領域の一部を、回転軸Z1方向における下側と、車両後方側に窪ませて形成した空間である。
第2凹部20は、前記した第1凹部10から見て、エンジンENG(図1参照)側の車両前方側に位置している。図7に示すように、第2凹部20と第1凹部10は、動力伝達装置1の回転軸X方向(図中、左右方向)と車両前後方向(図中、上下方向)に、位置をずらして設けられている。
【0062】
図7および図8に示すように、回転軸Z1方向から見て第2凹部20は、車両前後方向に延びる第1壁部93と、車幅方向に延びる第2壁部94と、第1壁部93と第2壁部94とに跨がる底壁部95との間に形成される。
そのため、第2凹部20は、車両前方側と、車幅方向におけるエンジンENG側(図7における右側)に開口している。
【0063】
第1壁部93には、貫通孔93aが設けられている。貫通孔93aは、エンジンENG側に開口を向けて設けられている。貫通孔93aには、制御信号用のコネクタ(制御コネクタ98)が、エンジンENG側(図7における右側)から挿入されている。
制御コネクタ98は、制御信号用の配線との接続部981を、第3カバー9の外側の第2凹部20内に位置させている。鉛直線VL方向における上側から見て、制御コネクタ98は、接続部981を、電動オイルポンプEOPとは反対側のエンジンENG側を向けて設けられている。
【0064】
鉛直線VL方向における上側から見て、制御コネクタ98の接続部981は、第2凹部20と完全に重なる位置関係で設けられている。さらに、接続部981は、エンジンENG側から見て、第2凹部20と完全に重なる位置に設けられている(図8参照)。そのため、制御コネクタ98の接続部981は、ハウジングHS(第3カバー9)の外周から外側に突出することなく設けられている。
【0065】
制御コネクタ98における第2室S2内に位置する領域には、信号線96が接続されている。信号線96は、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPに接続されている(図3参照)。よって、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPは、信号線96を介して入力される制御信号に基づいて動作する。
【0066】
このように、本実施形態にかかる動力伝達装置1では、給電コネクタ90の接続部901が、鉛直線VL方向から見て第1凹部10と完全に重なる位置に設けられている(図7参照)。さらに、接続部901は、動力伝達装置1の回転軸X方向から見て第1凹部10と完全に重なる位置に設けられている(図4参照)。
よって、給電コネクタ90の接続部901は、ハウジングHSの外周から外側に突出することなく、第1凹部10内で接続口を上方に向けて配置されている。
これにより、動力伝達装置1の上方から、電力供給線を接続部901に接続できる。
【0067】
さらに動力伝達装置1では、制御コネクタ98の接続部981が、鉛直線VL方向から見て第2凹部20と完全に重なる位置に設けられている(図7参照)。そして、接続部981は、エンジンENG側から見て、第2凹部20と完全に重なる位置に設けられている(図8参照)。
よって、制御コネクタ98の接続部981は、ハウジングHSの外周から外側に突出することなく、第2凹部20内で接続口をエンジンENG側に向けて配置されている。
これにより、動力伝達装置1に隣接するエンジンENG側から、制御信号用の配線を制御コネクタ98の接続部981に接続できる。
【0068】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)からの駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHS(ケース)と、
動力伝達機構に供給する油圧を制御するコントロールバルブCVと、
コントロールバルブCVにオイルを供給する電動オイルポンプEOP(電動ポンプ)と、を有する。
ハウジングHSは、
動力伝達機構を収容する第1室S1と、
第1室S1に隣接配置された第2室S2と、を有する。
コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPは、第2室S2内で縦置き配置されている。
ハウジングHSの収容部68では、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1に沿う上方から見て電動オイルポンプEOPと重なる領域に、電動オイルポンプEOPの上方から電動オイルポンプEOP側に窪んだ第1凹部10が設けられている。
電動オイルポンプEOPの給電コネクタ90(コネクタ)が、相手側コネクタとの接続部901を、第1凹部10内で上方を向けて配置させている。
【0069】
給電コネクタ90の接続部901には、電力供給源から延びる電力供給線が接続されて、電動オイルポンプEOPのモータMに、駆動用の電力が供給される。給電コネクタ90の接続部901を、第1凹部10内に配置することで、接続部901がハウジングHSの外周から外方に向けて突出することを防止できる。
ハウジングHSの外周から外側に突出する部品がある場合、動力伝達装置1が搭載される車両Vに、突出する部品との干渉を避けるための空間を確保する必要がある。この空間は、動力伝達装置1のハウジングHSを設置するための空間とは別の空間であり、車両Vにおける限られた空間を、給電コネクタ90の接続部901のために使用することは好ましくない。
上記のように、回転軸Z1方向から見て収容部68における電動オイルポンプEOPと重なる領域であって、電動オイルポンプEOPの上側に位置する領域を、電動オイルポンプEOP側の下方に窪ませて、第1凹部10を形成する。そして、給電コネクタ90の接続部901を、第1凹部10内で上方を向けて配置する。
そうすると、第1凹部10はハウジングHSの一部を窪ませて形成した空間であるので、接続部901をハウジングHSの外部に大きく突出させることなく設けることができる。
これにより、車両V側の限られた空間をさらに必要とすることなく、電動オイルポンプEOPに電力を供給でき、給電コネクタ90の配置がより最適化される。
【0070】
(2)電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVは、第2室S2内で、動力伝達機構の回転軸X方向に並んでいる。
【0071】
このように構成すると、動力伝達装置1の回転軸Xの径方向(車両前後方向)における第2室S2の厚みを抑えることができるので、動力伝達装置1の車両前後方向への大型化を防止できる。動力伝達装置1が、車両Vに搭載された状態で、第2室S2を水平線方向に向けて配置される場合には、動力伝達装置1が水平線方向に大型化することを好適に防止できる。
【0072】
(3)電動オイルポンプEOPは、鉛直線VL方向(上下方向)の長さL_OPが、コントロールバルブCVの鉛直線VL方向の長さL_CVよりも短い(L_OP<L_CV)。
【0073】
電動オイルポンプEOPの下端53aと、コントロールバルブCVの下端925が同じ高さ位置になるように配置すると、電動オイルポンプEOPの上側であってコントロールバルブCVの側方に、給電コネクタ90を配置可能な空間が確保できる。
これにより、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)で、給電コネクタ90の接続部901を上方に向けて配置すると、接続部901へのアクセスが容易となる。よって、動力伝達装置1を車両Vに搭載した後、車両V側から延びる電力供給線を、接続部901に簡単に接続できる。
【0074】
(4)ハウジングHSでは、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向から見て、コントロールバルブCVと重なる領域に第2凹部20が設けられている。
車両前方側から見て第2凹部20内では、電動オイルポンプEOPの制御コネクタ98が、相手側コネクタとの接続部981を、電動オイルポンプEOPとは反対側に向けて配置させている。
第1凹部10内に配置した給電コネクタ90は、電動オイルポンプEOPへの給電用のコネクタである。
【0075】
このように構成すると、ハウジングHSの外周から接続部981を突出させることなく、制御コネクタ98を設けることができる。これにより、車両V側の限られた空間をさらに必要とすることなく、制御信号用の配線を接続でき、制御コネクタ98の配置がより最適化される。
【0076】
(5)第1凹部10と、第2凹部20は、動力伝達装置1の回転軸X方向に位置をずらして設けられている。
【0077】
このように構成すると、制御コネクタ98の接続部981が、動力伝達装置1の回転軸X方向と、電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向の両方向で、第2室S2と重なる位置関係で配置される。これにより、給電コネクタ90と制御コネクタ98の配置がより最適化される。
また、制御信号用の配線が、動力伝達装置1の回転軸X方向から制御コネクタ98の接続部981に接続される。動力伝達装置1を搭載した車両では、駆動源と動力伝達装置1が、動力伝達装置1の回転軸X方向で隣接配置される。そのため、制御コネクタ98の接続部981を駆動源側に向けて配置すると、駆動源用の制御信号の配線と、制御コネクタ98の接続部981に接続される制御信号用の配線を纏めることができるので、車両における制御信号用の配線の取り回しが容易になる。
【0078】
(6)ハウジングHSの収容部68は、第2室S2の外周を囲む周壁部681と、
周壁部681の開口を塞ぐ第3カバー9(カバー部)と、を有する。
第1凹部10は、周壁部681に設けられていると共に、第2凹部20は、第3カバー9に設けられている。
【0079】
制御コネクタ98から延びる信号線96は、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPを収容部68内に設置した後に、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPに接続される。
制御コネクタ98が周壁部681側に設けられている場合には、信号線96とコントロールバルブCVおよび電動オイルポンプEOPとの接続作業が煩雑となる可能性がある。
第3カバー9により開口を塞がれる前の周壁部681では、当該周壁部681の内側で、信号線96の接続対象であるコントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが、動力伝達装置1の回転軸X方向に並んで配置されている。
制御コネクタ98が第3カバー9に設けられていると、周壁部681の開口を第3カバー9で塞ぐ際に、第3カバー9で支持された制御コネクタ98の信号線を、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPに簡単に接続できる。
これにより、信号線96とコントロールバルブCVおよび電動オイルポンプEOPとの接続作業が容易になる。制御コネクタ98が組み付けられた第3カバー9を用意しておき、用意した第3カバー9を周壁部681に組み付けることで、制御コネクタ98の設置が完了する。これにより、制御コネクタ98の設置が容易となる。
【0080】
(7)ハウジングHSは、
動力伝達機構の回転軸X1~X4を支持する隔壁部62(支持壁)と、
隔壁部62の一方側の第1室S1と、第2室S2とを区画する壁部682(区画壁)と、を有している。
壁部682は、隔壁部62の他方側の第3室S3の側方まで及んでいる。
回転軸X1~X4の径方向から見て、壁部682(区画壁)は、第1室S1と重なる領域が、コントロールバルブCVが取り付けられる第1領域、第3室S3と重なる領域が、電動オイルポンプEOPが取り付けられる第2領域である(図3参照)。第2領域の上部に、第1凹部10内に配置した給電コネクタ90の取付孔684aが開口している。
【0081】
このように構成すると、図6に示すように、ハウジングHSの上部では、第1室S1と第2室S2と第3室S3とで囲まれるように、第1凹部10が配置される。
第2室S2は、取付孔684aを介して第1凹部10に連絡する。取付孔684aを利用して給電コネクタ90を設けることで、電動オイルポンプEOPと給電コネクタ90とを最短距離で接続できる。
【0082】
(8)動力伝達装置1の回転軸Xの径方向から見て、第2領域は、電動オイルポンプEOPと重なる領域が、第3室S3側に膨出する膨出部69となっている。
膨出部69の上側が第1凹部10となっている。
【0083】
このように構成すると、図4に示すように、第2室S2が、動力伝達装置1の回転軸Xの径方向外側である車両前方側に大型化することを好適に防止できる。
【0084】
(9)電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向から見て、膨出部69は、第3室S3と重なる位置まで膨出している。
【0085】
図4に示すように、動力伝達装置1の下部では、膨出部69の底壁部691と、第3室S3を囲む周壁部71が、車両前後方向に間隔WHをあけて設けられており、膨出部69と周壁部71との間に隙間が存在する。この隙間は、動力伝達装置1の下端から第1凹部10まで続いている。
隙間が直線状に形成されている場合には、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時に、石などの跳ね上げられた異物が、この隙間を通って第1凹部10まで到達する可能性がある。
図4に示すように、回転軸Z1方向(図中、矢印D方向)から見て、膨出部69の底壁部691と、第3室S3を囲む周壁部71が重なる位置関係で設けられていると、膨出部69と周壁部71との間の領域がラビリンスシールとして機能する。そのため、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時に、石などの跳ね上げられた異物が第1凹部10まで到達し難くなっている。
これにより、給電コネクタ90の接続部901を、異物などどの衝突から保護することができる。
【0086】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、第2室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0087】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 動力伝達装置
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(動力伝達機構)
6 ケース
7 第1カバー(カバー部)
71 周壁部
9 第3カバー(カバー部)
10 第1凹部
20 第2凹部
62 隔壁部(支持壁)
68 収容部
681 周壁部
682 壁部(区画壁)
684a 取付孔
69 膨出部
691 底壁部
90 給電コネクタ(コネクタ)
901 接続部
94 信号線
98 制御コネクタ
981 接続部
HS ハウジング(ケース)
CV コントロールバルブ
EOP 電動オイルポンプ(電動ポンプ)
S1 第1室
S1 第2室
S3 第3室
X、X1~X4、Z1 回転軸


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8