IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メビウスパッケージング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スクイズ容器 図1
  • 特許-スクイズ容器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】スクイズ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/32 20060101AFI20241105BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241105BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241105BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20241105BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20241105BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B65D1/32
B32B27/28 102
B32B27/32 C
B65D1/02 110
C08L23/06
C08L29/04 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018204688
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070050
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】安齋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 高
(72)【発明者】
【氏名】小松 威久男
(72)【発明者】
【氏名】大槻 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】村屋 美子
【合議体】
【審判長】田口 傑
【審判官】西堀 宏之
【審判官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-63543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D1/00-1/32, B32B 27/28-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から順に、酸素バリア層Aと、リグラインド層と、酸素バリア層Bとをこの順序で含むスクイズ容器であって、
前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bが、それぞれエチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリエチレンと、相容化剤と、を含み、
前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bがそれぞれ、エチレン-ビニルアルコール共重合体とポリエチレンとを80:20~65:35の質量比で含み、さらに、エチレン-ビニルアルコール共重合体とポリエチレンとの合計量100質量部当たり4質量部以上20質量部未満の相容化剤を含む、スクイズ容器。
【請求項2】
前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bの合計の質量の割合が1~30質量%である請求項1に記載のスクイズ容器。
【請求項3】
前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層Bの質量の割合が0.5~15質量%である請求項1又は2に記載のスクイズ容器。
【請求項4】
前記スクイズ容器の胴部における最も薄い部分の厚みが180~1500μmである請求項1から3のいずれか一項に記載のスクイズ容器。
【請求項5】
前記スクイズ容器が、外層と、前記酸素バリア層Aと、前記リグラインド層と、前記酸素バリア層Bと、内層とをこの順序で含む請求項1から4のいずれか一項に記載のスクイズ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクイズ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器としては、一般的に金属缶、ガラスビン、各種プラスチック容器等が使用されている。これらの中でもプラスチック容器は成形が容易であり、安価に製造できるため、各種用途に広く使用されている。例えば、プラスチック容器はケチャップ、マヨネーズ等を内容物として収容し、胴部を押すことで内容物を押し出すスクイズ容器として使用されている。これらの包装容器には、容器内に残留する酸素や容器の壁を透過する酸素による内容物の変質や、フレーバーの低下が抑制されることが求められる。特に、金属缶やガラスビンでは容器の壁を通じての酸素透過は生じないが、プラスチック容器では容器の壁を通じての酸素透過が生じる場合がある。
【0003】
前記酸素透過を抑制するため、プラスチック容器を多層構造とすることが行われている。例えば、プラスチック容器を構成する層として、オレフィン系樹脂を含む外層及び内層に加えて、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHとも示す)等の酸素バリア性樹脂を含む酸素バリア層を設けることが行われている(例えば特許文献1)。これらの層は、一般的に接着性樹脂を含む接着層を介して互いに接着されている。一方、特許文献2には、前記多層構造を形成する際に、特に各層の間に前記接着層を設けることなく、ポリオレフィンを主体とする内外層とEVOHを主体とする中間層を積層した際の接着力を増強する多層包装材が開示されている。
【0004】
EVOHを主成分として含む酸素バリア層により酸素透過を抑制する場合、容器内に水分を多く含む内容物を保存すると、その湿度により酸素バリア層の酸素バリア性が低下する。これを防ぐため、酸素バリア層は通常湿度の低い側、すなわち出来るだけ容器の外側に配置される。また、容器の層構成を簡略化するため、通常酸素バリア層は単層として設けられる。一方、ダイレクトブロー成形により容器を製造する際に、バリなどのスクラップが多量に排出されるため、低コスト化や環境保全の観点からこれを粉砕し、バージン材と混合して、容器の一部(リグラインド層)としてリサイクルすることが通常行われている。また、前述したように、酸素バリア層は出来るだけ容器の外側に配置されるため、リグラインド層は通常酸素バリア層より内側に配置される。
【0005】
近年、プラスチック容器に詰められる内容物の多様化により、容器由来の臭気をこれまでにも増して抑制することが求められるようになっている。リグラインド層は、熱履歴を受けた材料を含むため、臭気の要因になると考えられている。特許文献3には、プラスチック容器に含まれ得る酸素吸収性層由来の臭気成分の内部及び外部への移行を防ぐために、臭気バリア層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-253426号公報
【文献】特開昭49-35482号公報
【文献】特開2005-1371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リグラインド層由来の臭気成分を十分に遮断する観点から、本発明者らはリグラインド層の両側にEVOH単体からなる酸素バリア層を配置することを試みた。しかしながら、EVOH単体からなる酸素バリア層を複数配置すると、スクイズ容器として用いる場合に剛性が高くなり、スクイズ性が低下した。
【0008】
本発明は、リグラインド層由来の臭気の内容物への移行を抑制でき、かつ、スクイズ性が高いスクイズ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスクイズ容器は、外側から順に、酸素バリア層Aと、リグラインド層と、酸素バリア層Bとをこの順序で含むスクイズ容器であって、
前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bが、それぞれエチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリエチレンと、相容化剤と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リグラインド層由来の臭気の内容物への移行を抑制でき、かつ、スクイズ性が高いスクイズ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るスクイズ容器の一例を示す正面図である。
図2】本発明に係るスクイズ容器の層構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るスクイズ容器は、外側から順に、酸素バリア層Aと、リグラインド層と、酸素バリア層Bとをこの順序で含む。また、前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bは、それぞれエチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリエチレンと、相容化剤と、を含む。すなわち、前記酸素バリア層Aは、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリエチレンと、相容化剤と、を含み、前記酸素バリア層Bは、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリエチレンと、相容化剤と、を含む。
【0013】
本発明に係るスクイズ容器では、酸素透過を抑制するためにリグラインド層より外側に酸素バリア層Aが設けられているだけでなく、リグラインド層より内側にも酸素バリア層Bが別途設けられているため、リグラインド層に含まれる臭気成分の内容物への移行を抑制することができる。また、EVOH単体からなる酸素バリア層は剛性が高いが、本発明に係るスクイズ容器では、EVOH以外に、ポリエチレンと、相容化剤と、を含む酸素バリア層A及び酸素バリア層Bを用いるため、剛性が低く、スクイズ性(押し出し性)が高い。さらに、前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bは接着性を有するため、接着層を別途配置する必要がなく、製造工程を簡略化することができる。以下、本発明の詳細について説明する。
【0014】
本発明に係るスクイズ容器の一例を図1に示す。図1に示されるスクイズ容器は、キャップにより開閉が可能である口部1と、スクイズ容器の中央部である胴部2と、底部3とを備える。胴部2を押すことで、内容物は口部1から外部へ押し出される。なお、本発明に係るスクイズ容器は胴部2の形状が横断面において、何れの形状であってもよく、また、底部3を有さなくでもよく、例えば胴部2の末端部分が融着又は折り畳まれることで封止されたチューブ状の形態であってもよい。
【0015】
本発明に係るスクイズ容器は、外側から順に、酸素バリア層Aと、リグラインド層と、酸素バリア層Bとをこの順序で含めば、その層構成は特に限定されない。例えば、前記スクイズ容器は、酸素バリア層A、リグラインド層、及び酸素バリア層B以外に、外層と内層を含むことができ、さらに他の層を含んでもよい。前記他の層としては、例えば後述するバージン材からなるバージン層等が挙げられる。なお、前記スクイズ容器は酸素吸収性を有する酸素吸収層を含まないことが好ましい。また、酸素バリア層A及び酸素バリア層Bは接着性を有するため、前記スクイズ容器は酸素バリア層A及び酸素バリア層B以外の一般的な接着層を含まないことが好ましい。ここで、一般的な接着層とは、酸素バリア性を有する材料等を含まない接着性樹脂からなる層を示し、例えば変性ポリオレフィン樹脂からなる層である。また、前記スクイズ容器は酸素バリア層を少なくとも2層有するが、3層以上有してもよい。
【0016】
前記スクイズ容器は、例えば、外層/酸素バリア層A/リグラインド層/酸素バリア層B/内層の5層構成を有していてもよく、外層/酸素バリア層A/バージン層/リグラインド層/酸素バリア層B/内層の6層構成を有していてもよく、外層/酸素バリア層A/バージン層/リグラインド層/バージン層/酸素バリア層B/内層の7層構成を有していてもよい。一例として、図2に、外層4/酸素バリア層A5/バージン層6/リグラインド層7/バージン層6/酸素バリア層B8/内層9の7層構成を有するスクイズ容器の断面図を示す。
【0017】
スクイズ容器の胴部における最も薄い部分の厚みは、180~1500μmが好ましく、200~1200μmがより好ましく、300~1100μmがさらに好ましい。前記厚みが180μm以上であることにより、スクイズ時に容器が変形したり破損したりすることなく、内容物を安定して保存できる。また、前記厚みが1500μmを超えるとスクイズが困難となる。なお、ここでスクイズ容器の胴部とは、口部を除いた内容物収容部であって、底部の接地面上5mmより上の範囲の部分を示す。
【0018】
スクイズ容器内に85℃の超純水を充填して封止した後、10分間転倒殺菌を行い、室温まで冷却して一週間保管した後の、前記超純水に含まれるTOC(Total Organic Carbon、全有機炭素)量は、0.7質量ppm未満であることが好ましく、0.5質量ppm以下であることがより好ましく、0.4質量ppm以下であることがさらに好ましい。前記TOC量は、リグラインド層に含まれるアルデヒド、ケトン等の臭気成分が内容物へ移行する量を示す指標となる値であり、前記TOC量が少ないほど、臭気成分の内容物へ移行が少ないことを示す。前記TOC量が0.7質量ppm未満であることにより、臭気成分の内容物へ移行が十分に抑制される。なお、TOC量の測定は、全有機炭素計(商品名:TOC-V CPH、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0019】
スクイズ容器の剛性について、スクイズ容器の縦方向(スクイズ容器の口部から底部へ向かう方向)の圧縮強度は70N以下であることが好ましく、40~70Nであることがより好ましい。前記圧縮強度が70N以下であることにより、スクイズ容器の内容物を容易に外部へ押し出すことができ、スクイズ性が向上する。また、前記圧縮強度が40N以上であることにより、容器の自立性が向上する。なお、前記圧縮強度は以下の方法により測定される値である。スクイズ容器内に内容物充填量と同量の水を充填し、23℃で24時間コンディショニングを行った後、圧縮試験機を用いてスクイズ容器の縦方向に圧縮を行い、圧縮強度を測定する。圧縮は、20mm/min、Vノッチなしの条件で行う。圧縮試験機としては、テンシロン万能試験機(商品名:RTG-1310、(株)エー・アンド・デイ製)を用いることができる。
【0020】
(酸素バリア層A及び酸素バリア層B)
酸素バリア層A及び酸素バリア層Bは、それぞれEVOHと、ポリエチレンと、相容化剤とを含む。酸素バリア層A及び酸素バリア層Bはガスバリア性を有するEVOHを含むため、酸素及びリグラインド層に含まれる臭気成分の透過を遮断する機能を有する。また、EVOHとポリエチレンとは相容化剤によって相容化されて均質に分布しているため、ポリエチレンに由来して、酸素バリア層A及び酸素バリア層Bは、外層、内層やリグラインド層に対して優れた接着性を示す。なお、酸素バリア層Aと酸素バリア層Bの組成や厚み(質量比率)は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
EVOHとしては、エチレン含有量が20~60モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好ましい。前記エチレン含有量は、ガスバリア性の観点から20~38モル%であることが好ましい。前記EVOH(エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)は、フェノール/水の質量比が85/15の混合溶媒中、30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の固有粘度を有することができる。
【0022】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(以下、LDPEとも示す)が好ましい。LDPEは、密度が0.910g/cm以上0.930g/cm未満の範囲内であるポリエチレンであり、線状低密度ポリエチレンも含まれる。成形時におけるEVOHとの相分離等を抑制し、層間剥離を防止する観点から、LDPEの190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10min以上であることが好ましい。また、該MFRは成形性の観点から30g/10min以下であることが好ましい。該MFRは0.3~10g/10minであることがより好ましい。
【0023】
相容化剤は、EVOHとポリエチレンとを相容化させ、両者の相分離構造のサイズを小さくし、EVOHとポリエチレンとの凝集力を高めるために使用される。相容化剤としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又はその無水物、マレイン酸-ポリエチレン共重合体、無水マレイン酸-ポリエチレン共重合体、アミド、エステルなどでグラフト変性されたグラフト変性オレフィン樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ケン化度が20~100%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン含有量が85%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ハイドロタルサイト化合物、アイオノマー(イオン架橋オレフィン系共重合体)等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、相容化剤としては、EVOHと化学反応を起こす酸・酸無水物を有さない樹脂が好ましく、特にアイオノマーが好ましい。
【0024】
前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bはそれぞれ、EVOHとポリエチレンとを95:5~50:50の質量比で含むことが好ましく、90:10~55:45の質量比で含むことがより好ましく、85:15~60:40の質量比で含むことがさらに好ましく、80:20~65:35の質量比で含むことが特に好ましい。さらに、前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bはそれぞれ、EVOHとポリエチレンとの合計量100質量部当たり1~49質量部の相容化剤を含むことが好ましく、2~40質量部の相容化剤を含むことがより好ましく、3~30質量部の相容化剤を含むことがさらに好ましく、4~20質量部の相容化剤を含むことが特に好ましい。前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bが、それぞれEVOHと、ポリエチレンと、相容化剤とを前記質量比率の範囲内で含むことにより、ガスバリア性を維持しつつ、スクイズ容器の剛性を低くすることができる。
【0025】
EVOH、ポリエチレン、及び相容化剤の混合は、例えば押出機や射出機に設けられている混練部で溶融混練することにより実施することができる。
【0026】
前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bの合計の質量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。前記割合が1質量%以上であることにより、酸素及びリグラインド層に含まれる臭気成分の透過を十分に遮断することができる。また、前記割合が30質量%以下であることにより、スクイズ性を向上させることができる。
【0027】
前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層Bの質量の割合は、0.5~15質量%であることが好ましく、1.5~10質量%であることがより好ましく、2.5~5質量%であることがさらに好ましい。前記割合が0.5質量%以上であることにより、リグラインド層に含まれる臭気成分の透過を十分に遮断することができる。また、前記割合が15質量%以下であることにより、スクイズ性を向上させることができる。なお、前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層Aの質量の割合の好ましい範囲についても、前記酸素バリア層Bと同様である。
【0028】
(リグラインド層)
リグラインド層はリプロ層とも呼ばれ、成形開始時に排出される樹脂やバリなどの容器以外の部分を粉砕したスクラップ樹脂を含む層である。即ち、スクラップ樹脂は容器に含まれる各層を構成する材料の混合物であり、リグラインド層は該混合物を含む層である。該スクラップ樹脂を再利用することにより、未使用の樹脂であるバージン材の使用量を低減できるため、環境保全の観点から好ましく、また製造コストを低減できる。しかし、前記スクラップ樹脂は熱履歴を有するため、樹脂の分解物であるアルデヒドやケトン等のカルボニル基含有化合物等の臭気成分を含む。本発明に係るスクイズ容器では、該臭気成分の内容物への移行を、酸素バリア層Bによって遮断する。
【0029】
リグラインド層は、前記スクラップ樹脂以外に、前記バージン材を併用することもできる。前記バージン材としては、例えばLDPE等を用いることができる。しかし、リグラインド層中の前記スクラップ樹脂の割合は1~100質量%であることが好ましい。すなわち、リグラインド層は前記スクラップ樹脂からなってもよい。
【0030】
前記スクイズ容器の質量に対するリグラインド層の質量の割合は特に限定されないが、例えば30~80質量%であることができ、35~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
【0031】
なお、スクイズ容器に含まれる層がリグラインド層であることは、例えば、ミクロトームで作製した切片の光学顕微鏡観察、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた材料分析、または、それらの組合せによって確認可能である。具体的には、光学顕微鏡観察では、屈折率の異なる材料が分散した海島状に観察されたり、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた材料分析では、ポリエチレンの他にEVOHに特徴的なOH基の伸縮振動に基づくスペクトルが認められたりする。
【0032】
(外層、内層)
外層及び内層はオレフィン系樹脂を含むことができる。オレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸素バリア層A及び酸素バリア層Bとの接着性がより高い観点からポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。
【0033】
外層を構成する材料と、内層を構成する材料とは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、外層及び内層は、必要に応じて、滑剤、改質剤、顔料、紫外線吸収剤等を含んでもよい。
【0034】
スクイズ容器の質量に対する外層の質量の割合は特に限定されないが、例えば5~30質量%であることができ、10~20質量%であることが好ましい。スクイズ容器の質量に対する内層の質量の割合は特に限定されないが、例えば10~40質量%であることができ、15~30質量%であることが好ましい。
【0035】
(バージン層)
本発明に係るスクイズ容器は、必要に応じてバージン層を含むことができる。バージン層に含まれるバージン材としては、前述したリグラインド層に含まれ得るバージン材が挙げられる。前記スクイズ容器がバージン層を有する場合、前記スクイズ容器の質量に対するバージン層の質量の割合は特に限定されないが、例えば0.1~5質量%であることができる。
【0036】
(スクイズ容器の製造方法)
本発明に係るスクイズ容器の製造方法は特に限定されないが、例えば外側から順に、酸素バリア層Aと、リグラインド層と、酸素バリア層Bとをこの順序で含むチューブ状のパリソンを製造する工程と、前記パリソンを金型で挟んで前記パリソンをピンチオフするとともに融着させ、前記パリソンの内部に気体を吹き込んで成形する工程と、を含むことができる。具体的には、まず、チューブ容器を構成する各層の材料を、多層多重ダイスを使用して共押出しすることでチューブ状のパリソンを製造する。次に、溶融押出されたパリソンを金型内に供給し、パリソンを金型で両側から挟んでパリソンをピンチオフすると共に融着する。次に、パリソンの内部に空気などの圧縮気体を吹き込んで膨張させ、容器の形状に成形する。その後、冷却し、金型を開いて成形品を取り出す。
【0037】
(用途)
本発明に係るスクイズ容器は、わさび、しょうが、からし、ケチャップ、マヨネーズ、ジャム、チョコレート等の粘性食品、練歯磨、化粧品等を収容し、保存するための容器として用いることができる。本発明に係るスクイズ容器を用いることで、容器自体の臭気の内容物への移行を抑制することができる。また、本発明に係るスクイズ容器はスクイズ性が高いため、内容物を容易に外部へ押し出すことができる。
【実施例
【0038】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例1及び比較例1により得られたボトルのフレーバー評価、溶出性評価、及び剛性評価は、以下の方法により行った。
【0039】
[フレーバー評価]
実施例1及び比較例1により得られたボトル内に、85℃の超純水を400g充填し、口部をシール材で封止した。10分間転倒殺菌を行った後、流水中で室温まで冷却し、一週間保管した。保管後のボトル内の超純水(以下、試験液とも示す)のフレーバーを、以下の3点識別・嗜好法により評価した。
【0040】
(3点識別・嗜好法)
パネル10名により、実施例1の試験液及び比較例1の試験液を用いて、3点識別法により識別テストを行った。具体的には、2つの実施例1の試験液及び1つの比較例1の試験液の3つの試験液の組み合わせ、又は、2つの比較例1の試験液及び1つの実施例1の試験液の3つの試験液の組み合わせ、をパネルに提示し、1つだけ異なる試験液を当てる識別テストを、パネル1名に対して2回行った。回答数(20)に対する正解数を表1に示す。
また、嗜好テストとして、前記識別テストに正解したパネルに対して、識別した試験液のいずれが好ましいフレーバーであるかについて問合せた。結果を表1に示す。
【0041】
[溶出性評価]
前記フレーバー評価における実施例1の試験液及び比較例1の試験液について、TOC(Total Organic Carbon、全有機炭素)量を、全有機炭素計(商品名:TOC-V CPH、(株)島津製作所製)を用いて測定した。該測定を3回行い、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0042】
[剛性評価]
実施例1及び比較例1により得られたボトル内に水400gを充填し、23℃で24時間コンディショニングを行った。圧縮試験機(テンシロン万能試験機、商品名:RTG-1310、(株)エー・アンド・デイ製)を用いて、ボトルの縦方向(ボトルの口部から底部へ向かう方向)に圧縮を行い(20mm/min、Vノッチなし)、圧縮強度を測定した。測定は24本行い、平均した結果を表1に示す。
【0043】
[実施例1]
内層、外層、及びバージン層用の材料として、LDPE(商品名:LB420M、日本ポリエチレン(株)製)を準備した。酸素バリア層A及びBの材料として、EVOH(商品名:DC3203RB、日本合成(株)製)70質量部、LDPE(商品名:LB420M、日本ポリエチレン(株)製)20質量部、及び相容化剤としてのアイオノマー樹脂(商品名:ハイミラン1601、三井・デュポンポリケミカル社製)10質量部を含む混合物を準備した。リグラインド層の材料として、LDPE(商品名:LB420M、日本ポリエチレン(株)製)60質量部と、再利用した各層材料の混合物(スクラップ樹脂)40質量部と、の混合物を準備した。内層、外層及びバージン層、酸素バリア層A及びB、並びにリグラインド層の各材料を3つの押出機にそれぞれ投入し、外層/酸素バリア層A/バージン層/リグラインド層/酸素バリア層B/内層の6層からなる多層パリソンを押出した。次いで、前記多層パリソンを用いてダイレクトブロー成形により成形し、容量420ml、質量18gのスクイズ容器であるボトルを得た。
【0044】
前記ボトルの胴部における最も薄い部分の厚みは300μmであった。また、各層の質量分率は、外層(15.0質量%)/酸素バリア層A(3.3質量%)/バージン層(1.0質量%)/リグラインド層(52.4質量%)/酸素バリア層B(3.3質量%)/内層(25.0質量%)であった。
【0045】
前記ボトルに対して、前記フレーバー評価、溶出性評価、及び剛性評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例1]
内層及び外層用の材料として、LDPE(商品名:LB420M、日本ポリエチレン(株)製)を準備した。酸素バリア層の材料として、EVOH(商品名:DC3203RB、日本合成(株)製)を準備した。接着層の材料として、変性ポリオレフィン樹脂(商品名:モディックL522、三菱化学(株)製)を準備した。リグラインド層の材料として、LDPE(商品名:LB420M、日本ポリエチレン(株)製)60質量部と、再利用した各層材料の混合物(スクラップ樹脂)40質量部と、の混合物を準備した。内層及び外層、酸素バリア層、接着層、並びにリグラインド層の各材料を4つの押出機にそれぞれ投入し、外層/接着層/酸素バリア層/接着層/リグラインド層/内層の6層からなる多層パリソンを押出した。次いで、前記多層パリソンを用いてダイレクトブロー成形により成形し、容量420ml、質量18gのスクイズ容器であるボトルを得た。
【0047】
前記ボトルの胴部における最も薄い部分の厚みは300μmであった。また、各層の質量分率は、外層(15.0質量%)/接着層(1.0質量%)/酸素バリア層(2.4質量%)/接着層(1.0質量%)/リグラインド層(65.6質量%)/内層(15.0質量%)であった。
【0048】
前記ボトルに対して、前記フレーバー評価、溶出性評価、及び剛性評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示されるように、フレーバー評価(3点識別・嗜好法)において、実施例1は比較例1と有意に識別され、実施例1は比較例1よりも優位に好まれることが確認された。さらに、識別テストに正解したパネルの多くが、実施例1は比較例1に対して、プラスチック等の味及び臭いが弱いとコメントした。また、溶出性評価では、実施例1は比較例1よりもTOC量が少ないことが確認された。これらの評価より、実施例1では、リグラインド層に含まれるアルデヒド、ケトン等の臭気成分の内容物への移行が、リグラインド層と内層との間に存在する酸素バリア層Bによって一部遮断されたことが推測される。
【0051】
また、剛性評価では、比較例1よりも実施例1の方が、圧縮強度が低く、剛性が低い、すなわちスクイズ性が高いことが確認された。比較例1では酸素バリア層の材料としてEVOH単体を用いたのに対し、実施例1では酸素バリア層A及びBの材料として、EVOH以外に、LDPEと相容化剤を含む混合物を用いており、これにより実施例1ではボトル全体の剛性が低下したと推測される。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]外側から順に、酸素バリア層Aと、リグラインド層と、酸素バリア層Bとをこの順序で含むスクイズ容器であって、
前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bが、それぞれエチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリエチレンと、相容化剤と、を含むスクイズ容器。
[2]前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bがそれぞれ、エチレン-ビニルアルコール共重合体とポリエチレンとを95:5~50:50の質量比で含み、さらに、エチレン-ビニルアルコール共重合体とポリエチレンとの合計量100質量部当たり1~49質量部の相容化剤を含む[1]に記載のスクイズ容器。
[3]前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層A及び前記酸素バリア層Bの合計の質量の割合が1~30質量%である[1]又は[2]に記載のスクイズ容器。
[4]前記スクイズ容器の質量に対する、前記酸素バリア層Bの質量の割合が0.5~15質量%である[1]から[3]のいずれかに記載のスクイズ容器。
[5]前記スクイズ容器の胴部における最も薄い部分の厚みが180~1500μmである[1]から[4]のいずれかに記載のスクイズ容器。
[6]前記スクイズ容器が、外層と、前記酸素バリア層Aと、前記リグラインド層と、前記酸素バリア層Bと、内層とをこの順序で含む[1]から[5]のいずれかに記載のスクイズ容器。
【符号の説明】
【0052】
1 口部
2 胴部
3 底部
4 外層
5 酸素バリア層A
6 バージン層
7 リグラインド層
8 酸素バリア層B
9 内層
図1
図2