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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】濃縮システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20241105BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/00 500
B01D61/02
B01D61/58
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019227092
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021094519
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 佑己
(72)【発明者】
【氏名】合田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】中尾 崇人
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】深草 祐一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0349465(US,A1)
【文献】特開2018-001110(JP,A)
【文献】特開平10-137758(JP,A)
【文献】特開2016-150308(JP,A)
【文献】特開2010-162527(JP,A)
【文献】特開2012-011350(JP,A)
【文献】特開2007-185577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22, 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して水を分離および回収し、濃縮された前記原液である第1対象液を排出する、逆浸透モジュールと、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールと、を備え、
前記第1室から排出される濃縮液の少なくとも一部が、前記第2対象液として第2室に流され、
前記希釈液は、前記原液の少なくとも一部として再利用される、濃縮システムであって、
記濃縮液ら濁質成分および硬質成分をこの順で除去する浄化装置をさらに備える、濃縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、逆浸透(RO)法を用いた淡水化処理に必要なエネルギーを低下させること等を目的として、半透膜モジュールの第1室に高圧の対象液を流し、第2室に低圧の対象液を流して、第1室内の対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室内の対象液に移行させることで、第1室から濃縮された対象液を排出し、第2室から希釈された対象液を排出する膜分離方法(ブラインコンセントレーション)が検討されている(例えば、特許文献1:特開2018-1110号公報参照)。
【0003】
また、ROモジュールから排出される濃縮液をさらに高圧で運転可能な半透膜モジュールの第1室に流して、上記のブラインコンセントレーション(BC)により濃縮液をRO法よりも超高圧条件でさらに濃縮する濃縮システムも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-1110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ROモジュールに供給される海水等の原液がスケール成分(炭酸水素塩などの硬質成分)を含んでいる場合、ROモジュールで濃縮される際に、スケール成分が濃縮されて半透膜の表面等にスケール(炭酸塩など)として析出し、半透膜の目詰まり等の問題が生じる。このため、原液がスケール成分を含んでいる場合は、ROモジュール内でスケールが析出しない程度に、原液に対してスケール防止剤の添加等によるスケール成分の析出抑制もしくは低減化処理が施されている。
【0006】
ここで、スケール成分の析出抑制もしくは低減化のレベル(スケール防止剤の添加量など)は、ROモジュール内での濃縮によってスケールが析出しないレベルであればよく、原液から完全にスケール成分を除去する必要はない。このため、ROモジュールから排出される濃縮液中には、それ以上濃縮度を上げると容易にスケールが発生するレベルの溶液組成となっている場合がある。
【0007】
このため、ROモジュールの後にブラインコンセントレーション(BC)を組み合わせて、更に濃縮を行う濃縮システムにおいては、ROモジュールから排出される濃縮液がさらにBCによって濃縮される際に、BCに用いられる半透膜モジュールでスケールが発生する虞がある。また、BCの際に、液の水温やpHが変動した場合に、スケール(硬質成分)が析出してしまう虞もある。
【0008】
BCに用いられる半透膜モジュールにおいて、スケールが析出すると、膜閉塞(目詰まり)等の問題が生じる可能性がある。
【0009】
また、ROモジュールに供給される海水等の原液は濁質成分(有機物、微生物など)を含んでいる場合もある。この濁質成分に対しても、通常は、ROモジュール内で濁質成分による膜閉塞が生じない程度に、原液に対して濁質成分の低減化処理が施されている。しかし、ROモジュールから排出される濃縮液がさらにBCによって濃縮される際に、BCに用いられる半透膜モジュールにおいて、濁質成分が高濃度になることにより、スケール成分と同様の問題を生じる虞がある。
【0010】
ここで、図2に示されるように、半透膜モジュール1の第1室11から排出される対象液(BCにより濃縮された濃縮液)を圧力を低下させて半透膜モジュール1の第2室12に流し、かつ、半透膜モジュール1の第2室12から排出される対象液(BCにより希釈された希釈液)が対象液の原液の少なくとも一部として再利用される場合は、このような問題が濃縮システム全体に亘り継続的に生じることになる。
【0011】
したがって、本発明は、逆浸透(RO)モジュールから排出される濃縮原液をブラインコンセントレーション(BC)によりさらに濃縮する濃縮システムにおいて、半透膜モジュール1の第1室11から排出される濃縮液を圧力を低下させて半透膜モジュール1の第2室12に流し、かつ、半透膜モジュール1の第2室12から排出される希釈液が対象液の原液の少なくとも一部として再利用される場合に、BCに用いられる半透膜モジュールおよびROモジュールにおける膜閉塞等を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して水を分離および回収し、濃縮された前記原液である第1対象液を排出する、逆浸透モジュールと、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールと、を備え、
前記第1室から排出される濃縮液の少なくとも一部が、前記第2対象液として第2室に流され、
前記希釈液は、前記原液の少なくとも一部として再利用される、濃縮システムであって、
前記第1対象液、前記濃縮液、前記第2対象液および前記希釈液の少なくともいずれかから硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかを除去する浄化装置をさらに備える、濃縮システム。
【0013】
(2) 前記浄化装置は、少なくとも前記濃縮液から、硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかを除去する、(1)に記載の濃縮システム。
【0014】
(3) 前記浄化装置は、前記第1対象液、前記濃縮液、前記第2対象液および前記希釈液の少なくともいずれかから、濁質成分および硬質成分をこの順で除去する、(1)または(2)に記載の濃縮システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、逆浸透(RO)モジュールから排出される濃縮原液をブラインコンセントレーション(BC)によりさらに濃縮する濃縮システムにおいて、半透膜モジュール1の第1室11から排出される濃縮液を圧力を低下させて半透膜モジュール1の第2室12に流し、かつ、半透膜モジュール1の第2室12から排出される希釈液が対象液の原液の少なくとも一部として再利用される場合に、BCに用いられる半透膜モジュールおよびROモジュールにおける膜閉塞等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の濃縮システムを示す模式図である。
図2】従来の濃縮システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0018】
<実施形態1>
図1を参照して、本実施形態の濃縮システムは、主に、逆浸透モジュール2と、半透膜モジュール1と、浄化装置3と、を備える。
【0019】
逆浸透モジュール2では、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜20を介して水を分離および回収し、濃縮された原液である第1対象液(濃縮原液)を排出する。
半透膜モジュール1では、半透膜10と、半透膜で仕切られた第1室11および第2室12と、を有し、第1対象液を所定の圧力で第1室11に流し、第2対象液を所定の圧力(第1対象液の圧力)よりも低い圧力で第2室12に流すことで、第1室11内の第1対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室12内の第2対象液に移行させ、第1室11から濃縮液を排出し、第2室12から希釈液を排出する。
第1室11から排出される濃縮液の少なくとも一部が、第2対象液として第2室12に流され、かつ、第2室12から排出される希釈液は、原液の少なくとも一部として再利用される。
浄化装置3では、第1対象液、濃縮液、第2対象液および希釈液の少なくともいずれかから硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかが除去される。
【0020】
尚、浄化装置3において、硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかを「除去する」とは、必ずしも硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかを完全に除去する必要はなく、硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかの少なくとも一部を除去すればよい。すなわち、硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかの量を低減することができればよい。
【0021】
以下、本実施形態の濃縮システムの詳細について説明する。
【0022】
〔逆浸透モジュール〕
本実施形態の濃縮システムは、逆浸透(RO)モジュール2の上流側に、高圧ポンプ2aを備える。高圧ポンプ2aは、原液を所定の圧力に昇圧してROモジュール2の第1室21に供給する。ROモジュール2は、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透(RO)膜20を介して水(透過水)を第2室22側へ分離することで、濃縮された原液である濃縮原液(第1対象液)を第1室21から排出し、水を第2室22から排出する。
【0023】
本明細書において、「原液」は、ROモジュール2に供給される水を含む液体であれば特に限定されず、溶液および懸濁液のいずれであってもよい。原液としては、例えば、海水、河川水、汽水、排水などが挙げられる。排水としては、例えば、工業排水、生活排水、油田またはガス田の排水などが挙げられる。
【0024】
なお、高圧ポンプ2aの上流側には、原液中に含まれる濁質(微粒子、微生物、スケール成分等)を除去するために、図示しない前処理装置を備えていてもよい。前処理装置としては、例えば、砂ろ過装置やUF(Ultrafiltration:限外ろ過)膜、MF(Microfiltration:精密ろ過)膜等を用いたろ過装置や、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、凝集剤、スケール防止剤等の添加装置や、pHの調整装置などが挙げられる。なお、スケール防止剤とは、液中のスケール成分がスケールとして析出することを防止または抑制する作用を有する添加剤である。スケール防止剤としては、例えば、ポリリン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ポリカルボン酸系などの化合物が挙げられる。
【0025】
本実施形態において、ROモジュール2(第1室21)の下流側に半透膜モジュール1が接続される。ROモジュール2の第1室21から排出される濃縮原液は、高い圧力を有しているため、その圧力によって半透膜モジュール1側へ送られる。すなわち、ROモジュール2の第1室21から排出される濃縮原液が、半透膜モジュール1の第1室11に供給される第1対象液である。
【0026】
〔半透膜モジュール〕
半透膜モジュール1は、半透膜10と、半透膜10で仕切られた第1室11および第2室12と、を有する。
【0027】
第1対象液(濃縮原液)は、所定の圧力で第1室11に流入し、第2対象液は、所定の圧力よりも低い圧力で第2室12に流入する。これにより、第1室11内の第1対象液に含まれる水は半透膜10を介して第2室12内の第2対象液に移行し、第1室11から濃縮液(濃縮された第1対象液)が排出され、第2室12から希釈液(希釈された第2対象液)が排出される。
【0028】
ここで、本実施形態において、第1室から排出される濃縮液の少なくとも一部は、第2対象液として第2室に流される。なお、図1では、第1室から排出される濃縮液の少なくとも一部が、後述する浄化装置3を介して、第2対象液として第2室に流されているが、浄化装置3の位置はこの位置に限定されない。
【0029】
図1の場合、半透膜モジュール1の第1室11と第2室12とに流入する対象液は、同じ液であるため、基本的に等しい浸透圧を有する。このため、RO法のように、対象液(高浸透圧液)と淡水との間の高い浸透圧差に逆らって逆浸透を起こさせるための高い圧力が必要なく、比較的低圧の加圧によって、対象液の膜分離を実施することができる(一部の対象液を希釈し、他の一部の対象液を濃縮することができる)。
【0030】
ただし、本実施形態において、半透膜モジュール1の第2室12に供給される第2対象液は、第1室11に供給される第1対象液以外の液を含んでいてもよい。
【0031】
この場合、第1室11に流される第1対象液と第2室12に流される第2対象液との間で濃度が異なる場合でも、その浸透圧差(絶対値)が第1室11に供給される第1対象液の圧力よりも小さければ、理論上、BCによる膜分離は実施可能である。第1室11(高圧側)に流入する第1対象液の浸透圧と第2室12(低圧側)に供給される第2対象液の浸透圧との差は、第1室11に供給される第1対象液の所定の圧力の30%以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態において、半透膜モジュール1の第2室12から排出される希釈液は、原液の少なくとも一部として再利用される。これにより、濃縮システムから外部に排出される液は、最も濃縮された状態の半透膜モジュール1の第1室11から排出される濃縮液と、ROモジュール2の第2室22から排出される水だけとなる。この場合、濃縮液は更に処理が施され、そのまま海洋、河川等の外部環境中に排出されることはなく、水だけが外部環境中に排出されるため、半透膜モジュール1の第2室12から排出される希釈液のように、原液よりは濃縮された状態の液を外部環境中に排出することがなく、環境への悪影響を防止することができる。
【0033】
なお、BCの工程は、図1に示されるように1つの半透膜モジュール1を用いた1段の工程であってもよいが、複数の半透膜モジュールを用いた多段の工程であってもよい。
【0034】
半透膜モジュール1での膜分離処理であるブラインコンセントレーション(BC)において、半透膜モジュール1の半透膜10を介して第1室11から第2室12に水を移行させるためには、第1室11に供給される第1対象液の圧力を、半透膜10の両側を流れる第1対象液と第2対象液との浸透圧差より大きくする必要がある。このため、1段の工程(1つの半透膜モジュール)で第1対象液を高度に濃縮するためには、それに応じた高い圧力での供給が必要になり、ポンプの稼動のためのエネルギーコストが増加する等のデメリットがある。このため、濃縮工程を段階的にし、BCに必要な圧力を低下させること等を目的として、BCを複数の半透膜モジュールを用いた多段の工程により実施してもよい。このような多段の工程によるBCについては、例えば、特開2018-069198号公報に開示されている。
【0035】
半透膜としては、例えば、逆浸透(RO)膜、正浸透(FO)膜、ナノろ過(NF)膜と呼ばれる半透膜が挙げられる。なお、半透膜として逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜を用いる場合、第1室11に供給される第1対象液の圧力は好ましくは6~10MPaである。
【0036】
通常、RO膜およびFO膜の孔径は約2nm以下であり、UF膜の孔径は約2~100nmである。NF膜は、RO膜のうちイオンや塩類の阻止率が比較的低いものであり、通常、NF膜の孔径は約1~2nmである。半透膜としてRO膜またはFO膜、NF膜を用いる場合、RO膜またはFO膜、NF膜の塩除去率は好ましくは90%以上である。
【0037】
半透膜を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。半透膜は、セルロース系樹脂およびポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料から構成されることが好ましい。
【0038】
セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。酢酸セルロース系樹脂は、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロースであり、耐久性の点から、より好ましくは三酢酸セルロースである。
【0039】
ポリスルホン系樹脂は、好ましくはポリエーテルスルホン系樹脂である。ポリエーテルスルホン系樹脂は、好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホンである。
【0040】
半透膜10(および上述の逆浸透膜20)の形状としては、特に限定されないが、例えば、平膜または中空糸膜が挙げられる。なお、図1では、半透膜10として平膜を簡略化して描いているが、特にこのような形状に限定されるものではない。なお、中空糸膜(中空糸型半透膜)は、スパイラル型半透膜などに比べて、モジュール当たりの膜面積を大きくすることができ、浸透効率を高めることができる点で有利である。
【0041】
また、半透膜モジュール1(および上述の逆浸透モジュール2)の形態としては、特に限定されないが、中空糸膜を用いる場合は、中空糸膜をストレート配置したモジュールや、中空糸膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジュールなどが挙げられる。平膜を用いる場合は、平膜を積み重ねた積層型モジュールや、平膜を封筒状として芯管に巻きつけたスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
【0042】
具体的な中空糸膜の一例としては、全体がセルロース系樹脂から構成されている単層構造の膜が挙げられる。ただし、ここでいう単層構造とは、層全体が均一な膜である必要はなく、例えば、特開2012-115835号公報に開示されるように、外周表面近傍に緻密層を有し、この緻密層が実質的に中空糸膜の孔径を規定する分離活性層となっていることが好ましい。
【0043】
具体的な中空糸膜の別の例としては、支持層(例えば、ポリフェニレンオキサイドからなる層)の外周表面にポリフェニレン系樹脂(例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン)からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。また、他の例として、支持層(例えば、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンからなる層)の外周表面にポリアミド系樹脂からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。
【0044】
なお、中空糸膜を用いた半透膜モジュールにおいて、通常は、中空糸膜の外側が第1室となる。中空糸膜の内側(中空部)を流れる流体を加圧しても、圧力損失が大きくなり加圧が十分に働き難いためである。
【0045】
〔浄化装置〕
浄化装置3では、第1対象液、濃縮液、第2対象液および希釈液の少なくともいずれかから、硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかが除去される。
これにより、ROモジュールから排出される濃縮原液をBCによりさらに濃縮する濃縮システムにおいて、半透膜モジュール1の第1室11から排出される濃縮液を圧力を低下させて半透膜モジュール1の第2室12に流し、かつ、半透膜モジュール1の第2室12から排出される希釈液が対象液の原液の少なくとも一部として再利用される場合に、BCに用いられる半透膜モジュールおよびROモジュールにおける膜閉塞等を抑制することができる。
【0046】
硬質成分の除去は、例えば、後述する軟水化装置によって実施される。
濁質成分の除去は、例えば、後述する濁質除去装置によって実施される。
すなわち、浄化装置3には、例えば、これらの軟水化装置、濁質除去装置などが含まれる。
【0047】
浄化装置3では、硬質成分または濁質成分のいずれか一方が除去されてもよく、硬質成分および濁質成分の両方が除去されてもよい。
すなわち、浄化装置3は、軟水化装置のみを含んでいてもよく、濁質除去装置のみを含んでいてもよく、軟水化装置および濁質除去装置の両方を含んでいてもよい。
【0048】
なお、浄化装置3で、濃縮原液から硬質成分および濁質成分の両方が除去される場合、濃縮原液から濁質成分および硬質成分がこの順で除去されて、第1対象液として排出されることが好ましい。すなわち、浄化装置3が軟水化装置および濁質除去装置の両方を含む場合、濃縮原液の流れの上流側から順に、濁質除去装置および軟水化装置がこの順で設けられていることが好ましい。
硬質成分の除去では、例えばナノろ過膜等のより微細な多孔を有する膜が使用され、膜閉塞が生じやすいため、先に濁質成分を除去した方が、硬質成分の除去の際の膜閉塞等の問題が生じにくいためである。
【0049】
浄化装置3は、図1に示されるように、半透膜モジュール1の第1室11から排出される濃縮液から、硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかを除去することが好ましい。すなわち、浄化装置3は、半透膜モジュール1の第1室11の下流側、かつ、半透膜モジュール1の第2室12の上流側に、設けられていることが好ましい。
この場合、他の第1対象液(濃縮原液)、希釈液等に対して、浄化処理(硬質成分および濁質成分の少なくともいずれかの除去)を行うよりも、半透膜モジュール1から排出される濃縮液に対して浄化処理を行う方が、浄化装置での処理量が少なくて済む。これにより、設備に必要なスペースが小さくて済み、初期投資コストが少なくて済むという利点がある。
【0050】
浄化装置3は、耐圧性が高くない場合が多いため、半透膜モジュール1の第1室11から排出される高い圧力を有する濃縮液は、例えば、圧力低下装置4により圧力が低下された状態で浄化装置3に供給される。このため、浄化装置3から半透膜モジュール1の第2室12への流路には、第1対象液を半透膜モジュール1の第2室12に送るためのポンプ1aが設けられていてもよい。
なお、圧力低下装置4としては、例えば、分流弁、減圧器またはエネルギー回収装置などが挙げられる。
【0051】
エネルギー回収装置としては、例えば、タービン等を用いて電気としてエネルギーを回収する電気式のエネルギー回収装置、または、濃縮液から機械的にエネルギーを回収する機械式のエネルギー回収装置が挙げられる。
機械式のエネルギー回収装置としては、ターボチャージャー、または、高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を用いて、濃縮液の圧力エネルギーを動力として回収する動力伝達式のエネルギー回収装置が知られている。また、機械式のエネルギー回収装置の別の例として、圧力変換装置(Pressure Exchanger:PX)などの濃縮液の圧力を直接回収する圧力伝達式のエネルギー回収装置を用いることもできる。このようなエネルギー回収装置は、例えば、特開2004-81913号公報、特開平1-123605号公報などに開示されている。
【0052】
(軟水化装置)
軟水化装置は、ROモジュール1から排出された濃縮原液から硬質成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの多価イオン)を除去することにより、硬質成分量が低減化された液を得る装置である。
【0053】
軟水化装置としては、例えば、NF(Nanofiltration:ナノろ過)膜を用いたろ過装置、イオン交換樹脂を用いた処理装置などが挙げられる。尚、このような軟水化装置は、例えば、佐藤長久ら,「改質RO膜を用いた軟水化」,膜(MEMBRANE),38(6),304-309,2013などに開示されている。
【0054】
なお、濃縮システムの運転停止期間等において、軟水化装置のメンテナンスを実施することが好ましい。メンテナンスとしては、例えば、NF膜を用いたろ過装置の場合は薬品洗浄、イオン交換樹脂を用いた処理装置の場合はイオン交換樹脂の再生処理などが挙げられる。
【0055】
(濁質除去装置)
濁質除去装置は、ROモジュール1から排出された濃縮原液から濁質成分(有機物、微生物などの不溶性の物体)を除去することにより、濁質成分量が低減化された液を得る装置である。
【0056】
濁質除去装置としては、例えば、UF(Ultrafiltration:限外ろ過)膜を用いたろ過装置などが挙げられる。
【0057】
なお、濃縮システムの運転停止期間等において、濁質除去装置のメンテナンスを実施することが好ましい。メンテナンスとしては、例えば、UF膜を用いたろ過装置の場合は逆圧洗浄、薬品洗浄などが挙げられる。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 半透膜モジュール、1a ポンプ、10 半透膜、11 第1室、12 第2室、2 逆浸透(RO)モジュール、2a 高圧ポンプ、20 逆浸透(RO)膜、21 第1室、22 第2室、3 浄化装置、4 圧力低下装置。
図1
図2