(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】防音体及び自動車用サイレンサー
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20241105BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20241105BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G10K11/16 120
B60R13/08
G10K11/168
(21)【出願番号】P 2019509662
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011396
(87)【国際公開番号】W WO2018180887
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2017061008
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤大輔
(72)【発明者】
【氏名】上田康介
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】伊藤 隆夫
【審判官】高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-247085(JP,A)
【文献】特開2015-18081(JP,A)
【文献】特開2014-59537(JP,A)
【文献】特開2011-197672(JP,A)
【文献】特開平7-287581(JP,A)
【文献】特開2013-147771(JP,A)
【文献】特開2002-178848(JP,A)
【文献】特開2002-23764(JP,A)
【文献】特開平10-121599(JP,A)
【文献】国際公開第86/06773(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複
数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる非通気層とを有する防音体であって、
前記フェルト層の前記複
数種類の繊維は、その
一種類の繊維にて、前記複
数種類の繊維のうちの前記
一種類の繊維を除いた残り
の種類の繊維よりも太い繊維で形成され
ており、
前記フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている防音体。
【請求項2】
複
数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層とを有する防音体であって、
当該孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
前記フェルト層の前記複
数種類の繊維は、その
一種類の繊維にて、前記複
数種類の繊維のうちの前記
一種類の繊維を除いた残り
の種類の繊維よりも太い繊維で形成され
ており、
前記フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている防音体。
【請求項3】
前記フェルト層の前記複
数種類の繊維は、それぞれ、その両端部のうちの一方の端部及び他方の端部にて、前記フェルト層の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、前記フェルト層の厚さ方向に向けて配列されるように、前記所定のバインダー繊維に配合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防音体。
【請求項4】
前記フェルト
層を一側フェルト層とし、前記非通気層を介し前記一側フェルト層に対向するように前記非通気層に積層してなる他側フェルト層を備えており、
当該他側フェルト層は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、前記一側フェルト層の前記一種類の繊維である前記太い繊維の太さよりもさらに太く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音体。
【請求項5】
前記フェルト
層を一側フェルト層とし、前記孔開きフィルム層を介し前記一側フェルト層に対向するように前記孔開きフィルム層に積層してなる他側フェルト層を備えており、
当該他側フェルト層は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、前記一側フェルト層の前記一種類の繊維である前記太い繊維の太さよりもさらに太く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の防音体。
【請求項6】
複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる非通気層と、当該非通気層を介し前記一側フェルト層に対向するように前記非通気層に積層してなる他側フェルト
層とを備えており
、
前記一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
前記他側フェルト層は、複
数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の前記複
数種類の繊維は、その
一種類の繊維にて、前記一側フェルト層の前記複
数種類の繊
維の各々よりも太い繊維からなるように形成され
ており、
前記他側フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されてい
る防音体。
【請求項7】
複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層と、当該孔開きフィルム層を介し前記一側フェルト層に対向するように前記孔開きフィルム層に積層してなる他側フェルト
層とを備えており
、
前記一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
前記孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
前記他側フェルト層は、複
数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層
の前記複数種類の繊維は、その
一種類の繊維にて、前記一側フェルト層の前記複
数種類の繊
維の各々よりも太い繊維からなるように形成され
ており、
前記他側フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている防音体。
【請求項8】
前記他側フェルト層の前記複数種類の繊維は、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部にて、前記他側フェルト層の両面の一方の面及び他方の面に位置し、かつ、前記他側フェルト層の厚さ方向に向くように、前記所定のバインダー繊維に配合されていることを特徴とする請求項6または7に記載の防音体。
【請求項9】
自動車の車体の一部に設けられるサイレンサーであって、
前記車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、
前記車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる非通気層とを備えており、
前記フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、前記複数種類の繊維のうちの前記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されており、
前
記フェルト層は
、前記一種類の繊維である太い繊
維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるよう
な値に設定されてい
る自動車用サイレンサー。
【請求項10】
自動車の車体の一部に設けられるサイレンサーであって、
前記車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、前記車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層とを備えており、
前記フェルト層は、その複数種類の繊維の一種類の繊維にて、前記複数種類の繊維のうちの前記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されており、
前記孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
前記フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている自動車用サイレンサー。
【請求項11】
前記車体の一
部は、当該車体のエンジンルームと車室を区画するダッシュパネルであり、
前記防音体は
、前記フェルト層を前記ダッシュパネルに前記車室内側から装着するように配設してなる自動車用ダッシュサイレンサーであることを特徴とする請求項9または10に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項12】
前記車体の一部は、当該車体の車室のフロアであり、
前記防音体は、前記フロアと当該フロアの上面に沿うように敷いたフロアカーペットとの間にて、前記フェルト層を、前記フロアの上面に沿うように配設してなる自動車用フロアサイレンサーであることを特徴とする請求項9または10に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項13】
前記車体の一部は
、当該車体の後部に設けてなる荷物入れであり
、
前記防音体は
、前記荷物入れと当該荷物入れの内面に沿うように設けた荷物入れトリムとの間にて、前記フェルト層を、前記荷物入れの前記内面に沿うように配設してなる自動車用パーティションサイレンサーであることを特徴とする請求
項9または10に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項14】
自動車の車体の一部に設けられるサイレンサーであって、
前記車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、前記車体の一部に装着されるように複
数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してな
る一側フェルト層と、当
該一側フェルト層に積層してな
る非通気層と、当該非通気層を介し前記一側フェルト層に対向するように前記非通気層に積層されて複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる他側フェルト層とを備えており、
前
記一側フェルト層は、その複数
種類の繊維
の各々にて
、細い繊維からなり、
前記他側フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、前記一側フェルト層の前記複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成されており、
前記他側フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている自動車用サイレンサー。
【請求項15】
自動車の車体の一
部に設けられるサイレンサーであって、
前記車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、前記車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層と、当該孔開きフィルム層を介し前記一側フェルト層に対向するように前記孔開きフィルム層に積層されて複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる他側フェルト層とを備えており、
前記一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
前記孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
前記他側フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、前記一側フェルト層の前記複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成されており、
前記他側フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている自動車用サイレンサー。
【請求項16】
前記車体の一部は、当該車
体のエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルであり、
前記防音体は
、前記一側フェルト層を、前記ダッシュパネルに前記車室内側から装着するように配設してなる自動車用ダッシュサイレンサーであることを特徴とする請求項14または15に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項17】
前記車体の一部は、当該車体
の車室のフロアであり、
前記防音体は、前
記フロアと当該フロアに沿うように前記車室の内側から敷いたフロアカーペットとの間にて、前記一側フェルト層を前記フロアの上面に沿うように配設してな
る自動車用フロアサイレンサーであることを特徴とする請求項14または15に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項18】
前記車体の一
部は、当該車体の後部に設けてなる荷物入れであり、
前記防音体は
、前記荷物入れと当該荷物入れの内面に沿うように設けた荷物入れトリムとの間にて、前記一側フェルト層を前記荷物入れの前記内面に沿うように、配設さ
れる自動車用パーティションサイレンサーであることを特徴とする請求項14または15に記載の自動車用サイレンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を防音するに適した防音体及び自動車内への伝搬騒音等を防音するに適した自動車用サイレンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防音体においては、下記特許文献1に記載された超軽量な防音体が提案されている。この超軽量な防音体は、吸音層及び非通気の共振層を備えており、非通気の共振層は、接着層を介し吸音層に接着されている。これにより、当該防音体は、吸音層と非通気の共振層とをその界面で共振させて吸音することにより防音するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように構成した防音体は、接着層を介した吸音層及び非通気の共振層からなる2層構造でもって構成されている。
【0005】
従って、当該防音体が、その吸音層にて、例えば、自動車のエンジンルームと車室との境界部品であるダッシュパネルに沿い配設されると、エンジンルーム内で発生するエンジン音は、騒音として、ダッシュパネル及び防音体を順次通り車室内に伝搬することとなる。
【0006】
ここで、当該騒音は、ダッシュパネル、吸音層及び非通気の共振層に順次入射する。このとき、吸音層がフェルトから形成されていることから、当該吸音層は、空気層として機能する。このため、上述のように騒音が、ダッシュパネル及び吸音層である空気層に順次入射し、さらに接着層を介し非通気の共振層に順次入射する過程において、吸音層である空気層が、ダッシュパネルを介する騒音の音圧に応じて、非通気の共振層との間において、ばね層として機能することとなる。
【0007】
従って、吸音層及び非通気の共振層の積層構成からなる防音体における騒音の空気伝搬による共振層の振動が、吸音層及び非通気の共振層の積層構成における騒音の固体伝搬による共振層の振動と逆位相になると、共振層の振動が止まることで、当該防音体の遮音性能が質量則に基づき向上する。一方、上述した騒音の空気伝搬による共振層の振動が上述した騒音の固体伝搬による共振層の振動と同位相になると、共振層の振動が大きくなることで、防音体の遮音性能が質量則のもとに悪化する。
【0008】
このような現象のもと、上述の防音体においては、吸音層を構成するフェルトが、通常、吸音性能を高めるために、複数の細い繊維でもって形成されているため、防音体の遮音性能が、騒音の高周波数領域では向上するものの、騒音の低周波数から中周波数に亘る領域では低下してしまう。
【0009】
今日、自動車に採用される防音体の遮音性能を、騒音の低周波数から中周波数領域に亘り、改善したいという要請が強い。これに対する対策としては、吸音層の質量を大きくあげる方法が考えられるが、これでは、防音体の質量が増大して、軽量化の要請に反することになる。
【0010】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、非通気層或いは当該非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る孔開きフィルム層を積層してなるフェルト層を構成する複数種類の繊維のうち、主として、その一種類の繊維の太さを増大させることでもって、低周波数から中周波数に亘る周波数領域における遮音性能を大幅に改善するようにした防音体及び自動車用サイレンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る防音体は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層(40)と、当該フェルト層に積層してなる非通気層(50)とを有する。
【0012】
当該防音体において、フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されており、
フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
【0013】
このように、フェルト層の複数種類の繊維の一種類の繊維を当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維とし、かつ、フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
これにより、騒音がフェルト層を空気伝搬により通る際の非通気層の振動の位相が、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層を介し固体伝搬により非通気層に伝わる際の当該非通気層の振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けてずれた位相となり、非通気層の遮音性能を大幅に改善し得る。
【0014】
以上によれば、当該防音体においては、そのフェルト層の複数種類の繊維のうちの一種類の繊維が、当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維となるのみである。このため、当該防音体の軽量化は維持され得る。従って、このような軽量化の維持のもと、当該防音体は、その防音性能において、騒音の低周波数領域から中周波数に亘る周波数領域で質量則を超えて良好に向上することにより、遮音性能を大幅に改善し得る。
【0015】
また、本発明に係る防音体は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層とを有する。
当該防音体において、
孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されており、かつ、当該フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
【0016】
これによれば、フェルト層の複数種類の繊維のうちの一種類の繊維を当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維とする構成に加えて、孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成されており、かつ、フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
【0017】
このように、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなる孔開きフィルム層がフェルト層に積層されていても、フェルト層が、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることで、騒音がフェルト層を空気伝搬により通る際の孔開きフィルム層の振動の位相が、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層を介し固体伝搬により孔開きフィルム層に伝わる際の当該孔開きフィルム層の振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けてずれた位相となり、孔開きフィルム層の遮音性能を大幅に改善し得る。
【0018】
また、本発明は、上述した防音体において、フェルト層の複数種類の繊維は、それぞれ、その両端部のうちの一方の端部及び他方の端部にて、フェルト層の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、フェルト層の厚さ方向に向けて配列されるように、上記所定のバインダー繊維に配合されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、複数種類の繊維のうちの一種類の繊維を、当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維とするフェルト層においては、当該フェルト層の複数種類の繊維が、さらに、それぞれ、その両端部のうちの一方の端部及び他方の端部にて、フェルト層の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、フェルト層の厚さ方向に向けて配列されるように、上記所定のバインダー繊維に配合されていることで、当該複数種類の繊維の弾性が、通常のフェルト層のようにそのフェルト層の両面に沿い複数の種類の繊維を配列する場合に比べて、大幅に高められる。その結果、非通気層及び穴開きフィルム層のいずれであっても、当該防音体の騒音に対する遮音性能が、通常のフェルト層のようにフェルト層の両面に沿い複数種類の繊維を配列するにすぎない防音体に比べて、大幅に改善され得る。
【0027】
また、本発明は、上述した防音体において、
複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて当該複数種類の繊維のうちの残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されているフェルト層を一側フェルト層とし、非通気層を介し一側フェルト層に対向するように当該非通気層に積層してなる他側フェルト層を備えており、
当該他側フェルト層は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、一側フェルト層の上記一種類の繊維である上記太い繊維の太さよりもさらに太く形成されていることを特徴とする。
【0028】
これによれば、他側フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、一側フェルト層の上記一種類の繊維である上記太い繊維の太さよりもさらに太く形成されていることで、当該他側フェルト層が、一側フェルト層と実質的に同様の硬さになる。従って、一側フェルト層及び他側フェルト層が、同様に、非通気層の振動に対し相乗的に作用する。このため、一側フェルト層及び他側フェルト層が、ともに、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、非通気層の遮音性能を、質量則を超えて大幅に改善するように機能する。このことは、非通気層の遮音性能を、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、より一層向上させ得ることを意味する。
また、本発明は、上述した防音体において、
複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて当該複数種類の繊維のうちの残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されているフェルト層を一側フェルト層とし、孔開きフィルム層を介し一側フェルト層に対向するように当該孔開きフィルム層に積層してなる他側フェルト層を備えており、
当該他側フェルト層は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、上記一側フェルト層の上記一種類の繊維である上記太い繊維の太さよりもさらに太く形成されていることを特徴とする。
このように、他側フェルト層を孔開きフェルト層を介し一側フェルト層に積層する構成であっても、一側フェルト層及び他側フェルト層が、同様に、孔開きフェルト層の振動に対し相乗的に作用する。従って、一側フェルト層及び他側フェルト層が、ともに、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、孔開きフェルト層の遮音性能を、質量則を超えて大幅に改善するように機能する。このことは、孔開きフェルト層の遮音性能を、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、より一層向上させ得ることを意味する。
【0030】
また、本発明に係る防音体は、
複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる非通気層と、この非通気層を介し一側フェルト層に対向するように当該非通気層に積層してなる他側フェルト層とを備えており、
一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
他側フェルト層は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の上記複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、一側フェルト層の上記複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成されており、
他側フェルト層は、前記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
【0031】
これによれば、一側フェルト層は、他側フェルト層よりも柔らかく非通気層の振動に影響しにくく、吸音層として機能する。一方、他側フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。従って、当該他側フェルト層は、非通気層の振動に対し、その遮音性能を騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において質量則を超えて改善するように、機能する。
【0032】
その結果、上述のように当該防音体が、太い繊維を有しない一側フェルト層、非通気層及び太い繊維を有する他側フェルト層からなる3層積層構成であっても、騒音に対する良好な防音効果を発揮し得る。
【0033】
また、本発明に係る防音体は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層と、この孔開きフィルム層を介し一側フェルト層に対向するように当該孔開きフィルム層に積層してなる他側フェルト層とを備えており、
一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
他側フェルト層は、複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成されており、
当該他側フェルト層の上記複数種類の繊維は、その一種類の繊維にて、一側フェルト層の上記複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成されており、
他側フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
このように、他側フェルト層を孔開きフェルト層を介し一側フェルト層に積層する構成であっても、他側フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることから、防音体は、その防音性能において、騒音の低周波数領域から中周波数に亘る周波数領域で質量則を超えて良好に向上することで、遮音性能を大幅に改善し得る。
【0034】
また、他側フェルト層の上記複数種類の繊維は、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部にて、他側フェルト層の両面の一方の面及び他方の面に位置し、かつ、他側フェルト層の厚さ方向に向くように、所定のバインダー繊維に配合されていてもよい。これによれば、上述の作用効果に加えて、他側フェルト層の騒音に対する遮音性能が、通常のフェルト層のようにフェルト層の両面に沿い複数種類の繊維を配列する場合に比べて、大幅に改善され得る。
【0038】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーは、自動車の車体の一部に設けられるものである。
【0039】
当該サイレンサーにおいて、
車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる非通気層とを備えており、
フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、上記複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されており、
フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていてもよい。
【0040】
このような構成によれば、フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されているので、車体の一部から車室内への騒音がフェルト層を空気伝搬により通る際の非通気層の振動の位相が、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層を介し固体伝搬により非通気層に伝わる際の当該非通気層の振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けてずれた位相となり、非通気層の遮音性能を大幅に改善し得る。
【0043】
また、本発明は、上記サイレンサーにおいて、
車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなるフェルト層と、当該フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層とを備えており、
フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、上記複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されており、
孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていてもよい。
このように、非通気層に代えて、当該非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなる穴開きフィルム層を採用しても、フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることで、車体の一部から車室内への騒音がフェルト層を空気伝搬により通る際の穴開きフィルム層の振動の位相が、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層を介し固体伝搬により孔開きフィルム層に伝わる際の当該穴開きフィルム層の振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けてずれた位相となり、穴開きフィルム層の遮音性能を大幅に改善し得る。
【0044】
また、本発明は、上述した自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、車体のエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルであり、
防音体は、フェルト層をダッシュパネルに車室内側から装着するように配設してなる自動車用ダッシュサイレンサーであることを特徴とする。
【0045】
このように、上述した自動車用サイレンサーがフェルト層をダッシュパネルに車室内側から装着するように配設してなる自動車用ダッシュサイレンサーであれば、エンジンルームから車室内への騒音がフェルト層を空気伝搬により通る際の非通気層或いは穴開きフィルム層の振動の位相が、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層を介し固体伝搬により非通気層或いは穴開きフィルム層に伝わる際の当該非通気層或いは穴開きフィルム層の振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けてずれた位相となり、非通気層或いは穴開きフィルム層の遮音性能を大幅に改善する。
【0046】
これにより、当該防音層が非通気層或いは穴開きフィルム層のいずれを有していても、当該防音体、ひいては、自動車用ダッシュサイレンサーは、軽量化を維持しつつ、その防音性能において、騒音の低周波数領域から中周波数に亘る周波数領域で質量則を超えて良好に向上することで、遮音性能を大幅に改善し得る。
【0049】
以上によれば、エンジンルームから車室内への騒音に対し良好な防音機能を発揮し得る自動車用ダッシュサイレンサーの提供が可能となる。
【0050】
また、本発明は、上述した自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体の車室のフロアであり、
防音体は、フロアと当該フロアの上面に沿うように敷いたフロアカーペットとの間にて、フェルト層を、フロアの上面に沿うように配設してなる自動車用フロアサイレンサーであることを特徴とする。
【0051】
これによれば、上述した自動車用サイレンサーが、フェルト層を、フロアの上面に沿うように配設してなる自動車用フロアサイレンサーであれば、上述したように複数種類の繊維の一種類の繊維にて、当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されているフェルト層において、当該フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層或いは孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
これにより、当該自動車によるロードの走行中においてロードから発生するロードノイズやエンジンからフロアの下側へ回り込むように発生するエンジン音が、騒音として、フロアを通り自動車用フロアサイレンサーに入射しても、当該騒音は、上述した構成を有するフェルト層により、非通気層或いは孔開きフィルム層の遮音性能と相まって、車室内から良好に遮音ないし防音され得る。
【0052】
また、本発明は、上述した自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体の後部に設けてなる荷物入れであり、
防音体は、荷物入れと当該荷物入れの内面に沿うように設けた荷物入れトリムとの間にて、フェルト層を、荷物入れの上記内面に沿うように配設してなる自動車用パーティションサイレンサーであることを特徴とする。
【0053】
これによれば、上述した自動車用サイレンサーが荷物入れの上記内面に沿うように配設してなる自動車用パーティションサイレンサーであれば、上述したように複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維で形成されているフェルト層において、当該フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層或いは孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
これにより、当該自動車によるロードの走行中において後輪から発生するロードノイズが、騒音として、荷物入れを通して車室内に進入しようとしても、当該騒音は、自動車用パーティションサイレンサーによりそのフェルト層の遮音性能でもって、非通気層或いは孔開きフィルム層の遮音性能と相まって、車室内から良好に遮音ないし防音され得る。
【0054】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーは、自動車の車体の一部に設けられるものである。
【0055】
当該サイレンサーにおいて、
車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる非通気層と、当該非通気層を介し一側フェルト層に対向するように非通気層に積層されて複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる他側フェルト層とを備えており、
一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
他側フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、一側フェルト層の複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成されており、
他側フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されている。
【0056】
これによれば、一側フェルト層は、他側フェルト層よりも柔らかく非通気層の振動に影響しにくく、吸音層として機能する。これに対し、複数種類のうちの一種類の繊維にて一側フェルト層の複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなる他側フェルト層が、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることから、非通気層の振動に対し、その遮音性能を騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において質量則を超えて改善するように、機能する。
【0057】
また、本発明は、自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部に装着される防音体を備えており、
当該防音体は、車体の一部に装着されるように複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる一側フェルト層と、当該一側フェルト層に積層してなる孔開きフィルム層と、当該孔開きフィルム層を介し一側フェルト層に対向するように孔開きフィルム層に積層されて複数種類の繊維を所定のバインダー繊維に配合して形成してなる他側フェルト層とを備えており、
一側フェルト層は、その複数種類の繊維の各々にて、細い繊維からなり、
孔開きフィルム層は、非通気層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなり、
他側フェルト層は、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、一側フェルト層の複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成されており、
他側フェルト層は、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることを特徴とする。
このように、非通気層に代えて、当該非通期層と同様の遮音性能を発揮し得る通気度を設定するに要する開孔径及び開口率にて複数の貫通孔部を形成してなる穴開きフィルム層を採用しても、他側フェルト層が、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることで、同様の作用効果を達成し得る。
【0058】
また、本発明は、上述した自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体のエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルであり、
防音体は、一側フェルト層を、ダッシュパネルに車室内側から装着するように配設してなる自動車用ダッシュサイレンサーであることを特徴とする。
【0059】
これによれば、他側フェルト層が、上述のごとく、その複数種類の繊維の一種類の繊維にて一側フェルト層の複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成され、かつ、他側フェルト層が、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層或いは孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることから、一側フェルト層、非通気層或いは穴開きフィルム層及び他側フェルト層からなる3層積層構成でもって、エンジンルームから車室内への騒音に対しより一層良好な防音機能を発揮し得る自動車用ダッシュサイレンサーの提供が可能となる。
【0060】
また、本発明は、上述した自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体の車室のフロアであり、
防音体は、フロアと当該フロアに沿うように車室の内側から敷いたフロアカーペットとの間にて、一側フェルト層をフロアの上面に沿うように配設してなる自動車用フロアサイレンサーであることを特徴とする。
【0061】
これによれば、他側フェルト層が、上述のごとく、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、一側フェルト層の複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成され、かつ、他側フェルト層の複数種類の繊維が、それぞれ、その両端部のうちの一方の端部及び他方の端部にて、他側フェルト層の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、当該他側フェルト層が、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層或いは孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることから、一側フェルト層、非通気層或いは孔開きフィルム層及び他側フェルト層からなる3層積層構成でもって、当該自動車によるロードの走行中においてロードから発生するロードノイズやエンジンからフロアの下側へ回り込むように発生するエンジン音を、騒音として、車室内から良好に遮音ないし防音し得る。
【0062】
また、本発明は、上述した自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体の後部に設けてなる荷物入れであり、
防音体は、荷物入れと当該荷物入れの内面に沿うように設けた荷物入れトリムとの間にて、一側フェルト層を荷物入れの上記内面に沿うように、配設される自動車用パーティションサイレンサーであることを特徴とする。
【0063】
これによれば、他側フェルト層が、上述のごとく、その複数種類の繊維のうちの一種類の繊維にて、一側フェルト層の複数種類の繊維の各々よりも太い繊維からなるように形成され、かつ、当該他側フェルト層が、上記一種類の繊維である太い繊維の外径にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域以内で非通気層或いは孔開きフィルム層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような値に設定されていることから、一側フェルト層、非通気層或いは孔開きフィルム層及び他側フェルト層からなる3層積層構成でもって、自動車によるロードの走行中において後輪から発生するロードノイズを、騒音として、パーティションサイレンサーにより、その他側フェルト層の遮音性能のもとに、非通気層或いは孔開きフィルム層の遮音性能と相まって、車室内から良好に遮音ないし防音し得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本発明に係る自動車用サイレンサーのダッシュサイレンサーとしての第1実施形態を適用した自動車の模式的部分概略断面図である。
【
図2】
図1のダッシュサイレンサーの拡大正面図である。
【
図3】
図1のダッシュサイレンサーの拡大部分縦断面図である。
【
図4】上記第1実施形態において各実施例1~3及び比較例aの透過損失と騒音の周波数との関係を表す各グラフである。
【
図5】上記第1実施形態において各実施例1、4、5及び比較例aの透過損失と騒音の周波数との関係を表す各グラフである。
【
図6】本発明の第2実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図9】本発明の第5実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図10】本発明の第6実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図11】上記第6実施形態における各実施例及び各比較例の構成を示す図表である。
【
図12】上記第6実施形態における第1~第5のフェルト層の仕様及び特性を示す図表である。
【
図13】上記第6実施形態において各実施例6、7及び比較例cの透過損失と騒音の周波数との関係を表す各グラフである。
【
図14】上記第6実施形態において実施例8及び各比較例b、cの透過損失と騒音の周波数との関係を表す各グラフである。
【
図15】本発明の第7実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図16】本発明の第8実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図17】本発明の第9実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図18】本発明の第10実施形態の要部を示す部分拡大断面図である。
【
図19】本発明の第11実施形態の要部であるフロアサイレンサーを自動車のフロアに配設した状態にて示す部分拡大断面図である。
【
図20】本発明に係る自動車用サイレンサーのパーティションサイレンサーとしての第12実施形態を適用した自動車の後部の模式的部分概略断面図である。
【
図21】上記第12実施形態におけるパーティションサイレンサーを自動車のトランク内に配設した状態にて示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
【0067】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を示している。当該第1実施形態においては、本発明が自動車用サイレンサーのうちのダッシュサイレンサー(以下、ダッシュサイレンサーDSという)として自動車に適用される例が示されている。
【0068】
当該自動車は、
図1にて示すごとく、エンジンルーム10及び車室20を備えており、車室20は、当該自動車おいて、エンジンルーム10に後続して設けられている。なお、
図1において、符号Eは、エンジンルーム10内に配設してなるエンジンを示し、符号FWは、当該自動車の前輪を示している。また、車室20内には、前側座席Sが配設されており、当該車室20のフロアFLには、フロアシート20a(フロアカーペット20aともいう)が敷かれている。
【0069】
また、当該自動車は、ダッシュパネル30(ダッシュボード30ともいう)を備えている。このダッシュパネル30は、
図1にて示す縦断面湾曲形状を有するように形成されており、当該ダッシュパネル30は、エンジンルーム10と車室20との境界に設けられて、これらエンジンルーム10及び車室20を相互に区画している。なお、本第1実施形態において、ダッシュパネル30は、例えば、厚さ0.8(mm)の鉄板でもって形成されている。また、ダッシュパネル30は、その延出上端部にて、車室20のフロントウインドシールドの下縁部に連結されており、このダッシュパネル30の延出下端部は、車室20のフロアFLの前縁部に連結されている。
【0070】
また、当該自動車は、ダッシュサイレンサーDSを備えている。このダッシュサイレンサーDSは、
図1にて示すごとく、ダッシュパネル30と同様の縦断面湾曲形状にて、当該ダッシュパネル30に沿い車室20側から組み付けられている。なお、本第1実施形態では、ダッシュサイレンサーDSの外形面形状(
図2参照)は、ダッシュパネル30の外形面形状とほぼ同一となっている。
【0071】
当該ダッシュサイレンサーDSは、
図3にて示すごとく、フェルト層40及びフィルム層50を備えており、フェルト層40は、ダッシュパネル30に沿い車室20側から装着されている。フィルム層50は、フェルト層40に沿い当該自動車の後側から積層されている。なお、フェルト層40は、多孔質材料であるフェルトからなる吸音層の1種であり、フィルム層50は、単一のフィルムからなる非通気層の1種である。
【0072】
フェルト層40は、所定のバインダー繊維に複数種類の繊維を均一に配合して形成されている。ここで、当該フェルト層40を形成する複数種類の繊維は、当該フェルト層40の両面に沿うように上記所定のバインダー繊維に配合されている。本第1実施形態では、当該複数種類の繊維は、綿、羊毛、麻、絹、ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)という6種類の繊維で構成されており、これら綿、羊毛、麻、絹、ナイロン及びPETの各繊維のうち、PETの繊維が、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維よりも太い繊維として形成されている。また、上述の所定のバインダー繊維としては、熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂の繊維が挙げられる。
【0073】
ここで、フェルト層40の複数種類の繊維のうち、PETを除いた綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維は、平均で20(μm)前後の外径を有する細い繊維からなり、太くても、30(μm)程度の外径を有するにすぎない。このように細い繊維とするのは、一般に、吸音性を確保するためである。
【0074】
これに対し、PETの繊維は、上述のごとく、当該PET以外の綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維よりも太い繊維でもって形成されている。なお、フェルト層40の目付量及び厚さは、それぞれ、例えば、1000(g/m2)及び20(mm)である。
【0075】
ここで、上述のようにフェルト層の複数種類の繊維に太い繊維を含めるようにした根拠について説明する。本明細書の冒頭にて述べたように、通常、防音体においては、フェルト層が、吸音性能を高めるために、複数の細い繊維のみでもって形成されているため、防音体におけるフィルム層等の非通気層の遮音性能が、騒音の高周波数領域では向上するものの、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域では低下してしまい、改善につながらない。
【0076】
本第1実施形態において、騒音の低周波数領域は、1/3オクターブバンドの中心周波数で、200(Hz)~400(Hz)であり、中周波数領域は、400(Hz)~1600(Hz)であり、また、高周波数領域は、1600(Hz)~6300(Hz)である。なお、200(Hz)~6300(Hz)の周波数領域の騒音は、自動車の主としてエンジンから発生する騒音に相当する。
【0077】
そこで、防音体における非通気層の遮音性能を、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において改善したいという要請に応えるべく、本発明者等は、非通気層に積層されるフェルト層の構成について種々検討したところ、この検討過程において、フェルト層を構成する複数種類の繊維は、通常、すべて20(μm)前後の細い繊維であることに着目して、複数種類の繊維のうちの一種類の繊維を、主として、当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維に変更する対策を行うことで遮音性能がどのように変化するか、調べてみた。
【0078】
これによれば、フェルト層の上記一種類の繊維である太い繊維の外径及び質量配合率を調整することで、騒音の200(Hz)~6300(Hz)の周波数領域のうち、低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域200(Hz)~1600(Hz)の範囲において、上述の遮音性能が大幅に改善されることが分かった。なお、質量配合率とは、太い繊維にあっては、フェルト層の全繊維の総質量に含まれる太い繊維の質量の配合割合をいい、また、細い繊維にあっては、フェルト層の全繊維の総質量に含まれる細い繊維の質量の配合割合をいう。
【0079】
このような改善は、本実施形態における防音体を構成するフェルト層及び非通気層からなる積層構成において、フェルト層の複数種類の繊維のうちの一種類の繊維を、当該複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維よりも太い繊維としたために、騒音の固体伝搬による非通気層の振動の位相が、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域において、騒音の空気伝搬による非通気層の振動の位相と同位相にはならず、ずれた位相となり、強いていえば、逆位相に向けて変化することによるためである。
【0080】
本実施形態においては、フェルト層40の上記一種類の繊維である太い繊維(PETの繊維)の外径は、100(μm)である。また、当該フェルト層40の複数種類の繊維のうち、上記一種類の繊維である太い繊維の質量配合率は、30(%)であり、当該フェルト層40における所定のバインダー繊維の質量配合率は、50(%)である。従って、上述した太い繊維の質量配合率30(%)及び所定のバインダー繊維の質量配合率50(%)のもと、当該フェルト層40の複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維である20(μm)前後の各細い繊維の質量配合率は20(%)である。
【0081】
このように構成されるフェルト層40は次のようにして製造される。当該フェルト層40を構成する複数種類の繊維(PETの太い繊維並びに綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各細い繊維)及び所定のバインダー繊維を原料として準備する。そして、上述したごとく、フェルト層40の複数種類の繊維のうちの上記一種類の繊維である太い繊維の質量配合率は30(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は、50(%)であり、上記一種類の繊維を除いた残りの種類の繊維である20(μm)前後の各細い繊維の質量配合率は20(%)であることから、上述のように準備した原料をもとに、所定のバインダー繊維の質量配合率が50(%)、PETの太い繊維の質量配合率が30(%)、20(μm)前後の各細い繊維の質量配合率が20(%)となるように調合した後、当該調合した原料を均一に配合するとともに加熱冷却裁断等の工程を経てフェルト層40として製造される。
【0082】
一方、上述したフィルム層50は単一のフィルムで形成した非通気層でもって構成されており、当該フィルム層50の形成材料としては、ナイロンが選定されている。なお、フィルム層50の厚さは、例えば、20(μm)である。
【0083】
以上のように構成した本第1実施形態において、エンジンEがその作動に伴いエンジン音を騒音として発生すると、当該騒音は、ダッシュパネル30を介しダッシュサイレンサーDSに入射する。
【0084】
ここで、ダッシュパネル30は鉄板で形成されていることから、ダッシュパネル30に入射した騒音は、当該ダッシュパネル30によりその非通気性のもとに部分的に遮音されて、ダッシュサイレンサーDSに入射する。
【0085】
このようにして騒音がダッシュサイレンサーDSに入射すると、当該騒音は、ダッシュパネル30に隣接するフェルト層40に入射する。これに伴い、フェルト層40に入射した騒音は、当該フェルト層40によりその多孔質性のもとに部分的に吸音されて当該フェルト層40を通りフィルム層50に入射する。
【0086】
このように騒音がフェルト層40からフィルム層50に入射すると、フィルム層50が非通気性を有することから、当該騒音が、その音圧のレベル変動に応じてフィルム層50に振動を生じさせる。
【0087】
このような段階では、騒音の低周波数から中周波数に亘る周波数領域において、当該騒音がフェルト層40を空気伝搬により通る際のフィルム層50の振動の位相は、当該騒音がフェルト層40を介し固体伝搬によりフィルム層50に伝わる際の当該フィルム層50の振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けてずれた位相となる。これにより、当該防音体の遮音性能が、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、大幅に改善され得る。
【0088】
以上説明したように、本第1実施形態では、ダッシュサイレンサーDSが、上述のように構成したフェルト層40とフィルム層50との積層構成にて、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域におけるフィルム層50の遮音性能を、質量則を超えるように大幅に改善し得る。
【0089】
このことは、当該ダッシュサイレンサーDSの防音性能が、フェルト層40の複数種類の繊維のうちの上述のような太い繊維の外径及び質量配合率のもとに、騒音の低周波数領域から中周波数に亘る周波数領域において、質量則を超えて良好に向上され得ることを意味する。なお、当該ダッシュサイレンサーDSの遮音性能は、騒音の高周波数領域では、従来と同様に、質量則以上の性能として得られる。
【0090】
その結果、エンジンルーム10からのエンジン音が、騒音として、ダッシュサイレンサーDSに入射しても、当該騒音は、その低周波数領域から高周波数領域に亘りダッシュサイレンサーDSにより良好に遮音され得る。このことは、ダッシュサイレンサーDSによるエンジン音に対する防音効果が、騒音の低周波数領域から高周波数領域に亘り、良好に達成され得ることを意味する。
【0091】
また、上述したごとく、フェルト層40の複数種類の繊維のうちのPETの繊維のみが太くなるにすぎず、フェルト層40の目付け量(質量)は、特に増大することはない。しかも、フィルム層50は、単一のフィルムからなる非通気層として従来と同様の目付量を有するにすぎない。従って、ダッシュサイレンサーDSは、従来よりも重くなることはなく、軽量化に適している。
【0092】
ちなみに、上述のように構成したダッシュサイレンサーDSを実施例1とし、この実施例1の透過損失特性を、騒音の周波数との関係において、透過損失試験により測定してみた。また、この測定にあたり、実施例2~5を準備するとともに、比較例aを準備した。また、透過損失特性は、挿入損失(dB)の周波数(Hz)との関係を示す特性である。ここで、挿入損失は、ダッシュパネル30とフェルト層40との積層構成による透過損失からダッシュパネル30のみの透過損失を減じたフェルト層40のみの透過損失をいう。これに伴い、上述の透過損失特性にいう挿入損失は、透過損失を表すものともいえる。
【0093】
なお、透過損失特性における透過損失は、入射音と透過音との差であって、当該差が小さいほど、音の透過が多いために透過損失が低くて遮音性能が悪く、上記差が大きい程、音の透過が少ないために透過損失が高く遮音性能が良い。
【0094】
上述した実施例1~5及び比較例aの構成は次の通りである。なお、これら実施例1~5及び比較例aは、共に、フェルト層及びフィルム層からなる積層構成でもって構成されており、フェルト層を構成する複数種類の繊維は、本第1実施形態にて述べた綿、羊毛、麻、絹、ナイロン及びPETという6種類の繊維からなる。また、当該フェルト層の目付量及び厚さは、それぞれ、約1000(g/m2)及び約20(mm)である。但し、PETの繊維の構成は、各実施例及び比較例において相互に異なる。
【0095】
また、フィルム層は、各実施例及び比較例に共通で、本第1実施形態にて述べたフィルム層50を構成する厚さ20(μm)のナイロン製のフィルムで形成されている。
【0096】
当該実施例1は、本第1実施形態にいうダッシュサイレンサーDSと同様の積層構成からなるもので、当該実施例1において、フェルト層の6種類の繊維のうち、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径は、約20(μm)と細く、PETの繊維の外径は、100(μm)と太い。また、フェルト層におけるPETの繊維の質量配合率は、30(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は、50(%)である。
【0097】
実施例2:
当該実施例2において、フェルト層の6種類の繊維のうち、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径は、約20(μm)と細く、PETの繊維の外径は、100(μm)と太い。また、フェルト層におけるPETの繊維の質量配合率は、50(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は、30(%)である。
【0098】
実施例3:
当該実施例3において、フェルト層の6種類の繊維のうち、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径は、約20(μm)と細く、PETの繊維の外径は、100(μm)と太い。また、フェルト層におけるPETの繊維の質量配合率は、60(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は、20(%)である。
【0099】
実施例4:
当該実施例4において、フェルト層の6種類の繊維のうち、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径は、約20(μm)と細く、PETの繊維の外径は、35(μm)と太い。また、フェルト層におけるPETの繊維の質量配合率は、30(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は、50(%)である。
【0100】
実施例5:
当該実施例5において、フェルト層の6種類の繊維のうち、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径は、約20(μm)と細く、PETの繊維の外径は、70(μm)と太い。また、フェルト層におけるPETの繊維の質量配合率は、30(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は、50(%)である。
【0101】
比較例a:
当該比較例aは、従来の防音体としての構成を有しており、当該比較例aにおいて、フェルト層の6種類の繊維は、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径と同様に、PETの繊維の外径をも含めて、約20(μm)となっている。
【0102】
しかして、各実施例1~5及び比較例aについて、透過損失特性を、騒音の周波数との関係において、透過損失試験により測定してみた。
【0103】
実施例1~5及び比較例aの透過損失特性を測定したところ、
図4及び
図5にて示すような各グラフ1~5及びaは、それぞれ、折れ線グラフとして得られた。ここで、
図4は、各グラフ1~3及びaを示しており、一方、
図5は、各グラフ1、4、5及びaを示している。
【0104】
ここで、
図4において、各グラフ1~3は、それぞれ、各実施例1~3の透過損失の騒音の周波数との関係を示しており、これら各グラフ1~3は、実施例1~3において、フェルト層の太いPETの繊維の外径を一定にして、PETの繊維の質量配合率を変化させた例を示しており、グラフaは、比較例aの透過損失の騒音の周波数との関係を示している。
【0105】
一方、
図5において、各グラフ1、4及び5は、それぞれ、実施例1、4及び5の各々の透過損失の騒音の周波数との関係を示しており、これら各グラフ1、4及び5は、フェルト層の太いPETの繊維の質量配合率を一定にして、太いPETの繊維の外径を変化させた例を示しており、グラフaは、比較例aの透過損失の騒音の周波数との関係を示している。
【0106】
ここで、
図4において、グラフ1~3をグラフaと対比してみる。グラフ1では、透過失損が、周波数315(Hz)以上の高い周波数領域において、グラフaで示す透過損失よりも高いことを示す。換言すれば、実施例1は、PETの繊維の外径100(μm)及び質量配合率50(%)のもと、少なくとも、低周波数領域のうちの315(Hz)~400(Hz)の範囲及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。また、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、良好な遮音性能を有する。このことは、実施例1において、特に低周波数領域から中周波数領域において遮音性能が大きく改善されていることを意味する。
【0107】
また、グラフ2では、透過損失が、周波数250(Hz)以上の周波数領域において、比較例aで示す透過損失よりも高いことを示す。このことは、実施例2は、PETの繊維の外径100(μm)及び質量配合率60(%)のもと、少なくとも、低周波数領域のうちの250(Hz)~400(Hz)の範囲及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも良好な遮音性能を有することを意味する。なお、実施例2は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。
【0108】
また、グラフ3では、透過損失が、周波数125(Hz)以上の周波数領域において、グラフaで示す透過損失よりも高いことを示す。このことは、実施例1は、PETの繊維の外径100(μm)及び質量配合率60(%)のもと、少なくとも、低周波数領域200(Hz)~400(Hz)及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも良好な遮音性能を有することを意味する。なお、実施例1は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。
【0109】
次に、
図5において、各グラフ1、4及び5をグラフaと対比してみる。なお、グラフ1は、
図4のグラフ1と同様である。また、
図5において、グラフ1では、透過損失が、周波数約315(Hz)以上の周波数領域において、グラフaで示す透過損失よりも高いことを示す。
【0110】
このことは、実施例1は、PETの繊維の外径100(μm)及び質量配合率30(%)のもと、少なくとも、低周波数領域のうちの約315(Hz)~400(Hz)の範囲及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも良好な遮音性能を有することを意味する。なお、実施例1は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。
【0111】
また、
図5において、グラフ4では、透過損失が、周波数約315(Hz)以上の周波数領域において、グラフaで示す透過損失よりも高いことを示す。このことは、実施例4は、PETの繊維の外径35(μm)及び質量配合率30(%)のもと、少なくとも、低周波数領域のうちの約315(Hz)~400(Hz)の範囲及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも良好な遮音性能を有することを意味する。なお、実施例4は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。
【0112】
また、
図5において、グラフ5では、透過損失が、周波数約315(Hz)以上の周波数領域において、グラフaで示す透過損失よりも高いことを示す。このことは、実施例5は、PETの繊維の外径70(μm)及び質量配合率30(%)のもと、少なくとも、低周波数領域のうちの約315(Hz)~400(Hz)の範囲及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも良好な遮音性能を有することを意味する。なお、実施例5は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。
【0113】
以上によれば、実施例1~5は、いずれも、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では勿論のこと、低周波数領域のうちの約315(Hz)~400(Hz)及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、比較例aよりも、良好な遮音性能を有することが分かる。
【0114】
このことは、実施例1~5は、いずれも、約315(Hz)以上の低周波数領域及び中周波数領域に亘る周波数領域並びに高周波数領域において、比較例aよりも良好な遮音性能を有し、特に約315(Hz)以上の低周波数領域及び中周波数領域において遮音性能が大きく改善されていることを意味する。
【0115】
また、上述の実施例1~5に加えて、所定のバインダー繊維の配合比、PETの繊維の外径や質量配合率の異なる実施例を多数準備して、これら多数の実施例について、透過損失特性を、騒音の周波数との関係において、透過損失試験により測定してみた。
【0116】
これによれば、上記多数の実施例において、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、所定のバインダー繊維の質量配合率が所定の質量配合率範囲(20(%)~60(%))以内の質量配合率であり、PETの太い繊維の外径が所定の外径範囲(35(μm)~120(μm))以内の外径であるとともにPETの繊維である太い繊維の質量配合率が、所定の質量配合率範囲(25(%)~70(%))以内の質量配合率であれば、上記多数の実施例の透過損失は、比較例aよりも高く、従って、当該多数の実施例は、騒音の周波数315(Hz)~1600(Hz)の範囲以内で質量則を超える透過損失を得ることができ、比較例aよりも良好な遮音性能を有することが分かった。なお、上記多数の実施例は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、比較例aよりも良好な遮音性能を有する。
【0117】
このことは、上記多数の実施例では、遮音性能が、特に、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、比較例aよりも大幅に改善されていることを意味する。
【0118】
上述の所定の外径範囲の下限値及び上限値を35(μm)及び120(μm)としたのは、PETの繊維の外径が、35(μm)未満であったり、或いは120(μm)よりも大きいと、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域における防音体としての遮音性能の改善にはつながらないためである。
【0119】
なお、
図4の各グラフによれば、太い繊維の外径を一定として、太い繊維と所定のバインダー繊維との配合比を変化させると、所定のバインダー繊維の配合量が多い程、遮音性能が向上する周波数領域が高周波数領域側へ移動することが分かる。また、
図5の各グラフによれば、太い繊維と所定のバインダー繊維との配合比を一定にして、太い繊維の外径を変化させると、繊維の外径が大きい程、遮音性能が向上する周波数領域が高周波数領域側へ移動することが分かる。
【0120】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態の要部を示している。当該第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSにおいて、フェルト層40及びフィルム層50からなる2層の積層構成に加えて、フェルト層60が付加的に採用されている。
【0121】
当該フェルト層60は、フィルム層50を介しフェルト層40に積層されて、フェルト層40及びフィルム層50とともに3層の積層構成を形成している。
【0122】
当該フェルト層60を構成する複数の繊維は、上記第1実施形態にて述べたPET、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンという6種類の繊維で形成されている。但し、PETの繊維は、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維と同様に、20(μm)の細い繊維からなっている。従って、フェルト層60は、上述のごとくPETの太い繊維を有するフェルト層40よりも柔らかい。このことは、フェルト層60は、フェルト層40に比べてフィルム層50の振動に対して影響しにくいことを意味する。なお、フェルト層60を構成する各繊維は、当該フェルト層60の両面に沿い並行となっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0123】
このように構成した本第2実施形態では、フェルト層60が、上述のごとく、フィルム層50を介しフェルト層40に積層されている。
【0124】
従って、エンジンルーム10からの騒音が、上記第1実施形態と同様に、ダッシュサイレンサーDSのフェルト層40及びフィルム層50を通ると、当該騒音は、フェルト層60に達する。
【0125】
ここで、フェルト層60は、上述したごとく、フェルト層40よりも柔らかく形成されていることから、フェルト層60は、フィルム層50の振動に対して影響しにくい。従って、主として、フェルト層40が、上記第1実施形態にて述べたと同様に、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、フィルム層50の振動を制御して防音体としての遮音性能を改善し、一方、フェルト層60は、騒音に対し単なる吸音性能を発揮することとなる。
【0126】
これにより、上記第1実施形態にて述べたように、フェルト層40が、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、フィルム層50の遮音性能を、質量則を超えて大幅に改善することから、騒音は、フェルト層40及びフィルム層50の積層構成に基づくフィルム層50による質量則を超える遮音性能のもと、遮音された上で、フェルト層60によって吸音される。
【0127】
その結果、本第2実施形態にいうダッシュサイレンサーDSの防音効果が、フェルト層40及びフィルム層50からな2層積層構成による遮音による防音を行う効果に比べて、フェルト層60による吸音分だけさらに改善され得る。このことは、フェルト層40及びフィルム層50による遮音効果及びフェルト層60による吸音効果の相乗効果でもって、ダッシュサイレンサーDSとしての防音効果がより一層改善され得ることを意味する。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0128】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態の要部を示している。当該第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSにおいて、フェルト層40及びフィルム層50からなる2層の積層構成に加えて、フェルト層70が付加的に採用されている。
【0129】
フェルト層70は、フィルム層50を介しフェルト層40に積層されて、当該フェルト層40及びフィルム層50とともに3層の積層構成を形成している。
【0130】
本第3実施形態では、当該フェルト層70は、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40の複数種類の繊維と同様に、PET、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンという6種類の繊維で形成されており、かつ、フェルト層70は、フェルト層40と同様に、PETの繊維の外径にて、フェルト層70の複数種類の繊維のうちのPETの繊維を除いた残りの綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維の平均的な外径(20(μm))よりも大きい外径に選定されている。但し、当該フェルト層70は、その構成において、フェルト層40とは次の点で相違する。
【0131】
即ち、フェルト層70におけるPETの繊維の外径が、フェルト層40におけるPETの太い繊維の外径よりも、さらに増大するように選定されている。
【0132】
これは、フェルト層70が、フェルト層40よりも薄くなるものの、当該フェルト層40と同一の硬さになるようにするためである。これにより、フェルト層70が、フィルム層50の振動に対し、フェルト層40と同様の影響力を発揮して、フェルト層40との相乗的作用により、防音体としての遮音性能を騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域においてより一層向上させることができる。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0133】
このように構成した本第3実施形態では、フェルト層70が、上述のごとく、フェルト層40と共に、フィルム層50の遮音性能を大幅に改善する。従って、エンジンルーム10からの騒音がダッシュサイレンサーDSのフェルト層40及びフィルム層50を通りフェルト層70に達すると、当該騒音は、上述のような両フェルト層70、40のフィルム層50の遮音性能に対する相乗的改善機能でもって、さらに良好に遮音され得る。その結果、本第3実施形態にいうダッシュサイレンサーDSによれば、騒音に対する防音効果がより一層向上され得る。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0134】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態の要部を示している。当該第4実施形態では、上記第3実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSのフェルト層40、フィルム層50及びフェルト層70からなる3層積層構成(
図7参照)において、フェルト層80が、フェルト層40に代えて採用されている(
図8参照)。
【0135】
本第4実施形態において、フェルト層80は、ダッシュパネル30とフィルム層50との間において、ダッシュパネル30に沿い設けられている。当該フェルト層80を構成する複数種類の繊維は、上記第1実施形態にて述べたPET、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンという6種類の繊維で形成されている。但し、PETの繊維は、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維と同様に、20(μm)の細い繊維からなっている。従って、フェルト層80は、上述のごとくPETの太い繊維を有するフェルト層40よりも柔らかい。このことは、フェルト層80は、フェルト層70よりも、フィルム層50の振動に対し影響しにくく、単なる吸音性能を発揮するにすぎないことを意味する。その他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0136】
このように構成した本第4実施形態において、フェルト層80が、上述のごとく、ダッシュパネル30とフィルム層50との間に挟持されている。ここで、フェルト層80は、上述したごとく、フェルト層70よりも柔らかく形成されていることから、フェルト層80は、フィルム層50の振動に対して影響しにくい。従って、フェルト層80は、騒音の全周波数領域に亘り単に吸音性能を発揮するにすぎないことから、騒音は、フェルト層80により吸音されて、フィルム層50に達する。
【0137】
このように騒音がフィルム層50に達すると、上記第3実施形態にて述べたように、フェルト層70が、フィルム層50の振動に対し、フィルム層50の遮音性能を騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において質量則を超えて改善するように、機能する。
【0138】
従って、フェルト層70が、上記第3実施形態にて述べたと同様に、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、フィルム層50の振動を制御して当該防音体としての遮音性能を良好に改善し得る。
【0139】
その結果、本第4実施形態のように、ダッシュサイレンサーDSが、太い繊維を有しないフェルト層80、フィルム層50及び太い繊維を有するフェルト層70からなる3層積層構成であっても、騒音に対する良好な防音効果を発揮し得る。その他の作用効果は、フェルト層40による作用効果を除き第3実施形態と同様である。
【0140】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態の要部を示しており、当該第5実施形態においては、上記第1実施形態において、孔開きフィルム層50aが、フィルム層50に代えて採用されている。
【0141】
当該孔開きフィルム層50aは、1種の通気層であって、通気度40(cm/s)以下の通気度を有するように、複数の貫通孔部51を有するフィルム層でもって形成されている。これにより、当該複数の貫通孔部51は、開孔径及び開孔率において、孔開きフィルム層50aを、フェルト層40による振動制御のもとに、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘りフィルム層50と実質的に同様に遮音性能を発揮し得るように設定されている。従って、孔開きフィルム層50aは、フェルト層40による振動制御のもと、上記第1実施形態にて述べたフィルム層50と実質的に同様の遮音性能を発揮し得る。
【0142】
なお、孔開きフィルム層50aは、上述の孔開きフィルム層に限ることなく、所定の上限通気度以下の通気度を有する通気層であればよい。上述の上限通気度は、通気度40(cm/s)をいう。当該通気度40(cm/s)よりも高い通気度では、非通気層のような遮音性能を確保し得ないためである。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0143】
このように構成した本第5実施形態では、騒音が、上記第1実施形態と同様に、ダッシュサイレンサーDSに入射すると、当該騒音は、フェルト層40によりその多孔質性のもとに部分的に吸音されて当該フェルト層40を通り孔開きフィルム層50aに入射し、ついで、上記第1実施形態にて述べたフィルム層50と実質的に同様に、孔開きフィルム層50aに振動を生じさせる。
【0144】
このような段階では、騒音がフェルト層40を空気伝搬により通る際の孔開きフィルム層50aの振動の位相が、低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層40を介し固体伝搬により孔開きフィルム層50aに伝わる際の当該孔開きフィルム層50aの振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けて適正にずれた位相となり、孔開きフィルム層50aの遮音性能を大幅に改善する。
【0145】
換言すれば、上記構成の孔開きフィルム層50aがフェルト層40にその後側から積層されていても、当該ダッシュサイレンサーDSの遮音性能が、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、上記第1実施形態と実質的に同様に改善され得る。このことは、ダッシュサイレンサーDSによる騒音に対する防音効果が、騒音の低周波数領域から高周波数領域に亘り、良好に達成され得ることを意味する。
【0146】
なお、上記第2~第4の実施形態のいずれかの実施形態におけるフィルム層50を、本第5実施形態にいう孔開きフィルム層50aで代用しても、当該第2~第4の実施形態のいずれかの実施形態における作用効果が実質的に同様に達成され得る。
【0147】
(第6実施形態)
図10は、本発明の第6実施形態の要部を示している。当該第6実施形態では、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSにおいて、フェルト層40(
図3参照)に代えて、フェルト層90が採用されている。従って、本第6実施形態のダッシュサイレンサーDSは、
図10にて示すごとく、フェルト層90と、上記第1実施形態にて述べたフィルム層50(
図3参照)とでもって構成されている。
【0148】
ここで、フェルト層90は、上記第1実施形態にて述べたダッシュパネル30と同様の縦断面湾曲形状にて、当該ダッシュパネル30に沿い車室20内側から装着されている。また、フィルム層50は、フェルト層90に沿いダッシュパネル30とは反対側から積層されている。
【0149】
フェルト層90は、複数種類の繊維(6種類の繊維)であるPET及びその他の各繊維(綿、羊毛、麻、絹、ナイロンからなる各繊維)を、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40と同様に、所定のバインダー繊維に均一に配合して形成されている。
【0150】
ここで、当該フェルト層90を形成する6種類の繊維のうち、PETの繊維は、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40を形成する6種類の繊維のうちのPETの繊維と同様の太い繊維でもって形成されている。また、上述したその他の各繊維(綿、羊毛、麻、絹、ナイロンの各繊維)は、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40を形成する6種類の繊維のうちの綿、羊毛、麻、絹、ナイロンからなる各繊維と同様の細い繊維でもって形成されている。
【0151】
但し、本第6実施形態においては、フェルト層90を形成する6種類の繊維は、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40を形成する6種類の繊維とは、異なり
、図10にて示すごとく、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部にて、フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、当該フェルト層90の一方の面から他方の面に向けて当該両面に略直
交して延出するよう
に、上記所定のバインダー繊維に配合されている。
【0152】
本第6実施形態では、フェルト層90は、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40の厚さとは異なり、15(mm)の厚さを有する。当該フェルト層90は、フェルト層40の目付量1000(g/m2)とは異なる目付量800(g/m2)を有するように、6種類の繊維でもって形成されている。また、当該フェルト層90の6種類の繊維のうちのPET繊維の太さは、上記第1実施形態にいうフェルト層40のPET繊維の太さと同様に、100(μm)である。また、当該フェルト層90において、その上記PET繊維の質量配合率は、50(%)であり、所定のバインダー繊維の質量配合率は30(%)である。従って、上述した当該PET繊維の質量配合率50(%)及び所定のバインダー繊維の質量配合率30(%)のもと、フェルト層90におけるその他の繊維である綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの質量配合率は、20(%)である。
【0153】
また、本第6実施形態では、フェルト層90を形成する6種類の繊維は、例えば、RAND MACHIN CORPORATION製Rand Feeder(商品名)でもって、オーブン加熱処理のもと、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部にて、フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、当該フェルト層90の両面の一方の面から他方の面に向けて当該両面に略直交して延出するようにウェーブをかけて上述の所定のバインダー繊維に配合されている。これにより、フェルト層90を形成する6種類の繊維は、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部にて、フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、当該フェルト層90の両面に略直交するように、即ち、当該フェルト層90の厚さ方向に向くように、上記所定のバインダー繊維に配合されている。このことは、フェルト層90の6種類の繊維は、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部を、フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置させて、当該フェルト層90の厚さ方向に配列(以下、厚さ方向配列ともいう)されていることを意味する。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0154】
このように構成した本第6実施形態においては、上述したごとく、フェルト層90を形成する6種類の繊維は、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部を、フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置させて、当該フェルト層90の両面のうちの一方の面から他方の面に向けて、当該フェルト層90の厚さ方向に沿い、上記所定のバインダー繊維に配合されている。しかも、フェルト層90の6種類の繊維のうちのPETの繊維が、その他の繊維よりも、上記第1実施形態と同様の太い繊維で形成されている。
【0155】
これにより、フェルト層90の6種類の繊維の弾性が、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40のように当該フェルト層40の両面に沿い6種類の繊維を配列する場合に比べて、大幅に高められる。その結果、フェルト層90の騒音に対する遮音性能が、フェルト層40のようにその両面に沿い6種類の繊維を配列する場合に比べて、大幅に改善され得る。このようなフェルト層90の騒音に対する遮音性能の改善は、上記第1実施形態にて述べた騒音の低周波数領域及び中周波数領域の各騒音成分に対し特に顕著に達成され得る。その他の作用効果は上記第1実施形態と実質的に同様である。
【0156】
ちなみに、上述のように構成したダッシュサイレンサーDSを実施例6(
図11参照)とし、この実施例6の透過損失特性を、騒音の周波数との関係において、透過損失試験により測定してみた。実施例6は、
図11にて示すごとく、フィルム層とフェルト
層(第1フェルト層)との積層構成からなるもので、当該実施例6において、フィルム層は、目付量30(g/cm
2)を有する非通気層からなる。
【0157】
なお、当該第1フェルト層は、上述したごとく、6種類の繊維、即ち、綿、羊毛、麻、絹、ナイロン及びPETの各繊維からなるもので、当該第1フェルト層において、目付量は、800(g/cm
2)で
ある。また、当該第1フェルト層において、PET繊維の太さ
は、30(μm
)である。また、当該第1フェルト層において、PET繊維の質量配合率は、50(%)であり、バインダー繊維
の質量配合率は、30(%)
である。従って、当該PET繊維の質量配合率50(%)及びバインダー繊維の質量配合率30(%)のもと、第1フェルト層のその他の繊維(綿、羊毛、麻、絹、ナイロンの各繊維)
の質量配合率は20(%)である。なお、第1フェルト層の厚さは15(mm)である(
図12参照)。
【0158】
また、当該第1フェルト層の6種類の繊維は、厚さ方向配列を有するように構成されており、当該第1フェルト層のヤング率は、85000である(
図12参照)。
【0159】
また、この測定にあたり、実施例7、8及び比較例b、cを準備した。当該実施例7、8及び比較例b、cの構成は次の通りである。
【0160】
実施例7、8及び比較例b、cは、共に、フィルム層とフェルト層との積層構成からなるもので、実施例7、8及び比較例b、cの各々のフィルム層は、
図12にて示すごとく、目付量30(g/cm
2)を有する非通気層である。
【0161】
また、実施例7、8及び比較例b、cの各フェルト層は、
図11にて示すごとく、それぞれ、第2、第3、第4及び第5の各フェルト層に対応しており、当該第2、第3、第4及び第5の各フェルト層は、共に、第1フェルト層と同様に、800(g/cm
2)の目付量、15(mm)の厚さを有する(
図12参照)。また、当該第2、第3、第4及び第5のフェルト
層のうち、第3、第4及び第5のフェルト層の各々におい
ては、PET繊維の質量配合率は、50(%)(図12参照)であり、バインダー繊維
の質量配合率は、30(%)である(図12参照)。従って、第3、第4、第5のフェルト層の各々においては、
PET繊維の質量配合率50(%)及びバインダー繊維の質量配合率30(%)のもと、その他の繊維の質量配合率は、20(%)である(
図12参照)。
また、残りの第2フェルト層においては、PET繊維の質量配合率は、30(%)(図12参照)であり、その他の繊維の質量配合率は、上述した第3、第4、第5のフェルト層の各々のその他の繊維の質量配合率と同様に、20(%)である(図12参照)。従って、当該第2フェルト層においては、PET繊維の質量配合率30(%)及びその他の繊維の質量配合率20(%)のもと、バインダー繊維の質量配合率は、50(%)である(図12参照)。
【0162】
ここで、実施例7のフェルト層(第2フェルト層)において、PET繊維の太
さは、30(μm)であり、ヤング率は25000である。また、当該第2フェルト層において、その6種類の繊維の配列は、厚さ方向配列となっている(
図12参照)。
【0163】
実施例8のフェルト層(第3フェルト層)において、PET繊維の太さ及
び質量配合率は、30(μm)及び50(%)であり、ヤング率
は85000である。また、当該第2フェルト層において、その6種類の繊維の配列は、厚さ方向配列となっている(
図12参照)。
【0164】
比較例bのフェルト層(第4フェルト層)において、PET繊維の太さ及
び質量配合率は、30(μm)及び50(%)である(
図12参照)。また、当該第4フェルト層のPET繊維の太さは、上述のごとく、通常よりも太いものの、当該第4フェルト層の6種類の繊維の配列は、厚さ方向配列ではなく、通常の配列(第4フェルト層の両面に並行な配列)となっている(
図12参照)。
【0165】
また、比較例cのフェルト層(第5フェルト層)において、PET繊維の太さは、第1~第4のフェルト層のPET繊維よりも細く、通常の太さ20(μm)であり、PET繊維
の質量配合率は、50(%)である(
図12参照)。また、当該第5フェルト層の6種類の繊維の配列は、厚さ方向配列ではなく、通常の配列(第5フェルト層の両面に並行な配列)となっている(
図12参照)。
【0166】
以上によれば、実施例6、7、8及び比較例bの各フェルト層のPET繊維は、比較例cの従来の通常のフェルト層のPET繊維よりも太い。また、実施例6、7、8の各フェルト層の6種類の繊維の配列は、厚さ方向配列となっているものの、比較例b、cの各フェルト層の6種類の繊維の配列は、従来通りの通常の配列、即ち、各対応のフェルト層の両面に並行な配列となっている。
【0167】
また、実施例6、7、8及び比較例cの各々のヤング率を対比してみると、実施例6、7、8の各ヤング率が、比較例cのヤング率に比べて、大幅に増大している。
【0168】
これは、次のような根拠に基づく。即ち、実施例6、7、8の各フェルト層の6種類の繊維の配列が、上述のごとく、比較例cの6種類の繊維の配列とは異なり、厚さ方向配列となっているため、実施例6、7、8の各フェルト層の厚さ方向の弾力が、比較例cのフェルト層の厚さ方向の弾力に比べて著しく増大する。このことが、実施例6、7、8の各フェルト層のヤング率が比較例cのフェルト層のヤング率に比べて著しく増大する根拠である。
【0169】
また、各実施例6、7、8及び各比較例b、cについて、透過損失特性を、騒音の周波数との関係において測定してみた。
【0170】
実施例6、7及び比較例cの各々について、その各測定結果に基づき、透過損失と周波数との関係をグラフにより示すと、
図13にて示すような結果が得られた。
図13において、グラフ6は、実施例6の透過損失と周波数との関係を示し、グラフ7は、実施例7の透過損失と周波数との関係を示し、また、グラフcは、比較例cの透過損失と周波数との関係を示す。
【0171】
これによれば、騒音の低周波数領域のうちの315(Hz)~400(Hz)の範囲及び中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、実施例6、7の各透過損失が、比較例cの透過損失よりも大幅に増大していることが分かる。
【0172】
このことは、実施例6、7の遮音性能が、比較例cの遮音性能に比べて大幅に改善され得ることを意味する。これは、実施例6、7においては、フェルト層のPET繊維が従来のフェルト層(比較例cのフェルト層)のPET繊維よりも太いことに加えて、フェルト層の各繊維の配列が、従来のフェルト層の各繊維とは異なり、厚さ方向配列となっていることに基づくものである。なお、実施例6、7は、高周波数領域1600(Hz)~6300(Hz)では、従来通り、良好な遮音性能を有する。
【0173】
また、実施例8及び比較例b、cの各々について、その各測定結果に基づき、透過損失と周波数との関係をグラフにより示すと、
図14にて示すような結果が得られた。
図14において、グラフ8は、実施例8の透過損失と周波数との関係を示し、グラフbは、比較例bの透過損失と周波数との関係を示し、また、グラフcは、比較例cの透過損失と周波数との関係を示す。
【0174】
これによれば、騒音の中周波数領域400(Hz)~1600(Hz)において、実施例8の透過損失が、各比較例b、cの透過損失よりも大幅に増大していることが分かる。
【0175】
このことは、実施例8の遮音性能が、騒音の中周波数領域において、比較例b、cの遮音性能に比べて大幅に改善され得ることを意味する。これは、実施例8においては、フェルト層のPET繊維が従来のフェルト層(比較例cのフェルト層)のPET繊維よりも太いことに加えて、フェルト層の各繊維の配列が、比較例b及び従来のフェルト層(比較例cのフェルト層)の各繊維とは異なり、厚さ方向配列となっていることに基づくものである。
【0176】
また、比較例bのフェルト層のPET繊維が、従来のフェルト層のPET繊維よりも太いものの、比較例bのフェルト層の各繊維の配列が、実施例8のフェルト層の各繊維の厚さ方向配列とは異なり、通常の配列(フェルト層の両面に並行な配列)となっているため、比較例bの透過損失、換言すれば遮音性能は、実施例8よりもかなり低いことも、
図14から認められる。
【0177】
以上、要するに、フェルト層のPET繊維が従来のフェルト層よりも太いことに加えて、フェルト層の各繊維の配列が、従来のフェルト層とは異なり、厚さ方向配列となっているため、少なくとも、騒音の中周波数領域においては、実施例6~8の透過損失、換言すれば、遮音性能は、比較例b、cに比べて、大きく改善されて著しく増大し得る。
【0178】
また、上述の実施例6~8に加えて、所定のバインダー繊維の質量配合率、PETの繊維の外径や質量配合率の異なるフェルト層であってその各繊維を厚さ方向配列にしたフェルト層を有する実施例を多数準備して、これら多数の実施例について、透過損失特性を、騒音の周波数との関係において、透過損失試験により測定してみた。
【0179】
これによれば、上記多数の実施例において、上記第1実施形態にて述べ
た内容とほぼ同様に、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、所定のバインダー繊維が所定
の質量配合率範囲(20(%)~60(%))以内
の質量配合率であり、太いPETの繊維の外径が所定の外径範囲
(30(μm
)(図12参照)~120(μm))以内の外径であるとともに太いPETの繊維の質量配合率が、所定の質量配合率範囲(25(%)~70(%))以内の質量配合率であることに加えて、6種類の繊維の配列を厚さ方向配列にすれば、上記多数の実施例の透過損失は、比較例b、cよりも高く、従って、当該多数の実施例は、騒音の周波数400(Hz)~1600(Hz)の範囲以内で質量則を超える透過損失を得ることができ、比較例b、cよりも良好な遮音性能を有することが分かった。
【0180】
また、フェルト層の6種類の繊維のうち、少なくとも、太い繊維からなるPET繊維の配列を厚さ方向配列にすれば、少なくとも、騒音の中周波数領域においては、実施例6~8の透過損失が、比較例b、cに比べて、実質的に大きく改善され得ることもわかった。
【0181】
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態の要部を示している。当該第7実施形態では、上記第6実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDS(
図10参照)におけるフェルト層90及びフィルム層50からなる2層積層構成に加えて、上記第2実施形態にて述べたフェルト層60(
図6参照)が付加的に採用されている。
【0182】
当該フェルト層60は、フィルム層50を介しフェルト層90に積層されて、フェルト層90及びフィルム層50とともに、3層の積層構成からなるダッシュサイレンサーDSを形成している。
【0183】
ここで、上記第6実施形態にて述べたフェルト層90は、上述したごとく、その6種類の繊維のうちPETの繊維にて太く形成されており、残りの綿、羊毛、麻、絹、ナイロンの各繊維にて細く形成されている。さらに、フェルト層90においては、上述したごとく、6種類の繊維は、その両端部のうちの一方の端部及び他方の端部にて、フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、フェルト層90の厚さ方向に向けて配列されるように、所定のバインダー繊維に配合されている。
【0184】
また、上記第2実施形態にて述べたフェルト層60は、上述したごとく、その6種類の繊維であるPET、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維にて、共に、20(μm)の細い繊維でもって形成されており、当該フェルト層60の各繊維は、当該フェルト層60の両面に沿い並行となっている。その他の構成は、上記第6実施形態或いは第2実施形態と同様である。
【0185】
このように構成した本第7実施形態においては、上記第6実施形態にて述べたごとく、フェルト層90の6種類の繊維のうちのPET繊維がその他の繊維よりも太く形成されており、しかも、当該6種類の繊維が、当該フェルト層90の厚さ方向に向くように配合されている。また、フェルト層60が、上述したごとく、その6種類の繊維にて、共に細く形成されている。
【0186】
これにより、フェルト層90の騒音に対する遮音性能が上記第6実施形態にて述べたごとく大幅に改善され得る。しかも、フェルト層60が、その6種類の繊維にて、共に細く形成されていることから、当該フェルト層60は、太いPET繊維を有するフェルト層90よりも柔らかい。このため、当該フェルト層60は、フェルト層90に比べてフィルム層50に対し影響しにくい。従って、当該フェルト層60は、上記第6実施形態にて述べたごとく、騒音に対し単なる吸音性能を発揮する。
【0187】
従って、6種類の繊維の配列が略直交配列でありPET繊維が太くなっているフェルト層90及びフィルム層50からなる2層積層構成による遮音による防音を行う効果に比べて、フェルト層60による吸音分だけさらに改善され得る。その結果、ダッシュサイレンサーDSとしての防音効果がより一層改善され得る。その他の作用効果は、上記第2実施形態或いは上記第6実施形態と同様である。
【0188】
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態の要部を示している。当該第8実施形態では、上記第6実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDS(
図10参照)におけるフェルト層90及びフィルム層50からなる2層の積層構成に加えて、フェルト層100(
図16参照)が付加的に採用されている。
【0189】
フェルト層100は、フィルム層50を介しフェルト層90に積層されて、当該フィルム層50及びフェルト層90とともに、3層の積層構成からなるダッシュサイレンサーDSを構成する。
【0190】
フェルト層100は、上記第3実施形態にて述べたフェルト層70とは、以下の相違点を除き、同一の構成を有する。
【0191】
当該相違点は次の通りである。フェルト層70を構成する6種類の繊維であるPET、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンの各繊維が、その配列にて、フェルト層100の両面に対応する両面間でこれらに略直交するようにウェーブをかけるようにして上述の所定のバインダー繊維に配合されている。これにより、フェルト層100を形成する複数種類の繊維は、その配列にて当該フェルト層100の両面に略直交するように上記所定のバインダー繊維に配合されている。
【0192】
ここで、フェルト層100におけるPETの繊維の外径は、フェルト層70のPETの繊維の外径と同様に、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40のPETの繊維の太い外径、換言すれば、フェルト層90のPETの繊維の太い外径よりも、さらに増大するように選定されている。
【0193】
これにより、フェルト層100は、フェルト層90よりも薄くなるものの、当該フェルト層90と同一の硬さになる。これに伴い、フェルト層100は、フィルム層50の振動に対し、フェルト層90と同様の影響力を発揮して、フェルト層90との相乗的作用のもと、防音体としての遮音性能を騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、より一層向上させる役割を果たす。
【0194】
ここで、フェルト層100の複数種類の繊維の弾性が、フェルト層90の複数種類の繊維の弾性とともに、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40のようにフェルト層の両面に沿い複数種類の繊維を配列する場合に比べて、大幅に高められる。その結果、フェルト層100の騒音に対する遮音性能が、フェルト層90の騒音に対する遮音性能とともに、フェルト層40のようにフェルト層の両面に沿い複数種類の繊維を配列する場合に比べて、大幅に改善され得る。その他の構成は上記第1、第2或いは第7の実施形態と実質的に同様である。
【0195】
このように構成した本第8実施形態では、フェルト層100が、フェルト層90と共に、上述のごとくその各両面に略直交するように複数種類の繊維を配列(略直交配列)してなる構成のもと、フィルム層50の遮音性能をより一層大幅に改善する。従って、エンジンルーム10からの騒音がダッシュサイレンサーDSのフェルト層90及びフィルム層50を通りフェルト層100に達すると、当該騒音は、上述のような両フェルト層90、100のフィルム層50の遮音性能に対する相乗的改善機能でもって、さらに良好に遮音され得る。その結果、本第8実施形態にいうダッシュサイレンサーDSによれば、騒音に対する防音効果がより一層向上され得る。その他の作用効果は、上記第1、第2或いは第7の実施形態と同様である。
【0196】
(第9実施形態)
図17は、本発明の第9実施形態の要部を示している。当該第9実施形態では、上記第8実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSのフェルト層90、フィルム層50及びフェルト層100からなる3層積層構成(
図16参照)において、上記第4実施形態にて述べたフェルト層80が、フェルト層90に代えて、採用されている。
【0197】
ここで、フェルト層80は、上述したごとく、ダッシュパネル30とフィルム層50との間において、PET、綿、羊毛、麻、絹及びナイロンという6種類の繊維であって共に20(μm)という細い繊維で構成されて、ダッシュパネル30に沿い設けられている。従って、フェルト層80は、PETの太い繊維を有するフェルト層100よりも柔らかく、単なる吸音性能を発揮するにすぎない。その他の構成は、上記第8或いは第4の実施形態と同様である。
【0198】
このように構成した本第9実施形態においては、フェルト層80が、上述のごとく、フェルト層100よりも柔らかく形成されていることから、フェルト層80は、フィルム層50の振動に対して影響しにくい。従って、フェルト層80は、騒音の全周波数領域に亘り単に吸音性能を発揮するにすぎないことから、騒音は、フェルト層80により吸音されて、フィルム層50に達する。
【0199】
このように騒音がフィルム層50に達すると、上記第8実施形態にて述べたように、フェルト層100が、その両面に対する複数種類の繊維の略直交配合のもと、フィルム層50の振動に対し、フィルム層50の遮音性能を騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、より一層、質量則を超えて改善するように、機能する。
【0200】
従って、フェルト層100が、上記第8実施形態にて述べたと同様に、騒音の低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域において、フィルム層50の振動を制御して当該防音体としての遮音性能を良好に改善し得る。
【0201】
その結果、本第9実施形態のように、ダッシュサイレンサーDSが、太い繊維を有しないフェルト層80、フィルム層50及び太い繊維を有するフェルト層70であってその複数種類の繊維の上記略直交配合を有する3層積層構成であっても、騒音に対するより一層良好な防音効果を発揮し得る。その他の作用効果は、フェルト層100による作用効果を除き第8或いは第4の実施形態と同様である。
【0202】
(第10実施形態)
図18は、本発明にかかる第10実施形態の要部を示している。当該第10実施形態においては、上記第5実施形態にて述べた孔開きフィルム層50aが、上記第6実施形態にて述べたフィルム層50(
図10参照)に代えて、採用されている。これに伴い、本第10実施形態にいうダッシュサイレンサーDSは、上記第7実施形態にて述べたフェルト層90及び上記第5実施形態にて述べた孔開きフィルム層50aからなる2層積層構成でもって形成されている。
【0203】
当該孔開きフィルム層50aは、上述したごとく、通気度40(cm/s)以下の通気度を有するように、複数の貫通孔部51を有するフィルム層でもって形成されて、フェルト層90による振動制御のもと、上記第1実施形態にて述べたフィルム層50と実質的に同様の遮音性能を発揮し得る。その他の構成は上記第7実施形態或いは第5実施形態と同様である。
【0204】
このように構成した本第10実施形態においては、上記第5実施形態と同様に、騒音がダッシュサイレンサーDSに入射すると、当該騒音は、フェルト層90によりその多孔質性のもとに部分的に吸音されて当該フェルト層90を通り孔開きフィルム層50aに入射し、ついで、孔開きフィルム層50aに上記第1実施形態にて述べたフィルム層50と実質的に同様に振動を生じさせる。
【0205】
このような段階では、騒音がフェルト層90を空気伝搬により通る際の孔開きフィルム層50aの振動の位相が、低周波数領域から中周波数領域に亘る周波数領域では、騒音がフェルト層90を介し固体伝搬により孔開きフィルム層50aに伝わる際の当該孔開きフィルム層50aの振動の位相とは同一の位相にならず、逆の位相に向けて適正にずれた位相となり、孔開きフィルム層50aの遮音性能を大幅に改善する。
【0206】
ここで、フェルト層90においては、上述したごとく、その複
数種類の繊維が、それぞれ、その両端部の一方の端部及び他方の端部にて、当該フェルト層90の両面のうちの一方の面及び他方の面に位置し、かつ、当該フェルト層90の両面に略直交して延出するように配列されている(
図18参照)。このため、フェルト層90の弾性を高め得ることから、上述のごとく、遮音性能が大幅に改善される。従って、このようなフェルト層90の遮音性能のもと、騒音が当該フェルト層90により遮音されて孔開きフィルム層50aに入射するので、ダッシュサイレンサーDSが、さらに良好な遮音性能でもって騒音を遮音し得る。その他の作用効果は、上記第6或いは第5の実施形態と同様である。
【0207】
(第11実施形態)
図19は、本発明の第11実施形態の要部を示している。当該第11実施形態では、本発明が自動車用サイレンサーのうちのフロアサイレンサー(以下、フロアサイレンサーFSという)として自動車に適用される例が示されている。
【0208】
フロアサイレンサーFSは、フロアカーペット20aの全面に亘るように、当該フロアカーペット20aとフロアFLとの間に介装されている(
図19参照)。
【0209】
フロアサイレンサーFSは、上記第6実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDS(
図10参照)と同様の構成を有しており、当該フロアサイレンサーFSは、フェルト層90にて、フロアFLに沿い配設されている。これに伴い、当該フロアサイレンサーFSは、そのフィルム層50にて、フェルト層90とフロアカーペット20aとの間に挟持されている。
【0210】
ここで、フェルト層90は、上記第6実施形態にて述べたごとく、その6種類の繊維のうちPETの繊維にて太く形成されており、残りの綿、羊毛、麻、絹、ナイロンの各繊維にて細く形成されている。さらに、フェルト層90においては、上述したごとく、6種類の繊維は、当該フェルト層90の両面に対し略直交するように所定のバインダー繊維に配合されている。また、フィルム層50は、上述のごとく、非通気層である。なお、その他の構成は、上記第6実施形態と同様である。
【0211】
このように構成した本第11実施形態によれば、上述したようなフェルト層90の構成のもと、当該自動車によるロードの走行中においてロードから発生するロードノイズやエンジンEからフロアFLの下側へ周り込むように発生するエンジン音が、騒音として、フロアFLを通りフロアサイレンサーFSのフェルト層90に入射しても、当該騒音は、上記第6実施形態にて述べたようなフェルト層90の遮音性能により、フィルム層50による遮音性能と相まって、車室内から良好に遮音ないし防音され得る。その他の作用効果は、上記第6実施形態と実質的に同様である。
【0212】
(第12実施形態)
図20は、本発明が自動車用サイレンサーのうちのパーティションサイレンサー(以下、パーティションサイレンサーPSという)として自動車のトランク110に適用される例を示している。
【0213】
トランク110は、
図20にて示すごとく、当該自動車の後部(車体の後部)に設けられており、当該トランク110は、トランクルーム110aと、カバー110bとにより構成されている。
【0214】
トランクルーム110aは、当該自動車の後部内に設けられており、当該トランクルーム110aは、上方及び後方の双方に向け開口するように、底壁111、前壁112及び左右両側壁113(
図20では右側壁113のみを示す)でもって形成されている。前壁112は、底壁111の前端部から上方へ立ち上がっている。左右両側壁113は、前壁111から互いに並行に延出するとともに、底壁111の左右両側端部から上方へ立ち上がっている。これにより、トランクルーム110aは、その上方及び後方から荷物(図示しない)を収容可能となっている。
【0215】
カバー110bは、縦断面L字状に形成されており、当該カバー110bは、その基端部にて、トランクルーム110aの上側開口部111の前端部に上下方向に開閉可能にヒンジ結合されている。これにより、カバー110bは、トランクルーム110aをその上方及び後方から開閉し得るようになっている。
【0216】
また、トランクトリム120が、パーティションサイレンサーPSを介して、トランクルーム110a内にその底壁111、前壁112及び左右両側壁113に亘って沿うように設けられており、当該トランクトリム120は、トランクルーム110a内の積荷の保護や見映えの向上を図る役割を果たす。
【0217】
パーティションサイレンサーPSは、トランクルーム110a内にてその底壁111、前壁112及び左右両側壁113に沿うように、当該トランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間に介装されている。
【0218】
パーティションサイレンサーPSは、上述のフロアサイレンサーFSと同様の構成を有しており、当該パーティションサイレンサーPSは、そのフェルト層90にて、トランクルーム110a内にてその底壁111、前壁112及び左右両側壁113に沿い配設されている。これに伴い、当該パーティションサイレンサーPSは、そのフィルム層50にて、フェルト層90とトランクトリム120との間に挟持されている。
【0219】
ここで、フェルト層90は、上記第6実施形態にて述べたごとく、その6種類の繊維のうちPETの繊維にて太く形成されており、残りの綿、羊毛、麻、絹、ナイロンの各繊維にて細く形成されている。さらに、フェルト層90においては、上述したごとく、6種類の繊維は、当該フェルト層90の両面に対し略直交するように所定のバインダー繊維に配合されている。また、フィルム層50は、上述のごとく、非通気層である。なお、その他の構成は、上記第6実施形態と同様である。
【0220】
このように構成した本第12実施形態によれば、上述したようなフェルト層90の構成のもと、当該自動車によるロードの走行中において後輪RWから発生するロードノイズが、騒音として、カバー110bで閉じてなるトランクルーム110aの底壁111や左右両側壁113等からトランクルーム110aを通り車室20内に進入しようとしても、当該騒音は、パーティションサイレンサーPSによりそのフェルト層90の上記第6実施形態にて述べたような遮音性能により、フィルム層50の遮音性能と相まって、車室20内から良好に遮音ないし防音され得る。その他の作用効果は、上記第6実施形態と実質的に同様である。
【0221】
なお、上記第11(或いは第12)の実施形態において、フロアサイレンサーFS(或いはパーティションサイレンサーPS)を構成するフェルト層90及びフィルム層50の2層積層構成に代えて、上記第7実施形態にて述べたフェルト層90、フィルム層50及びフェルト層60からなる3層積層構成(
図15参照)、上記第8実施形態にて述べたフェルト層90、フィルム層50及びフェルト層100からなる3層積層構成(
図16参照)、上記第9実施形態にて述べたフェルト層80、フィルム層50及びフェルト層100からなる3層積層構成(
図17参照)、或いは上記第10実施形態にて述べたフェルト層90及び孔開きフィルム層50aからなる2層積層構成(
図18参照)を、フロアサイレンサー(或いはパーティションサイレンサー)として採用してもよい。
【0222】
この場合、
図15或いは
図16の3層積層構成にあってはフェルト層90をフロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うように当該フロアFLとフロアカーペット20aとの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設し、
図17の3層積層構成にあってはフェルト層80をフロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うよう当該フロアFLとフロアカーペット20aとの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設し、
図18の2層積層構成にあっては、フェルト層90をフロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うように当該フロアFLとフロアカーペット20aとの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設する。
【0223】
これによれば、上述のようにフロアFLの下側からの騒音をフロアサイレンサーにより車室内から防音するという作用効果(或いは上述のようにトランクルーム110aの外側からの騒音をパーティションサイレンサーPSにより車室内から防音するという作用効果)が、上記第7~第10のいずれかの実施形態にて述べた作用効果と実質的に同様に達成され得る。
【0224】
また、上記第11(或いは第12)の実施形態において、フロアサイレンサーFS(或いはパーティションサイレンサPS)を構成するフェルト層90及びフィルム層50の2層積層構成に代えて、上記第1実施形態にて述べたフェルト層40及フィルム層50からなる2層積層構成(
図3参照)、上記第2実施形態にて述べたフェルト層40、フィルム層50及びフェルト層60からなる3層積層構成(
図6参照)、上記第3実施形態にて述べたフェルト層40、フィルム層50及びフェルト層60からなる3層積層構成(
図7参照)、上記第4実施形態にて述べたフェルト層40、フィルム層50及びフェルト層70からなる3層積層構成(
図8参照)、或いは上記第9実施形態にて述べたフェルト層40及び孔開きフィルム層50aからなる2層積層構成(
図9参照)をフロアサイレンサー(或いはパーティションサイレンサー)として採用してもよい。
【0225】
この場合、
図3の2層積層構成にあってはフェルト層40をフロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うように当該フロアFL及びフロアカーペット20aの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設する。
図6或いは
図7の3層積層構成にあってはフェルト層40をフロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うよう当該フロアFLとフロアカーペット20aとの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設する。
図8の3層積層構成にあってはフェルト層80をフロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うよう当該フロアFLとフロアカーペット20aとの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設する。また、
図9の2層積層構造にあってはフェルト40フロアFL(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113)に沿うよう当該フロアFLとフロアカーペット20aとの間(或いはトランクルーム110aの底壁111、前壁112及び左右両側壁113とトランクトリム120との間)に配設する。
【0226】
これによれば、上述のようにフロアFLの下側からの騒音をフロアサイレンサーにより車室内から防音するという作用効果(或いは上述のようにトランクルーム110aの外側からの騒音をパーティションサイレンサーPSにより車室内から防音するという作用効果)が、上記第1~第9のいずれかの実施形態にて述べた作用効果と実質的に同様に達成され得る。
【0227】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態や変形例に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
【0228】
(1)本発明の実施にあたり、フェルト層を構成する繊維は、上記各実施形態にて述べた繊維に限ることなく、アクリル、レーヨン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、天然繊維等であってもよい。
【0229】
ここで、フェルト層を構成する繊維の種類は、6種類に限ることなく、例えば、4種類、5種類、7種類等であってもよい。
【0230】
(2)本発明の実施にあたり、フィルム層50を形成する材料は、フィルム層にあっては、PE、PP、ナイロン等であってもよく、また、単層に限ることなく、3層等の複数層であってもよい。また、フィルム層50を形成する材料は、遮音シートにあっては、EPDM、オレフィン、EVA、塩化ビニル等であってもよい。
【0231】
(3)本発明の実施にあたり、通気層は、孔開きフィルム層にあっては、PE、ナイロン、PP等で形成してもよく、不織布層にあっては、PE、PET、PP、ナイロン等で形成してもよい。
【0232】
(4)本発明の実施にあたり、フェルト層は、PETの繊維に代えて、他の繊維を太くしてもよく、また、太くする繊維は、PETの繊維に加えて、他の繊維をも太くしてもよく、太くする繊維は、複数の繊維であってもよい。
【0233】
(5)本発明の実施にあたり、フェルト層の各繊維の厚さ方向配列は、当該フェルト層の両面に略直交する配列に限ることなく、当該フェルト層の両面の間にて当該両面に交差する方向への配列、即ち、交差方向配列であればよい。
【0234】
この場合、当該フェルト層の両面に対する繊維の交差角度が増大する程、フェルト層としての弾性力が増大してダッシュサイレンサーとしての透過損失、つまり、遮音性能の改善度合いが向上し得る。なお、上述した交差角度は、当該フェルト層の両面に対し45度を超えて90度以下であることが望ましい。これは、フェルト層の弾力のうち、両面方向への弾力部分が、当該フェルト層の両面に沿う方向への弾力部分よりも大きくなるためである。
【0235】
(6)また、本発明の実施にあたり、上記第12実施形態では、自動車のトランクのような荷物入れに限ることなく、軽自動車やステーションワゴン、ライトバン等のラゲージのような荷物入れ内にパーティションサイレンサーPSを適用してもよい。なお、これに伴い、トランクトリムは、ラゲージトリムとして把握してもよく、一般的には、当該トランクトリムは、ラゲージトリムをも含めて荷物入れトリムとして把握してもよい。
【0236】
(7)本発明の実施にあたり、パーティションサイレンサーPSは、トランクルーム110aの全壁のうち、底壁111、前壁112及び左右両側壁113に亘ることなく、例えば、底壁111及び前壁112のみ、底壁111のみ、或いは前壁112のみとトランクトリム120との間に介装されてもよい。
【符号の説明】
【0237】
DS…ダッシュサイレンサー、FL…フロア、
FS…フロアサイレンサー、PS…パーティションサイレンサー、
20…フロアカーペット、30…ダッシュパネル、
40、60、70、80、90、100…フェルト層、
50…フィルム層、50a…孔開きフィルム層。110…トランク、
111…底壁、112…前壁、113…左右両側壁、
110a…トランクルーム、120…トランクトリム。