(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】骨髄関連疾患の治療に使用するための放射性免疫複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20241105BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20241105BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20241105BHJP
A61K 35/28 20150101ALN20241105BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K51/10 100
A61K51/10 200
A61P7/00
A61K35/28
A61K39/395 L
(21)【出願番号】P 2019560476
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2018051533
(87)【国際公開番号】W WO2018134430
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519266410
【氏名又は名称】テラファーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】TheraPharm GmbH
【住所又は居所原語表記】Oberneuhofstrasse 5, 6340 Baar, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】キム オーチャード
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ボスレト
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/144744(WO,A1)
【文献】Nucl. Med. Biol. (2016) vol.43, issue 9,p.566-576
【文献】医学のあゆみ (2009) vol.229, no.5, p.319-324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07K
PubMed
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄コンディショニング時に医薬品として使用するための
、放射性免疫複合体(RIC)
を含む医薬組成物であって、
CD66結合成分および放射性核種を含み、
前記CD66結合成分が、抗体であり、
前記放射性核種が、キレート剤を介して前記CD66結合成分に結合しており、
前記キレート剤が、前記CD66結合成分に共有結合し、
前記RICが、以下の構造
【化1】
(CD66結合成分-NH-CS-NH-Bn-CHX-A’’-DTPA)およびその塩による放射性免疫複合体(RIC)であり、
前記
医薬組成物は、HSCTに先行する高用量メルファランによる治療に対して不適格な患者に投与するためのものであるか、および/または
前記
医薬組成物は、導入療法で治療したが、疾患の進行または血液学的応答を示した患者に投与するためのものであり、かつ
前記
骨髄コンディショニングが、幹細胞移植
時の骨髄コンディショニングであり、かつ幹細胞移植前および/または幹細胞移植後の少なくとも4週間、追加の抗腫瘍剤または免疫抑制剤の投与を含まない、
医薬組成物。
【請求項2】
骨髄関連疾患の治療に使用するための放射性免疫複合体(RIC)
を含む医薬組成物であって、
前記骨髄関連疾患が、ALアミロイドーシスであり、
CD66結合成分および放射性核種を含み、
前記CD66結合成分が、抗体であり、
前記放射性核種が、キレート剤を介して前記CD66結合成分に結合しており、
前記キレート剤が、前記CD66結合成分に共有結合しており、かつ
前記RICが、以下の構造
【化2】
(CD66結合成分-NH-CS-NH-Bn-CHX-A’’-DTPA)およびその塩による放射性免疫複合体(RIC)であり、
前記骨髄関連疾患の治療が、幹細胞移植をさらに含み、かつ幹細胞移植前および/または幹細胞移植後の少なくとも4週間、追加の抗腫瘍剤または免疫抑制剤の投与を含まない、
医薬組成物。
【請求項3】
イメージング放射性核種を含む、請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記放射性核種が、治療上有効な放射性核種である、請求項1または2記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記CD66結合成分が、BW250/183である、請求項1から4までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記
医薬組成物は、約10MBq/kg 除脂肪体重(lbw)以上の用量で投与される、請求項1から
5までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項7】
骨髄関連疾患の治療が、幹細胞移植をさらに含み、かつ
前記
医薬組成物は、幹細胞移植の6~16日前に投与するためのものである、請求項1から
6までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記
医薬組成物は、高用量メルファランで治療した後に幹細胞移植を受けたが、疾患の進行を示した患者に投与するためのものであるか、および/または
前記
医薬組成物は、HSCTに対して適格な患者に投与するためのものである、請求項1から
7までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記
医薬組成物は、導入療法で治療したが、疾患の進行または血液学的応答を示した患者に投与するためのものであるか、および/または
前記
医薬組成物は、HSCTに先行するHD-メルファランによる治療に対して不適格な患者に投与するためのものである、請求項2から
8までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項10】
ALアミロイドーシスの治療が、
(a)任意に、工程(b)の前に、イメージングRICを、2~10日間、患者に投与する工程、
(b)工程(c)の前に、治療用RICを、6~16日間、患者に投与する工程、および
(c)自家幹細胞または同種幹細胞を移植する工程
を含む、請求項2から
9までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記骨髄コンディショニングが、移植片拒絶反応を防ぐため、および/または骨髄内の欠陥細胞の数を減らすために、免疫アブレーションを含む、請求項1および4から
6までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項12】
前記幹細胞移植が、自家または同種である、請求項1および4から
8までのいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項13】
以下の構造
【化3】
(CD66結合成分-NH-CS-NH-Bn-CHX-A’’-DTPA)およびその塩による放射性免疫複合体(RIC)であって、前記CD66結合成分が、抗体である、放射性免疫複合体(RIC)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、骨髄関連疾患、特にALアミロイドーシスの治療のための放射性免疫複合体の使用に関する。
【0002】
発明の背景
骨髄は、骨の内部にある柔軟な組織である。これは、赤血球、白血球、骨髄球、形質細胞および血小板の産生を担う。骨髄は、体内の任意の望ましい細胞に変化し得る原始細胞である、幹細胞を含む。必要に応じて、幹細胞は、分化して特定の種類の細胞になる。骨髄からは、成熟細胞のみが血流に放出される。
【0003】
骨髄関連疾患は、通常、成熟血球または前駆細胞もしくは前身未熟細胞の産生異常に関連している。
【0004】
本発明の一実施形態では、骨髄関連疾患は、幹細胞移植、例えば、自家幹細胞移植または同種幹細胞移植によって治療することができるものである。本発明の一態様では、骨髄関連疾患は、造血幹細胞移植によって治療され得るものである。幹細胞移植、特に造血幹細胞移植は、例えば、代謝レベル、免疫レベル、遺伝子レベルまたは骨髄の悪性転換レベルで、欠損症の代用として特定の疾患に用いられる。
【0005】
ALアミロイドーシスでは、骨髄内の形質細胞の異常な腫瘍性クローンが、自己集合して器官に沈着するモノクローナル免疫グロブリン軽鎖を過剰生産し、器官の機能不全を引き起こす。この沈着物は、電子顕微鏡により8~10nmの直鎖状の非分岐フィブリルとして認められる特徴的なβプリーツ状の二次構造を有する。脳以外のほぼすべての臓器または臓器の組み合わせが、影響を受けることもある。
【0006】
ALアミロイドーシスは、偏光下で病理学的なアップルグリーン二色性を示す組織生検標本のコンゴーレッド染色によって診断される。近年、放射性標識血清アミロイドPシンチグラフィ(SAP)が、英国国立アミロイドーシスセンターでアミロイド沈着物の非侵襲的イメージングおよびモニタリングのためのツールとして開発され、あらゆる種類のアミロイド沈着物が動的な代謝回転の状態で存在し、かつそれぞれのフィブリル前駆体タンパク質の量が十分に減少すると、退縮し得ることを明白に実証した。
【0007】
ALアミロイドーシスは、生涯発生率を有し、英国では1000人につき0.5~1人の間の死因である。これは、男女で等しく発生し、診断時の年齢の中央値は、65歳である。これは、治療なしでは、容認できないほど進行性であり、最近まで、生存期間の中央値はわずか6~15ヶ月であった。
【0008】
ALアミロイドーシス沈着物の免疫グロブリンの性質が確立された後、細胞毒性療法に対する有益な反応を主張する症例報告が文献で見られた。メイヨー(Mayo)クリニックグループによる219人の患者のプロスペクティブ無作為化試験において、経口メルファランおよびプレドニゾロン(MP)の有効性を、有効なプラシーボである、コルヒチンと系統的に比較した。生存期間の中央値は、MP群およびコルヒチン群で、それぞれ、17ヶ月および8.5ヶ月であり、ALアミロイドーシスにおける細胞毒性療法の利点を初めて強く証明している(Kyleら, The New England journal of medicine, 1997年; 336(17): 1202~7頁)。メイヨークリニックの研究者らは、ALアミロイドーシスのどの患者がMPによる治療から最大の利益を引き出す可能性があるかを特定するために、計画的な24~36ヶ月間この治療を受けた153人の患者の長期追跡調査を報告した(Gertzら, Journal of clinical oncology, 1999年; 17(1): 262~7頁)。臓器機能不全の改善と共に治療前の血清または尿中のモノクローナルタンパク質が完全に消失したことを含む厳格な反応基準を用いた場合、患者の18%が反応した。反応者の生存期間の中央値は、89.4ヶ月で、反応を得るまでの期間の中央値は、11.7ヶ月であった。しかしながら、反応者の4分の1が、骨髄異形成症または急性白血病で死亡した。
【0009】
ALアミロイドーシスにおけるMPに対する反応が比較的乏しくかつ遅いため、高用量メルファラン療法および幹細胞移植(ASCT)の使用に関心が寄せられている。これは1996年に最初に報告され、一連の25人の患者が、その後間もなくComenzoおよび同僚によって報告された(Comenzoら, Blood, 1998年; 91(10): 3662~70頁)。その後、いくつかのセンターで、手術を受けて生き残った患者の約60%に臨床的有益性が報告された。しかしながら、治療に関連した死亡率は、骨髄腫患者よりもアミロイド患者の方がかなり一貫して高かった。1つの米国の施設で2回行われた研究では、100日死亡率は、約14%であり、2つの欧州の施設で行われた研究では、約40%であり、アミロイドによる複数の臓器系の機能障害を反映していた。これらの発見は、ASCTのための患者選択の改善および移植前後の臨床管理の改善の必要性を強調しながら、代替的で毒性の低い治療法への関心も促している。
【0010】
米国では、患者の選択が洗練されており(Comenzoら, Blood, 2002年; 99(12): 4276~82頁)、ASCTは、依然としてALアミロイドーシスを治療するための治療上の「ゴールドスタンダード」であった。全身性ALアミロイドーシスの701人の継続している患者の長期追跡調査の結果が、近年、ボストングループによって報告された;394人(56%)がASCTの適格とみなされ、そのうち82人は、患者の選択または疾患の進行のために進行しなかった(Skinnerら, Ann Intern Med, 2004年; 140(2): 85~93頁)。治療を開始した312人の患者のうち、治療関連死亡率(TRM)は、13%であり、全コホートの生存期間の中央値は、4.6年であった。対象外患者の生存期間の中央値は、わずか4ヶ月であった。興味深いことに、Dispenzieriらは、1983年~1997年までメイヨークリニックで治療されたALアミロイドーシス患者のデータを調べ、現在、ASCTに適格であったと思われる229人の患者を特定した。彼らの生存期間の中央値は、42ヵ月であり、5年および10年の生存率は、それぞれ36%および15%であり、ASCTによる生存の恩恵は、部分的には特定の治療法よりもむしろ患者の選択によるものであることを示唆している。フランスの無作為化試験では、約22%の高い治療関連死亡率のために、そしてランドマーク分析における経口メルファランデキサメタゾン化学療法に対してASCT群の全生存率が改善されていないために、ALアミロイドーシスにおけるASCTの役割についてさらに疑問が投げかけられた(Jaccardら, The New England journal of medicine, 2007年; 357(11): 1083~93頁)。しかしながら、高いTRMおよび予想よりも低い反応は、この研究に対する多くの批判をもたらす。したがって、ASCTの役割は、不明確なままであり、英国国立アミロイドーシスセンターでの実践は、近年、ASCTを第一選択療法として推奨することはめったにないが、ビンクリスチン、アドリアマイシン、デキサメタゾン(VAD)などの中用量化学療法レジメンによる第一選択療法に適切に反応しなかった患者におけるその役割を考慮している。英国国立アミロイドーシスセンターで見られ、1994年から2004年の間にASCTを受けたALアミロイドーシス患者92人全員の転帰が、近年、決定されており、全コホートの全生存期間の中央値は、63ヶ月であり、TRMは、23%であったが、後ろ向き分析により、TRMのない患者のサブセットが同定された(Goodmanら, Haematologica/The Hematology Journal, 2005年; 90(s1): 201)。NACの研究から特定された要因は、英国における患者選択基準の改良につながり、ASCTを受けている83人の患者からの2003年~2011年のデータは、6%のTRMを明らかにした。
【0011】
厳選された患者グループでも、TRMおよび治療による罹患率は、持続する。治療による罹患率の大部分は、粘膜炎につながる高用量メルファランの毒性、薬物による血中末端臓器障害、または血球減少症の合併症によるものである。
【0012】
患者が自身の造血幹細胞(自家移植;ASCT)または遺伝的に関係のあるヒトドナーの造血幹細胞(同種移植)を受ける前に、高用量メルファラン治療が施されなければならない。このようなコンディショニングは、患者の造血系と悪性幹細胞との双方を排除して、患者の生着がうまくいくように準備し、かつ最適な治療効果を生み出すための重要な工程である。
【0013】
高用量メルファランコンディショニング工程の毒性のために、ASCTは、比較的体調の良い適格患者、主に65歳未満の若年患者および/または臓器機能が良好な患者にのみ適用され得る。
【0014】
いわゆる適格患者を慎重に選択しても、依然として主に高用量メルファラン治療のさまざまな毒性および直接的または間接的な結果によって引き起こされる治療関連死亡率(TRM)が1桁の割合で存在する。明らかに、主に高用量メルファラン治療によって引き起こされる治療関連死亡率を減らすことを可能にする選択的な治療方法が絶え間なく必要とされている。
【0015】
CD45、CD33、CD20、CD19およびCD66などの特定の抗原に対して選択的なモノクローナル抗体を使用した多数の放射性免疫複合体(RIC)は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)および変形性骨髄異形成(MDS)などの血液悪性腫瘍への移植前の骨髄コンディショニングの研究対象となっている。(Matthews D.ら, Blood, 1999年, 94: 1237~1247頁; Jurcic JG, Cancer Biother Radiopharm., 2000年, 15: 319~326頁; Bunjes D.ら, Blood, 2001年, 98: 565~572頁)。放射性免疫複合体は、標準的な移植前処置(conditioning regimen)に加えて適用された。しかしながら、これらの放射性免疫複合体のほとんどは、臓器に非選択的な取り込みを示す。放射性免疫複合体のこの非標的取り込みの原因は、多因子性であり、かつインビボでの免疫複合体の特異的および非特異的取り込みおよび不安定性を含む。既知のRICは、使用される抗体の選択性および/または結合放射性標識の安定性により、肝臓、肺、および腎臓で重度の用量制限毒性を示す(例えば、Bunjesらによって研究された抗CD66 mAbの188Re標識分子を用いて観察される、Blood, 2001年, 98: 565~572頁)。残念なことに、注射された投与量のごくわずかな部分しか所望の目標に到達していない(Karger, Contrib. Oncol. Basel, 1992年, 43, 100~145頁)。この制限は、用量制限毒性が望ましい治療効果を生み出すことを可能にしなかった、標的抗体分野における多くの失敗した臨床研究の主な理由である。
【0016】
国際公開第2007/062855号(WO 2007/062855)には、90Yで放射性標識されたCD66モノクローナル抗体を用いた多発性骨髄腫の治療法が記載されている。記載されている放射性免疫複合体は、肝臓や腎臓には蓄積せず、骨髄および脾臓を選択的に標的にする。最初の工程では、111In標識抗CD66放射性免疫複合体を用いた線量測定試験が実施され、それぞれの患者の治療適性を判定した。良好な線量測定(90%を上回る)を示した多発性骨髄腫の患者は、90Y標識抗CD66(5MBq/kg lbwから45MBq/kg lbwまで段階的)でコンディショニングされた。この最初のコンディショニング工程の後、患者は、標準的な高用量メルファラン治療とそれに続く自家造血幹細胞移植を受けた。
【0017】
無作為化臨床第II相試験の結果は、抗CD66抗体標的放射線療法(ATRT)とそれに続く高用量メルファランおよびASCT(アームA)が、高用量メルファランおよびASCT(アームB)と比較して、50%からの完全退縮率を示すのに対して、アームBでは完全退縮率が25%にすぎなかったことを示す。双方の治療アームの副作用プロファイルは、同程度であった。
【0018】
国際公開第2011/144744号(WO 2011/144744)には、炎症性および/または自己免疫疾患を治療するための幹細胞移植後に、メルファランなどの細胞傷害剤と組み合わせた標的放射性免疫複合体(RIC)が提案されている。
【0019】
本発明者らは、CD66結合成分および放射性核種を含むRICを用いた骨髄コンディショニングにおける標的放射免疫療法が、検出可能な副作用が発生することなくALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患を患っている患者、特にヒトの患者の治療における使用に適していることを予想外に見出した。
【0020】
したがって、本発明の一態様は、ALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療に使用するためのCD66結合成分および放射性核種を含む放射性免疫複合体(RIC)である。
【0021】
すなわち、本発明によれば、CD66結合成分および放射性核種を含む放射性免疫複合体(RIC)は、ALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療における投与のための医薬品として使用され得る。
【0022】
別の態様では、CD66結合成分および放射性核種を含む放射性免疫複合体は、骨髄コンディショニングの際に、特に幹細胞移植の前に、より具体的には造血幹細胞移植の前に、医薬品として使用され得る。骨髄コンディショニングは、移植片拒絶反応を防ぐため、および/または骨髄内の欠陥細胞の数を減らすために、免疫アブレーションおよび骨髄切除を含み得る。
【0023】
骨髄コンディショニングは、例えば、当該技術分野で公知の組織病理学的染色手順を使用して骨髄の枯渇を判断することによって、または末梢血細胞数の程度を評価することによって測定され得る。また、移植細胞の受け入れは、成功したコンディショニングの手段として評価され得る。
【0024】
好ましい実施形態では、その後の幹細胞移植は、自家移植または同種移植であってもよい。本発明による骨髄コンディショニングは、従来技術の骨髄コンディショニングで通常起こる、悪心および嘔吐、発熱、粘膜炎、下痢および敗血症などのいかなる副作用も引き起こさないことが示された。したがって、骨髄コンディショニングにおける本発明によるRICの使用は、高用量化学療法、例えば、高用量メルファラン治療などの従来技術のレジメンによる骨髄コンディショニング治療と比較して、入院治療を減少させるかまたは回避さえする。好ましい実施形態では、本発明のRICは、好ましくは、追加の細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤、例えばメルファランなしで骨髄コンディショニングにおける医薬品として使用される。
【0025】
別の実施形態では、本発明のRICは、標準的な従来技術の用量と比較して、低用量の細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤と共に骨髄コンディショニングにおける医薬品として使用される。
【0026】
治療レジメンは、骨髄のイメージングおよび/または治療的照射に適した放射性核種の投与を含み得る。RIC投与は、好ましくは、さらなる治療法、特に幹細胞移植と組み合わせた移植前処置である。RICの放射性核種は、治療上有効な放射性核種であり得る。例えば、治療上有効な放射性核種は、β-またはβ/γ-放出放射性核種、例えば、イットリウム-90(90Y)、ヨウ素-131(131I)、サマリウム-153(153Sm)、ホルミウム-166(166Ho)、レニウム-186(186Re)、レニウム-188(188Re)またはルテチウム-177(177Lu)であり得るか、またはα-エミッタ、例えば、アスタチン-211(211At)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)またはアクチニウム-225(225Ac)であり得る。好ましい実施形態では、治療上有効な放射性核種は、イットリウム-90(90Y)である。
【0027】
RICの放射性核種は、イメージング放射性核種、すなわちRICの薬物動態を監視および/または決定するのに適した放射性核種であってもよい。例えば、イメージング放射性核種は、インジウム-111(111In)、ヨウ素-131(131I)またはテクネチウム-99m(99mTc)であり得る。好ましい実施形態では、イメージング放射性核種は、インジウム-111(111In)である。
【0028】
特に好ましい実施形態では、本発明は、投与前に治療用RICの治療的有効量を測定することを包含する。この決定は、治療されるべき対象または対象の群について個々に、例えば、病気の進行の重症度に基づいて行われ得る。例えば、本発明は、イメージング放射性核種を含むRICの投与、およびその後の治療上有効な放射性核種を含むRICの投与を含み得る。最初にイメージングRICを投与することによって、その後投与される治療用RICの有効量は、それぞれの対象、例えば、ヒトの患者について個々に決定および/または調整され得る。この実施形態では、イメージングRICおよび治療用RICのCD66結合成分は、好ましくは、少なくともCD66結合特異性および/または親和性に関して同一である。
【0029】
好ましい実施形態では、イメージングRICは、治療用RICを投与する2~10日前、好ましくは2~8日前に患者に投与される。
【0030】
しかしながら、RICの治療上有効な量を決定するために、十分な患者データが、例えばデータベースに収集されている場合、治療用RICの投与前にイメージングRICを投与する必要がない可能性もあることに留意するべきである。したがって、本発明のさらに好ましい実施形態は、例えば、データベースからの既存のデータを、特に患者の骨髄細胞の免疫組織化学的分析と組み合わせて評価することによってRICの治療的有効量を決定することを含む。
【0031】
CD66結合成分は、好ましくは、少なくとも1つの抗体結合ドメインを含むポリペプチド、例えば、抗体、特にモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体または組換え抗体、例えば一本鎖抗体もしくはそれらのフラグメント、例えば、タンパク質分解抗体フラグメント、例えばFab-、Fab’-、またはF(ab)2-フラグメントまたは組換え抗体フラグメント、例えば一本鎖Fv-フラグメントである。
【0032】
CD66結合成分はまた、少なくとも1つの抗体結合ドメインおよびさらなるドメイン、例えば、エフェクタードメイン、例えば、酵素またはサイトカインを含む融合ポリペプチドであってもよい。また、CD66結合分子は、アンキリンまたは足場ポリペプチドであり得る。
【0033】
好ましい実施形態では、CD66結合成分は、ヒトCD66抗原またはそのエピトープ、例えば、CD66a、b、cまたはeに選択的に結合する。特に好ましい実施形態では、CD66結合成分は、BW250/183抗体である。この抗体のマウス型、ヒト化型および組換え型は、欧州特許出願公開第0388914号明細書(EP-A-0 388 914)、欧州特許出願公開第0585570号明細書(EP-A-0 585 570)および欧州特許出願公開第0972528号明細書(EP-A-0 972 528)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
放射性核種は、好ましくはキレート剤を介してCD66結合成分に結合され、この結合は、好ましくは共有結合である。より好ましくは、放射性核種は、以下の式
[(キレート剤)-(R
1)
p-(R
2-R
3)
n]
m-(CD66結合成分)
の構造を介してCD66結合成分に結合しており、
ここで、nは、0または1であり、
mは、1~15であり、
pは、0または1であり、
R
1およびR
3は、-NH-CS-NH-、-NHCONH-、-NHCOCH
2S-、-S-S-、-NH-NH-、-NH-、-S-、-CONHNH-、-SCH
2CH
2COONH-、-SCH
2CH
2SO
2-、-SCH
2CH
2SO
2NH-、-CONH-、-O-CH
2CH
2O-、-CO-、-COO-、-NH-O-、-CONHO-、-S-(CH
2)
3C(NH)NH-、-NH-COO-、-O-および
【化1】
からなる群から独立して選択され、好ましくは-NH-CS-NH-であり、
R
2は、C1~C18アルキレン、分枝鎖状C1~C18、-CH
2-C
6H
10-、p-アルキルフェニレン、p-フェニレン、m-フェニレン、p-アルキルオキシフェニレン、ナフチレン、-[CH
2CH
2O]
x-、-[CH
2CH
2SOCH
2CH
2]
x-、-[CH
2CH
2SO
2CH
2CH
2]
x-、または-[NHCHR
4CO]
y-(式中、xは、1~200であり、yは、1~20である)からなる群から選択され、かつR
4は、H-、Me-、HSCH
2-、イソプロピル、ブタ-2-イル、CH
3SCH
2CH
2-、ベンジル、1H-インドール-3-イル-メチル、HOCH
2-、HOOCCH
2-、CH
3CH(OH)-、HOOCCH
2CH
2-、4-ヒドロキシベンジル、H
2NCOCH
2-、H
2NCOCH
2CH
2-、4-アミノブタ-1-イル、2-グアニジノエチル、1H-イミダゾール-5-イル-メチルおよび2-メチルプロパ-1-イルからなる群から選択される。
【0035】
例えば、キレート剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TETA)、1,4,7-トリアゾナン-N,N’,N’’-三酢酸(NOTA)、2,2’-(2-(((1S,2S)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシル)-(カルボキシメチル)アミノ)エチルアザンジイル)二酢酸(シクロヘキサノ-DTPA)、2,2’-(2-(((1R,2R)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシル)-(カルボキシメチル)アミノ)エチルアザンジイル)二酢酸、2,2’-(2-(((1S,2R)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシル)-(カルボキシメチル)アミノ)エチルアザンジイル)二酢酸、2,2’-(2-(((1R,2S)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシル)-(カルボキシメチル)アミノ)エチルアザンジイル)二酢酸、2,2’,2’’,2’’’-(2,2’-(1S,2S)-シクロヘキサン-1,2-ジイルビス((カルボキシメチル)アザンジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(アザントリイル)四酢酸、2,2’,2’’,2’’’-(2,2’-(1S,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジイルビス((カルボキシメチル)アザンジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(アザントリイル)四酢酸、(1R)-1-ベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸、(1S)-1-ベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸、(2R)-2-ベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸、(2S)-2-ベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸、(2R)-2-ベンジル-(3R)-3-メチル-DTPA、(2R)-2-ベンジル-(3S)-3-メチル-DTPA、(2S)-2-ベンジル-(3S)-3-メチル-DTPA、(2S)-2-ベンジル-(3R)-3-メチル-DTPA、(2R)-2-ベンジル-(4R)-4-メチル-DTPA、(2R)-2-ベンジル-(4S)-4-メチル-DTPA、(2S)-2-ベンジル-(4S)-4-メチル-DTPA、(2S)-2-ベンジル-(4R)-4-メチル-DTPA、(1R)-1-ベンジル-(3R)-3-メチル-DTPA、(1R)-1-ベンジル-(3S)-3-メチル-DTPA、(1S)-1-ベンジル-(3S)-3-メチル-DTPA、(1S)-1-ベンジル-(3R)-3-メチル-DTPA、(1R)-1-ベンジル-(4R)-4-メチル-DTPA、(1R)-1-ベンジル-(4S)-4-メチル-DTPA、(1S)-1-ベンジル-(4S)-4-メチル-DTPA、(1S)-1-ベンジル-(4R)-4-メチル-DTPA、2,2’-((1R,2R)-2-(((R)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1S,2S)-2-(((S)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1R,2R)-2-(((S)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1S,2S)-2-(((R)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1R,2S)-2-(((R)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1S,2R)-2-(((S)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1S,2R)-2-(((R)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、2,2’-((1R,2S)-2-(((S)-2-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-フェニルプロピル)(カルボキシメチル)アミノ)シクロヘキシルアザンジイル)二酢酸、(2S)-2-ベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸、(2R)-2-ベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸、6-ベンジル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸、2-ベンジル-1,4,7-トリアゾナン-N,N’,N’’-三酢酸、ベンジル-3-メチル-ジエチレントリアミン五酢酸(2B3M-DTPA)、(R)-2-アミノ-3-(フェニル)プロピル)トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸)(Bn-CHX-A’’-DTPA、またCHX-A’’-DTPAとも呼ばれる)ならびにその塩およびその誘導体、特に(R)-2-アミノ-3-(フェニル)プロピル)トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸)(Bn-CHX-A’’-DTPA、またCHX-A’’-DTPAとも呼ばれる)およびその塩からなる群から選択され得る。
【0036】
本発明はまた、CD66結合成分-NH-CS-NH-Bn-CHX-A’’-DTPA(また、CD66結合成分-NH-CS-NH-CHX-A’’-DTPAとも呼ばれる)構造を有する放射性免疫複合体、およびそれらの式I
【化2】
による塩(例えば、塩化物塩)ならびにそれらのALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療における使用に関する。より好ましくは、放射性免疫複合体は、BW250/183-NH-CS-NH-Bn-CHX-A’’-DTPA(また、BW250/183-NH-CS-NH-CHX-A’’-DTPAとも呼ばれる)またはそれらの塩である。
【0037】
ヒト患者の治療のための治療用RICの投与は、好ましくは、約10MBq/kg 除脂肪体重(lbw)以上、好ましくは約15MBq/kg lbw以上、より好ましくは約20MBq/kg lbw以上、さらにより好ましくは約25MBq/kg lbw以上、さらにより好ましくは約30MBq/kg lbw以上、さらにより好ましくは約35MBq/kg lbw以上の用量である。好ましくは、治療用放射性免疫複合体の用量は、60MBq/kg lbwまで、好ましくは50MBq/kg lbwまで、より好ましくは45MBq/kg lbwまでの範囲である。
【0038】
RICは、公知の方法に従って、例えば、任意で薬学的に許容される担体と一緒に、注入によって投与され得る。
【0039】
本発明のRICは、好ましくは、幹細胞移植、特に自家幹細胞移植または同種幹細胞移植、より具体的には自家幹細胞移植などの追加の手段を含む治療法における移植前処置として投与される。治療用放射性免疫複合体は、好ましくは、幹細胞移植の6~16日前、好ましくは6~12日前に患者に投与される。
【0040】
さらに好ましい実施形態では、本発明によるALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療は、幹細胞移植前後に少なくとも4週間、メルファランなどの追加の抗腫瘍剤、または免疫抑制剤の投与を含まない。
【0041】
さらに好ましい実施形態では、本発明による治療用RICを用いるALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療は、高用量メルファランで治療した後、幹細胞移植を受けたが、疾患の進行を示した患者に投与するためのものである。
【0042】
さらに好ましい実施形態では、本発明による治療用RICを用いるALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療は、導入療法、例えば、ベルケード、デキサメタゾン、サリドマイド;またはベルケード、デキサメタゾン、シクロホスファミド;またはベルケード、デキサメタゾン;またはメルファラン、プレドニゾン;またはポマリドマイド、デキサメタゾンで治療したが、疾患の進行を示した患者に投与するためのものである。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、本発明による治療用RICを用いるALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療は、導入療法(ベルケード、デキサメタゾン、サリドマイド;またはベルケード、デキサメタゾン、シクロホスファミド;またはベルケード、デキサメタゾン;またはメルファラン、プレドニゾン;またはポマリドマイド、デキサメタゾン)で治療し、これらのそれぞれの治療の組み合わせに対して血液学的反応を示した患者に投与するためのものである。
【0044】
さらに好ましい実施形態では、本発明による治療用RICを用いるALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療は、HSCTに先行するHD-メルファランに不適格である患者に投与するためのものである。
【0045】
特にALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療のための治療プロトコルは、以下の工程:
(a)任意に、イメージングRICを患者に投与すること、
(b)治療用RICを患者に投与すること、および
(c)自家幹細胞または同種幹細胞を移植すること
を含み得る。
【0046】
特にALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療のための治療プロトコルは、以下の工程:
(a)任意にイメージングRICを患者に投与すること、
(b)治療用RICを患者に投与すること、
(c)任意に抗生物質を投与すること、および
(d)自家幹細胞または同種幹細胞を移植すること
からなり得る。
【0047】
特にALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療のための治療プロトコルは、以下の工程:
(a)任意にイメージングRICを患者に投与すること、
(b)治療用RICを患者に投与すること、
(c)任意に抗生物質、抗真菌剤および/またはウィルス駆除剤を投与すること、および
(d)自家幹細胞または同種幹細胞を移植すること
を含み得る。
【0048】
本発明による抗生物質は、フルオロキノロン、シプロフロキサシン(シプロ)、レボフロキサシン(レバキン/キキシン)、ガチフロキサシン(テクイン)、モキシフロキサシン(アベロックス)、オフロキサシン(オキュフロックス/フロキシン/フロキサシン)、ノルフロキサシン(ノロキシン)であり得る。
【0049】
本発明によるウィルス増殖抑制剤(Virustatics)は、アシクロビル、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビルであり得る。
【0050】
本発明に従って使用される抗真菌薬は、フルコナゾール、アムホテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、カンディシン、ハミシン、ペリマイシン、デルモスタチンであり得る。
【0051】
特にALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療のための好ましい治療プロトコルは、
(a)任意に、工程(b)の前に、イメージングRICを、特に2~10日、より具体的には2~8日、患者に投与する工程、
(b)工程(c)の前に、治療用RICを、特に6~16日、より具体的には12~16日、患者に投与する工程、
(c)自家幹細胞または同種幹細胞を移植する工程
を含む。
【0052】
骨髄関連疾患、特にALアミロイドーシスの治療に特に好ましい治療プロトコルは、
(i)任意に、工程(ii)の前に、111Inを含む抗体BW250/183のイメージングRICを、特に2~10日、より具体的には2~8日、患者に投与する工程
(ii)工程(iii)の前に、90Yを含む抗体BW250/183の治療用RICを、特に6~16日、より具体的には12~16日、患者に投与する工程、および
(iii)自家幹細胞または同種幹細胞を移植する工程
を含む。
【0053】
驚いたことに、ALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患の治療の場合、骨髄のコンディショニングには、メルファランなどの追加の抗腫瘍剤または免疫抑制剤を投与する必要がないことが分かった。したがって、コンディショニング剤として放射性免疫複合体のみを用いてこのような疾患を治療することで、抗腫瘍剤および/または免疫抑制剤を用いた標準的なコンディショニングに通常付随するいかなる副作用も最小限にされるか、さらには回避される。本発明により、移植対象外のALアミロイドーシス患者の治療が可能になる。
【0054】
さらに、驚くべきことに、高用量メルファランで治療した後、幹細胞移植を受けたが、疾患の進行を示したALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患を患う患者を、本発明による治療用放射性免疫複合体およびその後の幹細胞移植で治療できることが分かった。
【0055】
また、導入療法で治療したが、進行を示したALアミロイドーシスなどの骨髄関連疾患を患う患者を、本発明による治療用放射性免疫複合体およびその後の幹細胞移植で治療できることも分かった。
【0056】
本発明は、以下の例によってより詳細に説明されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、免疫複合体CHX-A’’-DTPA-抗CD66モノクローナル抗体の調製を示す。
【
図2】
図2は、
111インジウムCHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤の放射性標識プロセスのフロー図を示す。
【
図3】
図3は、
90イットリウムCHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤の放射性標識プロセスのフロー図を示す。
【
図4】
図4は、
90イットリウム標識CHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤の組成を示す。
【
図5】
図5は、[
111In]-抗CD66製剤の注入後の連続した全身のガンマ画像を示す。
【
図6】
図6aは、[
111In]-抗CD66製剤の注入後のガンマカメラ画像を示す。
図6bは、[
90Y]-抗CD66製剤の注入後の制動放射画像を示す。
【
図7】
図7は、
90Y-抗CD66治療後の患者のFLC反応を示す。
【0058】
実施例
材料
CD66結合成分
分子量および配合
マウスIgG1カッパモノクローナル抗体抗CD66 BW 250/183は、150kDaタンパク質の分子量(MW)を有する単量体であり、予想されるMW(それぞれ約50および25kDa)のIgG重鎖および軽鎖から構成される。抗体は、以下のようにも知られている:
INNの名称:Besilesomab
化学名:モノクローナル抗体BW 250/183
実験室コード名:MAb BW 250/183
CAS登録番号:537694-98-7
【0059】
キレート剤
NCS-CHX-A’’-DTPAのキレート剤
抗体上の共有結合の事象に使用される合成二官能性キレートは、Macrocyclics(1309 Record Crossing, Dallas, TX 75235, 米国)によって合成される。IUPAC名は、2,2’-(2-(((S)-1-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)-3-(4-イソチオシアナトフェニル)プロパン-2イル)(カルボキシメチル)アミノ)プロピルアザンジイル)二酢酸であり、また、イソチオシアナト-(R)-2-アミノ-3-(フェニル)プロピル)トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸(ITC-CHX-A’’-DTPAまたはITC-Bn-CHX-A’’-DTPAと略される)としても知られている。低分子量キレート(分子量:704Da)は、以下の化学式C
26H
34N
4O
10S.3HClを有し、かつ固形のオフホワイト粉末として示される。
【化3】
【0060】
放射性免疫複合体の調製
CHX-A’’-DTPA-抗CD66原薬(バッチ番号AB012)のバッチサイズは、122ml(355mg)であり、これは出発モノクローナル抗体製剤の抗CD66 Mab250/183(Orpegen Pharma GmbHまたはGlycotope Biotechnology GmbH、独国、またはCelonic、独国)の作業容量152ml(426mg)に相当した。CHX-A’’-DTPA-抗CD66原薬(バッチ番号AB013)のバッチサイズは、250ml(775mg)であり、これは出発モノクローナル抗体製剤の抗CD66 Mab250/183(Orpegen Pharma GmbH)の作業容量376ml(1051mg)に相当した。
【0061】
実施した製造工程および工程内管理の概要を
図1に示す。
【0062】
a)材料の解凍
プロセスの第1の工程は、バッチ記録で指定された抗CD66 Mabのバイアルの特定の回数の解凍である。バイアルを、1本の滅菌ファルコンチューブにまとめる前に、層流フード(LFH)においてMabを室温で解凍する。工程内QCサンプルをサイズ排除分析のために採取し、Mabが主に単量体であることを確認し、この結果を報告する。
【0063】
キレート剤ITC-CHX-A’’-DTPAを、冷凍庫から取り出し、室温で最低1時間、周囲温度まで温める。
【0064】
b)Mabのクロスフロー限外ろ過-0.1Mの炭酸ナトリウムpH9.0溶液への透析ろ過
原薬プロセスの製造の主な処理工程は、クロスフロー限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)工程である。これらのカートリッジは、使い捨てで、単回使用であり、処理のためにいくつかの異なる分子量カットオフで利用可能である(Spectrum Laboratories、米国)。カートリッジおよびUF/DF装置を、製造者の推奨に従ってあらかじめ調整し、グリセロールを除去してから、使用前に検証済みのオートクレーブ滅菌サイクルを用いて滅菌する。一般的に、UF/DF工程は、ろ過、透析ろ過(緩衝液交換)、および製品を所定の仕様に濃縮するために行う。50kDa MWカットオフの中空糸カートリッジを、塩および他の低分子量の不純物を通過させながら、Mabの保持を可能にする定義された動作パラメータ(例えば、膜貫通圧、低剪断方式での速度)内で操作する。カートリッジおよびアセンブリを、クローズドプロセスで、グレードBのクリーンルームのバックグラウンドでグレードAの層流フード内で操作する。
【0065】
処理の前に、1:10 vol:volの0.01M DTPA溶液を、LFHのMab溶液に加える(すなわち、10mlのMabあたり1mlのDTPA)。Mabを、穏やかに混ぜ合わせ、室温で30分間インキュベートする。Mab溶液を、LFHの中空糸クロスフローアセンブリに導入してから、pHが許容範囲内になるまで、Mabを最小5倍容量の0.1Mの炭酸ナトリウムpH9.0で透析ろ過する。工程内QCサンプルを採取し、pHが、コンジュゲートに必要なpH8.9~9.2の範囲内であることを確認する。Mabを、中空糸カートリッジから無菌ファルコンチューブに回収する。工程内QCサンプルを採取し、Mabの濃度を、OD 280nmでモニターする。
【0066】
c)Mabとキレートとのコンジュゲート
必要とされるITC-CHX-A’’-DTPAキレート剤の量を、以下のように計算する-コンジュゲートされるMab 5mgごとに1mg。キレート剤を、DMSOに溶解する前に、滅菌容器に慎重に秤量する(DMSO 20μlあたり1mgのキレート剤を溶解する)。ITC-CHX-A’’-DTPAキレート剤を、しっかり混合してMabに慎重に加える(少量の炭酸塩緩衝液を使用して、残っているリガンドを容器から洗い流し、Mabに加える)。ふたをMab容器で交換し、溶液を、手で回転させることで非常に穏やかに混合する。チューブにラベルを付け、室温で2時間放置した後、+2~8℃で一晩インキュベートする。
【0067】
d)Mabのクロスフロー限外ろ過-酢酸緩衝液中への透析ろ過/濃縮
LFHでは、工程内QC放射性標識効率が97%を上回るまで、Mab溶液を、0.1Mの酢酸アンモニウム溶液pH6に透析ろ過する。放射性標識効率が97%を上回ると、膜貫通圧を解放することによって、Mabを中空糸クロスフロー装置から滅菌ファルコンチューブに回収する。工程内QCサンプルを採取し、OD 280nmでMab濃度を測定し、必要に応じて、Mabを、酢酸緩衝液で2.5~3.3mg/mlの許容範囲内にさらに希釈する。最終的なMab溶液を+2~8℃で保存する。
【0068】
e)クリオバイアルへの原薬の滅菌ろ過および充填
LFHでは、グレードBのバックグラウンドで、製品を、0.22μMのフィルターを使用して滅菌ファルコンチューブにろ過滅菌する。フィルターは、完全性試験済みであり、許容可能なバブルポイント範囲内にあることを保証する。LFHでは、グレードBのバックグラウンドで、製品を、オートクレーブ固定容量ピペットを使用して滅菌クリオバイアルに無菌的に分注する。処理中、E.Mをオペレータによって実行し、連続的な空気粒子数を含める。バイアルを密閉し、-70℃未満で保存する前にGMPに従ってラベルを付ける。
【0069】
二官能性キレート化CHX-A’’-DTPA-抗CD66モノクローナル抗体は、予想されるMWサイズおよび組成の単量体IgG1として残る。調製物は、免疫反応性アッセイによりCD66抗原に対して特異性を維持することを示す。
【0070】
CHX-A’’-DTPA-抗CD66モノクローナル抗体は、水に溶けやすく、酢酸アンモニウム緩衝液pH6.0に溶解すると、粒子が見えない無色透明の溶液として見える。
【0071】
製剤
111インジウム標識したCHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤
111インジウム標識したCHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤を、個々の患者のために単回投与単位で製造する。
111インジウム標識したCHX-A’’-DTPA-抗CD66の製剤を、過剰の
111インジウムを用いて最大300MBqに調製し、製造中の残留放射能損失および注入前の遅延を考慮する。185MBq±10%の用量が、各患者に投与されることになる。投与量は、バイアル内の放射能濃度に基づいて計算されることになる。残留放射性標識製品を、再測定し、元の放射能に対して調整して、患者に投与された実際の放射能の正確な記録を可能にする。
111インジウムCHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤の放射性標識プロセスのフロー図を
図2に示す。
【0072】
111インジウム標識したCHX-A’’-DTPA抗CD66製剤は、放射性核種111インジウムで標識された、二官能性キレート剤に結合したモノクローナル抗体である。
【0073】
この放射性標識抗体コンジュゲートの2つの成分は、以下のとおりである:
1)CHX-A’’-DTPA-抗CD66モノクローナル抗体(「原薬」)
2)放射性核種111インジウム
【0074】
モノクローナル抗体コンジュゲートの放射性標識を、GMPガイドラインに従って各部位で放射性医薬品部門により個々の患者に対して個別に準備し、ベシレソマブ(1.0~1.5mg)を含有する静脈内注入用の無菌で、発熱物質および粒子を含まない溶液として供給し、0.9%の塩化ナトリウム溶液BPで8.0mlに希釈し、インジウム-111で標識して、合成終了時の最終放射能濃度が、約23MBq/ml(許容範囲20~30MBq/ml)になるようにする。製剤の各バッチの容量は、製造終了時に約8~10mlになる。患者の用量は、10mLのシリンジ1本で示されることになる。
【0075】
また、In111によるモノクローナル抗体コンジュゲートの放射性標識を、放射性医薬品製造現場で集中的に行うことができ、製剤は、患者を治療するそれぞれの移植センターに4~8℃で出荷されることになる。
【0076】
90イットリウム標識CHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤
90イットリウム標識CHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤を、個々の患者用に単回投与単位で製造する。各バッチ/単回投与単位の組成を
図4に示す。
90イットリウムCHX-A’’-抗CD66製剤を、製造中の残留放射能損失を考慮して、約25%を超える
90イットリウムで製造する。患者に実際に投与される量は、プロトコルに従って患者の除脂肪体重および規定の放射能に依存することになる。投与される容量は、バイアル中の放射能濃度と共にこれらの要素に基づいて計算される。残存放射性標識製品を、再測定し、元の放射能に対して調整して、患者に投与された実際の放射能の正確な記録を可能にする。
90イットリウムCHX-A’’-DTPA-抗CD66製剤の放射性標識プロセスのフロー図を、
図3に示す。
【0077】
モノクローナル抗体コンジュゲートの放射性標識を、GMPガイドラインに従って各部位で放射性医薬品部門により個々の患者に対して個別に準備し、CHX-A’’-DTPA抗CD66(1.0~1.5mg)を含有する静脈内注入用の無菌で、発熱物質および粒子を含まない溶液として供給し、0.9%の塩化ナトリウム溶液BPで約8.0mlに希釈し、90イットリウムで標識して、合成終了時の最終放射能濃度が、200~500MBqの/mlの範囲になるようにする。
【0078】
また、Y90によるモノクローナル抗体コンジュゲートの放射性標識を、放射性医薬品製造現場で集中的に行うことができ、製剤は、患者を治療するそれぞれの移植センターに4~8℃で出荷されることになる。
【0079】
吸収性
放射性標識
111In抗CD66放射性免疫複合体を、緩衝食塩水溶液中で静脈内投与した。連続したガンマカメラ画像は、注入後4~6時間以内に骨髄による初期の血液相および取り込みを示す(
図5)。
【0080】
分布
ヒトのインビボでの生体内分布は、典型的には軸骨格(椎骨、骨盤)、肋骨、頭蓋骨、および長骨の近位領域において、赤血球の細胞成分による一貫した取り込みを示す。[
111In]-抗CD66の注入後のガンマ画像を
図6aに示し、[
90Y]-抗CD66の注入後の制動放射画像を
図6bに示し、これらはそれぞれの放射性標識型の抗CD66と同様の生体内分布を示す。
【0081】
研究の課題
本研究の主な課題は、ALアミロイドーシス患者における自家幹細胞移植前の唯一の条件付けとしての[90Y]標識抗CD66の使用に関連する毒性を決定することである。毒性判定を、CTCAEバージョン4.0の基準および幹細胞移植によって測定し、3つの注入放射線活性レベルを超える最大許容放射線量(MTD)を確立する。
【0082】
さらに、この研究では、フローサイトメトリーの確立された検証済みの方法を用いて悪性形質細胞集団の変化を測定することによってクローン応答(血清FLCアッセイにより測定)を評価することができる。患者の生着状態を判定しながら、疾患反応、心臓回復、進行までの時間および全生存期間も調査する。
【0083】
最後に、この研究により、この患者グループの第I相および第II相の試験で以前に開発された線量測定モデルの評価が可能になる。
【0084】
結果の指標/評価項目
全身性ALアミロイドーシス患者における自家幹細胞移植の唯一の移植前処置としての[90Y]標識抗CD66モノクローナル抗体の毒性は、CTCAEバージョン4.0の基準を用いて測定される。
【0085】
[90Y]放射性標識抗CD66 mAbを標的放射線療法として用いるクローン反応を、シリアルFLCアッセイにより測定する。反応は、全身性軽鎖アミロイドーシスにおける臨床試験の実施および報告に関するコンセンサスガイドラインに推奨されている通りにまとめられる。
【0086】
[90Y]放射性標識抗CD66 mAbに対するクローン反応と、それに続く骨髄における悪性形質細胞集団の変化を、フローサイトメトリーの確立された検証済みの方法を用いて測定する。
【0087】
疾患反応および心臓の回復を、治療前後のNT-proBNPレベル(D100)を測定することによって判断する。
【0088】
[90Y]標識抗CD66 mAbを使用した場合の経過時間および全生存期間に対する影響を評価する。
【0089】
同じ放射性標識抗CD66を使用し、イメージング/線量測定後90Y標識抗CD66を用いて前の第I相および第II相の試験で開発された線量測定モデルの有用性を判断した。
【0090】
自家幹細胞の生着を、血小板回復までの時間>50×109/L、および好中球>0.5×109/L(EBMT基準)によって判断した。
【0091】
ALアミロイドーシスのための自家幹細胞移植の状況で抗CD66 mAbへの曝露後にヒト抗マウス抗体またはヒト抗マウス免疫グロブリン抗体(HAMA)を形成する患者の割合を評価する。
【0092】
試験計画
これは、非盲検の第I/IIa相多施設検査で、ALアミロイドーシス患者における放射性標識抗CD66の使用を、
1)安全性および毒性
2)疾患反応
に関して評価したものであった。ある用量レベルから次の用量レベルへの進行は、示された毒性プロファイルに左右されるが、疾患反応には左右されないであろう。患者は、疾患の診断およびモニタリングのために国立アミロイドーシスセンターに通い、高用量療法が治療の選択肢となる患者から募集されることになる。
【0093】
3つの治療レベルがあり、これは、注入放射線活性レベルの増加を表す:
1. 30.0MBq/kgの除脂肪体重[90Y]-放射性標識マウス抗CD66
2. 40.0MBq/kgの除脂肪体重[90Y]-放射性標識マウス抗CD66
3. 45.0MBq/kgの除脂肪体重[90Y]-放射性標識マウス抗CD66
【0094】
毒性
患者は、順次募集され、その時点で有効な用量レベルに従って治療を受けることになる。安全要因として、毒性が記録されていないと仮定して、(患者が移植後D+30またはD+60になる前に、患者を募集し同意することができても)、次の患者が同じ用量レベルで治療され、移植後D+60の用量レベルが変化する前に移植後D+30と同等の間隔が経過しなければならない。どの患者にも毒性が見られない場合、最大3人の患者が同じ用量レベルで募集され、次の用量レベルを開始することができる(D+60と同等の間隔の後)。1人の患者が規定の毒性を発症した場合、同じ用量レベルで募集を継続するが、患者は、同じ用量レベルで最大6人までである。同じ用量レベルで治療した最初の3人の患者のうち2人以上の患者が毒性を発現した場合、試験を中止する。調査時に、独立データモニタリング委員会(IDMC)が、毒性は、直接的には放射性標識抗体によるものではないと判断した場合、試験は同じ用量レベルで継続され得るが、最大6人の患者に拡大される。IDMCが、毒性は、放射性標識抗体に直接関連していると判断した場合、試験は中止され、注入放射線活性レベルは、したがってMTDとして設定される。6人の患者の後、2人よりも多い患者がIDMCによって放射性標識抗体に起因する毒性を呈する場合、試験は中止されることになるが、そうでなければ、(上記で概説されるように)次の用量レベルに継続し得る。
【0095】
IDMCの見解では、いずれの注入活性(「用量」)レベルでも特定の毒性がない場合、最終注入活性レベルを6人の患者に拡張して、毒性および疾患反応に関する追加情報を提供することができる。
【0096】
疾患反応
疾患反応(遊離軽鎖(FLC)の変化)は、試験期間にわたって各患者において判断されることになる。ALアミロイドーシス患者に影響を及ぼし得る合併症のために、治療および移植後のFLCおよびクローン形質細胞集団の減少によって示されるように、良好な臨床疾患反応が得られた場合、MTDを明確に示すことは(すなわち、注入放射線活性のさらなる増加によって)適切ではない。最適な注入放射線は、明らかな毒性を示すことなく、すべての患者においてCR率をもたらすであろう。第I相試験から得られる結果は、さらなる試験の形式(第II相)の情報を与えるために使用されることになり、これはこの特定の患者群における最適な注入放射線活性、ひいては推定骨髄放射線量を決定することを目的とするであろう。どの注入活性レベルでも毒性が示されない場合、3人目のレベルを6人の患者に拡大することで、疾患反応のさらなる証拠が得られることになる。
【0097】
患者
アミロイドーシスにおけるASCTの適格基準を満たし、かつ好ましい治療法の選択肢として自家幹細胞移植の適応がある全身性ALアミロイドーシスの患者はすべて、この研究に適格である。
【0098】
選択基準
以下の特徴を有する患者がこの試験の対象となる
・18歳以上
・新しい診断または再発性疾患としての全身性ALアミロイドーシスの診断
・測定可能なクローン形質細胞異常症
・アミロイド関連臓器不全または臓器症候群
・少なくとも6ヵ月の推定平均寿命(試験参加時に定義)
・2回の移植手術に十分な幹細胞
・骨髄(BM)細胞数>20%
・以下の基準をすべて満たすと定義されている、ALアミロイドーシスにおけるASCTの適格:
・0または1のECOGパフォーマンスステータス
・心臓トロポニン-T<0.07μg/L
・NYHA心不全クラス<3
・コンセンサスガイドラインによりアミロイドーシスに関与する臓器は3つ以下
・クレアチニンクリアランスまたは同位体GFR≧30ml/分
・ビリルビン≦1.5倍、およびアルカリホスファターゼ≦3×正常の上限
・ASTまたはALT<2.5×正常範囲の上限
・心エコー検査による<16mmの平均左室壁厚
・臨床的に重要なアミロイド関連自律神経障害がないこと
・臨床的に重要なアミロイド関連の胃腸出血がないこと
・書面によるインフォームド・コンセントを提供可能
・出産の可能性がある女性は適切な避妊法を用いるべきである
・子宮内装置(IUD)
・ホルモンベースの避妊薬(ピル、避妊薬注射など)
・二重バリア避妊薬(コンドームおよび閉塞キャップ、例えば、殺精子剤付きの隔膜または子宮頸部キャップ)
・完全な禁欲(これは、線量測定および画像検査で[111In]を受けた後、最終的な試験来院まで異性愛者の性交を控えることと定義される)
【0099】
除外基準
以下の特徴を有する患者は、この試験には不適格である:
・明白な症候性多発性骨髄腫
・未知のまたは非AL型のアミロイドーシス
・限局性ALアミロイドーシス(アミロイド沈着物は、その臓器内のクローン性増殖性疾患に関連して、典型的な単一の臓器、例えば、膀胱または喉頭に限定される)
・重要なアミロイド関連臓器症候群(例えば、孤立手根管症候群)がない場合の軽微なまたは偶発的なALアミロイド沈着。
・NYHAクラスIIIまたはIVの心不全
・正常値の上限を1.5倍上回るビリルビンを生じるアミロイドによる肝障害
・外科的に切除された皮膚の基底細胞癌または他の上皮内癌を除く同時発生型悪性腫瘍
・妊娠中、授乳中、または適切な避妊具を使用しようとしない
・いずれの治験薬に対する不耐性/感受性
・既知の陽性ヒト抗マウス抗体またはヒト抗マウス免疫グロブリン抗体(HAMA)
・書面によるインフォームド・コンセントを提供できない
・別のIMP試験に参加
【0100】
試験の評価
治療-来院1回目
線量測定およびイメージング
RIC投与前の患者への前投薬
動物由来の抗体を投与されている患者は、特定の種に対する抗体、例えば、HAMAが欠如している場合でも、発熱、悪寒、筋肉痛などの症状を呈する場合がある。抗CD66の累積臨床経験は、抗体の注入による副作用はまれであり、10,000回の注入あたり0.5~1.0回で発生すると報告されていることを示す。
【0101】
蘇生施設は、すぐに利用できなければならない;これには呼吸補助用の装置-酸素の供給、換気、マスクおよび袋が含まれる。アドレナリンが利用可能であり、かつ投与の準備ができている必要がある。
【0102】
4mgのクロルフェニラミンと1gのパラセタモールとの双方からなる放射性標識抗CD66を経口投与する30~60分前に、すべての被験者は事前投薬を受け、重大な症状が発生しない限り、ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン)の使用は避けられ、その場合、50~100mgのヒドロコルチゾンが投与されることになる。放射性標識抗CD66の使用が大多数の被験者の症状と関連している場合、前投薬の一部としてのステロイドの使用が調査されることになる。
【0103】
[111In]標識RICの投与および線量測定(幹細胞採取後2~4週間)-製剤A
約185MBqの少量のイメージング用量の[111In]標識抗CD66が与えられる。
【0104】
治療-来院2回目
[90Y]標識RICの投与(14日目)
標識抗CD66の注入は、線量測定の少なくとも1週間後に行うべきであり、中心静脈ラインを介して、または挿入されていない場合は、末梢カニューレを介して行われることになり、その際、初期注入速度は、最初の5分間、5mg/時であり、許容される場合、速度は10mg/時まで上げてもよい。被験者が喉の圧迫感、呼吸困難、ひどい悪寒、またはまひなどの重大な症状を呈した場合、速度を下げるか、または注入を中止する必要があり得る。注入が完了したら、ラインに10~20mlの生理食塩水が流されることになる。
【0105】
これらの注入速度では、合計2mgの標識抗体は、注入に12分かかることになる。
【0106】
治療-来院3回目(7日目から[90Y]後0日目)
患者は、調査され、予防的抗生物質(シプロフロキサシン250mg bd、アシクロビル400mg bdおよびフルコナゾール100mg od)で開始されることになる。
【0107】
自家幹細胞の再注入(0日目)
すべての患者は、必要に応じて入院治療施設または外来治療施設を使用して移植センターで移植されることになる。同じ[90Y]抗CD66を使用した第I相および第II相の試験の経験に基づくと、患者の末梢血球数は、[90Y]注入後7日目から低下し、8日目~10日目で最低に達すると予測される[移植前6日目~4日目と同等]。患者は、まだ入院患者として治療を受けていない場合、入院することになる。幹細胞移植後(0日目)、彼らは、有害事象および追加の抗生物質または血液製剤の適切な必要性について、試験チームによって毎日評価されることになる。患者は、十分な造血生着および感染からの回復の後で、かつ血液製剤の支援とは無関係の場合、退院することになる。患者は、退院後30日目および100日目に追跡調査されることになる。試験の追跡調査は、100日目に終了し、追跡調査は、標準的な医療行為に従って試験外に続行されることになる。
【0108】
疾患の再発または進行までの時間および次の治療までの時間は、試験の範囲内での正式な評価の一部として含まれないことになる。しかしながら、ALアミロイドーシスのためにASCTを受けている全ての患者は、彼らの参照コンサルタントによって定期的に長期の追跡調査を受け、また定期的に調査される。
【0109】
結果
高用量メルファランおよびその後のASCTで治療され、再発した最初の3人のALアミロイドーシス患者は、111In標識製剤による適切な線量測定の後、30MBq/kgの90Y標識製剤で治療された。
【0110】
3人の患者は90Y標識製剤によるコンディショニング中に副作用を示さず、重篤な有害反応(SAES)または予期せぬ重度の有害反応(SUSAR)も見られなかった。3人の患者全員において、クローン遊離軽鎖の低下が観察された。ある場合には、FLCの持続的な正常化およびALアミロイドーシスの臨床症状および疾患パラメータの改善を伴う完全奏効が見られた。試験は、データおよび安全委員会によって次の注入活性レベルまで継続することが承認された。
【0111】
これらの発見は、絶対的にユニークでかつ予想外のことである。副作用を伴わずにFLCの減少が示すように疾患の退縮を誘発することは、顕著な結果であり、これはALアミロイドーシスを患っている患者に大きな利益をもたらす。
【0112】
図7は、30MBq/kgの用量でRIC治療を受けた患者の経時的な血清遊離軽鎖の濃度を示す。ALアミロイドーシスの信頼できるバイオマーカーであるFLC濃度は、1ヶ月以内に80mg/lから約25mg/lに減少する。FLCレベルは、数ヶ月間、10~30mg/l(健康なヒトの典型的な値)に維持される。1人の患者が完全奏効を呈したが、これは遊離軽鎖の正常化、骨髄生検および最小の残存疾患の判定によって分析された。患者は、移植後15ヶ月間にわたり生化学的な完全奏効にあった。
【0113】
他の2人の患者もRIC治療後にFLCレベルの顕著な減少を示した。