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特許7580924テラヘルツ波カメラシステム、入出管理装置、テラヘルツ波カメラシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】テラヘルツ波カメラシステム、入出管理装置、テラヘルツ波カメラシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3581 20140101AFI20241105BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01N21/3581
G01N21/17 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020036119
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139682
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇広
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰史
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190951(JP,A)
【文献】特開2005-024378(JP,A)
【文献】特表2007-517275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0158571(US,A1)
【文献】特開2000-310600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0208113(US,A1)
【文献】特開2005-265793(JP,A)
【文献】米国特許第07164932(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第105891900(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 22/00-22/04
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波の発信部と、前記テラヘルツ波を受信する受信部と、前記受信部に設けられたレンズ部とを有するテラヘルツ波カメラシステムであって、
前記テラヘルツ波カメラシステムは、第1側面と、前記第1側面に対向する第2側面との間の通路を通過する被写体を撮影するように配されており、
前記発信部は、前記第1側面を構成する柵、壁、改札、又はゲートに配されており、
前記受信部は、前記通路の内部に配されており、
前記被写体は、秘匿物と、前記秘匿物を覆う被覆物と、を有し、 前記第1側面及び前記第2側面に交差し、且つ前記被覆物の表面の少なくとも一部を含む第1面と、
前記第1側面及び前記第2側面に交差し、前記レンズ部を含み、且つ前記第1面と平行な第2面とをとったときに、
前記第2面において、前記第1面にて反射した前記発信部からの前記テラヘルツ波が照射される第1領域と、前記レンズ部とが異なる位置に配されており、前記レンズ部は、前記秘匿物にて反射した前記発信部からの前記テラヘルツ波が照射される領域に配されていることを特徴とするテラヘルツ波カメラシステム。
【請求項2】
前記第1面は前記第1側面及び前記第2側面に垂直で交わり、
前記発信部が発するテラヘルツ波の指向軸と前記第1面とがなす角の大きさと、前記レンズ部の光軸と前記第1面とがなす角の大きさが異なることを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波カメラシステム。
【請求項16】
第2発信部を有し、
前記第2発信部は、前記第2側面を構成する柵、壁、改札、又はゲートに配され、
前記第2発信部は、前記通路を挟んで前記発信部と対向する位置に配されていることを 特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のテラヘルツ波カメラシステム。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のテラヘルツ波カメラシステムが設けられた入出管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波カメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波は服や包装などの物質に対して透過性を示すことが知られている。このような特性を有するテラヘルツ波をカメラシステムに用いることが検討されている。
【0003】
テラヘルツ波を使用したカメラシステムにはパッシブ型カメラシステムとアクティブ型カメラシステムとが存在する。パッシブ型カメラシステムは対象物が発するテラヘルツ波を受信するセンサを有するカメラから成るシステムである。アクティブ型カメラシステムでは、テラヘルツ波を観察対象物に照射し、反射したテラヘルツ波を使用してイメージングを行う。特許文献1には、テラヘルツ波を使用したアクティブ型カメラシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-087725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、アクティブ型カメラシステムによって、服や包装などを透過させてその内部を観察する際に、次のような課題を見出した。それは、服や包装などの表面で反射したテラヘルツ波がノイズとなり、テラヘルツ画像の画質を低下させる要因となりうることである。
【0006】
そこで、本発明の目的は、アクティブ型テラヘルツ波カメラシステムの画質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、テラヘルツ波の発信部と、前記テラヘルツ波を受信する受信部と、前記受信部に設けられたレンズ部とを有し、通路に配置されるテラヘルツ波カメラシステムであって、前記通路の進行方向に交差し、且つ被写体の表面である第1面と、前記通路の進行方向に交差し、前記レンズ部を含み、且つ前記第1面と異なる位置に第2面とをとったときに、前記第2面において、前記第1面にて反射した前記発信部からの前記テラヘルツ波が照射される第1領域と、前記レンズ部とが異なる位置に配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るテラヘルツ波カメラシステムによれば、高画質なテラヘルツ画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図2】(a)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図3】(a)第2実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第2実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(c)第2実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図4】(a)第3実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第3実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図5】(a)第3実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第3実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図6】(a)第4実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第5実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図7】(a)第6実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第6実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図8】(a)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図9】(a)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図、(b)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
図10】(a)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムの変形例を説明するための模式図、(b)第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムの変形例を説明するための模式図。
図11】第1実施形態のテラヘルツ波カメラシステムの制御方法を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は本発明を限定するものでない。各実施形態は適宜、組み合わせが可能である。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
ここで、テラヘルツ波について説明する。テラヘルツ波は、典型的には0.1THzから30THzの範囲のうち、任意の周波数帯域を有する電波である。テラヘルツ波は、可視光や赤外光と比較して波長が長いため、被写体からの散乱の影響を受け難く、多くの物質に対し強い透過性を有している。また、テラヘルツ波は、ミリ波と比較して波長が短いため、高い空間分解能を得ることができる。これらの特徴を活かし、テラヘルツ波はX線に替わる安全なイメージング技術への応用が期待されている。応用が期待されるイメージング技術とは、具体的には、公共の場所でのボディチェックや監視カメラ等である。以下、応用が期待されるボディチェックや監視カメラに適用可能なテラヘルツ波カメラシステムについて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態のテラヘルツ波カメラシステム100を、図1図2図8図9を用いて説明する。まず、カメラシステム100がボディチェックや監視カメラ等に使用される場合を説明する。
【0013】
ボディチェックや監視カメラ等では、被写体を撮影し、被覆物の下に秘匿物を有するか否かを確認することが求められる。被覆物は、例えば衣服、梱包等であり、秘匿物は、例えば銃火器や爆発物等の危険物、装飾品や宝飾品、スマートフォン等の小型装置である。本発明者らは、詳細な検討によって、テラヘルツ波カメラシステムにおいて取得される画像は、複数の反射テラヘルツ波に基づく像が重畳した画像となることを見出した。
【0014】
テラヘルツ波を含む電磁波に関して次の特性がある。その波長と同等かその波長よりも小さい凹凸構造に電磁波を照射すると、電磁波は凹凸構造の表面で散乱されず正反射する。つまり、ある電磁波にとって、その波長よりも小さい凹凸構造は鏡面となりうる。例えば、人体の皮膚表面の凹凸構造や金属表面の凹凸構造は、テラヘルツ波の波長よりも小さい。従って、テラヘルツ波にとって人の皮膚表面や金属表面は鏡面となりうる。また、衣服に使用される布材料や、段ボールや封筒等の梱包材に対し、テラヘルツ波の一部は透過し、テラヘルツ波の一部は反射する。従って、被覆物としての衣服下に物体を秘匿した人物をテラヘルツ波で観察する場合、衣服での反射テラヘルツ波に基づく像と、物体での反射テラヘルツ波に基づく像と、人物での反射テラヘルツ波に基づく像とが重畳してしまう。
【0015】
図8(a)は、本実施形態を説明するための、複数のテラヘルツ波反射像が重畳することを説明するためのイメージ図である。被写体892は、被覆物893の下に物体(例えば秘匿物894)を持つ人物であるとする。この場合、撮影される領域は、領域893であり、得られるテラヘルツ画像は、画像891となる。画像891は、被覆物893由来の像と、秘匿物894由来の像、および人物の皮膚表面由来の像などが重畳された像になっている。秘匿物894に着目した場合、秘匿物894の像に秘匿物894以外の像が重畳しているため、秘匿物894の識別が困難になる可能性がある。
【0016】
図9(a)は、本実施形態を説明するための、複数のテラヘルツ波反射像が重畳することを説明する模式図である。図9(a)は、反射像が重畳する場合の一例を示している。図9(a)では、被写体892と、発信部101と、受信部102が示されている。
【0017】
被写体892は、図8(a)に示したように秘匿物894と被覆物893を有する。被覆物893は、図9(a)に示すように、X方向において秘匿物894と発信部101との間に位置する。図9(a)において、テラヘルツ波107と、反射テラヘルツ波111a、反射テラヘルツ波111bは、それぞれの指向軸を示したものである。テラヘルツ波の指向軸については後述する。
【0018】
図9(a)に示すように、発信部101はテラヘルツ波107を放射する。テラヘルツ波107の多くは被覆物893を透過し、秘匿物894の表面894aで反射する。また、テラヘルツ波107の一部は被覆物893の表面893aで反射する。テラヘルツ波107は、反射テラヘルツ波111aと反射テラヘルツ波111bとなり、受信部102にて受信される。ここで、テラヘルツ波107は、その全部が反射、透過するものに限定されず、一部が反射や透過してもよい。また、テラヘルツ波107の一部は、減衰してもよく、被覆物893や秘匿物894に吸収されてもよい。
【0019】
受信部102にて受信されるテラヘルツ波は、反射テラヘルツ波111aと反射テラヘルツ波111bである。反射テラヘルツ波111aは、被覆物893の情報を有する。反射テラヘルツ波111bは、秘匿物894の情報を有する。受信部102がこれら2つの反射テラヘルツ波が受信可能な位置に設けられてしまうと、画像891は、被覆物893等のノイズとなる情報を含む不鮮明な画像となってしまう。秘匿物894に着目した画像を取得するためには、受信部102が反射テラヘルツ波111bのみを受信することが望ましい。
【0020】
図9(b)は、本実施形態を説明するための模式図であり、図9(a)に対応している。図9(b)では、受信部102の位置を図9(a)に示す位置からずらしている。ここでは、説明のため、ある1つの方向であるZ軸方向にのみずらした場合を説明する。このように配置することで、受信部102が受信する望まない反射テラヘルツ波111aが低減し、ノイズの少ない画像を取得することが可能となる。説明では、1つの方向のみに移動させているが、それに限定されるものではなく、任意の方向に移動することができる。
【0021】
より詳細に説明する。図9(a)では、受信部102は秘匿物894の中心線(点線)に対してZ軸方向に距離D1だけ離れて位置している。一方、図9(b)では、受信部102は秘匿物894の中心線(点線)に対してZ軸方向に距離D2だけ離れて位置している。ここで、距離D1<距離D2である。受信部102が受信する望まない反射テラヘルツ波111aが低減するように、受信部102を配置することで、ノイズの少ない画像を取得することが可能となる。
【0022】
ここで、テラヘルツ波について説明する。テラヘルツ波は、図8(b)のような広がりを有する電磁波である。図8(b)は、複数の発信部104a~104dと、複数の発信部104a~104dから放射されるテラヘルツ波807a~807dを示している。テラヘルツ波807a~807dは、ビームパターンを示している。ビームパターンとは放射パターンとも称する。発信部104aはテラヘルツ波807aを放射し、発信部104bはテラヘルツ波807bを放射する。発信部104cはテラヘルツ波807cを放射し、発信部104dはテラヘルツ波807dを放射する。ここで、各テラヘルツ波807a~807dの指向軸をテラヘルツ波107a~107dとして示している。上述のように、他の図面にて示したテラヘルツ波107a、107bは指向軸を示したものである。指向軸とは、発信部からのテラヘルツ波の指向特性の中心軸である。指向軸は、例えば、発信部から最も高い強度のテラヘルツ波が放射される方向を示す直線である。指向軸は、照射中心軸とも称することができる。指向軸は、例えば、次のように求めることができる。発信部の重心を中心とした、異なる半径の同心球を複数作成する。そして、各球面においてテラヘルツ波の強度が高い位置をとり、それらを結ぶことで指向軸を求めることができる。また、指向軸はシミュレーションで求めることもできる。また、隣接するテラヘルツ波807a~807dが一部、重畳していてもよい。
【0023】
本実施形態のカメラシステム100を具体的に説明する。図1(a)、図1(b)、図2(a)、図2(b)は、カメラシステム100を説明するための模式図である。図1(a)は、カメラシステム100の上面模式図であり、X軸とY軸を含む面に平行で、Z軸に垂直に交わる面に各部材を投影した模式図でもある。図1(b)はカメラシステム100の正面模式図であり、X軸とZ軸を含む面に平行で、Y軸に垂直に交わる面に各部材や各領域を投影した模式図でもある。図1(b)は、Y軸方向からみた各部材の投影模式図ともいえる。図2(a)は模式的な斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に対応した模式的な斜視図であり、ある物体を撮像した場合を説明するための模式図である。以降の説明において、図毎に説明を行うが、図1(a)~図2(b)は相互に参照されるものとする。また、各図面において、その説明に用いない構成を表示しない場合がある。
【0024】
カメラシステム100は、発信部104と、受信部105とを有する。カメラシステムは、更に、レンズ部106と、制御部120とを有する。発信部104は、テラヘルツ波107を発する。受信部105は、テラヘルツ波107に基づく反射テラヘルツ波111を受信する。カメラシステム100は、アクティブ型のテラヘルツ波カメラシステムである。
【0025】
カメラシステム100は、通路103に設置される。通路103は、領域101と、領域102との間に形成される。領域101と通路103との間を境界101aとし、領域102と通路103との間を境界102aとする。例えば、領域101と領域102は、通路を構成するためのロープ、柵、壁、改札、ゲート等でありうる。境界101a、102aは、例えば、床などにひかれた線、壁の面、柵や改札やゲートの側面等でありうる。通路103は、人や検査物などの観察対象、すなわち被写体が通過することを想定しており、その進行方向は方向109である。通路103の進行方向109は、境界101aと境界102aとを結ぶ線分において等距離となる点を結ぶ線である。通路103は、幅240を有する。幅240は、境界101aと境界102aとを結ぶ線分である。
【0026】
発信部104は、図1(a)~図2(b)において、点光源として描かれているが、面光源や点光源が複数集合されているものでも構わない。発信部104は、0.1THz以上30THz以下、より好ましくは0.1THz以上10THzの周波数範囲から選択されたテラヘルツ波を発するものである。発信部104は、負性抵抗を有する半導体素子を使った共振回路や、逓倍器などで構成することができる。負性抵抗を有する半導体素子とは、RTD(Resonant Tunnneling Diode)、IMPATT(IMpact Avalanche and Transit Time)ダイオード、GUNNダイオードなどである。本実施形態では、発信部104としてRTDを用いる。RTDにて、0.3THzの周波数であって、約1mmの波長をもったテラヘルツ波が発生するものとする。テラヘルツ波はアンテナなどを用いて放射される。
【0027】
受信部105は、テラヘルツ波に感度を有するボロメータアレイや、整流回路などの検波回路を有するアンテナアレイなどによって構成することができる。ボロメータとは、例えば、テラヘルツ波を熱に変換して抵抗値変化として検出する素子である。アンテナとは、パッチアンテナやループアンテナと、ショットキーバリアダイオードなどの整流回路や検波回路とを有する受信素子である。受信部105には、これら受信素子が2次元に配されている。また、受信部105は、信号出力のための回路を有する。受信部105は、例えば、1秒間に約50枚の2次元の信号情報が出力可能である。
【0028】
レンズ部106は、受信部105に設置されており、テラヘルツ波の集光が可能である。レンズ106は、テラヘルツ波をよく透過するシリコンやゲルマニウムなどの無機材料や、ポリエチレンなどの有機材料などから構成することができる。レンズ106は、一般の可視光領域で使用されると同様の方法を用いて設計することができる。レンズ部106は、フォーカス機能を有していてもよい。レンズ部106の焦点は、受信部105の受信素子に位置し、受信素子に結像できるように調整されている。
【0029】
制御部120は、例えば、発信部104へ制御信号を供給する。制御部120は、例えば、受信部105の受信動作を制御すること、受信部105が受信したテラヘルツ波に基づく信号を取得することができる。制御部120は、物理的に1つの装置であってもよく、発信部104に対応した装置と、受信部105に対応した装置を含む複数の装置からなっていてもよい。
【0030】
図1(a)~図2(b)を用いて、カメラシステム100の配置について説明する。まず、発信部104は通路103の外側に配され、受信部105は通路103の内部に配されている。言い換えると、図1(a)において、発信部104は領域101に配され、受信部105は通路103に配されている。発信部104と受信部105の配置は、本発明の概念の一部を紹介するものであり、様々に変更することが可能である。
【0031】
ここで、配置について説明するために、複数の面108、112を用いて説明する。図1(a)の面108は、仮想的な面であり、方向109に交差し、通路103のいかなる場所にも配置されるものとする。面108は、被写体の表面を示すものである。図1(a)の面112は、方向109に交差し、レンズ部106を交差するように配置される。面112は、レンズ部106を含む面であるともいえる。また、図1(b)の面114は、例えば、床である。面108と面112は、互いに平行であり、境界101aと境界102aと垂直に交わり、方向109に垂直で交わるものとする。境界101aと境界102aは、面114に対して垂直である。面108および面112は面114に垂直であるものとする。これらの関係は、垂直や平行に限らす、適宜、変更可能である。
【0032】
まず、図1(a)を用いて説明する。発信部104はテラヘルツ波107を発する。図1(a)に示されるテラヘルツ波107は、テラヘルツ波の指向軸である。テラヘルツ波117は放射パターンを示している。テラヘルツ波107は、面108に向かって放射され、面108で反射する。すなわち、テラヘルツ波107は、被写体に向かって発せられ、被写体の表面で反射する。面108におけるテラヘルツ波107が照射された領域を領域110とする。反射したテラヘルツ波107は、反射テラヘルツ波111となる。図1(a)に示される反射テラヘルツ波111は、テラヘルツ波の指向軸である。テラヘルツ波118は反射テラヘルツ波の放射パターンを示している。面112におけるテラヘルツ波111が照射された領域を領域113である。レンズ部106は、面112に位置し、領域113に含まれているようにも見える。
【0033】
本実施形態において、発信部104は、その放射するテラヘルツ波が面108にP波で入射するように、配置される。例えば、テラヘルツ波が面114に対して平行な方向に偏波面を持つように発信部104が配される。面108にP波で入射することで、被写体205が人である場合には、人の纏っている衣服からの反射を低減もしくは限りなく少なくすることができる。衣服の持つ屈折率から決定されるブリュースター角に一致する場合には、衣服からの反射は全くなくなる。そのようにすることで、被写体205である人の衣服の下に隠れた異物などを撮像することが容易となる。
【0034】
ここで、図2(a)を用いてテラヘルツ波107と反射テラヘルツ波111について説明する。テラヘルツ波107は、放射パターンにおいて最も強度を有する方向である指向軸である。テラヘルツ波117は、放射パターンを示した線分であり、指向軸における強度の半分の値を有する方向と指向軸とがなす半値角θ116が形成する立体角ωの外縁を結んだ線分である。ここで、テラヘルツ波107と面108とがなす入射角と、反射テラヘルツ波111と面108とがなす反射角とが等しくなる。すなわち、テラヘルツ波107は面108において正反射をする。
【0035】
図1(b)を用いて、各領域や構成の位置関係を説明する。図1(b)は、Y軸方向からみた各構成の投影図である。テラヘルツ波107は、発信部104からテラヘルツ波107は、面108に照射され領域110を形成する。点110aは、面108におけるテラヘルツ波107の位置であり、テラヘルツ波107の中で強度が高くなりうる位置である。テラヘルツ波107は面108で正反射され、面112に照射され領域113を形成する。点113aは、面112における反射テラヘルツ波111の位置であり、反射テラヘルツ波111の中で強度が高くなりうる位置である。領域115は、受信部105が検出可能な範囲を示している。領域110は、領域115の一部を含むように設定される。面112はレンズ部106を含むように設けられており、領域230は、面112がレンズ部106と交差する領域である。
【0036】
図1(b)に示すように、領域230は、少なくとも点113aを含まない。つまり、レンズ部106は、反射テラヘルツ波111の点113aを含まないように配置されている。このような配置によって、受信部105が受信する、被写体の表面に位置する被覆物等の情報を含む反射テラヘルツ波111を低減することができる。よって、ノイズが低減された画像を取得することができる。更に、領域230は、領域113と重畳しない。領域113は、領域230を包含しないともいえる。レンズ部106は、反射テラヘルツ波111の強度の高い領域を含まないように配置されている。このような配置によって、受信部105が受信する、被写体の表面に位置する被覆物等の情報を含む反射テラヘルツ波111を低減することができる。よって、よりノイズが低減された画像を取得することができる。なお、発信部104と受信部105との距離は、0.25m以上3.0m以下、より好ましくは、0.50m以上2.0m以下である。
【0037】
詳細には説明しないが、カメラシステム100の設計方法は次のようになる。任意の通路、あるいは装置に、発信部を設ける位置および向きと、受信部を設ける位置および向きとを適宜選択する。ここで、面108と面112と仮で設け、反射テラヘルツ波の軌跡をシミュレーションする。そして面112において、受信部と反射テラヘルツ波が形成する領域とが重畳しないように、発信部と受信部の位置や向きを調整する。このような手法によって、好適なカメラシステム100が設計可能である。
【0038】
図2(b)は、図2(a)に被写体を設けた場合を示している。本実施形態において、被写体は、立体的な形状を持つ観察物質235である。観察物質235は、球状に描画されているがいかなる形状を持っていてもよい。観察物質235は領域110の内側に位置し、領域115の内側に位置するものとする。
【0039】
テラヘルツ波107は、観察物質235にて反射され、面112において領域236を構成する。領域236が領域113と異なる形状となるのは、観察物質235が立体的な形状を有するためである。領域230は、領域236と重畳し、少なくとも点113aと重畳しない。更に、領域230は、領域236と重畳し、領域113と重畳しない。領域230が領域236と重畳することは、受信部105において観察物質235の像を取得できることを意味する。また、領域230は少なくとも点113aと重畳しないことで、ノイズとなる情報を低減することができる。例えば、面108が布などの被覆物である場合には、布からの反射テラヘルツ波111は受信部105にて検出されず、観察物質235の像のみを取得できる。
【0040】
また、発信部104が発するテラヘルツ波107と面108とがなす角と、レンズ部106の光軸と面108とがなす角の大きさが異なる。このような構成によって、領域113と領域230が重畳しないようにすることができる。
【0041】
ここで、面108について詳細に説明する説明する。まず、上述のように、面108は、図1(b)の面114に垂直かつ、方向109に対して垂直に設けられているものとした。通路103を通過する被写体がおおむね面108に平行な面を有する確率が高い場合に、このような設定が有効である。
【0042】
例えば、人物が通路103を通過する場合において、人物の表面は、曲面で構成されているように平均的には面108と平行な面とみなすことができる。人物の表面を構成する面は、平均的には面108と平行な面で構成されている割合が高い。また、携行品や服などに被覆された秘匿物は、人体とは異なる形状をしているため、面108とは異なる方向に垂線を有する面を有することが多い。そのような面において、反射した反射テラヘルツ波は検出部105にて検出可能である。従って、人物が通路103を通過する場合においても、面108の設定を適用することができ、カメラシステム100によって人物の表面や衣服の表面からの反射テラヘルツ波の多くを受信することを低減することができる。つまり、カメラシステム100によって、ノイズを低減した画像を取得することが可能となる。
【0043】
また、例えば、封筒といった検査物が通路103を通過する場合において、封筒の表面は、平均的には面108と平行な面とみなすことができる。従って、このような場合においても、面108の設定を適用することができ、カメラシステム100によって封筒の表面からの反射テラヘルツ波の多くを受信することを低減することができる。つまり、カメラシステム100によって、ノイズを低減した画像を取得することが可能となる。
【0044】
次に、面108について更に説明を行う。面108は、通路103でもレンズ部106がピントを合わせることが可能な範囲で設定することが望ましい。しかし、ピントの合う範囲外に面108を設定してもよい。また、面108と方向109がなす角度を調整してもよく、半値角θ116の設定を半値から1/e(e:ネイピア数)に変更することもできる。被写体の種別に応じて調整することができる。
【0045】
発信部104が放射するテラヘルツ波について、説明する。上述したように、発信部104が放射するテラヘルツ波は、偏波を有してもよい。その場合には面108、すなわち被写体205の表面に相当する面に対して、P波で入射するようにするとよい。面108にP波で入射することで、表面における反射テラヘルツ波を低減もしくは限りなく少なくすることができる。
【0046】
更に、発信部104が放射するテラヘルツ波は、偏波方向が異なる複数の偏波を有してもよい。また、発信部104が放射するテラヘルツ波は、直線偏波、あるいは円偏波の少なくともいずれかを有していてもよい。面108に対して、P波とS波で入射するように、あるいはP波とS波が交互に入射するようにしてもよい。このような構成によって、被写体205が衣服を着た人物である場合においては、次のような効果が得られる。S波を用いて取得した像は、被覆物、例えば衣服に関する成分を多く含む。P波を用いて取得した像は、被覆物の下、例えば衣服の下の秘匿物に関する成分を多く含む。S波を用いて取得した像と、P波を用いて取得した像との双方の像を使用することで、被写体205の秘匿物を抽出することが可能となる。双方の像を使用するとは、適宜、合成や差分処理を行うなどの画像処理を意味する。
【0047】
ここで、カメラシステム100の制御方法を、図11を用いて説明する。図11は、制御方法のフローチャートである。ステップS1101において、発信部104と受信部105と面108を設置する。発信部104と受信部105と面108の位置、向きを任意の位置、向きに設定する。ステップS1102において、面108に向かって発信部104からテラヘルツ波を照射し、反射テラヘルツ波を受信部105で受信する。受信部105から出力された信号を、制御部120(図1参照)などで処理する。処理としては、ステップS1103に示す、反射テラヘルツ波の指向軸情報が像に含まれるか否かを判定する。指向軸情報が像に含まれるとは、面112における反射テラヘルツ波の指向軸が形成する領域に基づく情報が受信されていることを意味する。含まれている場合には、ステップS1106に進み、発信部104と受信部105の位置および向きの少なくとも1つを変更する。そして、ステップS1102へ戻る。含まれていない場合には、ステップS1104に進み、面108を除去し、本撮影等の動作を開始する(ステップS1105)。なお、ステップS1106において、位置や向きを変更する場合には、発信部104と受信部105が駆動部を実装し、制御部120が動作を制御する制御信号を供給することで実現できる。なお、駆動部については、可視光の監視カメラ等で持ちられている手法を適用することができる。
【0048】
次に、図10を用いて、カメラシステム100の変形例を説明する。まず、図10(a)は、図1(a)に対応した模式図である。図10(a)において、図1(a)の要部以外の構成は省略されている。図10(a)の通路103は、例えば改札や入出ゲートといった入出管理装置である。領域101と領域102は壁であり、壁にゲート1001、ゲート1002が設けられている。壁には入出を管理する管理部1003が設けられている。管理部1003は、カードなどの検出機、指紋センサ、静脈センサ、顔認証システムなどである。ここで、面108は、ゲート1001とゲート1002に重畳する位置から、通路103の端部までの任意の位置に設置できる。例えば、面108は、通路103の端部である面1004であってもよい。
【0049】
また、図10(b)は、図1(a)に対応した模式図である。図10(b)において、図1(a)の要部以外の構成は省略されている。図10(b)の通路103は、例えば入出ゲートといった入出管理装置である。入出ゲートは例えば、自動ドアや扉でありうる。領域101と領域102は壁である。壁には入出を管理する管理部1003が設けられている。管理部1003は、カードなどの検出機、指紋センサ、静脈センサ、顔認証システムなどである。ここで、面108は、通路103の端部に位置している。足跡1004で示す停止位置において、被写体が停止するため、面108における撮影が容易である。面108は、足跡1004の端部と一致していてもよい。このような場所あるいは装置に、本実施形態のカメラシステム100を適用することが可能である。
【0050】
(第2実施形態)
本実施形態のテラヘルツ波カメラシステム200を、図3を用いて説明する。本実施形態では、第1実施形態に比べて、発信部104を複数設けた点が異なる。図3(a)は、カメラシステム200の上面模式図であり、X軸とY軸を含む面に平行で、Z軸に垂直に交わる面に各部材や各領域を投影した場合を示す模式図でもある。図3(b)はカメラシステム200の正面模式図であり、Y軸方向に観た場合の模式図である。図3(c)は、Y軸とZ軸を含む面に平行で、Y軸に垂直に交わる面、例えば面112に各部材や各領域を投影した模式図である。図3(c)は、Y軸方向からみた各部材や各領域の投影模式図ともいえる。以降の説明において、図3(a)~図3(c)は相互に参照することができる。また、各図面において、その説明に用いない構成を表示しない場合がある。また、図3(a)~図3(c)において図1(a)~図2(b)にて説明した構成については、説明を省略する。
【0051】
図3(a)および図3(b)は、通路103を被写体205が通過する場合を示している。通路103は、境界101aと境界102aの間に設けられている。通路103を構成するための台200aが領域101に設けられ、通路103を構成するための台200bが領域102に設けられている。台200aの上には、受信部105とレンズ部106が配され、台200bの上には発信部104a、発信部104bが配されている。第1実施形態とは、発信部104と受信部105の位置が通路103を基準に入れ替わっているが、構成に変化はないものとする。
【0052】
図3(a)の領域204は、レンズ部106の画角203となる範囲内であって、レンズ部106のピントが合う範囲である。領域204は、レンズ部106の被写界深度の範囲でも良いし、オートフォーカスが可能な範囲でも良い。本実施形態では、受信部105から0.50m以上3.0m以下を想定している。撮像は、領域204でなされるものとする。
【0053】
面206は、第1実施形態における面108に相当し、通路103内に位置し、領域204上に位置する。面207は、面206と同様に第1実施形態における面108に相当し、通路103内に位置し、領域204内に位置する。面206および面207は、面114に対し垂直な面であり、かつ方向109に対して垂直である。通路103を通過する被写体205は、例えば人物である。第1実施形態で説明したように、人物の表面は、人物の正面方向、すなわち方向109に垂直な面の成分が多い。よって、面206と面207は面114に対し垂直な面であり、かつ通路103での方向109に対して垂直であるようにすることが適している。もちろん被写体205に合わせて面206と面207の角度を調整することができる。
【0054】
発信部104aが発するテラヘルツ波の指向軸と、発信部104bが発するテラヘルツ波の指向軸は、面114に対して平行になっているが、これに限定されない。
【0055】
通路103の幅240は、被写体205の動作を制限し、方向109を決定するのに重要な値である。本実施形態では被写体205として人物の場合を想定しているが、車いすやベビーカーなどを使用している場合や複数の人物が通行する場合を鑑みて、0.5m以上3m以下の範囲を取ることができる。
【0056】
例えば、被写体205が面206に位置する場合に撮影する場合について説明する。発信部104aから面206に向かってテラヘルツ波が放射される。面206にて反射されたテラヘルツ波が面112に照射される。第1実施形態と同様に、面112における反射テラヘルツ波が形成する領域と、面112におけるレンズ部106との位置関係を調整することで、ノイズを低減することができる。ここで、図3(c)は、図1(b)と同様に、面112に各領域を投影した模式図である。図3(c)には、テラヘルツ波が面206に形成する領域210と、反射テラヘルツ波が面112に形成する領域213と、領域230とが示されている。領域230は点213aと重畳せず、領域230は領域213と重畳しない。このように受信部105、発信部104aの位置、発信部104aが発するテラヘルツ波の指向性の方向を調整することで、ノイズを低減することができる。
【0057】
被写体205が面207に位置する場合に撮影する場合にも、面206と同様であり、受信部105、発信部104bの位置、発信部104bが発するテラヘルツ波の指向性の方向を調整することで、ノイズを低減することができる。発信部104aおよび発信部104bの両方が任意の面に照射される場合においても同様である。
【0058】
発信部104aや発信部104bが放射するテラヘルツ波は、偏波を有してもよい。その場合には面206や面207といった被写体205の表面に相当する面に対して、P偏波で入射するようにするとよい。面206や面207にP偏波で入射することで、表面における反射テラヘルツ波を低減もしくは限りなく少なくすることができる。
【0059】
発信部104aや発信部104bが放射するテラヘルツ波は、偏波方向が異なる複数の偏波を有してもよい。また、発信部104aや発信部104bが放射するテラヘルツ波は、円偏波を有してもよい。面206や面207に対して、P偏波とS偏波で入射するように、あるいはP偏波とS偏波が交互に入射するようにするとよい。例えば、被写体205が衣服を着た人物である場合においては次のような効果が得られる。S偏波を用いて取得した像は、被覆物、例えば衣服に関する成分を多く含む。P偏波を用いて取得した像は、被覆物の下、例えば衣服の下の秘匿物に関する成分を多く含む。S偏波を用いて取得した像と、P偏波を用いて取得した像との双方の像を使用することで、被写体205の秘匿物を抽出することが可能となる。双方の像を使用するとは、適宜、合成や差分処理を行うなどの画像処理を意味する。
【0060】
(第3実施形態)
本実施形態のテラヘルツ波カメラシステム300を、図4および図5を用いて説明する。本実施形態では、第2実施形態に比べて、発信部と受信部の数を増やした点と、受信物の位置と、発信物を通路103の両側に設けた点が異なる。第2実施形態のカメラシステム200は受信部105が1つであり、被写体205の一側面のみを観察している。本実施形態のカメラシステム300は、被写体205の複数の側面を観察することが可能になる。
【0061】
図4(a)は、カメラシステム300の上面模式図であり、X軸とY軸を含む面に平行で、Z軸に垂直に交わる面に各部材や各領域を投影した場合を示す模式図でもある。図4(b)はカメラシステム300の正面模式図であり、Y軸方向に観た場合の模式図である。図5(a)および図5(b)は、側面模式図である。図5(a)と図5(b)は異なるタイミングにおける側面模式図である。以降の説明において、図4(a)~図5(b)は相互に参照することができる。また、各図面において、その説明に用いない構成を表示しない場合がある。また、図4(a)~図5(b)において、これまでに説明した構成については、説明を省略する。
【0062】
図3(a)に示すように、カメラシステム300には、2組のセットが支柱300に設けられている。1つのセットは、複数の発信部301と、レンズ部311を備えた受信部312とを含む。別の1つのセットは、複数の発信部302と、レンズ部321を備えた受信部322とを含む。本実施形態では、各セットの発信部の個数や受信部の個数を等しくしているが、異ならせてもよい。また、各セットの配置についても、あるセットの発信部と他のセットの発信部とが交互に配される等、変更してもよい。支柱300は、通路103を構成する部材であり、通路103を挟んで1組の部材からなる。図3(b)に示すように支柱300は上部300aでつながっている、いわゆるゲート型であるが、上部300aが無くてもよい。本実施形態では、受信部312と受信部322は、上部300aに設置されているが、支柱300に設けられていてもよい。
【0063】
発信部301と、レンズ部311を備えた受信部312とは、進行方向109に沿って通路103を進行する被写体205の正面を観察することができる。発信部302と、レンズ部321を備えた受信部322とは、進行方向109に沿って通路103を進行する被写体205の裏面を観察することができる。このように、複数の発信部と、複数の受信部とを用意することで、被写体205の観察面を増やすことができる。観察面を増やすことで、被写体205が秘匿物などを有する場合の検知確率を向上させることができる。
【0064】
図5(a)は、被写体205が通路103に入り始めたタイミングの側面模式図を示している。発信部301によってテラヘルツ波が照射され、受信部312によって反射テラヘルツ波が受信される。第1実施形態で用いた被写体205の表面である面108と、レンズ部311を含む面として面112は、図5(a)に示す位置であるものとする。この構成によって、被写体205の正面を観察することができる。
【0065】
図5(b)は、被写体205が通路103を通り終わるタイミングの側面模式図を示している。発信部302によってテラヘルツ波が照射され、受信部322によって反射テラヘルツ波が受信される。面108と、面112は、図5(b)に示される位置であるものとする。この構成によって、被写体205の正面を観察することができる。
【0066】
発信部301と発信部302は、図4(b)、図5(a)、図5(b)に示すように、複数個の点光源で構成され、全ての指向軸が平行であり、指向軸は面114と平行である。発信部301と302が発するテラヘルツ波の方向などは、これに限るものではなく、第1実施形態で示した条件を満たすように、発信部301の位置や向きを変更することが可能である。被写体205に対して複数の方向からテラヘルツ波を照射することが望ましい。
【0067】
(第4実施形態)
本実施形態のテラヘルツ波カメラシステム400を、図6(a)を用いて説明する。本実施形態では、第2実施形態に比べて、通路103の幅が変化している点が異なる。図6(a)は、カメラシステム400の上面模式図であり、X軸とY軸を含む面に平行で、Z軸に垂直に交わる面に各部材や各領域を投影した場合を示す模式図でもある。図6(a)は図3(a)に対応する図面であり、図3(a)との差分について説明する。
【0068】
図6(a)において、境界101aはY軸となす角度が0°以上であり、境界102aはY軸となす角度が0°以上である。また、境界101aと境界102aとの距離、すなわち幅241は、方向109に沿って、狭まっている。このように幅241が変化することで、被写体205の動作範囲を制限し、被写体205が受信部105の画角内に収まる時間を長くすることができる。被写体205を撮像する時間が延びることで、被写体205が持つ秘匿物などの検知確率を向上することができる。
【0069】
(第5実施形態)
本実施形態のテラヘルツ波カメラシステム500を、図6(b)を用いて説明する。本実施形態では、第2実施形態に比べて、通路103が湾曲している点が異なる。図6(b)は、カメラシステム500の上面模式図であり、X軸とY軸を含む面に平行で、Z軸に垂直に交わる面に各部材や各領域を投影した場合を示す模式図でもある。図5(b)は、図3(a)に対応する図面であり、図3(a)との差分について説明する。
【0070】
図6(b)において、境界101aと境界102aとの距離、すなわち幅240は一定である。上述したように、通路103の進行方向109は、境界101aと境界102aとを結ぶ線分において等距離となる点を結ぶ線である。この進行方向109が湾曲している。このように、被写体205の進行方向109を変化させることで、カメラ105が被写体205を撮像する角度に変化を与えることができるようになる。つまり、被写体205を様々な角度で観察できるようになり、被写体205が持つ秘匿物などの検知確率を向上することができる。
【0071】
(第6実施形態)
本実施形態のテラヘルツ波カメラシステム600を、図7を用いて説明する。本実施形態では、通路103がベルトコンベヤ700である点が異なる。
【0072】
図7(a)は、カメラシステム600の側面模式図である。本実施形態では、被写体705の上面を面708とする。この時、面708にて反射した反射テラヘルツ波が面112に形成する領域とレンズ部106とが重畳しない。このように、発信部104と受信部105とを配置することで、被写体705の上面の情報を低減した被写体705の像を得ることができる。
【0073】
図7(b)は、カメラシステム600の側面模式図である。図7(b)において、図7(a)と比較して、ベルトコンベヤ700の搬送面を面709とする。この時、面709にて反射した反射テラヘルツ波が面112に形成する領域とレンズ部106とが重畳しない。このように、発信部104と受信部105とを配置することで、ベルトコンベヤ700の搬送面の情報を低減した被写体705の像を得ることができる。
【0074】
なお、本実施形態において、面708と面709とを設定し、それぞれの面で反射した反射テラヘルツ波による領域とレンズ部106とが重畳しないようにしてもよい。ベルトコンベヤ700の上面の情報に加えて、被写体705の被覆物、例えば梱包材などの情報を低減することができる。
【0075】
上述の実施形態に記載のテラヘルツ波カメラシステムによれば、ノイズが低減したテラヘルツ波による情報を取得することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
103 通路
104 発信部
105 受信部
106 レンズ部
108 面
109 進行方向
110 領域
112 面
113 領域
205 被写体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11