IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安川電機の特許一覧

特許7580930処理物製造装置、処理物製造方法、処理物製造装置用プログラム、および、処理物製造システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】処理物製造装置、処理物製造方法、処理物製造装置用プログラム、および、処理物製造システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241105BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C12M1/00 A
B25J13/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020059260
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021153534
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129573
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博正
(74)【代理人】
【識別番号】100158654
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 虎之助
(72)【発明者】
【氏名】夏目 徹
(72)【発明者】
【氏名】松熊 研司
(72)【発明者】
【氏名】山口 栄
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033247(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/125259(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/166800(WO,A1)
【文献】特開2017-023024(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063736(WO,A1)
【文献】特開平06-274213(JP,A)
【文献】比戸将平,人工知能技術のロボット産業応用,日本ロボット学会誌,2017年,Vol. 35, No. 3,pp. 186-190
【文献】KANDA, GN et al.,Robotic search for optimal cell culture in regenerative medicine,eLife,2022年,Vol. 11,pp. 1-25,e77007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
B25J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段と、
前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施手段と、
前記作業の実施の結果を評価する評価手段と、
前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作の修正情報、または、当該基本操作を補足する補足操作の情報を含むプロトコル修正情報を取得するプロトコル修正情報取得手段と、
前記プロトコル修正情報が前記基本操作の修正情報か前記補足操作の情報かの判定に応じて、前記基本操作の修正または前記補足操作の追加をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正手段と、
前記プロトコル修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、前記ロボットが処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段と、
を備え、
前記基本操作は、前記プロトコルを始めに設定する際に、前記作業毎に、ロボットプログラムの基本操作パラメータの値を初期設定することによって特定される操作であり、
前記補足操作は、前記基本操作パラメータ変更することで生成される操作とは異なる操作であり、且つ前記ロボットプログラムに記述されているが固定値になっている値を変更することで生成される操作とは異なる操作であり、
前記基本操作を修正して前記プロトコルを実施しても所定の評価に達しない場合、前記基本操作を補足する前記補足操作の追加をすることにより前記プロトコルが修正される、処理物製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理物製造装置において、
前記補足操作の入力を受け付けるために、前記補足操作を表現した項目表示する表示手段を更に備えることを特徴とする処理物製造装置。
【請求項3】
生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得工程と、
前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施工程と、
前記作業の実施の結果を評価する評価工程と、
前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作の修正情報、または、当該基本操作を補足する補足操作の情報を含むプロトコル修正情報を取得するプロトコル修正情報取得工程と、
前記プロトコル修正情報が前記基本操作の修正情報か前記補足操作の情報かの判定に応じて、前記基本操作の修正または前記補足操作の追加をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正工程と、
前記ロボットが、前記プロトコル修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、処理対象から処理物を製造するように制御する製造工程と、
を含み、
前記基本操作は、前記プロトコルを始めに設定する際に、前記作業毎に、ロボットプログラムの基本操作パラメータの値を初期設定することによって特定される操作であり、
前記補足操作は、前記基本操作パラメータ変更することで生成される操作とは異なる操作であり、且つ前記ロボットプログラムに記述されているが固定値になっている値を変更することで生成される操作とは異なる操作であり、
前記基本操作を修正して前記プロトコルを実施しても所定の評価に達しない場合、前記基本操作を補足する前記補足操作の追加をすることにより前記プロトコルが修正される、処理物製造方法。
【請求項4】
コンピュータを、
生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段、
前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施手段、
前記作業の実施の結果を評価する評価手段、
前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作の修正情報、または、当該基本操作を補足する補足操作の情報を含むプロトコル修正情報を取得するプロトコル修正情報取得手段、
前記プロトコル修正情報が前記基本操作の修正情報か前記補足操作の情報かの判定に応じて、前記基本操作の修正または前記補足操作の追加をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正手段、および、
前記ロボットが、前記プロトコル修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段として機能させ、
前記基本操作は、前記プロトコルを始めに設定する際に、前記作業毎に、ロボットプログラムの基本操作パラメータの値を初期設定することによって特定される操作であり、
前記補足操作は、前記基本操作パラメータ変更することで生成される操作とは異なる操作であり、且つ前記ロボットプログラムに記述されているが固定値になっている値を変更することで生成される操作とは異なる操作であり、
前記基本操作を修正して前記プロトコルを実施しても所定の評価に達しない場合、前記基本操作を補足する前記補足操作の追加をすることにより前記プロトコルが修正される、処理物製造装置用プログラム。
【請求項5】
生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得工程と、
前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施工程と、
前記作業の実施結果を評価する評価工程と、
前記実施結果の評価が所定値以上でない場合、前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作の修正情報、または、当該基本操作を補足する補足操作の情報を含むプロトコル修正情報を取得するプロトコル修正情報取得工程と、
前記プロトコル修正情報が前記基本操作の修正情報か前記補足操作の情報かの判定に応じて、前記基本操作の修正または前記補足操作の追加をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正工程と、
前記プロトコルに基づく前記実施結果の評価が前記所定値以上の場合には、前記プロトコルを使用し、前記プロトコル修正情報に基づき修正されたプロトコルに基づく前記実施結果の評価が前記所定値以上の場合には、前記プロトコル修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、前記ロボットが処理対象から処理物を製造するように制御する製造工程と、
を含み、
前記基本操作は、前記プロトコルを始めに設定する際に、前記作業毎に、ロボットプログラムの基本操作パラメータの値を初期設定することによって特定される操作であり、
前記補足操作は、前記基本操作パラメータ変更することで生成される操作とは異なる操作であり、且つ前記ロボットプログラムに記述されているが固定値になっている値を変更することで生成される操作とは異なる操作であり、
前記基本操作を修正して前記プロトコルを実施しても所定の評価に達しない場合、前記基本操作を補足する前記補足操作の追加をすることにより前記プロトコルが修正される、処理物製造方法。
【請求項6】
ロボットと、前記ロボットを制御する処理物製造装置とを備えた処理物製造システムにおいて、
前記処理物製造装置が、
生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、前記ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段と、
前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施手段と、
前記作業の実施の結果を評価する評価手段と、
前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作の修正情報、または、当該基本操作を補足する補足操作の情報を含むプロトコル修正情報を取得するプロトコル修正情報取得手段と、
前記プロトコル修正情報が前記基本操作の修正情報か前記補足操作の情報かの判定に応じて、前記基本操作の修正または前記補足操作の追加をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正手段と、
前記プロトコル修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、前記ロボットが処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段と、
を有し、
前記基本操作は、前記プロトコルを始めに設定する際に、前記作業毎に、ロボットプログラムの基本操作パラメータの値を初期設定することによって特定される操作であり、
前記補足操作は、前記基本操作パラメータ変更することで生成される操作とは異なる操作であり、且つ前記ロボットプログラムに記述されているが固定値になっている値を変更することで生成される操作とは異なる操作であり、
前記基本操作を修正して前記プロトコルを実施しても所定の評価に達しない場合、前記基本操作を補足する前記補足操作の追加をすることにより前記プロトコルが修正される、処理物製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理物製造装置、処理物製造方法、処理物製造装置用プログラム、および、処理物製造システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
生物に関する工学の分野においては、一定の結果が出るように、共通の手順として、プロトコルに従って研究や実験が行われている。例えば、特許文献1には、ニューロン
を神経移植片セグメントに付着させ、試験構築物を形成し、試験構築物を培地で培養し、試験構築物を分析して、突起成長神経組織の量を分析し、分析から導出される測定基準から神経移植の有効性を判断する神経培養システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-521685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような従来技術における作業は、微妙な手技、操作の違いが影響して、結果が変わる作業である。そのような作業は、経験のある熟練者にしか良好な結果を得ることができない。また熟練者であっても、必ずしも同じ結果を得るとは限らない。このため血液、尿、唾液、便、細胞、組織等の検体から抽出された核酸、蛋白質、代謝産物等の完成品の歩留まりが低く、処理物製造の生産性が低かった。
【0005】
そこで、その課題の一例は、安定で歩留まりが高い処理物製造等を行い、処理物製造の生産性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段と、前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施手段と、前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作、または、当該基本操作を補足する補足操作修正情報を、取得するプロトコル修正情報取得手段と、前記修正情報が前記基本操作の修正か前記補足操作の修正かの判定に応じて、前記基本操作または前記補足操作の修正をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正手段と、前記修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、前記ロボットが処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段と、を備え、前記基本操作は、前記プロトコルを設定する際に、前記作業毎に初期設定された操作であり、前記補足操作は、前記作業に追加される操作であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の処理物製造装置において、前記基本操作は、予め設定範囲が規定された基本操作パラメータを有し、前記基本操作の修正情報が、前記設定範囲内の前記基本操作における基本操作パラメータのパラメータ値であり、前記補足操作の修正情報が、前記作業を実施する際に追加する前記補足操作の情報であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の処理物製造装置において、前記補足操作に対する修正情報が、前記プロトコルに従って前記ロボットに実行させるためのプログラムコードにおいて固定されている値を変える情報であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の処理物製造装置において、前記補足操作が、前記固定されている値を変えることにより生成される補足操作と異なり、新規に追加された操作であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の処理物製造装置において、前記補足操作の入力を受け付けるために、前記補足操作を表現した項目表示する表示手段を更に備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の処理物製造装置において、前記実施の結果を評価する評価手段を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得工程と、前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施工程と、前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作、または、当該基本操作を補足する補足操作修正情報を、取得するプロトコル修正情報取得工程と、前記修正情報が前記基本操作の修正か前記補足操作の修正かの判定に応じて、前記基本操作または前記補足操作の修正をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正工程と、前記ロボットが、前記修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、処理対象から処理物を製造するように制御する製造工程と、を含み、前記基本操作は、前記プロトコルを設定する際に、前記作業毎に初期設定された操作であり、前記補足操作は、前記作業において追加される操作である
【0013】
請求項8に記載の発明は、コンピュータを、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段、前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施手段、前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作、または、当該基本操作を補足する補足操作修正情報を、取得するプロトコル修正情報取得手段、前記修正情報が前記基本操作の修正か前記補足操作の修正かの判定に応じて、前記基本操作または前記補足操作の修正をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正手段、および、 前記ロボットが、前記修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段として機能させ、前記基本操作は、前記プロトコルを設定する際に、前記作業毎に初期設定された操作であり、前記補足操作は、前記作業において追加される操作であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得工程と、前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施工程と、前記実施結果を評価する評価工程と、前記実施結果の評価が所定値以上でない場合、前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作、または、当該基本操作を補足する補足操作の修正情報を、取得するプロトコル修正情報取得工程と、前記修正情報が前記基本操作の修正か前記補足操作の修正かの判定に応じて、前記基本操作または前記補足操作の修正をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正工程と、前記実施結果の評価が前記所定値以上の場合、前記修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、前記ロボットが処理対象から処理物を製造するように制御する製造工程と、を含み、前記基本操作は、前記プロトコルを設定する際に、前記作業毎に初期設定された操作であり、前記補足操作は、前記作業において追加される操作である。
【0015】
請求項10に記載の発明は、ロボットと、前記ロボットを制御する処理物製造装置とを備えた処理物製造システムにおいて、前記処理物製造装置が、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を、前記ロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段と、前記ロボットが前記プロトコルに従って前記処理対象への前記作業を実施するように制御する実施手段と、前記作業の実施の後に前記プロトコルを修正するために、前記作業を実施するための基本となり、前記作業に前記ロボットが使用する器具に対する基本操作、または、当該基本操作を補足する補足操作修正情報を、取得するプロトコル修正情報取得手段と、前記修正情報が前記基本操作の修正か前記補足操作の修正かの判定に応じて、前記基本操作または前記補足操作の修正をすることにより、前記プロトコルを修正するプロトコル修正手段と、前記修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、前記ロボットが処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段と、を有し、前記基本操作は、前記プロトコルを設定する際に、前記作業毎に初期設定された操作であり、前記補足操作は、前記作業に追加される操作である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基本操作および補足操作のうち少なくとも1つの操作の修正情報により修正されたプロトコルでロボットが動作して、より効率的な作業を行うので、安定で歩留まりが高い処理物製造等を行い、処理物製造の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る処理物製造システムの概要構成例を示す模式図である。
図2図1のロボットコントローラの物理的な構成を示すブロック図である。
図3図1の上位コントローラの物理的な構成を示すブロック図である。
図4A】プロトコルチャートの一例を示す模式図である。
図4B】プロトコルチャートの一例を示す模式図である。
図5A】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図5B】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図5C】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図6】器具に対する基本操作のパラメータの一例を示す模式図である。
図7】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図8A】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図8B】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図9】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図10】器具に対する操作の一例を示す模式図である。
図11A】実施形態に係る処理物製造装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図11B】細胞製造装置におけるプロトコル変換手段の一例を示すブロック図である。
図12】実施形態に係る処理物の製造工程の一例を示すブロック図である。
図13】処理物製造システムの動作例を示すフローチャートである。
図14】画面の一例を示す模式図である。
図15】画面の一例を示す模式図である。
図16】プロトコルの修正のサブルーチンを示すフローチャートである。
図17】画面の一例を示す模式図である。
図18】画面の一例を示す模式図である。
図19】画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、処理物製造システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0019】
[1.処理物製造システムの構成及び機能概要]
(1.1 処理物製造システムおよびロボットの構成および機能)
まず、本実施形態に係る処理物製造システムSおよびロボットの構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る処理物製造システムSの概要構成の一例を示す図である。
【0020】
図1に示すように、処理物製造システムSは、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業をプロトコルに従って行うロボット10と、ロボット10を制御するロボットコントローラ20と、ロボット10の動作指令の情報をロボットコントローラ20に送信する上位コントローラ30とを備える。
【0021】
ここで、プロトコルとは、生物に関する工学の分野において、検査、培養、前処理、抽出等を目的として、検体、試料等の作業対象、または、処理対象に対して行われる作業の手順である。プロトコルは1または複数の作業から構成される。
【0022】
生物に関する工学の一例として、生化学、生命工学、生物工学、バイオテクノロジー等が挙げられる。生物に関する工学に、ライフサイエンス、生物物理学、細胞生物学、分子生物学に関係する技術を含めてもよい。
【0023】
生物に関する工学の分野における処理対象の検体の一例として、血液、尿、唾液、便、細胞、組織等の検体等が挙げられる。また、生物に関する工学の分野における処理対象の一例として、一連の処理過程で生成される中間処理物でもよい。中間処理物の一例として、核酸、蛋白質、代謝産物等の細胞成分がある。処理物とは、一連の作業により処理され最終的に生成された核酸、蛋白質、代謝産物等そのもの、あるいはその濃縮・増幅・断片化あるいは化学修飾された物である。処理物は、検査や分析、特定の物質の製造等に使用される。
【0024】
オミクスの一例であるゲノミクスの場合、処理の一例として、血液、尿、唾液、便、細胞、組織等からDNA、RNA等を抽出する処理、DNA、RNA等を断片化する処理、DNA、RNA等を増幅する処理、DNA、RNA等を精製する処理等が挙げられる。処理物の一例として、DNA等を断片化して末端修飾し増幅し合成されたDNAライブラリ、抽出濃縮されたRNA等が挙げられる。処理物は、がんゲノム診断や、様々な生活習慣病の発病リスク判定、家族性の遺伝子疾患の診断、ウィルス等の流行感染症の罹患診断等に利用される。
【0025】
オミクスの一例であるプロテオミクスの場合、処理の一例として、血液、尿、唾液、便、細胞、組織等から網羅的あるいは特定のタンパク質群を抽出精製、濃縮、断片化、化学修飾する処理等が挙げられる。処理物の一例として、分離されたタンパク質、ペプチドあるいはそれらの化学修飾物等が挙げられる。処理物は、特定のタンパク質の発現量や活性の指標となり、それらを分析定量することで、病気の診断から再生医療等製品や細胞製剤の品質管理等に利用される。
【0026】
オミクスの一例であるメタボロミクスの場合、処理の一例として、血液、尿、唾液、便、細胞、組織等から代謝産物を抽出する処理、不純物を取り除き代謝産物を濃縮精製する処理、不純物を取り除く処理が挙げられる。代謝産物の一例として、糖、有機物、アミノ酸、脂質等が挙げられる。処理物である代謝産物は、質量分析等による分析定量され病気の診断から再生医療等製品や細胞製剤の品質管理等に利用される。
【0027】
図1に示すように、ロボット10は、例えば、双腕型の多軸ロボットである。ロボット10は、床面に対して起立する胴部11と、胴部11の上部に取り付けられた肩部12と、肩部12の両端部にそれぞれ取り付けられた2本のアーム13と、アーム13の端部にエンドエフェクタであるハンド14を有する。
【0028】
胴部11は、肩部12を鉛直な軸線回りに回転させるサーボモータを有する。胴部11は、ロボットコントローラ20を収納してもよいし、別体でよい。
【0029】
肩部12は、胴部11のサーボモータにより、鉛直な軸線回りに回転可能となっている。
【0030】
アーム13は、例えばシリアルリンク型の多関節アームである。アーム13は、各関節部にサーボモータを有する。
【0031】
ハンド14は、例えば複数の指部15を有するロボットハンドである。ハンド14は、サーボモータにより指部15を開閉することで様々な器具等を把持する。
【0032】
ハンド14は、レーザセンサ等の位置測定センサを有していてもよい。ハンド14は、把持する対象物の形状等を撮影するカメラを有してもよい。レーザセンサの他に、対象物までの距離を測定するセンサとして、超音波センサ、接触式センサ、磁気センサ、撮像センサ等でもよい。ハンド14は、把持した器具の内容物等を観察する顕微鏡を有してもよい。カメラとして、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を有するデジタルカメラが挙げられる。カメラが、動画、静止画等を撮影する。ハンド14が、ファイバースコープを把持して、ロボット10が撮影してもよい。
【0033】
ハンド14は、様々な計測を行える各種センサを備えてもよい。各種センサは、温度センサ、湿度センサ、pHや特定のイオンや物質の濃度を測定する濃度センサ、光センサ等である。光センサは、ある波長の光を照射する発光素子と、透過光や反射光を受光する受光素子との組み合わせでもよい。
【0034】
なお、ロボット10は、双腕型ロボットに限らず、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業を実行可能であればどのようなものであってもよく、単腕型ロボットであってもよいし、直交ロボットでもよい。指部15は、多関節の指でもよい。
【0035】
ここで、ロボット10が使用する器具は、ロボット10のハンド14が操作できる対象物ならばよい。例えば、ロボット10が使用する器具の一例として、図1に示すように、分注器e1、容器の一例であるマイクロプレートe2、容器の一例であるマイクロチューブe3、アスピレータ等が挙げられる。
【0036】
分注器e1の一例として、特定の信号又は特定の操作により自動で液体の吸引・吐出を行う電動のピペット又はシリンジが挙げられる。分注器e1は電動式でなくてもよく、例えば手動式のシリンジ又はピペットであってもよい。分注器e1は、本体と本体に脱着可能なチップTとを有する。
【0037】
マイクロプレートe2は、例えば、樹脂製の板に有底の穴部である複数のウェルを有する。
【0038】
マイクロチューブe3は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂製の小型の試験管である。マイクロチューブe3は、複数のマイクロチューブe3が連結した連結マイクロチューブでもよい。連結マイクロチューブにおける各マイクロチューブをウェルとしてもよい。
【0039】
ロボット10のハンド14により、分注器e1から液体が、マイクロプレートe2およびマイクロチューブe3に吐出されたり、吸引されたりする。双腕型ロボットの場合、一方のハンド14が、マイクロプレートe2またはマイクロチューブe3を把持し、他方のハンド14が把持した分注器e1から、液体が吐出または吸引される。
【0040】
また、ロボット10が使用する器具の一例として、図1に示すように、ミキサe4、遠心分離器e5、インキュベータe6、恒温槽e7等の周辺機器が挙げられる。
【0041】
ミキサe4は、例えば、マイクロチューブe3等の底を旋回させ内容液の撹拌をするボルテックスミキサ、マイクロプレートe2のウェルの内容物を撹拌するマイクロプレートミキサ等が挙げられる。ロボット10のハンド14により、ミキサe4の上に、マイクロチューブe3またはマイクロプレートe2が置かれ、撹拌される。
【0042】
遠心分離器e5は、マイクロチューブe3等がセットされ、高速回転により加速度を与えて、マイクロチューブe3の内容物を分離する。ロボット10のハンド14により、遠心分離器e5の蓋が開けられ、マイクロチューブe3がセットされ、蓋が閉じられ、スイッチが入れられる。遠心後に、ロボット10のハンド14により、遠心分離器e5の蓋が開けられ、マイクロチューブe3が取り出される。
【0043】
インキュベータe6は、例えば、炭酸ガスインキュベータである。インキュベータe6は、温度、湿度、および、CO2濃度を制御する。インキュベータe6は、マイクロプレートe2を保管する。
【0044】
恒温槽e7は、例えば、アルミブロック恒温槽である。恒温槽e7は、ペルチェ素子により冷却、あるいはヒータにより加温されたアルミブロックにマイクロチューブe3を格納する。
【0045】
ロボット10のハンド14により、インキュベータe6等のこれらの器具の扉の開閉操作や、スイッチの操作が行われる。ロボット10のハンド14により、インキュベータe6等のこれらの器具に、マイクロプレートe2、マイクロチューブe3等の器具が設置されたりする。
【0046】
また、図1に示すように、容量が異なる分注器e1を収容するピペットラックe8、マイクロチューブe3を格納するチューブラックe9、分注器e1に使用するチップTを用意するチップラックe10、使用済みのチップTを捨てるダストボックスe11等も、ロボット10が使用する器具の一例である。
【0047】
分注器e1を用いて薬液を吸引又は注入する場合、ロボット10のハンド14により、ピペットラックe8から分注器e1が取り出され、チップラックe10に用意されたチップTを分注器e1の先端に装着して作業が行われる。なお、チップTは、原則として使い捨てされるものであり、使用済みのチップTは、ダストボックスe11に廃棄される。
【0048】
また、ロボット10が使用する器具の一例として、クライオチューブ、シャーレ(ペトリ皿)、培養フラスコ、細胞計数盤、試薬が入った試薬瓶等の容器でもよい。
【0049】
また、ロボット10が使用する器具の一例として、スクレイパ、コンラージ棒、超音波ホモジナイザ等の道具でもよい。
【0050】
ロボット10が使用する器具の一例として、各種の計測器でもよい。各種の計測器として、濃度を計測する分光光度計、成分の分析装置、DNAシーケンサ、電気泳動装置、PCR(Polymerase Chain Reaction)装置、細胞数測定装置、質量分析装置、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)装置等が挙げられる。
【0051】
なお、本実施形態では、実験で使用される純度が高い試薬や試料が好ましい。容器等の器具も、処理対象に直接接するものは、使い捨てのもの、または、オートクレーブされたものが使用されることが好ましい。
【0052】
(1.2 ロボットコントローラ20の構成および機能)
次に、ロボットコントローラ20について、図を用いて説明する。図2は、ロボットコントローラ20の物理的な構成を示すブロック図である。
【0053】
図2に示すように、ロボットコントローラ20は、ドライバ21と、通信部22と、記憶部23と、制御部24と、を有するコンピュータで構成されている。
【0054】
ドライバ21は、ロボット10と、電気的または電磁気的に接続している。ドライバ21は、例えば、サーボアンプで、サーボモータの回転角検出器(エンコーダおよびレゾルバ等)の回転位置や速度の情報を取得する。ドライバ21は、ロボット10のモータに電力を供給する。ドライバ21は、ロボットの各種センサからの出力をロボット10から受信してもよい。
【0055】
通信部22は、上位コントローラ30と電気的または電磁気的に接続している。通信部22は、上位コントローラ30等との通信状態を制御する。
【0056】
例えば、通信部22は、上位コントローラ30からのジョブを受信し、ロボット10の状態を上位コントローラ30に送信する。通信部22は、ロボットの各種センサからの出力をロボット10から受信してもよい。
【0057】
記憶部23は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等により構成されている。記憶部23は、オペレーティングシステム、プロトコルを編集する等のアプリケーションソフトウェア、ロボット10の動作させる特定のプログラムであるジョブ等の各種プログラムを記憶する。
【0058】
記憶部23は、各ジョブに関連付けて、3次元座標空間に変換するためのパラメータ等、ロボット10の各関節部に搭載されているサーボモータの動作に必要な情報のデータベースを有している。
【0059】
ここで、ジョブとは、ロボット10の単位動作である。例えば、ジョブとして、分注器e1等の器具を把持する1以上のジョブ、器具を解放する1以上のジョブ、分注器e1で吸引する1以上のジョブ、ある基準点から他の基準点にロボット10のアーム13を移動させる1以上のジョブ等が挙げられる。ジョブは、プロトコルを実行するためのロボットプログラムで、ロボットプログラムの中にコードとして記述されている。
【0060】
なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。ネットワークは、専用通信回線、移動体通信網、および、ゲートウェイ等により構築されていてもよい。
【0061】
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。制御部24のCPUが、ROMや記憶部23に記憶された各種プログラムのコードを読み出して、各種作業実行する。
【0062】
制御部24は、ドライバ21と、通信部22と、記憶部23とを制御する。制御部24は、例えば、ジョブに基づいて、ロボット10を動作させる動作信号を生成する。この動作信号は、例えば、ロボット10の各関節部に搭載されたサーボモータを動作させるためのパルス信号として生成される。ドライバ21が、生成された動作信号に基づき、ロボット10のモータに電力を供給する。なお、制御部24は、例えば、逆運動学または順運動学等に基づき、目標とする各関節の角度や座標を計算する。
【0063】
ロボットコントローラ20は、ロボット10を制御するジョブの集合体である動作指令に基づいて、ロボット10に所望の動作を実行させる。
【0064】
なお、ロボットコントローラ20のハードウェア構成は、必ずしもプログラムの実行により各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば、ロボットコントローラ20は、専用の論理回路により又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により各機能を構成するものであってもよい。また、ロボットコントローラ20は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)との組み合わせによって構成してもよい。
【0065】
(1.3 上位コントローラ30の構成および機能)
次に、上位コントローラ30について、図を用いて説明する。図3は、上位コントローラ30の物理的な構成を示すブロック図である。
【0066】
図3に示すように、上位コントローラ30は、通信部31と、記憶部32と、出力部33と、入力部34と、入出力インターフェース部35と、制御部36と、を有するコンピュータで構成されている。そして、制御部36と入出力インターフェース部35とは、システムバス37を介して電気的に接続されている。
【0067】
通信部31は、ロボットコントローラ20に電気的または電磁気的に接続して、ロボットコントローラ20等との通信状態を制御するようになっている。通信部31は、ネットワーク(図示せず)を通して、外部のサーバ装置と接続してもよい。
【0068】
記憶部32は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等により構成されている。また、記憶部32は、オペレーティングシステム等の各種プログラムや各種ファイル等を記憶する。なお、各種プログラム等は、例えば、外部のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0069】
また、記憶部32には、管理データベース32a、プロトコルデータベース32b、評価データベース32c、履歴データベース32d等が構築されている。
【0070】
管理データベース32aは、各器具に関する情報等を記憶する。例えば、管理データベース32aは、各器具の器具IDに関連付けて、器具の名称、器具の位置、器具の状態等の情報を記憶する。管理データベース32aは、器具がマイクロチューブe3の場合、チューブラックe9におけるマイクロチューブe3の位置、細胞やDNA等の、入荷した生体組織の一部である検体の検体ID、処理時間、処理試薬、処理方法、処理回数、マイクロチューブe3毎の内容物の状態等のデータを記憶している。
【0071】
管理データベース32aは、入荷、製造、出荷等のスケジュール管理のデータを記憶している。
【0072】
プロトコルデータベース32bは、プロトコルIDに関連付けられて、プロトコル名、作業対象、行われる作業、作業の順番、各作業の条件、各作業において使用される器具および試薬、各作業に含まれる操作等の情報が記憶する。
【0073】
プロトコルデータベース32bは、プロトコルの各作業からジョブに変換するための情報が記憶されている。例えば、プロトコルデータベース32bには、ロボット10が動く範囲の空間に設定された複数の基準点が、ツリー構造の階層に分類されて記憶されている。
【0074】
評価データベース32cは、プロトコルIDに関連付けて、プロトコルの一連の作業が終了したときの評価基準、各作業および各操作における評価基準等が記憶されている。例えば、評価基準として、沈殿の収量、不純物の混入量、作業の所要時間、計測器および分析器により測定される濃度、量等に対する基準の値、収量、収率等が挙げられる。例えば、分子レベルの評価基準としては、遺伝子発現量、タンパク質発現変動量、代謝産物変動量、糖鎖修飾の変動量等が挙げられる。
【0075】
また、評価データベース32cは、収量や混入量計測の判断基準値、画像解析に必要な様々なテンプレート画像、画像の特徴量、評価に必要な人工知能の学習済みパラメータ等が記憶されていてもよい。
【0076】
プロトコルの実施結果の評価基準または評価指標として、沈殿の収量、不純物の混入量、作業の所要時間等が挙げられる。評価は、収量が所定数以上の場合に収率が高い、不純物の検出率が所定数以下の場合に混入が少ない等という評価でもよい。評価は、沈殿の収量、不純物の混入量、作業の所要時間等を組み合わせた総合評価でもよい。
【0077】
操作の評価基準として、例えば、”良い手技“、すなわち、”良い操作“が挙げられる。”良い操作“として、“泡を出さない”、“液垂れをしない”、“均等に混ぜる”(分散させる)、“試薬を余らせない“等が挙げられる。
【0078】
上位コントローラ30は、計測器の測定量、分析器の分析量、画像処理による特徴量と、評価データベース32cの評価基準と、を比較して評価する。
【0079】
履歴データベース32dは、実施IDに関連付けて、実施したプロトコルのプロトコルID、検体ID、検体の種類ID、計測器が測定した結果、評価結果、撮影した画像、実施時間等のデータを記憶する。
【0080】
出力部33は、画像を出力の場合、例えば、液晶表示素子またはEL(Electro Luminescence)素子等を有する。出力部33は、音を出力する場合、スピーカを有する。入力部34は、例えば、キーボードおよびマウス等を有する。入力部34および出力部33は、ロボットコントローラ20のコンソールの機能を有する。
【0081】
入出力インターフェース部35は、通信部31および記憶部32等と制御部36との間のインターフェース処理を行うようになっている。
【0082】
制御部36は、CPU36a、ROM36b、RAM36c等を有する。そして、制御部36は、CPU336aが、ROM36bや記憶部32に記憶された各種プログラムのコードを読み出し実行することにより、制御部36は、様々な制御等を行う。
【0083】
なお、上位コントローラ30等は、各種のジョブを自動生成する機能を備えてもよい。例えば、上位コントローラ30等が、プロトコルデータベース32bを参照して、ロボット10が動く範囲の空間に設定された複数の基準点に基づき、動作指令を生成する。上位コントローラ30等が、ロボットの動作をもモジュール化してモジュールを組み合わせて、ロボット10に対する動作指令を自動生成してもよい。
【0084】
上位コントローラ30では、プロトコル作成装置として、プロトコルの編集、修正が行われる。上位コントローラ30は、プロトコルチャートを作成したり、プロトコルチャートからジョブを生成して、ロボットコントローラ20に出力する。
【0085】
ロボット10と、ロボットコントローラ20と、上位コントローラ30とは、相互通信可能に接続されている。これらの接続は、有線でも無線でもよい。ロボットコントローラ20は、胴部11に収容されず、無線による遠隔でロボット10を制御してもよい。
【0086】
上位コントローラ30が提供する機能は、情報通信ネットワークを通じて遠隔地にあるサーバによりその機能が提供される、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
【0087】
ロボット10は複数でもよい。上位コントローラ30が複数のロボット10を制御して、作業を分担させてもよい。上位コントローラ30がロボットコントローラ20の機能を有し、上位コントローラ30が直接、ロボット10を制御してもよい。
【0088】
(1.4 プロトコルチャート)
次に、プロトコルチャートについて図を用いて説明する。図4Aおよび図4Bは、プロトコルチャートの一例を示す模式図である。ここで、本明細書において、プロトコルチャートとは、プロトコルを視覚的に理解し得る態様で図示したものである。プロトコルチャートは、作業対象または処理対象に対する一連の作業を記述する。
【0089】
図4Aに示すプロトコルチャートは、作業対象または処理対象を収容する容器の初期状態を示す初期シンボルと、その容器の最終状態を示す最終シンボルと、初期シンボルから最終シンボルに向かう順序線sLに沿って容器に対する個別の作業を示す作業シンボルと、を有する。
【0090】
順序線sLは、容器に対しなされる作業の順番を意味している。すなわち、容器に対しする作業は、初期シンボルから最終シンボルに向かう順序線sLに沿って該当する作業シンボルが配置される順になされる。また、第1軸方向である順序線sLと、これに交差する第2の軸方向の線が作業線wLである。順序線sLと作業線wLとの交差角度は必ずしも直角でなくともよい。
【0091】
なお、順序線sLは、作業の順番を示す向きを明示するように矢線となっているが、向きを示す記述方法はどのようなものであってもよく、また、ここではプロトコルチャートの上から下へと処理が行われることが明らかであるから、順序線sLは、矢を持たない単なる直線であってもよい。
【0092】
この初期シンボルと、最終シンボルと、両者を接続する順序線sLとからなる組は、一の容器に対しなされる作業過程を示すものである。したがって、1プロトコルにおいて複数の容器を用いる場合には、この組が複数プロトコルチャート上に現れる。異なる容器についての初期シンボルと最終シンボルと順序線sLとからなる組は、離間して配置される。
【0093】
まず、プロトコルチャート中、最上段に記載された“Tube1.5”と記載された初期シンボルは、マイクロチューブe3等の容器の初期状態を示している。 “Tube1.5”と記載された初期シンボルは、マイクロチューブe3等の容器の初期状態を示している。初期シンボルに記載された“Main rack”は、マイクロチューブe3等の容器が収容されているチューブラックe9等の器具を示している。
【0094】
ここで、また、初期シンボル“Tube1.5”は、メインラックのチューブラックe9からマイクロチューブe3を取り出す作業wk1に対応している。
【0095】
“Tube1.5”と記載された最終シンボルは、マイクロチューブe3等の容器の最終状態を示している。最終シンボルに記載された“Main rack”は、プロトコルの作業の終了後に、マイクロチューブe3等の容器を保管するチューブラックe9等の器具を示している。
【0096】
ここで、最終シンボル“Tube1.5”は、作業が終わったマイクロチューブe3をチューブラックe9に戻す作業wk12に対応している。
【0097】
また、容器に対する作業が、容器の収容量の変化を示すものである場合には、その作業を示す作業シンボルは順序線sLから、第2の軸方向に離間した位置に配置される。
【0098】
例えば、追加を意味する“ADD”と記載された作業シンボルと順序線sLとが作業線wLにより第2の軸方向に接続されている。この作業線wLについて、容器に対する追加であることを明示すべく、順序線sLに向く矢線となっている。ただし、方向を示す記述方法は特に限定されず、また、作業線wLを矢を持たない単なる直線としてもよい。また、廃棄を意味する“DISCARD”と記載された作業シンボルと順序線sLとが作業線wLにより第2の軸方向に接続されている。この作業線wLについて、容器に対する収容物の一部または全部の廃棄であることを明示すべく、順序線sLから離れる向きの矢線となっている。
【0099】
作業シンボル“ADD”は、条件として、クロロホルム、イソプロパノール、エタノール等の追加する試薬“Reagent A”および加える量を示している。作業シンボル“ADD”に対応する作業は、作業wk2、wk8で示されている。作業シンボル“DISCARD”は、条件として、廃棄する対象の収容物“Supernatant”および、廃棄する量を示している。ここで、廃棄する量が記号“--”で示されている場合は、記号“--”は、例えば、上澄みを全てまはたできるだけ廃棄することを意味する。なお、図4Aに示すように、作業シンボル“DISCARD”に対応する作業は、作業wk7、wk11で示されている。
【0100】
また、容器に対する作業が、容器の収容量の変化を示すものでない場合には、その作業を示す作業シンボルは順序線sL上に配置される。
【0101】
例えば、作業シンボル“MIX”は、内容物を撹拌する作業を示している。作業シンボル“MIX”は、条件として、撹拌方法(撹拌に使用する器具)、温度、撹拌時間を示している。ここで、撹拌方法として、ミキサe4等のボルテックスミキサで撹拌する方法、分注器e1のピペッティングで撹拌する方法、マイクロプレートミキサで撹拌する方法等が挙げられる。作業シンボル“MIX”の作業は、作業wk2、wk5、wk9に対応している。また、作業シンボル“CENTRIFUGE”は、マイクロチューブe3を遠心分離する作業であることを表している。作業シンボル“CENTRIFUGE”は、条件として、遠心力の強さ、遠心時間を示している。作業シンボル“CENTRIFUGE”は、マイクロチューブe3を遠心分離器e5に収容して、12,000Gで15秒の遠心分離作業を行う。作業シンボル“CENTRIFUGE”の作業は、作業wk3、wk6、wk10に対応している。
【0102】
また、図4Bに示すように、その作業が容器間における移送である場合には、移送元の容器についての順序線sLと移送先の容器についての順序線sLの間に作業シンボル(例えば、作業シンボル“TRANSFER”)が配置され、また順序線sLから順序線sLへの第2の軸方向に沿った作業線wLが配置される。容器“Tube50”の内容物の一部または全部が、容器“Tube50”から容器“XXXXX”に移送される。ここでは、矢線とすることによりその移送方向を示している。もちろん、移送方向を示す記述方法は矢線に限らずどのようなものであってもよい。
【0103】
また、同じ作業を繰り返し行う場合には、順序線sLから繰返の作業を示す繰返線を引き出して、繰り返す作業シンボルの上流で、順序線sLに戻るようにしてもよい。
【0104】
次に、作業および作業に含まれる操作について図を用いて説明する。
【0105】
図4Aに示すように、プロトコルチャートに示されてる各作業シンボル、初期シンボル、最終シンボル等に対応する作業が、分注・撹拌・遠心等の基本となる作業単位で、コマンドとも称する。これら作業単位は、器具に対するロボット10による操作にさらに分解できる。プロトコルは、所望の実験等の作業を遂行のためにコマンドを組み合わせた作業手順でもある。
【0106】
例えば、廃棄作業wk11において、図5Aおよび図5Bに示すように、遠心分離後のマイクロチューブe3に、アスピレータに取り付けられたチップTを、沈殿物prcと反対側で所定の高さhまで挿入する挿入操作と、図5Cに示すように、マイクロチューブe3およびチップTを所定の角度Fまで傾ける傾斜操作と、マイクロチューブe3から上澄み液spを吸引する吸引操作と、が行われる。マイクロチューブe3およびアスピレータ等の器具に対するロボット10による操作は、いわゆる人間の手技に対応する。ここで、これらの操作は、作業を実施するための基本となり、作業にロボット10が使用する器具に対する基本操作とする。基本操作は、例えば、プロトコルを始めに設定する際に、作業に対して初期に設定される操作である。また、基本操作は、基本にすべき操作である。
【0107】
図6に示すように、これらの操作には、チップTの挿入位置d、吸引時のチップTの高さh、マイクロチューブe3の傾け角F、等の基本操作パラメータがある。
【0108】
チューブラックe9からマイクロチューブe3を取り出す作業wk1の場合、チューブラックe9からマイクロチューブe3を取り出す操作等が基本操作である。
【0109】
マイクロチューブe3の撹拌作業wk2、wk5、wk9の場合、マイクロチューブe3をミキサe4に移動する操作、ミキサe4に載置する操作等が基本操作で、ミキサe4の回転数、載置時間等が基本操作パラメータである。
【0110】
追加作業wk4、wk8の場合、分注器e1を把持する操作、分注器e1の先端にチップTを装着する操作、分注器e1を試薬瓶に移動する操作、試薬瓶から加える液を吸引する操作、マイクロチューブe3を把持する操作、マイクロチューブe3に所定量の液を吐出する操作等が基本操作で、吐出する量、吐出速度等が基本操作パラメータである。
【0111】
マイクロチューブe3に遠心分離する作業wk6、wk10の場合、遠心分離器e5の蓋を開ける操作、遠心分離器e5にマイクロチューブe3をセットする操作、遠心分離器e5の蓋を閉める操作、遠心分離器e5のスイッチを入れて待つ操作、遠心分離器e5のスイッチを切りマイクロチューブe3を取り出す操作等が基本操作で、遠心強度、遠心時間等が基本操作パラメータである。
【0112】
マイクロチューブe3から、上澄みを廃棄する作業wk7、wk11の場合、マイクロチューブe3にアスピレータの先端を挿入する操作、マイクロチューブe3を傾ける操作、アスピレータで吸引する操作等が基本操作である。アスピレータの先端のチップTの挿入位置、吸引時のチップTの高さ、マイクロチューブe3の傾け角、傾けた後の待機時間、吸引速度、チップTの交換頻度等が基本操作パラメータである。
【0113】
インキュベータe6からマイクロプレートe2を取り出す作業の場合、インキュベータe6の扉を開ける操作、インキュベータe6からマイクロプレートe2を取り出す操作、インキュベータe6の扉を閉める操作等が基本操作である。
【0114】
マイクロプレートe2の撹拌作業の場合、マイクロプレートe2をマイクロプレートミキサに移動する操作、マイクロプレートミキサに載置する操作等が基本操作で、マイクロプレートミキサの回転数、載置時間等が基本操作パラメータである。
【0115】
ところで、生物に関する工学の分野においては、微妙な手技、操作の違いが影響して、結果が変わる作業が多くある。そのような作業は、経験のある熟練者にしか良好な結果を得ることができない。また熟練者であっても、必ずしも同じ結果を得るとは限らない。
また、そのようなコツ、経験といったものは、手順書上では“丁寧に”、“手早く”あるいは“正確に”などという暗黙知で表現されており、ロボット10の作業に翻訳しにくいこともあり、ロボット10のための基本操作のみでは、良好な結果が得られないことがある。すなわち、実験計画法等で基本操作パラメータを変更してプロトコルを実施しても、所定の評価に達しないことがある。
【0116】
実験計画法等で基本操作パラメータを変更してプロトコルを実施しても、所定の評価に達しない場合、基本操作を補足する補足操作によりプロトコルを修正する。補足操作には、例えば、第1種の補足操作、第2種の補足操作、第3種の補足操作等がある。
【0117】
ここで、生物に関する工学の分野においては、微妙な手技、操作に違いが影響して、結果が変わる作業が多くあるので、人間が作業を行う場合、基本操作パラメータを設定しても、作業にばらつきが生じ、作業の評価が確実ではなかった。さらに、人間は、疲労、勘違い等により、回数を間違えたり、操作をミスしたりするので、作業の結果が、偶然に左右され易かった。
【0118】
一方、ロボット10であると、作業の再現性が高く、設定されたパラメータに関して、確実に作業を行って結果を出すので、正確な作業の評価ができ、基本操作パラメータを変化させ、パラメータ空間を確実に辿ることができる。従って、ロボット10の操作であると、所定の評価に達しないことがより確実に分かり、パラメータ空間を辿り尽くしても所定の評価に達しない場合、基本操作の限界であると明確になる。基本操作の限界を踏まえた上で、次のステップである補足操作に移ることができる。
【0119】
以下、第1種の補足操作、第2種の補足操作、第3種の補足操作について図を用いて説明する。
【0120】
第1種の補足操作によるプロトコルの修正は、ロボットプログラムの中にコードとして記述されているが、固定値になっている値を他の値に変えたり、または、固定値をパラメータ化したりする修正である。ここで、固定値は、ロボットプログラムにおいて、予め決めた、固定されている設定値である。基本操作パラメータは、ロボットプログラムにおいて、変更可能にした設定値である。なお、基本操作パラメータは、プロトコルチャートにおいて、インタラクティブに修正できるようになっていてもよい。
【0121】
例えば、図5Cに示すような、遠心後の上澄み液spを吸引数吸引操作において、第1種の補足操作は、図7に示すように、マイクロチューブe3に対してチップTの傾きを変える操作である。第1種の補足操作は、図7に示すように、マイクロチューブe3に対してチップTの傾きを変えてアスピレータで吸引する操作でもよい。これらの第1種の補足操作が、作業に追加されたり、他の操作と入れ替えられたりすることにより、プロトコルが修正される。第1種の補足操作が、作業を実施する際に追加する補足操作の一例である。第1種の補足操作が、固定されている値を変えることにより生成される補足操作の一例である。
【0122】
マイクロチューブe3とチップTとの相対角度を角度(例えば、f[度])にして、沈殿物prcを吸引しないよう上澄み液spをできるだけ早く吸引して、沈殿物prcを残す操作を実現する。補足操作パラメータとして、マイクロチューブe3とチップTとの相対角度の新たなパラメータが設定されてもよい。
【0123】
次に、第2種の補足操作によるプロトコルの修正は、器具に対する新たな生み出された操作を、プロトコルの作業に追加、入れ替え等する修正である。観察して発見した操作、顕在化したコツの操作等である。神の手といわれるような熟練者の技を実現した操作の場合もある。これらの第2種の補足操作が、作業に追加されたり、他の操作との入れ替えられたりする。第2種の補足操作が、作業を実施する際に追加する補足操作の一例である。第2種の補足操作が、固定されている値を変えることにより生成される補足操作と異なり、新規に追加された操作の一例である。
【0124】
例えば、図7に示すような、アスピレータで成果物である沈殿物prcを吸引しないよう上澄み液spをできるだけ早く吸引する吸引操作において、マイクロチューブe3とチップTとの相対角度を変えても、沈殿物prcの回収率を上げて上澄み液spを早く廃棄する作業の生産性の向上の限界に達してしまうことがある。
【0125】
しかし、図8Aおよび図8Bに示すように、上澄み液spが流れ落ちるぐらいマイクロチューブe3を傾け、上澄み液spの流れに従って、マイクロチューブe3を傾ながら、チップTをマイクロチューブe3の内壁に沿って、マイクロチューブe3の底から遠ざけるとと、沈殿物prcの誤吸引の可能性がより少なくなることで回収率が増加し、上澄み液spをできるだけ多く廃棄できることで不純物の混入が低下し、かつ、吸引する速度が向上し、生産性が向上する。図7に示すように、上澄み液spを吸引する操作の代わりに、図8Aに示すように、図7に示すような状態から、上澄み液spが流れ落ちるぐらいマイクロチューブe3を傾けながら、アスピレータで吸引する補足操作と、図8Bに示すように、アスピレータで吸引しながら、チップTをマイクロチューブe3の底から退避する補足操作とが、作業に新たに追加される。
【0126】
図9に示すような操作、および、図10に示すような操作が、第2種の補足操作である。作業シンボル“MIX”等の撹拌作業に関して、マイクロチューブe3をボルテックスミキサ等のミキサe4に載置する操作を、基本操作とした場合、図9に示すような操作が、第2種の補足操作である。また、廃棄作業に関して、遠心分離の作業した後、上澄み液を廃棄する基本操作とした場合、磁気ビーズを使用して、DNAまたはRNA等の成果物を回収する操作が、第2種の補足操作である。
【0127】
図9に示すように、ハンド14が、蓋を閉じたマイクロチューブe3等を把持した状態で、アーム13に対してハンド14を、マイクロチューブe3を反転させて、所定時間t[s]止めて、元の角度に戻す操作を、n回繰り返す操作が、第2種の補足操作である。これでマイクロチューブe3の底から沈殿物が重力により離れる力が働く撹拌が実現できる。
【0128】
図10に示すように、抗体を結合させた磁気ビーズをマイクロチューブe3等に投入して、磁石mをマイクロチューブe3の側面に当てて、処理物pmを集め、アスピレータで液を吸引する操作が、第2種の補足操作である。
【0129】
また、マイクロチューブe3を水平に8の字に揺らす操作が、第2種の補足操作である。ハンド14が、マイクロチューブe3を把持した状態で,8の字の軌跡を描くように動かされる。この補足操作により、マイクロチューブe3の蓋が開いてかつ液量が多い場合でも、マイクロチューブe3を傾けて液体をこぼすリスクを抑えつつ、遠心力を加えることで、暗黙知で表現された”gently”な撹拌の操作を実現できる。
【0130】
これらの第2種の補足操作をジョブに変換するための情報が、プロトコルデータベース32bに記憶される。
【0131】
次に、第3種の補足操作によるプロトコルの修正は、通常の人間ではできない操作によるプロトコルの修正である。一例として、基本操作パラメータ等の設定範囲を超える値に設定する場合で、第3種の補足操作として、正確に100回基本操作を繰り返す操作、0.1mmの隙間を保ちつつスクレイパを動かす操作、ある器具を極めて低速で動かす操作等が挙げられる。第3種の補足操作が、作業を実施する際に追加する補足操作の一例である。
【0132】
上位コントローラ30のようなプロトコル作成装置でアプリケーションソフトウェアが起動されて、プロトコルチャートを読み出し、プロトコルにおける作業の編集、基本操作、補足操作によるプロトコルの修正と言った編集が行われてもよい。
【0133】
プロトコルデータベース32bは、基本操作の情報、第1種の補足操作の情報、第2種の補足操作の情報、第3種の補足操作の情報を、それぞれの操作の分類の情報に関連付けられて、予め記憶しておいてもよい。基本操作の情報は、基本操作パラメータの情報で、例えば、プロトコルの作業wk11の”DISCARD”の場合、チップTの挿入位置、吸引時のチップTの高さ、マイクロチューブe3の傾け角、傾けた後の待機時間、吸引速度、チップTの交換頻度数等である。第1種の補足操作の情報は、例えば、吸引時のマイクロチューブe3とチップTとの相対角度等のように、変数化が可能な固定値の情報である。第2種の補足操作の情報は、例えば、新たな操作名と、第2種の補足操作をジョブに変換するための情報である。第3種の補足操作の情報は、例えば、各パラメータの範囲、各パラメータの限界値等である。
【0134】
(1.5 処理物製造装置の機能構成)
次に、処理物製造装置の機能構成について説明する。図11Aは、実施形態に係る処理物製造装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図11Bは、細胞製造装置におけるプロトコル変換手段の一例を示すブロック図である。
【0135】
図11Aに示すように、処理物製造装置の一例である上位コントローラ30は、プロトコル取得手段30aと、実施手段30bと、プロトコル修正情報取得手段30cと、製造手段30dと、を有する。
【0136】
プロトコル取得手段30aは、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業をロボット10によって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得する。プロトコル取得手段30aの一例の制御部36が、プロトコルチャートで表示可能なプロトコルを、記憶部32のデータベースから取得してもよいし、外部のサーバ装置からネットワークを介して取得してもよいし、ドライブ装置を使用して記録媒体から取得してもよい。
【0137】
実施手段30bは、ロボット10がプロトコルに従って処理対象への作業を実施するように制御する。例えば、実施手段30bの一例の制御部36が、取得したプロトコルをジョブに変換して動作指令として、ロボットコントローラ20に送信し、ロボットコントローラ20が、ジョブに基づいてロボット10にプロトコルに従った作業を実施させる。図11Bに示すように、上位コントローラ30は、プロトコル変換手段30eを有する。プロトコル変換手段30eが、ロボット10によって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルの一例であるプロトコルチャートから、ジョブがコードとして組み込まれたロボットプログラムに変換する。ロボット10が、ロボットプログラムに従って動作する。
【0138】
プロトコル修正情報取得手段30cは、作業の実施の後、プロトコルを修正するために、作業を実施するための基準となり、作業にロボット10が使用する器具に対する基本操作、および、当該基本操作を補足する補足操作のうち少なくとも1つの操作の修正情報を取得する。
【0139】
例えば、作業の実施の後、実施した結果の結果物に対して計測器を適用した計測結果や、結果物や作業の様子の画像に対する画像処理により、評価が行われる。評価に基づき、プロトコル修正情報取得手段30cは、基本操作、第1種の補足操作、第2種の補足操作、および、第3種の補足操作のうち少なくとも1つの操作の分類の情報を、プロトコルの修正情報として取得する。基本操作の場合、基本操作パラメータの値が、プロトコルの修正情報でもよい。
【0140】
第1種の補足操作の場合、プロトコルの修正情報は、例えば、固定値になっている値を他の値に変えたり、または、固定値をパラメータ化したりする情報である。
【0141】
第2種の補足操作の場合、プロトコルの修正情報は、器具に対する新たな生み出された操作を、プロトコルの作業に追加、入れ替え等する情報である。
【0142】
第3種の補足操作の場合、プロトコルの修正情報は、基本操作パラメータ等の設定範囲を超える値に設定する情報である。
【0143】
プロトコルデータベース32bが参照されて、基本操作パラメータの変更によりプロトコルが修正されたり、第1種の補足操作、第2種の補足操作、または、第3種の補足操作の追加よりプロトコルが修正されたりする。基本操作と補足操作とを組み合わせて、プロトコルが修正されてもよい。プロトコルの修正情報は、作業の追加、または、作業を入れ替える情報でもよい。基本操作と補足操作と組み合わせて、新たな作業が作成されてもよい。
【0144】
製造手段30dは、ロボット10が、操作に対する修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、処理対象から処理物を製造する。例えば、製造手段30dの一例の制御部36が、修正したプロトコルを含む一連のプロトコルをジョブに変換して動作指令として、ロボットコントローラ20に送信し、ロボットコントローラ20が、ジョブに基づいてロボット10に、一連のプロトコルに従った、一連の作業を実施させて、処理物を製造する。各プロトコルのプロトコルチャートから、一連のプロトコルに対応したロボットプログラムが生成され、このロボットプログラムに従って、ロボット10が、処理物を製造する。
【0145】
[2. 処理物製造システムSの動作例]
処理物製造システムSの動作例について、図を用いて説明する。
【0146】
(2.1 処理物の製造工程)
まず、処理物の製造工程について図12を用いて説明する。図12は、実施形態に係る処理物の製造工程の一例を示すブロック図である。なお、ゲノミクスにおける処理物の製造を一例として製造工程を説明する
【0147】
図12に示すように、処理物の製造工程は、入荷p1と、受入検査p2と、核酸抽出p3と、ライブラリ調製p4、検査p5と、保管p6と、出荷検査p7と、出荷p8と、を有する。
【0148】
入荷p1の工程では、入荷した検体等の処理対象の処理対象ID、処理対象の種類ID等のIDが割り照られる。検体は、生体組織・細胞や、それ由来の核酸・たんぱく質・代謝産物等の生体成分の一部である。検体の種類は、血液、体細胞、生殖細胞、腫瘍細胞、がん細胞、口腔および消化器系の粘膜、唾液、痰、尿、便、汗、腹水、髄液等である。また、処理対象は、例えば、細菌、ウィルス、植物の細胞由来の組織、核酸・たんぱく質・代謝産物等を含む海水、河川水、土壌等でもよい。処理対象として、入荷されるものは、保存標本、薬品・試薬の出発材料、原料でもよい。
【0149】
上位コントローラ30が、入荷のプロトコルを実施するようにロボットコントローラ20に動作指令を送信する。ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が、入荷のプロトコルに従い、入荷した処理対象にIDを割り当てる。ロボット10が、処理対象の入荷元等の住所等を撮像して、文字認識によりデータ化してもい。人が、入荷コード等をコードリーダにより読み取って、上位コントローラ30が、読み取った情報を受け付けてもよい。
【0150】
受入検査p2の工程では、検体等の処理対象が凍結状態で入荷して来た場合には、解凍して処理対象の検査が行われる。例えば、入荷された検体に対して所定の検査が行われれる。上位コントローラ30が、受入検査のプロトコルを実施するようにロボットコントローラ20に動作指令を送信する。ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が、受入検査のプロトコルに従い、入荷した処理対象を検査する。人が処理対象を検査して、上位コントローラ30が、検査結果を受け付けてもよい。
【0151】
核酸抽出p3の工程を実施するプロトコルとして、(1)入荷したサンプルをマイクロチューブに準備するプロトコル、(2)DNA、RNA等を沈殿させて濃縮するプロトコル、(3)沈殿したDNA、RNAを溶解させて回収するプロトコル等がある。上位コントローラ30が、各プロトコルを順に実施するように、ロボットコントローラ20に動作指令を送信する。ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が核酸抽出の各プロトコルにおける各作業を行う。
【0152】
ここで、入荷したサンプルをマイクロチューブに準備に関するプロトコルは、例えば、
検体を滅菌蒸留水で洗浄し、検体を超音波や酵素等を用いて破壊(溶解)し、検体の前処理のための処理液を調整し、処理液の適量をマイクロチューブe3に投入するプロトコルである。なお、処理液をマイクロチューブe3に投入する前に処理液を希釈又は濃縮することが実施されてよい。
【0153】
DNA、RNA等を沈殿して回収するプロトコルは、例えば、検体を前処理するための処理液を投入されたマイクロチューブe3に、クロロホルム、イソプロパノール、エタノール等の試薬を加えてDNA、RNA等を沈殿させ、遠心分離器e5に掛けて、上澄み液を廃棄することで、DNA、RNA等を濃縮するプロトコルである。
【0154】
沈殿したDNA、RNAを溶解させて回収するプロトコルは、例えば、沈殿物を溶解させるための試薬を投入し、撹拌させることで溶解させ、溶解したDNA、RNA等を回収するプロトコルである。
【0155】
ライブラリ調製p4の工程は、DNA、RNA等の断片化、端末修復、アダプタの結合等が行われる。ライブラリ調製のプロトコルに従い、ロボット10が、抽出されたDNA、RNA等に必要な試薬を添加し、撹拌、遠心等の手順を行うことで、シーケンサに掛けるためのライブラリ調製をする。
【0156】
検査p5の工程では、処理物の収量、不純物混入有無、断片長、変性度等の検査が行われる。検査のプロトコルに従い、ロボット10が、製造された処理物を検査する。上位コントローラ30が、検査のプロトコルを実施するようにロボットコントローラ20に動作指令を送信する。ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が、検査のプロトコルに従い、製造された処理物を検査する。人が製造された処理物を検査して、上位コントローラ30が、検査結果を受け付けてもよい。
【0157】
また、核酸を回収する工程の後においては、ライブラリ調製工程を行う他にも、例えば、RNAを鋳型としてcDNAを調整する工程が行われてもよい。この場合には、逆転写酵素を用いてcDNAを合成するために、RT-PCRを実施する工程で、ロボット10が、適量のcDNAとプライマーと逆転写酵素をPCR用のウェルに投入し、PCR機にセットしてもよい。
【0158】
保管p6の工程では、例えば、凍結保護剤入りの培地を有するクライオチューブ等に、製造された処理物を入れて、-80℃で凍結させて液体窒素容器内で保管される。上位コントローラ30が、保管のプロトコルを実施するようにロボットコントローラ20に動作指令を送信する。ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が、保管のプロトコルに従い、製造された処理物を保存する。人が製造された処理物を保存して、上位コントローラ30が、保存結果を受け付けてもよい。
【0159】
出荷検査p7の工程では、クライオチューブが取り出され、一部、解凍されて、出荷前の検査が行われる。上位コントローラ30が、出荷前の検査のプロトコルを実施するようにロボットコントローラ20に動作指令を送信する。ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が、出荷前の検査のプロトコルに従い、処理物を検査する。人が処理物を検査して、上位コントローラ30が、検査結果を受け付けてもよい。
【0160】
出荷p8の工程では、出荷するクライオチューブが保冷用のバッグ等に詰められて出荷される。上位コントローラ30の動作指令に基づき、ロボットコントローラ20の制御によりロボット10が、保冷用のバッグに出荷するクライオチューブを詰める。人が出荷作業をして、上位コントローラ30が、作業結果を受け付けてもよい。
【0161】
上位コントローラ30が、各工程の工程IDに関連付けて、各工程の情報を管理データベース32aに記憶する。
【0162】
なお、プロテオミクスの場合、処理物の製造工程は、例えば、入荷、受入検査、蛋白質抽出、検査、断片化、検査、保管、出荷検査、出荷の順で行われる。保管の工程が省略され、製造後直ちに、製造されたタンパク質が出荷されてもよい。また、メタボロミクスの場合、処理物の製造工程は、例えば、入荷、受入検査、代謝産物抽出、検査、保管、出荷検査、出荷の順で行われる。
【0163】
(2.2 処理物製造システムの動作例)
次に、処理物製造システムの動作例について、図を用いて説明する。なお、核酸抽出を行うプロトコルチャートにおいて、特に、RNAを沈殿して回収する処理に関するプロトコルチャートの事例を用いて、プロトコルをできるだけ最適化して、処理物の製造を行う動作について説明する。
【0164】
図13は、処理物製造システムの動作例を示すフローチャートである。図14および図15は、画面の一例を示す模式図である。
【0165】
図13に示すように、処理物製造システムSは、プロトコルを取得する(ステップS1)。具体的には、上位コントローラ30が、プロトコルデータベース32bを参照して、プロトコルの情報を取得する。例えば、核酸抽出p3の工程のRNAを沈殿して回収する処理に関する図4Aに示すようなプロトコルチャートの情報を取得する。人が入力する場合、図4Aに示すように、画面40において、入力部34により“File”のボタンがクリックされ、プルダウンメニューからRNA沈殿処理に関するプロトコルが選択され、プロトコルチャートがプロトコルデータベース32bから読み出される。上位コントローラ30が、外部のサーバ装置からネットワークを介して、プロトコルを取得してもよい。
【0166】
上位コントローラ30が、入力部34、端末装置等からプロトコルの入力を受け付けてもよい。人による入力を受け付ける場合、図4Aに示すように、画面40において、入力部34により“File”のボタンがクリックされ、“開く”メニューから、プロトコルの一覧が表示されて、実施するプロトコルが選択される。
【0167】
このように、上位コントローラ30が、生物に関する工学の分野における処理対象に対して行う一連の作業をロボットによって実行可能な形式になるように作成されたプロトコルを取得するプロトコル取得手段の一例として機能する。
【0168】
次に、処理物製造システムSは、プロトコルを実施する(ステップS2)。具体的には、上位コントローラ30が、プロトコルIDに基づきプロトコルデータベース32bを参照して、取得したプロトコルをジョブに変換して、動作指令を生成する。上位コントローラ30が、動作指令を、ロボットコントローラ20に送信する。ロボットコントローラ20が、受信したジョブに基づいて、ロボット10を動作させる動作信号を生成して、ロボット10の動作を制御する。ロボット10が各作業を行う。
【0169】
上位コントローラ30が、入力部34、端末装置等からプロトコルの実施を受け付けてもよい。人の入力を受け付ける場合、図4Aに示すように、画面40において、入力部34により“JobGenerate”のボタンがクリックされ、プロトコルチャートからジョブが生成される。画面40において、入力部34により“Run”のボタンがクリックされると、動作指令が、上位コントローラ30からロボットコントローラ20に送信され、ロボットコントローラ20によりロボット10が制御されてプロトコルが実施される。
【0170】
ロボット10が、プロトコルチャートの作業wk1~作業wk12の一連の作業を実施する。なお、ロボット10が、他の一連のプロトコルも実行する。
【0171】
このように、上位コントローラ30が、ロボットがプロトコルに従って処理対象への作業を実施するように制御する実施手段の一例として機能する。
【0172】
次に、処理物製造システムSは、実施結果を評価する(ステップS3)。具体的には、ロボット10が、上位コントローラ30が、評価データベース32cを参照して、ロボット10のセンサのデータ、ロボット10が使用する器具の一例の計測器の測定データ、分析器等の分析データ等から、実施結果を評価する。
【0173】
上位コントローラ30が、ハンド14のカメラ等が撮像した画像から画像処理して、特徴量を抽出し数値化して、評価データベース32cを参照して、実施結果を算出し、評価を行う。
【0174】
例えば、RNA抽出の場合、実施結果として、マイクロチューブe3における画像や測定データから、沈殿物の吸引ミス、沈殿物の収量、不純物の混入量、wk11等の各作業の作業時間等の測定を行う。沈殿物の吸引ミスは、例えば、操作の動画像の機械学習等により、判定される。実施結果を画像から判定する場合、画像等の特徴量との照合や、テンプレート画像のマッチングや、機械学習等により、測定される。
【0175】
ロボット10が、実施した結果の結果物を、自動で各種計測器にかけて、測定結果を
求めてもよい。上位コントローラ30が、評価のプロトコルを実施して、例えば、ロボット10が、処理物の一部を取り出して、質量分析装置、NMR装置等の計測器にかけて、測定結果を計測器から取得する。
【0176】
上位コントローラ30が、評価データベース32cを参照して、測定結果と、基準とを比較して、評価を行う。
【0177】
上位コントローラ30が、各操作の画像から、“泡を出さない”、“液垂れをしない”、“均等に混ぜる”等の良い操作であるかを判定する。泡等のテンプレート画像等とのマッチングや、機械学習等により判定が行われてもよい。
【0178】
また、上位コントローラ30が、入力部34、端末装置等から、実施した結果の結果物を測定結果や、評価結果や、総合評価の入力を受け付けてもよい。上位コントローラ30等のプロトコル作成装置でアプリケーションソフトウェアが起動されて、プロトコルチャートを読み出し、測定結果や評価結果が入力されてもよい。
【0179】
上位コントローラ30が、実施の結果を評価する評価手段の一例として機能する。
【0180】
次に、上位コントローラ30が、図14に示すように、画面41の評価結果を出力部33に表示する。上位コントローラ30が、評価結果を、実施IDやプロトコルID、作業ID、操作ID等と関連付けて、履歴データベース32dに記録する。
【0181】
次に、処理物製造システムSは、所定値以上か否かを判定する(ステップS4)。具体的には、上位コントローラ30の制御部36は、評価データベース32cを参照して、測定結果または評価結果が、所定値以上か否かを判定する。図14に示すように、RNA等の沈殿の収量、不純物の混入量、作業の所要時間等を組み合わせた総合評価が、所定値以上か否かを、制御部36は判定する。
【0182】
実施結果の評価が所定値以上の場合(ステップS4;YES)、処理物製造システムSは、処理物を製造する(ステップS7)。具体的には、上位コントローラ30からの動作指令に基づき、ロボット10が、入荷したサンプルをマイクロチューブに準備するプロトコル、DNA、RNA等を沈殿させるプロトコル、沈殿したDNA、RNAを溶解させて回収するプロトコル等の一連のプロトコルを順に実施して、処理物を製造する。
【0183】
プロトコル実施による評価が所定値以上である一連のプロトコルを順に従い、上位コントローラ30に制御されて、ロボット10が、処理物を製造する。
【0184】
核酸抽出p3の工程においては、入荷したサンプルをマイクロチューブに準備するプロトコル、DNA、RNA等を沈殿させるプロトコル、沈殿したDNA、RNAを溶解させて回収するプロトコル等のプロトコルに順に従い、ロボット10が、処理物を製造する。
【0185】
入荷p1から出荷p8まで、それぞれの一連のプロトコルに従い、ロボット10により処理対象から処理物が製造されて、出荷される。
【0186】
このように、上位コントローラ30が、ロボットが、修正情報に基づき修正されたプロトコルを使用して、処理対象から処理物を製造するように制御する製造手段の一例として機能する。
【0187】
所定値以上でない場合(ステップS4;NO)、処理物製造システムSは、プロトコルの修正情報を取得する(ステップS5)。具体的には、上位コントローラ30が、基本操作、第1種の補足操作、第2種の補足操作、および、第3種の補足操作のうち少なくとも1つの操作の分類の情報を、プロトコルの修正情報として取得する。
【0188】
例えば、基本操作パラメータの変更の所定の範囲において、未だ試す基本操作パラメータがある場合、または、実験計画法で基本操作パラメータを変更していない場合等において、制御部36は、基本操作によりプロトコルを修正するため、操作の分類の情報を、基本操作に設定する。
【0189】
試す基本操作パラメータがない場合、第1種の補足操作によりプロトコルを修正するため、操作の分類の情報を、第1種の補足操作に設定する。なお、第2種の補足操作、または、第3種の補足操作が設定されてもよい。これら操作の分類の情報が、作業を実施する際に追加する補足操作の情報の一例である。
【0190】
試す第1種の補足操作パラメータの範囲が終了した場合、第1種の補足操作によりプロトコルを修正するため、操作の分類の情報を、第2種の補足操作または第3の補足操作に設定する。
【0191】
基本操作の場合、図4Aに示すような画面40において、プロトコル編集”Edit”のメニューが選択され、作業wk11の”DISCARD”がクリックされ、図15に示すように、基本操作パラメータの値を変更のための入力画面42が出力部33に表示されてもよい。上位コントローラ30が、プロトコルの修正情報として、入力画面42から、基本操作パラメータの変更の入力を受け付けてもよい。
【0192】
このように、上位コントローラ30が、作業の実施の後、プロトコルを修正するために、作業を実施するための基準となり、作業にロボットが使用する器具に対する基本操作、および、当該基本操作を補足する補足操作のうち少なくとも1つの操作に対する修正情報を、取得するプロトコル修正情報取得手段の一例として機能する。
【0193】
次に、処理物製造システムSは、プロトコルを修正する(ステップS6)。具体的には、上位コントローラ30が、プロトコル修正のサブルーチンを実行して、受け付けた修正情報が基本操作の修正か補足操作の修正かの判定をして、プロトコルデータベース32bを参照して、基本操作または補足操作の修正を行う。詳細は、プロトコル修正のサブルーチンにおいて後述する。
【0194】
(2.3 プロトコルの修正のサブルーチン)
次に、プロトコルの修正のサブルーチンについて、図を用いて説明する。
【0195】
図16は、プロトコルの修正のサブルーチンを示すフローチャートである。図17から図19は、画面の一例を示す模式図である。
【0196】
図16に示すように、処理物製造システムSは、基本操作の修正か否かを判定する(ステップS10)。具体的には、上位コントローラ30が、操作の分類の情報に基づき、取得したプロトコルの修正情報が基本操作の修正であるか否かを判定する。
【0197】
基本操作の修正の場合(ステップS10;YES)、処理物製造システムSは、基本操作を修正する(ステップS11)。具体的には、上位コントローラ30がプロトコルデータベース32bを参照して、基本操作パラメータの情報(操作の修正情報、基本操作の修正情報の一例)を取得する。上位コントローラ30が、変更する基本操作パラメータを選択して、基本操作パラメータの値を変更して、変更された基本操作パラメータに基づいたプロトコルを生成する。例えば、基本操作パラメータの値の変更は、実験計画法により、様々な基本操作パラメータの組み合わせで実施された結果に基づき変更される。
【0198】
図15に示すように、チップ交換、吸引時のチップTの先端の高さ、待機時間等が、基本操作パラメータの値の一例である。
【0199】
または、上位コントローラ30が、評価結果に基づき、変更する基本操作パラメータを選択して、基本操作パラメータの値を変更してもよい。例えば、ステップS3における評価において、処理物の含まれる不純物が高い場合は、上位コントローラ30が、吐出時チップ先端の高さhを低くする。また、処理物の回収率が低い場合は、上位コントローラ30が、待機時間を延ばす。
【0200】
図17に示すように、上位コントローラ30が、評価データベース32c、履歴データベース32d等を参照して、出力部33に表示された”Suggestion”の画面43を表示してもよい。プロトコルの修正情報として、修正する基本操作の候補や、修正する基本操作パラメータの値の候補、修正の方向性が算出される。
【0201】
上位コントローラ30が、履歴データベース32dを参照して機械学習等された結果に基づき、変更する基本操作パラメータを選択して基本操作パラメータの値を変更してもよい。上位コントローラ30が、評価結果に基づき、評価データベース32c、履歴データベース32d等を参照して、機械学習のような人工知能を使用して、プロトコルの修正情報として、どのプロトコルに原因があるか特定し、プロトコルのどの作業に原因があるか、作業のどの操作に原因があるかを特定してもよい。
【0202】
なお、ステップS5において、上位コントローラ30の制御部36が、プロトコルの修正情報として、図15に示すような入力画面42を表示して、入力画面42から基本操作パラメータの変更を単に受け付ける。そして、上位コントローラ30が、基本操作パラメータの値を変更して、変更された基本操作パラメータに基づいたプロトコルを生成してもよい。例えば、先端チップ高さの項目が選択され、高さが“4[mm]”から“5[mm]”に変更されたプロトコルが生成される。
【0203】
次に、ステップS2に戻り、修正されたプロトコルにより、処理物製造システムSは、プロトコルを実施する。
【0204】
基本操作の修正でない場合(ステップS10;NO)、処理物製造システムSは、補足操作によりプロトコルを修正する(ステップS12)。具体的には、基本操作の修正のみでは、プロトコルの実施結果の評価の十分な向上が得られない場合、上位コントローラ30が、操作の分類の情報に基づき、第1種の補足操作、第2種の補足操作、または、第3種の補足操作によりプロトコルを修正する。
【0205】
第1種の補足操作の場合、具体的には、上位コントローラ30がプロトコルデータベース32bを参照して、プロトコルの修正情報として、値を変える固定値の情報を取得する。上位コントローラ30が、値を変える固定値を選択して、固定値を他の値に変更して、第1種の補足操作に基づいたプロトコルを生成する。
【0206】
制御部36が、図7に示すようなマイクロチューブe3とチップTとの相対角度を変える第1種の補足操作を、プロトコルに加える。例えば、制御部36が、プロトコルの作業wk11の”DISCARD”の操作の中に、図7に示すようなマイクロチューブe3とチップTとの相対角を変えた第1種の補足操作を挿入する。
【0207】
なお、図18に示すような入力画面44が表示できるように、プロトコルの編集、実行等を行うプロトコルのアプリケーションソフトウェアが修正されてもよい。入力画面44は、補足操作を表現した項目表示の一例として、第1種の補足操作に対応するパラメータの名称44aと、第1種の補足操作に対応するパラメータの入力欄44bとを有する。これらのように、第1種の補足操作の固定値をパラメータ化してもよい。
【0208】
プロトコルのアプリケーションソフトウェアにおいて、プロトコルを編集して、第1種の補足操作が追加されてもよい。
【0209】
なお、ステップS5において、制御部36が、出力部33に入力画面44を表示して、プロトコルの修正情報として、入力欄44bから、第1種の補足操作によるプロトコルを修正を受け付けてもよい。
【0210】
このように、上位コントローラ30が、補足操作の入力を受け付けるために、補足操作を表現した項目表示する表示手段の一例として機能する。
【0211】
上位コントローラ30が、固定値を他の固定値に変えてもよいし、プログラム上、固定値になっている操作パラメータを変数化してもよい。制御部36が、ロボットプログラムの中にコードとして記述されているが、未だ固定値になっている操作パラメータを変数化して、ある値に設定して、第1種の補足操作を生成してもよい。第1種の補足操作パラメータの値の変更は、実験計画法により、様々な補足操作パラメータの組み合わせで実施された結果に基づき変更されてもよい。
【0212】
次に、第2種の補足操作の場合、具体的には、上位コントローラ30がプロトコルデータベース32bを参照して、追加するまたは入れ替える第2種の補足操作を読み出す。上位コントローラ30が、プロトコルにおいて、追加するまたは入れ替える操作のプロトコルの位置を特定して、第2種の補足操作を追加または入れ替えて、第2種の補足操作に基づいたプロトコルを生成する。
【0213】
制御部36が、図8Aおよび図8Bに示すように、上澄み液spが流れ落ちるぐらいマイクロチューブe3を傾けながら、アスピレータで吸引し、アスピレータの先端に取り付けらたチップTを退避する第2種の補足操作を、プロトコルの作業に加える。または、制御部36が、図9または図10に示すように、マイクロチューブe3を動かす第2種の補足操作を、プロトコルの作業に加えたり入れ替えたりする。
【0214】
プロトコルのアプリケーションソフトウェアにおいて、プロトコルを編集して、第2種の補足操作が追加されてもよい。
【0215】
上位コントローラ30が、プロトコルにおいて、第2種の補足操作を追加、または、他の操作と入れ替える。上位コントローラ30が、プロトコルからジョブに変換する際、ロボットプログラムに、第2種の補足操作を含むコードを生成する。
【0216】
図8Bに示すような第2種の補足操作の場合、図19に示すように、入力画面45が表示できるように、プロトコルのアプリケーションソフトウェアが修正されてもよい。入力画面45は、補足操作を表現した項目表示の一例として、第2種の補足操作に対応するパラメータの名称45aと、第2種の補足操作に対応するパラメータの入力欄45bとを有する。基本操作と区別でき補足操作と分かるように、名称45aおよびパラメータの入力欄45bの表示が強調されてもよい。
【0217】
図19に示すように、第2種の補足操作のような新たな手技には特定の名称を付けて、プロトコルのアプリケーションソフトウェアから選択可能にする。例えば、制御部36が、プロトコルチャートの作業wk11をクリックして”Parameter of DISCARD”のページおいて、”チップ退避手技”の新操作の表示できるように表示を制御する。新操作の名称は、単なる識別名称でも、発案者の名前でも構わない。
【0218】
プロトコルのアプリケーションソフトウェアにおいて編集して、作成した新手技の第2種の補足操作は、補足操作IDに関連付けて、新手技の名称、対応するジョブの情報と共に、プロトコルデータベース32bに記憶される。プロトコルデータベース32bにおける第2種の補足操作の内容は、他のロボットと共有化してもよい。
【0219】
なお、ステップS5において、制御部36が、出力部33に入力画面45を表示して、プロトコルの修正情報として、入力欄45bから、第2種の補足操作によるプロトコルを修正を受け付けてもよい。
【0220】
このように、上位コントローラ30が、補足操作の入力を受け付けるために、補足操作を表現した項目表示する表示手段の一例として機能する。
【0221】
次に、第3種の補足操作の場合、具体的には、上位コントローラ30がプロトコルデータベース32bを参照して、値を大幅に変える操作パラメータ(基本操作パラメータ、補足操作をパラメータ化した補足操作パラメータ)および、操作パラメータの設定範囲の情報を、プロトコルの修正情報として取得する。上位コントローラ30が、操作パラメータを選択して、操作パラメータ値の予め決められた限界値を超えた値に設定して、第3種の補足操作に基づいたプロトコルを生成する。上位コントローラ30が、評価データベース32cおよび履歴データベース32d等を参照して、機械学習等により、操作パラメータを選択して、変更するパラメータ値を設定してもよい。
【0222】
プロトコルのアプリケーションソフトウェアにおいて、プロトコルを編集して、第3種の補足操作が追加されてもよい。ステップS5において、制御部36が、第3種の補足操作によるプロトコルの修正を、プロトコルの修正情報として受け付けてもよい。
【0223】
上位コントローラ30が、基本操作および補足操作を組み合わせて、プロトコルの修正を行ってもよい。上位コントローラ30が、履歴データベース32dを参照して機械学習等された結果に基づき、プロトコルの修正を行ってもよい。
【0224】
次に、ステップS2に戻り、修正されたプロトコルにより、処理物製造システムSは、プロトコルを実施する。
【0225】
(2.4 プロトコルチャートの作成)
次に、図4Aおよび図4Bのプロトコルチャートの作成について説明する。
【0226】
プロトコルチャート作成装置として、例えば、上位コントローラ30が、初期シンボル配置手段として、処理対象が収容される容器の初期状態を表す初期シンボルを配置する。
【0227】
次に、上位コントローラ30が、順序線配置手段として、初期シンボルから第1の軸に沿った方向に容器に対する作業順序を示す順序線sLを配置する。
【0228】
次に、上位コントローラ30が、作業シンボル配置手段として、容器になされる作業を表す作業シンボルを、順序線sLに沿って配置し、一の容器に対しなされる作業が複数ある場合に、当該作業を表す作業シンボルを順序線sLに沿って並べて配置する。
【0229】
次に、上位コントローラ30が、離間手段として、異なる容器についての初期シンボル、順序線sL及び作業シンボルの配置を、第1の軸に交差する第2の軸(例えば、作業線wL)に沿った方向に離間させる。
【0230】
次に、上位コントローラ30が、修正情報表示手段として、作業シンボルの作業を実施するための基本となり、作業にロボット10が使用する容器を含む器具に対する基本操作、および、当該基本操作を補足する補足操作のうち少なくとも1つの操作の修正情報を、当該作業シンボルに対応して表示させる。
【0231】
例えば、図4Aに示すような作業シンボルを選択すると、制御部36が、図15に示すように、基本操作の修正情報を、出力部33に表示する。作業シンボルを選択すると、制御部36が、図18に示すように、基本操作および補足操作の修正情報として、パラメータの名称44aおよびパラメータの入力欄44bを、出力部33に表示する。作業シンボルを選択すると、制御部36が、図19に示すように、基本操作および補足操作の修正情報として、パラメータの名称45aおよびパラメータの入力欄45bを、出力部33に表示する。
【0232】
以上、本実施形態によれば、基本操作および補足操作のうち少なくとも1つの操作の修正情報により修正されたプロトコルで、均一な作業が可能なロボット10が動作して、より効率的な作業を行うので、安定で歩留まりが高い処理物製造等を行い、処理物製造の生産性を高めることができる。
【0233】
基本操作の修正情報が、基本操作における基本操作パラメータのパラメータ値であり、補足操作の修正情報が、作業を実施する際に追加する補足操作の情報である場合、基本操作がパラメータにより改善され、追加された補足操作により、修正されたプロトコルでロボット10が動作して、より効率的な作業を行うので、安定で歩留まりが高い処理物製造等を行い、処理物製造の生産性を高めることができる。
【0234】
補足操作に対するの修正情報が、プロトコルに従ってロボット10に実行させるためのプログラムコードにおいて固定されている値を変える情報である場合、より効率的な作業に到達できる可能性がある。
【0235】
補足操作が、固定されている値を変えることにより生成される補足操作と異なり、新規に追加された操作である場合、より効率的な作業に到達できる可能性がある。
【0236】
補足操作の入力を受け付けるために、補足操作を表現した項目表示する場合、補足操作を選択できることにより、より簡易にプロトコルを修正できる。
【0237】
実施の結果が評価される場合、プロトコルに従った作業の実施を検証できる。
【0238】
さらに、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0239】
10:ロボット(処理物製造装置)
14:ハンド
20:ロボットコントローラ(処理物製造装置)
30:上位コントローラ(処理物製造装置)
S:処理物製造システム
Wk1~Wk10:作業
e1~e11:器具
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19