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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光学センサユニット、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/47 20060101AFI20241105BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01N21/47 F
G03G21/00 510
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020069649
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021165697
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】森谷 正明
【審査官】橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-209821(JP,A)
【文献】特開2014-212397(JP,A)
【文献】特開平10-149491(JP,A)
【文献】特開2015-155944(JP,A)
【文献】特開2002-352348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/47
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象に光を照射する発光部と、
前記照射対象からの反射光を受光する受光部と、
ゲイン調整用の単一の固定値である第1の情報を記憶する記憶部と、
ゲイン調整用の変動値である第2の情報を取得する取得部と、
前記記憶部に記憶された前記第1の情報と前記取得部により取得された前記第2の情報とに基づいて、前記受光部の出力ゲインを調整する調整部と、
前記受光部の出力が所定範囲内となるように、前記発光部に供給する駆動電流を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記駆動電流の制御開始時には前記第2の情報として初期値を前記取得部に出力し、前記駆動電流の制御開始後に、供給した前記駆動電流が規定値を超えた場合、前記受光部の出力ゲインを高くするための値を前記第2の情報として前記取得部に出力し、
前記調整部は、オペアンプと、前記オペアンプの出力側に接続された第1の電子ボリュームと、前記オペアンプの入力側に接続された第2の電子ボリュームとを有し、
前記第1の情報に応じて、前記第1の電子ボリュームにおける抵抗値が設定され、
前記第2の情報に応じて、前記第2の電子ボリュームにおける抵抗値が設定されることを特徴とする光学センサユニット。
【請求項2】
前記取得部は、前記第2の情報を、前記光学センサユニットの外部から取得することを特徴とする請求項1に記載の光学センサユニット。
【請求項3】
照射対象に光を照射する発光部と、
前記照射対象からの反射光を受光する受光部と、
ゲイン調整用の単一の固定値である第1の情報を記憶する記憶部と、
ゲイン調整用の変動値である第2の情報を取得する取得部と、
前記記憶部に記憶された前記第1の情報と前記取得部により取得された前記第2の情報とに基づいて、前記受光部の出力ゲインを調整する調整部と、
前記受光部の出力が所定範囲内となるように、前記発光部に供給する駆動電流を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記駆動電流の制御開始時には前記第2の情報として初期値を前記取得部に出力し、前記駆動電流の制御開始後に、供給した前記駆動電流が規定値を超えた場合、前記受光部の出力ゲインを高くするための値を前記第2の情報として前記取得部に出力し、
前記調整部は、オペアンプと、前記オペアンプの出力側に接続された第1の電子ボリュームとを有し、
前記第1の情報に応じて、前記第1の電子ボリュームにおける抵抗値が設定され、
前記取得部は、前記第2の情報としてアナログ制御信号を取得し、
前記オペアンプのプラス入力端子に前記アナログ制御信号が入力されることを特徴とする光学センサユニット。
【請求項4】
前記第1の情報は、前記発光部の駆動電流が所定電流値である場合に、前記光学センサユニットの出力が所定出力となるように予め決定された値であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光学センサユニット。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の光学センサユニットを有する画像形成装置であって、
前記照射対象は、トナー像を担持する像担持体であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射対象に光を照射する発光部と、照射対象からの反射光を受光する受光部と、を有する光学センサユニット、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照射対象に光を照射する発光部と、照射対象からの反射光を受光する受光部と、を有する光学センサユニットが知られている。この種の光学センサユニットは、例えば、画像形成装置などの機器に適用される。
【0003】
例えば、電子写真方式でタンデム方式の画像形成装置は、複数色のそれぞれについて、帯電、露光、現像、転写という電子写真プロセスを経て画像を形成し、それぞれの色を重ね合わせる。従って、紙送りと画像形成のタイミングを正確に制御しないと色ずれが生じてしまう。そこで、中間転写ベルト等の像担持体に向けて光を照射すると共に、像担持体に形成した色ずれ検出パターンを検出することで、各色間のずれ量(色ずれ量)を算出する方式が用いられている。
【0004】
図3(a)、(b)で、色ずれ検出パターンと、パターン位置検出用の光学センサユニットによる、中間転写ベルト上の光強度分布及びセンサ出力との関係を説明する。図3(a)は、中間転写ベルト上の色ずれ検出パターンPT及び光学センサユニットの光強度分布を示す図である。この光強度分布301は、地図における等高線のように同じ光強度の点を線で繋いだものであり、中心に向かうにつれて光強度は強くなっている。図3(b)は、光学センサユニットの出力信号と、出力信号を閾値で二値化した信号を示す図である。
【0005】
光学センサユニットには正反射光学系における検知方式が用いられる。従って、光沢度の高い中間転写ベルトからの反射量は大きいため、色ずれ検出パターンがない領域での光学センサユニットの出力レベルは高い。一方、色ずれ検出パターンが光照射領域に侵入すると、中間転写ベルトからの反射光が遮られるため、出力レベルは低下する。こうして生成された出力波形からパターン位置情報を取得する場合、波形を二値化し、その二値化波形の立ち上がりエッジと立下りエッジとの中間点をパターン位置として取得するのが一般的である。
【0006】
光学センサユニットは、発光素子であるLEDと受光素子であるフォトダイオードとを主な構成要素として構成される。受光量に応じたフォトダイオードの電流値は電圧値に変換される。フォトダイオードの電流は、光学センサユニットへの取り付け誤差や電気的特性のばらつきにより個体ばらつきを持つ。このばらつきを抑えるために電圧変換値を制御部が認識できる値にゲイン調整される。一般に、ゲイン調整には可変抵抗が用いられ、ゲイン調整は、光学センサユニットが画像形成装置本体に組み込まれる前に行われる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-1229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光学センサユニットのゲイン調整部を、手動操作が可能な可変抵抗により構成した場合、機器本体への取り付け作業の際に作業者が誤って可変抵抗に触れて回転させてしまう可能性がある。調整済みの出力ゲインが、機器への光学センサユニットの取り付け過程で意図せずに変更されると、所定のLED光量に対する当初のセンサ出力値が変化してしまう。すると、機器における光学センサユニットの発光および受光のフィードバック系が不安定になる。例えば、誤って低いゲインとなってしまった場合、LED発光量が想定外に過大になり、光学センサユニットの劣化が早まる可能性がある。一方、誤って高いゲインとなってしまった場合、電源投入時のLED光量設定におけるフィード系が安定しにくい状態になる可能性がある。
【0009】
本発明は、調整済みの受光部の出力ゲインが意図せずに変更されることを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の光学センサユニットは、照射対象に光を照射する発光部と、前記照射対象からの反射光を受光する受光部と、ゲイン調整用の単一の固定値である第1の情報を記憶する記憶部と、ゲイン調整用の変動値である第2の情報を取得する取得部と、前記記憶部に記憶された前記第1の情報と前記取得部により取得された前記第2の情報とに基づいて、前記受光部の出力ゲインを調整する調整部と、前記受光部の出力が所定範囲内となるように、前記発光部に供給する駆動電流を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記駆動電流の制御開始時には前記第2の情報として初期値を前記取得部に出力し、前記駆動電流の制御開始後に、供給した前記駆動電流が規定値を超えた場合、前記受光部の出力ゲインを高くするための値を前記第2の情報として前記取得部に出力し、前記調整部は、オペアンプと、前記オペアンプの出力側に接続された第1の電子ボリュームと、前記オペアンプの入力側に接続された第2の電子ボリュームとを有し、前記第1の情報に応じて、前記第1の電子ボリュームにおける抵抗値が設定され、前記第2の情報に応じて、前記第2の電子ボリュームにおける抵抗値が設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、調整済みの受光部の出力ゲインが意図せずに変更されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光学センサユニットが適用される画像形成装置の概略断面図である。
図2】色ずれ検出センサの模式図である。
図3】色ずれ検出パターン及び光学センサユニットの光強度分布を示す図、色ずれ検出用パターンと検出信号との関係を示す図である。
図4】コントローラのブロック図である。
図5】色ずれ検出パターンの概略図とその検出信号を示す図である。
図6】色ずれ検出センサの構成を示すブロック図である。
図7】ゲイン調整部の回路構成図である。
図8】キャリブレーション処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る光学センサユニットが適用される画像形成装置の概略断面図である。この画像形成装置1は、光学センサユニットとしての色ずれ検出センサ40を備える。画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応したトナー像を形成するための複数の画像形成部IMG-Y、IMG-M、IMG-C、IMG-Kを備える。各画像形成部IMG-Y、IMG-M、IMG-C、IMG-Kは、互いに同様の構成を備えており、形成するトナー像の色が異なる。
【0015】
画像形成部IMG-Yは、ドラム状の感光体である感光ドラム2aを備える。感光ドラム2aは、図中反時計回りに回転する。感光ドラム2aの周囲には、帯電器3a、露光器5a、現像器7a、及びクリーナ4aが設けられる。帯電器3aは、感光ドラム2aの表面を帯電させる。露光器5aは、半導体レーザを光源とするレーザ走査ユニットである。露光器5aは、帯電された感光ドラム2aの表面をイエローの画像データに基づいて変調されたレーザ光により露光することで、感光ドラム2aに静電潜像を形成する。レーザ光は、感光ドラム2aの回転方向に直交する方向(感光ドラム2aの軸線方向)を主走査方向として感光ドラム2aを走査する。現像器7aは、静電潜像をイエローの現像剤(トナー)により現像して、感光ドラム2a上にイエローのトナー像を形成する。クリーナ4aは、中間転写ベルト8へのトナー像の転写後に感光ドラム2a上に残留するトナーを清掃する。ここで、副走査方向とは感光ドラム2a、2b、2c、及び2dの回転方向に相当する。
【0016】
各画像形成部IMG-Y、IMG-M、IMG-C、IMG-Kの下方には、中間転写ベルト8が設けられる。中間転写ベルト8を挟んで各感光ドラム2a~2dに対向する位置に、一次転写部6a~6dが設けられる。中間転写ベルト8には、各感光ドラム2a~2dに形成された各色のトナー像が一次転写部6a~6dで順次重ね合わせられて転写される。中間転写ベルト8は、フルカラーのトナー像を担持する。中間転写ベルト8は、ローラ10、11、21により図中時計回り方向に回転駆動される。
【0017】
中間転写ベルト8は、ローラ10,11,21を介して搬送される。中間転写ベルト8に重ね合わせられた各色のトナー画像は、二次転写部22まで搬送されて、二次転写部22に搬送されてくるシートSに4色のトナー画像が一括転写される。クリーナ12は、中間転写ベルト8に残留するトナーを除去する。二次転写部22で4色のトナー画像が一括転写されたシートSは、定着器23に搬送されて未定着のトナー画像が熱定着され、その後、排紙ローラ24を介して排紙トレイ25に排出される。
【0018】
シートSは、給紙カセット17もしくは手差しトレイ13等から搬送路に給紙される。給紙されたシートSは、静電搬送部30により搬送方向に対する斜行を補正され、レジストローラ16によりタイミングが調整されて二次転写部22へ搬送される。その際、給紙カセット17からシートSを搬送路に給紙するピックアップローラ18,19、縦パスローラ20、レジストローラ16は、高速で安定した搬送動作を実現するため、各々独立したステッピングモータにより駆動される。また、手差しトレイ13からシートSを搬送路へ給紙するピックアップローラ14,15も同様に、各々独立したステッピングモータにより駆動される。
【0019】
両面印刷時には、定着器23を通過したシートSは、排紙ローラ24から両面反転パス27に導かれた後、逆方向に反転搬送されて両面パス28へ搬送される。両面パス28を通過したシートSは、縦パスローラ20を通って再度、二次転写部22に搬送される。二次転写部22に搬送されたシートSの裏面には、中間転写ベルト8から各色のトナー画像が一括転写され、転写後のシートSは定着器23および排紙ローラ24を介して排紙トレイ25に排出される。
【0020】
画像形成装置1において、中間転写ベルト8の右側に位置する感光ドラム2dと中間転写ベルト8の支持ローラ10との間に、色ずれ検出センサ40が配置されている。色ずれ検出センサ40は、感光ドラム2a~2dから中間転写ベルト8に転写された色ずれ量検出用の測定用画像である色ずれ検出パターンPT(図5)を検出する。色ずれ検出センサ40の駆動タイミングは不図示の同期機構により制御される。色ずれ量を測定するための色ずれ検出パターンPTは、色毎に画像形成部IMG-Y~IMG-Kによりトナー像として形成され、中間転写ベルト8に転写される。本実施の形態では、中間転写ベルト8は、トナー像を担持する像担持体であり、発光部51(図2)による光の照射対象でもある。
【0021】
図2は、色ずれ検出センサ40の模式図である。色ずれ検出センサ40は、発光部51と、受光部52と、レンズ53とを備える。発光部51は、中間転写ベルト8に向けて光を照射する。受光部52は、中間転写ベルト8(中間転写ベルト8上の色ずれ検出用パターンPTを含む)で反射してレンズ53で集光された反射光を受光する。受光部52は、検出信号として、受光した光量に応じて値が変化するアナログ信号である出力電位を出力する。
【0022】
色ずれ検出用パターンPTに比べて、中間転写ベルト8の表面は反射率が高い。さらに、色ずれ検出センサ40においては、測定対象からの正反射光が検知できるように、中間転写ベルト8に対する発光部51及び受光部52の位置関係が決まっている。そのために、色ずれ検出センサ40が出力する検出信号は、中間転写ベルト8のトナー像が転写されていない表面を検出したときの値が、トナー像(色ずれ検出用パターンPT)を検出したときの値よりも高くなる。つまり、中間転写ベルト8からの反射光の受光結果に対応する電圧値が、色ずれ検出用パターンPTからの反射光の受光結果に対応する電圧値よりも高い。検出信号は二値化される。二値化された検出信号に基づいて、色ずれ検出用パターンPTの位置が検出される。
【0023】
図3(b)に、色ずれ検出用パターンPTと検出信号との関係を示す。通常、色ずれ検出用パターンPTの検出信号は、三角波形として出力される。検出信号は、閾値に基づき二値化信号へ変換される。二値化信号は、検出信号である電圧値が閾値以上ならばLowレベルを示し、電圧値が閾値未満ならばHighレベルを示す。ここでは、検出信号の振幅に対してb-1%、b-2%、b-3%の値を閾値とした場合の二値化信号が例示される。二値化信号がLowレベルからHighレベルへ変化するタイミング(立ち上がりエッジ)と二値化信号がHighレベルからLowレベルへ変化するタイミング(立ち下がりエッジ)との中間時点が色ずれ検出用パターンPTの位置として検出される。各閾値に対応する位置として、位置reg_1、reg_2、reg_3が取得される。
【0024】
図4(a)は、画像形成装置1の動作を制御するコントローラのブロック図である。コントローラは、CPU70、ROM910およびRAM78を備えるコンピュータである。コントローラには、コンパレータ72、閾値調整部77、ボトムホールド部76、画像処理制御部74、レーザ制御部75も設けられる。コントローラには、色ずれ検出センサ40が接続される。
【0025】
コントローラは、画像形成装置1による色ずれ補正を含む画像形成処理を行う。CPU70は、ROM910に格納された制御プログラムを、RAM78を作業領域に用いて実行することで、画像形成装置1の動作を制御する。また、CPU70は、制御プログラムの実行により、閾値調整制御部711、パターン読取部712、色ずれ量算出部713、発光制御部714、A/Dコンバータ715、色ずれパターン形成部716として機能する。このようなコントローラは、画像形成装置1に内蔵される。
【0026】
色ずれ検出センサ40から出力された検出信号は、CPU70、コンパレータ72、及びボトムホールド部76に入力される。コンパレータ72に入力された検出信号は、予め設定された閾値に応じて二値化される。この閾値は、閾値調整部77から入力される閾値信号により設定される。
【0027】
図4(b)は、閾値調整部77の構成図である。PWM信号発生部401は、PWM信号を生成する。閾値調整部77は、PWM信号を、抵抗及びコンデンサを有するRC回路402により平滑化して閾値を生成する。この際、閾値調整部77は、PWM信号のデューティ比を調整することで、閾値信号を調整することができる。例えば、PWM信号のオン状態を長くすることで、閾値が高くなる。閾値調整部77は、PWM信号に応じて生成した閾値をコンパレータ72に設定する。コンパレータ72は、設定された閾値に応じて検出信号から生成した二値化信号をCPU70へ送信する。
【0028】
閾値調整制御部711は、閾値調整部77を制御する。パターン読取部712は、二値化された検知信号の立上りエッジと立下りエッジを検知しタイミングを算出する。色ずれ量算出部713は、パターン読取部712が算出した検知タイミングから色ずれ量を算出する。ボトムホールド部76は、閾値設定シーケンスにおいて、検出信号の値をサンプリングする電気回路である。
【0029】
発光制御部714は、色ずれ検出センサ40の発光部51の発光を制御する。A/Dコンバータ715は、色ずれ検出センサ40からの検出信号(出力レベル)をデジタル信号に変換する。色ずれパターン形成部716は、色ずれ検出パターンPTを形成するためのデータを持ち、色ずれ検出パターンPTを形成する際に、レーザ制御部75に当該データを送る。ROM910にはコンパレータ72に設定する閾値、および、色ずれ量算出部713で算出した色ずれ量などが格納されている。これらの値は、起動時などにCPU70が参照し、画像処理制御部74などに設定を行う。
【0030】
ここで色ずれ量算出部713が行う色ずれ算出方法を説明する。図5は、色ずれ検出パターンの概略図とその検出信号(二値化後)を示す図である。二値化信号中の破線は立ち上がりエッジと立下りエッジとの中央位置を示している。色ずれ検出パターンPTはイエローのパターン画像801、811、マゼンタのパターン画像802、812、シアンのパターン画像803、813、ブラックのパターン画像804、814を有する。それぞれのパターンは主走査方向に対して45°傾いて形成されている。パターン画像801、802、803、804と、パターン画像811、812、813、814とは、主走査方向に対して逆方向に45度傾いて形成される。
【0031】
イエローのパターン画像801、811の検出タイミングを基準として色ずれ量が表される。マゼンタのパターン画像802の色ずれ量は、時間間隔ym_1で表される。マゼンタのパターン画像812の色ずれ量は、時間間隔ym_2で表される。シアンのパターン画像803の色ずれ量は、時間間隔yc_1で表される。シアンのパターン画像813の色ずれ量は、時間間隔yc_2で表される。ブラックのパターン画像804の色ずれ量は、時間間隔yk_1で表される。ブラックのパターン画像814の色ずれ量は、時間間隔yk_2で表される。この時間間隔から色ずれ量が算出される。
【0032】
代表してマゼンタの色ずれ量算出に関して説明する。マゼンタが副走査方向(+方向)に色ずれした場合、時間間隔ym_1とym_2は色ずれ量に比例して同じ量だけ大きくなる。(-)側にずれた場合も時間間隔ym_1とym_2は同じ量だけ変化する(小さくなる)。一方、主走査方向(+方向)に色ずれした場合、時間間隔ym_1は色ずれ量に比例して大きくなり、時間間隔ym_2はそれと同じ量だけ小さくなる。(-)側にずれた場合は時間間隔ym_1は小さくなり、同じ量だけ時間間隔ym_2は大きくなる。よって色ずれ量は下記の式1、2から算出される。式1、2はROM910に記憶されている。
副走査色ずれ量=X-(ym_1+ym_2)/2×搬送速度・・・(1)
主走査色ずれ量=(ym_1-ym_2)/2×搬送速度 ・・・(2)
【0033】
Xは、色ずれが発生していない場合の、基準色であるイエローのパターン画像801、811と、色ずれの測定対象であるマゼンタのパターン画像802、812との位置間隔である。時間間隔ym_1、ym_2は時間情報であるので、中間転写ベルト8の搬送速度(mm/sec)と乗算することで距離情報に変換される。他の色の色ずれ量も同様の式により導出可能である。このように、色ずれ量算出部713は、式1、式2により各色の副走査方向及び主走査方向の色ずれ量を算出することができる。
【0034】
図6は、色ずれ検出センサ40の構成を示すブロック図である。ROM910には、レジスタ909、D/A変換器903を介して定電流源902が接続されている。レジスタ909にはI2Cインターフェース911が接続されている。レジスタ909にはゲイン調整部920が接続されている。電流電圧変換器905はゲイン調整部920に接続されている。
【0035】
定電流源902からの駆動電流によって、発光部51のLED51aが発光する。D/A変換器903が出力するアナログ値によって定電流源902の電流値が決まる。受光部52のフォトダイオード52aは、LED51aが対象物に照射した反射光を受光する。この受光量に応じた電流が電流電圧変換器905に流れ、電流電圧変換器905は、この電流値に応じた電圧値を出力する。
【0036】
ゲイン調整部920は、電子ボリューム906、908、およびオペアンプ907を有する。オペアンプ907および後段の電子ボリューム908(第1の電子ボリューム)により加減算回路が構成される。電子ボリューム908における各可変抵抗の抵抗値は、4ビットのデータである第1の情報D1によって決定される。第1の情報D1はゲイン調整用の固定値であり、記憶部としてのROM910に予め記憶されている。画像形成装置1の電源が入ると、第1の情報D1がROM910から読み出されてレジスタ909にセットされ、レジスタ909から電子ボリューム908に入力される。
【0037】
第1の情報D1の値は、色ずれ検出センサ40が画像形成装置1に組み付けられる前に決定され、ROM910に格納される。第1の情報D1は、例えば、色ずれ検出センサ40が単体の状態で、調整治具上で決定される。第1の情報D1は、定電流源902から供給される発光部51の駆動電流が所定電流値i0である場合に、色ずれ検出センサ40の出力Voutが所定出力となるように決定されている。第1の情報D1が予め決定されていることで、フォトダイオード52aの電気特性やセンサユニットへの取り付け誤差等に起因する初期段階での出力のばらつきが低減される。
【0038】
前段の電子ボリューム906(第2の電子ボリューム)はゲイン調整を行う。電子ボリューム906に適用されるゲイン調整情報は、1ビットデータである第2の情報D2である。第2の情報D2は、ゲイン調整用の変動値であり、色ずれ検出センサ40の外部である発光制御部714から送信される。第2の情報D2は、発光制御部714からシリアル通信を介して取得部としてのI2Cインターフェース911により取得され、I2Cインターフェース911に格納される。そして、第2の情報D2は、I2Cインターフェース911からレジスタ909に送信され、第2の情報D2に応じて電子ボリューム906の内部の抵抗のスイッチング制御が行われる。
【0039】
色ずれ検出センサ40が搭載された画像形成装置1においては、中間転写ベルト8を基準対象物として色ずれ検出センサ40の出力Voutの値が目標値となるようにキャリブレーションが遂行される。このキャリブレーションでは、所定電流値i0に対応する初期値がレジスタ909にセットされている。この初期値がD/A変換器903に出力されることで、所定電流値i0の駆動電流により発光部51が発光する。所定電流値i0に対応する初期値は、予めROM910に格納されている。
【0040】
中間転写ベルト8による反射光が受光部52に照射されて、オペアンプ907を経たアナログの出力信号がA/Dコンバータ715(図4)へ出力される。A/Dコンバータ715で出力信号から変換されたデジタル出力データである出力Voutが発光制御部714に入力され、発光制御部714が、この出力Voutと目標値との大小関係を判定する。発光制御部714は、出力Voutが目標値である所定範囲の下限に達していない場合は、現在の駆動電流の設定値より大きい値のデータをI2Cインターフェース911に送信する。発光制御部714は、出力Voutが所定範囲の上限を超えている場合は、現在の駆動電流の設定値より小さい値のデータをI2Cインターフェース911に送信する。このようなフィードバック制御により、キャリブレーションがなされる。
【0041】
経年劣化により中間転写ベルト8の光沢度が低下してくると、D/A変換器903へ出力される駆動電流の設定値が想定外に大きくなってしまう場合がある。この状態で発光部51が駆動され続けると、LED51aの劣化により光量低下が進行し、寿命が短くなる。そこで、このような場合、発光制御部714は、D/A変換部903に対するデータの更新を止めると共に、ゲイン調整部920によるゲイン調整を行う。すなわち、加減算回路の前段の電子ボリューム906の抵抗値を調整するべく、発光制御部714は、変更後の第2の情報D2を電子ボリューム906へ送信する。これにより、受光部52側のゲインが高くなる。ゲインが高くなると、受光部52の感度が高くなる。
【0042】
図7は、ゲイン調整部920の回路構成図である。電子ボリューム906はオペアンプ907の入力側に接続され、電子ボリューム908はオペアンプ907の出力側に接続されている。電子ボリューム906は、抵抗R1、R3を有する。抵抗R1は、オペアンプ907のマイナス(-)端子(反転入力)に接続されている。抵抗R3は、オペアンプ907のプラス(+)端子(非反転入力)に接続されている。抵抗R1は抵抗R1_1、R1_2で構成されており、抵抗R3は、抵抗R3_1、R3_2で構成されている。抵抗値の大小関係は、R1_1>R1_2で且つ、R3_2>R3_1となっている。レジスタ909からの初期情報によるスイッチングによれば、抵抗R1においては抵抗R1_2が選択され、抵抗R3においては抵抗R3_2が選択される。なお、受光部52のゲインを高める場合は、抵抗R1においては抵抗R1_1が選択され、抵抗R3においては抵抗R3_1が選択される。
【0043】
電子ボリューム908は、抵抗R2、R4を有する。抵抗R2、R4はそれぞれ4つの抵抗で構成されている。これら4つの抵抗は、最も小さい抵抗値をRとして、2R、4R、8Rといった比率の関係を持っている。電子ボリューム908は、4ビットの第1の情報D1により15段階の抵抗値に設定されることができる。抵抗R1に入力される電流電圧変換器905の出力値をV1とする。抵抗R3に入力される基準値Vrefの値をV2とする。抵抗R1~R4の抵抗値により、出力Voutは式3により算出される。式3はROM910に記憶されている。
Vout=-(R2×V1)/R1+(R4/R1)×{(R1+R2)/(R3+R4)}V2・・・(3)
【0044】
図8は、キャリブレーション処理を示すフローチャートである。この処理は、ROM910に格納されたプログラムをCPU70がRAM78に展開して実行することにより実現される。この処理は、画像形成装置1の電源が入れられると開始される。なお、この処理は、ユーザからの指示に応じて実行されてもよい。この処理において、CPU70は、本発明における制御手段としての役割を果たす。
【0045】
CPU70は、ステップS101では、ROM910に格納されている第1の情報D1を読み出して色ずれ検出センサ40へ送信すると共に、発光制御部714から第2の情報D2を色ずれ検出センサ40へ送信する。送信された第1の情報D1は、色ずれ検出センサ40においてレジスタ909に設定され、レジスタ909から電子ボリューム908に出力される。第1の情報D1は固定値であるので、第1の情報D1に応じた電子ボリューム908の設定状態は、これ以降、変更されない。第1の情報D1がROM910に格納された以降、ユーザの不用意な作業により第1の情報D1が変更されてしまうことがない。
【0046】
一方、ステップS101で送信される第2の情報D2には初期値が適用される。送信された第2の情報D2は、色ずれ検出センサ40においてレジスタ909に設定され、レジスタ909から電子ボリューム906に出力される。第2の情報D2が初期値であるので、電子ボリューム906の抵抗R1においては抵抗R1_2が選択され、抵抗R3においては抵抗R3_2が選択される。
【0047】
ステップS102では、CPU70は、ROM910に格納されている初期駆動電流値を、シリアル通信を介してI2Cインターフェース911に送信する。この初期駆動電流値は、所定電流値i0に対応する初期値(デフォルト値)である。I2Cインターフェース911は、受信した初期駆動電流値をレジスタ909にセットし、D/A変換器903がこれをアナログ値に変換して定電流源902に反映させる。
【0048】
ステップS103では、CPU70は、色ずれ検出センサ40の出力Vout(デジタル)が所定範囲内であるか否かを判別する。そして、出力Voutが所定範囲内であれば、CPU70は、図8に示す処理を終了する。しかし、出力Voutが所定範囲外であれば、CPU70は、ステップS104で、出力Voutが所定範囲の上限を超えているか否かを判別する。出力Voutが所定範囲の上限を超えている場合は、発光部51の光量を減らす必要がある。そこで、CPU70は、ステップS105で、定電流源902に対する現在の駆動電流値の設定値をデクリメントした駆動電流値を、I2Cインターフェース911に送信する。
【0049】
一方、出力Voutが所定範囲の上限を超えていない場合は、出力Voutが所定範囲の下限を下回っているので、発光部51の光量を増やす必要がある。そこでCPU70は、ステップS106で、定電流源902に対する現在の駆動電流値の設定値をインクリメントした駆動電流値を、I2Cインターフェース911に送信する。ステップS103~S106の処理により、出力Voutが所定範囲内となるように、発光部51に供給する駆動電流が制御される。
【0050】
ステップS107では、CPU70は、ステップS106で送信した駆動電流値が規定値を超えているか否かを判別する。ステップS106で送信した駆動電流値が規定値を超えていない場合は、CPU70は、処理をステップS103に戻す。一方、ステップS106で送信した駆動電流値が規定値を超えている場合は、これ以降、発光部51に過大電流が流れ劣化が早まるおそれがある。そこで、CPU70は、ステップS108で、受光部52のゲインを高く(感度を高く)する第2の情報D2を、発光制御部714から色ずれ検出センサ40へ送信する。送信された第2の情報D2は、色ずれ検出センサ40においてレジスタ909に設定され、レジスタ909から電子ボリューム906に出力される。
【0051】
ステップS108で送信される第2の情報D2には初期値でなく受光部52のゲインを高くする値が適用される。すなわち、電子ボリューム906の抵抗R1において、抵抗R1においては抵抗R1_1が選択され、抵抗R3においては抵抗R3_1が選択されるような値が第2の情報D2として送信される。受光側での感度が高くなることで、出力Voutを所定範囲内に近づけることができる。ステップS108の後、CPU70は、処理をステップS103に戻す。
【0052】
本実施の形態によれば、色ずれ検出センサ40が画像形成装置1に組み付けられる前に、ゲイン調整用の第1の情報D1がROM910に記憶される。ゲイン調整部920は、少なくとも第1の情報D1に基づいて受光部52の出力ゲインを調整する。色ずれ検出センサ40は、電子ボリュームを有する構成であり、可変抵抗の意図しない手動操作等によって第1の情報D1が変化する構成ではない。従って、色ずれ検出センサ40の画像形成装置1への組み付け段階や組み付け後において、第1の情報D1が不用意に変更されることがない。よって、画像形成装置1(機器)への色ずれ検出センサ40(光学センサユニット)の取り付け過程や事後に、調整済みの受光部52の出力ゲインが意図せずに変更されることを回避することができる。
【0053】
また、色ずれ検出センサ40は、ゲイン調整用の変動値である第2の情報D2と第1の情報D1とに基づいて、受光部52の出力ゲインを調整する。これにより、機器への取り付け後の環境変化に応じてゲイン調整を行うことができる。
【0054】
また、第1の情報D1は、発光部51の駆動電流が所定電流値i0である場合に出力Voutが所定出力となるように予め決定されているので、初期段階での出力のばらつきが低減される。
【0055】
なお、第2の情報D2に基づくゲイン調整に関し、オペアンプ907の+端子にアナログ制御信号を入力する構成であっても、受光部52のゲイン調整は可能である。例えば、I2Cインターフェース911は、第2の情報D2としてアナログ制御信号を取得する。取得されたアナログ制御信号が、オペアンプ907のプラス入力端子に入力される。アナログ制御信号のレベルに応じて受光部52のゲインが変化する。
【0056】
なお、光学センサユニットとしての色ずれ検出センサ40の用途は問わず、色ずれ検出センサ40が適用される機器は、画像形成装置に限定されない。また、発光部51による光の照射対象も限定されない。なお、画像形成装置1における照射対象である像担持体として中間転写ベルト8を挙げたが、像担持体は感光ドラム2a~2dであってもよい。
【0057】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
40 色ずれ検出センサ
51 発光部
52 受光部
906、908 電子ボリューム
910 ROM
920 ゲイン調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8