(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】粒子、アフィニティー粒子、検査試薬、及び検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/543 525C
G01N33/543 525U
(21)【出願番号】P 2020071661
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019085963
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】名取 良
(72)【発明者】
【氏名】小林 本和
(72)【発明者】
【氏名】掛川 法重
(72)【発明者】
【氏名】山内 文生
(72)【発明者】
【氏名】金崎 健吾
(72)【発明者】
【氏名】笹栗 大助
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-177691(JP,A)
【文献】特開2017-133071(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204209(WO,A1)
【文献】特開2016-191681(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140216(WO,A1)
【文献】特開2009-300239(JP,A)
【文献】国際公開第2007/126151(WO,A1)
【文献】特開平11-191510(JP,A)
【文献】特表2007-527454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0124696(US,A1)
【文献】特開2013-238541(JP,A)
【文献】特開2011-216839(JP,A)
【文献】特開2006-265686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543,
B22F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を含有する磁性粒子を含む粒子であって、
前記磁性粒子の表面に樹脂が存在し、
前記粒子の体積平均粒径が、
0.7μm以上
0.9μm以下であり、
前記粒子の密度が、5.1g/cm
3以上10.0g/cm
3以下であり、前記樹脂が、
カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする粒子。
【請求項2】
前記粒子の密度が、5.1g/cm
3以上6.5g/cm
3以下である請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記樹脂の重量平均分子量が、10000以上である請求項
1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記樹脂が、下記式(2)及び(3)の繰り返し単位を有する請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の粒子。
【化1】
【化2】
【請求項5】
前記樹脂が、スチレン、及びアクリル酸に由来するユニットを有する請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項6】
前記樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、N-スクシンイミジルアクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スチレン、p-クロロスチレン、α-メチルスチレン、及びビニルピロリドンのいずれかに由来するユニットを有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項7】
前記粒子が、検体検査用である請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項8】
前記磁性粒子に占める前記磁性体の数が、1個であり、かつ、
前記磁性粒子に占める前記磁性体の含有率が、100%である請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項9】
前記磁性体が、金属、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項10】
前記磁性体が、鉄、ニッケル、及びマグネタイトからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項11】
前記磁性体が、前記鉄を含み、
前記磁性体に占める鉄原子の含有率が、80
mol%以上100
mol%以下である請求項
10に記載の粒子。
【請求項12】
前記磁性体が、前記ニッケルを含み、
前記磁性体に占めるニッケル原子の含有率が、80
mol%以上100
mol%以下である請求項
10に記載の粒子。
【請求項13】
前
記官能基が、カルボキシル基である請求項
1乃至12のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項14】
前記樹脂が、シロキサン結合を有する請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項15】
磁性体を含有する磁性粒子を含む粒子であって、
前記磁性粒子の表面に樹脂が存在し、
前記粒子の体積平均粒径が、0.4μm以上1.5μm以下であり、
前記粒子の密度が、5.1g/cm
3
以上10.0g/cm
3
以下であり、前記樹脂が、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種を有し、
前記樹脂が、シロキサン結合を有することを特徴とする粒子。
【請求項16】
請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の粒子と、前記粒子に結合するリガンドとを有することを特徴とするアフィニティー粒子。
【請求項17】
前記リガンドが、抗体、及び抗原のいずれかである請求項
16に記載のアフィニティー粒子。
【請求項18】
請求項
16又は
17に記載のアフィニティー粒子と、前記アフィニティー粒子を分散させる分散媒を有することを特徴とする検査試薬。
【請求項19】
検体に含まれる測定対象物質の検出方法であって、
重力方向の下側に第1のリガンドが固定された容器内に、測定対象物質を含む検体と、アフィニティー粒子及び前記アフィニティー粒子を分散させる分散媒を有する検査試薬と、を添加する第1工程と、
前記アフィニティー粒子が、前記測定対象物質を介して前記第1のリガンドに結合するように、磁場を印加する第2工程と、
前記測定対象物質を介して前記第1のリガンドに結合していない前記アフィニティー粒子が、前記第1のリガンドから遠ざかるように、磁場を印加する第3工程と、を有し、
前記アフィニティー粒子が、請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の粒子と、前記粒子に結合する第2のリガンドとを有し、
前記第1のリガンドと前記第2のリガンドが、前記測定対象物質に結合可能であることを特徴とする検出方法。
【請求項20】
前記第1のリガンドと前記第2のリガンドが、同じであることを特徴とする請求項
19に記載の検出方法。
【請求項21】
前記第1のリガンドと前記第2のリガンドが、異なることを特徴とする請求項
19に記載の検出方法。
【請求項22】
前記測定対象物質を介して前記第1のリガンドに結合した前記アフィニティー粒子からの信号を検出する工程を有することを特徴とする請求項
19乃至
21のいずれか1項に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子、アフィニティー粒子、検査試薬、及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性粒子は、多種多様な用途に使用されている。特に、医療分野においては、血液中の抗原や抗体などを測定して診断に用いるための検体検査用として、磁性粒子を使用している。具体的には、検体から抗原(抗体)を検出するために、抗原(抗体)と特異的に結合する抗体(抗原)を結合した磁性粒子、及び抗原(抗体)と特異的に結合する抗体(抗原)を固定化した平板を用いる方法がある。検体に抗原(抗体)が存在すると、抗原抗体反応により、抗体(抗原)を固定化した平板に、抗原(抗体)を介して磁性粒子が結合する。このような抗原(抗体)の検出方法においては、検出までの時間の短縮(すなわち、検出速度が速いこと)が求められている。
【0003】
検体検査に用いる粒子として、磁性体であるマグネタイトを用いる、磁性体含有樹脂微粒子が提案されている(特許文献1参照)。さらに、マグネタイトを含む固体微粒子と、高分子化合物を含む複合粒子が提案されている(特許文献2参照)。さらに、磁性粒子と磁性粒子の表面に被着したポリマーとを有する磁性マーカー粒子が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-099844号公報
【文献】特開2009-300239号公報
【文献】特開2012-177691号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、抗原と特異的に結合する抗体を固定化した、特許文献1~3に記載の粒子に相当する粒子と、抗原と特異的に結合する抗体を固定化した平板を用いて、検体から抗原を検出する検討を行った。その結果、検出速度が十分に得られない場合があることが判明した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、検体から抗原や抗体などの測定対象物質を検出する際に、検出速度の速い粒子を提供することにある。また、本発明の別の目的は、粒子を使用するアフィニティー粒子、検査試薬、及び検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁性体を含有する磁性粒子を含む粒子であって、前記磁性粒子の表面に樹脂が存在し、前記粒子の体積平均粒径が、0.4μm以上1.5μm以下であり、前記粒子の密度が、5.1g/cm3以上10.0g/cm3以下であり、前記樹脂が、リガンドを結合できる官能基を有することを特徴とする粒子に関する。
【0008】
また、本発明は、前記構成の粒子と、前記粒子に結合するリガンドとを有することを特徴とするアフィニティー粒子に関する。
【0009】
また、本発明は、前記構成のアフィニティー粒子と、アフィニティー粒子を分散させる分散媒を有することを特徴とする検査試薬に関する。
【0010】
さらに、本発明は、前記構成のアフィニティー粒子と、前記アフィニティー粒子に結合するリガンドを固定化した平板とを用いることを特徴とする検出方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検体から抗原や抗体などの測定対象物質を検出する際に、検出速度の速い粒子、前記粒子を使用するアフィニティー粒子、検査試薬、及び検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に述べる。各種の物性値は、特に断りのない限り、25℃における値である。粒子の体積平均粒径、及び密度は、磁性粒子の表面に存在する樹脂も考慮した体積平均粒径、及び密度のことである。以下、検体から検出する測定対象物質として、抗原を例に挙げて説明する。
【0013】
検体から抗原を検出する際に、抗原と特異的に結合する抗体を結合した粒子と、抗原と特異的に結合する抗体を固定化した平板を用いる場合、平板を重力方向の下側に配置し、平板近くに磁力を発生させる磁石などを配置する。これにより、重力と磁力の作用で、平板近くに磁性粒子を含む粒子を引き寄せることが可能となる。そして、抗原抗体反応を利用することで、平板近くに引き寄せられた粒子は、抗体及び抗原を介して、平板に結合する。さらに、重力方向の上側に磁石などを配置することで、平板に結合していない粒子を除去する。これにより、平板に結合する粒子の存在を確認でき、検体から抗原を検出できる。
【0014】
このような方法で検体から抗原や抗体などの測定対象物質を検出する際、磁性粒子への測定対象物質以外のタンパク質の吸着を抑制して、検出感度を向上させることが重要である。そのために、粒子の表面に、リガンドを結合できる官能基を有する樹脂を設ける。
【0015】
しかし、このような粒子を用いても、粒子にかかる重力と磁力が十分ではないため、平板近くに粒子を引き寄せるのに時間を要してしまい、検出速度が十分に得られない場合があることが判明した。
【0016】
そこで、本発明者らは、粒子にかかる重力と磁力を十分にするために、粒子の体積平均粒径、及び密度を大きくすることが重要であると考えた。粒子の体積平均粒径を大きくすることで、粒子にかかる重力と磁力を十分にすることができ、粒子の密度を大きくすることで、粒子にかかる磁力を十分にすることができる。結果として、粒子の移動速度が速くなり、検出速度が十分に得られる。一方、粒子の体積平均粒径、及び密度が所定の範囲を満たさないと、粒子にかかる重力と磁力が十分ではなく、平板近くに粒子を引き寄せるのに時間を要してしまい、検出速度が十分に得られない。
【0017】
特許文献1に記載の粒子は、nmサイズのマグネタイト微粒子を油性モノマーに分散させて、ミニエマルション重合により重合して形成される。粒子の密度は、1.3g/cm3であり、粒子にかかる磁力が十分ではなく、平板近くに粒子を引き寄せるのに時間を要してしまい、検出速度が十分に得られないと考えられる。
【0018】
特許文献2に記載の粒子は、有機溶媒に分散させた磁性体をせん断することで製造される。このようにして製造可能な粒子の体積平均粒径は、0.3μm程度と制限されてしまう。これにより、粒子にかかる重力と磁力が十分ではなく、平板近くに粒子を引き寄せるのに時間を要してしまい、検出速度が十分に得られないと考えられる。
【0019】
特許文献3に記載の磁性マーカー粒子は、粒子の密度が高々4.73g/cm3であるため、平板近くに磁性粒子を引き寄せるのに時間を要してしまい、検出速度が十分に得られないと考えられる。また、磁性粒子中の磁性体の含有量が100質量%未満であるため、飽和磁化が小さく、同様に、磁性粒子を引き寄せるのに時間を要してしまうと考えられる。
【0020】
<粒子>
粒子は、検体検査用であることが好ましい。粒子は、磁性体を含有する磁性粒子を含む。本発明において、粒子中の磁性粒子の領域は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより特定される領域であると定義される。粒子が20個程度視野に入る倍率で、TEMによる画像撮影を行う。ここで、TEMは、比重の異なる成分を、コントラストを持って撮影することができるため、磁性粒子中の磁性体の領域を同定することが可能となる。得られた画像について、最も外側にある磁性体と、その磁性体の対極にあり、かつ、最も外側にある磁性体を直線で結び、その直線の中心が円の中心になるように描いた円の領域を磁性粒子とする。
【0021】
磁性粒子に占める磁性体の含有率は、80%以上100%以下であり、90%以上100%以下であることが好ましい。磁性粒子に占める磁性体の含有率を大きくすることで、粒子にかかる重力と磁力が大きくなり、粒子の移動速度がさらに早くなることで、検出速度が向上する。ここで、磁性粒子に占める磁性体の含有率は、以下の方法により算出できる。
【0022】
磁性粒子に占める磁性体の含有率は、「粒子中の磁性体の含有率×(粒子の直径の平均値)3÷(磁性粒子の直径の平均値)3」の式から求める。式中の含有率、及び平均値は、以下のように算出される。少なくとも20個の粒子について、画像解析装置(ルーゼックスAP、ニレコ製)を用いて、粒子の直径と、上述のように決定した磁性粒子の直径とを測定し、それぞれの直径の平均値を算出する。粒子中の磁性体の含有率は、熱重量測定装置(TGA)やX線光電子分光分析(XPS)を用いて、算出する。TGAを用いる場合は、有機成分を熱分解する前後の重量比から求められ、XPSを用いる場合は、磁性体に特有の元素の比から求められる。
【0023】
粒子の体積平均粒径は、0.4μm以上1.5μm以下である。体積平均粒径が1.5μmを超えると、検出速度が十分に得られないことに加えて、単位質量あたりの表面積が小さくなるため、粒子において抗原抗体反応が可能な領域が小さくなり、抗原抗体反応の効率が低下してしまう場合がある。粒子の体積平均粒径は、0.7μm以上1.2μm以下であることが好ましく、0.7μm以上0.9μm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒径は、動的光散乱法により測定できる。
【0024】
粒子の密度は、5.1g/cm3以上10.0g/cm3以下であり、5.1g/cm3以上6.5g/cm3以下であることが好ましい。密度は、乾式自動密度計により測定できる。
【0025】
(磁性体)
磁性体とは、磁場の印加により磁化される材料のことである。磁性体は、金属、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。金属としては、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどが挙げられる。金属酸化物としては、四酸化三鉄(Fe3O4)、三酸化二鉄(γ-Fe2O3)、フェライトなどが挙げられる。なかでも、磁性体は、鉄、ニッケル、及びマグネタイトからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。鉄、ニッケルは、密度が大きく、マグネタイトは、飽和磁化が大きく、かつ、残留磁化が小さい。これにより、粒子にかかる重力や磁力が大きくなり、検出速度が向上する。さらに、磁性体は、鉄、又はニッケルであることが好ましい。
【0026】
ここで、磁化とは、磁性体に外部磁場をかける際に、その磁性体が分極して磁石となる現象のことであり、飽和磁化とは、磁場の強さとともに増大する磁化が飽和する値のことである。また、残留磁化とは、磁性体に外部磁場をかけた後に磁場をなくす場合に、磁性体に残留する磁化のことである。
【0027】
磁性体が鉄を含む場合、磁性体に占める鉄原子の含有率は、磁性体の密度を向上させることができるため、80%以上100%以下であることが好ましい。磁性体がニッケルを含む場合、磁性体に占めるニッケル原子の含有率は、磁性体の密度を向上させることができるため、80%以上100%以下であることが好ましい。これらの含有率は、磁性体に占める全原子数(mol)に対する、鉄原子数又はニッケル原子数(mol)を示している。
【0028】
磁性粒子に占める磁性体の個数は、1個以上であることが好ましい。磁性粒子に占める磁性体の個数が2個以上である場合、磁性体の粒径は、50nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることが好ましい。磁性粒子に占める磁性体の個数が1個である場合、0.1μm以上であることが好ましく、1.2μm以下であることがさらに好ましい。なかでも、磁性粒子に占める磁性体の個数は、1個であり、かつ、磁性粒子に占める磁性体の含有率は、100%であることが好ましい。すなわち、磁性粒子は、単一粒子であることが好ましい。これにより、粒子の密度が大きくなり、検出速度が向上する。
【0029】
粒子の検出速度を向上させるためには、粒子の沈降速度を向上させることが好ましい。粒子の沈降速度を算出する式としては、ストークスの式(V={g(ρp-ρf)D2}/18μ)が知られている。Vは沈降速度(cm/s)、gは重力加速度(980.7cm/s2)、ρpは粒子の密度(g/cm3)、ρfは分散媒の密度(g/cm3)を表す。また、Dは粒径(cm)、μは分散媒の粘度(g/cm・s)を表す。ストークスの式より、粒子の沈降速度Vは、粒径の2乗に比例して大きくなる。
【0030】
ストークスの式より求められる沈降速度は、1.0E-05(cm/s)以上であることが好ましい。沈降速度が1.0E-05未満であると、検出に時間を要し、検出速度が十分に得られない場合がある。沈降速度は、5.0E-05(cm/s)以上であることがより好ましく、1.0E-04(cm/s)以上であることがさらに好ましい。
【0031】
(樹脂)
以下、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、「アクリレート、又はメタクリレート」を表すものとする。
【0032】
樹脂は、リガンドを結合できる官能基を有する。リガンドを結合できる官能基は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、リガンドを結合できる官能基は、カルボキシル基であることが好ましい。
【0033】
樹脂の重合に際し、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有するモノマー;N-スクシンイミジルアクリレートなどのスクシンイミジル基を有するモノマー;を用いることが好ましい。
【0034】
樹脂の重合に際し、上記モノマー以外に、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの親水性基を有する(メタ)アクリレート類;スチレン、p-クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;なども用いることができる。磁性粒子への非特異的な吸着を抑制するために、親水性基を有する(メタ)アクリレート類を用いることが好ましい。
【0035】
また、リガンドを結合できる官能基は、樹脂の重合の後に付加することも可能である。例えば、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られる樹脂に、メルカプトジオールを付加することでチオール基を導入できる。また、重合して得られる樹脂に、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミドを付加することでマレイミド基を導入できる。
【0036】
樹脂は、下記式(2)及び(3)の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0037】
【0038】
【0039】
樹脂は、スチレン、及びアクリル酸に由来するユニットを有することが好ましい。ここで、ユニットとは、1つのモノマーに対応する単位構造のことを意味する。
【0040】
樹脂は、シロキサン結合を有することが好ましい。すなわち、樹脂の重合に際し、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの有機シランを含むモノマーを用いることが好ましい。
【0041】
樹脂の重量平均分子量は、10000以上であることが好ましく、100000以下であることがさらに好ましい。また、40000以上100000以下であることがより好ましく、60000以上80000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
【0042】
<アフィニティー粒子>
本発明のアフィニティー粒子は、上述の構成の粒子と、粒子に結合するリガンドとを有する。リガンドとは、測定対象物質が有する受容体に特異的に結合する化合物のことである。リガンドが測定対象物質と結合する部位は、決まっており、選択的又は特異的に高い親和性を有する。測定対象物質とリガンドの組み合わせの例としては、抗原と抗体、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体などが挙げられる。リガンドは、抗原及び抗体のいずれかであることが好ましい。また、アフィニティー粒子には1種のリガンドが結合していてもよいし、複数種のリガンドが結合していてもよい。複数種のリガンドが結合したアフィニティー粒子を用いることで、複数種の測定対象物質を検出することが容易になる。また、測定対象物質がリガンドに認識される認識部位が複数ある場合、複数の認識部位に応じた複数種のリガンドをアフィニティー粒子に結合させておくとよい。
【0043】
粒子にリガンドを固定化し、アフィニティー粒子とするためには、粒子が有する、リガンドが結合可能な官能基を利用し、化学結合、物理吸着などの従来公知の方法を適用することができる。特に、粒子にリガンドをアミド結合させる場合は、1-[3-(ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド]などの触媒を用いることができる。
【0044】
アフィニティー粒子は、リガンドを固定化した平板を用い、抗原抗体反応によって平板に測定対象物質を介して粒子を結合させ、磁力により結合していない粒子を平板近くから除去し、平板に結合した粒子を検出する方法に用いられることが好ましい。
【0045】
<検査試薬>
検査試薬として、上記構成のアフィニティー粒子と、アフィニティー粒子を分散させる分散媒を有する。アフィニティー粒子の含有量は、分散媒全質量を100質量%として、0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。検査試薬には、溶剤やブロッキング剤などを含んでいてもよい。溶剤やブロッキング剤などは、2種以上を組み合わせてもよい。溶剤としては、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液、アンモニア緩衝液などの緩衝液が挙げられる。
【0046】
<検出方法>
本実施形態において、検体に含まれる測定対象物質の検出方法は以下の工程を少なくとも有する。
【0047】
(第1工程)
第1工程では、重力方向の下側に第1のリガンドが固定された容器内に、測定対象物質を含む検体と、アフィニティー粒子及びアフィニティー粒子を分散させる分散媒を有する検査試薬と、を添加する。
【0048】
(第2工程)
第2工程では、アフィニティー粒子が測定対象物質を介して第1のリガンドに結合するように、磁場を印加する。
【0049】
(第3工程)
第3工程では、測定対象物質を介して第1のリガンドに結合していないアフィニティー粒子が、第1のリガンドから遠ざかるように、磁場を印加する。
【0050】
本実施形態に係る検出方法において、第1のリガンド、第2のリガンドは測定対象物質に結合可能であればよく、前述のリガンドを用いることができる。第1のリガンド、第2のリガンドとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
また、第1のリガンドは、容器(筐体)内の、重力方向の下側に具備した平坦な面や、容器内に設けた平板上に設けることができる。検出方法の一例は以下の工程を有する。
(1)重力方向の下側に、アフィニティー粒子と結合するリガンドを固定化した平板を具備する容器内に、検体、及び上記構成の検査試薬を入れる第1工程。
(2)平板近くに磁石を配置させて検査試薬中のアフィニティー粒子を平板近くに引き寄せる第2工程。
(3)並びに重力方向の上側に磁石を配置させて、平板に結合していないアフィニティー粒子を除去する第3工程を有する。さらに、測定対象物質を介して第1のリガンドに結合したアフィニティー粒子からの信号を検出する工程を実行することで、測定対象物質の有無や濃度を測定することができる。抗原抗体反応により、検体中の測定対象物質を介して、平板に粒子が結合することで、検体中の測定対象物質の存在(有無や濃度)を確認できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」、及び「%」と記載しているものは、特に断らない限り質量基準である。
【0053】
<実施例1>
300mLのフラスコに、10mMのトリス緩衝液(東京化成工業株式会社製)100mL、磁性体である鉄粒子(NP-FE-1、EMジャパン株式会社製)1.0gを混合し、25℃で、20分間撹拌した。ここで、トリス緩衝液のpHは、塩酸で調整し、9.0であった。また、鉄粒子の体積平均粒径は、0.8μmであった。得られた溶液に、ドーパミン塩酸塩(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)1.0gを添加して、25℃で一晩撹拌し、分散液を得た。
【0054】
その後、分散液を遠心分離して、上澄みを除去してイオン交換水で洗浄する操作を3回行い、沈殿物にpH=7.4のリン酸塩緩衝液(キシダ化学株式会社製)を加え、リン酸塩緩衝液に置換した分散液を得た。得られた分散液に、樹脂である、N-ビニルピロリドン-アクリル酸共重合体(ポリマーソース製)1.0gを溶かした。ここで、N-ビニルピロリドン-アクリル酸共重合体の重量平均分子量は、60000であり、ビニルピロリドンに対応する単位構造の合計のモル量と、アクリル酸に対応する単位構造の合計のモル量との比は、4:6であった。
【0055】
樹脂を含む分散液に、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業株式会社製)0.4g、及びスチレン(キシダ化学株式会社製)1.3gを添加し、25℃で窒素を吹き込みながら、15分間撹拌し、乳濁液を得た。得られた乳濁液を、オイルバスを用いて70℃に加熱した。その加熱した乳濁液に、ペルオキソ二硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社(現:富士フイルム和光純薬株式会社)製)0.3gをpH=7.4のリン酸塩緩衝液(キシダ化学株式会社製)10mLに溶かした溶液を添加した。70℃で7時間、乳濁液を撹拌した後、乳濁液の温度を25℃に戻した。その後、乳濁液を遠心分離し、磁性粒子の表面に樹脂が存在する粒子を回収し、上澄みを捨て、イオン交換水で再分散させた。この遠心分離による粒子の回収と、イオン交換水による再分散の操作を3回行い、粒子の含有量が1.0%である粒子1の分散液を得た。
【0056】
<実施例2>
実施例1の粒子の分散液の調製において、樹脂を含む分散液に添加する材料を、スチレン(キシダ化学株式会社製)のみに変更した。それ以外は、実施例1の粒子の分散液の調製と同様の手順で、粒子の含有量が1.0%である粒子2の分散液を得た。
【0057】
<実施例3>
300mLのフラスコに、10mMのトリス緩衝液(東京化成工業株式会社製)100mL、磁性体である鉄粒子(NP-FE-1、EMジャパン株式会社製)1.0gを混合し、25℃で、20分間撹拌した。ここで、トリス緩衝液のpHは、塩酸で調整し、9.0であった。また、鉄粒子の体積平均粒径は、0.8μmであった。得られた溶液に、ドーパミン塩酸塩(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)1.0gを添加して、25℃で一晩撹拌し、分散液を得た。
【0058】
その後、分散液を遠心分離して、上澄みを除去してイオン交換水で洗浄する操作を3回行い、沈殿物にイオン交換水を加え、イオン交換水に置換した分散液を得た。得られた分散液に、ポリビニルピロリドン(PVP-K30、キシダ化学株式会社製)1.0g、及び1-アミノ-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘンイコサン-21-酸2.0gを混合し、一晩25℃で撹拌し、分散液を得た。その分散液を遠心分離し、磁性粒子の表面に樹脂が存在する粒子を回収し、上澄みを捨て、イオン交換水で再分散させた。この遠心分離による粒子の回収と、イオン交換水による再分散の操作を3回行い、粒子の含有量が1.0%である粒子3の分散液を得た。樹脂の重量平均分子量は、60000であった。
【0059】
<実施例4>
1Lのセパラブルフラスコに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%とノニオン性乳化剤(エマルゲン150、花王株式会社製)0.5%を含有する水溶液750g、及び鉄粒子(NP-FE-1、EMジャパン株式会社製)30gを順に投入し、溶液を得た。得られた溶液をホモジナイザーで分散し、70℃に加熱した。
【0060】
得られた溶液に、水溶液75gに、シクロへキシルメタクリレート14g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1g、及びt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサネート(パーブチルO、日本油脂製)0.3gを入れて分散させた分散液を、1時間かけて滴下した。ここで、水溶液は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%とノニオン性乳化剤(エマルゲン150、花王株式会社製)0.5%を含有する。これにより、磁性粒子の表面に、樹脂を含む第1層を有する粒子を含む液体を得た。
【0061】
得られた液体に、水溶液75gに、シクロへキシルメタクリレート14g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1g、及びt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサネート(パーブチルO、日本油脂株式会社(現:日油株式会社)製)0.3gを入れて分散させた分散液を、1時間かけて滴下した。ここで、水溶液は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%とノニオン性乳化剤(エマルゲン150、花王株式会社製)0.5%を含有する。これにより、磁性粒子の表面に、樹脂を含む2層(第1層、第2層)が存在する粒子を含む液体を得た。2層に含まれる樹脂の重量平均分子量は、80000であった。
【0062】
得られた液体を80℃に昇温した後、2時間重合を続けて、反応を完了させて、分散液を得た。その分散液を遠心分離し、磁性粒子の表面に樹脂が存在する粒子を回収し、上澄みを捨て、イオン交換水で再分散させた。この遠心分離による粒子の回収と、イオン交換水による再分散の操作を3回行い、粒子の含有量が1.0%である粒子4の分散液を得た。
【0063】
<実施例5>
実施例3の粒子の分散液の調製において、磁性体の種類を、ニッケル粒子に変更した。ここで、ニッケル粒子の体積平均粒径は、0.45μmであった。それ以外は、実施例3の粒子の分散液の調製と同様の手順で、粒子の含有量が1.0%である粒子5の分散液を得た。
【0064】
<比較例1>
実施例3の粒子の分散液の調製において、磁性体の種類を、マグネタイト粒子に変更した。ここで、マグネタイト粒子の体積平均粒径は、0.7μmであった。それ以外は、実施例3の粒子の分散液の調製と同様の手順で、粒子の含有量が1.0%である粒子6の分散液を得た。
【0065】
<比較例2>
FeCl3及びFeCl2を水に溶解させて溶解液とした。この溶解液を25℃に維持したまま、激しく撹拌した。その後、この溶解液にアンモニア水を加えて、マグネタイトの懸濁液を得た。得られた懸濁液に、オレイン酸を加え、70℃で1時間、110℃で1時間、懸濁液を撹拌し、スラリーを得た。このスラリーを多量の水で洗浄し、減圧乾燥することで、粉末の疎水化マグネタイトを得た。得られた疎水化マグネタイトの平均粒径は、11nmであり、分子量分布は、1.3であった。ここで、疎水化マグネタイトの平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて算出した値である。
【0066】
次いで、クロロホルム4g中に、スチレン2gと疎水化マグネタイト3gを秤量して、混合液1を得た。水12gに、ドデシル硫酸ナトリウム0.01gを溶解させて、混合液2を得た。混合液1及び混合液2を混合して混合液3として、この混合液3を、撹拌式ホモジナイザーにて冷却しながら10分間せん断することで、複数の磁性体を含有する磁性粒子を含む液体を得た。
【0067】
この磁性粒子を含む液体をエバポレータにて減圧処理することで、分散媒からクロロホルムを優先的に分留した。得られた磁性粒子を窒素バブリングにより脱酸素した後、重合開始剤0.01gを添加し、70℃、6時間でスチレンを重合し、磁性粒子の表面に樹脂が存在する粒子7の分散液(粒子7の含有量が1.0%)を得た。重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドを用いた。樹脂の重量平均分子量は、70000であった。
【0068】
<比較例3>
FeCl3及びFeCl2を水に溶解させて溶解液とした。この溶解液を25℃に維持したまま、激しく撹拌した。その後、この溶解液にアンモニア水を加えて、マグネタイトの懸濁液を得た。得られた懸濁液に、オレイン酸を加え、70℃で1時間、110℃で1時間、懸濁液を撹拌し、スラリーを得た。このスラリーを多量の水で洗浄し、減圧乾燥することで、粉末の疎水化マグネタイトを得た。
【0069】
得られた疎水化マグネタイトに、ポリエチレンオキサイド鎖を有する非イオン性界面活性剤(Emulgen 1150S-70、花王株式会社製)0.3gを溶解した水溶液を加えて、ソニケーションした。これにより、疎水化マグネタイト粒子表面に、非イオン性界面活性剤を吸着させることで、粒子表面に親水性を付与したマグネタイト粒子のコロイド溶液を得た。このコロイド溶液に、HCl溶液56μLに、イオン性界面活性剤であるアミノウンデカン10μLを溶解させた水溶液を添加し、粒子表面に非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤の両方を吸着させたマグネタイト粒子のコロイド溶液を得た。
【0070】
得られたコロイド溶液に、スチレン2.7g、アクリル酸0.3g、重合開始剤0.025g、ジビニルベンゼン0.08g、及びジエチルエーテル2.5gを添加し、ソニケーションを行い、乳化液を得た。ここで、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルを用い、ジビニルベンゼンは、架橋剤として用いた。
【0071】
乳化液に、全量が125gとなるように水を添加し、ソニケーションした。その後、350rpmで撹拌しながら加熱し、乳化液の温度が70℃に達したところで、純水5mLに、水溶性の重合開始剤(V-50、和光純薬工業株式会社(現:富士フイルム和光純薬株式会社)製)50mgを溶かした水溶液を添加した。その後、12時間の重合反応を行い、磁性粒子の表面に樹脂が存在する粒子10の分散液(粒子の含有量が1.0%)を得た。樹脂の重量平均分子量は、60000であった。
【0072】
[磁性粒子中の磁性体の含有率]
磁性粒子に占める磁性体の含有率は、「粒子中の磁性体の含有率×(粒子の直径の平均値)3÷(磁性粒子の直径の平均値)3」の式から求めた。式中の含有率、及び平均値は、以下のように算出した。少なくとも20個の粒子について、画像解析装置(ルーゼックスAP、ニレコ製)を用いて、粒子の直径と、磁性粒子の直径とを測定し、それぞれの直径の平均値を算出した。粒子中の磁性体の含有率は、X線光電子分光分析(XPS)を用いて、算出した。
【0073】
[体積平均粒径の測定方法]
粒子の体積平均粒径は、粒子の分散液を純水で250倍(体積基準)に希釈した水溶液を測定サンプルとし、動的光散乱法による粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)を使用して、測定した値である。測定条件は、SetZero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:非球形、屈折率:1.51である。
【0074】
[密度の測定方法]
磁性粒子の密度は、乾式自動密度計(アキュピックII 1340、株式会社島津製作所製)を使用して、測定した値である。測定は、温度23℃で行った。
【0075】
測定装置は、ヘリウムガス導入管が接続された試料室、及びヘリウムガス排出管が接続された膨張室を有する。また、試料室と膨張室は、連結管によって接続されている。ヘリウムガス導入管、連結管、及びヘリウムガス排出管は、いずれもストップバルブを備える。試料室は、室内の圧力を測定する圧力計を有する。
【0076】
上記の測定装置を用いて、具体的には以下のように測定した。まず、標準球を用いて、試料室の容積(VCELL)、及び膨張室の容積(VEXP)を測定した。試料としては、40℃で24時間減圧乾燥したものを用いた。圧力は、ゲージ圧であり、絶対圧力から周囲圧力を差し引いた圧力である。試料室に試料を入れ、試料室のヘリウムガス導入管、連結管、及び膨張室のヘリウムガス排出管を通してヘリウムガスを2時間流して、測定装置内をヘリウムガスで置換した。次に、連結管、及びヘリウムガス排出管のストップバルブを閉じ、試料室に、ヘリウムガス導入管からヘリウムガスを134kPaになるまで導入し、ヘリウムガス導入管のストップバルブを閉じた。ヘリウムガス導入管のストップバルブを閉じてから5分後に試料室の圧力(P1)を測定した。さらに、連結管のストップバルブを開いてヘリウムガスを膨張室に移送し、その際の圧力(P2)を測定した。
【0077】
以下の式(4)から、試料の体積(VSAMP)を算出し、得られた値、及び試料の重量(WSAMP)を用いて、試料の密度ρ(WSAMP/VSAMP)を求めた。
VSAMP=VCELL-VEXP[(P1-P2)-1] 式(4)
【0078】
[重量平均分子量の測定方法]
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定した。25℃で24時間かけて、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。得られた溶液を、メンブレンフィルターでろ過して、サンプル溶液を得た。サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.3%となるように調整した。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で樹脂の重量平均分子量を測定した。
装置:Waters2695 Separations Module、Waters製RI検出器:2414detector、Waters製
カラム:KF-806Mの4連、昭和電工製
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:100μL
【0079】
樹脂の重量平均分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500、東ソー製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用した。
【0080】
<アフィニティー粒子の作製>
実施例及び比較例の各磁性粒子に、抗CRP抗体を以下のように結合させた。ここで、CRPとは、C-Reactive Proteinの略で、体内で炎症が起きたり、組織が破壊されたりする場合に、血中に現れるタンパク質のことである。
【0081】
まず、磁性粒子の分散液を、15000rpm(20400g)、15分間遠心して、磁性粒子を沈殿させた。上澄みを除去した後、磁性粒子のペレットを、MES緩衝液で再分散させ、水溶性カルボジイミド(WSC)、及びN-ヒドロキシスクシンイミドを加えた。その後、25℃で30分間撹拌し、遠心分離により磁性粒子を回収した。回収した磁性粒子をMES緩衝液で洗浄し、MES緩衝液で再分散させて、抗体の終濃度が2mg/mLとなるように抗CRP抗体を加えた。その後、25℃で60分間撹拌し、遠心分離により磁性粒子を回収し、磁性粒子をHEPES緩衝液で洗浄し、抗CRP抗体が結合したアフィニティー粒子の分散液を得た。
【0082】
磁性粒子に抗体が結合していることは、抗体を加えたMES緩衝液中の抗体の濃度の減少量を、タンパク質を比色定量することが可能なBCA(ビシンコニン酸)アッセイで確認した。
【0083】
[非特異吸着性の確認]
実施例のアフィニティー粒子の分散液を用いて、アフィニティー粒子の非特異吸着性の確認を行った。アフィニティー粒子の分散液50μLに、リン酸生理食塩水で50倍に希釈した血清溶液51μLを添加し、添加の前後で、アフィニティー粒子への非特異吸着による粒子の凝集の有無を目視で確認したところ、顕著な凝集は見られなかった。
【0084】
[検出感度の確認]
実施例のアフィニティー粒子の分散液を用いて、アフィニティー粒子の検出感度の確認を行った。抗CRP抗体が結合した平板を6mLのバイアル瓶の下部にセットした。また、アフィニティー粒子の含有量が0.01%の水溶液をバイアル瓶に入れ、アフィニティー粒子を分散させた。バイアル瓶に、抗CRP抗原を30μL添加し、バイアル瓶の下部に5分間ネオジム磁石を当てた後、ネオジム磁石を外して、バイアル瓶を1分間静置した。次に、バイアル瓶の上部に1分間ネオジム磁石を当て、上澄みのアフィニティー粒子を除去した後、抗CRP抗体が結合した平板を取り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)により、平板上の抗体に、抗原を介してアフィニティー粒子が結合していることを確認した。
【0085】
<評価>
本発明においては、下記の評価の評価基準で、4を許容できるレベルとし、3、2、又は1を許容できないレベルとした。表1に評価結果を記載する。
【0086】
(検出速度)
アフィニティー粒子の含有量が0.01%の水溶液10mLをバイアル瓶に入れ、アフィニティー粒子を分散させた。バイアル瓶の下部に60秒間ネオジム磁石を当てた後、ネオジム磁石を外して、バイアル瓶中を粒子が沈降する様子を目視で観察した。アフィニティー粒子が沈降しやすいほど、沈降したアフィニティー粒子の濃度の検出速度が速いことを意味する。
4:アフィニティー粒子は80秒ですべて沈降し、上澄みは清澄であった。
3:アフィニティー粒子は120秒ですべて沈降し、上澄みは清澄であった。
2:アフィニティー粒子は120秒で一部沈降し、上澄みの一部にアフィニティー粒子が見られた。
1:アフィニティー粒子は120秒で一部沈降し、上澄みの全体にアフィニティー粒子が見られた。
【0087】