(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】撮像装置、その制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/73 20230101AFI20241105BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20241105BHJP
H04N 23/661 20230101ALI20241105BHJP
H04N 23/70 20230101ALI20241105BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20241105BHJP
G03B 15/05 20210101ALI20241105BHJP
【FI】
H04N23/73
H04N23/56
H04N23/661
H04N23/70
G03B7/091
G03B15/05
(21)【出願番号】P 2020092145
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】富岡 悠二
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058995(JP,A)
【文献】特開2004-126288(JP,A)
【文献】国際公開第2005/078529(WO,A1)
【文献】特開2009-033668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/56 - 23/76
G03B 7/091
G03B 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影が可能な撮像装置であって、
前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合には、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する設定手段
と、
前記設定手段によりシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する前に、絞り数値およびISO感度の少なくとも何れかの露出制御量を再設定した場合の露光タイムラグを予測して演算する演算手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合であって、かつ既に設定されているシャッタースピードが同調速度よりも速い場合に、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記設定手段は、
前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合であっても、既に設定されているシャッタースピードが同調速度よりも速くない場合には、既に設定されているシャッタースピードを維持することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記設定手段は、
前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合であって、かつ既に設定されているシャッタースピードが同調速度よりも速い場合には、シャッタースピードを同調速度と同じ値に設定することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記設定手段は、
シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定した場合には、絞り数値およびISO感度の少なくとも何れかの露出制御量を再設定することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合に、前記他の撮像装置がシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定するために、前記他の撮像装置に対してストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報を送信する第1の送信手段を有することを特徴とする請求項1ないし
5の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の送信手段は、
前記他の撮像装置から受信したストロボ発光が可能であるか否かを示す情報に基づいて、前記他の撮像装置に対してストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報を送信することを特徴とする請求項
6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の送信手段は、
前記他の撮像装置のうち少なくとも1つの撮像装置からストロボ発光が可能であることを示す情報を受信することにより前記他の撮像装置に対してストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報を送信することを特徴とする請求項
6または
7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の送信手段は、
ユーザからの撮影指示に応じて、前記他の撮像装置に対してストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報を送信することを特徴とする請求項
6ないし
8の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の送信手段は、
前記他の撮像装置に対して撮影指示の情報および露光タイミングの情報の少なくとも何れかの情報を送信することを特徴とする請求項
6ないし
9の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1の送信手段による送信の前に、前記他の撮像装置に対してストロボ発光が可能であるか否かを問い合わせる情報を送信する第2の送信手段を有することを特徴とする請求項
6ないし
10の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記第2の送信手段は、
ユーザからの撮影準備指示に応じて、前記他の撮像装置に対してストロボ発光が可能であるか否かを問い合わせる情報を送信することを特徴とする請求項
11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記設定手段は、
前記他の撮像装置からストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報を受信することに応じて、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定することを特徴とする請求項1ないし
5の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記他の撮像装置からストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報を受信する前に、前記他の撮像装置に対して自身がストロボ発光が可能であるか否かを示す情報を送信する送信手段を有することを特徴とする請求項
13に記載の撮像装置。
【請求項15】
他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影が可能な撮像装置の制御方法であって、
前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合には、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する設定ステップ
と、
前記設定ステップによりシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する前に、絞り数値およびISO感度の少なくとも何れかの露出制御量を再設定した場合の露光タイムラグを予測して演算する演算ステップと、を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1ないし
14の何れか1項に記載された撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1ないし
14の何れか1項に記載された撮像装置の各手段として機能させるためのプログラムを格納したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、その制御方法、プログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のカメラがネットワーク等によって接続され、協調動作をする撮像システムにおいて、マスタカメラがクライアントカメラの露光開始タイミングを制御するシステムが知られている。
【0003】
特許文献1には、マスタ側は、クライアント側が撮影指示を受信してから露光を開始するまでの遅延時間(露光タイムラグ)を撮影前に収集し、マスタ側を含む全カメラの露光開始タイミングを制御する撮像システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の撮像システムでは、ストロボを使用した撮影が考慮されていない。したがって、一部のカメラにストロボを装着して撮影をする場合、シャッタースピードを個々に設定するとストロボを装着していないカメラのシャッタースピードがストロボの同調速度よりも速いとシャッター全開中にストロボ発光の開始・終了ができない。この場合には、撮影される画像に露光ムラが発生してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ストロボ発光による同期撮影をするときの露光ムラを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影が可能な撮像装置であって、前記他の撮像装置との間でストロボ発光による同期撮影をする場合には、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する設定手段と、前記設定手段によりシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する前に、絞り数値およびISO感度の少なくとも何れかの露出制御量を再設定した場合の露光タイムラグを予測して演算する演算手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ストロボ発光による同期撮影をするときの露光ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】カメラおよびストロボの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】シャッタースピードを設定するときの処理を説明するための図である。
【
図6】第2の実施形態の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】露出制御量を再演算するときの処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態について添付した図面に基づいて説明する。本実施形態の撮像装置は、一眼レフタイプのデジタルカメラ(以下、カメラという)である場合について説明する。また、本実施形態の撮影システムは、マスタカメラと1台以上のクライアントカメラと1台以上のストロボにより構成される。マスタカメラは、他のカメラに対して撮影指示するカメラであり、クライアントカメラはマスタカメラによる撮影指示に応じて撮影するカメラである。
【0011】
図1は、カメラおよびストロボの構成の一例を示すブロック図である。
撮像素子101は、レンズ群108により集光された光束を受光して電気的な画像信号に変換する。撮像素子101は、電気的な画像信号に変換する感度(受光感度)を変更することができ、受光感度(ISO感度)によって光量を調節することができる。
シャッター106は、先幕、後幕の2種類のシャッターで構成されている。撮影開始時に先幕を走行させて撮像素子101を露光させ、撮影完了時に後幕を走行させて撮像素子101を遮光する。また、シャッター106は、走行速度(シャッタースピード)に応じて撮像素子101への光量を調節することができる。なお、シャッター106は、物理的な機構に限られず、撮像素子101を電子制御する構成であってもよい。
【0012】
シャッター制御部107は、シャッター106の開閉状態を制御する。シャッター制御部107は、撮像装置制御部105により指示された時間でシャッター106を制御することで撮像素子101の露光時間を制御する。
絞り駆動部111は、撮影レンズ制御部112により指示された絞り位置に絞り110を駆動させる。
【0013】
レンズ駆動部109は、撮影レンズ制御部112により指示された位置にレンズ群108を駆動させる。
撮影レンズ制御部112は、絞り駆動部111を制御することで絞り110の絞り量(絞り数値)を変更する。撮影レンズ制御部112は、光量と光束を調節することができる。また、撮影レンズ制御部112は、レンズ駆動部109を制御することでレンズ群108の位置を変更する。撮影レンズ制御部112は、被写体からの光束の収束状態を変更することができる。
【0014】
撮像装置制御部105は、撮影レンズ制御部112を介して絞り110とレンズ群108の状態を指示することができる。撮像装置制御部105と撮影レンズ制御部112とは電気的に接続される。また、撮像装置制御部105は、絞り110、シャッター106、撮像素子101によって光束の総光量を決定する。ここで、絞り110、シャッター106、撮像素子101の調節量を露出制御量という。
【0015】
表示部115は、撮像素子101によって撮影された撮影結果を表示したり、撮像装置制御部105によって設定されている絞り110、シャッター106、撮像素子101、それぞれの露出制御量を表示したりする。
【0016】
操作部113は、ユーザが撮影指示をしたり、ISO感度やシャッタースピード、絞り数値といった露出制御量を決定する撮影条件の設定をしたりすることができる。操作部113は、図示しない撮影指示部を有する。撮影指示部は、押し下げ具合によって2段階の状態に切替えられる。撮影指示部が半押されることでSW1信号が出力され、全押しされることでSW2信号が出力される。撮像装置制御部105は、SW1信号が出力されることでユーザからの撮影準備指示を認識し、SW2信号が出力されることでユーザからの撮影指示を認識する。撮像装置制御部105は、ユーザからの撮影指示を認識することにより、絞り110、シャッター106、撮像素子101を駆動させ、撮影処理を行う。
【0017】
信号処理部102は、撮像素子101により出力された画像信号を処理する。信号処理部102は、画像信号を撮像装置制御部105に送信したり、表示部115に送信したりする。
記録部114は、信号処理部102から取得した画像信号を静止画または動画として記録する。
【0018】
焦点距離判定部103は、信号処理部102から取得した画像信号を解析し、レンズ群108が被写体に対して合焦しているかを推定する情報を演算し、演算した情報を撮像装置制御部105に送信する。撮像装置制御部105は、被写体に合焦していないと判断すると撮影レンズ制御部112を通じてレンズ群108の状態を変更して、被写体に合焦するように調整する。
【0019】
被写体輝度判定部104は、信号処理部102から取得した画像信号を解析し、被写体に対する明るさ(輝度値)を算出し、算出した輝度値を撮像装置制御部105に送信する。撮像装置制御部105は、輝度値を受信することにより、操作部113を介して設定された撮影条件に基づいてシャッタースピード、絞り数値、ISO感度の露出制御量を演算する。
通信部116は、図示しない有線接続部や無線アンテナを介した他のカメラやネットワーク機器との通信処理を制御する。通信部116は、撮像装置制御部105の指示によって通信用のデータ変換や通信データの送受信等を行う。
【0020】
アクセサリ接続部117は、ストロボ120や図示しないマイク等のアクセサリをカメラ100に装着するための接続部である。アクセサリ接続部117と撮像装置制御部105とは、電気的に接続される。撮像装置制御部105は、アクセサリ接続部117に接続されたアクセサリを制御することができる。
【0021】
ストロボ120は、発光部121、発光装置制御部122を有する。
発光装置制御部122は、発光部121の発光量や発光タイミング、発光に必要な充電等を制御する。発光装置制御部122は、撮像装置制御部105の指示やユーザ設定に基づいて撮影時に発光部121を制御する。
【0022】
図2は、2台以上のカメラが接続された撮影システム200の構成の一例を示す図である。
撮影システム200は、カメラ100と同じ構成のマスタカメラ201とクライアントカメラA~C(202~204)(以下、クライアントカメラ202~204という)を無線LANにより通信可能に接続することで構成される。なお、接続は有線LANであってもよく、その場合にはマスタカメラ201とクライアントカメラ202~204との間に図示しない中継器を設けて接続を行う。また、本実施形態ではクライアントカメラ202にのみストロボ120と同じ構成のストロボ205が装着され、マスタカメラ201およびクライアントカメラ203、クライアントカメラ204はストロボが装着されていない。また、マスタカメラ201およびクライアントカメラ202~204は通信可能であって、接続時にカメラ内時刻の同期を随時行う。
【0023】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。本実施形態では、マスタカメラ201の操作部113から出力されるSW1信号を発光可否情報の取得・要求のトリガとし、操作部113から出力されるSW2信号を発光有無の通知のトリガとする。
【0024】
図3は、マスタカメラ201の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
図3のフローチャートは、マスタカメラ201の撮像装置制御部105が記録部114に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
S101では、撮像装置制御部105は、操作部113からのSW1信号を検出したか否かを判定する。SW1信号を検出した場合にはS102に進む。
【0025】
S102では、撮像装置制御部105は、クライアントカメラ202~204に露光タイムラグと発光可否情報を要求・受信すると共に、マスタカメラ201の露光タイムラグと発光可否情報を取得する。露光タイムラグと発光可否情報の要求は、操作部113から出力されるSW1信号がトリガとなる。ここで、露光タイムラグは、カメラが露光準備を開始してから露光開始されるまでの遅延時間である。発光可否情報は、カメラにストロボが装着されており、ストロボ発光が可能であるか否かを示す情報である。また、発光可否情報の要求とは、ストロボ発光が可能であるか否かを問い合わせる情報を送信する一例に対応する。本実施形態では、マスタカメラ201にストロボが装着されていないために撮像装置制御部105が取得するマスタカメラ201の発光可否情報は、ストロボ発光が不可であることを示す情報である。
【0026】
S103では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201とクライアントカメラ202~204の発光可否情報に基づき、撮影時にストロボ発光を行うか否かの発光有無情報を判定する。マスタカメラ201とクライアントカメラ202~204のうち1台でも発光可否情報が、ストロボ発光が可能であることを示す情報である場合には発光有りとする発光有無情報となる。一方、マスタカメラ201とクライアントカメラ202~204のうち全ての発光可否情報が、ストロボ発光が不可であることを示す情報である場合には発光無しとする発光有無情報となる。
【0027】
S104では、撮像装置制御部105は、操作部113からのSW2信号を検出したか否かを判定する。SW2信号を検出した場合にはS105に進む。
S105では、撮像装置制御部105は、S102で取得したマスタカメラ201とクライアントカメラ202~204の露光タイムラグに基づき、露光開始時刻である露光タイミングを算出する。
【0028】
S106では、撮像装置制御部105は、クライアントカメラ202~204に同期撮影に関する情報を送信する。同期撮影に関する情報の送信は、操作部113から出力されるSW2信号がトリガとなる。本実施形態の同期撮影に関する情報には、撮影指示、露光タイミング、発光有無情報が含まれる。本実施形態では、発光有りとする発光有無情報は、ストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報の一例に対応する。また、発光無しとする発光有無情報は、ストロボ発光による同期撮影をしないことを示す情報の一例に対応する。
S107では、撮像装置制御部105は、S103で判定した発光有無情報が発光有りであるか否かを判定する。発光有りの場合にはS108に進み、発光無しの場合にはS110に進む。
【0029】
S108では、撮像装置制御部105は、既に設定されている自身のシャッタースピードの設定値と同調速度とを比較する。同調速度は、カメラがストロボと同調できる最速のシャッタースピードである。既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度よりも速い場合にはS109に進み、既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS110に進む。
【0030】
S109では、撮像装置制御部105は、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値、具体的には同調速度に設定する。なお、既に設定されているシャッタースピードの設定値が、同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS109に進まないことから、既に設定されているシャッタースピードが維持される。
S110では、撮像装置制御部105は、露光準備を行い、S105で算出した露光タイミングに基づいて露光を開始する。
【0031】
図4は、クライアントカメラ202~204の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、クライアントカメラ202~204それぞれの撮像装置制御部105が記録部114に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
S201では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201からの要求を受信したか否かを判定する。S102で送信された要求を受信した場合にはS202に進む。
【0032】
S202では、撮像装置制御部105は、クライアントカメラ202~204それぞれ自身の露光タイムラグと発光可否情報を取得して、マスタカメラ201に送信する。本実施形態では、クライアントカメラ202にストロボが装着されているためにストロボを発光できる状態であれば、クライアントカメラ202の撮像装置制御部105が取得する発光可否情報は、ストロボ発光が可能であることを示す情報である。一方、クライアントカメラ203、クライアントカメラ204はストロボが装着されていない。したがって、クライアントカメラ203およびクライアントカメラ204それぞれの撮像装置制御部105が取得する発光可否情報は、ストロボ発光が不可であることを示す情報である。
【0033】
S203では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201から送信された同期撮影に関する情報を受信して、マスタカメラ201から撮影指示があったか否かを判定する。撮影指示は、同期撮影に関する情報に含まれる。撮影指示があった場合にはS204に進む。
S204では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201から送信された同期撮影に関する情報に含まれる発光有無情報が、発光有りであるか否かを判定する。発光有りである場合にはS205に進み、発光無しである場合にはS207に進む。
【0034】
S205では、撮像装置制御部105は、既に設定されている自身のシャッタースピードの設定値と同調速度とを比較する。既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度よりも速い場合にはS206に進み、既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS207に進む。
【0035】
S206では、撮像装置制御部105は、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値、具体的には同調速度に設定する。なお、既に設定されているシャッタースピードの設定値が、同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS206に進まないことから、既に設定されているシャッタースピードが維持される。
S207では、撮像装置制御部105は、露光準備を行い、マスタカメラ201から送信された同期撮影に関する情報に含まれる露光タイミングに基づいて露光を開始する。
【0036】
図5は、シャッタースピードを設定するときの処理を説明するための図である。ここでの処理は、マスタカメラ201のS107~S109と、クライアントカメラ202~204のS204~S206の処理に相当する。
図5(a)は、シャッタースピードが同調速度と同じである場合を示す図である。この場合、ストロボはシャッター先幕が完全に開いてからシャッター後幕が閉じ始めるまでの時間(シャッター全開時間)に発光の開始・終了が可能である。したがって、シャッタースピードを変更する必要がない。
【0037】
図5(b)は、シャッタースピードが同調速度よりも遅い場合を示す図である。この場合でも
図5(a)と同様に、ストロボはシャッター全開時間内に発光の開始・終了が可能である。したがって、シャッタースピードは変更する必要がない。
図5(c)は、シャッタースピードが同調速度よりも速い場合を示す図である。この場合、ストロボはシャッター全開時間内に発光の開始・終了が不可能であるために、撮影画像に露光ムラが生じる可能性がある。したがって、シャッター全開時間内にストロボの開始・終了が収まるようにシャッタースピードを同調速度に合わせて設定する。
【0038】
本実施形態によれば、撮像装置制御部105は、ストロボ発光による同期撮影をする場合にシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定することで、ストロボ発光による同期撮影をするときの露光ムラを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、撮像装置制御部105は、既に設定されているシャッタースピードが同調速度よりも速い場合に、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定する。したがって、露光ムラが発生するおそれがある場合にシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値に設定して、一律には設定しないことで処理を簡素化することができる。
【0039】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、マスタカメラ201の操作部113から出力されるSW1信号を発光可否情報の取得・要求のトリガとし、操作部113から出力されるSW2信号を発光・同調有無の通知のトリガとする。
【0040】
図6は、マスタカメラ201の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートは、マスタカメラ201の撮像装置制御部105が記録部114に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
S301では、撮像装置制御部105は、操作部113からのSW1信号を検出したか否かを判定する。SW1信号を検出した場合にはS302に進む。
【0041】
S302では、撮像装置制御部105は、クライアントカメラ202~204にシャッタースピードを既に設定されている設定値(現在の設定値)とした場合と同調速度に設定した場合との各条件での露光タイムラグと、発光可否情報を要求・受信する。また、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201の上記各条件での露光タイムラグと発光可否情報を取得する。シャッタースピードを同調速度に設定した場合には、露出を一定にするために絞りやISO感度等の露出制御量を再演算することを想定し、再演算に合わせた露光タイムラグを要求・取得する。また、撮像装置制御部105は、発光可否情報が発光有りである場合に、どのような発光モードに設定されているかを示す発光モード情報も同時に要求・取得する。本実施形態では、マスタカメラ201にストロボが装着されていないために撮像装置制御部105が取得するマスタカメラ201の発光可否情報は、ストロボ発光が不可であることを示す情報である。
【0042】
S303では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201とクライアントカメラ202~204の発光可否情報や発光モード情報、ユーザ設定に基づき、発光有無情報を判定する。本実施形態の発光有無情報には、発光有りまたは発光無しとする情報が含まれ、発光有りの場合にはどの発光モードで発光させるかという情報が含まれる。マスタカメラ201とクライアントカメラ202~204のうち1台でも発光可否情報が、ストロボ発光が可能であることを示す情報である場合で、かつユーザがマスタカメラ201でストロボ撮影を有効に設定している場合には発光有りとする発光有無情報となる。一方、それ以外には発光無しとする発光有無情報となる。また、撮像装置制御部105は、発光有無情報やユーザ設定に基づき、各カメラに対してストロボ同調させるか否かの同調有無情報を判定する。発光有無情報が発光無しの場合には、同調無しとする同調有無情報となる。一方、発光有無情報が発光有りの場合には、同調有りとする同調有無情報となる。ただし、発光有無情報にストロボ発光モードがハイスピードシンクロ(所定のモード)である情報が含まれている場合や、ユーザ設定でユーザが同調無しと設定した場合には、発光有無情報が発光有りであっても同調無しとする同調有無情報となる。この処理により、ストロボ発光を行う場合でも、ハイスピードシンクロでの撮影時やストロボ光が写り込まないとユーザが判断したカメラに対して、シャッタースピードを制限せずユーザが自由に設定することができる。
【0043】
S304では、撮像装置制御部105は、操作部113からのSW2信号を検出したか否かを判定する。SW2信号を検出した場合にはS305に進む。
S305では、撮像装置制御部105は、S302・S303で取得・判定したマスタカメラ201とクライアントカメラ202~204の上記各条件での露光タイムラグと同調有無情報に基づき、露光開始時刻である露光タイミングを算出する。具体的には、撮像装置制御部105は、同調有無情報が同調無しの場合にはシャッタースピードを既に設定されている設定値とした場合の露光タイムラグを算出する。一方、撮像装置制御部105は、同調有無情報が同調有りの場合にはシャッタースピードを同調速度に設定した場合の露光タイムラグに基づいて露光タイミングを算出する。
【0044】
S306では、撮像装置制御部105は、クライアントカメラ202~204に同期撮影に関する情報を送信する。本実施形態の同期撮影に関する情報には、撮影指示、露光タイミング、発光有無情報、同調有無情報が含まれる。本実施形態では、同調有りとする同調有無情報は、ストロボ発光による同期撮影をすることを示す情報の一例に対応する。また、同調無しとする同調有無情報は、ストロボ発光による同期撮影をしないことを示す情報の一例に対応する。
S307では、撮像装置制御部105は、S303で判定した同調有無情報が同調有りであるか否かを判定する。同調有りの場合にはS308に進み、同調無しの場合にはS311に進む。
【0045】
S308では、撮像装置制御部105は、既に設定されている自身のシャッタースピードの設定値と同調速度とを比較する。同調速度は、カメラがストロボと同調できる最速のシャッタースピードである。既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度よりも速い場合にはS309に進み、既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS311に進む。
【0046】
S309では、撮像装置制御部105は、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値、具体的には同調速度に設定する。なお、既に設定されているシャッタースピードの設定値が、同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS309に進まないことから、既に設定されているシャッタースピードが維持される。
S310では、撮像装置制御部105は、S309でのシャッタースピードの設定に伴い、絞りやISO感度といった露出制御量を再演算して再設定を行う。ここでは、露出がシャッタースピードを設定することにより変化しないように露出制御量を再演算することで露出調整を行う。この処理については、
図8を参照して後述する。
S311では、撮像装置制御部105は、露光準備を行い、S305で算出した露光タイミングに基づいて露光を開始する。
【0047】
図7は、クライアントカメラ202~204の同期撮影処理の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、クライアントカメラ202~204それぞれの撮像装置制御部105が記録部114に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
S401では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201からの要求を受信したか否かを判定する。S302で送信された要求を受信した場合にはS402に進む。
【0048】
S402では、撮像装置制御部105は、クライアントカメラ202~204それぞれ自身の既に設定されているシャッタースピードの設定値(現在の設定値)とした場合と同調速度に設定した場合との各条件での露光タイムラグと、発光可否情報を取得する。また、撮像装置制御部105は、発光可否情報がストロボ発光が可能であることを示す情報である場合には発光モード情報も同時に取得して、マスタカメラ201に送信する。本実施形態では、クライアントカメラ202にストロボが装着されているためにストロボを発光できる状態であれば、クライアントカメラ202の撮像装置制御部105が取得する発光可否情報は、ストロボ発光が可能であることを示す情報である。一方、クライアントカメラ203、クライアントカメラ204はストロボが装着されていない。したがって、クライアントカメラ203およびクライアントカメラ204それぞれの撮像装置制御部105が取得する発光可否情報は、ストロボ発光が不可であることを示す情報である。
【0049】
S403では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201から送信された同期撮影に関する情報を受信して、マスタカメラ201から撮影指示があったか否かを判定する。撮影指示は、同期撮影に関する情報に含まれる。撮影指示があった場合にはS404に進む。
S404では、撮像装置制御部105は、マスタカメラ201から送信された同期撮影に関する情報に含まれる同調有無情報が、同調有りであるか否かを判定する。同調有無情報が同調有りである場合には同調が必要でありS405に進み、同調無しである場合にはS408に進む。
【0050】
S405では、撮像装置制御部105は、既に設定されている自身のシャッタースピードの設定値と同調速度とを比較する。既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度よりも速い場合にはS406に進み、既に設定されているシャッタースピードの設定値が同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS408に進む。
【0051】
S406では、撮像装置制御部105は、シャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値、具体的には同調速度に設定する。なお、既に設定されているシャッタースピードの設定値が、同調速度と同じ、もしくは同調速度よりも遅い場合にはS406に進まないことから、既に設定されているシャッタースピードが維持される。
S407では、撮像装置制御部105は、S406でのシャッタースピードの設定に伴い、絞りやISO感度といった露出制御量を再演算して再設定を行う。ここでは、露出がシャッタースピードの再設定により変化しないように露出制御量を再演算することで露出調整を行う。この処理については、
図8を参照して後述する。
S408では、撮像装置制御部105は、露光準備を行い、S403でマスタカメラ201から受信した露光タイミングに基づいて露光を開始する。
【0052】
図8は、シャッタースピードを設定した後に発生する露出変化を抑制するための露出制御量を再演算するときの処理を説明するための図である。ここでの処理は、マスタカメラ201のS310とクライアントカメラ202~204のS407の処理に相当する。また、
図8に示す例では、ISO感度を固定して、絞り数値を再演算する場合について説明する。
図8に示すグラフは、縦軸が絞り数値であり、横軸がシャッタースピードであり、斜線部が両露出制御量に対する、シャッタースピードの設定前と露出が同じになる箇所を示す。
【0053】
図8(a)は、同調速度に合わせてシャッタースピードをS1からS2に設定した場合のシャッタースピードと露出の変化を示す図である。ストロボ同調のためにシャッタースピードを同調速度に合わせて設定することでシャッタースピードは遅くなる。したがって、ISO感度や絞り数値といった他の露出制御量を変更しない場合に露出は明るく変化する。
【0054】
図8(b)は、露出をシャッタースピードの設定前に戻すために絞り数値を再演算した場合の絞り数値と露出の変化を示す図である。ISO感度が固定の場合には、露出を元に戻すために絞り数値を変更して露出調整の処理を行う。
【0055】
ここで、露出調整の処理を行うと、露出制御量が変更されたことによる露光タイムラグの変化が発生する可能性がある。露光タイムラグが変化するとマスタカメラ201のS305で算出される露光タイミングに対して露光タイムラグが長くなり、露光タイミングに露光開始を行えない可能性が生じる。したがって、マスタカメラ201のS302とクライアントカメラ202~204のS402では、予めシャッタースピードを同調速度に設定したときの露出調整後の露出制御量を予測し、シャッタースピードが設定された場合に対応する露光タイムラグも取得する。
なお、
図8では、ISO感度を固定して絞り数値を演算する場合について説明したが、ISO感度および絞り数値の少なくとも何れかを露出制御量を変更するようにしてもよい。この場合でも、同様に露出調整を行い、露光タイムラグに影響を及ぼす可能性がある場合は上記露光タイムラグの取得を行う。
【0056】
本実施形態によれば、撮像装置制御部105は、シャッタースピードの設定後の露出変化を他の露出制御量により調整し、調整による露出制御量の変化を予め予測して露光タイムラグを演算する。したがって、シャッタースピードを設定した場合であっても露出変化を抑制させたストロボ発光による同調撮影が可能である。
【0057】
<その他の実施形態>
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するプログラムをネットワークまたは各種記録媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、該プログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体は本発明を構成する。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、上述した実施形態を適時組み合わせてもよい。
本実施形態ではS106において送信する同期撮影に関する情報は、撮影指示、露光タイミング、発光有無情報の少なくとも何れかの情報が含まれていればよく、含まれていない情報は異なるタイミングで送信してもよい。また、S306において送信する同期撮影に関する情報は、撮影指示、露光タイミング、発光有無情報、同調有無情報の少なくとも何れかの情報が含まれていればよく、含まれていない情報は異なるタイミングで送信してもよい。
【0059】
本実施形態では、S109、S206、S309、S406においてシャッタースピードをストロボ発光による同期撮影が可能な値、具体的には同調速度に設定する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、同調速度よりも遅いシャッタースピードに設定してもよい。
本実施形態では、撮像装置が一眼レフタイプのデジタルカメラである場合について説明したが、この場合に限られず、撮像装置がコンパクトタイプのカメラやスマートフォン等であってもよい。
【0060】
また、本実施形態におけるマスタカメラとクライアントカメラは、ユーザ設定によってマスタカメラとしてもクライアントカメラとしても動作可能に構成してもよい。すなわち、上述したマスタカメラとクライアントカメラとが切替えられた場合であっても切替えられた後のカメラとしての動作が可能である。また、マスタカメラと1台以上のクライアントカメラとがそれぞれ異なる機種であっても実現が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100:カメラ 105:撮像装置制御部 113:操作部 120:ストロボ 201:マスタカメラ 202~204:クライアントカメラ 205:ストロボ