(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】繊維複合材部品のための製造方法、繊維複合材部品、繊維複合材部品のための検査方法、コンピュータプログラム、機械可読記憶媒体及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 39/44 20060101AFI20241105BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20241105BHJP
B29C 70/48 20060101ALI20241105BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20241105BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
B29C39/44
B29C39/10
B29C70/48
B29C70/16
B29K105:08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020118284
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】10 2019 210 171.2
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リンダ クライン
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/130575(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/087053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/44
B29C 39/10
B29C 70/48
B29C 70/16
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維複合材部品(2)を製造するための方法(200)であって、
前記繊維複合材部品(2)には、可撓性回路支持体(3)及び/又はセンサモジュール(4)、特にマイクロマシニング型の加速度センサモジュールを有するセンサデバイス(1)が統合されており、以下のステップ、即ち、
前記繊維複合材部品(2)を製造するためのツール(30)に、織物層と前記センサデバイス(1)とを装填するステップ(201)と、
装填された前記ツール(30)を閉鎖、特に気密に閉鎖するステップ(202)、及び、前記織物層と前記センサデバイス(1)とを圧縮するステップと、
前記繊維複合材部品(2)の製造のために液状マトリックス、特に樹脂、特に純粋な樹脂を、閉鎖された前記ツール(30)内に導入するステップ(203)、及び、織物に含浸させるステップと、
前記センサデバイス(1)及び/又は前記センサデバイス(1)の前記センサモジュール(4)を用いて、製造ステップ、特に前記ツール(30)を閉鎖するステップ(202)及び/又は前記導入するステップ(203)に関連して加速度を特にリアルタイムで検出するステップ(204)と、
検出された加速度に依存して、製造方法のプロセス状態及び/又はプロセス変数を導出及び/又は評価するステップ(205)と、
を含む方法(200)において、
前記導出及び/又は評価するステップ(205)で、当該導出及び/又は評価が、周波数領域、特に離散周波数領域での前記検出された加速度のスペクトル分析に基づいて実施されることを特徴とする方法(200)。
【請求項2】
前記導入するステップ(203)の後に、前記ツール(30)を開放する付加的ステップを有し、前記検出するステップ(204)並びに前記導出及び/又は評価するステップ(205)が、前記織物層の含浸及び/又は前記開放するステップに関連しても行われる、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記導出及び/又は評価するステップにおいて、ゼロパディングが時間領域で行われる、請求項1又は2に記載の方法(200)。
【請求項4】
繊維複合材部品(2)
を、特に請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法に従って、特に、検査すべき前記繊維複合材部品(2)を製造する際の硬化中に検査するための方法(300)であって、
前記繊維複合材部品には、可撓性回路支持体(3)及び/又はセンサモジュール(4)、特にマイクロマシニング型の加速度センサモジュールを有するセンサデバイス(1)が統合されており、以下のステップ、即ち、
前記センサデバイス(1)及び/又は前記センサデバイス(1)の前記センサモジュール(4)を用いて、特に、検査すべき前記繊維複合材部品に対する予め定められたインパルスの印加、及び/又は、検査すべき前記繊維複合材部品(2)を有する繊維複合材部品を製造するためのツール(30)に対する予め定められたインパルスの印加に応じて、加速度(6)を検出するステップ(301)と、
検査すべき前記繊維複合材部品(2)の硬化度を、検出された加速度(6)に依存して特定するステップ(302)と、
を含む方法(300)において、
前記特定するステップ(302)で、前記硬化度の特定が、周波数領域(7)、特に離散周波数領域での前記検出された加速度のスペクトル分析に依存して実施されることを特徴とする方法(300)。
【請求項5】
前記検出された加速度(6)を周波数領域(7)での基準加速度と比較するステップを含み、前記特定するステップ(302)においては、硬化度が、前記比較に依存して特定される、請求項
4に記載の方法(300)。
【請求項6】
前記比較するステップにおいて、前記検出された加速度及び基準信号は、周波数領域で
1周期にわたってのみ観察される、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項7】
前記繊維複合材部品の状態及び/又は状態変化を特定するステップを含み、当該特定するステップにおいては、当該特定が、周波数スペクトルの特性における有意な変化に依存して行われる、請求項
4乃至
6のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項8】
前記検出された加速度は、前記センサデバイスの観察された測定領域内に存在し、前記繊維複合材部品の周辺の固有周波数に依存する、請求項
4乃至
7のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項9】
請求項
4乃至
8のいずれか一項に記載の方法(300)のステップを実施するために構成されているコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項
9に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【請求項11】
請求項
10に記載の機械可読記憶媒体を備えている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維複合材部品のための製造方法、対応する製造された繊維複合材部品、対応する製造された繊維複合材部品のための検査方法、これらに対応するコンピュータプログラム及び機械可読記憶媒体並びにこれらに対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
国際公開第2018/069066号(WO2018/069066A1)からは、プラスチック部品、特にバンパーの上部又は内部に複数のマイクロマシニング型の加速度センサを配置するための方法、及び、対応するプラスチック部品、特にバンパーが公知である。
【0003】
この方法のステップAにおいては、マイクロマシニング型の加速度センサは、可撓性回路支持体の内部又は上部に固定的に位置決めされ、ここで、マイクロマシニング型の加速度センサは、可撓性回路支持体の統合された導体路構造部と接触接続する。
【0004】
この方法のステップBにおいては、少なくとも領域ごとに、マイクロマシニング型の加速度センサ及び可撓性回路支持体は、プラスチック部品の上部又は内部に、可撓性回路支持体の統合された導体路構造部が少なくとも部分的に露出されるように配置される。
【0005】
独国特許出願公開第102016220032号明細書(DE102016220032A1)からは、少なくとも1つのセンサモジュールと、センサモジュールと電気的に接触接続するためにセンサモジュールに接続された少なくとも1つの接続線路とを有する車両用の、特に自動車用のセンサデバイスが公知である。
【0006】
接続線路は、複数の異なるセンサモジュールが配置され、それぞれ1つ又は共通の導体箔によって接触接続されている導体箔として形成されることが想定されている。
【0007】
液状複合材成形(LCM)や液状樹脂射出(LRI)などの方法を使用して、繊維複合材部品などの繊維複合材構造部を製造する場合、製造プロセス段階の間の状態を検出するために、異なるアプローチを介してセンサ技術が用いられる。このプロセス監視(Process Monitoring)のために、一方では、いわゆるツールマウントセンサ(TMS)が製造ツール内に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2018/069066号(WO2018/069066A1)
【文献】独国特許出願公開第102016220032号明細書(DE102016220032A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらは、最終製品に痕跡を残し、その他にも、ツール内に導入された樹脂の収縮により、検出のために必要な部品との接触を失う可能性がある。
【0010】
この問題の1つの解決手段として、他方では、非接触の測定方法が挙げられる。ただし、これらは、常に実現可能なわけではない。
【0011】
それに対して、代替的に、センサは、ツールの構造部に直接統合される。プロセス監視中に監視される変数は、大半がフローフロントであり(完全なマトリックス注入を確認するため)、挿入された織物繊維又は織物半製品(織物層)の貫通含浸、及び、マトリックスと繊維又は織物半製品からなる構造部部品の硬化度などである。
【0012】
この目的のために、誘電的及び光学的測定方法、又は、熱的測定方法を使用することができる。
【0013】
典型的な測定方法には、直接的電圧分析(DC分析)、誘電的分析(DEA)、又は、電気的時間領域反射率測定(electrical Time-Domain-Reflectometry;略してETDR)がある。
【0014】
この目的のために、例えば、ツール若しくは構造部部品内に挿入されたDC接点センサ又は電極が使用される。また、SMARTweave法の使用も、材料特性を場所及び時間の関数として測定する、カーボンファイバ又は絡み合ったカーボンナノチューブ(CNT)ストランドから特別に開発されたバッキーペーパー、特別に開発された2線式センサ又はフリンジ電界センサ(FEFセンサ)などの複数の誘電体センサからなる、繊維を基礎とする格子状平面電極から公知である。
【0015】
フローフロントの拡張若しくは金型充填、又は、繊維複合材部品の硬化度を検出するためには、マトリックスの熱力学的特性又は機械的特性も使用される。これには、圧力センサ又は(マイクロ)熱電対が使用される。フローフロントの光学的検出は、構造部に統合されている、光ファイバセンサ(FOS)、光ファイバ屈折計(OFR)、光ファイバ干渉計(OFI)、又は、(光ファイバ)分光計を用いて行うことができる。
【0016】
ツール金型における非接触測定法のために、例えば、超音波変換器又は挿入された銅線を介して超音波が使用される。
【0017】
電気測定原理に基づくさらなる可能なセンサ技術は、直流抵抗(DCR)センサ、導電性フィラメント、マイクロブレード、又は、ファイバブラッググレーティング(FBG)センサである。
【0018】
その上さらに、サーモグラフィは、硬化度を特定するために適している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の開示
このような背景から、本発明は、繊維複合材部品を製造するための方法を提供する。繊維複合材部品には、センサデバイスが統合されており、即ち、センサデバイスが繊維複合材部品内部に配置されている。このセンサデバイスは、可撓性回路支持体又はセンサモジュールを有する。本方法は、以下のステップを含む。
【0020】
可撓性回路支持体は、1つ以上のセンサモジュールを有し得る。
【0021】
繊維複合材部品を製造するためのツールに、織物層、即ち、織物繊維又は織物半製品と、センサデバイスとを装填するステップ。
【0022】
装填されたツールを閉鎖するステップ及び織物層とセンサデバイスとを圧縮するステップ。
【0023】
繊維複合材部品を製造するために液状マトリックスを導入するステップ(マトリックス注入)。
【0024】
センサデバイス若しくはセンサデバイスのセンサモジュールを用いて、製造ステップ、特にツールを閉鎖するステップ又はツール空洞部へマトリックスを導入するステップ又はツール内で織物層に含浸させるステップ又はツールを開放するステップに関連して加速度を検出するステップ。
【0025】
加速度を検出するステップは、ここでは、繊維複合材部品の製造中の事象によって行うことができる。
【0026】
検出された加速度に依存して、製造方法のプロセス状態若しくはプロセス変数を導出若しくは評価するステップ。
【0027】
ここで、プロセス状態は、典型的には、1つ以上のプロセス変数によって制御又は設定される。
【0028】
本方法は、導出及び/又は評価が、周波数領域での検出された加速度のスペクトル分析に基づいて実施される点において優れている。
【0029】
ここでは、離散周波数領域でのスペクトル分析を実施することが考えられる。
【0030】
周波数領域での検出された加速度、即ち、加速度又はその加速度信号の周波数スペクトルは、特性変数に関して定性的のみならず定量的にも分析することができる。ここでは、特性の有意な変化が探索される。即ち、
-例えば、最大スペクトル成分が発生する場所又は周波数を観察することができ、
-例えば、最大スペクトル成分の大きさ即ち振幅を観察することができ、
-例えば、周波数応答に関するスペクトル成分の包絡線の現象形態を観察することができ、
-例えば、最大スペクトル成分周辺の周波数応答に関する包絡線下方面を観察することができ、
-例えば、最大スペクトル成分周辺の周波数応答に関する包絡線の勾配を観察することができ、
-例えば、周波数応答に関するスペクトル成分の包絡線下方の総てのスペクトル成分の面積合計を観察することができる。
【0031】
本方法は、周波数領域での検査信号の分析、即ち、スペクトル分析により、信号の特徴は、時間領域での信号と比較してより良好に視認可能又は完全に視認可能になるという利点を有する。
【0032】
導出されたプロセス状態及び/又はプロセス変数の評価は、それらの最適化(プロセス最適化)のために使用することができる。このことは、特に、製造中の不十分な部品品質の回避に関連する。繊維複合材部品の製造中の不十分な品質は、部品の内部不均一性や損傷に結び付く可能性がある。このことは、部品の機械的性能と部品の安全性とに影響を与える可能性がある。繊維複合材部品とは、本願においては、繊維複合材料からなる部品を意味するものと理解されたい。繊維複合材料は、一般に、織物繊維又は織物半製品と、繊維又は織物半製品間のマトリックスとからの相互作用する複合材によって形成される。このマトリックスは、充填剤及び接着剤である。繊維複合材料について典型的なことは、複合材の相互作用によって、繊維及びマトリックスの特性に比較して高品質な特性を有する材料が形成されることにある。
【0033】
繊維複合材部品は、車両用の車体部品、例えば、バンパー部品や車両の長手側部品などであってもよい。
【0034】
繊維複合材部品は、特に、機械工学、設備工学、医療技術、航空及び宇宙工学、エネルギー、オフショア、ロボット、スポーツ用具、消費者製品の分野からの部品であってもよい。
【0035】
さらに、繊維複合材部品は、スポーツ用具であってもよい。
【0036】
可撓性回路支持体は、特に、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、又は、熱可塑性樹脂を含み得る。そのため、可撓性回路支持体は、柔軟に変形することができ、特に、統合された導体路構造部は、それに応じて塑性変形することができる。これにより、実質的に、可撓性回路支持体は、繊維複合材部品の幾何形状又は幾何形態に適合化させることができる。可撓性回路支持体は、導体箔であってもよい。
【0037】
センサモジュールは、加速度を検出するための電子部品又は電気部品、即ち、加速度センサモジュールであってもよい。このセンサモジュールは、マイクロマシニング型のセンサモジュールであってもよい。このセンサモジュールは、微小電気機械システム(MEMS)方式によるマイクロマシニング型のセンサモジュールであってもよい。
【0038】
加速度を検出するためのセンサモジュール、例えば、微小電気機械システム(MEMS)方式のマイクロマシニング型の加速度センサは、通常は、時間軸にわたって加速度の形態の信号を、即ち、時間領域の信号を出力する。
【0039】
マイクロマシニング型の加速度センサの測定特性に基づき、加速度センサがセンサデバイスの形態で統合される部品の製造中の事象は、時間信号の経過(時間軸にわたる加速度)における変化に基づくのでは、場合によって十分な精度で識別することができない可能性がある。このことは、事象の強度に依存している。
【0040】
製造ステップ、特に、装填するステップ、閉鎖するステップ、導入するステップ、含浸させるステップ、及び、開放するステップは、記載されている順序に対応する必須の順序を有している。
【0041】
検出するステップ及び導出するステップは、製造ステップに並行して行うことができる。これらのステップは、製造方法の間に複数回又は定期的に又は永続的に又は継続的に行うことができる。
【0042】
本発明は、繊維複合材部品内に配置され、加速度を検出するセンサデバイスが、繊維複合材部品を製造するための液状マトリックスの導入中に、特に到来するフローフロントによって短時間だけ変位又は加速又は励起するという認識に基づいている。加速度をリアルタイムで検出して信号を評価又は分析する場合に、このことは、時間領域でのセンサ信号では容易に又は全く認識することができない。それゆえ、本発明は、検出された信号の導出及び評価が、周波数領域でのスペクトル分析に基づいて実施される点において優れている。そのように検出された偏向又は加速は、起こり得る溶融物(液状マトリックス)を逆推論することができる。これにより、製造方法のプロセス全体において、検出された加速度信号を介して、樹脂射出のプロセス変数(射出圧力、射出速度、射出温度など)又は樹脂射出時点を、その際に製造された樹脂複合材部品に配置又は統合されたセンサデバイスを用いて、導出、評価及び最適化することができる。検出された加速度信号は、さらに、製造プロセスで使用されたプロセス変数の検査又は評価に使用することができ、従って、製造された製品の検査及び評価にも使用することができる。
【0043】
検出するステップ及び導出又は評価するステップは、織物層の含浸に関連して行うこともできる。
【0044】
さらに、ツールの閉鎖の際に既にセンサ信号の影響を検出することができ、そこから同様に、製造方法のツール閉鎖のプロセス変数(特に閉鎖速度又は閉鎖力)やプロセス全体における閉鎖時点を導出又は評価することができる。例えば、検出された加速度信号においてはツールの閉鎖時点を識別することができる。
【0045】
導出されたプロセス変数の評価は、それらの最適化のために使用することができる。
【0046】
閉鎖するステップは、収容された織物繊維又は織物半製品(織物層)及び収容されたセンサデバイスと共に、例えばねじ込み力又は圧縮力/押圧力を介して気密に行われるように行うことができる。
【0047】
液状マトリックスは、樹脂であるものとしてもよい。この樹脂は、純粋な樹脂であるものとしてもよい。
【0048】
加速度の検出は、リアルタイムで行うことができる。
【0049】
本発明に係る方法によれば、繊維複合材部品の製造中に、繊維複合材部品に配置され、加速度を検出するセンサデバイスが、既に部品の製造中に、製造プロセス監視の二次的追加機能を実現する。
【0050】
本発明に係る製造方法の一実施形態によれば、本方法は、マトリックスを導入し、引き続きツール内で繊維複合材部品を硬化させるステップの後に、ツールを開放する付加的ステップを有し、ここでは、検出するステップ及び導出又は評価するステップも、開放するステップに関連して行われる。
【0051】
導出されたプロセス変数の評価は、それらの最適化に使用することができる。
【0052】
さらに、好適には、スペクトル分析の枠組みにおいては、時間領域での検出された加速度のゼロパディングが行われる。
【0053】
ゼロパディングとは、ここでは、時間領域での検出された加速度がゼロで満たされることを意味するものと理解されたい。それにより、観察間隔を拡大することができ、これによって、例えば、スペクトル分析のために高速フーリエ変換を適用した後、より狭幅な走査を達成することができる。これにより、検出された加速度の品質を向上させることは達成し得ないが、より狭幅な走査によって周波数領域での信号のより良好な表示が可能になる。
【0054】
本発明のさらなる態様は、繊維複合材部品である。この繊維複合材部品は、可撓性回路支持体又はセンサモジュールを有するセンサデバイスを備え、本発明に係る製造方法を用いて製造されている。
【0055】
センサモジュールは、加速度を検出するための電子部品又は電気部品、即ち、加速度センサモジュールであってもよい。このセンサモジュールは、マイクロマシニング型のセンサモジュールであってもよい。このセンサモジュールは、微小電気機械システム(MEMS)方式によるマイクロマシニング型のセンサモジュールであってもよい。
【0056】
本発明のさらなる態様は、繊維複合材部品を検査するための方法である。この繊維複合材部品には、可撓性回路支持体又はセンサモジュールを有するセンサデバイスが統合されている。本方法は、以下のステップを含む。
【0057】
センサデバイス若しくはセンサデバイスのセンサモジュールを用いて加速度を検出するステップ。
【0058】
検出された加速度に依存して繊維複合材部品の硬化度を特定するステップ。
【0059】
本方法は、特定するステップにおいて、硬化度の特定が周波数領域でのスペクトル分析に基づいて実施される点において優れている。
【0060】
ここでは、離散周波数領域でのスペクトル分析を実施することが考えられる。
【0061】
この検査方法は、その製造の枠組みにおいて繊維複合材部品の硬化中に実施することができる。ここでは、それは、本発明に係る製造方法による繊維複合材部品の製造中の硬化であり得る。
【0062】
本方法は、周波数領域での検出された加速度の分析、即ち、スペクトル分析により、周波数領域での検出された加速度の特徴は、時間領域での信号と比較してより良好に視認可能又は総じて視認可能になるという利点を有する。
【0063】
これにより、繊維複合材部品のより正確な検査を行うことができる。そのため、繊維複合材部品内への不都合な混入又は繊維複合材部品の不都合な状態を、より良好に識別することができる。例えば、不都合な混入によって引き起こされるのではない不都合な状態には、不十分な硬化度が挙げられる。そのような混入又は状態は、繊維複合材部品の製造方法において既に発生している可能性があり、あるいは、例えば、繊維複合材部品が車両の車体部品であるならば、車両での使用中に繊維複合材部品のその後のライフサイクルにおいて発生する可能性がある。
【0064】
検査すべき繊維複合材部品は、本発明に係る繊維複合材部品であるものとしてもよい。
【0065】
センサモジュールは、加速度を検出するための電子部品又は電気部品、即ち、加速度センサモジュールであってもよい。このセンサモジュールは、マイクロマシニング型のセンサモジュールであってもよい。このセンサモジュールは、微小電気機械システム(MEMS)方式によるマイクロマシニング型のセンサモジュールであってもよい。
【0066】
この検出は、繊維複合材部品に対する予め定められたインパルスの印加、又は、検査すべき繊維複合材部品を有する繊維複合材部品を製造するためのツールに対する予め定められたインパルスの印加に応じて行うことができる。
【0067】
本発明に係る検査方法の一実施形態によれば、本方法は、検出された加速度を基準加速度と比較するステップを含む。次いで、特定するステップにおいては、硬化度が、比較又は比較結果に依存して特定される。
【0068】
基準信号は、繊維複合材部品を基準振動させ、当該基準振動がセンサデバイスを用いて検出され、検出された信号又はそこから導出される信号を基準信号とすることにより生成することができる。
【0069】
基準信号は、繊維複合材部品の継続検査又は一般検査に用いられる。
【0070】
好適には、基準信号は、繊維複合材部品が新規の状態、特に完全に硬化した状態で生成される。これにより、本発明に係る方法に従って後で行うべき繊維複合材部品の検査の際に、検査信号を基準信号と比較することにより、完全に硬化した状態とは異なる変化又は部品特性の変化を特定することができる。この特定された部品特性に基づくことにより、繊維複合材部品を検査するための方法が実施された時点における部品の状態又は状態変化を、その新規状態又は完全に硬化した状態との比較で推論することができる。この情報を用いることにより、適当な手段を講じることが可能になる。
【0071】
そのように特定された繊維複合材部品の状態又はそのように特定された繊維複合材部品の状態変化は、当該状態又は状態変化を適当に表す状態信号を用いて出力することができる。
【0072】
本発明の方法の一実施形態によれば、比較するステップにおいて、スペクトル分析のもとに、検出された加速度及び基準信号が一面的にのみ観察される。
【0073】
このことは、信号の周期性を活用するが故に提案されており、そのため、(離散)フーリエ変換においては、信号のスペクトルが、1周期にわたってのみ観察される。1周期は、0から信号のサンプリングレートまでの周波数領域にわたって延在する。(離散)フーリエ変換後の信号のスペクトルは、中心点を中心として対称的に存在し、得られた情報も冗長的に存在するため、これによって一面的な観察で十分である。
【0074】
本発明の方法の一実施形態によれば、特定するステップにおいて、当該特定は、周波数スペクトルの特性における有意な変化に依存して行われる。
【0075】
有意とは、本発明によれば、統合されたセンサモジュール又はセンサデバイスの(それ自体は公知の)測定精度の枠組みを超える、従って、測定感度に起因するものではない、総ての変化を意味するものと理解されたい。
【0076】
本発明の方法の一実施形態によれば、検出された加速度は、センサデバイスの観察された測定領域内に存在し、繊維複合材部品の周辺の固有周波数に依存する。
【0077】
周辺とは、本願においては、例えば、繊維複合材部品の製造の際のツール又は周辺接続部、繊維複合材部品のクランプ装置、車両への繊維複合材部品の吊り下げ装置のみならず、検査信号の検出に影響を与えるその他の周波数伝達部も意味するものと理解されたい。
【0078】
正確な信号分析のために、部品が検査振動させられるときには、周辺の固有周波数は、特に、加速度センサがハイパスフィルタ又はローパスフィルタを有する場合には、センサモジュールの測定領域(周波数領域)外にあるべきである。このことは、例えば、防振によって行うことができる。
【0079】
このことは、加速度センサ信号の周波数応答の分析の際に、周辺部の固有振動による周波数成分の重畳がなくなることを保証する。
【0080】
本発明のさらなる態様は、本発明に係る検査方法のステップを実行するように構成されたコンピュータプログラムである。
【0081】
本発明のさらなる態様は、本発明に係るコンピュータプログラムが記憶された機械可読記憶媒体である。
【0082】
本発明のさらなる態様は、本発明に係る検査方法のステップを実行するように構成された装置である。
【0083】
以下においては、本発明の態様のさらなる特徴及び利点を、実施形態に基づき図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1a】本発明に係る繊維複合材部品の製造中のプロセスステップの概略図(ツール内部図/ツール断面図)。
【
図1b】本発明に係る繊維複合材部品の製造中のプロセスステップの概略図(ツール内部図/ツール断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1aは、本発明に係る繊維複合材部品2の製造中のプロセスステップの概略図を示している。この図面は、繊維複合材部品2内に配置され、可撓性回路支持体3又はセンサモジュール4を有するセンサデバイス1を備えた繊維複合材部品2の液状複合材成形(LCM)法における製造中のプロセスステップを示している。このプロセスステップは、樹脂射出後の早期時点における溶融物フロー(マトリックスフロー又は樹脂フロー)10を示している。
【0086】
示されている図面の上方部分は、ツール30の平面図である(ツール内部図/ツール断面図)。下方部分は、切断軸線A-Aにおけるツール30の側面図である。
【0087】
ツール30の図面の他に、時間領域での、センサデバイス1の信号波形6又はセンサモジュール4によって検出された加速度の信号波形6が概略的にプロットされている。時間領域での検出された加速度6は、プロセス監視又はプロセス最適化の枠組みにおいてスペクトル分析のために周波数領域7に移行させられる。
図1aにおいては、このことが、検出された信号波形6の周波数成分の包絡線7の描写に基づいて示されている。
【0088】
時間領域での信号波形6と、周波数領域7での信号波形とが、実線を用いて示されており、これは、溶融物10がセンサデバイス1又はセンサモジュール4に到達する直前に検出された信号波形を表している。
【0089】
図1bは、本発明に係る繊維複合材部品2の製造中のプロセスステップの概略図を示している。このプロセスステップは、センサモジュール4に溶融物フロー(マトリックスフロー又は樹脂フロー)10が到達した直後の時点を表している。
【0090】
図示された図面の上方部分は、ツール30の平面図である。下方部分は、切断軸線A-Aにおけるツール30の側面図である。
【0091】
ツール30の図面の他に、時間領域での、センサデバイス1の信号波形6又はセンサモジュール4によって検出された加速度の信号波形6が概略的にプロットされている。時間領域での検出された加速度は、プロセス監視又はプロセス最適化の枠組みにおいてスペクトル分析のために周波数領域に移行させられる。
図1bにおいては、このことが、検出された信号波形6の周波数成分の包絡線7の描写に基づいて示されている。
【0092】
時間領域での信号波形6と、周波数領域7での信号波形とが、破線を用いて示されており、これは、溶融物10がセンサデバイス1又はセンサモジュール4に到達した直後に検出された信号波形を表している。
【0093】
この描写からは、周波数領域での表示が、時間領域での信号波形よりも一段と多くのかつはるかに一義的なセンサ信号波形の評価を可能にすることが容易に分かる。
【0094】
本方法は、周波数領域7での検出された加速度又はセンサ信号の分析、即ち、スペクトル分析により、センサ信号の特徴が、時間領域での信号6と比較してより良好に視認可能又は総じて視認可能になるという利点を有する。
【0095】
そのため、プロセス状態又はプロセス変数をより容易に導出することができる。導出されたプロセス変数の評価は、それらの最適化(プロセス最適化)のために使用することができる。
【0096】
図2は、本発明に係る製造方法200のフローチャートを示している。
【0097】
本製造方法200は、可撓性回路支持体3又はセンサモジュール4を有するセンサデバイス1が配置又は統合されている繊維複合材部品2を製造するのに適している。
【0098】
本方法200は、
図2に示されている以下のステップ201乃至205を含む。
【0099】
ステップ201においては、繊維複合材部品2を製造するためのツール30に、織物繊維又は織物半製品(織物層)及びセンサデバイス1が装填される。
【0100】
ステップ202においては、装填されたツール30が閉鎖され、織物層及びセンサデバイス1が圧縮される。
【0101】
ツール30の閉鎖は、気密に行うことができる。
【0102】
ステップ203においては、繊維複合材部品2を製造するために、液状マトリックス10が閉鎖されたツール30内に導入される。
【0103】
マトリックス10は、樹脂であるものとしてもよい。この樹脂は、純粋な樹脂であるものとしてもよい。
【0104】
ステップ204においては、加速度6が、ステップ203での導入及び/又はステップ202でのツールの閉鎖に関連してセンサデバイス1又はセンサデバイス1のセンサモジュール4を用いて検出される。
【0105】
検出するステップ204は、リアルタイムで行うことができる。
【0106】
ステップ205においては、製造方法200のプロセス変数が、検出された加速度6に依存して導出され、評価される。この導出及び評価は、ここでは、周波数領域7での検出された加速度6のスペクトル分析に基づいて行われる。
【0107】
装填するステップ201、閉鎖するステップ202、導入するステップ203は、記載されている順序に対応する必須の順序を有している。検出するステップ204と、導出、評価及び最適化するステップ205は、本方法200の残りのステップ201乃至203と並行して行うことができる。これらのステップ204,205は、製造方法200の間に複数回又は定期的に又は永続的に又は継続的に行うことができる。
【0108】
図3は、本発明に係る検査方法のフローチャートを示している。
【0109】
本検査方法300は、本発明に係る繊維複合材部品2を製造する枠組みにおいてツール30の硬化中に行うことができる。繊維複合材部品2は、1つ以上の可撓性回路支持体3又は1つ以上のセンサモジュール4を有するセンサデバイス1を備えている。この繊維複合材部品2は、本発明に係る製造方法200により、製造されたものであってもよいし、製造されるものであってもよい。
【0110】
ステップ301においては、加速度6が、センサデバイス1又はセンサデバイス1のセンサモジュール4を用いて検出される。
【0111】
検出ステップ301は、検査すべき繊維複合材部品2に対する予め定められたインパルスの印加、又は、検査すべき繊維複合材部品2を有する繊維複合材部品2を製造するためのツール30に対する予め定められたインパルスの印加に応じて行うことができる。
【0112】
ステップ302においては、検査すべき繊維複合材部品2の硬化度が、検出された加速度6に依存して特定される。この硬化度の特定は、ここでは、周波数領域7での検出された加速度6のスペクトル分析に基づいて行われる。