(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/12 20060101AFI20241105BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B65H3/12 310C
B65H3/48 310A
B65H3/48 320A
(21)【出願番号】P 2020126359
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2019153709
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】森田 悦久
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 譲
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105563(JP,A)
【文献】特開2021-116162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/12
B65H 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載された昇降可能な積載台と、
前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を
、通常の給紙制御時の前記浮上部の風速以下の範囲で前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行うことを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、シートの属性に応じて、前記所定高さ位置および前記ラストモード制御における前記浮上部の風速を設定することを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
シートが積載された昇降可能な積載台と、
前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートと上から2枚目以下のシートとを分離させるための空気を、浮上させられた最上位のシートと上から2枚目のシートとの間に吹き付ける分離部
と、
前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行い、
前記ラストモード制御において、前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて、前記分離部の風速、および前記搬送部に搬送させるシート1枚ごとの前記浮上部による空気の吹き付けの時間である浮上オン時間の少なくともいずれかを制御することを特徴とす
るシート供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ラストモード制御において前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御する、前記分離部の風速および前記浮上オン時間の少なくともいずれかを、シートの属性に応じて設定することを特徴とする請求項3に記載のシート供給装置。
【請求項5】
シートが積載された昇降可能な積載台と、
前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行い、
シートの属性に応じて、前記所定高さ位置および前記ラストモード制御における前記浮上部の風速を設定し、
シートの属性に基づき、
前記積載台が前記所定高さ位置に到達するまで、シートの属性に応じた規定枚数だけ前記積載台上のシートが減少するごとに、シートの属性に応じた規定上昇量ずつ前記積載台を上昇させるラスト追従モード制御を行うか否かを判断し、
前記ラスト追従モード制御を行うと判断した場合、前記ラストモード制御の直前に前記ラスト追従モード制御を行うことを特徴とす
るシート供給装置。
【請求項6】
シートが積載された昇降可能な積載台と、
前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、
前記搬送部は、エア吸引によりシートを吸着して搬送するものであり、
前記制御部は、
前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行い、
前記ラストモード制御において、前記所定高さ位置に応じて、前記搬送部の吸引風速を制御することを特徴とす
るシート供給装置。
【請求項7】
前記制御部は、シート供給動作の開始時における前記積載台上のシートの枚数が所定枚数以下の場合、シート供給動作において、前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させ、前記浮上部の風速を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する少残量モード制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のシート供給装置。
【請求項8】
シートが積載された昇降可能な積載台と、
前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上に積載されたシートの枚数を検出する積載枚数検出部と、
前記積載台上のシートの有無を検出するシート有無検出部と、
前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行うものであり、
また、前記制御部は、
シート供給動作の開始時に前記積載枚数検出部が検出したシートの枚数
が所定枚数以下の場合、シート供給動作において、前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させ、前記浮上部の風速を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する少残量モード制御を行い、
前記少残量モード制御において、前記浮上部の風速を前記ラストモード制御における風速と同じ風速とし、
シート供給動作の開始時に前記積載枚数検出部が検出したシートの枚数分のシートの供給が終了するときに前記積載台が前記所定高さ位置に到達するように前記積載台の高さ位置を制御し、
シート供給動作の開始時に前記積載枚数検出部が検出したシートの枚数分のシートの供給が終了した時点で前記積載台上にシートがあることが前記シート有無検出部により検出された場合には、その時点以降は前記積載台を前記所定高さ位置に固定することを特徴とするシート供給装置。
【請求項9】
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートと上から2枚目以下のシートとを分離させるための空気を、浮上させられた最上位のシートと上から2枚目のシートとの間に吹き付ける分離部をさらに備え、
前記制御部は、前記少残量モード制御において、
前記分離部の風速を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する制御、および、
前記搬送部に搬送させるシート1枚ごとの前記浮上部による空気の吹き付けの時間である浮上オン時間を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する制御の少なくともいずれかを行うことを特徴とする請求項7または8に記載のシート供給装置。
【請求項10】
前記搬送部は、エア吸引によりシートを吸着して搬送するものであり、
前記制御部は、前記少残量モード制御において、前記搬送部の吸引風速を、浮上していないシートの吸引を抑える値に設定することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを供給するシート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを供給するシート供給装置として、給紙台に積載された用紙に空気を吹きつけて用紙を浮上させ、浮上した用紙のうちの最上位(一番上)の用紙を吸着搬送手段により吸着搬送して給紙先に給紙する給紙装置が知られている。
【0003】
このような給紙装置では、給紙台の用紙残量の減少に応じて給紙台を上昇させ、給紙台上に積載された用紙のうちの最上位の用紙の上面の高さ位置を維持するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の給紙装置では、給紙台上の用紙残量が少なくなると、空気が吹き付けられた際の用紙1枚当たりの風量が大きくなることにより、用紙の挙動が乱れやすくなる。
【0006】
これにより、給紙の不具合が発生するおそれがある。例えば、複数の用紙が吸着搬送手段に吸着されて重送が発生したり、搬送方向における用紙の上流端を規制するエンドフェンスを用紙が乗り越えてしまうことによる空送が発生したりするおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、シート供給の不具合を低減できるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のシート供給装置は、シートが積載される昇降可能な積載台と、前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を前記規定残量範囲および前記高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート供給装置によれば、シート供給の不具合を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る給紙装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
【
図3】
図1に示す給紙装置の部分拡大平面図である。
【
図4】
図1に示す給紙装置のメイン浮上エア吹出口近傍の拡大図である。
【
図5】
図1に示す給紙装置のサイドフェンスの部分拡大図である。
【
図8】給紙の最終局面の給紙制御のフローチャートである。
【
図9】ラスト追従モード制御およびラストモード制御による給紙台の高さ位置および用紙残量の推移の一例を示す図である。
【
図10】通常モード制御からラスト追従モード制御を行わずにラストモード制御へ移行する場合の給紙台の高さ位置および用紙残量の推移の一例を示す図である。
【
図11】第2実施形態における給紙装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図12】第2実施形態における給紙装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図13】給紙台上の用紙の積載枚数の検出方法の説明図である。
【
図14】少残量モード制御の給紙動作における給紙台の高さ位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る給紙装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
図3は、
図1に示す給紙装置の部分拡大平面図である。
図4は、
図1に示す給紙装置のメイン浮上エア吹出口近傍の拡大図である。
図5は、
図1に示す給紙装置のサイドフェンスの部分拡大図である。以下の説明において、
図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0014】
図1~
図3に示すように、本実施の形態に係る給紙装置(シート供給装置に相当)1は、給紙台(積載台に相当)2と、昇降モータ3と、モータエンコーダ4と、用紙有無センサ5と、給紙台センサ6と、給紙ガイド板7と、サバキゲート8と、2つのサイドフェンス9と、エンドフェンス10と、浮上部11と、分離部12と、搬送部13と、上限センサ14と、制御部15とを備える。
【0015】
給紙装置1は、印刷装置の印刷部(図示せず)に対して用紙(シートに相当)Pを給紙する装置である。
図1において左から右に向かう方向が、給紙動作時の搬送部13による用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送部13による用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0016】
給紙台2は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台2は、昇降可能に構成されている。
【0017】
給紙台2には、後述するサイド浮上機構部22およびサイド分離機構部42が取り付けられたサイドフェンス9が挿通されたフェンス挿通穴2aが形成されている。2つのサイドフェンス9にそれぞれ対応する2つのフェンス挿通穴2aが形成されている。一方のフェンス挿通穴2aは給紙台2の前端部に形成され、他方のフェンス挿通穴2aは給紙台2の後端部に形成されている。
【0018】
また、給紙台2には、給紙台センサ6の検出対象物である被検出板2bが設けられている。
【0019】
昇降モータ3は、給紙台2を昇降させる。
【0020】
モータエンコーダ4は、昇降モータ3の回転軸の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0021】
用紙有無センサ5は、給紙台2上の用紙Pの有無を検出する。用紙有無センサ5は、給紙台2上に用紙Pがあるとオンになり、給紙台2上に用紙Pがないとオフになる。
【0022】
給紙台センサ6は、被検出板2bを検出する。給紙台センサ6は、所定の高さ位置に配置されている。
【0023】
給紙ガイド板7は、給紙台2上の用紙Pの下流端(右端)の位置を規制する部材である。給紙ガイド板7は、給紙台2の下流側近傍であって、後述するベルトユニット51の下流端部の下方に配置されている。
【0024】
給紙ガイド板7には、
図3、
図4に示すように、後述するメイン浮上機構部21から給紙台2上の用紙Pに空気を吹き付けるための切り欠き部7aが、前後方向における中央部の上部を切り欠いて形成されている。
【0025】
サバキゲート8は、浮上部11により浮上させられた用紙Pのうち搬送部13に吸着された最上位の用紙P以外の用紙Pをせき止める部材である。2つのサバキゲート8が、搬送部13の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して設置されている。
【0026】
サイドフェンス9は、給紙台2上の用紙Pの前後方向(幅方向)における位置を規制する部材である。2つのサイドフェンス9は、前後方向に互いに離間して配置されている。サイドフェンス9は、給紙台2のフェンス挿通穴2aに挿通され、フェンス挿通穴2aの範囲において前後方向に移動可能に構成されている。
【0027】
図5に示すように、サイドフェンス9には、サイド浮上エア吹出口16およびサイド分離エア吹出口17が形成されている。また、
図3~
図5に示すように、サイドフェンス9には、整流部材18が設けられている。なお、
図5は、後側のサイドフェンス9を前側から見た図である。
【0028】
サイド浮上エア吹出口16は、後述するサイド浮上機構部22が発生させるサイド浮上気流の吹出口である。サイド分離エア吹出口17は、後述するサイド分離機構部42が発生させるサイド分離気流の吹出口である。
【0029】
整流部材18は、浮上部11によって浮上させられた給紙台2上の用紙Pのうちの最上位の用紙Pを引き寄せ、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離気流が流れるようにするための部材である。整流部材18は、サイドフェンス9の内側(給紙台2側)の面において、サイド分離エア吹出口17の上縁に沿って取り付けられている。整流部材18は、前後方向における給紙台2の中央側に向かうほど高くなるように傾斜している。
【0030】
エンドフェンス10は、給紙台2上の用紙Pの上流端(左端)の位置を規制する部材である。エンドフェンス10は、給紙台2の上方に配置されている。エンドフェンス10は、左右方向に移動可能に構成されている。
【0031】
浮上部11は、給紙台2上の用紙Pに空気を吹きつけて用紙Pを浮上させる。浮上部11は、メイン浮上機構部21と、2つのサイド浮上機構部22とを備える。
【0032】
メイン浮上機構部21は、給紙台2上の用紙Pに対して下流側から用紙Pを浮上させるための空気を吹き付ける。メイン浮上機構部21は、給紙台2の下流側近傍に配置されている。メイン浮上機構部21は、メイン浮上ファン26と、シャッタ27と、2つのメイン浮上エア吹出口28とを備える。
【0033】
メイン浮上ファン26は、給紙台2上の用紙Pに対して下流側から空気を吹き付けて用紙Pを浮上させるためのメイン浮上気流を発生させる。
【0034】
シャッタ27は、メイン浮上エア吹出口28からのメイン浮上気流の吹き出しのオンオフを切り替える。メイン浮上ファン26の駆動中において、シャッタ27が開放されている状態では、メイン浮上エア吹出口28からメイン浮上気流が吹き出し、シャッタ27が閉鎖されている状態では、メイン浮上エア吹出口28からのメイン浮上気流の吹き出しが停止される。
【0035】
メイン浮上エア吹出口28は、メイン浮上ファン26の駆動により発生するメイン浮上気流の吹出口である。2つのメイン浮上エア吹出口28は、搬送部13の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して配置されている。
【0036】
2つのサイド浮上機構部22は、給紙台2を挟んで互いに前後方向に離間して配置されている。2つのサイド浮上機構部22は、2つのサイドフェンス9の外側に1つずつ設置されている。
【0037】
前側のサイド浮上機構部22は、給紙台2上の用紙Pに対して前側から用紙Pを浮上させるための空気を吹き付ける。後側のサイド浮上機構部22は、給紙台2上の用紙Pに対して後側から用紙Pを浮上させるための空気を吹き付ける。サイド浮上機構部22は、サイド浮上ファン31と、シャッタ32とを備える。
【0038】
サイド浮上ファン31は、給紙台2上の用紙Pに対してサイドフェンス9のサイド浮上エア吹出口16から空気を吹き付けて用紙Pを浮上させるためのサイド浮上気流を発生させる。
【0039】
シャッタ32は、サイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上気流の吹き出しのオンオフを切り替える。サイド浮上ファン31の駆動中において、シャッタ32が開放されている状態では、サイド浮上エア吹出口16からサイド浮上気流が吹き出し、シャッタ32が閉鎖されている状態では、サイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上気流の吹き出しが停止される。
【0040】
分離部12は、浮上部11により浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させる。分離部12は、メイン分離機構部41と、2つのサイド分離機構部42とを備える。
【0041】
メイン分離機構部41は、浮上部11により浮上させられて搬送部13に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に下流側から空気を流し込む。メイン分離機構部41は、メイン分離ファン46と、2つのメイン分離エア吹出口47とを備える。
【0042】
メイン分離ファン46は、搬送部13に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に下流側から空気を流し込んで最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるためのメイン分離気流を発生させる。
【0043】
メイン分離エア吹出口47は、メイン分離ファン46の駆動により発生するメイン浮上気流の吹出口である。2つのメイン分離エア吹出口47は、搬送部13の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して配置されている。メイン分離エア吹出口47は、搬送部13に向けて上向きに空気を吹き出す。
【0044】
2つのサイド分離機構部42は、給紙台2を挟んで互いに前後方向に離間して配置されている。2つのサイド分離機構部42は、2つのサイドフェンス9の外側に1つずつ設置されている。サイド分離機構部42は、サイド浮上機構部22の右側に隣接して配置されている。
【0045】
サイド分離機構部42は、浮上部11により浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pを整流部材18に引き寄せるとともに、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとを分離させるためのサイド分離気流をサイドフェンス9のサイド分離エア吹出口17から吹き出す。サイド分離機構部42は、サイド分離気流を発生させるサイド分離ファン48を備える。
【0046】
搬送部13は、浮上部11により浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pをエア吸引により吸着して搬送する。搬送部13は、2つのベルトユニット51と、搬送モータ52と、チャンバ53と、サクションファン54とを備える。
【0047】
ベルトユニット51は、用紙Pを吸着保持して搬送する。2つのベルトユニット51は、前後方向に並列して配置されている。ベルトユニット51は、左右方向において、給紙台2の右端を跨いで配置されている。ベルトユニット51は、搬送ベルト56と、駆動ローラ57と、従動ローラ58とを備える。
【0048】
搬送ベルト56は、駆動ローラ57と従動ローラ58とに掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト56には、複数のベルト穴56aが全周に渡って形成されている。搬送ベルト56は、サクションファン54の駆動によりベルト穴56aに発生する吸着力により、搬送ベルト56の下面である搬送面56bに用紙Pを吸着保持する。用紙Pを吸着保持した状態で駆動ローラ57の駆動により搬送ベルト56が回転(無端移動)することで、用紙Pが搬送される。
【0049】
駆動ローラ57は、搬送ベルト56を回転(無端移動)させる。2つのベルトユニット51の駆動ローラ57は、シャフト59により互いに接続されている。
【0050】
従動ローラ58は、駆動ローラ57とともに搬送ベルト56を支持する。従動ローラ58は、回転する搬送ベルト56に従動回転する。2つのベルトユニット51の従動ローラ58は、シャフト60により互いに接続されている。
【0051】
搬送モータ52は、シャフト59を回転させることにより、駆動ローラ57を回転させる。
【0052】
チャンバ53は、ベルトユニット51のベルト穴56aに吸着力を発生させるための負圧室を形成するものである。チャンバ53は、搬送ベルト56の搬送面56bが露出するように、ベルトユニット51を内部に保持している。チャンバ53の底板の搬送ベルト56が通過する部分には、通気穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト56の搬送面56bのベルト穴56aおよびチャンバ53の通気穴を介したチャンバ53内への空気の吸引により、ベルト穴56aに吸着力が発生する。
【0053】
サクションファン54は、チャンバ53から排気する。サクションファン54がチャンバ53から排気すると、搬送ベルト56の搬送面56bのベルト穴56aおよびチャンバ53の通気穴を介してチャンバ53外から空気がチャンバ53内に吸引される。サクションファン54は、チャンバ53の上側に配置されている。
【0054】
上限センサ14は、給紙台2上に積載された用紙Pのうちの最上位の用紙Pが所定の用紙上限位置(目標位置)にあるか否かを検出するためのものである。上限センサ14は、給紙台2より下流側において、上下方向における浮上部11が用紙Pを浮上させる領域である浮上領域内の浮上している用紙Pを検出可能な高さ位置に配置されている。上限センサ14の検出範囲の上限は、浮上領域の上限より低い位置にあり、検出範囲の下限は、浮上領域の下限より高い位置にある。上限センサ14は、反射型の光センサからなる。
【0055】
制御部15は、給紙装置1全体の動作を制御する。制御部15は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0056】
具体的には、制御部15は、浮上部11および分離部12の駆動により給紙台2上の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送面56bに吸着させ、搬送部13により搬送して給紙するよう制御する。この際、制御部15は、後述するように、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるために、浮上部11による用紙Pへの空気の吹き付けを搬送部13の搬送面56bに吸着させる用紙1枚ごとにオンオフ制御する。また、制御部15は、通常モード制御において、給紙による給紙台2上の用紙Pの残量の減少に応じて給紙台2を上昇させて、給紙台2上の最上位の用紙Pの高さ位置、すなわち、給紙台2上の複数枚の用紙Pからなる用紙束PTの上面の高さ位置を用紙上限位置(目標位置)に維持する上限追従制御を行う。
【0057】
用紙上限位置(目標位置)は、給紙装置1において給紙に適切な用紙束PTの上面の高さ位置として予め設定されたものである。用紙上限位置としては、実験等に基づき、用紙種類(用紙の厚さ)に応じた適切な位置が設定されている。
【0058】
通常モード制御における上限追従制御において、制御部15は、浮上部11により浮上させられた用紙Pの浮上中における上限センサ14のセンサ値を取得し、取得したセンサ値が所定の追従閾値未満の場合に給紙台2を上昇させる。
【0059】
ここで、浮上部11により浮上させられた用紙Pの浮上中におけるセンサ値は、上限センサ14の検出範囲内にある、浮上している用紙Pの端面からの反射光の受光量である。このため、用紙Pの浮上中におけるセンサ値は、上限センサ14の検出範囲内の浮上している用紙Pの枚数が多いほど、大きくなる。
【0060】
また、浮上部11による空気の吹き付けにより浮上可能な用紙Pの枚数は、浮上領域内にある用紙Pの枚数である。したがって、給紙台2上の用紙Pが浮上していない状態における用紙束PTの上面の高さ位置が低いほど、浮上部11による空気の吹き付けにより浮上する用紙Pの枚数が少ない。
【0061】
このことから、用紙Pの浮上中におけるセンサ値を、擬似的に、給紙台2上の用紙Pが浮上していないとした場合の給紙台2上の用紙束PTの上面の高さ位置を示す情報として用いることができる。給紙台2の高さ位置が変わらなければ、給紙が進むにつれて浮上する用紙Pが減少し、センサ値は低下傾向になる。
【0062】
そこで、給紙装置1では、上述のように、用紙Pの浮上中のセンサ値を用いて上限追従制御を行う。
【0063】
また、給紙装置1では、後述のように、通常モード制御による給紙動作の開始後、用紙Pの浮上中のセンサ値のサンプリングにより追従閾値を決定し、上限追従制御を開始する。給紙動作時における実際の用紙サイズ、用紙種類、および用紙の色等に応じた追従閾値を設定し、上限追従制御の精度の低下を抑えるためである。
【0064】
また、給紙装置1では、制御部15は、給紙台2上の用紙Pの給紙の最終局面では、ラストモード制御を行う。ラストモード制御は、給紙台2上の用紙残量が規定残量範囲内の状態で給紙台2を用紙属性(シートの属性に相当)に応じた所定の最終高さ位置(所定高さ位置に相当)に固定し、浮上部11の風速を、規定残量範囲、最終高さ位置、および用紙属性に応じて制御するものである。また、ラストモード制御では、制御部15は、分離部12の風速および浮上オン時間も、規定残量範囲、最終高さ位置、および用紙属性に応じて制御する。
【0065】
ここで、浮上オン時間は、浮上部11による用紙Pへの空気の吹き付けのオンオフ制御における用紙1枚当たりのオン時間である。用紙属性は、用紙種類と用紙サイズとの組み合わせからなる。
【0066】
また、最終高さ位置は、ラストモード制御時における給紙台2の高さ位置として予め設定されたものである。給紙台2が最終高さ位置にあるとき、給紙台2上のすべての用紙Pは浮上部11による浮上領域内にある。規定残量範囲は、ラストモード制御の開始時点における最終高さ位置の給紙台2上の用紙残量の範囲として予め設定されたものである。
【0067】
最終高さ位置および規定残量範囲は、ラストモード制御の開始時点において、搬送面56bと給紙台2との間隔に対して用紙残量が多すぎず、かつ少なすぎないように設定される。
【0068】
ここで、搬送面56bと給紙台2との間隔に対して用紙残量が多すぎると、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを十分に分離できず、用紙Pの重送が発生するおそれがある。また、搬送面56bと給紙台2との間隔に対して用紙残量が少なすぎると、用紙1枚当たりの風量が大きくなることにより、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすくなる。用紙Pの挙動が乱れると、複数の用紙Pが搬送面56bに吸着されて重送が発生したり、用紙Pがエンドフェンス10を乗り越えてしまうことによる空送が発生したりするおそれがある。
【0069】
また、軽い用紙種類であるほど、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすい。また、用紙サイズが小さいほど、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすい。また、浮上部11の風速が大きいほど、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすい。また、分離部12の風速が大きいほど、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすい。また、浮上オン時間が長いほど、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすい。
【0070】
また、用紙残量が同じであれば、搬送面56bと最終高さ位置の給紙台2との間隔が大きいほど、用紙1枚当たりの風量が大きくなることにより、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすい。
【0071】
そこで、最終高さ位置、ラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、およびラストモード浮上オン時間は、用紙属性に応じて設定されている。ここで、ラストモード浮上風速は、ラストモード制御における浮上部11の風速である。ラストモード分離風速は、ラストモード制御における分離部12の風速である。ラストモード浮上オン時間は、ラストモード制御における浮上オン時間である。
【0072】
具体的には、用紙サイズが同じであれば、軽い用紙種類であるほど、最終高さ位置は高く、ラストモード浮上風速およびラストモード分離風速は小さく、ラストモード浮上オン時間は短く設定される。また、用紙種類が同じであれば、用紙サイズが小さいほど、最終高さ位置は高く、ラストモード浮上風速およびラストモード分離風速は小さく、ラストモード浮上オン時間は短く設定される。
【0073】
また、用紙属性に応じたラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、およびラストモード浮上オン時間は、規定残量範囲および最終高さ位置に応じて設定されている。すなわち、用紙属性に応じたラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、およびラストモード浮上オン時間は、給紙台2が最終高さ位置にある状態で、規定残量範囲の用紙Pを給紙し終えるまでの間において、用紙Pを1枚ずつ分離できるとともに、用紙Pの浮上時における挙動の乱れを抑えられるような値に設定されている。
【0074】
用紙属性に応じたラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、ラストモード浮上オン時間は、それぞれ通常の給紙制御(通常モード制御)時における浮上部11の風速以下、分離部12の風速以下、浮上オン時間以下の値に設定されている。ここで、通常モード制御時における浮上部11の風速、分離部12の風速、および浮上オン時間は、用紙属性に応じて設定されている。ラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、およびラストモード浮上オン時間は、例えば、実験的に求められる。
【0075】
ところで、最終高さ位置によっては、搬送面56bと給紙台2との間隔が狭いために、意図しないタイミングで給紙台2上の用紙Pが搬送面56bに吸い寄せられるおそれがある。これを防止するために、ラストモード制御時における搬送部13の吸引風速であるラストモード吸引風速は、最終高さ位置に応じて設定されている。ラストモード吸引風速は、最終高さ位置の給紙台2上の浮上していない用紙Pが搬送面56bに吸い寄せられない値に設定されている。ラストモード吸引風速は、通常モード制御時における搬送部13の吸引風速以下の値に設定されている。ラストモード吸引風速は、例えば、実験的に求められる。
【0076】
また、制御部15は、用紙属性に基づき、ラスト追従モード制御を行うか否かを判断し、ラスト追従モード制御を行うと判断した場合、ラストモード制御の直前にラスト追従モード制御を行う。ラスト追従モード制御は、給紙台2が最終高さ位置に到達するまで、用紙属性に応じた上昇給紙枚数(規定枚数に相当)だけ給紙台2上の用紙Pが減少するごとに、用紙属性に応じた規定上昇量ずつ給紙台2を上昇させる制御である。ラスト追従モード制御は、給紙台2上の用紙残量が規定残量範囲内の状態で給紙台2を用紙属性に応じた最終高さ位置に到達させるために行われるものである。
【0077】
ラスト追従モード制御を行うか否かは、用紙属性ごとに予め決まっている。例えば、用紙属性に応じた最終高さ位置が、通常モード制御における上限追従制御で給紙台2の上昇が停止する高さ位置である通常最終高さ位置より高い場合、ラスト追従モード制御が行われる。また、用紙属性に応じた最終高さ位置が通常最終高さ位置以下でも、通常モード制御における上限追従制御のまま給紙台2を最終高さ位置に到達させたとしたら、その時点で用紙残量が少ないために用紙Pの浮上時における挙動の乱れが発生するような場合にも、ラスト追従モード制御が行われる。
【0078】
ラスト追従モード制御の開始時の給紙台2の高さ位置、並びに、ラスト追従モード制御における上述の上昇給紙枚数および規定上昇量は、ラスト追従モード制御中に用紙Pの浮上時における挙動の乱れが発生せず、給紙台2上の用紙残量が規定残量範囲内の状態で給紙台2が最終高さ位置に到達するように、用紙属性に応じて設定される。
【0079】
制御部15は、
図6に示すラストモードテーブル61を記憶している。ラストモードテーブル61は、用紙属性(用紙種類および用紙サイズ)、移行パルス数、停止パルス数、上昇給紙枚数、上昇パルス数、ラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、ラストモード吸引風速、およびラストモード浮上オン時間を関連付けたテーブルである。
【0080】
移行パルス数は、ラスト追従モード制御を行う用紙属性の場合は、給紙台センサ6が被検出板2bを検出してから、通常モード制御からラスト追従モード制御に移行するまでのモータエンコーダ4の出力パルス数である。ラスト追従モード制御を行わない用紙属性の場合は、移行パルス数は、給紙台センサ6が被検出板2bを検出してから、通常モード制御からラストモード制御に移行するまでのモータエンコーダ4の出力パルス数である。
【0081】
停止パルス数は、給紙台センサ6が被検出板2bを検出してから、給紙台2を最終高さ位置で停止させるまでのモータエンコーダ4の出力パルス数である。ラスト追従モード制御を行わない用紙属性の場合は、移行パルス数と停止パルス数とが同じになる。
【0082】
上昇パルス数は、ラスト追従モード制御において昇降モータ3が予め設定されたデューティ比で駆動されたときの上述の規定上昇量分のモータエンコーダ4の出力パルス数である。
【0083】
図6において、上昇給紙枚数および上昇パルス数の値がない用紙属性は、ラスト追従モード制御が不要なものである。
【0084】
次に、給紙装置1の動作について説明する。
【0085】
ここでは、給紙動作の開始時点において、給紙台2は、給紙台センサ6が被検出板2bを検出する高さ位置より低い位置にあるとする。また、給紙台2上のすべての用紙Pを給紙するものとする。
【0086】
給紙開始が指示されると、制御部15は、通常モード制御での給紙動作を開始させる。具体的には、制御部15は、給紙台2上に積載された用紙Pのうちの最上位の用紙P(用紙束PTの上面)が上限センサ14の検出範囲の下限よりも下方にある状態から給紙台2の上昇を開始させる。
【0087】
給紙台2の上昇開始後、給紙台2上の用紙束PTの上端部が上限センサ14の検出範囲内に入ると、用紙束PTの上端部の右側の側面による反射光が上限センサ14で受光され始める。その後、給紙台2の上昇に伴って、給紙台2上の用紙束PTにおける上限センサ14の検出範囲内に入っている範囲が広がるので、上限センサ14のセンサ値(受光量)が大きくなる。
【0088】
制御部15は、センサ値が所定の非浮上閾値に到達したと判断すると、給紙台2上の上昇を停止させる。ここで、非浮上閾値は、用紙束PTの上面の高さ位置が、上限センサ14の検出範囲内の所定のセンサ位置にあるときのセンサ値として設定されたものである。このため、上述のようにセンサ値が非浮上閾値に到達すると給紙台2の上昇を停止させることで、用紙束PTの上面が上述のセンサ位置にある高さ位置で給紙台2が停止する。
【0089】
次いで、制御部15は、給紙台2の上昇または下降を開始させ、用紙束PTの上面が所定の給紙開始位置に到達すると、給紙台2を停止させる。これにより、用紙束PTの上面の高さ位置が給紙開始位置に設定される。ここで、制御部15は、給紙台2の上昇または下降を開始させた時点からのモータエンコーダ4の出力パルス数に基づき、用紙束PTの上面が給紙開始位置に到達したか否かを判断する。
【0090】
給紙開始位置は、給紙動作中の用紙束PTの上面の目標位置である前述の用紙上限位置より高い位置にある。具体的には、給紙開始位置は、後述のサンプリング除外枚数と、後述のサンプリング枚数の半分の枚数との合計枚数分の用紙Pの厚さ分だけ、用紙上限位置(目標位置)より高い位置にある。
【0091】
次いで、制御部15は、メイン浮上ファン26、2つのサイド浮上ファン31、メイン分離ファン46、2つのサイド分離ファン48、およびサクションファン54の駆動を開始させる。シャッタ27および2つのシャッタ32はいずれも開放状態である。
【0092】
これにより、メイン浮上エア吹出口28からメイン浮上気流、サイド浮上エア吹出口16からサイド浮上気流、メイン分離エア吹出口47からメイン分離気流、サイド分離エア吹出口17からサイド分離気流がそれぞれ吹き出す。また、ベルトユニット51のベルト穴56aに吸着力が発生する。
【0093】
ここで、制御部15は、浮上部11の風速(メイン浮上気流およびサイド浮上気流の風速)、および分離部12の風速(メイン分離気流およびサイド分離気流の風速)が、用紙属性に応じたそれぞれの通常モード制御用の風速となるようメイン浮上ファン26、サイド浮上ファン31、メイン分離ファン46、およびサイド分離ファン48を制御する。また、制御部15は、搬送部13の吸引風速が、通常モード制御用の吸引風速となるようサクションファン54を制御する。
【0094】
メイン浮上気流およびサイド浮上気流により、
図7に示すように、給紙台2上の用紙Pのうちの最上部の複数枚の用紙Pが浮上し、浮上した用紙Pのうちの最上位の用紙Pが、ベルトユニット51の搬送面56bに吸着される。
【0095】
ここで、用紙Pが浮上する際、サイドフェンス8近傍では、サイド分離エア吹出口17から吹き出したサイド分離気流が整流部材18に沿って流れることで、整流部材18と最上位の用紙Pとの間が負圧状態となる。これにより、最上位の用紙Pが整流部材18に引き寄せられ、整流部材18に接触する。この結果、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離気流が流れるようになる。
【0096】
一方、メイン分離機構部41側では、最上位の用紙Pが搬送面56bに吸着された後、メイン分離エア吹出口47から吹き出すメイン分離気流が、搬送面56bに吸着された最上位の用紙Pに沿って、上流側(左側)へ向かって流れる。
【0097】
これにより、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間において、メイン分離気流と前側からのサイド分離気流と後側からのサイド分離気流とが衝突して正圧が発生する。
【0098】
この状態において、制御部15は、シャッタ27および2つのシャッタ32を閉鎖するよう制御する。また、制御部15は、シャッタ27,32が完全に閉鎖されてから、搬送モータ52を制御してベルトユニット51の駆動を開始させる。
【0099】
ベルトユニット51の駆動開始により、搬送面56bに吸着された最上位の用紙Pが右方向に搬送され始める。
【0100】
また、シャッタ27,32が閉鎖されることで、給紙台2上の用紙Pへのメイン浮上エア吹出口28からのメイン浮上気流の吹き出し、およびサイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上気流の吹き出しが停止される。すなわち、浮上部11による給紙台2上の用紙Pへの空気の吹き付けがオフ(停止)となる。これにより、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間の正圧により上から2枚目以下の用紙Pが押し下げられることで、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離される。2枚目以下の用紙Pは、給紙台2上に残っている用紙P上に落下する。
【0101】
上記のようにして、ベルトユニット51により最上位の用紙Pが搬送されつつ、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。用紙Pの落下が終了すると、ベルトユニット51により搬送される用紙P以外の用紙Pは給紙台2上に積載された状態に戻る。
【0102】
次いで、制御部15は、ベルトユニット51の駆動開始後の所定のタイミングにおいて、ベルトユニット51を停止させる。この後、制御部15は、次の用紙Pの給紙のために、シャッタ27および2つのシャッタ32を開放し、給紙台2上の用紙Pのうちの最上部の複数枚の用紙Pを浮上させる。
【0103】
上記の動作を繰り返すことにより、用紙Pが給紙装置1から給紙先へ順次給紙される。ここで、制御部15は、給紙する用紙1枚当たりのシャッタ27,32の開放時間が、通常モード制御用の浮上オン時間となるようシャッタ27,32を開閉制御する。
【0104】
給紙動作の開始後、給紙枚数がサンプリング除外枚数に到達すると、制御部15は、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを開始する。
【0105】
ここで、サンプリング除外枚数は、給紙動作の開始直後において、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを行わない給紙枚数として予め設定されたものである。後述するように、給紙動作の開始直後においては、用紙Pが浮上させられた際の用紙Pの挙動が不安定であるため、サンプリング除外枚数を設定して、その枚数が給紙されるまでセンサ値のサンプリングを行わないようにしている。浮上時の用紙Pの挙動は、用紙属性によって異なるため、サンプリング除外枚数は、用紙属性に応じて設定されている。サンプリング除外枚数は、1枚でもよいし、複数枚でもよい。
【0106】
上述のサンプリングを開始すると、制御部15は、サンプリング除外枚数分の最後の用紙Pの次の用紙Pの給紙のために浮上させられた用紙Pの浮上中に、上限センサ14のセンサ値を取得する。この後、制御部15は、搬送部13により搬送(給紙)される用紙1枚ごとに、浮上させられた用紙Pの浮上中にセンサ値を取得する。用紙Pの浮上中のセンサ値として、制御部15は、例えば、シャッタ27,32の開放時点から所定時間後のセンサ値を取得する。
【0107】
サンプリング枚数分のセンサ値を取得すると、制御部15は、追従閾値を決定して上限追従制御を開始する。具体的には、制御部15は、取得したサンプリング枚数分のセンサ値の平均値を算出し、算出した平均値を、追従閾値に決定する。そして、制御部15は、決定した追従閾値を用いた上限追従制御を開始させる。上限追従制御が開始するまでは、給紙台2の高さ位置は、給紙動作の開始時点に設定された位置で固定されている。
【0108】
ここで、サンプリング枚数は、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを行う給紙枚数として予め設定された枚数である。サンプリング枚数は、複数枚である。サンプリング枚数は、用紙属性に関わらず共通の値とすることもできるし、用紙属性に応じて値を変えることもできる。
【0109】
また、サンプリング枚数分のセンサ値を取得する期間であるサンプリング期間は、用紙束PTの上面の高さ位置が用紙上限位置(目標位置)となる時点の前後それぞれで同じ枚数の給紙が行われるように設定されている。
【0110】
上限追従制御の開始後は、給紙による給紙台2上の用紙残量の減少に応じて給紙台2が上昇する。
【0111】
給紙装置1では、給紙台2上の用紙Pの給紙の最終局面では、前述のラストモード制御が行われる。用紙属性によっては、ラストモード制御に先立ってラスト追従モード制御が行われる。この最終局面の給紙制御について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0112】
給紙動作の開始後、
図8のステップS1において、制御部15は、給紙台センサ6がオンになったか否かを判断する。ここで、給紙台センサ6は、被検出板2bを検出するとオンになる。給紙台センサ6がオンになっていないと判断した場合(ステップS1:NO)、制御部15は、ステップS1を繰り返す。
【0113】
給紙台センサ6がオンになったと判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部15は、モータエンコーダ4の出力パルス数のカウントを開始する。
【0114】
次いで、ステップS3において、制御部15は、モータエンコーダ4の出力パルス数のカウント値が、給紙中の用紙Pの用紙属性に応じた移行パルス数に到達したか否かを判断する。カウント値が移行パルス数に到達していないと判断した場合(ステップS3:NO)、制御部15は、ステップS3を繰り返す。
【0115】
カウント値が移行パルス数に到達したと判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部15は、給紙中の用紙Pの用紙属性に基づき、ラスト追従モード制御を行うか否かを判断する。
【0116】
ラスト追従モード制御を行うと判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部15は、通常モード制御からラスト追従モード制御へ移行する。
【0117】
ラスト追従モード制御では、制御部15は、前述した上限センサ14を用いた上限追従制御は行わず、給紙中の用紙Pの用紙属性に応じた上昇給紙枚数だけ給紙台2上の用紙Pが減少するごとに、規定上昇量ずつ給紙台2を強制上昇させる。具体的には、制御部15は、上昇給紙枚数の用紙Pが給紙されるごとに、予め設定されたデューティ比で上昇パルス数分だけ昇降モータ3を駆動させる。
【0118】
ラスト追従モード制御の開始後、給紙台センサ6がオンになってからのモータエンコーダ4の出力パルス数のカウント値が、給紙中の用紙Pの用紙属性に応じた停止パルス数に到達したか否かを判断する。カウント値が停止パルス数に到達していないと判断した場合(ステップS6:NO)、制御部15は、ステップS6を繰り返す。
【0119】
カウント値が停止パルス数に到達したと判断した場合(ステップS6:YES)、ステップS7において、制御部15は、ラスト追従モード制御からラストモード制御へ移行する。
【0120】
具体的には、制御部15は、カウント値が停止パルス数に到達した時点で、給紙台2の上昇を停止させる。これにより、給紙台2が用紙属性に応じた最終高さ位置で停止する。この後、給紙台2の上昇は行われない。
【0121】
そして、制御部15は、浮上部11の風速および分離部12の風速が、それぞれ用紙属性に応じたラストモード浮上風速およびラストモード分離風速となるよう浮上部11および分離部12を制御する。
【0122】
また、制御部15は、浮上オン時間が用紙属性に応じたラストモード浮上オン時間となるよう、用紙1枚ごとにシャッタ27,32の開閉を制御する。
【0123】
また、制御部15は、搬送部13の吸引風速が給紙中の用紙Pの用紙属性における最終高さ位置に応じたラストモード吸引風速となるようサクションファン54を制御する。
【0124】
ステップS4において、ラスト追従モード制御を行わないと判断した場合(ステップS4:NO)、制御部15は、ステップS7へ進み、通常モード制御からラストモード制御へ移行する。ここで、ラスト追従モード制御を行わない用紙属性の場合、前述のように移行パルス数と停止パルス数とが同じであるため、制御部15は、カウント値が移行パルス数に到達した時点で、給紙台2の上昇を停止させる。
【0125】
次いで、ステップS8において、制御部15は、給紙台2上の用紙Pの給紙が終了したか否かを判断する。ここで、制御部15は、用紙有無センサ5がオフになると、用紙Pの給紙が終了したと判断する。給紙が終了していないと判断した場合(ステップS8:NO)、制御部15は、ステップS8を繰り返す。給紙が終了したと判断した場合(ステップS8:YES)、制御部15は、一連の処理を終了する。
【0126】
ラスト追従モード制御およびラストモード制御による給紙台2の高さ位置および用紙残量の推移の一例を
図9に示す。
【0127】
図9には、比較例として、給紙台2上のすべての用紙Pの給紙が終了するまで通常の給紙制御(通常モード制御)を行った場合の給紙台2の高さ位置および用紙残量の推移を示す。給紙装置1では、給紙台2上のすべての用紙Pの給紙が終了するまで通常モード制御を行った場合、所定の通常最終高さ位置で給紙台2の上昇が止まるようになっている。
【0128】
図9の例の用紙属性では、ラストモード制御における最終高さ位置が通常最終高さ位置よりも高い位置にあるため、ラスト追従モード制御が行われる。
【0129】
次に、通常モード制御からラスト追従モード制御を行わずにラストモード制御へ移行する場合の給紙台2の高さ位置および用紙残量の推移の一例を
図10に示す。
【0130】
図10の例の用紙属性では、最終高さ位置が通常最終高さ位置よりも低い位置にあるため、ラスト追従モードは不要であり、通常モード制御からラストモード制御へ移行する。
【0131】
以上説明したように、給紙装置1では、制御部15は、ラストモード制御において、給紙台2上の用紙残量が規定残量範囲内の状態で給紙台2を用紙属性に応じた最終高さ位置に固定し、浮上部11の風速を、規定残量範囲、最終高さ位置、および用紙属性に応じて制御する。
【0132】
これにより、用紙残量が少なくなる給紙の最終局面でも、用紙Pの浮上時に用紙1枚当たりの風量が大きくなりすぎることを抑えることが可能となる。このため、用紙Pの浮上時における挙動の乱れを抑えることができる。この結果、複数の用紙Pが搬送面56bに吸着されることによる重送や、用紙Pがエンドフェンス10を乗り越えてしまうことによる空送のような給紙の不具合を低減できる。
【0133】
また、制御部15は、ラストモード制御において、分離部12の風速および浮上オン時間を、規定残量範囲、最終高さ位置、および用紙属性に応じて制御する。これにより、用紙Pの浮上時における挙動の乱れをより抑えることができるので、給紙の不具合をより低減できる。
【0134】
また、ラストモード制御では、制御部15は、搬送部13の吸引風速(ラストモード吸引風速)を、最終高さ位置に応じて設定しているので、意図しないタイミングで給紙台2上の用紙Pが搬送面56bに吸い寄せられることが抑えられる。これにより、重送等の給紙の不具合をより低減できる。
【0135】
また、給紙装置1では、制御部15は、用紙属性に基づき、ラスト追従モード制御を行うか否かを判断する。ラスト追従モード制御を行うと判断した場合、制御部15は、ラストモード制御の直前にラスト追従モード制御を行う。これにより、用紙Pの浮上時における挙動の乱れを抑えつつ、給紙台2を用紙残量が規定残量範囲内の状態で最終高さ位置に到達させ、ラストモード制御を開始することができる。ここで、ラスト追従モード制御が必要な用紙属性においてラスト追従モード制御を行わない場合、用紙残量が規定残量範囲内の状態で最終高さ位置に給紙台2を固定してラストモード制御を開始することができず、用紙Pの浮上時における挙動の乱れが発生するおそれがある。ラスト追従モード制御を行うことで、これを防止できる。
【0136】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態の一部を変更した第2実施形態について説明する。
【0137】
第2実施形態では、制御部15は、少残量モード制御を実行可能である。少残量モード制御は、給紙動作(シート供給動作に相当)の開始時における給紙台2上に積載された用紙Pの枚数(積載枚数Px)が後述する所定の少残量モード最大枚数Pth(所定枚数に相当)以下である場合の給紙動作において行う制御である。
【0138】
制御部15は、少残量モード制御の給紙動作において、浮上部11の風速、分離部12の風速、浮上オン時間、および搬送部13の吸引風速を、それぞれラストモード制御における設定と同じ設定とする。また、制御部15は、この設定において、浮上中の用紙Pの挙動の乱れを抑え、搬送部13による浮上していない用紙Pの吸引を抑えつつ給紙できるように、用紙残量に応じて給紙台2の高さ位置を制御する。
【0139】
給紙動作の開始時における給紙台2上の用紙Pの枚数が少ない場合、浮上部11により用紙Pを浮上させる際の用紙1枚当たりの風量が大きくなり、用紙Pの浮上時における挙動が乱れやすくなる。このため、前述の通常モード制御におけるサンプリングによる追従閾値の算出および上限追従制御を適切に行えないおそれがある。このため、重送や空送等の給紙の不具合が発生するおそれがある。そこで、第2実施形態では、給紙動作の開始時における給紙台2上の用紙Pの枚数が少ない場合には、給紙の不具合を低減するために少残量モード制御を行う。
【0140】
次に、第2実施形態における給紙装置1の動作について、
図11、
図12のフローチャートを参照して説明する。ここでは、給紙台2上のすべての用紙Pを給紙するものとする。
【0141】
図11のステップS11において、制御部15は、給紙動作の開始時における給紙台2上の用紙Pの積載枚数Pxを検出する。
【0142】
具体的には、まず、制御部15は、給紙台2の上昇を開始させる。ここで、給紙台2の上昇開始前は、用紙束PTの上面が上限センサ14の検出領域の下限よりも下方にある状態である。具体的には、給紙台2は、給紙台2上の用紙Pが満杯の状態でも用紙束PTの上面が上限センサ14の検出領域の下限よりも下方に位置するような所定の上昇開始位置から上昇を開始する。制御部15は、給紙台2の上昇を開始させると、モータエンコーダ4の出力パルス数のカウントを開始する。
【0143】
給紙台2の上昇開始後、制御部15は、上限センサ14のセンサ値が前述の非浮上閾値に到達したと判断すると、給紙台2の上昇を停止させる。これにより、用紙束PTがセンサ位置にある高さ位置で給紙台2が停止する。
【0144】
次いで、制御部15は、給紙台2の上昇を停止させた時点におけるモータエンコーダ4の出力パルス数のカウント値から、その時点における給紙台2(の上面)の高さ位置Hpxを算出する。
【0145】
ここで、給紙台2(の上面)がセンサ位置にあるときの給紙台2(の上面)の高さ位置をHp0、積載枚数Pxの用紙Pからなる用紙束PTの厚さをWpxとすると、HpxとHp0とWpxとの関係は、
図13のようになっている。すなわち、下記の式(1)が成り立つ。
【0146】
Hp0-Hpx=Wpx …(1)
したがって、用紙Pの1枚の厚さをWpとすると、下記の式(2)が成り立つ。
【0147】
Px=(Hp0-Hpx)/Wp …(2)
制御部15は、式(2)により積載枚数Pxを算出する。
【0148】
ここで、Hp0は固定値であり、制御部15は、予めHp0を記憶している。また、制御部15は、用紙種類ごとの用紙1枚の厚さを予め記憶しており、用紙種類に応じた用紙1枚の厚さWpの値を用いて、積載枚数Pxを算出する。なお、昇降モータ3、モータエンコーダ4、上限センサ14、および制御部15により、積載枚数検出部が構成される。
【0149】
次いで、
図11のステップS12において、制御部15は、積載枚数Pxが少残量モード最大枚数Pthを超えているか否かを判断する。
【0150】
ここで、少残量モード最大枚数Pthは、少残量モード制御で給紙動作を行うか否かを判断するための閾値として設定されたものである。少残量モード最大枚数Pthは、用紙属性に応じて、前述のサンプリング除外枚数とサンプリング枚数との合計の枚数よりも十分に多い枚数に設定されている。
【0151】
Px>Pthであると判断した場合(ステップS12:YES)、ステップS13において、制御部15は、前述した通常モード制御の給紙動作を開始させる。ここで、Px>Pthである場合には、通常モード制御の給紙動作の開始時点において用紙束PTの上面が給紙開始位置にあるときの給紙台2の高さ位置が、給紙台センサ6が被検出板2bを検出する高さ位置より低い位置となるように、少残量モード最大枚数Pthが設定されている。
【0152】
通常モード制御の給紙動作を開始させると、制御部15は、ステップS14へ進む。ステップS14~S21の処理は、前述した
図8のステップS1~S8の処理と同様である。ステップS21において、給紙が終了したと判断した場合(ステップS21:YES)、制御部15は、一連の動作を終了する。
【0153】
ステップS12において、Px≦Pthであると判断した場合(ステップS12:NO)、
図12のステップS22において、制御部15は、少残量モード制御の給紙動作を開始させる。
【0154】
具体的には、まず、制御部15は、用紙束PTの上面の高さ位置を、少残量モード制御の給紙動作の開始時における高さ位置である少残量給紙開始位置に設定する。
【0155】
ここで、少残量モード制御における給紙台2上の用紙Pの残量がPnのときの給紙台2(の上面)の高さ位置をHpnとする。また、ラストモード制御における給紙台2(の上面)の高さ位置(最終高さ位置)をHe、残量Pnが少残量モード最大枚数Pthであるときの少残量モード制御の給紙動作の開始時における給紙台2(の上面)の高さ位置をHsとする。Hpnは、
図14に示すように、HsからHeまでの範囲で、少残量モード最大枚数Pthに対する残量Pnの割合に応じて決定される。すなわち、Hpnは、下記の式(3)で表される。また、Hsは、下記の式(4)で表される。
【0156】
Hpn=He-(He-Hs)×Pn/Pth …(3)
Hs=Hp0-Wpth-Ws …(4)
ここで、Wpthは、少残量モード最大枚数Pthの用紙Pからなる用紙束PTの厚さである。Wsは、センサ位置から少残量給紙開始位置までの用紙束PTの上面のオフセット量(移動量)である。また、
図14におけるHpthは、少残量モード最大枚数Pthの用紙Pからなる用紙束PTの上面がセンサ位置にあるときの給紙台2(の上面)の高さ位置である。
【0157】
制御部15は、ステップS1で検出した積載枚数Pxを式(3)のPnに代入することにより、用紙束PTの上面が少残量給紙開始位置にあるときの給紙台2(の上面)の高さ位置を算出する。そして、制御部15は、用紙束PTの上面の高さ位置がセンサ位置から少残量給紙開始位置へ移動するよう給紙台2を昇降させる。このようにして設定される少残量給紙開始位置が、前述の通常モード制御における給紙開始位置よりも高い位置となるように、Wsが設定されている。
【0158】
用紙束PTの上面の高さ位置を少残量給紙開始位置に設定すると、制御部15は、メイン浮上ファン26、2つのサイド浮上ファン31、メイン分離ファン46、2つのサイド分離ファン48、およびサクションファン54の駆動を開始させる。シャッタ27および2つのシャッタ32はいずれも開放状態である。
【0159】
ここで、制御部15は、給紙動作の開始時から、浮上部11の風速(メイン浮上気流およびサイド浮上気流の風速)、分離部12の風速(メイン分離気流およびサイド分離気流の風速)、および搬送部13の吸引風速が、それぞれ給紙する用紙Pの用紙属性に応じたラストモード浮上風速、ラストモード分離風速、およびラストモード吸引風速と同じになるよう浮上部11、分離部12、およびサクションファン54を制御する。
【0160】
この後、制御部15は、通常モード制御と同様に、浮上部11による用紙Pへの空気の吹き付けのオンオフ制御(シャッタ27,32の開閉制御)、搬送部13のベルトユニット51の駆動制御を行う。これにより、用紙Pが給紙装置1から給紙先へ順次給紙される。
【0161】
ここで、制御部15は、浮上オン時間が用紙属性に応じたラストモード浮上オン時間と同じになるようシャッタ27,32を開閉制御する。
【0162】
また、制御部15は、給紙台2上の用紙Pの残量の減少に応じて、給紙台2(の上面)の高さ位置が上記の式(3)で算出される高さ位置となるよう給紙台2を上昇させる。これは、制御部15が、給紙台2上の用紙Pがなくなるときに給紙台2が最終高さ位置Heに到達するように給紙台2を上昇させることを意味する。この際、制御部15は、ステップS1で検出した積載枚数Pxから給紙した枚数を差し引いた値をPnとする。
【0163】
少残量モード制御の給紙動作では、上記のように浮上部11の風速、分離部12の風速、浮上オン時間、および搬送部13の吸引風速を、それぞれラストモード制御における設定と同じ設定とし、上記のような給紙台2の高さ位置の制御を行うことで、浮上中の用紙Pの挙動の乱れ、および搬送部13による浮上していない用紙Pの吸引が抑えられる。
【0164】
少残量モード制御の給紙動作の開始後、
図12のステップS23において、制御部15は、ステップS1で検出した積載枚数Px分の給紙が終了したか否かを判断する。
【0165】
積載枚数Px分の給紙が終了していないと判断した場合(ステップS23:NO)、ステップS24において、制御部15は、給紙台2上に用紙Pがあるか否かを判断する。ここで、制御部15は、用紙有無センサ(シート有無検出部に相当)5がオンの場合、給紙台2上に用紙Pがあると判断する。給紙台2上に用紙Pがあると判断した場合(ステップS24:YES)、制御部15は、ステップS23に戻る。給紙台2上に用紙Pがないと判断した場合(ステップS24:NO)、制御部15は、一連の動作を終了する。
【0166】
ここで、ステップS1で検出された積載枚数Pxは、実際の積載枚数に対する誤差を含む場合がある。このため、ステップS1で検出された積載枚数Px分の給紙が終了する前に、給紙台2上の用紙Pがなくなることがある。給紙動作の開始時における実際の積載枚数がステップS1で検出された積載枚数Pxより少ない場合、ステップS1で検出された積載枚数Px分の給紙が終了する前に給紙台2上の用紙Pがなくなり、ステップS24で「NO」と判断される。
【0167】
ステップS23において、積載枚数Px分の給紙が終了したと判断した場合(ステップS23:YES)、ステップS25において、制御部15は、給紙台2上に用紙Pがあるか否かを判断する。
【0168】
ここで、給紙動作の開始時における実際の積載枚数がステップS1で検出された積載枚数Pxより多い場合、ステップS1で検出された積載枚数Px分の給紙が終了しても給紙台2上に用紙Pが残っている。
【0169】
給紙台2上に用紙Pがないと判断した場合(ステップS25:NO)、制御部15は、一連の動作を終了する。
【0170】
給紙台2上に用紙Pがあると判断した場合(ステップS25:YES)、ステップS26において、制御部15は、給紙台2を最終高さ位置Heに固定して給紙を継続する。ここで、上記の式(3)から分かるように、ステップS1で検出された積載枚数Px分の給紙が終了した時点で、給紙台2は最終高さ位置にある。
【0171】
次いで、ステップS27において、制御部15は、給紙台2上に用紙Pがあるか否かを判断する。給紙台2上に用紙Pがあると判断した場合(ステップS27:YES)、制御部15は、ステップS27を繰り返す。給紙台2上に用紙Pがないと判断した場合(ステップS27:NO)、制御部15は、一連の動作を終了する。
【0172】
以上説明したように、第2実施形態では、制御部15は、給紙動作の開始時における給紙台2上に積載された用紙Pの枚数が少残量モード最大枚数Pth以下である場合、少残量モード制御の給紙動作を実行する。少残量モード制御の給紙動作において、制御部15は、浮上部11の風速、分離部12の風速、浮上オン時間、および搬送部13の吸引風速を、それぞれラストモード制御における設定と同じ設定とする。また、制御部15は、この設定において、浮上中の用紙Pの挙動の乱れを抑え、搬送部13による浮上していない用紙Pの吸引を抑えることができるように、用紙残量に応じて給紙台2の高さ位置を制御する。これにより、給紙動作の開始時における給紙台2上の用紙Pの枚数が少ない場合でも、浮上中の用紙Pの挙動の乱れ、および搬送部13による浮上していない用紙Pの吸引を抑えることができる。この結果、給紙の不具合を低減できる。
【0173】
また、少残量モード制御において、制御部15は、給紙動作の開始時に検出された積載枚数Px分の給紙が終了した時点で給紙台2上に用紙Pがあることが用紙有無センサ5により検出された場合には、その時点以降は給紙台2を最終高さ位置Heに固定する。これにより、検出された積載枚数Pxの誤差により給紙台2が最終高さ位置Heに到達した時点で用紙Pが給紙台2上に残っている場合でも、それ以降はラストモード制御と同様の制御による給紙動作が行われることで、給紙の不具合を抑制できる。
【0174】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1および第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0175】
上述した第1および第2実施形態では、最終高さ位置およびラストモード浮上風速を用紙属性に応じて設定した。しかし、用紙Pの浮上時における挙動の乱れを抑えることができれば、用紙属性に関わらず最終高さ位置およびラストモード浮上風速を設定してもよい。この場合でも、ラストモード制御において、給紙台2上の用紙残量が規定残量範囲内の状態で給紙台2を所定の最終高さ位置に固定し、浮上部11の風速を規定残量範囲および最終高さ位置に応じて制御することで、用紙Pの浮上時における挙動の乱れに起因する給紙の不具合を低減できる。
【0176】
また、上述した第1および第2実施形態では、ラストモード分離風速およびラストモード浮上オン時間を用紙属性に応じて設定した。しかし、ラストモード分離風速およびラストモード浮上オン時間の少なくともいずれかを用紙属性に関わらず設定してもよい。この場合でも、ラストモード制御において、ラストモード分離風速およびラストモード浮上オン時間の少なくともいずれかを、規定残量範囲および最終高さ位置に応じて制御することで、用紙Pの浮上時における挙動の乱れを低減できる。
【0177】
また、分離部12の風速および浮上オン時間の少なくともいずれかを、ラストモード制御においても通常モード制御と同様の設定としてもよい。搬送部13の吸引風速についても同様である。
【0178】
また、上述した第1および第2実施形態では、用紙属性を用紙種類と用紙サイズとの組み合わせからなるものとしたが、これに限らず、例えば、用紙種類および用紙サイズのいずれかのみからなるものとしてもよい。
【0179】
また、ラスト追従モード制御において、浮上部11の風速を、通常モード制御時における浮上部11の風速からラストモード浮上風速へ段階的に変化させてもよい。分離部12の風速についても同様である。
【0180】
また、上述した第2実施形態では、少残量モード制御において、浮上部11の風速、分離部12の風速、浮上オン時間、および搬送部13の吸引風速を、それぞれラストモード制御における設定と同じ設定とした。そして、この設定において、浮上中の用紙Pの挙動の乱れを抑え、搬送部13による浮上していない用紙Pの吸引を抑えつつ給紙できるように、用紙残量に応じて給紙台2の高さ位置を制御した。
【0181】
しかし、これに限らず、少残量モード制御は、用紙残量の減少に応じて給紙台2を上昇させ、浮上部11の風速、分離部12の風速、および浮上オン時間を、それぞれ浮上中の用紙Pの挙動の乱れを抑える値に設定し、搬送部13の吸引風速を、浮上していない用紙Pの吸引を抑える値に設定する制御であればよい。
【0182】
また、少残量モード制御において、分離部12の風速および浮上オン時間の少なくともいずれかが通常モード制御と同様の設定であっても、浮上部11の風速の設定により、浮上中の用紙Pの挙動の乱れを抑えることができるようになっていればよい。
【0183】
また、少残量モード制御において、搬送部13の吸引風速を通常モード制御と同様の設定としてもよい。
【0184】
また、用紙以外のシートを供給する装置にも本発明は適用可能である。
【0185】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0186】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0187】
(付記1)
シートが積載された昇降可能な積載台と、
前記積載台上に積載されたシートに空気を吹き付けてシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記積載台上のシートの残量が規定残量範囲内の状態で前記積載台を所定高さ位置に固定し、前記浮上部の風速を前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御するラストモード制御を行うことを特徴とするシート供給装置。
【0188】
(付記2)
前記制御部は、シートの属性に応じて、前記所定高さ位置および前記ラストモード制御における前記浮上部の風速を設定することを特徴とする付記1に記載のシート供給装置。
【0189】
(付記3)
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートと上から2枚目以下のシートとを分離させるための空気を、浮上させられた最上位のシートと上から2枚目のシートとの間に吹き付ける分離部をさらに備え、
前記制御部は、前記ラストモード制御において、前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて、前記分離部の風速、および前記搬送部に搬送させるシート1枚ごとの前記浮上部による空気の吹き付けの時間である浮上オン時間の少なくともいずれかを制御することを特徴とする付記1または2に記載のシート供給装置。
【0190】
(付記4)
前記制御部は、前記ラストモード制御において前記規定残量範囲および前記所定高さ位置に応じて制御する、前記分離部の風速および前記浮上オン時間の少なくともいずれかを、シートの属性に応じて設定することを特徴とする付記3に記載のシート供給装置。
【0191】
(付記5)
前記制御部は、シートの属性に基づき、
前記積載台が前記所定高さ位置に到達するまで、シートの属性に応じた規定枚数だけ前記積載台上のシートが減少するごとに、シートの属性に応じた規定上昇量ずつ前記積載台を上昇させるラスト追従モード制御を行うか否かを判断し、
前記ラスト追従モード制御を行うと判断した場合、前記ラストモード制御の直前に前記ラスト追従モード制御を行うことを特徴とする付記2または4に記載のシート供給装置。
【0192】
(付記6)
前記搬送部は、エア吸引によりシートを吸着して搬送するものであり、
前記制御部は、前記ラストモード制御において、前記所定高さ位置に応じて、前記搬送部の吸引風速を制御することを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載のシート供給装置。
【0193】
(付記7)
前記制御部は、シート供給動作の開始時における前記積載台上のシートの枚数が所定枚数以下の場合、シート供給動作において、前記積載台上のシートの残量の減少に応じて前記積載台を上昇させ、前記浮上部の風速を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する少残量モード制御を行うことを特徴とする付記1または2に記載のシート供給装置。
【0194】
(付記8)
前記積載台上に積載されたシートの枚数を検出する積載枚数検出部と、
前記積載台上のシートの有無を検出するシート有無検出部とをさらに備え、
前記制御部は、
シート供給動作の開始時に前記積載枚数検出部が検出したシートの枚数が前記所定枚数以下の場合、前記少残量モード制御を行うと判断し、
前記少残量モード制御において、前記浮上部の風速を前記ラストモード制御における風速と同じ風速とし、
シート供給動作の開始時に前記積載枚数検出部が検出したシートの枚数分のシートの供給が終了するときに前記積載台が前記所定高さ位置に到達するように前記積載台の高さ位置を制御し、
シート供給動作の開始時に前記積載枚数検出部が検出したシートの枚数分のシートの供給が終了した時点で前記積載台上にシートがあることが前記シート有無検出部により検出された場合には、その時点以降は前記積載台を前記所定高さ位置に固定することを特徴とする付記7に記載のシート供給装置。
【0195】
(付記9)
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートと上から2枚目以下のシートとを分離させるための空気を、浮上させられた最上位のシートと上から2枚目のシートとの間に吹き付ける分離部をさらに備え、
前記制御部は、前記少残量モード制御において、
前記分離部の風速を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する制御、および、
前記搬送部に搬送させるシート1枚ごとの前記浮上部による空気の吹き付けの時間である浮上オン時間を、浮上中のシートの挙動の乱れを抑える値に設定する制御の少なくともいずれかを行うことを特徴とする付記7または8に記載のシート供給装置。
【0196】
(付記10)
前記搬送部は、エア吸引によりシートを吸着して搬送するものであり、
前記制御部は、前記少残量モード制御において、前記搬送部の吸引風速を、浮上していないシートの吸引を抑える値に設定することを特徴とする付記7乃至9のいずれかに記載のシート供給装置。
【符号の説明】
【0197】
1 給紙装置
2 給紙台
3 昇降モータ
4 モータエンコーダ
5 用紙有無センサ
6 給紙台センサ
7 給紙ガイド板
8 サバキゲート
9 サイドフェンス
10 エンドフェンス
11 浮上部
12 分離部
13 搬送部
14 上限センサ
15 制御部
21 メイン浮上機構部
22 サイド浮上機構部
41 メイン分離機構部
42 サイド分離機構部
51 ベルトユニット
52 搬送モータ
53 チャンバ
54 サクションファン
61 ラストモードテーブル