(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】観察装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241105BHJP
G02B 27/28 20060101ALI20241105BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/28 Z
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2020144484
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】猪口 和隆
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/169018(WO,A1)
【文献】米国特許第06256151(US,B1)
【文献】国際公開第2018/150773(WO,A1)
【文献】特開2000-275566(JP,A)
【文献】特開2001-117045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0075257(US,A1)
【文献】特開2005-250408(JP,A)
【文献】特開2005-148655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02B 27/28
G02B 5/30
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示光を発する表示素子と、
前記表示光と外界からの光である外界光を射出瞳に導く光学系とを有
する観察装置であって、
前記光学系は、
第1の偏光分離素子と、
反射面を含み、入射した光に対してパワーを有する第1の光学ユニットと、
半透過反射面と、位相板と、第2の偏光分離素子
とを含む第2の光学ユニット
と、
偏光板とを有し、
互いに偏光方向が異なる2つの直線偏光を第1の偏光光および第2の偏光光とするとき、
前記偏光板は、前記外界および前記表示素子から前記第1の偏光分離素子に向かう前記外界光および前記表示光のうち前記第1の偏光光を透過させ、
前記光学系は、
前記第1の偏光光としての前記外界光を、前記第1の偏光分離素子、前記半透過反射面、前記位相板および前記第2の偏光分離素子を透過させて前記射出瞳に向かわせ、
前記第1の偏光光としての前記表示光を、前記第1の偏光分離素子を透過させ、前記反射面で反射し、前記第2の偏光光に変えて前記第1の偏光分離素子で反射し、前記半透過反射面および前記位相板を透過させ、前記第2の偏光分離素子で反射し、前記位相板を透過させ、前記半透過反射面で反射し、前記位相板および前記第2の偏光分離素子を透過させて前記射出瞳に向かわせ
、
前記表示光に、前記第1の光学ユニットから前記第2の光学ユニットまでの光路中に中間像を形成させることを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記第2の光学ユニットの焦点距離をf1、前記第2の光学ユニットの光軸上での該第2の光学ユニットと前記第1の偏光分離素子30との間の距離をD1、前記第1の光学ユニットの光軸上での該第1の光学ユニットと前記第1の偏光分離素子との間の距離をD2とするとき、
f1<D1+D2
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記表示光に、前記第1の偏光分離素子から前記第2の光学ユニットまでの光路中に前記中間像の少なくとも一部を形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の観察装置。
【請求項4】
前記第2の光学ユニットは前記半透過反射面が設けられた凸面を有するレンズを含み、該レンズの材料の屈折率をN1、前記第2の光学ユニットの焦点距離をf1、前記第2の光学ユニットの光軸上での該第2の光学ユニットと前記第1の偏光分離素子30との間の距離をD1、前記第2の光学ユニットの光軸上での厚みをT1、前記第2の光学ユニットの光軸上での前記レンズの厚みをT11とするとき、
(T11+T1)/N1<f1<D1
なる条件を満足することを特徴とする請求項3に記載の観察装置。
【請求項5】
前記第1の光学ユニットは、第2の位相
板を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項6】
前記第2の偏光分離素子よりも前記射出瞳側に、前記第1の偏光光を透過させ
る偏光板を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項7】
前記反射面が凹面鏡であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の観察装置。
【請求項8】
前記凹面鏡が裏面鏡であることを特徴とする請求項7に記載の観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シースルータイプの観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学シースルータイプの観察装置として、特許文献1には、偏光分離素子、位相板および半透過反射面により構成された接眼光学系の前方(外界側)に、別の偏光分離素子をコンバイナーとして配置したものが開示されている。この観察装置では、表示素子からの光を観察させるための光学系をコンバイナーよりも観察側の接眼光学系だけで構成している。また特許文献2には、コンバイナーと表示素子との間にレンズとして作用する光学素子を配置した観察装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公開2019/0025602号公報
【文献】特許6386210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光学シースルータイプの観察装置では、広画角化するとコンバイナーのサイズを大きくする必要がある。また接眼光学系の焦点距離は、接眼光学系とコンバイナーとの間の距離より大きく、最低でもその距離の2倍以上にする必要がある。さらに、広画角化のためには表示素子のサイズも大きくしなければならない。このため、観察装置の大型化や重量の増加につながる。
【0005】
本発明は、小型の光学シースルータイプの観察装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての観察装置は、画像を表示する表示光を発する表示素子と、表示光と外界からの光である外界光を射出瞳に導く光学系とを有する。光学系は、第1の偏光分離素子と、反射面を含み、入射した光に対してパワーを有する第1の光学ユニットと、半透過反射面と、位相板と、第2の偏光分離素子とを含む第2の光学ユニットと、偏光板とを有し、互いに偏光方向が異なる2つの直線偏光を第1の偏光光および第2の偏光光とするとき、偏光板は、外界および表示素子から第1の偏光分離素子に向かう外界光および表示光のうち第1の偏光光を透過させ、光学系は、第1の偏光光としての外界光を、第1の偏光分離素子、半透過反射面、位相板および第2の偏光分離素子を透過させて射出瞳に向かわせ、第1の偏光光としての前記表示光を、第1の偏光分離素子を透過させ、反射面で反射し、第2の偏光光に変えて第1の偏光分離素子で反射し、半透過反射面および位相板を透過させ、第2の偏光分離素子で反射し、位相板を透過させ、半透過反射面で反射し、位相板および第2の偏光分離素子を透過させて射出瞳に向かわせ、表示光に、第1の光学ユニットから第2の光学ユニットまでの光路中に中間像を形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型の光学シースルータイプの観察装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図7】各実施例における位相板の遅相軸の傾き方向を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1である観察装置の断面を示している。本実施例の観察装置は、光学系1と表示素子2とを有する。Sは光学系1の射出瞳であり、ここには観察者の眼が配置される。光学系1は、液晶パネルや有機EL等の表示素子2の表示面21から発せられた表示光1002が射出瞳Sに向かって辿る順に、第1の偏光板50、第1の偏光分離素子30、第1の光学ユニット20、(第1の偏光分離素子30)および第2の光学ユニット10により構成されている。
【0011】
第1の偏光板50は、
図1に両矢印で示すように
図1の紙面に平行な第1の偏光方向の直線偏光(以下、第1の偏光光という)を透過させる。第2の偏光分離素子110は、第1の偏光光を透過させ、
図1に丸中黒で示すように第1の偏光方向に直交して
図1の紙面に垂直な第2の偏光方向の直線偏光(以下、第2の偏光光という)を反射する。
【0012】
第1の光学ユニット20は、第1の位相板(光学素子)220および平凸レンズ210により構成されている。第1の位相板220は、第1の偏光光の透過軸に対して+45°傾いた遅相軸を有するλ/4板である。第1の光学ユニット20における+の符号は、
図7に示すように
図1の断面をyz断面とする右手系のxyz座標において表示光の進行方向を±z軸方向とするときにY軸からX軸に向かう方向を示している。
【0013】
平凸レンズ210における第1の位相板220側とは反対側の面201は、その表面に反射膜が形成された凹面鏡として作用する反射面となっている。
【0014】
第2の光学ユニット10は、第2の位相板150、平凹レンズ140、半透過反射面102、平凸レンズ130、第3の位相板120および第2の偏光分離素子110により構成されている。第2の位相板150は、第1の偏光光の透過軸に対して+45°傾いた遅相軸を有するλ/4板である。また第3の位相板120は、第1の偏光光の透過軸に対して-45°傾いた遅相軸を有するλ/4板である。第2の光学ユニット10における+/-の符号は、
図7に示すように
図1の断面をYZ断面とする右手系のXYZ座標において表示光の進行方向を±Z軸方向とするときにY軸からX軸に向かう方向を+で、その逆方向を-で示す。
【0015】
平凹レンズ140と平凸レンズ130は屈折率が同じ(又は同じとみなせるほど近い)材料(媒質)により形成されており、それぞれの凹面と凸面の間に設けられた半透過反射面102となる半透過反射膜を挟んで互いに接合されている。第2の偏光分離素子110は、第1の偏光分離素子30と同じく、第1の偏光光を透過させ、第2の偏光光を反射する。
【0016】
また本実施例の観察装置は、外界からの光である外界光1001が入射する位置に、第4の偏光光60を有する。第4の偏光板60は、外界光1001のうち第1の偏光光のみを透過させる。
【0017】
以上のように構成された観察装置において、外界からの外界光1001のうち第1の偏光光は、第4の偏光板60を透過し、第1の偏光分離素子30を透過して第2の光学ユニット10に入射する。第1の偏光光としての外界光1001は、第2の位相板150によって該外界光の進行方向に向かって見たときに右回りの円偏光に変換される。この円偏光としての外界光1001は、平凹レンズ140、半透過反射面102および平凸レンズ130を透過して第3の位相板120により第1の偏光光に戻される。第1の偏光光としての外界光1001は、第2の偏光分離素子110を透過して射出瞳Sに到達する。このように、外界光1001は、第2の光学ユニット10の構成部品をそれぞれ1度だけ透過して射出瞳Sに到達する。
【0018】
第2の光学ユニット10において、曲面である半透過反射面102は屈折率が同じ材料により形成された平凹および平凸レンズ140、130の間に配置されているため、外界光1001に対するパワーを持たない。したがって、外界光1001は第2の光学ユニット10のパワーを受けることなく射出瞳Sに到達する。これにより、自然な外界観察が可能となる。
【0019】
表示素子2の表示面21から出射して第1の偏光板50を透過した第1の偏光光としての表示光1002は、第1の偏光分離素子30を透過して第1の光学ユニット20に入射する。第1の偏光光としての表示光1002は、第1の位相板220によって該表示光の進行方向に向かって見たときに(以下同じ)右回りの円偏光に変換される。この右回りの円偏光は平凸レンズ210を透過して反射面201で反射されて左回りの円偏光となり、該円偏光は、平凸レンズ210を再度透過し、第1の位相板220に再度入射して第2の偏光光に変換される。第2の偏光光としての表示光1002は、第1の偏光分離素子30により反射されて第2の光学ユニット10に入射する。
【0020】
第2の光学ユニット10内において、第2の偏光光としての表示光1002は、第2の位相板150によって左回りの円偏光に変換され、平凹レンズ140を透過する。この表示光1002は、半透過反射面102および平凸レンズ130を透過し、第3の位相板120により第2の偏光光に変換されて第2の偏光分離素子110により反射される。この反射された第2の偏光光としての表示光1002は、第3の位相板120により左回りの円偏光に変換される。円偏光としての表示光1002は、平凸レンズ130を再度透過して、半透過反射面102で反射されて右回りの円偏光となり、再度平凹レンズ140を透過して第3の位相板120に入射する。
【0021】
第3の位相板120に入射した右回りの円偏光としての表示光1002は、第1の偏光光に変換される。第1の偏光光としての表示光1002は、第2の偏光分離素子110を透過して射出瞳Sに到達する。第2の光学ユニット10において、表示光1002は、半透過反射面102で反射される際に結像に寄与するパワーを受ける。
【0022】
このように本実施例における光学系は、外界光1001を、第1の偏光分離素子30および第2の光学ユニット20を透過させて射出瞳に向かわせる。また表示光1002を、第1の偏光分離素子30を透過させ、第1の光学ユニット20および第1の偏光分離素子30で反射し、第2の光学ユニット20内で2回反射させて射出瞳Sに向かわせる。このことは、後述する実施例2、3でも同様である。
【0023】
上述した表示光1002の光路において、第1の光学ユニット20の反射面201は結像に寄与するパワーを有しており、ここで反射した表示光1002に第1の光学ユニット20から第2の光学ユニット10までの光路中に中間像IMIを形成させる。すなわち、第1の光学ユニット20はリレー光学系を構成する。そして、接眼光学系としての第2の光学ユニット10は、この中間像IMIを第2の光学ユニット10内の光路を通して射出瞳Sに眼を配置した観察者に観察させる。
【0024】
以上説明したように外界光1001の光路と表示光1002の光路を形成することにより、外界に表示素子2に表示された画像を重畳させて観察することが可能となる。
なお、第3の位相板120を第1の偏光光の透過軸に対して+45°傾いた遅相軸を有するλ/4板とし、第2の偏光分離素子110が第1の偏光光を反射して第2の偏光光を透過するように構成しても、本実施例と同じ光路が形成される。
【0025】
但し、本実施例のように第2の位相板150であるλ/4板と第3の位相板120であるλ/4板の遅相軸が互いに直交するようにすると、λ/4板が波長依存性を有する場合に発生する色づきを抑えることができ、好ましい。また、第1および第2の偏光板60、50を必ずしも設ける必要はないが、これらを設けることで外界光や表示光のコントラストを向上させたりゴースト等の不要光の発生を抑制したりすることができる。
【0026】
また、本実施例では、第1の偏光分離素子30から第1の光学ユニット20に向かう光路と第1の光学ユニット20から第1の偏光分離素子30に向かう光路とを重複させたことにより、光学系1を中間像IMIを形成するにもかかわらず小型とすることができる。
【0027】
さらに本実施例では、第1の光学ユニット20の反射面201を凹面鏡として用いることで、透過面と比較して曲率が小さい面でも強いパワーが得られるようにしている。特に、反射面201を裏面鏡として、曲率が小さい面でもより強いパワーが得られるようにしている。これにより、収差を抑制することができるとともに、第1の光学ユニット20を薄型化することができる。
【0028】
次に、
図4を用いて本実施例における表示光1002の光路や結像についてさらに詳しく説明する。
図4では、
図1に示した構成要素のうち一部の図示を省略している。
図4において、ωvは半画角を示し、ERは光学系1の射出瞳Sと第2の光学ユニット10における最も出射瞳側の光学面との間の距離、すなわちアイレリーフを示している。EPRは射出瞳Sの半径を示す。
【0029】
第2の光学ユニット10は、基本的には平凸レンズ130と平凹レンズ140との接合レンズによって構成されている。平凸レンズ130と平凹レンズ140の材料の屈折率をN1、第2の光学ユニット10の光軸上での厚みをT1、有効径(半径)をEA1とするとき、
EA1=EPR+(ER+T1/N1)×tan(ωv)
である。第2の光学ユニット10の光軸上での第2の光学ユニット10と第1の偏光分離素子30との間の距離をD1とし、D1≧EA1とすると、射出瞳Sに到達する下側最大半画角-ωvの外界からの光束のうち第1の偏光光のほぼ全てを第1の偏光分離素子30を透過させることができる。この条件は必ずしも満足すべきものではないが、一般的にはD1=EA1(または≒EA1)であり、本条件を満足する。
【0030】
また第1の光学ユニット20の光軸上での第1の光学ユニット10と第1の偏光分離素子30との間の距離をD2とするとき、第1の光学ユニット20と第2の光学ユニット10との干渉を避けるために、D2>EA1としている。
【0031】
特許文献1、2では、本実施例における第1の光学ユニット20の位置付近に表示素子が配置されている。このため、第2の光学ユニット10内の光路を無視するとしても、第2の光学ユニット10の焦点距離f1は、
f1>D1+D2
である。
【0032】
これに対して本実施例では、表示面21に表示された画像の中間像IMIが第1の光学ユニット20から第2の光学ユニット10までの光路中に形成される。このため、
f1<D1+D2 (1)
となる。
【0033】
特に、本実施例では、中間像IMIが第1の偏光分離素子30から第2の光学ユニット10までの光路中に形成される。このため、第2の光学ユニット10の光軸上での平凸レンズ130の厚みをT11とするとき、
(T11+T1)/N1<f1<D1 (2)
なる条件を満足することが好ましい。
【0034】
f1が条件式(2)の下限値を下回ると、中間像IMIのNAが大きくなり、第1の偏光分離素子30または第1の光学ユニット20のサイズが大きくなり、観察装置の厚み(
図4の左右方向の寸法)増加するので、好ましくない。f1が条件式(2)の上限値を超えると、第1の光学ユニット20の焦点距離を短く(パワーを強く)する必要があり、収差補正が困難となる。また、表示面30と第1の偏光分離素子30との間の距離D3が大きくなり、観察装置の高さ(
図4の上下方向の寸法)が大きくなるため、好ましくない。
【0035】
また、平凸レンズ130と平凹レンズ140の材料の屈折率は完全に一致していなくてもよい。平凸レンズ130と平凹レンズ140の材料の屈折率をそれぞれN11、N12とし、平凸レンズ130と平凹レンズ140の接合面102の曲率半径をR102とするとき、接合面102を透過する光に対する光学的パワー(屈折力)φ102は、
φ102=(N12-N11)/R102
となる。接合面102を透過する光に対する光学的パワーの絶対値|φ102|が、
|φ102|<0.0001[1/mm]
である場合には、N12とN11とが同一とみなしてよい。また、平凸レンズ130と平凹レンズ140の平面が微小の曲率を有していても、第2の光学ユニット10の各構成要素を1回のみ透過する光に対する全体の光学的パワーφが、
|φ|<0.000125[1/mm]
であればよい。
【実施例2】
【0036】
図2は、本発明の実施例2である観察装置の断面を示している。本実施例の観察装置は、光学系1Aと表示素子2とを有する。光学系1Aは、表示素子2の表示面21から出射した表示光1002が射出瞳Sに向かって辿る順に、第1の偏光板80、第1の偏光分離素子30、第1の位相板70、第1の光学ユニット20A、(第1の位相板70、第1の偏光分離素子30)および第2の光学ユニット10Aにより構成されている。実施例1と同符号が付された構成要素は、実施例1と同じものである。
【0037】
本実施例では、実施例1の光学系1から第1および第4の偏光板50、60を除いて、コンバイナーとして機能する第1の偏光分離素子30の外界側に第1の偏光板80を配置している。第1の偏光板80は、第1の偏光光を透過させる。
【0038】
第1の光学ユニット20Aは、両凸レンズ210Aと、該両凸レンズ210Aとは別体の反射面201とにより構成されている。なお、実施例1における第1の位相板220は設けられていない。第2の光学ユニット10Aは、平凹レンズ140、半透過反射面102、平凸レンズ130、第3の位相板120、第2の偏光分離素子110および第2の偏光板160により構成されている。第2の光学ユニット10Aは、実施例1における第2の光学ユニット10から第2の位相板150を除き、最も射出瞳側に第2の偏光板160を設けたものである。第2の偏光板160は、第1の偏光光を透過させる。
【0039】
本実施例では、実施例1における第1の位相板220と第2の位相板150の代わりに、第1の偏光分離素子30よりも射出瞳側(第1および第2の光学ユニット側)に、1つの第1の位相板(光学素子)70を配置している。第1の位相板70は、第1方向に直線偏光した光の透過軸に対して45°傾いた遅相軸を有するλ/4板である。
【0040】
以上のように構成された観察装置において、外界光1001のうち第1の偏光光は第1の偏光板80を透過し、第1の偏光分離素子30を透過して第1の位相板70に入射する。第1の偏光光としての外界光1001は、第1の位相板70によって該外界光の進行方向に向かって見たときに右回りの円偏光に変換される。この円偏光はとしての外界光1001は、平凹レンズ140、半透過反射面102および平凸レンズ130を透過して第3の位相板120により第1の偏光光に戻される。第1の偏光光としての外界光1001は、第2の偏光分離素子110および第2の偏光板160を透過して射出瞳Sに到達する。このように、外界光1001は、第2の光学ユニット10Aの構成部品をそれぞれ1度だけ透過して射出瞳Sに到達する。
【0041】
本実施例においても、実施例1と同様に、第2の光学ユニット10Aにおいて曲面である半透過反射面102は屈折率が同じ材料により形成された平凹および平凸レンズ130、140の間に配置されているため、外界光1001に対するパワーを持たない。したがって、外界光1001は第2の光学ユニット10Aのパワーを受けることなく射出瞳Sに到達する。これにより、自然な外界観察が可能となる。
【0042】
表示素子2の表示面21から出射した表示光1002のうち第1の偏光光は、第1の偏光板80を透過し、第1の偏光分離素子30を透過して第1の位相板70に入射する。第1の偏光光としての表示光1002は、第1の位相板70によって該表示光の進行方向に向かって見たときに(以下同じ)右回りの円偏光に変換される。この右回りの円偏光は、両凸レンズ210Aを透過して、曲面反射面201Aで反射されて左回りの円偏光となり、該円偏光は両凸レンズ210Aを再度透過し、第1の位相板70に再度入射して第2の偏光光に変換される。第2の偏光光としての表示光1002は、第1の偏光分離素子30により反射されて第2の光学ユニット10Aに入射する。
【0043】
第2の光学ユニット10A内において、第2の偏光光としての表示光1002は、平凹レンズ140、半透過反射面102および平凸レンズ130を透過して第3の位相板120により第2の偏光光に変換され、第2の偏光分離素子110により反射される。この反射された第2の偏光光としての表示光1002は、第3の位相板120により左回りの円偏光に変換される。円偏光としての表示光1002は、平凸レンズ130を再度透過し、半透過反射面102で反射されて右回りの円偏光となり、再度平凸レンズ130を透過して第3の位相板120に入射する。
【0044】
第3の位相板120に入射した右回りの円偏光としての表示光1002は、該第3の位相板120により第1の偏光光に変換され、該第1の偏光光としての表示光1002は第2の偏光分離素子110および第2の偏光板160を透過して射出瞳Sに到達する。第2の光学ユニット10Aにおいて、表示光1002は、半透過反射面102で反射される際に結像に寄与するパワーを受ける。
【0045】
本実施例では、第2の偏光板160を設けたことにより、表示光1002のコントラストを向上させたり、迷光の強度を低下させたりすることができる。
【0046】
次に、
図5を用いて本実施例における表示光1002の光路や結像についてさらに詳しく説明する。
図5では、
図2に示した構成要素のうち一部の図示を省略している。
図5において、ωv、ER、EPR、f1、T1、T11、D1、D2およびD3は実施例1と同じ意味である。
【0047】
本実施例でも、実施例1と同様に、表示面21に表示された画像の中間像IMIが第1の光学ユニット20Aから第2の光学ユニット10Aまでの光路中に形成される。このため、式(1)の条件を満足する。
【0048】
また本実施例でも、中間像IMIが第1の偏光分離素子30から第2の光学ユニット10Aまでの光路中に形成されるように、式(2)の条件を満足することが好ましい。
【0049】
また本実施例でも、第2の光学ユニット10Aの各構成要素を1回のみ透過する光に対する全体の光学的パワーφが、
|φ|<0.000125[1/mm]
であればよい。
【実施例3】
【0050】
図3は、本発明の実施例3である観察装置の断面を示している。本実施例の観察装置は、光学系1Bと表示素子2とを有する。光学系1Bは、表示素子2の表示面21から出射した表示光1002が射出瞳Sに向かって辿る順に、第3のレンズユニットとしてのレンズ40、第1の偏光板80、第1の偏光分離素子30、第1の位相板70、第1の光学ユニット20B、(第1の位相板70、第1の偏光分離素子30)および第2の光学ユニット10Bにより構成されている。実施例2と同符号が付された構成要素は、実施例1、2と同じものである。
【0051】
第1の光学ユニット20Bは、両凸レンズ210Bと、該両凸レンズ210Bの一面に設けられた反射面201Bとにより構成されている。レンズ40と第1の光学ユニット20Bによりリレー光学系が構成される。第2の光学ユニット10Bは、半透過反射面102、平凸レンズ131、第3の位相板120、第2の偏光分離素子110、第2の偏光板160および平凹レンズ141により構成されている。
【0052】
以上のように構成された観察装置において、外界光1001のうち第1の偏光光は第1の偏光板80を透過し、第1の偏光分離素子30を透過して第1の位相板70に入射する。第1の偏光光としての外界光1001は、第1の位相板70によって該外界光の進行方向に向かって見たときに右回りの円偏光に変換される。この円偏光はとしての外界光1001は、半透過反射面102および平凸レンズ131を透過して第3の位相板120により第1の偏光光に戻される。第1の偏光光としての外界光1001は、第2の偏光分離素子110、第2の偏光板160および平凹レンズ141を透過して射出瞳Sに到達する。このように、外界光1001は、第2の光学ユニット10Bの構成部品をそれぞれ1度だけ透過して射出瞳Sに到達する。
【0053】
本実施例では平凸レンズ131と平凹レンズ141の空気との界面である面R1、R2が曲面であるために、外界光1001は屈折力を受ける。しかし、2つの面R1、R2を透過する際にパワーを互いに打ち消し合って外界光1001に対する第2の光学ユニット10B全体のパワーがほぼ0となるようにすることで、自然な外界観察を可能としている。
【0054】
表示素子2の表示面21から出射してレンズ40を透過した表示光1002のうち第1の偏光光は、第1の偏光板80を透過し、第1の偏光分離素子30を透過して第1の位相板70に入射する。第1の偏光光としての表示光1002は、第1の位相板70によって該表示光の進行方向に向かって見たときに(以下同じ)右回りの円偏光に変換される。この右回りの円偏光は、両凸レンズ210Bを透過して、反射面201Bで反射されて左回りの円偏光となり、該円偏光は両凸レンズ210Bを再度透過し、第1の位相板70に再度入射して第2の偏光光に変換される。第2の偏光光としての表示光1002は、第1の偏光分離素子30により反射されて第2の光学ユニット10Bに入射する。
【0055】
第2の光学ユニット10B内において、第2の偏光光としての表示光1002は、半透過反射面102および平凸レンズ131を透過して第3の位相板120により第2の偏光光に変換され、第2の偏光分離素子110により反射される。この反射された第2の偏光光としての表示光1002は、第3の位相板120により左回りの円偏光に変換される。円偏光としての表示光1002は、平凸レンズ131を再度透過し、半透過反射面102で反射されて右回りの円偏光となり、再度平凸レンズ131を透過して第3の位相板120に入射する。
【0056】
第3の位相板120に入射した右回りの円偏光としての表示光1002は、該第3の位相板120により第1の偏光光に変換され、該第1の偏光光としての表示光1002は、第2の偏光分離素子110、第2の偏光板160および平凹レンズ141を透過して射出瞳Sに到達する。第2の光学ユニット10Bにおいて、表示光1002は、半透過反射面102を透過する際の屈折によりパワーを受け、半透過反射面102で反射される際にもパワーを受け、さらに平凹レンズ141の面R2を透過する際にも屈折により結像に寄与するパワーを受ける。
【0057】
次に、
図6を用いて本実施例における表示光1002の光路や結像についてさらに詳しく説明する。
図6では、
図3に示した構成要素のうち一部の図示を省略している。
図6において、ωv、ER、EPR、f1、T1、T11、D1およびD2は実施例1、2と同じ意味である。ただし、D3はレンズ40と第1の偏光分離素子30との間の距離を示している。
【0058】
本実施例でも、実施例1、2と同様に、表示面21に表示された画像の中間像IMIが第1の光学ユニット20Bから第2の光学ユニット10Bまでの光路中に形成される。このため、式(1)の条件を満足する。
【0059】
また本実施例でも、中間像IMIが第1の偏光分離素子30と第2の光学ユニット10Bと間に形成されるように式(2)の条件を満足することが好ましい。これは実施例1で説明した理由に加えて、第1の偏光分離素子30と第1の光学ユニット20Bとの間に中間像IMIが形成されると、レンズ40の径が大きくなるためである。
【0060】
また本実施例でも、第2の光学ユニット10Bの各構成要素を1回のみ透過する光に対する全体の光学的パワーφが、
|φ|<0.000125[1/mm]
であればよい。
【0061】
以上説明した各実施例によれば、小型の光学シースルータイプの観察装置を実現することができる。
【0062】
なお、上記各実施例では、表示光により中間像の全体が第1の偏光分離素子から第2の光学ユニットまでの光路中に形成される場合について説明した。しかし、中間像の少なくとも一部が第1の偏光分離素子から第2の光学ユニットまでの光路中に形成されればよく、他の部分が第1の光学ユニットから第1の偏光分離素子までの光路中に形成されてもよい。
【0063】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 光学系
2 表示素子
S 射出瞳
30 第1の偏光分離素子
20 第1の光学ユニット
201 反射面
10 第2の光学ユニット
102 半透過反射面
110 第2の偏光分離素子
70、120、150 位相板