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特許7580977情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20241105BHJP
【FI】
G16H50/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020147517
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042204
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 恭子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敦子
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0287503(US,A1)
【文献】国際公開第2016/147290(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0199965(US,A1)
【文献】国際公開第2018/073895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象患者の属性を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記属性を定量的に表した第1分布を算出する第1算出部と、
過去に診療を受けた複数の患者の診療情報に基づき前記複数の患者から層別化された複数のグループのそれぞれの属性を定量的に表した第2分布を算出する第2算出部と、
前記第1算出部によって算出された前記第1分布と、前記第2算出部によって算出された前記第2分布との比較結果に基づく情報を出力する出力部と、を備え、
前記第2算出部は、前記複数の患者のそれぞれの時間的又は経済的なコストに関する第1指標値と、前記複数の患者のそれぞれに対して用いられた診療方法ごとの治療効果に関する第2指標値とのうち、少なくとも前記第2指標値に基づいて、前記複数の患者を前記複数のグループに層別化
前記第1算出部によって算出された前記第1分布と、前記第2算出部によって算出された前記第2分布とを比較し、前記第1分布と前記第2分布との比較結果に基づいて、前記対象患者に関する前記第1指標値及び前記第2指標値のうち少なくとも一方の指標値を推定する推定部を更に備え、
前記出力部は、更に、前記推定部によって推定された前記指標値に基づく情報を出力し、
前記取得部は、前記対象患者に対して取り得ることが可能な一つ又は複数の診療方法の中から医師によって選択された診療方法を表す情報を取得し、
前記第2算出部は、前記複数のグループの中から、前記取得部によって取得された前記情報が表す診療方法の治療効果に関する前記第2指標値を用いて層別化されたグループである特定グループを選択し、前記特定グループの属性を定量的に表した前記第2分布を算出し、
前記推定部は、前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて、前記対象患者に関する前記第1指標値及び前記第2指標値のうち少なくとも一方の指標値を推定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて推定された前記指標値が許容範囲外である場合、他の診療方法を選択するように前記医師に促す情報を出力する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて推定された前記指標値が許容範囲外である場合、前記医師と異なる第三者の端末装置に対して所定の情報を出力する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて推定された前記指標値が許容範囲外である場合、前記診療方法が適用される際に前記対象患者があるべき状態又は条件を出力する、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて推定された前記指標値が許容範囲外である場合、前記対象患者を診療する医療機関内で取り得ることが可能であり、かつ前記対象患者の属性に合致した診療方法を選択するように前記医師に促す情報を出力する、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、
前記第1分布と前記複数のグループのそれぞれの前記第2分布との類似度を算出し、
前記類似度が最も大きいグループが層別化される際に用いられた前記第1指標値を、前記対象患者に関する前記第1指標値として推定する、又は前記類似度が最も大きいグループが層別化される際に用いられた前記第2指標値を、前記対象患者に関する前記第2指標値として推定する、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2算出部は、
前記第1指標値と、前記第2指標値とのうち少なくとも1つを確率変数とした確率密度分布を算出し、
前記確率密度分布に基づいて、前記複数の患者を前記複数のグループに層別化する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
対象患者の属性を取得し、
取得した前記属性を定量的に表した第1分布を算出し、
過去に診療を受けた複数の患者の診療情報に基づき前記複数の患者から層別化された複数のグループのそれぞれの属性を定量的に表した第2分布を算出し、
算出した前記第1分布と、算出した前記第2分布との比較結果に基づく情報を出力し、
前記複数の患者のそれぞれの時間的又は経済的なコストに関する第1指標値と、前記複数の患者のそれぞれに対して用いられた診療方法ごとの治療効果に関する第2指標値とのうち、少なくとも前記第2指標値に基づいて、前記複数の患者を前記複数のグループに層別化
算出された前記第1分布と、算出された前記第2分布とを比較し、
前記第1分布と前記第2分布との比較結果に基づいて、前記対象患者に関する前記第1指標値及び前記第2指標値のうち少なくとも一方の指標値を推定し、
推定された前記指標値に基づく情報を出力し、
前記対象患者に対して取り得ることが可能な一つ又は複数の診療方法の中から医師によって選択された診療方法を表す情報を取得し、
前記複数のグループの中から、取得された前記情報が表す診療方法の治療効果に関する前記第2指標値を用いて層別化されたグループである特定グループを選択し、
前記特定グループの属性を定量的に表した前記第2分布を算出し、
前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて、前記対象患者に関する前記第1指標値及び前記第2指標値のうち少なくとも一方の指標値を推定する、
情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
対象患者の属性を取得すること、
取得した前記属性を定量的に表した第1分布を算出すること、
過去に診療を受けた複数の患者の診療情報に基づき前記複数の患者から層別化された複数のグループのそれぞれの属性を定量的に表した第2分布を算出すること、及び
算出した前記第1分布と、算出した前記第2分布との比較結果に基づく情報を出力すること、
前記複数の患者のそれぞれの時間的又は経済的なコストに関する第1指標値と、前記複数の患者のそれぞれに対して用いられた診療方法ごとの治療効果に関する第2指標値とのうち、少なくとも前記第2指標値に基づいて、前記複数の患者を前記複数のグループに層別化すること、
算出された前記第1分布と、算出された前記第2分布とを比較すること、
前記第1分布と前記第2分布との比較結果に基づいて、前記対象患者に関する前記第1指標値及び前記第2指標値のうち少なくとも一方の指標値を推定すること、
推定された前記指標値に基づく情報を出力すること、
前記対象患者に対して取り得ることが可能な一つ又は複数の診療方法の中から医師によって選択された診療方法を表す情報を取得すること、
前記複数のグループの中から、取得された前記情報が表す診療方法の治療効果に関する前記第2指標値を用いて層別化されたグループである特定グループを選択すること、
前記特定グループの属性を定量的に表した前記第2分布を算出すること、
前記第1分布と前記特定グループの前記第2分布との比較結果に基づいて、前記対象患者に関する前記第1指標値及び前記第2指標値のうち少なくとも一方の指標値を推定すること、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
主治医が推奨する治療方法は、国や施設、医師によって異なっていることが知られており、臨床アウトカムにも違いがあることが知られている。医師の推奨選択肢に偏りがあることを医師自らが気づかず、他の選択肢には目もくれない場合がある。つまり、主治医の専門分野、好み、価値観、施設の設備などによって推奨される治療方法が選択されており、医師自らが治療方法の選択の偏りに気づくことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-503894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、医師が有する認知的なバイアスを低下させ、患者にとってより好適となる診療方法を医師に提案させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報処理装置は、取得部、第1算出部、第2算出部、及び出力部を持つ。取得部は、対象患者の属性を取得する。第1算出部は、前記取得部によって取得された前記属性を定量的に表した第1分布を算出する。第2算出部は、過去に診療を受けた複数の患者の診療情報に基づき前記複数の患者から層別化された複数のグループのそれぞれの属性を定量的に表した第2分布を算出する。出力部は、前記第1算出部によって算出された前記第1分布と、前記第2算出部によって算出された前記第2分布との比較結果に基づく情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における情報処理システム1の構成例を表す図。
図2】第1実施形態における端末装置10の構成例を表す図。
図3】第1実施形態における情報処理装置100の構成例を表す図。
図4】第1実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャート。
図5】属性分布の一例を表す図。
図6】層別化処理を説明するための図。
図7】属性分布の比較方法を説明するための図。
図8】端末装置10のディスプレイ13の画面の一例を表す図。
図9】第2実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャート。
図10】第3実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャート。
図11】端末装置10のディスプレイ13の画面の他の例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態の情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムについて説明する。
【0008】
(第1実施形態)
[情報処理システムの構成]
図1は、第1実施形態における情報処理システム1の構成例を表す図である。情報処理システム1は、例えば、端末装置10と、情報処理装置100とを備える。端末装置10及び情報処理装置100は、通信ネットワークNWを介して通信可能に接続される。
【0009】
通信ネットワークNWは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味してよい。例えば、通信ネットワークNWは、病院基幹LAN(Local Area Network)等の無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワーク等を含む。
【0010】
端末装置10は、医療従事者P2によって利用されるパーソナルコンピュータやタブレット端末、携帯電話などの端末装置である。医療従事者P2は、典型的には医師であるが、看護師やその他の診療に関わる人物であってもよい。医療従事者P2は、例えば、診療の対象とする患者(以下、対象患者P1という)に関する情報を端末装置10に入力する。
【0011】
本実施形態において「診療」とは、手術や投薬といった治療のみならず、治療に至るまで、或いは治療に至った後の診察やその他のあらゆる医療的行為を含んでよい。
【0012】
端末装置10は、医療従事者P2によって入力された情報を、通信ネットワークNWを介して、情報処理装置100に情報を送信したり、或いは情報処理装置100から情報を受信したりする。
【0013】
情報処理装置100は、通信ネットワークNWを介して、端末装置10から情報を受信し、その受信した情報を処理する。そして、情報処理装置100は、通信ネットワークNWを介して、処理した情報を端末装置10に送信する。
【0014】
情報処理装置100は、単一の装置であってもよいし、通信ネットワークNWを介して接続された複数の装置が互いに協働して動作するシステムであってもよい。すなわち、情報処理装置100は、分散コンピューティングシステムやクラウドコンピューティングシステムに含まれる複数のコンピュータ(プロセッサ)によって実現されてもよい。また、情報処理装置100は、必ずしも端末装置10とは異なる別体の装置である必要はなく、端末装置10と一体になった装置であってもよい。
【0015】
[端末装置の構成]
図2は、第1実施形態における端末装置10の構成例を表す図である。端末装置10は、例えば、通信インタフェース11と、入力インタフェース12と、ディスプレイ13と、メモリ14と、処理回路20とを備える。
【0016】
通信インタフェース11は、通信ネットワークNWを介して情報処理装置100などと通信する。通信インタフェース11は、例えば、NIC(Network Interface Card)や無線通信用のアンテナ等を含む。
【0017】
入力インタフェース12は、操作者(例えば医療従事者P2)からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路20に出力する。例えば、入力インタフェース12は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等を含む。入力インタフェース12は、例えば、マイク等の音声入力を受け付けるユーザインタフェースであってもよい。入力インタフェース12がタッチパネルである場合、入力インタフェース12は、ディスプレイ13の表示機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0018】
なお、本明細書において入力インタフェース12はマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース12の例に含まれる。
【0019】
ディスプレイ13は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ13は、処理回路20によって生成された画像や、医療従事者P2からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。例えば、ディスプレイ13は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0020】
メモリ14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクによって実現される。これらの非一過性の記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置といった通信ネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。また、メモリ14には、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の非一過性の記憶媒体が含まれてもよい。
【0021】
処理回路20は、例えば、取得機能21と、表示制御機能22と、通信制御機能23とを備える。処理回路20は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ14(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0022】
処理回路20におけるハードウェアプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ14にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ14に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が端末装置10のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ14にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0023】
取得機能21は、入力インタフェース12を介して入力情報を取得したり、通信インタフェース11を介して情報処理装置100から情報を取得したりする。
【0024】
表示制御機能22は、取得機能21によって取得された情報をディスプレイ13に表示させる。
【0025】
通信制御機能23は、入力インタフェース12に入力された情報を通信インタフェース11を介して情報処理装置100に送信する。
【0026】
[情報処理装置の構成]
図3は、第1実施形態における情報処理装置100の構成例を表す図である。情報処理装置100は、例えば、通信インタフェース110と、処理回路120と、メモリ130とを備える。
【0027】
通信インタフェース110は、通信ネットワークNWを介して端末装置10などと通信する。通信インタフェース110は、例えば、NIC等を含む。
【0028】
処理回路120は、例えば、取得機能121と、第1算出機能122と、第2算出機能123と、推定機能124と、通信制御機能125と、層別化処理機能126とを備える。取得機能121は「取得部」の一例であり、第1算出機能122は「第1算出部」の一例であり、第2算出機能123は「第2算出部」の一例であり、推定機能124は「推定部」の一例であり、通信インタフェース110及び通信制御機能125は「出力部」の一例である。また、「出力部」は、情報処理装置100の通信インタフェース110及び通信制御機能125と、端末装置10のディスプレイ13及び表示制御機能22とを合わせたものであってもよい。
【0029】
処理回路120は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ130(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0030】
処理回路120におけるハードウェアプロセッサは、例えば、CPU、GPU、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイスまたは複合プログラマブル論理デバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ等の回路(circuitry)を意味する。メモリ130にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ130に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が情報処理装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ130にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0031】
メモリ130は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクによって実現される。これらの非一過性の記憶媒体は、NASや外部ストレージサーバ装置といった通信ネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。また、メモリ130には、ROMやレジスタ等の非一過性の記憶媒体が含まれてもよい。
【0032】
[情報処理装置の処理フロー]
以下、フローチャートに即しながら、情報処理装置100の処理回路120による各機能の処理について説明する。図4は、第1実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャートである。
【0033】
まず、取得機能121は、通信インタフェース110を介して端末装置10から対象患者P1の属性を取得する(ステップS100)。
【0034】
対象患者P1の属性は、対象患者P1の現在の状態、対象患者P1が来院してからの状態の推移、対象患者P1をフォローしている間の状態の推移、既往症、遺伝性情報、といった複数の性質や特徴によって構成される。これら複数の性質や特徴のうちの一部は省略されてもよいし、例示されていない他の性質や特徴に置き換わってもよい。例えば、対象患者P1の属性には、治療方法や治療歴などが含まれてもよい。
【0035】
対象患者P1の現在の状態には、例えば、年齢、性別、体重、血液型、バイタルサイン、疾病、疾患特徴を示す画像パラメータ、疾患特徴を示す非画像パラメータ、併発している疾病およびその特徴を表す画像非画像パラメータ、予想される合併症などが含まれる。対象患者P1が来院してからの状態の推移には、例えば、体重、心機能状態、呼吸状態、代謝状態、疾患特徴を示す画像パラメータ、疾患特徴を示す非画像パラメータなどが含まれる。対象患者P1をフォローしている間の状態の推移には、例えば、体重、心機能状態、呼吸状態、代謝状態、疾患特徴を示す画像パラメータ、疾患特徴を示す非画像パラメータなどが含まれる。
【0036】
例えば、医師などの医療従事者P2が、端末装置10に対して、対象患者P1の現在の状態、状態の推移、既往歴、遺伝性情報を入力したとする。この場合、端末装置10は、これら入力された情報を対象患者P1の属性として情報処理装置100に送信する。情報処理装置100の取得機能121は、通信インタフェース110が端末装置10から対象患者P1の属性を受信した場合、その属性を通信インタフェース110から取得する。
【0037】
次に、第1算出機能122は、取得機能121によって取得された対象患者P1の属性を定量的に表した分布(以下、属性分布と称する)を算出する(ステップS102)。対象患者P1の属性分布は、「第1分布」の一例である。
【0038】
例えば、第1算出機能122は、行政機関などが定めたガイドラインや各医療機関が定めた診療基準などに従って、対象患者P1の複数の属性のそれぞれを定量的な値に変換し、定量化した属性を分布として算出する。第1算出機能122は、所定のデータベースを用いて対象患者P1の属性を定量化してもよいし、機械学習(深層学習等)を用いて対象患者P1の属性を定量化してもよい。
【0039】
図5は、属性分布の一例を表す図である。図示のように、例えば、属性分布は、0から5までの5段階で各属性の程度が段階付けられたレーダーチャートとして表されてよい。つまり、各属性の値は、最小値が0になり、最大値が5となるように正規化された上で、レーダーチャートのような分布として表現されてよい。属性分布における(a)の領域には、例えば、年齢や性別、血液型の定量値がプロットされる。(b)の領域には、例えば、現時点のバイタルサインの定量値がプロットされる。(c)の領域には、例えば、現時点の疾患パラメータ(画像パラメータや非画像パラメータ)の定量値がプロットされる。(d)の領域には、例えば、来院中の推移情報の定量値がプロットされる。(e)の領域には、例えば、フォロー中の推移情報の定量値がプロットされる。(f)の領域には、例えば、既往歴や遺伝性情報の定量値がプロットされる。
【0040】
(b)(c)の属性(例えば体重、バイタルサイン、併発疾患、疾患特徴を表すパラメータ)は、対象患者P1が診療を受けている現時点において制御可能な因子(すなわち制御因子)である。(a)(d)(e)(f)の属性(例えば年齢、血液型、病歴、家族歴)は、対象患者P1が診療を受けている現時点において制御不可能な因子(すなわち不制御因子)である。
【0041】
なお、図5の例では、属性分布がレーダーチャートであるものとして説明したがこれに限られない。例えば、属性分布は、ヒストグラム、積み上げグラフ、ヒートマップのような、その他の統計的図表によって表されてもよい。また属性の段階数についても5に限られず、4以下であってもよいし、6以上であってもよい。
【0042】
なお、第1算出機能122は、対象患者P1の属性を分布として算出することに代えて、或いは加えて、対象患者P1の属性全体を統合して1つの指標値(スカラ値)として算出してもよい。例えば、第1算出機能122は、対象患者P1の属性数をnとした場合、各属性(τ(i);i=1~n)における疾患QI(Quality Index)への影響度αiを考慮した総和T(i)=Σαi×τ(i)を、対象患者P1の属性全体を表す指標値としてよい。疾患QIについては後述する。
【0043】
図4のフローチャートの説明に戻る。次に、第2算出機能123は、母集団に含まれる複数のグループのそれぞれの属性分布を算出する(ステップS104)。
【0044】
母集団とは、対象患者P1を診療しようとしている医療従事者P2、或いはその医療従事者P2が勤務する医療機関のもとで過去に診療を受けた複数の患者によって構成される。医療機関は、例えば、病院や診療所、その他医療が提供される施設であってよい。また、母集団は、医療統計上の患者集団であってもよい。母集団は、病院PI(Performance Index)及び/又は疾患QIに基づいて、複数のグループに層別化(分類化、グループ化、クラスタ化ともいう)することが可能である。
【0045】
病院PIとは、母集団の各患者が費やした時間的又は経済的コストに関する指標値であり、例えば、入院日数や治療費などである。別の側面から見れば、病院PIは、医療機関が費やした時間的又は経済的コストに関する指標値であり、例えば、在院日数や診療報酬などである。病院PIは、「第1指標値」の一例である。
【0046】
疾患QIとは、母集団の各患者をある診療方法に従って診療したときに、その患者の疾患がどの程度治療されたのかという治療効果を計るための指標値である。例えば、患者の疾患ががんである場合、疾患QIは、5年生存率や、術後在院日数、再発率、がん残存率、乳房温存手術の割合などであってよい。また、患者の疾患が急性心筋梗塞である場合、疾患QIは、平均在院日数などであってよい。また、患者の疾患が糖尿病である場合、疾患QIは、HbA1c(Hemoglobin A1c)改善率や、患者の紹介件数、患者の逆紹介件数などであってよい。また、患者の疾患が肺炎である場合、疾患QIは、平均在院日数や初期治療成功率などであってよい。疾患QIは、「第2指標値」の一例である。
【0047】
まず、第2算出機能123は、母集団の各グループの属性分布を算出するために、治療効果を計るための複数の指標値の中から、一つ又は複数の指標値を病院PI及び/又は疾患QIとして選択する。この際、第2算出機能123は、診療方法によって母集団の患者をフィルタリングしてもよい。
【0048】
第2算出機能123は、病院PI及び/又は疾患QIを選択すると、その選択した病院PI及び/又は疾患QIを基に、母集団を複数のグループに層別化する。なお、第2算出機能123は、このような層別化処理を、本フローチャートとは異なる別のタイミングで行ってもよい。別のタイミングとは、例えば、医療機関の休業日や診療すべき患者が比較的少ない夜間などである。つまり、本フローチャートの処理が開始されるときには、既に母集団が複数のグループに層別化された状態であってもよい。
【0049】
図6は、層別化処理を説明するための図である。図示のように、例えば、第2算出機能123は、病院PIや疾患QIを確率変数Xとしたときの母集団の確率密度分布F(X)を算出する。そして、第2算出機能123は、確率密度分布F(X)上において、ある基準に従って母集団を複数のグループに層別化する。
【0050】
例えば、第2算出機能123は、確率変数Xが第2閾値TH2未満のグループをA群に分類し、確率変数Xが第2閾値TH2以上かつ第1閾値TH1未満のグループをB群に分類し、確率変数Xが第1閾値TH1以上のグループをC群に分類してよい。第1閾値TH1及び第2閾値TH2は、例えば、医療的な統計結果やガイドラインを基に決定された固定値であってもよいし、全国平均や各医療機関内の平均などに対して一定のマージンが加えられた或いは引かれた参照値であってもよい。第1閾値TH1及び第2閾値TH2は、±1σや、±2σ、±3σといった標準偏差であってもよい。閾値は2つに限られず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。つまり、グループは2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0051】
例えば、第2算出機能123は、疾患QIとしてがんの再発率を選択した場合、母集団から、がん患者やがんの診療方法が適用された患者をフィルタリングで抽出し、その抽出した患者の集合(すなわち標本群)のがんの再発率を確率変数Xとした確率密度分布F(X)を算出する。そして、第2算出機能123は、がんの再発率に関する確率密度分布F(X)上において、母集団を例えばA,B,Cの計3つのグループに層別化する。この場合、A群は、がんの再発率が低いグループとなり、B群は、がんの再発率がA群よりも高いグループとなり、C群は、がんの再発率がB群よりも高いグループとなる。
【0052】
第2算出機能123は、母集団を複数のグループに層別化すると、各グループの属性分布を算出する。例えば、第2算出機能123は、各グループに含まれる複数の患者のそれぞれの属性分布を平均し、その平均した属性分布を各グループの属性分布とする。具体的には、第2算出機能123は、A群に100人の患者が含まれる場合、その100人のそれぞれの属性分布を平均し、その患者100人分の属性分布を平均した一つの属性分布を、A群の属性分布とする。第2算出機能123は、B群やC群といった他のグループについても同様に、複数の患者の属性分布を平均化することで、各グループの属性分布を算出してよい。各グループの属性分布は、「第2分布」の一例である。
【0053】
図4のフローチャートの説明に戻る。次に、推定機能124は、第1算出機能122によって算出された対象患者P1の属性分布と、第2算出機能123によって算出された複数のグループのそれぞれの属性分布とを比較する(ステップS106)。
【0054】
図7は、属性分布の比較方法を説明するための図である。例えば、A群、B群、C群の3つのグループの属性分布があったとする。この場合、推定機能124は、対象患者P1の属性分布を、A群、B群、C群のそれぞれの属性分布と比較し、属性分布同士の類似度を算出する。
【0055】
例えば、推定機能124は、属性分布がレーダーチャートのように形状に特徴が現れる図表であった場合、対象患者P1の属性分布の図形的形状とA群の属性分布の図形的形状との相似度を類似度aとして算出する。同様に、推定機能124は、対象患者P1の属性分布の図形的形状とB群の属性分布の図形的形状との相似度を類似度bとして算出し、対象患者P1の属性分布の図形的形状とC群の属性分布の図形的形状との相似度を類似度cとして算出する。比較対象である2つの属性分布が相似形状に近いほど、類似度は大きくなる。また、推定機能124は、属性分布がヒートマップのように色や濃淡に特徴が現れる図表であった場合、比較対象である2つの属性分布の色や濃淡の距離(いわゆる色差)を、類似度として算出してよい。具体的には、推定機能124は、各属性分布の色ヒストグラムを計算し、色ヒストグラムのユークリッド距離やコサイン類似度から、2つの属性分布間の類似度を算出してよい。
【0056】
図4のフローチャートの説明に戻る。次に、推定機能124は、対象患者P1の属性分布と各グループの属性分布との比較結果に基づいて、対象患者P1に関する病院PI及び疾患QIのうち少なくとも一方の指標値、又は双方の指標値を推定する(ステップS108)。
【0057】
例えば、推定機能124は、対象患者P1の属性分布と比較した複数のグループのうち、属性分布の類似度が最も大きいグループが層別化される際に用いられた病院PIを、対象患者P1に関する病院PIとして推定し、属性分布の類似度が最も大きいグループが層別化される際に用いられた疾患QIを、対象患者P1に関する疾患QIとして推定する。
【0058】
例えば、図7において、類似度bが最も大きいとする。この場合、推定機能124は、母集団からB群が層別化される際に用いられたがんの再発率を、対象患者P1の疾患QIとして推定する。B群は、がんの再発率が第2閾値TH2以上かつ第1閾値TH1未満のグループである。従って、対象患者P1のがんの再発率として推定される値は、第2閾値TH2から第1閾値TH1までの範囲となる。
【0059】
更に、推定機能124は、対象患者P1の疾患QIを推定する際に、各属性(τ(i);i=1~n)における疾患QIへの影響度βiを考慮してもよい。具体的には、推定機能124は、ある基準とする範囲において、推定した疾患QIに対して、任意の変換係数γと、総和Σ{βi×(f(i)-τ(i))}との積を加算してもよい。影響度βiは、対象患者P1の属性の中で、より着目したい属性を重みづけるための係数である。また、推定機能124は、機械学習や深層学習によって得られた類似確率を基に疾患QIを推定してもよい。
【0060】
更に、推定機能124は、対象患者P1の属性分布と比較した複数のグループの全ての病院PIや疾患QIの平均や最大、最小といった統計値を算出してもよい。例えば、対象患者P1の属性分布と比較した複数のグループがA群、B群、及びC群の3つであった場合、推定機能124は、A群、B群、及びC群の病院PIの平均や疾患QIの平均を算出してよい。
【0061】
次に、通信制御機能125は、類似度が最も大きいグループの属性分布と対象患者P1の属性分布との相違点や、推定された対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIなどを、通信インタフェース110を介して端末装置10に送信(出力)する(ステップS110)。更に、通信制御機能125は、対象患者P1に対して既に適用された診療方法や、その診療方法のガイドラインに従った評価結果、対象患者P1の属性分布と比較した全グループの病院PIや疾患QIの平均、といったその他の情報を、通信インタフェース110を介して端末装置10に送信してもよい。これによって、端末装置10のディスプレイ13には、属性分布の相違点や、推定された対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIなどが表示される。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0062】
図8は、端末装置10のディスプレイ13の画面の一例を表す図である。図示の例のように、ディスプレイ13には、類似度が最も大きいB群の属性分布と、対象患者P1の属性分布とが重畳された状態で一緒に表示されてよい。この際、ディスプレイ13には、更に、対象患者P1に対して既に適用された診療方法(図中AAA)や、その診療方法のガイドラインに従った評価結果(図中D+)、対象患者P1に対して推奨される診療方法(図中BBA、CAB)、推定された対象患者P1の疾患QI、推定された対象患者P1の病院PI、といった種々の情報が表示されてもよい。図示の例では、推定された対象患者P1の疾患QIは疾患の再発率であり、推定された対象患者P1の病院PIは入院日数であることを表している。例えば、B群の再発率が60[%]及び入院日数が20日であり、A群、B群、及びC群の再発率の平均が48[%]及び入院日数の平均が14日であったとする。この場合、これら具体的な数値も情報処理装置100から端末装置10へと送信され、端末装置10のディスプレイ13には、これら具体的な数値も併せて表示される。
【0063】
以上説明した第1実施形態によれば、情報処理装置100は、医療従事者P2、或いはその医療従事者P2が勤務する医療機関のもとで診療される対象患者P1の属性を取得する。情報処理装置100は、取得した属性をもとに対象患者P1の属性分布(第1分布の一例)を算出する。情報処理装置100は、過去に診療を受けた複数の患者から構成される母集団の病院PI(第1指標値の一例)と疾患QI(第2指標値の一例)とに基づいて層別化された複数のグループのそれぞれの属性分布(第2分布の一例)を算出する。情報処理装置100は、対象患者P1の属性分布と各グループの属性分布とを比較し、それら属性分布同士の類似度を算出する。情報処理装置100は、算出した類似度に基づいて、対象患者P1の病院PI及び疾患QIのうち少なくとも一方の指標値を推定する。そして、情報処理装置100は、推定した対象患者P1の病院PIや疾患QI、対象患者P1の属性分布、グループの属性分布などの各種情報を、医療従事者P2が操作可能な端末装置10に送信する。これを受けて、端末装置10のディスプレイ13には、各種情報が表示される。これによって、医師が有する認知的なバイアスを低下させることができる。この結果、医師が対象患者P1に対してより好適となる診療方法を提案することができる。言い換えれば、対象患者P1はより好適な診療を受けることができる。
【0064】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、診療方法によって母集団の患者をフィルタリングしてもよいことについて説明した。第2実施形態では、この診療方法によるフィルタリングについて詳細に説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については説明を省略する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ部分については同一符号を付して説明する。
【0065】
図9は、第2実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャートである。まず、取得機能121は、通信インタフェース110を介して、端末装置10から、対象患者P1の属性と、医療従事者P2によって選択された診療方法を表す情報とを取得する(ステップS200)。
【0066】
例えば、端末装置10の表示制御機能22は、対象患者P1に対して適用可能な複数の診療方法をディスプレイ13に表示させる。医療従事者P2(特に医師)が、ディスプレイ13に表示された複数の診療方法の中からいずれか一つ又は複数の診療方法を選択し、その選択結果を入力インタフェース12に対して入力する。通信制御機能23は、医療従事者P2によって入力インタフェース12に対して入力された診療方法の選択結果を、通信インタフェース11を介して情報処理装置100に送信する。これを受けて、情報処理装置100の取得機能121は、通信インタフェース110を介して、端末装置10から、医療従事者P2によって選択された診療方法の選択結果を取得する。
【0067】
次に、第1算出機能122は、取得機能121によって取得された対象患者P1の属性を定量的に表した属性分布を算出する(ステップS202)。
【0068】
次に、第2算出機能123は、取得機能121によって取得された診療方法の選択結果に基づいて、母集団の患者をフィルタリングする(ステップS204)。例えば、医療従事者P2によって選択された診療方法が「AAA」という方法であった場合、第2算出機能123は、母集団の中から過去に「AAA」という診療方法を受けた複数の患者を抽出する。
【0069】
次に、第2算出機能123は、診療方法に基づいて母集団から抽出した複数の患者(以下、標本と称する)を複数のグループに層別化し、その層別化した各グループの属性分布を算出する(ステップS206)。
【0070】
例えば、第2算出機能123は、医療従事者P2によって選択された診療方法に関連した病院PI及び/又は疾患QIを選択する。そして、第2算出機能123は、選択した病院PI及び/又は疾患QIを基に、標本を複数のグループに層別化し、各グループの属性分布を算出する。例えば、「AAA」という診療方法ががん特有の診療方法であった場合、第2算出機能123は、がんに関連した「再発率」や「がん残存率」といった指標値を疾患QIとして選択し、そのがんに関連した疾患QIを基に、標本を複数のグループに層別化する。診療方法に関連した病院PI及び/又は疾患QIを基に層別化されたグループは、「特定グループ」の一例である。
【0071】
なお、第2算出機能123は、層別化処理を、本フローチャートとは異なる別のタイミングで行ってもよい。別のタイミングとは、例えば、医療機関の休業日や診療すべき患者が比較的少ない夜間などである。つまり、本フローチャートの処理が開始されるときには、既に標本が複数のグループに層別化された状態であってもよい。この場合、第2算出機能123は、既に層別化された複数のグループの中から、診療方法に関連した病院PI及び/又は疾患QIに基づく特定グループを選択するだけでよい。
【0072】
次に、推定機能124は、第1算出機能122によって算出された対象患者P1の属性分布と、第2算出機能123によって算出された複数のグループのそれぞれの属性分布とを比較し、属性分布同士の類似度を算出する(ステップS208)。
【0073】
次に、推定機能124は、対象患者P1の属性分布と各グループの属性分布との比較結果、つまり類似度に基づいて、対象患者P1に関する病院PI及び疾患QIのうち少なくとも一方の指標値、又は双方の指標値を推定する(ステップS210)。
【0074】
次に、通信制御機能125は、類似度が最も大きいグループの属性分布と対象患者P1の属性分布との相違点や、推定された対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIなどを、通信インタフェース110を介して端末装置10に送信する(ステップS212)。更に、通信制御機能125は、対象患者P1に対して既に適用された診療方法や、その診療方法のガイドラインに従った評価結果、対象患者P1の属性分布と比較した全グループの病院PIや疾患QIの平均、といったその他の情報を、通信インタフェース110を介して端末装置10に送信してもよい。これによって、端末装置10のディスプレイ13には、属性分布の相違点や、推定された対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIなどが表示される。
【0075】
次に、通信制御機能125は、推定された対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲内か否かを判定する(ステップS214)。許容範囲は、医療従事者P2、医療機関、地方自治体、又は国ごとに定められた目標とすべき病院PI及び/又は疾患QIから算出された数値範囲であってよい。例えば、ある医療機関において、目標とすべき患者の在院日数(入院日数)が10日であったとした場合、病院PIの許容範囲は、0~10日という期間に決定されてよい。
【0076】
通信制御機能125は、病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外であると判定した場合、通信インタフェース110を介して、推奨すべき他の診療方法を端末装置10に送信したり、医療従事者P2と異なる第三者の端末装置(例えばパーソナルコンピュータや携帯電話)に対して所定の情報を送信したりする(ステップS216)。
【0077】
推奨すべき他の診療方法とは、医療従事者P2が選択した診療方法とは異なる診療方法であり、医療従事者P2が選択した診療方法に比べて、病院PI及び/又は疾患QIが改善するような診療方法である。
【0078】
これによって、端末装置10のディスプレイ13には、医療従事者P2が選択した診療方法とは異なる他の診療方法が表示される。この結果、医療従事者P2に対して、病院PI及び/又は疾患QIが改善するような他の診療方法を再選択するよう(対象患者P1に対して他の診療方法を適用するよう)促すことができる。
【0079】
第三者とは、例えば、医療従事者P2の上司や同僚、医療従事者P2が勤務する医療機関の経営者、その医療機関の機能などを評価する外部の監督機関などである。所定の情報とは、例えば、病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外となることが推定される診療方法が医療従事者P2によって選択された、という内容の情報であってもよいし、第三者との間で予め取り決めておいた何らかのシグナルであってもよい。
【0080】
これによって、第三者は、医療従事者P2が対象患者P1に対して好ましくない診療方法を選択したことを知ることができ、その医療従事者P2に対して是正や改善といった指導を行うことができる。
【0081】
以上説明した第2実施形態によれば、情報処理装置100は、医療従事者P2によって選択された診療方法によって母集団をフィルタリングし、そのフィルタリングによって得られた標本のグループ(特定グループの一例)の属性分布と、対象患者P1の属性分布との比較結果に基づいて、対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIを推定し、その推定結果などを出力する。これよって、情報処理装置100は、推定された病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外であり、医療従事者P2によって選択された診療方法が好ましくない場合には、医療従事者P2に対して、病院PI及び/又は疾患QIが改善するような他の診療方法を再選択するよう促したり、或いは、第三者に所定の情報を通知したりすることができる。これによって、医師が有する認知的なバイアスを低下させることができる。この結果、医師が対象患者P1に対してより好適となる診療方法を提案することができる。言い換えれば、対象患者P1はより好適な診療を受けることができる。
【0082】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。上述した第2実施形態では、推定された病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外である場合、医療従事者P2に対して他の診療方法を提案することについて説明した。これに対して、第3実施形態では、医療従事者P2に対して提案した他の診療方法が、その医療従事者P2によって受け入れられたか否かに応じて、更なる処理を行う点で上述した実施形態と異なる。以下、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態及び第2実施形態と共通する点については説明を省略する。なお、第3実施形態の説明において、第1実施形態又は第2実施形態と同じ部分については同一符号を付して説明する。
【0083】
図10は、第3実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャートである。本フローチャートにおけるS300~S314の処理は、図9のフローチャートにおけるS200~S214の処理と同じであるため説明を省略する。
【0084】
通信制御機能125は、S314の処理において病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外であると判定した場合、更に、医療従事者P2が自らが選択した診療方法(病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外となる診療方法)を採用したか否かを判定する(ステップS316)。
【0085】
例えば、端末装置10のディスプレイ13に、医療従事者P2が、入力インタフェース12に対して自らが選択した診療方法を採用する旨の入力をしたとする。この場合、端末装置10の通信制御機能23は、通信インタフェース11を介して、情報処理装置100に診療方法が採用された旨の情報(以下、採用情報と称する)を送信する。一方、医療従事者P2が、入力インタフェース12に対して、診療方法を採用する旨の入力を一定期間しなかった場合、或いは他の診療方法を採用する旨の入力をした場合、端末装置10の通信制御機能23は、通信インタフェース11を介して、情報処理装置100に診療方法が採用されなかった旨の情報(以下、非採用情報と称する)を送信する。
【0086】
情報処理装置100の通信制御機能125は、通信インタフェース110が端末装置10から採用情報を受信した場合、医療従事者P2が自らが選択した診療方法を採用したと判定し、通信インタフェース110が端末装置10から非採用情報を受信した場合、医療従事者P2が自らが選択した診療方法を採用しなかったと判定する。
【0087】
通信制御機能125は、医療従事者P2が自らが選択した診療方法を採用したと判定した場合、その医療従事者P2によって選択された診療方法が対象患者P1に適用される際に対象患者P1があるべき状態又は条件を、通信インタフェース110を介して端末装置10に送信する(ステップS318)。また、通信制御機能125は、S318の処理として、第三者の端末装置に対して所定の情報を送信してもよい。
【0088】
例えば、医療機関の設備や人員などの限られた医療リソースを活用することを考えた場合、必ずしも最善策とはいえない診療方法であっても対象患者P1に対して適用することが避けられないケースが想定される。このような選択可能な診療方法が限られたケースでは、診療方法を変更するのではなく、診療方法が適用されるときの対象患者P1の状態や条件を変更することで、病院PIや疾患QIを改善するのが好ましい。
【0089】
従って、医療従事者P2が上記のケースを考慮して敢えて診療方法を変更せずにそのまま採用したことも想定して、情報処理装置100は、現状の診療方法を対象患者P1に適用したときに、可能な限り病院PIや疾患QIが改善するような対象患者P1の状態又は条件がどういったものであるのかを医療従事者P2に提示する。
【0090】
具体的には、情報処理装置100は、対象患者P1の属性分布と、類似度が最も大きいグループの属性分布とを比較したときに、分布の相違点を見つけ、その相違点がなくなるためには対象患者P1がどういった状態又は条件であるべきかを算出し、その算出結果を端末装置10に出力する。
【0091】
図11は、端末装置10のディスプレイ13の画面の他の例を表す図である。図示のように、対象患者P1の属性分布と、類似度が最も大きいグループの属性分布とを比較したとき、分布形状に相違点が生じる場合がある。上述したように、対象患者P1の属性の中には制御因子と非制御因子とが存在しており、属性分布の相違点が制御因子に該当する場合、その制御因子を調整することで、病院PIや疾患QIを改善することが可能である。図示の例では、矢印V1及びV2で示すように、対象患者P1の属性分布において(b)の属性と(d)の属性とが、比較対象のグループの属性分布と大きく乖離している。(b)の属性はバイタルサインを表しており、(d)の属性は来院中の推移情報を表している。これら双方の属性はどちらも制御因子である。従って、情報処理装置100は、診療方法は変更せず、バイタルサインや来院中の推移情報といった属性が改善するような施策を行うように促す情報を、端末装置10に送信する。例えば、対象患者P1の体重が比較対象のグループの体重よりも軽い場合、通信制御機能125は、対象患者P1の体重を増量するような施策を示す情報を端末装置10に送信してよい。また、対象患者P1が合併症を患っており、比較対象のグループが合併症を患っていない場合、通信制御機能125は、対象患者P1の合併症を軽減するような施策を示す情報を端末装置10に送信してよい。
【0092】
図10のフローチャートの説明に戻る。一方、S316の処理において、医療従事者P2が自らが選択した診療方法を採用しなかったと通信制御機能125によって判定された場合、第2算出機能123は、診療方法を変更し(ステップS320)、S304に処理を戻す。
【0093】
例えば、第2算出機能123は、医療従事者P2が勤務する医療機関内で取り得ることが可能な診療方法の中からいずれか一つの診療方法を選択し、その選択した診療方法によって母集団の患者をフィルタリングしてよい。これによって、情報処理装置100は、対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外である場合、医療機関内で取り得ることが可能であり、かつ対象患者P1の属性に合致した診療方法を医療従事者P2に対して提案することができる。
【0094】
このように本フローチャートでは、S314の処理において、対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲内であるか(S314;YES)、又はS316の処理において、医療従事者P2が自らが選択した診療方法を採用した(S316;YES)と判定されるまで、診療方法を変えながら対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIが推定されることが繰り返される。
【0095】
上記の繰り返し処理の過程で、通信制御機能125は、繰り返し対象患者P1の病院PI及び/又は疾患QIが推定された診療方法のうち、病院PI及び/又は疾患QIが最適値となる診療方法(例えば再発率という疾患QIであれば、その疾患QIが最小値をとる診療方法)を、通信インタフェース110を介して端末装置10に送信してもよい。これを受けて、端末装置10のディスプレイ13には、病院PI及び/又は疾患QIが最適値となる診療方法が表示される。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0096】
以上説明した第3実施形態によれば、情報処理装置100は、医療従事者P2によって病院PI及び/又は疾患QIが許容範囲外となる診療方法が採用された場合、その診療方法が対象患者P1に適用される際に対象患者P1があるべき状態又は条件を提示する。これによって、医療従事者P2は、診療方法が変更できない状況下であっても、病院PIや疾患QIが改善するような施策をとることができる。
【0097】
(その他の実施形態)
以下、その他の実施形態について説明する。上述した実施形態では、端末装置10と情報処理装置100とが互いに異なる装置であるものとして説明したがこれに限られない。例えば、端末装置10と情報処理装置100とは一体となった一つの装置であってもよい。例えば、端末装置10の処理回路20は、取得機能21、表示制御機能22、及び通信制御機能23に加えて、更に、情報処理装置100の処理回路120が備える第1算出機能122、第2算出機能123、及び推定機能124を備えていてもよい。この場合、端末装置10は、スタンドアローン(オフライン)で上述した各種フローチャートの処理を行うことができる。
【0098】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
1…情報処理システム、10…端末装置、11…通信インタフェース、12…入力インタフェース、13…ディスプレイ、14…メモリ、20…処理回路、21…取得機能、22…表示制御機能、23…通信制御機能、100…情報処理装置、110…通信インタフェース、120…処理回路、121…取得機能、122…第1算出機能、123…第2算出機能、124…推定機能、125…通信制御機能、130…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11