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特許7580979ヘプタフルオロイソブチロニトリルをリサイクルするための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ヘプタフルオロイソブチロニトリルをリサイクルするための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20241105BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241105BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20241105BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20241105BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241105BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/50 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20241105BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D53/26 200
B01D53/04
B01J20/04 A
B01J20/08 A
B01J20/18 B
B01J20/22 A
B01D71/32
B01D71/48
B01D71/50
B01D71/52
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/68
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020147960
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2021053627
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】19290099
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】エロディ・ラルレル
(72)【発明者】
【氏名】ルイ・マクスード
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック・キーフェル
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255898(JP,A)
【文献】特表2018-506947(JP,A)
【文献】特表2015-534431(JP,A)
【文献】特開2002-331219(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210938(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00-53/96
B01D 61/00-71/82
B01J 20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘプタフルオロイソブチロニトリル、希釈ガス及びアーク放電副産物を含む使用済みガス混合物(10310)からヘプタフルオロイソブチロニトリル及び希釈ガスを精製するための装置(00300)であって、当該装置(00300)
前記使用済みガス混合物(10310)からアーク放電副産物の第1の群を除去し、副産物が枯渇した流れ(32332)をもたらすように構成された少なくとも1つの吸着剤ユニット(30330)と、
アーク放電副産物が枯渇した前記使用済みガス混合物(10310)を第1の透過流(54354)と第1の保持流(52352)に分離するように構成された第1の膜分離ユニット(50350)であって、前記第1の膜分離ユニット(50350)、第1の膜ユニット供給入口、第1の膜ユニット透過ガス出口及び第1の膜ユニット保持ガス出口を備え、前記第1の膜ユニット供給入口前記少なくとも1つの吸着剤ユニット(230,330)の下流にある第1の膜分離ユニット(50350)と、
前記第1の透過流(54354)を希釈ガス混合物と副産物に分離するように構成された第2の膜分離ユニット(60360)であって、前記第2の膜分離ユニット(60360)、第2の膜ユニット供給入口、第2の膜ユニット透過ガス出口及び第2の膜ユニット保持ガス出口を備え、前記第2の膜ユニット供給入口、前記第1の膜ユニット透過ガス出口の下流にある第2の膜分離ユニット(60360)と
前記第2の膜分離ユニット(260,360)の第2の膜ユニット透過ガス出口の下流の有機金属フレームワーク材料ユニット(266,366)と
を備える、装置(00300)。
【請求項2】
前記第1の保持流(252,352)を第3の透過流(294,394)と第3の保持流(292,392)に分離するように構成された第3の膜分離ユニット(290,390)であって、前記第3の膜分離ユニット(290,390)が、第3の膜ユニット供給入口、第3の膜ユニット透過ガス出口及び第3の膜ユニット保持ガス出口を備え、前記第3の膜ユニット供給入口が、前記第1の膜ユニット保持ガス出口及び前記第2の膜ユニット保持ガス出口の下流にあり、かつ前記第2の膜ユニット供給入口が、前記第3の膜ユニット透過ガス出口の下流にある、第3の膜分離ユニット(290,390)をさらに備える、請求項1に記載の装置(200,300)。
【請求項3】
副産物が枯渇した前記ガス流(32332)を圧縮するために、第1の膜分離ユニット(50350)の上流に配置された圧縮機ユニット(40340)をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の装置(00300)。
【請求項4】
前記第1の(50350)及び又は第2の膜分離ユニット(60360)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、アルキル置換芳香族ポリエステル、並びにポリエーテルスルホン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、フッ素化芳香族ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのブレンドからなる群から選択される膜を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装置(00300)。
【請求項5】
当該装置(200,300)が、前記第2の膜分離ユニット(60360)の下流に少なくとも1つの吸着剤ユニット(280380)をさらに備えており、前記吸着剤ユニット(280,380)の吸収剤が、モレキュラシーブ、ソーダライム及び活性アルミナからなる群から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装置(00300)。
【請求項6】
前記希釈ガスがCO 及びO を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の装置(200,300)。
【請求項7】
ヘプタフルオロイソブチロニトリル、希釈ガス及びアーク放電副産物を含む使用済みガス混合物(10310)からヘプタフルオロイソブチロニトリル及び希釈ガスを精製する方法であって、当該方法
(a)前記使用済みガス混合物(10310)を少なくとも1つの吸着剤材料と接触させ、アーク放電副産物が枯渇したガス流(32332)を生成するステップと、
(b)副産物が枯渇した前記ガス流(32332)を第1の膜と接触させ、希釈ガスに富む第1の透過流(54354)及びヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む第1の保持流(52352)を得るステップと、
(c)前記希釈ガスに富む前記第1の透過流(54354)を第2の膜と接触させ、前記希釈ガスに富む第2の透過流(264364)及びヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む第2の保持流(62362)を得るステップと、
(d)ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む前記第1及び第2の保持流(52352,262362)を組み合わせるステップと
(g)前記希釈ガスに富む前記第2の透過流(264,364)を有機金属フレームワーク材料と接触させ、COが枯渇したガス流を得るステップと
を含む、方法。
【請求項8】
当該方法、ステップ(a)の前にステップ(a’)をさらに含み、前記ステップ(a’)、前記使用済みガス混合物(10310)を微粒子フィルタ(20320)と接触させ、微粒子物質を除去することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(e)ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む前記組み合わされた保持流256356)を乾燥用フィルタと接触させるステップ
をさらに含む、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(f)ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む前記乾燥させた流れを吸着剤材料と接触させるステップ
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記希釈ガスCO 及びを含む、請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
当該方法が、ステップ(d)の後に、
(h)前記組み合わされた保持流(256,356)を第3の膜と接触させ、前記希釈ガスに富む第3の透過流(294,394)及びヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む第3の保持流(292,392)を得るステップと、
(i)前記希釈ガスに富む前記第1及び第3の透過流(254,354,264,364)を組み合わせるステップと
をさらに含む、請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記膜、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、アルキル置換芳香族ポリエステル、並びにポリエーテルスルホン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、フッ素化芳香族ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのブレンドからなる群から選択される、請求項7乃至請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘプタフルオロイソブチロニトリルをリサイクルするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SFガスは、1970年代から、絶縁およびアーク消火のために中電圧機器および高電圧機器で使用されてきた。経済的および環境的理由から、SFメーカーは、閉ループでのSFリサイクルの技術を開発した。
【0003】
しかし、中電圧機器および高電圧機器で使用するために、地球温暖化係数が低い代替のSFフリー絶縁ガス混合物が導入されている。そのような代替物は、希釈ガスと共にヘプタフルオロイソブチロニトリルを含むガス混合物を含む。ただし、これらの絶縁ガスのリサイクルおよび再利用は、そのような代替ガス混合物が複数の成分を含むため、困難である。さらに、SFの精製およびリサイクルに使用される技術は、アーク放電の副産物の組成が異なるため、SF代替ガス混合物には適用することができない。
【0004】
したがって、SF代替ガス混合物のリサイクル、特にヘプタフルオロイソブチロニトリルを含むガス混合物のリサイクルのための方法および装置が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、添付の特許請求の範囲で定義されている。
【0006】
一態様では、本発明は、ヘプタフルオロイソブチロニトリル、希釈ガスおよびアーク放電副産物を含む使用済みガス混合物からヘプタフルオロイソブチロニトリルおよび希釈ガスを精製するための装置を提供し、前記装置は、
使用済みガス混合物からアーク放電副産物の第1の群を除去し、副産物が枯渇した流れをもたらすように構成された少なくとも1つの吸着剤ユニットと、
アーク放電副産物が枯渇した使用済みガス混合物を第1の透過流(permeate stream)と第1の保持流(retentate stream)に分離するように構成された第1の膜分離ユニットであって、前記第1の膜分離ユニットは、第1の膜ユニット供給入口(membrane unit feed inlet)、第1の膜ユニット透過ガス出口(membrane unit permeate gas outlet)および第1の膜ユニット保持ガス出口(membrane unit retentate gas outlet)を備え、前記第1の膜ユニット供給入口は、少なくとも1つの吸着剤ユニットの下流にある第1の膜分離ユニットと、
第1の透過流を希釈ガス混合物と副産物に分離するように構成された第2の膜分離ユニットであって、前記第2の膜分離ユニットは、第2の膜ユニット供給入口、第2の膜ユニット透過ガス出口および第2の膜ユニット保持ガス出口を備え、第2の膜ユニット供給入口は、第1の膜ユニット透過ガス出口の下流にある第2の膜分離ユニットと
を備える。
【0007】
第2の態様では、本発明は、ヘプタフルオロイソブチロニトリル、希釈ガスおよびアーク放電副産物を含む使用済みガス混合物からヘプタフルオロイソブチロニトリルおよび希釈ガスを精製する方法を提供し、前記方法は、
(a)使用済みガス混合物を少なくとも1つの吸着剤材料と接触させ、アーク放電副産物が枯渇したガス流を生成するステップと、
(b)副産物が枯渇したガス流を第1の膜と接触させ、希釈ガスに富む第1の透過流およびヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む第1の保持流を得るステップと、
(c)希釈ガスに富む第1の透過流を第2の膜と接触させ、希釈ガスに富む第2の透過流およびヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む第2の保持流を得るステップと、
(d)ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む第1および第2の保持流を組み合わせるステップと
を含む。
【0008】
本発明は、様々な方法で実践することができ、添付の図を参照して本発明を例示するために、いくつかの特定の実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による装置の一実施形態を示すスキームである。
図2】本発明による装置のさらなる実施形態を示すスキームである。
図3】本発明による装置のさらなる実施形態を示すスキームである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用される用語の意味を以下に説明し、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「中電圧」および「高電圧」という用語は、従来受け入れられている様式で使用される。言い換えると、「中電圧」という用語は、ACの場合は1000ボルト(V)、DCの場合は1500Vを超えるが、ACの場合は52,000V、DCの場合は75,000Vを超えない電圧を指す。「高電圧」という用語は、ACの場合は52,000V、DCの場合は75,000Vを厳密に超える電圧を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、「~を備える」という用語は、指定された構成成分、プロセスステップなど「を含むが、これらに限定されない」ことを意味する。「~を備える」という用語は、指定された構成成分、プロセスステップなど「を本質的に含む」事例を包含するが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「枯渇した」という用語は、特定の分離ステップまたはユニットにおける流出流中の指定された成分の濃度が、その特定の分離ステップまたはユニットへの供給流中の同じ成分の濃度よりも低いことを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「~に富む」という用語は、特定の分離ステップまたはユニットにおける流出流中の指定された成分の濃度が、その特定の分離ステップまたはユニットへの供給流中の同じ成分の濃度よりも大きいことを意味する。
【0015】
ガス、絶縁ガス、ガス混合物およびガス絶縁混合物という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0016】
ガス混合物またはガス絶縁体は、ヘプタフルオロイソブチロニトリルを含むガス混合物である。
【0017】
本明細書でiCCNとしても知られているヘプタフルオロイソブチロニトリルは、(CFCFCNの式(I)を有し、CAS番号42532-60-5を有する2,3,3,3-テトラフルオロ-2-トリフルオロメチルプロパンニトリルに対応する。沸点は、1013hPaで-3.9℃である(沸点は、ASTM D1120-94「エンジン冷却材の沸点の標準試験法」に従って測定されている)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「使用済みガス混合物」という用語は、中電圧電気装置および高電圧電気装置で使用されてきたガス混合物を指す。
【0019】
使用済みガス混合物は、ヘプタフルオロイソブチロニトリルおよび希釈ガスを含む。使用済みガス混合物中のヘプタフルオロイソブチロニトリルのモルパーセントでの量は、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満であり得る。好ましくは、モルパーセントが3~10%のヘプタフルオロイソブチロニトリルが存在する。
【0020】
希釈ガスは、GWPが非常に低い、場合によってはゼロである中性ガスである。希釈ガスは、1に等しいGWPを有する二酸化炭素、窒素、酸素、もしくは空気、有利には0に等しいGWPを有する乾燥空気、またはそれらの混合物であり得る。希釈ガスは、二酸化炭素、窒素、酸素、空気(80%Nおよび20%O)、有利には乾燥空気(80%Nおよび20%O、0.01%未満の水)、およびそれらの任意の混合物からなるリストから選択することができる。有利には、ヘプタフルオロイソブチロニトリルは、二酸化炭素と酸素の混合物で使用することができる。希釈ガスは、少なくとも80体積%、少なくとも90体積%の二酸化炭素を含み得る。希釈ガスは、80~96体積%の二酸化炭素および1~10体積%の酸素を含み得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「副産物」、または分解産物という用語は、絶縁ガス混合物の成分のいずれか1つの分解の結果である化合物を意味する。中電圧および高電圧の条件下では、絶縁ガスの成分が分解する。例えば、ヘプタフルオロイソブチロニトリルおよび希釈ガスを含む絶縁組成物の分解副産物は、HF、CO、パーフルオロアクリロニトリル(CF=CFCN)、エタンジニトリド(CN-CN)、ペンタフルオロプロプリオニトリル(CF-CF-CN)、トリフルオロアセトニトリル(CF-CN)、フッ化カルボニルおよびオクタフルオロプロパン(COF+C)、ヘキサフルオロイソブチロニトリル((CFCHCN)およびパーフルオロイソブテン((CFC=CF)などの成分を含有し得る。
【0022】
ガス混合物は、中電圧電気機器および高電圧電気機器におけるアークを絶縁および消火するために使用される。使用中、アークが消火する場合、ガス混合物は、CO、および様々なフルオロカーボンベースの副産物などの炭素ベースの化合物副産物を含むいくつかの異なる成分に分解する。したがって、絶縁ガス混合物の組成は、発生するアーク放電のレベルに応じて時間と共に変化する場合があり、それゆえ生成される(アーク放電)副産物の量が異なる。ガス混合物の最適な絶縁およびアーク放電特性を維持するために、ガス混合物を変更する必要がある場合がある。ヘプタフルオロイソブチロニトリルはガス混合物中の濃度が低く、混合物の中で最も価値のある成分であるため、したがってガス混合物中のヘプタフルオロイソブチロニトリルの量を精製および濃縮して再利用するための方法があると有利である。ヘプタフルオロイソブチロニトリル精製法が副産物のない希釈ガスの放出を可能にする場合、また有利であろう。
【0023】
本発明の装置は、使用済みガス混合物の精製および濃縮を可能にしてヘプタフルオロイソブチロニトリルの量を増加させ、希釈ガスを精製する一連のユニットを提供する。
【0024】
図1図2および図3から分かるように、使用済み絶縁ガス混合物10、210、310は、綿ベースの微粒子フィルタ20、220、320につながる導管に導入され得る。微粒子フィルタ20、220、320は、ガス流から炭素粒子などの微粒子物質を除去する。
【0025】
次に、微粒子物質が枯渇したガス流22は、乾燥、および湿気の除去のためにスクラバ(吸収剤)ユニット24、224、324に供給され得る。スクラバユニット24、224、324の材料は、ゼオライト3Aであり得る。
【0026】
乾燥後、ガス流26、226、326は、アーク放電プロセスの分解副産物を除去するために、副産物トラップユニットとも呼ばれるフィルタ(またはスクラバ)ユニット30、230、330に供給される。フィルタユニット内の材料は、使用済みガス混合物から分解副産物を除去するのに適している。適切な材料には、モレキュラシーブ、ソーダライム、および活性アルミナが挙げられる。好ましくは、材料は、ゼオライト、より好ましくはゼオライト5Aである。フィルタユニット30、230、330は、アーク放電反応の副産物の大部分、すなわち炭素ベースの化合物、またはここでは副産物の第1の群と呼ばれるものを除去するように構成され得る。
【0027】
副産物トラップフィルタ30、230、330は、約300kPa~約1000kPaの範囲の圧力で使用することができる。副産物の濾過ステップは、約20℃~約100℃で行われ得る。
【0028】
次に、微粒子物質および副産物が枯渇したガス流32、232、332は、ガス圧力調節ユニット40、240、340に供して圧力が制御されたガス混合物42、242、342を形成することによって、調節することができる。ガス圧力調節ユニットは、ガス流32、232、332が低圧である場合にガス流32、232、332を圧縮することができる。あるいは、ガス圧力調節ユニット40、240、340は、ガス流が高圧である場合の減圧器であり得る。ガス混合物42、242、342は、約300kPa~約1000kPaの範囲の圧力を有し得る。好ましくは、ガス圧力調節ユニット40、240、340は、密閉され、オイルフリーである。
【0029】
リサイクルシステムは、2つ以上のガス圧力調節ユニットを備えてもよい。ガス圧力調節ユニットは、システム内の様々な場所に設置することができる。例えば、図1に例示されるように、ガス圧力調節ユニットは、微粒子フィルタ20の下流に位置する。あるいは、さらなるガス圧力調節ユニットが、図3のシステムにおいて、膜ユニット390に入る前の流れ352に設置されてもよい。
【0030】
副産物が枯渇し、圧力が調節された流れ42、242、342は、第1の膜分離ユニット50、250、350に供給され、希釈ガスに富む透過流54、254、354、およびヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む保持流52、252、352を得ることができる。このステップでは、希釈ガスの大部分を除去することによって、ガス混合物中のヘプタフルオロイソブチロニトリルの量を濃縮する。「大部分」という用語は、希釈ガスの少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%が除去されることを意味する。言い換えると、保持流は、モルパーセントで、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%のヘプタフルオロイソブチロニトリルを含む。
【0031】
第1の膜分離ユニット50、250、350は、第1の膜ユニット供給入口を備える。第1の膜ユニット供給入口は、第1の吸着剤ユニット40、240、340の下流にあってもよい。第1の膜ユニット供給入口は、導管を用いて第1の吸着剤ユニット40、240に接続され得る。第1の膜分離ユニット50、250、350はまた、第1の透過ガス出口と、第1の保持ガス出口とを備える。
【0032】
ヘプタフルオロイソブチロニトリルよりも速く膜ユニットを透過するガス流の成分は、第1の透過ガス出口を通って膜分離ユニットを出ることができる。ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富むガスの成分は、第1の保持ガス出口を通って膜分離ユニットを出ることができる。ヘプタフルオロイソブチロニトリルよりも速く第1の膜ユニット50、250、350を透過するガス流の成分は、第1の透過ガス出口を通って第1の膜分離ユニット50、250、350を出る。ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富むガスの成分は、第1の保持ガス出口を通って第1の膜分離ユニット50、250、350を出る。同様に、第2の膜分離ユニット260、360は、第2の供給入口と、第2の透過ガス出口と、第2の保持ガス出口とを備える。第3の膜分離ユニット290、390が存在する場合、第3の膜分離ユニット290、390は、第3の供給入口と、第3の透過ガス出口と、第3の保持ガス出口とを備えることができる。
【0033】
このユニットおよびステップに適した膜は、ヘプタフルオロイソブチロニトリルを選択的に保持することができるが、N、COおよびOなどの希釈ガスの成分を通過させることを可能にする。加えて、膜は、ガス成分と非反応性でなければならない。
【0034】
この分離に使用するのに好ましい膜は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、アルキル置換芳香族ポリエステル、ならびにポリエーテルスルホン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、フッ素化芳香族ポリイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミドのブレンドであり得る。
【0035】
次に、第1の透過流54、254、354は、第2の膜分離ユニット60、260、360内の第2の膜と接触され得る。このステップにより、希釈ガスに富む第1の透過流の分離および精製が可能になる。第1の透過流に残っているヘプタフルオロイソブチロニトリルは、この膜分離ステップまたは後続の膜分離ステップで除去することができる。
【0036】
ヘプタフルオロイソブチロニトリル膜濃縮ステップは、必要な回数だけ繰り返され、ヘプタフルオロイソブチロニトリルの所望の濃度に濃縮された流出流を得ることができる。これは、保持流52、252、352を最初の膜濾過ステップから追加の膜分離ユニットによる追加の膜分離ステップに供することによって発生させることができる。
【0037】
必要に応じてガス流の圧力を上げるために、圧縮機346を追加することによって圧力を制御することができる。
【0038】
透過流および保持流中のヘプタフルオロイソブチロニトリルの濃度は、FTIRまたはGC-MSなどの通常の方法によって監視することができる。追加の膜分離ユニットは、直列に設置されてもよい。
【0039】
少なくとも第1および第2の膜分離ユニットからの保持流52、252、352および62、262、362、ならびに後続の膜分離ステップおよびユニットを組み合わせて、組み合わされた保持流56、256、356を形成することができる。
【0040】
図3のように、膜ユニット350および360からの透過流は、組み合わされ、膜ユニット390を介してさらなる膜精製に供され得る。
【0041】
膜分離ステップは、約5℃~約100℃で行われ得る。好ましくは、温度は、約10℃~80℃である。より好ましくは、温度は、約20℃から約25℃~約60℃である。
【0042】
膜分離ユニットを通る流量は、分離に利用可能な膜のmあたり約0から10Nm/hまで変化し得る。流量は、約10-4~約10Nm/h-mの範囲であり得る。流量範囲は、約0.1~約0.5Nm/h-mであり得る。
【0043】
第1および第2の膜分離ユニットを使用するヘプタフルオロイソブチロニトリルおよび希釈ガスの精製は、価値のあるヘプタフルオロイソブチロニトリルの精製および回収、ならびに希釈ガスの精製を可能にする。
【0044】
第2の透過流264、364は、有機金属フレームワーク(MOF)ユニット266、366内のMOF材料との接触に供され、COが枯渇したガス流を得ることができる。MOFは、微孔性の固体であり、有機配位子に配位した金属原子の多次元構造である。金属は、鉄またはニッケルであり得る。鉄またはニッケルは、非常に高い内部表面積および規則正しい細孔チャネルを有する構造材料である。第2の透過流264、364がCO、OおよびCOを含有していた場合、MOFを出る流れはCOおよびOのみを含有しており、大気中に放出される可能性がある。MOFユニット266、366はまた、EP3404686号に記載されているような、COをCOに変換するためのセリアベースの触媒を含んでもよい。したがって、本出願の精製方法は、ヘプタフルオロイソブチロニトリルの精製および濃縮を可能にするだけでなく、放出され得るような希釈ガスの精製も可能にする。
【0045】
次に、ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む保持流82、282、382を乾燥ステップに供し、流れから水を除去することができる。乾燥ステップは、乾燥ユニット70、270、370を使用して行うことができる。適切な乾燥ユニット70、270、370は、3Aゼオライトを含むユニットであり得る。
【0046】
次に、乾燥したヘプタフルオロイソブチロニトリル流をさらなる濾過ステップに供し、フィルタユニット80、280、380で副産物を除去することができる。フィルタユニット80、280、380内の材料は、ガス混合物から分解副産物を除去するのに適している。適切な材料には、モレキュラシーブ、ソーダライム、および活性アルミナが挙げられる。好ましくは、材料は、ゼオライトである。より好ましくは、材料は、ゼオライト5Aである。この濾過ステップの温度および流量は、最初の副産物濾過ステップと同じ範囲にある。
【0047】
最後の副産物トラップフィルタを出る流出流は、ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富んでいる。好ましくは、濃縮された流れは、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%のヘプタフルオロイソブチロニトリルを含む。
【0048】
上述の本発明の各態様のすべての特徴は、必要な変更を加えて本発明の他の態様に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 使用済み絶縁ガス混合物
20 微粒子フィルタ
22 微粒子物質が枯渇したガス流
24 スクラバ(吸収剤)ユニット
26 ガス流
30 フィルタ(スクラバ)ユニット、副産物トラップフィルタ
32 ガス流
40 ガス圧力調節ユニット、第1の吸着剤ユニット
42 ガス混合物、流れ
50 第1の膜分離ユニット、第1の膜ユニット
52 保持流
54 第1の透過流
56 組み合わされた保持流
60 第2の膜分離ユニット
62 保持流
70 乾燥ユニット
80 フィルタユニット
82 ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む保持流
210 使用済み絶縁ガス混合物
220 微粒子フィルタ
224 スクラバ(吸収剤)ユニット
226 ガス流
230 フィルタ(スクラバ)ユニット、副産物トラップフィルタ
232 ガス流
240 ガス圧力調節ユニット、第1の吸着剤ユニット
242 ガス混合物、流れ
250 第1の膜分離ユニット、第1の膜ユニット
252 保持流
254 第1の透過流
256 組み合わされた保持流
260 第2の膜分離ユニット
262 保持流
264 第2の透過流
266 有機金属フレームワーク(MOF)ユニット
270 乾燥ユニット
280 フィルタユニット
282 ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む保持流
290 第3の膜分離ユニット
300 装置
310 使用済み絶縁ガス混合物
320 微粒子フィルタ
324 スクラバ(吸収剤)ユニット
326 ガス流、圧縮機
330 フィルタ(スクラバ)ユニット、副産物トラップフィルタ
332 ガス流
340 ガス圧力調節ユニット、第1の吸着剤ユニット
342 ガス混合物、流れ
350 第1の膜分離ユニット、第1の膜ユニット
352 保持流
354 第1の透過流
356 組み合わされた保持流
360 第2の膜分離ユニット
362 保持流
364 第2の透過流
366 有機金属フレームワーク(MOF)ユニット
370 乾燥ユニット
380 フィルタユニット
382 ヘプタフルオロイソブチロニトリルに富む保持流
390 第3の膜分離ユニット、膜ユニット
図1
図2
図3