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特許7580991空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20241105BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B29D30/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020156075
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049832
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 法行
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0143764(US,A1)
【文献】特開2017-3076(JP,A)
【文献】特開2010-047053(JP,A)
【文献】特開2009-279961(JP,A)
【文献】特開2009-220813(JP,A)
【文献】特開2005-262920(JP,A)
【文献】特開2005-138760(JP,A)
【文献】特開2005-254924(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B29D 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ本体と、
板状で一面側の長手方向の寸法が他面側の寸法よりも小さい発泡材料で形成されており、前記他面側を外周側にして前記タイヤ本体の内腔面に貼り付けられてリング状をなし、長手方向の両端面が突き合わされて固着された少なくとも1つの制音材と、
を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記制音材は、前記両端面のうち少なくとも一方がテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記両端面は、前記他面側が張り出す同じ傾斜角のテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記制音材は、前記他面側の長手方向の寸法が前記タイヤ本体の内周長の100%以上105%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ本体と、
板状で長手方向に沿う両側辺のうち一方の側辺の寸法が他方の側辺よりも小さい発泡材料で形成されており、前記タイヤ本体の軸方向における中央に対して外側に前記一方の側辺を、中央側に前記他方の側辺を配設して前記タイヤ本体の内腔面に貼り付けられてリング状をなし、長手方向の両端面が突き合わされて固着された少なくとも1つの制音材と、
を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記両端面は、前記他方の側辺部が張り出す同じ傾斜角のテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記制音材は、一面側の長手方向の寸法が他面側の寸法よりも小さく、前記他面側を外周側にして前記タイヤ本体の内腔面に貼り付けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記制音材は、前記タイヤ本体の軸方向に2つ以上を並べて配設されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
発泡材料でなる断面矩形状の細長く延びる制音材素材を軸方向に対して直角から所定角度傾斜させた面で切断する第1切断工程と、
前記第1切断工程による切断位置から前記制音材素材を所定寸法取って切断位置を設定する採寸工程と、
前記第1切断工程と反対方向に前記所定角度傾斜させた面で前記制音材素材を切断する第2切断工程と、
前記第2切断工程によって形成された制音材を空気入りタイヤのタイヤ内腔面に貼り付けるとともに、前記第1切断工程および前記第2切断工程によって形成された前記制音材の両端面を突き合わせ前記両端面を接着する貼付け工程と、
を備えることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制音材を設けた空気入りタイヤ、および空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着された空気入りタイヤは、車両の走行によってタイヤ内腔の空気によって空洞共鳴が発生する。タイヤの空洞共鳴によって生じた音は、車両に伝わり、車室内では騒音となるため、低減化のためにタイヤ空洞共鳴対策が講じられてきた。
【0003】
特許文献1には、空気入りタイヤと、そのタイヤ内腔面に装着された制音具とからなる従来の制音具付き空気入りタイヤが記載されている。制音具は、タイヤ周方向に沿って配された長尺のスポンジ材の端面を突き合わせることによって環状に形成される。制音具は、スポンジ材の端面を突き合わせた突合面が、実質的に平面に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-202856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の制音具付き空気入りタイヤでは、長尺のスポンジ材をタイヤ内腔面に添うように周方向に配設した際に、スポンジ材の端面において変形が生じることが考慮されていなかった。即ち、タイヤ内腔面に添うように周方向に配設したスポンジ材の端面は、内周側の部分が外周側の部分よりもスポンジ材の軸線方向に突出し、端面どうしを突き合わせると内周側の重なった部分が圧縮変形して周方向に均一な状態とすることができず、重量のアンバランスやスポンジ材の耐久性低下による制音性能の劣化が懸念される。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制音性能を良好とすることができる空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は空気入りタイヤである。空気入りタイヤは、タイヤ本体と、板状で一面側の長手方向の寸法が他面側の寸法よりも小さい発泡材料で形成されており、前記他面側を外周側にして前記タイヤ本体の内腔面に貼り付けられてリング状をなし、長手方向の両端面が突き合わされて固着された少なくとも1つの制音材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様の空気入りタイヤは、タイヤ本体と、板状で長手方向に沿う両側辺のうち一方の側辺の寸法が他方の側辺よりも小さい発泡材料で形成されており、前記タイヤ本体の軸方向における中央に対して外側に前記一方の側辺を、中央側に前記他方の側辺を配設して前記タイヤ本体の内腔面に貼り付けられてリング状をなし、長手方向の両端面が突き合わされて固着された少なくとも1つの制音材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の別の態様は空気入りタイヤの製造方法である。この製造方法は、発泡材料でなる断面矩形状の細長く延びる制音材素材を軸方向に対して直角から所定角度傾斜させた面で切断する第1切断工程と、前記第1切断工程による切断位置から前記制音材素材を所定寸法取って切断位置を設定する採寸工程と、前記第1切断工程と反対方向に前記所定角度傾斜させた面で前記制音材素材を切断する第2切断工程と、前記第2切断工程によって形成された制音材を空気入りタイヤのタイヤ内腔面に貼り付ける貼付け工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制音性能を良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る制音材を備える空気入りタイヤの縦断面を示す断面図である。
図2図2(a)はタイヤ内腔に配設した状態の制音材の外観を示す斜視図であり、図2(b)は配設前の制音材の側面図であり、図2(c)は配設前の制音材の平面図である。
図3図3(a)は制音材の端面部分の拡大図であり、図3(b)は比較例における端面部分の拡大図である。
図4図4(a)~図4(c)は変形例に係る制音材の側面図である。
図5図5(a)は実施形態2に係る配設前の制音材の平面図であり、図5(b)は配設前の制音材の側面図である。
図6】制音材を貼り付けた空気入りタイヤの縦断面の一部を示す断面図である。
図7】2つの制音材を貼り付けた空気入りタイヤの縦断面の一部を示す断面図である。
図8図8(a)は実施形態3に係る配設前の制音材の平面図であり、図8(b)は配設前の制音材の側面図である。
図9】実施形態4に係る空気入りタイヤの製造方法を示すフローチャートである。
図10図10(a)および図10(b)は、制音材素材の裁断について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図10を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る制音材を備える空気入りタイヤの縦断面を示す断面図である。空気入りタイヤ1は、タイヤ本体10、ホイール20および制音材30を備える。タイヤ本体10は、リング状に形成されたトレッド部11によって地面に接触する。トレッド部11の軸方向(タイヤの幅方向)の両端に連続してサイド部12が設けられ、サイド部12のホイール20側の端部にビード部13が形成されている。
【0014】
タイヤ本体10の中央部にはホイール20が嵌め合わされている。ホイール20は、車軸を連結するハブ部21を中心にして、ディスク部22が放射状に延びて円筒状をなすリム部23を支持している。リム部23にタイヤ本体10のビード部13が嵌め合わされる。タイヤ本体10およびリム部23によって囲まれたタイヤ内腔14に空気が充填されている。
【0015】
制音材30は、トレッド部11のタイヤ内腔14側の面であるタイヤ内腔面14aに接着剤40によって貼り付けられている。制音材30は、発泡材料で形成されたスポンジであり、多数の気孔を備え、外部の空気との通気性を有する連続気泡体である。制音材30は、例えば軟質ウレタンフォーム製であり、空気入りタイヤ1における重量バランスの観点から密度60kg/m以下のものが好ましく、密度40kg/m以下のものがより好ましい。また、制音材30は、耐久性の観点から引っ張り強さが30kPa以上で、引き裂き強度が2.0N/cm以上(JIS K 6400-5)のものが好ましい。制音材30は、少なくとも1つの部材でタイヤ内腔面14aにリング状に配設される。制音材30は、2つ以上の部材でリングを構成するようにしてもよい。
【0016】
図2(a)はタイヤ内腔14に配設した状態の制音材30の外観を示す斜視図であり、図2(b)は配設前の制音材30の側面図であり、図2(c)は配設前の制音材30の平面図である。上述のように、制音材30は、タイヤ内腔面14aに配設した状態でリング状となる。制音材30は、外周面32が接着剤40によってタイヤ内腔面14aによって貼り付けられ、内周面31がタイヤ内腔14に臨む。尚、制音材30は、接着剤40を用いるほか、両面テープを用いて外周面32をタイヤ内腔面14aに貼り付けるようにしてもよい。接着剤40は、耐久性の観点からJIS K 6850におけるせん断接着強さとして0.1MPa以上の接着剤を使用することが好ましく、0.3MPa以上のものがより好ましい。
【0017】
図2(b)に示すように、制音材30は、タイヤ内腔14に配設される前の状態では、細長い板状となっている。制音材30は、一面側である内周面31の長手方向における寸法が、他面側である外周面32よりも小さくなっている。制音材30は、長手方向における両端の端面33aおよび端面33bがテーパ状に形成されている。制音材30の端面33aおよび端面33bは、内周面31側に対して外周面32側が長手方向に外側に張り出しており、逆向きの同じテーパ角θを有している。
【0018】
また制音材30の外周面32の長手方向の寸法は、タイヤ内腔面14aの内周長の100%以上105%以下とし、制音材30のタイヤ内腔面14aへの貼り付けの際に端面間にすきまが生じないようにするとよい。
【0019】
図3(a)は制音材30の端面部分の拡大図であり、図3(b)は比較例における端面部分の拡大図である。図3(a)に示すように、制音材30は、タイヤ内腔面14aに配設された状態で、端面33aおよび端面33bがほぼ平行に突き合わされ、接着剤41によって固着されている。制音材30の端面33aおよび端面33bは、接着剤41を用いるほか、両面テープを用いて固着されていてもよい。
【0020】
図3(b)の比較例では、制音材30の端面33aおよび端面33bがテーパ角θ=0、即ち、長手方向に直交する面として形成されている。この場合、制音材30をタイヤ内腔面14aに貼り付けると、端面33aおよび端面33bの内周面31側が外周面32側よりも張り出して重なることになり、端面33aおよび端面33bどうしを固着させると圧縮変形することになる。
【0021】
次に空気入りタイヤ1の動作について制音材30に着目して説明する。制音材30は、上述のように単独では細長い板状であり、端面33aおよび端面33bがともにテーパ角θの傾斜を有するように形成されている。制音材30は、タイヤ内腔面14aに貼り付けられる際に端面33aおよび端面33bの部分において変形する。
【0022】
制音材30の端面33aおよび端面33bは、制音材30をリング状としたときに、内周面31側が外周面32側よりもタイヤ周方向(制音材30の長手方向に相当)に張り出すように変形し、突き合わされた状態で平行となる。
【0023】
制音材30の端面33aおよび端面33bは、突き合わされた状態で平行となることで、図3(b)に示したような端面どうしの重なりによる圧縮変形がなく接着剤41によって固着させることができる。制音材30は、端面33aおよび端面33bでの圧縮変形を抑制することで、周方向における密度をほぼ均一とすることができ、重量のアンバランスを生じにくく、また制音材30の劣化を抑制し、制音性能を良好とすることができる。
【0024】
図4(a)~図4(c)は変形例に係る制音材30の側面図である。図4(a)に示す制音材30は、端面33aが長手方向に対して直交する面となっている。制音材30の端面33bは、外周面32側が内周面31側よりも外側に張り出すテーパ状となっており、内周面31の長手方向の寸法が外周面32よりも小さくなっている。
【0025】
図4(b)に示す制音材30は、端面33aおよび端面33bともに、外周面32側が内周面31側よりも外側に張り出すテーパ状となっているが、それぞれのテーパ角θ1とθ2とが異なるものとなっている。制音材30は、内周面31の長手方向の寸法が外周面32よりも小さくなっている。
【0026】
図4(c)に示す制音材30の端面33aは、内周面31側が外周面32側よりも外側に張り出すテーパ状となっている。端面33bは、外周面32側が内周面31側よりも外側に張り出すテーパ状となっている。端面33aのテーパ角θ1は、端面33bのテーパ角θ2よりも小さくなっており、内周面31の長手方向の寸法が外周面32よりも小さくなっている。
【0027】
図4(a)~図4(c)の各場合において、制音材30をタイヤ内腔面14aに配設したときに制音材30の内周面31が端面33aおよび端面33bで張り出すように変形し、端面どうしを突き合わせた際の重なりが抑制される。
【0028】
(実施形態2)
図5(a)は実施形態2に係る配設前の制音材30の平面図であり、図5(b)は配設前の制音材30の側面図である。制音材30は、長手方向に沿う両側辺のうち一方の側辺34の寸法が、他方の側辺35よりも小さくなるように形成されている。端面33aおよび端面33bは、側辺35側が側辺34側よりも長手方向に外側へ張り出すようにテーパ状に形成されており、各端面の同じテーパ角θを有する。
【0029】
図6は、制音材30を貼り付けた空気入りタイヤ1の縦断面の一部を示す断面図である。タイヤ内腔面14aは、タイヤの軸方向における中央部での円周の長さが、サイド部12に近い中央部から外側の位置における円周の長さよりも大きくなっている。制音材30は、側辺35を中央部寄りの位置に配設し、側辺34を中央部から外側の位置に配設するようにして、タイヤ内腔面14aに貼り付けられている。尚、制音材30は、少なくとも1つの部材でタイヤ内腔面14aにリング状に配設される。制音材30は、2つ以上の部材でリングを構成するようにしてもよい。
【0030】
側辺34の寸法が、他方の側辺35よりも小さくなるように形成されているので、制音材30の端面33aおよび端面33bは、タイヤ内腔面14aに貼り付けた際に、ほぼ平行となり、重なりによる圧縮変形を抑制することができる。制音材30は、端面33aおよび端面33bでの圧縮変形を抑制することで、周方向における密度をほぼ均一とすることができ、重量のアンバランスを生じにくく、また制音材30の劣化を抑制し、制音性能を良好とすることができる。
【0031】
図7は、2つの制音材30を貼り付けた空気入りタイヤ1の縦断面の一部を示す断面図である。2つの制音材30は、側辺35が向かい合うように配設されている。尚、図7に示す2つの制音材30は、それぞれ側辺34の寸法が他方の側辺35よりも小さくなるように形成されており、突き合わされる端面33aおよび端面33bの重なりを抑制することができる。制音材30は、2つ以上をタイヤの軸方向に並べて配置する。図7に示すように制音材30の向かい合う側辺は、間隔を空けて並べることが好ましい。制音材30の向かい合う側辺を突き合わせて側辺どうしが接触するように配置してもよいが、この場合は、突き合わされる側辺どうしを接着等によって固着させると擦れ合いによる摩耗を抑制することができる。
【0032】
(実施形態3)
図8(a)は実施形態3に係る配設前の制音材30の平面図であり、図8(b)は配設前の制音材30の側面図である。制音材30は、長手方向に沿う両側辺のうち一方の側辺34の寸法が、他方の側辺35よりも小さくなるように形成されている。端面33aおよび端面33bは、側辺35側が側辺34側よりも長手方向に外側へ張り出すようにテーパ状に形成されている。
【0033】
また、制音材30は、内周面31の長手方向の寸法が外周面32よりも小さくなるように形成されている。制音材30は、図6および図7と同様に、タイヤ内腔面14aに軸方向における中央部から外側に貼り付けられた際に端面33aおよび端面33bでの重なりが少なく、重なりによる圧縮変形を抑制することができる。制音材30は、端面33aおよび端面33bでの圧縮変形を抑制することで、周方向における密度をほぼ均一とすることができ、重量のアンバランスを生じにくく、また制音材30の劣化を抑制し、制音性能を良好とすることができる。
【0034】
(実施形態4)
実施形態4では、制音材30の裁断およびタイヤ内腔面14aへの貼り付けに関する製造方法について説明する。図9は実施形態4に係る空気入りタイヤ1の製造方法を示すフローチャートである。図9では、主として空気入りタイヤ1における制音材30に関わる工程を示している。空気入りタイヤ1の製造に当たって、タイヤ本体10およびホイール20は予め製造されているものとする。また、タイヤ本体10のタイヤ内腔面14aへ制音材30を貼り付けるため、タイヤ内腔面14aに付着している離型剤の除去等の内面処理工程も完了しているものとする。
【0035】
制音材30は、発泡材料でなる断面矩形状の細長く延びる制音材素材を裁断して形成される。制音材素材は例えばロールやシート状に形成されている。図9に示すステップS1からステップS3は裁断工程を示しており、裁断工程は、第1切断工程、採寸工程および第2切断工程を含む。第1切断工程では、制音材素材を、素材の軸方向に対して直角から所定角度傾斜させた面で切断する(S1)。採寸工程は、第1切断工程による切断位置から制音材素材を所定寸法取って次の切断の切断位置を設定する(S2)。第2切断工程では、第1切断工程と反対方向に前記所定角度傾斜させた面で制音材素材を切断する(S3)。
【0036】
図10(a)および図10(b)は、制音材素材の裁断工程について説明するための模式図である。図10(a)および図10(b)において、制音材素材の切断方向は矢印で示されており、矢印Aによる切断方向により第1切断工程を、矢印Bによる切断方向により第2切断工程を行う。第1切断工程、採寸工程および第2切断工程を繰り返すことによって制音材素材から制音材を切り出していくことができる。図10(a)に示す裁断工程では、切断による端材は無く、図10(b)に示す裁断工程では切断による端材が生じる。
【0037】
第1切断工程および第2切断工程では、切断する角度が異なるため、切断する刃の角度を変える切断装置、または角度の異なる刃を2つ備える切断装置を用いる。
【0038】
タイヤ本体10および制音材30は、貼り付け用の装置へ取り付けられる(S4)。貼り付け用の装置としては、タイヤ本体10のビード部13部分の内径よりも制音材30を小さくしてタイヤ内腔14に挿入するために、例えば、アームやピンによって制音材30を保持しつつ、ローラ等で制音材30をリング状に巻き取るようなカートリッジ形式とするとよい。制音材30は、内周面31と外周面32とを有しているため、裁断方法によっては、制音材30の上下反転や逆方向でのカートリッジへの巻き取りなどの工程が必要となる。
【0039】
次に接着層の生成工程では、タイヤ内腔面14aまたは制音材30の外周面32に接着剤40による接着層を生成する(S5)。制音材30の貼付け工程では、接着層の生成後、タイヤ内腔面14aまたは制音材30の外周面32を接着する(S6)。突き合わせ面の接着工程では、制音材30の端面33aおよび端面33bを突き合わせて、接着剤41によって接着する(S7)。次に検査工程では、制音材30が規定通りにタイヤ内腔面14aに貼り付けられているかを検査し(S8)、制音材30のタイヤ内腔面14aへの貼り付けを終了する。制音材30を貼り付けたタイヤ本体10は、ホイール20に嵌め合わされ、空気入りタイヤ1の製造が完了する。
【0040】
制音材30は、上述の各実施形態に示したように端面33aおよび端面33bが適宜テーパ状に形成されているが、図10(a)および図10(b)に示すように簡便に制音材素材から切り出すことができる。また、貼り付け用の装置は、制音材30の切り出し方に応じて制音材30の向きなどを調整することで、タイヤ内腔面14aへの貼り付けを可能とする。
【0041】
次に実施形態および変形例に係る空気入りタイヤ1、および空気入りタイヤ1の製造方法の特徴について説明する。
空気入りタイヤ1は、タイヤ本体10と少なくとも1つの制音材30を備える。制音材30は、板状で一面側の長手方向の寸法が他面側の寸法よりも小さい発泡材料で形成されている。制音材30は、他面側を外周側にしてタイヤ内腔面14aに貼り付けられてリング状をなし、長手方向の両端面が突き合わされて固着されている。これにより、空気入りタイヤ1は、長手方向の両端面の重なりが抑制され、制音性能を良好とすることができる。
【0042】
また制音材30は、両端面のうち少なくとも一方がテーパ状に形成されている。これにより、空気入りタイヤ1は、少なくとも一方のテーパ状の端面によって、両端面の重なりを抑制することができる。
【0043】
また両端面は、他面側が張り出す同じ傾斜角のテーパ状に形成されている。これにより、空気入りタイヤ1は、両端面において同等の形状とすることができる。
【0044】
また制音材30は、他面側の長手方向の寸法がタイヤ本体10の内周長の100%以上105%以下である。これにより、空気入りタイヤ1は、制音材30を貼り付ける際に両端面間にすきまが生じ難くすることができる。
【0045】
空気入りタイヤ1は、タイヤ本体10と少なくとも1つの制音材30を備える。制音材30は、板状で長手方向に沿う両側辺のうち一方の側辺の寸法が他方の側辺よりも小さい発泡材料で形成されている。制音材30は、タイヤ本体10の軸方向における中央に対して外側に前記一方の側辺を、中央側に前記他方の側辺を配設してタイヤ内腔面14aに貼り付けられてリング状をなし、長手方向の両端面が突き合わされて固着されている。これにより、空気入りタイヤ1は、長手方向の両端面の重なりが抑制され、制音性能を良好とすることができる。
【0046】
また両端面は、他方の側辺部が張り出す同じ傾斜角のテーパ状に形成されている。これにより、空気入りタイヤ1は、両端面において同等の形状とすることができる。
【0047】
また制音材30は、一面側の長手方向の寸法が他面側の寸法よりも小さく、他面側を外周側にしてタイヤ内腔面14aに貼り付けられている。これにより、空気入りタイヤ1は、長手方向の両端面の重なりがさらに抑制され、制音性能を良好とすることができる。
【0048】
また制音材30は、タイヤ本体10の軸方向に2つ以上を並べて配設されている。これにより、空気入りタイヤ1は、タイヤ内腔面14aの軸方向における中央部を境にして制音材30を設けて長手方向の両端面の重なりを低減することができる。
【0049】
空気入りタイヤ1の製造方法は、第1切断工程、採寸工程、第2切断工程および貼付け工程を備える。第1切断工程は、発泡材料でなる断面矩形状の細長く延びる制音材素材を軸方向に対して直角から所定角度傾斜させた面で切断する。採寸工程は、第1切断工程による切断位置から制音材素材を所定寸法取って切断位置を設定する。第2切断工程と、第1切断工程と反対方向に所定角度傾斜させた面で制音材素材を切断する。貼付け工程は、第2切断工程によって形成された制音材30を空気入りタイヤ1のタイヤ内腔面14aに貼り付ける。この製造方法によれば、制音材30を簡便に裁断して形成することができ、制音材付きの空気入りタイヤ1の製造を容易化することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0051】
1 空気入りタイヤ、 10 タイヤ本体、 14a タイヤ内腔面(内腔面)、
30 制音材。
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