(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241105BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241105BHJP
B41J 2/365 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B41J2/14 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/365
(21)【出願番号】P 2020179313
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 壮平
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-103574(JP,A)
【文献】特開2007-168379(JP,A)
【文献】特開平09-123452(JP,A)
【文献】特開平08-108538(JP,A)
【文献】特開2006-181760(JP,A)
【文献】特開平07-125261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 2/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を印加することにより駆動され、記録媒体に画像を形成するための複数の
グループに分けて設けられた複数の記録素子と、前記
グループ毎に設けられ、基板に加温を行うための複数の加温素子と、を備え、前記複数の記録素子へ電力を供給するラインの一部と前記複数の加温素子へ電力を供給するラインの一部とが共通している基板を有する記録ヘッドを用いて記録を行う記録装置であって、
前記基板に前記グループ毎に設けられた複数の温度検出素子と、
前記複数の記録素子と前記複数の加温素子のうち、同時に電圧を印加する記録素子と加温素子の数についての情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づいて、前記記録素子に加える電力の制御を行う制御手段と、をさらに備え
、
前記制御手段は、前記複数の温度検出素子の平均温度もしくは最低温度と目標温度に基づいて前記記録素子に印加する時間に関する設定を変更することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記加温素子は、前記温度検出素子が検出した温度に基づいて制御されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記取得手段は、同時に電圧印加する記録素子の数と、その時に加温素子に電圧印加されている数に対し、それぞれに係数を掛けた値を加算する演算回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は前記情報に基づいて、前記記録素子に印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記情報に基づいて、前記記録素子に印加する時間を制御することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、前記記録素子である発熱素子と接したインクを瞬間的に沸騰させて生じた気泡の膨張によって、吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録する事を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、前記記録素子である発熱素子を選択的に発熱させてインクリボンのインクを記録媒体に記録する事を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドは、前記記録素子である発熱素子を選択的に発熱させて熱を加えることで色が変化する感熱紙に記録することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドを搭載し、前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動するキャリッジと、キャリッジの位置情報を検出する手段を有し、前記位置情報からインク吐出タイミングを決めることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドは前記複数の記録素子が記録媒体の記録幅以上に渡って配列されているフルライン型の記録ヘッドであり、前記複数の記録素子を用いた記録と、前記記録媒体の搬送とによって、前記記録媒体に画像が形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液体(インク)を吐出して記録媒体に画像を記録する記録装置の1つとして、インク吐出用の記録ヘッドを搭載したサーマル方式のインクジェット記録装置がある。
【0003】
サーマル方式のインクジェット記録装置では、エネルギ発生素子である発熱抵抗体(以下吐出ヒータと呼ぶ)にパルス電圧(以下ヒートパルスと呼ぶ)を印加し、吐出ヒータと隣接したインク室のインクを瞬間的に沸騰させて気泡を生じさせる。生じた気泡の膨張(膜沸騰)によって、吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録する。記録ヘッドは、半導体基板上(以下ヒータボードと呼ぶ)に吐出ヒータを複数配置し、各吐出ヒータの駆動回路等も含めて形成したものを用いている。
【0004】
特許文献1では記録データから同時にヒートする数を計測し、電圧変動量を推定し電圧変動量を加味したヒートパルスで吐出ヒータを駆動するようにしている。
【0005】
一方、ヒータボードに設けた温度検出素子(以下ダイオード温度センサと呼ぶ)の情報を元に、ヒータボード上の吐出ヒータとは別に設けた加熱素子であるヒータ(以後サブヒータと呼ぶ)を駆動し、間接的にインクを加温することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、サブヒータ用の電源配線と吐出ヒータ用の電源配線を共通にする事で基板面積の増加を抑える構成をとった場合には以下のようなことが想定される。
【0008】
サブヒータの制御は画像記録のためにインクを吐出している最中も必要である。サブヒータに電流を流す量の変化が電源配線の電圧降下量変化に現れ、吐出ヒータに加わる電圧の変化によって、インクの吐出速度や吐出量変化が引き起こされ、画像品位に影響する可能性が考えらえる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電圧を印加することにより駆動され、記録媒体に画像を形成するための複数のグループに分けて設けられた複数の記録素子と、前記グループ毎に設けられ、基板に加温を行うための前記複数の加温素子と、を備え、前記複数の記録素子へ電力を供給するラインの一部と前記複数の加温素子へ電力を供給するラインの一部とが共通している基板を有する記録ヘッドを用いて記録を行う記録装置であって、前記基板に前記グループ毎に設けられた複数の温度検出素子と、前記複数の記録素子と前記複数の加温素子のうち、同時に電圧を印加する記録素子と加温素子の数についての情報を取得する取得手段と、前記情報に基づいて、前記記録素子に加える電力の制御を行う制御手段と、をさらに備え、前記制御手段は、前記複数の温度検出素子の平均温度もしくは最低温度に基づいて前記記録素子に印加する時間に関する設定を変更することを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録ヘッドのサブヒータの駆動に伴う画像の品位への影響を抑制しながら記録を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用可能な画像記録装置の記録部の斜視図である。
【
図2】本発明を適用可能な画像記録装置のブロック図である。
【
図3】記録ヘッド駆動信号生成回路の詳細なブロック図である。
【
図4】記録ヘッド内部の制御回路のブロック図である。
【
図5】記録ヘッドを制御する信号のタイミングチャートである。
【
図6】CPUが記録ヘッドを制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態のインクジェット方式に従って記録を行なう記録ヘッドを備えた画像記録装置の主要部を斜めから見た斜視図である。
【0013】
記録ヘッド1を搭載したキャリッジユニット2を矢印Mの方向に移動させ、次いで記録媒体3を⇒Mの方向と交差する搬送方向(ここではSの方向)に所定ピッチ毎の搬送を行い、これを繰り返す。これらの動きと同期させて記録ヘッド1から選択的にインクを吐出させ、記録媒体3に付着させることで文字や画像を形成するシリアル方式の記録装置である。なお、キャリッジユニットは矢印Mの方向に往復移動可能である。
【0014】
キャリッジ2はモータ4に結合されたタイミングベルト5に一部が固定されており、モータ4の回転に応じ矢印M方向に往復移動可能である。また、キャリッジ2には、エンコーダフィルム6の位置情報を読み取るためのエンコーダ7が設けられている。エンコーダ7の位置情報でモータ4を制御して、キャリッジユニット2の移動方向、移動速度、移動距離を制御する。また、エンコーダ7の位置情報から記録ヘッド1のインク吐出タイミングを決める記録ヘッド制御部を持っている。
【0015】
図2は記録ヘッド制御部の接続関係を示すブロック図である。記録ヘッド制御部8は
図1の記録ヘッド1とエンコーダ7と接続しており、記録ヘッドへの電力供給をするフレキシブルフラットケーブル(以下FFC)9-aと記録ヘッド制御信号が通るFFC9-bで構成している。
【0016】
記録ヘッド1の基板であるヒータボードは、インクを吐出するための熱エネルギを発生する複数の吐出ヒータとヒータ駆動回路、記録ヘッド1を保温するための加温素子である複数のサブヒータとヒータ駆動回路を備えている。さらに、記録ヘッド1の温度を検出する温度検出素子である複数のダイオード温度センサと制御回路とインターフェース回路を実装したヒータボードとインクの流路形成部材で構成されている。
【0017】
本実施形態ではヒータボード上に1列あたり640個のインク吐出口を持つノズル列を6列配置したものを例に説明をする。この熱エネルギによりインクを瞬間的に沸騰させて生じた気泡の膨張によって、吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行う。
【0018】
記録ヘッド制御部8には、CPU80と記録装置内の温度を測定するサーミスタ81と記録ヘッド1を駆動する情報及び信号を生成する記録ヘッド駆動信号生成回路82と画像データ等を蓄えるメモリ83を備えている。
【0019】
図3は記録ヘッド駆動信号生成回路82の詳細を説明するブロック図である。ヒータボード上に複数あるダイオード温度センサの中から一つを選択するためのダイオード温度センサ選択レジスタ821と、複数あるサブヒータの電圧印加のON/OFFを個々に制御するサブヒータ制御レジスタ822が設けられている。
【0020】
CPU80は記録ヘッドの各部の温度を目標値に上げるために、ダイオード温度センサを一定間隔で切り替える為にダイオード温度センサ選択レジスタ821にダイオード温度センサ番号を書き換えては温度を読み出す。そして、選択したダイオード温度センサ位置に相当するサブヒータに電圧を印加するか否かを判断し結果をサブヒータ制御レジスタ822に書き込み保温制御を行う。
【0021】
さらに記録ヘッド駆動信号生成回路82には、エンコーダ7から来る吐出タイミング信号(以下ラッチ信号、またはLTと記載する)に同期してメモリ83から画像データを読み出し吐出ヒータで記録するデータを生成する吐出データ生成回路823が設けられている。そして、吐出を行う吐出ヒータに最適なヒートパルスを加えるためのヒートパルスデータ生成回路824を備えている。
【0022】
ダイオード温度センサ選択レジスタ821、サブヒータ制御レジスタ822、吐出データ生成回路823、ヒートパルスデータ生成回路824の各出力データは、転送データ生成回路825に入力される。そして、画像データと制御コードをシリアルデータに変換して記録ヘッド1に転送する。
【0023】
記録ヘッド1の各ノズル列のインク吐出は、シリアルクロック信号(CLK)同期のデータ信号(Data1~Data6)線で伝送される画像データと制御コードをインク吐出タイミング信号であるラッチ信号(LT)で取り込み、吐出制御を行う。
【0024】
上記の信号を受ける記録ヘッド1の動作を、
図4の記録ヘッド内部の制御回路のブロック図と、
図5の制御信号のタイミングチャートで詳細に説明する。
【0025】
図4において、記録ヘッド1のヒータボードの内部には各ノズル列を制御する回路ブロック50として共通の回路である50-1、50-2から50-6の6個が用意されている。
【0026】
それぞれの回路ブロックは共通の制御信号であるシリアルクロック信号(CLK)、ラッチ信号(LT)、独立の制御信号であるデータ信号(Data1~Data6)、共通の温度状態信号であるダイオード温度センサ信号(DiA、DiK)を接続している。
【0027】
シリアルクロック信号(CLK)に同期して送られてきたData1の信号を122ビットのシフトレジスタで構成されたデータ受信回路101が蓄える。そして、ラッチ信号(LT)のタイミングでデータラッチ回路1、データラッチ回路2、データラッチ回路3、データラッチ回路4、データラッチ回路5に保持する。
【0028】
各ノズル列にある640個の吐出ヒータは16回に分けて駆動されるので、データラッチ回路1には1度に記録する40ビットのグループデータ(GDT)を保持し、データラッチ回路2には16個あるブロックの中から今回記録するブロックを選択する4ビットのブロックデータ(BDT)を保持する。
【0029】
グループデータ(GDT)とブロックデータ(BDT)を合わせたデータで記録する吐出ヒータの位置が選択される。
【0030】
データラッチ回路3は吐出ヒータに加える電力量をパルス信号で制御するパルス波形生成の情報として32ビットのヒートパルスデータ(HPD)を保持する。データラッチ回路4はヒータボードの加熱制御するサブヒータの位置情報として40ビットのサブヒートイネーブルデータ(SHE)を保持する。
【0031】
データラッチ回路5はノズル列に40個ある温度検出用ダイオード温度センサの中からどの1個を選択するかまたはどれも選択しないかの6ビットのダイオード温度センサ選択データ(DiSel)を保持する。
【0032】
データラッチ回路3の後段には、ヒートパルス生成回路104が接続されていて、内部にはカウンタと比較回と論理回路で構成されている。
【0033】
内部のカウンタはLT信号でゼロにリセットされ、CLK信号が変化する毎にカウントアップする。
【0034】
カウンタの値は入力された4個の8ビットデータPT0,PT1,PT2,PT3と比較する回路に接続し、値が等しくなった時にヒートパルス信号(HP)を反転出力する回路を備えている。
【0035】
データラッチ回路2の後段には、記録ブロック選択回路の106が接続されている。4ビットのブロック信号とヒートパルス生成回路104のヒートパルス信号(HP)を入力し、4to16デコーダで選択された1本のブロックヒートパルス信号線に入力したヒートパルス信号を出力する回路である。
【0036】
出力する制御信号は16本のブロック信号を一纏めにした信号が40個のグループヒートパルス(G1HPからG40HP)として出力され、各信号線は吐出ヒータに電圧印加するスイッチング素子108-1から108-40に接続している。
【0037】
吐出ヒータも16本のブロックを一纏めにしたグループ単位で109-1から109-40として配置されており、回路図のイメージが吐出ヒータの配列イメージと一致している。吐出ヒータはスイッチング素子108-1から108-40と電源ライン(VH)にそれぞれ接続している。
【0038】
吐出ヒータの各グループの近傍には温度測定用のダイオード温度センサ110-1から110-40を配置しており、各ダイオード温度センサは切り替え回路111に接続している。
【0039】
温度センサ切り替え回路111はダイオード温度センサ選択データ(DiSel)の値に基づいて接続を切り替える。例えばダイオード温度センサ選択データ(DiSel)が1の場合は以下のようにする。ヒータボードの端子DiAに接続した定電流源(約200uA、不図示)の電流をダイオード温度センサ110-1のアノード端子からカソード端子を介してヒータボードの端子DGに接続したグランドに流すように切り替える。この回路は選択されたダイオード温度センサにのみ電流を流す回路である。選択されたダイオード温度センサ110-1のアノード端子の電圧はヒータボードの端子MDiAに出力し、カソード端子の電圧はヒータボードの端子MDiKに出力するように切り替える。
【0040】
また、ダイオード温度センサ選択データ(DiSel)が0の場合は、いずれのダイオード温度センサ110にも電流を流さ無いように切り替える、MDiA端子及びMDiK端子は電気的にフローティングな状態に切り替える。
【0041】
ダイオード温度センサ110の両端電圧(MDiA-MDiK間)をCPU80が検知し、電圧―温度変換を行う。そして、吐出ヒータグループ111周辺温度が目標温度に到達していない場所に対して、吐出ヒータの各グループの近傍に配置したサブヒータ513-1から513-40の各々に電圧するためデータを転送する。転送されたデータはデータラッチ回路4に40ビットのデータ(GSHE)として保持される。
【0042】
GSHEの各ビットはスイッチング素子514-1から514-40のゲート信号として入力し、電源ライン(VH)と接続したサブヒータ513の他方の端子をドレイン端子にソース端子をグランド(GH)と接続する。そうする事で、サブヒータ513への電力印加を制御する。このようにサブヒータと吐出ヒータとは共通の電源ライン(VH)に接続されている。
【0043】
次に、入出力信号の関係を
図5のタイミングチャートで説明する。
【0044】
信号は上からラッチ信号(LT)で区間Aが一回に1列640ノズルの内の40ノズルを使ってインクを吐出する間隔で約3u秒である。続く区間Bから区間Pまでのラッチ信号(LT)16回分の区間Xで1列の全てのノズルを使って画像を記録する。
【0045】
次にシリアルクロック信号(CLK)とデータ信号(Data1)で、データ信号(Data1)の先頭40ビット分の区間41でグループデータ(GDT)が転送される。次の4ビット分の区間42でブロックデータ(BDT)が、次の32ビット分の区間43でヒートパルスの変化点ポジションデータ(PT0、PT1、PT2、PT3)が転送される。次の40ビット分の区間44でサブヒートイネーブルデータ(SHE)が、最後に6ビット分の区間44でダイオード温度センサ選択データ(DiSel)が転送される。以上がヒータボード1の入力信号で、各ノズル列にデータ信号が1本割り振られており、個別に制御データが転送されるが、
図5のタイミングチャートでは1ノズル列の制御信号を説明する。
【0046】
次からの信号はヒータボード1の内部信号のチャートで、PT0、PT1,PT2,PT3はデータラッチ回路3の出力で、ラッチ信号(LT)の立ち上がりで区間43に送られたデータをラッチしたものである。
【0047】
次のヒートパルス信号は、ヒートパルス生成回路104の中にあるシリアルクロック信号(CLK)の変化でカウントUPするカウンタの値とPT0の値を比較して一致すると立ち上がる。そして、次にカウンタの値とPT1の値を比較して一致すると立ち下がり、次にカウンタの値とPT2の値を比較して一致すると立ち上がり、次にカウンタの値とPT3の値を比較して一致すると立ち下がる回路により生成される。
【0048】
次のブロックデータ信号はデータラッチ回路2の出力で、ラッチ信号(LT)の立ち上がりで区間42に送られたデータをラッチしたものである。
【0049】
次のブロックヒートイネーブル信号BHE0からBHE15は、先のヒートパルス信号とデータブロック信号を入力とする記録ブロック選択回路106の出力である。16本あるブロックヒートイネーブル信号の中からデータブロック信号で選択された1本にヒートパルスを出力するものである。
【0050】
次のヒートデータはデータラッチ回路1の出力で、ラッチ信号(LT)の立ち上がりで区間41に送られたデータをラッチしたものである。
【0051】
次のサブヒートデータはデータラッチ回路4の出力で、ラッチ信号(LT)の立ち上がりで区間44に送られたデータをラッチしたもので、40個あるサブヒータ513-1から513-40に電圧印加を制御する115-1から115-40の制御信号である。
【0052】
吐出ヒータ1個に流れる電流は34mAで、1個のサブヒータに流れる電流は4.25mAである。ただしサブヒータはLT区間(3uS)常にONするのに対し、吐出ヒータはHEで制御する。そのため、約1/2の区間しか電流が流れない。よって吐出ヒータ1個に流れる平均電流は17mAとなるので、吐出ヒータ1個対サブヒータ1個の電流比は4対1となる。
【0053】
LT区間に吐出するデータ数であるヒートデータが1であるビットの加算数(最低0から最大40)に係数1(本実施形態では値として1)を掛けた値と、サブヒートデータが1であるビットの加算数(最低0から最大40)に係数2(本実施形態では値として0.25)を掛けた値を足した値がLT間に流れる電流の値となる。よって演算結果は最低0から最大50の値となる。
【0054】
この演算を回路にしたブロックが
図3の演算回路826である。吐出ヒータに流れる電流の係数1を蓄えているのが吐出ヒータ電流定数レジスタ827でサブヒータに流れる電流の係数2を蓄えているのがサブヒータ電流定数レジスタ828である。
【0055】
この値が大きいほど電流が多くなり、吐出ヒータの両端電圧はFFCの9-aの抵抗値とヒータボード1の配線抵抗値、そこに流れる電流により電圧降下量が決まる。そのため、ブロックヒートイネーブル信号のパルス幅が固定した状態で電圧降下量が大きいと投入エネルギ量が減るため、安定した吐出が出来なくなる。即ち、同時に電圧が印加される吐出ヒータとサブヒータの数に応じた電圧降下の影響が出る。
【0056】
そこで流れる電流からブロックヒートイネーブル信号のパルス幅を変更する為の変換表が表1となる。表は一例であるが吐出データ数とサブヒートデータ数を取得し、それらから求めた電流値の情報からブロックヒートイネーブル信号の変化点ポジションデータを導き出すものである。
【0057】
【0058】
この表1の動作を回路にしたのが
図3のヒートパルスデータ生成回路824である。
【0059】
吐出データ数とサブヒータのヒート数を演算し、表1にしたがってPT0,PT1,PT2,PT3の値を求める回路は記録ヘッド駆動信号生成回路82の中に備えている。
【0060】
この表による制御を
図5のタイミングチャートに当てはめる。区間Aはヒートデータ数が40個(ヒートデータ=“FFFFFFFFFF”)、サブヒート数が10個(サブヒートデータ=“1111111111”)で、電流演算結果は42.5となるので、PT0が1、PT1が14、PT2が37、PT3が120となる。
【0061】
この表の値はヒートパルス生成回路104にあるカウンタとの比較値で、カウンタクロックは50MHzを用いているので1カウント当たり0.02μ秒となるので、PT0からPT1の13クロック分(0.26μ秒)最初の電圧印加パルス幅となり、PT1からPT2の23クロック分(0.46μ秒)が電圧印加停止区間で、PT2からPT3の38クロック分(1.66μ秒)が2個目の電圧印加パルス幅である。
【0062】
次に区間Bではヒートデータ数が40個、サブヒート数が20個で、演算結果は45となるので、PT0が1、PT1が15、PT2が36、PT3が120となる。
【0063】
次に区間Cではヒートデータ数が40個、サブヒート数が30個で、演算結果は47.5となるので、PT0が1、PT1が15、PT2が35、PT3が120となる。
【0064】
次に区間Dではヒートデータ数が40個、サブヒート数が40個で、演算結果は50となるので、PT0が1、PT1が15、PT2が33、PT3が120となる。
【0065】
次に区間Nではヒートデータ数が10個、サブヒート数が40個で、演算結果は20となるので、PT0が1、PT1が12、PT2が44、PT3が120となる。
【0066】
次に区間Oではヒートデータ数が10個、サブヒート数が30個で、演算結果は17.5となるので、PT0が1、PT1が11、PT2が45、PT3が120となる。
【0067】
次に区間Pではヒートデータ数が10個、サブヒート数が20個で、演算結果は15となるので、PT0が1、PT1が11、PT2が46、PT3が120となる。
【0068】
ヒートパルスデータ生成回路824のテーブル参照回路はヒータボードの平均温度もしくは最低温度が目標としている保温温度より高くなった場合CPUにより書き換える。
【0069】
具体的にはヒートパルスのONしている時間を短くする設定値にする事で、吐出ヒータに余剰電力を加えないようにする。
【0070】
図6はCPUによるダイオード選択レジスタの書き換えとサブヒータの制御レジスタの書き換えとヒートパルスデータ生成回路824のテーブル参照値の書き換えシーケンスを示すフローチャートである。
【0071】
このフローチャートのシーケンスは設定した一定時間間隔(例えば1m秒)で実行される割込み処理内のルーチンである。
【0072】
まずステップS1で選択されているダイオード温度センサの値を読み込み温度変換を行う。
【0073】
ステップS2で目標温度(例えば40℃)と比較し、達していなければステップS3に進み現在選択されているダイオード温度センサ位置に対応するサブヒータをONにする設定をサブヒータ制御レジスタに書く。目標温度以上であればステップS4に進み、現在選択されているダイオード温度センサ位置に対応するサブヒータをOFFにする設定をサブヒータ制御レジスタに書く。
【0074】
ステップS5では次回に読み込むダイオード温度センサの番号をダイオード選択レジスタに書く。
【0075】
ステップS6では40個あるダイオード温度センサの値を一時記憶しその中から最低温度を算出する。
【0076】
ステップS7では最低温度と目標温度と比較し、達していなければステップS8に進みヒートパルスデータ生成回路824のテーブル参照レジスタにテーブル設定1を書く。目標温度以上であればステップS9に進みヒートパルスデータ生成回路824のテーブル参照レジスタにテーブル設定2を書く。
【0077】
以上の処理後割込みシーケンスを抜け、次の時間割込みを待つ。
【0078】
(その他の実施形態)
上述した形態では、吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録する方式の記録ヘッドをシリアルスキャンして画像生成を行う記録装置を例に説明したが、複数の記録素子が記録媒体の記録幅以上に渡って配列したフルライン型の記録ヘッドに適用してもよい。
【0079】
また、発熱素子を選択的に発熱させてインクリボンのインクを記録媒体に記録する方式の記録装置に適用してもよいし、熱により色が変化する感熱紙に記録する方式の記録装置に適用しても良い。