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特許7581011発光装置、表示装置、撮像装置、及び、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】発光装置、表示装置、撮像装置、及び、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/858 20230101AFI20241105BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241105BHJP
   G03B 17/20 20210101ALI20241105BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241105BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241105BHJP
   G09F 9/302 20060101ALI20241105BHJP
   H10K 59/65 20230101ALI20241105BHJP
【FI】
H10K50/858
G02B3/00 A
G03B17/20
G09F9/00 313
G09F9/00 366Z
G09F9/30 349Z
G09F9/302 C
H10K59/65
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020180532
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071516
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日當 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博晃
(72)【発明者】
【氏名】石津谷 幸司
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽次郎
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-016271(JP,A)
【文献】特開2013-016272(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080022(WO,A1)
【文献】特開2019-133816(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0075597(KR,A)
【文献】特開2013-016273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
G02B 3/00
G03B 17/20
G09F 9/00
G09F 9/302
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられたレンズと、
前記基板と前記レンズの間に設けられた発光部と
を有する発光装置であって、
前記レンズは、前記基板とは反対の側に凸の曲面部分を有し、
前記基板に垂直な第1方向において、前記発光部は、前記曲面部分の曲率中心よりも前記レンズから遠い位置に設けられており、
前記第1方向における前記曲面部分の頂点を第1位置、前記基板に平行な第2方向における前記曲面部分の端を第2位置とし、
前記第1方向における、前記第1位置から前記第2位置までの距離をh、前記第2方向における、前記第1位置から前記第2位置までの距離をrとした場合に、
h/r<0.95
が満たされており、
前記発光部から前記曲面部分の曲率中心までの前記第1方向の距離をd、前記曲面部分の曲率半径をRとした場合に、
0.4<d/R<1
が満たされている
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
h/r<0.9が満たされている
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
h/r<0.5が満たされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記曲面部分の曲率半径をRとした場合に、
r/R<0.97
が満たされている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記レンズの屈折率をn、前記発光部から前記レンズまでの屈折率をn、前記第1位置から前記発光部までの前記第1方向の距離をH、前記曲面部分の曲率半径をRとした場合に、
【数1】

が満たされている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記レンズの屈折率をn、前記発光部から前記レンズまでの屈折率をn、前記第1位置から前記発光部までの前記第1方向の距離をH、前記曲面部分の曲率半径をRとした場合に、
【数2】

が満たされている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
屈折率nは、1.6以上且つ2.0以下である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記レンズの屈折率をn、前記曲面部分の曲率半径をR、前記第1位置から前記発光部の端までの前記第2方向の距離をaとした場合に、
a<R/n
が満たされている
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
a/(R/n)≦0.85が満たされている
ことを特徴とする請求項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記基板上に設けられた第1電極と、
前記発光部上に設けられた第2電極と
をさらに有し、
前記発光部は、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差によって発光する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
複数の前記第1電極と、
前記複数の第1電極のそれぞれの端に接して配された絶縁層と、
前記複数の第1電極を覆い、複数の前記発光部を含む有機層と
を有し、
前記絶縁層は、前記複数の第1電極のそれぞれを露出するように複数の開口部を有し、
前記開口部において、前記第1電極と、前記有機層が接する
ことを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光装置を有する表示部と、
前記表示部を制御する制御回路と
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項13】
光学部と、
前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、
前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と
を有し、
前記表示部は、請求項1~11のいずれか一項に記載の発光装置を有する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光装置を有する表示部と、
前記表示部が設けられた筐体と、
前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と
を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、表示装置、撮像装置、及び、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などとも呼ばれる有機発光素子は、一対の電極とこれら電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。これら一対の電極から有機化合物層に電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子が生成され、当該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
【0003】
有機発光素子の最近の進歩は著しく、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が進められている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、有機発光装置から取り出す光量を向上するために、レンズが設けられており、レンズの直径、及び、レンズと発光領域との距離が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-17013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、レンズの形状は規定されておらず、十分に高い色純度の光を取り出すことができない。
【0007】
本発明は、高い色純度の光を取り出すことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、基板と、前記基板上に設けられたレンズと、前記基板と前記レンズの間に設けられた発光部とを有する発光装置であって、前記レンズは、前記基板とは反対の側に凸の曲面部分を有し、前記基板に垂直な第1方向において、前記発光部は、前記曲面部分の曲率中心よりも前記レンズから遠い位置に設けられており、前記第1方向における前記曲面部分の頂点を第1位置、前記基板に平行な第2方向における前記曲面部分の端を第2位置とし、前記第1方向における、前記第1位置から前記第2位置までの距離をh、前記第2方向における、前記第1位置から前記第2位置までの距離をrとした場合に、h/r<0.95が満たされており、前記発光部から前記曲面部分の曲率中心までの前記第1方向の距離をd、前記曲面部分の曲率半径をRとした場合に、0.4<d/R<1が満たされていることを特徴とする発光装置である。
【0009】
本発明の第2の態様は、上述した発光装置を有する表示部と、前記表示部を制御する制御回路とを有することを特徴とする表示装置である。本発明の第3の態様は、光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部とを有し、前記表示部は、上述した発光装置を有することを特徴とする撮像装置である。本発明の第4の態様は、上述した発光装置を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部とを有することを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い色純度の光を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発光装置を大まかに示す模式図である。
図2】発光装置を大まかに示す模式図である。
図3】発光装置を大まかに示す模式図である。
図4】発光装置を大まかに示す模式図である。
図5】発光装置を大まかに示す模式図である。
図6】発光装置を大まかに示す模式図である。
図7】実施形態1に係る発光装置を示す模式図である。
図8】実施形態1に係る発光装置における発光素子の配列を示す模式図である。
図9】実施形態1に係る発光装置を示す模式図である。
図10】実施形態2に係る発光装置を示す模式図である。
図11】実施形態3に係る発光装置を示す模式図である。
図12】実施形態4に係る発光装置を示す模式図である。
図13】実施形態5に係る発光装置を示す模式図である。
図14】実施形態6に係る表示装置を示す模式図である。
図15】実施形態6に係る撮像装置と電子機器を示す模式図である。
図16】実施形態6に係る表示装置を示す模式図である。
図17】実施形態6に係る照明装置と移動体を示す模式図である。
図18】実施形態6に係るウェアラブルデバイスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態に係る発光装置は、基板と、基板上に設けられたレンズと、基板とレンズの間に設けられた発光部とを有する。そして、レンズ(マイクロレンズ)は、基板とは反対の側(つまり外側)に凸の(突出した)曲面部分を有する。以後、基板に垂直な方向を「垂直方向」と記載し、基板に平行な方向を「水平方向」と記載する。本実施形態では、曲面部分が球面の一部であるとする。そして、垂直方向における曲面部分の頂点(端)を単に「曲面部分の頂点」と記載し、水平方向における曲面部分の端を単に「曲面部分の端」と記載する。なお、基板上にはレンズと発光部以外にも、様々な部材が設けられてよい。
【0013】
図1(A)は、本実施形態と比較する発光装置の一例を大まかに示す模式図である。図1(A)の発光装置は、基板と、基板上に設けられたマイクロレンズと、基板とマイクロレンズの間に設けられた発光部とを有する。そして、マイクロレンズは、基板とは反対の側に凸の曲面部分101を有する。図1(A)は、曲面部分101の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。
【0014】
図1(A)では、曲面部分101は半球面となっている。そのため、曲面部分101の頂点から曲面部分101の端までの垂直方向の距離hと、曲面部分101の頂点から曲面部分101の端までの水平方向の距離rとの関係は、h=rの関係にある。
【0015】
ここで、屈折率nのマイクロレンズから屈折率1の空気中へ光が出射される場合を考える。発光部から斜め方向(垂直方向と非平行な方向)に出射される光と、発光部から正面方向(垂直方向と平行な方向)に出射される光とで、光が空気中へ出射される際の光学条件は異なる。そのため、発光部から斜め方向に出射される光の色純度は、発光部から正面方向に出射される光の色純度よりも低くなることがある。そして、正面方向に対する斜め方向の角度が大きいほど、発光部から斜め方向に出射される光の色純度の低下は大きい。そのため、発光装置を斜め方向から観察する際に、マイクロレンズの傾斜角(水平方向
に対する角度)が大きい領域を通過する光は、色純度が大きく低下して観察される。図1(A)では、曲面部分101の端における傾斜角β1が90度に近い。そして、発光部から曲面部分101の端に向かう出射角γ=γ1(垂直方向に対する角度)も大きい。そのため、発光装置を斜め方向から観察する際に、曲面部分101の端から出射される光は、色純度が大きく低下して観察される。
【0016】
図1(B)は、本実施形態に係る発光装置の一例を大まかに示す模式図である。図1(B)の発光装置は、基板と、基板上に設けられたマイクロレンズと、基板とマイクロレンズの間に設けられた発光部とを有する。そして、マイクロレンズは、基板とは反対の側に凸の曲面部分102を有する。図1(A)は、曲面部分102の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。
【0017】
図1(B)では、曲面部分102は球面の一部となっており、半球面よりも小さい。そのため、曲面部分102の頂点から曲面部分102の端までの垂直方向の距離hと、曲面部分102の頂点から曲面部分102の端までの水平方向の距離rとの関係は、h<rの関係にある。
【0018】
ここで、マイクロレンズから特定角度αの斜め方向に出射される光を考えると、スネルの法則から、マイクロレンズの傾斜角が大きいほど、発光部からの出射角γが大きくなる。そして、曲面部分102の端における傾斜角β2が曲面部分101の端における傾斜角β1よりも小さいため、発光部から曲面部分102の端に向かう出射角γ=γ2は発光部から曲面部分101の端に向かう出射角γ=γ1よりも小さくなる。従って、図1(B)の構成(h<r)によれば、図1(A)の構成(h=r)と比較して、マイクロレンズの傾斜角が大きい領域を減らすことができ、発光部から斜め方向に出射される光の色純度の低下を抑制することができる。このような効果はhとrの比h/rが小さいほど大きくなり、例えばh/r<0.95であることが好ましく、h/r<0.9であることがさらに好ましく、h/r<0.5であることがより好ましい。一方で、h/r>0.2であってよい。
【0019】
なお、マイクロレンズの曲面部分が球面の一部である例を説明したが、曲面部分の実際の形状は球面の一部と一致していなくてもよく、非球面の一部となっていてもよい。その場合には、実際の形状を球面の一部に近似した面を、曲面部分とみなしてもよい。マイクロレンズにおいて、曲面部分からそれ以外の部分にかけてマイクロレンズの表面の傾きが滑らかに変化する場合などのように、曲面部分とそれ以外の部分との境界が曖昧な場合がある。そのような場合には、例えば、曲面部分の頂点を除いて、マイクロレンズの表面に接する接線の傾きが閾値以下の箇所を、曲面部分の端とみなしてよい。
【0020】
次に、マイクロレンズによる集光の例について、図2,3(A),3(B),4(A),4(B),5(A),5(B)を用いて説明する。ここでは、屈折率nのマイクロレンズから屈折率1の空気中へ光が出射される場合を考える。
【0021】
図2,3(A),3(B)は、マイクロレンズの曲面部分が半球面である場合(h=r)の例を示す。
【0022】
図2では、発光部P1(発光点)は、マイクロレンズ(曲面部分)の曲率中心Cと一致している。この場合に、発光部P1から出射された光はマイクロレンズの傾斜面に対して垂直に入射する。そのため、発光部P1から出射された光は、その方向(角度)を保ったままマイクロレンズから空気中に出射される。つまり、集光効果は得られない。
【0023】
図3(A),3(B)は、発光部を垂直方向にマイクロレンズから遠ざけた場合の例を
示す。この場合は、図3(A)に示すように、発光部の中心位置P2(水平方向においてマイクロレンズの曲率中心Cに一致する位置)から斜め方向に出射された光は、マイクロレンズによって正面方向に近づけられるため、集光効果が得られる。さらに、図3(B)に示すように、発光部の端の位置P2’から出射された光としても、マイクロレンズによって正面方向に近づけられる光が存在する。この集光効果によって、マイクロレンズを設けない場合と比べて正面方向の光の強度を大きくすることができ、発光部の電流利用効率を高めることができる。また、発光部の中心付近に対して高い集光効果が得られるため、発光部が小さいほど電流利用効率を高くすることができる。
【0024】
図4(A),4(B)は、発光部を垂直方向にマイクロレンズからさらに遠ざけた場合の例を示す。この場合は、図4(A)に示すように、発光部の中心位置P3からマイクロレンズ(曲面部分)の頂点およびその周辺に出射された光の集光効果は強まる。しかしながら、マイクロレンズ(曲面部分)の端およびその周辺に出射された光は、マイクロレンズで全反射してしまい、空気中に取り出されない。また、図4(B)に示すように、発光部の端の位置P3’から出射された光としても、マイクロレンズで全反射して空気中に取り出されない光が存在する。そのため、発光部の電流利用効率が低下してしまう。
【0025】
以上より、マイクロレンズの曲率中心Cから発光部までの垂直方向の距離を適切に設定することが、発光部の電流利用効率を高めるうえで重要である。
【0026】
図5(A),5(B)は、マイクロレンズの曲面部分が球面の一部であり、半球面よりも小さい場合(h<r)の例、つまり本実施形態に係る構成の例を示す。図5(A),5(B)でも、図3(A),3(B)などと同様に、垂直方向において、発光部は、マイクロレンズ(曲面部分)の曲率中心Cよりもマイクロレンズから遠い位置に設けられている。このことは、垂直方向において、マイクロレンズ(曲面部分)の曲率中心Cが、マイクロレンズ(曲面部分)と発光部との間に配されるということと捉えることもできる。
【0027】
発光部の中心位置P4に対するマイクロレンズの集光効果を図3(A)と同等にしたい場合には、マイクロレンズ(曲面部分)の曲率半径Rと、マイクロレンズの曲率中心Cから発光部までの垂直方向の距離dとの比d/Rを、図3(A)と同じにすればよい。具体的には、集光効果を得るためには以下の式(1)を満たせばよく、マイクロレンズでの全反射を抑制するためには以下の式(2)を満たせばよい。曲率半径Rは、以下の式(3)により算出される。また、距離rと曲率半径Rとの比r/Rは、0.97よりも小さいことが好ましい。一方で、r/Rは0.4より大きくてよい。
d/R>0 ・・・(1)
d/R<1 ・・・(2)
R=(r+h)/2h ・・・(3)
【0028】
ここで、図3(A),3(B)と図5(A),5(B)で距離rが同じである場合を考える。この場合には、図5(A),5(B)の構成(h<r)での曲率半径Rは、図3(A),3(B)の構成(h=r)での曲率半径Rよりも大きくなる。そのため、発光部の中心位置P4に対するマイクロレンズの集光効果を図3(A)と同等にしたい場合に、図5(A),5(B)での距離d=d4は、図3(A),3(B)での距離d=d2よりも大きくなる。このとき、発光部の発光が位置P2’と同等となる位置は、図5(B)に示す位置P4’となる。発光部の中心位置P4から位置P4’までの距離は、発光部の中心位置P2から位置P2’までの距離よりも大きい。
【0029】
前述したように、発光部が小さいほど発光部の電流利用効率を高くすることができる。図5(A),5(B)に示すように、発光部のサイズを図3(A),3(B)と等しくすれば、すなわち発光部の端の位置を位置P4’よりも中心寄りにすれば、マイクロレンズ
に対して発光部が相対的に小さくなる。その結果、図3(A),3(B)の構成(h=r)と比較して、電流利用効率を向上することができる。
【0030】
以上説明したように、h<rであるマイクロレンズを設けることによって、h=rであるマイクロレンズを設ける場合よりも、発光装置を斜め方向から観察した場合の色純度の低下を抑えることができる。さらに、発光部の電流利用効率を向上することができる。
【0031】
h<rであるマイクロレンズを設けた場合に上記効果を得るための他の条件(式(1)と式(2)とは異なる条件)について説明する。図6は、本実施形態に係る発光装置の一例を大まかに示す模式図であり、図6ではh<rである。ここで、発光部からマイクロレンズまでの屈折率nがマイクロレンズの屈折率nと等しい場合を考える。この場合に、発光部の中心位置に対して集光効果を得るためには、マイクロレンズの頂点から発光部までの垂直方向の距離Hがマイクロレンズの曲率半径Rよりも大きい(H>R)という条件を満たせばよい。屈折率nと屈折率nが異なる場合には、屈折率nと屈折率nの差によって光が曲げられる。それを考慮し、相対的な光学距離に応じて距離Hを調整すると、集光効果を得るため条件は、以下の式(4)で表される。式(4)を満たすことは、式(1)を満たすこととほぼ同義である。
【数1】
【0032】
なお、発光部とマイクロレンズの間に屈折率が互いに異なる複数の部材(層)が設けられる場合は、各部材の厚さ(層厚)に応じた重みを用いて得られる、当該複数の部材の屈折率の加重平均(平均屈折率)を、屈折率nとして用いればよい。複数の部材のうち、厚さが最大の部材の屈折率を、屈折率nとして用いてもよい。例えば、後述する保護層の屈折率が1.98程度、カラーフィルタの屈折率が1.64程度であるため、屈折率nは1.6以上且つ2.0以下となる。好ましくは、屈折率nは1.65以上且つ1.9以下である。より好ましくは、屈折率nは1.74以上且つ1.8以下である。
【0033】
また、n=nとすると、発光部の中心位置からマイクロレンズの端へ向かう光が全反射されないという効果を得るためには、n×sinθ<1を満たせばよい。sinθは、以下の式(5)で表される。
sinθ=(H-R)×R-1×sinγ
=(H-R)×R-1×r×{r+(H-h)-1/2
・・・(5)
【0034】
そのため、全反射を抑制するための条件は、以下の式(6)で表される。
×(H-R)×R-1×r×{r+(H-h)-1/2<1 ・・・(6)
【0035】
上述したように、屈折率nと屈折率nが異なる場合には、相対的な光学距離に応じて距離Hを調整すればよく、全反射を抑制するための条件は、以下の式(7)で表される。式(7)を満たすことは、式(2)を満たすこととほぼ同義である。
【数2】
【0036】
以上説明したように、h<r、式(4)、及び、式(7)を満たせば、発光装置を斜め方向から観察した場合の色純度の低下を抑えることができ、かつ発光部の電流利用効率を向上することができる。
【0037】
上述したように、マイクロレンズの曲面部分が球面の一部でない場合、例えば端の曲率が球面の曲率よりも小さい場合や、曲面部分が非球面の一部である場合は、実際の形状を球面の一部に近似した面を、曲面部分とみなしてもよい。例えば、マイクロレンズの頂点と、当該頂点からの垂直方向の距離がh/2となるマイクロレンズ上の位置とを通る球面を想定し、想定した球面に基づいて、距離rと曲率半径Rを定義してもよい。すなわち、マイクロレンズの頂点からの垂直方向の距離がh/2となる点と、マイクロレンズの頂点との間の水平方向の距離をr’として、r=(2×r’-h/2)1/2及びR=(r’+h/4)/hと定義してもよい。
【0038】
<実施形態1の具体例>
実施形態1の具体例について説明する。図7は本実施形態に係る発光装置100を示す模式図である。図7は、マイクロレンズ17(曲面部分)の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。ここでは有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などとも呼ばれる有機発光素子(発光部に有機発光材料を含む発光素子)の例を説明するが、発光装置の構成はこれに限られない。例えば、発光素子は、発光部に無機発光材料を含む無機EL素子であってもよい。発光部として発光ダイオードなどが使用されてもよい。
【0039】
発光装置100は、基板8、複数の第1電極9、有機層10(有機膜)、第2電極11、複数の絶縁層12、保護層13、平坦化層14、複数のカラーフィルタ15、平坦化層16、及び、マイクロレンズ17を有する。複数の第1電極9は基板8上に設けられている。有機層10は発光層を含み、有機層10(発光層)の一部は、上述した発光部として機能する。有機層10は、複数の第1電極9を覆うように、基板8とマイクロレンズ17の間に設けられている。第2電極12は有機層10上に設けられている。有機層10(発光部)は、第1電極と第2電極との間の電位差によって発光する。複数の絶縁層12(バンク)は、複数の第1電極9の間が絶縁されるように、複数の第1電極9にそれぞれ設けられており、複数の絶縁層12のそれぞれは、対応する第1電極9を有機層10に対して露出する開口(開口部)を有する。なお、複数の絶縁層12を、複数の第1電極9の端に接して配された1つの絶縁層と捉えて、絶縁層は複数の第1電極9のそれぞれを露出するように複数の開口部を有すると捉えてもよい。開口部において第1電極9と有機層10が接し、有機層10のうち、絶縁層12の開口に対応する部分が、発光部となる。そのため、図7では、複数の第1電極9にそれぞれ対応する複数の発光部が設けられており、絶縁層12の開口は、対応する第1電極9を当該第1電極9に対応する発光部に対して露出する。保護層13は第2電極11上に設けられており、平坦化層14は保護層13上に設けられている。複数のカラーフィルタ15は、複数の発光部にそれぞれ対応するように、平坦化層14上に設けられている。平坦化層16は複数のカラーフィルタ15上に設けられている。マイクロレンズ17は、複数の発光部にそれぞれ対応する複数の曲面部分を有しており、平坦化層16上に設けられている。
【0040】
基板8の材料は、第1電極9、有機層10、及び、第2電極11を支持できる材料であれば特に限定されない。例えば、基板8の材料として、ガラス、プラスチック、シリコンなどを用いることができる。トランジスタなどのスイッチング素子や、配線、層間絶縁膜などが基板8に設けられていてもよい。
【0041】
第1電極9は、透明であっても、不透明であってもよい。第1電極9が不透明である場合には、第1電極9の材料は、発光波長での反射率が70%以上の金属材料であることが好ましい。例えば、第1電極9の材料として、AlやAgなどの金属や、それらにSi、Cu、Ni、Ndなどを添加した合金を用いることができる。また、第1電極9の材料として、ITO、IZO、AZO、IGZOなども用いることができる。なお、ここでの発光波長は、有機層10から発せられる光のスペクトル範囲を意味する。第1電極9の反射率が所定(所望)の反射率よりも高ければ、第1電極9は、Ti、W、Mo、Auなどの金属やその合金などのバリア電極との積層電極であってもよく、ITOやIZOなどの透明酸化膜電極との積層電極であってもよい。
【0042】
一方、第1電極9が透明である場合には、第1電極9の下(基板8の側)に反射層を設けてもよい。透明な第1電極9の材料としては、例えば、ITO、IZO、AZO、IGZOなどを用いることができる。後述する光学距離の最適化のために、第1電極9の構成として、反射層と透明導電膜の間に絶縁膜を設けた構成を採用してもよい。
【0043】
第2電極11は透光性を有する。第2電極11の材料は、第2電極11の表面に到達した光の一部を透過するとともに他の一部を反射する性質(すなわち半透過反射性)を持った半透過材料であってもよい。第2電極11の材料として、例えば、透明導電酸化物のような透明材料を使用できる。また、第2電極11の材料として、単体金属(アルミニウム、銀、金など)、アルカリ金属(リチウムやセシウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、これらの金属材料を含んだ合金材料などからなる半透過材料を使用できる。第2電極11の材料として半透過材料を使用する場合には、半透過材料としてマグネシウムや銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。第2電極11が好ましい透過率を有するならば、第2電極11は、上記材料で構成された複数の層の積層構成を有してもよい。図7では、複数の発光部の間で共通の1つの第2電極11が設けられているが、複数の発光部にそれぞれ対応する複数の第2電極11が設けられてもよい。
【0044】
第1電極9と第2電極11の一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。例えば、第1電極9が陽極として機能し、第2電極11が陰極として機能する。第1電極9が陰極として機能し、第2電極11が陽極として機能してもよい。
【0045】
有機層10は、蒸着法やスピンコート法など公知の技術により形成することができる。有機層10は、複数の層から構成されていてもよい。有機層10が有機化合物層である場合には、有機層10は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、及び、電子注入層の少なくともいずれかを含んで構成される。
【0046】
発光層は、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が有機化合物層において再結合することで、光を出射する。発光層は単層でも複数層でもよい。赤色発光材料からなる発光層、緑色発光材料からなる発光層、及び、青色発光材料からなる発光層を組み合わせれば、各発光層からの光(赤色光、緑色光、及び、青色光)が混ざり合って、白色光を得ることができる。発光色が互いに補色の関係にある2種類の発光層(例えば青色発光材料からなる発光層と黄色発光材料からなる発光層)を組み合わせてもよい。発光部ごとに発光層が異なる色の光を発するように、発光層に含まれる材料や、発光層の構成を発光
部ごとに異ならせてもよい。その場合には、発光部ごとに発光層をパターニングしてもよい。
【0047】
本実施形態に係る発光装置は、第1反射面と、第2反射面と、第1反射面と第2反射面との間に配置されている発光層とを有してもよい。第1反射面は、第1電極9であってもよいし、第1電極9と絶縁層12との間に配置されている反射層であってもよい。
【0048】
第1反射面と、発光層を含む有機層10の発光部(発光位置)との間の光学距離を最適化するためには、以下の式(8)を満たせばよい。式(8)において、Lrは第1反射面の上面から有機層10の発光位置までの光路長(光学距離)であり、Φrは第1反射面で波長λの光が反射する際の位相シフトであり、mは0以上の整数である。式(8)を満たすように、第1電極9または第1反射面の膜厚や、有機層10の膜厚などを最適にすればよい。
Lr=(2×m-(Φr/π))×(λ/4) ・・・(8)
【0049】
また、発光位置から第2反射面までの光学距離Lsは、第2反射面で波長λの光が反射する際の位相シフトをΦsとすると、以下の式(9)を満たす。本実施形態においてはm’=0である。
Ls=(2×m’-(Φs/π))×(λ/4)
=-(Φs/π)×(λ/4)
・・・(9)
【0050】
よって、全層干渉Lは以下の式(10)を満たす。式(10)において、Φは位相シフトΦrと位相シフトΦsの和である。
L=Lr+L=(2×m-Φ/π)×(λ/4) ・・・(10)
【0051】
ここで、上述の式(8)~(10)において、許容範囲はλ/8程度、または20nm程度である。なお、有機層10の発光位置を特定するのが困難な場合があるので、上記の例では、発光位置を有機層10の第1反射面側の界面または第2反射面側の界面で代用した。上述の許容範囲を考慮すれば、このように代用した場合であっても、光を強める効果を得ることができる。
【0052】
保護層13は、絶縁層であり、透光性を有し、外部からの酸素や水分の透過性が低い無機材料を含むことが好ましい。例えば、保護層13は、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸窒化物(SiON)、シリコン酸化物(SiO)、アルミニウム酸化物(Al)、チタン酸化物(TiO)などの無機材料を用いて作製することができる。特に保護性能の面において、SiN、SiON、Alなどの無機材料が好ましい。保護層13の形成には化学気相堆積法(CVD法)、原子層堆積法(ALD法)、スパッタリング法などを用いることが好ましい。
【0053】
保護層13は十分な水分遮断性能を有していれば、単層構造を有していても、上記材料や形成手法を組み合わせた積層構造を有していてもよい。例えば、保護層13は、窒化シリコンの層と、原子堆積法による密度が高い他の層との積層構造を有していてもよい。さらに、保護層13は、水分遮断性能を有していれば、有機層を有してもよい。有機層は、例えば、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリエステル、エポキシなどからなる。さらに、図7では、複数の発光部の間で共通の1つの保護層13が設けられているが、複数の発光部にそれぞれ対応する複数の保護層13が設けられてもよい。
【0054】
マイクロレンズ17は露光及び現像プロセスにより形成することができる。具体的には、マイクロレンズ17の材料からなる膜(フォトレジスト膜)を形成し、連続的な階調変
化を有するマスクを用いて、フォトレジスト膜の露光および現像を行う。このようなマスクとしてグレーマスクを用いることができる。露光装置の解像度以下の遮光膜からなるドットの密度分布を変化させることで結像面に連続した階調変化を有する光照射を可能とする面積階調マスクを用いることもできる。また、露光および現像プロセスで形成したマイクロレンズ17に対して、エッチバックを行うことにより、レンズ形状を調整することが可能である。前述の通り、マイクロレンズ17はh<rの曲面部分を有していればよく、曲面部分は球面の一部であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0055】
発光部やマイクロレンズ17の曲面部分などを組み合わせて発光素子が構成される。発光素子を複数設ける場合に、複数の発光素子の平面配列(垂直方向から見た場合の配列)は、ストライプ配列、スクエア配列、デルタ配列、ペンタイル配列、ベイヤー配列などのいずれの配列であってもよい。図8(A)~8(C)は、発光装置100をマイクロレンズ17の側から見た平面図であり、複数の発光素子の平面配列の一例を示す。図8(A)はデルタ配列の一例を示し、図8(B)はストライプ配列の一例を示し、図8(C)はベイヤー配列の一例を示す。ここで、発光装置100を表示パネルとして用い、1画素(主画素)が、対応する色成分が互いに異なる複数の副画素(例えば、赤色の表示を行う副画素、緑色の表示を行う副画素、及び、青色の表示を行う副画素)から構成される場合を考える。この場合には、図8(B)に示すように、発光素子が、1つの副画素に複数設けられてもよい。マイクロレンズ17の曲面部分のサイズや形状などは、複数の発光素子の平面配列の方式に応じて適宜設定されてもよい。デルタ配列を採用すれば、副画素に対してマイクロレンズ17の曲面部分が占める面積を大きく設定でき、光取り出し効率を高めることができる。
【0056】
図8(A)~8(C)の例では発光部の平面形状(垂直方向から見た場合の形状)は円形であるが、発光部の平面形状は特に限定されず、例えば四角形や六角形などの多角形であってもよい。但し、発光部の平面形状が円形であれば、発光部の端からマイクロレンズ17(曲面部分)の端までの方向の傾斜角の関係が、曲面部分の頂点を通る垂直方向の面によって得られる全ての断面において等しくなるため、設計が容易になる。
【0057】
図9に示すように、マイクロレンズ17の曲面部分の端が厚みを持つように(隣接した発光部の間でマイクロレンズ17の一部がオーバーラップするように)マイクロレンズ17が形成されてもよい。この場合にも、h<r、式(4)、及び、式(7)といった条件を満たせば、発光装置を斜め方向から観察した場合の色純度の低下を抑えることができ、かつ発光部の電流利用効率を向上することができる。
【0058】
また、マイクロレンズ17の複数の曲面部分が互いに異なる色の光を発するような構成を採用してもよい。そのようにすれば、フルカラー表示が可能となる。フルカラー表示を実現する方法として、白色光を発する発光層とカラーフィルタ15とを用いる方法を採用してもよいし、複数の発光部が互いに異なる色の光を発するように発光層をパターニングする方法を採用してもよい。また、上述した第1反射面と第2反射面との間の距離を発光部ごとに異ならせることでフルカラー表示を可能としてもよい。第1反射面と第2反射面との間の距離を発光部ごとに異ならせる構成とすることで、複数の発光部の間で発光層を共通にできるため、発光層をパターニングする方法よりも発光層の製造プロセスが容易となる。
【0059】
本実施形態ではカラーフィルタ15が平坦化層14上に設けられているが、カラーフィルタ15は保護層13上に設けられていてもよい。つまり、カラーフィルタ15と保護層13とが一体となっていてもよい(カラーフィルタ15と保護層13とが連続していてもよい)。カラーフィルタ15を別の基板に形成して保護層13に対向するように貼り合わせてもよい。平坦化層14は、保護層13の凹凸を平坦化するために設けられる。カラー
フィルタ15と保護層13とを一体とすることで、フォトリソグラフィプロセスを用いて、カラーフィルタ15を発光部に対して精度良く位置合わせして形成できる。
【0060】
図7において、カラーフィルタ15r,15g,15bは互いに異なる色の光を透過するカラーフィルタであってもよいし、そうでなくてもよい。例えば、カラーフィルタ15rが赤色光を透過し、カラーフィルタ15gが緑色光を透過し、カラーフィルタ15bが青色光を透過してもよい。そのようにすれば、フルカラー表示が可能となる。なお、複数のカラーフィルタ15の一部または全部を省略してもよい。その場合は、有機層10における発光層を作り分けて、複数の発光部から出射される光の色を互いに異ならせることで、フルカラー表示を可能にしてもよい。
【0061】
また、本実施形態ではマイクロレンズ17が平坦化層16上に設けられているが、マイクロレンズ17はカラーフィルタ15上に設けられていてもよい。つまり、マイクロレンズ17とカラーフィルタ15とが一体となっていてもよい。平坦化層16は、カラーフィルタ15の凹凸を平坦化するために設けられる。カラーフィルタ15を用いずに、マイクロレンズ17が保護層13上に設けられてもよい(マイクロレンズ17と保護層13とが一体となていてもよい)。マイクロレンズ17と保護層13とを一体とする場合には、マイクロレンズ17を別の基板に形成して保護層13に対向するように貼り合わせる場合よりもマイクロレンズ17から発光層までの距離を短くできる。その結果、発光層からマイクロレンズ17へ入射する光の立体角を広げることができ、光取り出し効率が向上する。マイクロレンズ17と保護層13とを一体とすることで、マイクロレンズ17の曲面部分を発光部に対して精度良く位置合わせして形成できる。また、カラーフィルタ15、マイクロレンズ17、及び、保護層13を一体とすることで、発光部、カラーフィルタ15、及び、マイクロレンズ17の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0062】
カラーフィルタ15とマイクロレンズ17の積層順は適宜選択されてよい。図7では、マイクロレンズ17に対して発光部の側にカラーフィルタ15が設けられている。この構成では、発光部から出射された光は、マイクロレンズ17に入射する前にカラーフィルタ15を通過する。これによって、色純度を低下させる要因となる光(発光部からの出射角が大きい光)は、比較的長い距離でカラーフィルタ15を通過するため、発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下をより好適に抑制できる。
【0063】
また、カラーフィルタ15とマイクロレンズ17を別の基板に形成し、発光部を有する基板8に対向するように貼り合わせて発光装置100を作製してもよい。そうすることで、カラーフィルタ15とマイクロレンズ17の形成時の加工方法(温度など)の自由度が上がり、カラーフィルタ15とマイクロレンズ17の設計の自由度を上げることができる。マイクロレンズ17やカラーフィルタ15は、例えば、接着剤により基板8の側に固定される。接着剤は、保護層13上に塗られてもよいし、平坦化層14上に塗られてもよい。
【0064】
また、マイクロレンズ17と保護層13(またはカラーフィルタ)との間に空間が設けられるように、マイクロレンズ17が発光装置100の端部において、基板8に接着剤により固定されていてもよい。その際、空間には充填樹脂が充填されていてもよい。充填樹脂の屈折率はマイクロレンズ17の屈折率よりも小さいことが好ましい。
【0065】
また、カラーフィルタ15を保護層13上に一体で形成し、マイクロレンズ17は別の基板に形成してカラーフィルタ15に対向するように貼り合わせてもよい。
【0066】
以下、発光装置100の作製方法の具体例を説明する。
【0067】
まず、基板8上にアルミニウムを形成し、これをパターニングすることによって複数の第1電極9を形成した。次に、複数の第1電極9をそれぞれ覆うように複数の絶縁層を形成した。絶縁層の材料は酸化シリコンとして、絶縁層の層厚は65nmとした。そして、各絶縁層に、対応する第1電極9(覆っている第1電極9)を露出する開口を設け、複数の絶縁層を複数の絶縁層12とした。開口の形状は、半径3.0μmの円形とした。上述したように、最終的には、絶縁層12の開口は、対応する第1電極9を当該第1電極9に対応する発光部に対して露出する。垂直方向から見た場合に、開口のサイズと形状は、発光部のサイズと形状と一致する。
【0068】
次に、第1電極9(および絶縁層12)上に有機層10(有機化合物層)を形成した。具体的には、正孔注入層として下記化合物1を3nmの厚さで形成した。次に、正孔輸送層として、下記化合物2を15nmの厚さで形成し、電子ブロック層として下記化合物3を10nmの厚さで形成した。そして、第1発光層は、ホスト材料として下記化合物4を重量比97%、発光ドーパントとして下記化合物5を重量比3%となるように、10nmの厚さで形成した。第2発光層は、ホスト材料として下記化合物4を重量比98%、発光ドーパントとして下記化合物6と下記化合物7をそれぞれ重量比1%となるように、10nmの厚さで形成した。電子輸送層は、下記化合物8を110nmの厚さで形成した。電子注入層はフッ化リチウムを1nmの厚さで形成した。
【化1】
【0069】
次に、有機層10上に第2電極11としてMgAg合金を10nmの厚さで形成した。MgとAgとの比率は1:1とした。その後、第2電極11上に保護層13としてCVD法にて屈折率1.97のSiN膜を1μmの厚さで形成した。さらに保護層13上に屈折率1.55の平坦化層14をスピンコートにより300nmの厚さで形成した。
【0070】
次に、平坦化層14上に屈折率1.65のカラーフィルタ15を1.6μmの厚さで形成した。カラーフィルタ15rは赤色光を透過するカラーフィルタ、カラーフィルタ15gは緑色光を透過するカラーフィルタ、カラーフィルタ15bは青色光を透過するカラーフィルタとした。さらにカラーフィルタ15上に平坦化層16をスピンコートにより200nmの厚さで形成した。
【0071】
次に、平坦化層16上に屈折率1.52のマイクロレンズ17を露光及び現像プロセスを用いて形成した。マイクロレンズ17の曲面部分は球面の一部とし、曲面部分の頂点から曲面部分の端までの垂直方向の距離hを2.5μm、水平方向の距離rを3.4μmとした。
【0072】
以上より作製された発光装置100では、マイクロレンズ17(曲面部分)の曲率半径R=(r+h)/2hは3.56μmである。そして、マイクロレンズ17の屈折率nは1.52、発光部からマイクロレンズ17までの屈折率nは1.74、マイクロレンズ17の頂点から発光部までの垂直方向の距離Hは5.6μmである。このとき、式(4)の左辺は1.45、式(7)の左辺は0.46と計算され、式(4)及び式(7)が満たされる。従って、発光装置を斜め方向から観察した場合の色純度の低下を抑えることができ、かつマイクロレンズ17を設けない場合と比較して発光部の電流利用効率を向上することができる。
【0073】
<実施形態2>
本発明の実施形態2について説明する。実施形態1(具体例)では(垂直方向から見た場合の)発光部の形状を半径3.0μmの円形としたが、本実施形態では、発光部の形状を半径1.0μmの円形とする。それ以外は実施形態1と同様である。図10は本実施形態に係る発光装置100を示す模式図である。図10は、マイクロレンズ17(曲面部分)の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。
【0074】
上述したように、発光部上にマイクロレンズ17を設ける場合には、マイクロレンズ17(曲面部分)の頂点の直下に近い位置に対して高い集光効果が得られる。すなわち、発光部を小さくすることにより発光部の電流利用効率を向上することができる。ここで、発光部の端からマイクロレンズ17(曲面部分)頂点までの水平方向の距離をaとすると、発光部から垂直方向に出射された光がマイクロレンズ17の傾斜面で全反射されないという効果を得るためには、以下の式(10)を満たせばよい。
a<R/n ・・・(10)
【0075】
本実施形態では距離a=1.0μmであり、R/n=2.34μmであるので、a<R/nの関係を満たす。そのため、マイクロレンズ17での全反射を抑制しながら、発光部をより小さくして発光部の電流利用効率をより向上することができる。このような効果を得る観点において、例えば、a/(R/n)が0.85以下であることが好ましい。一方で、a/(R/n)は0.6以上であってよい。
【0076】
<実施形態3>
本発明の実施形態3について説明する。実施形態2では発光部の形状を半径1.0μmの円形としたが、本実施形態では、発光部の形状を半径2.0μmの円形とする。それ以外は実施形態2と同様である。図11は本実施形態に係る発光装置100を示す模式図である。図11は、マイクロレンズ17(曲面部分)の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。
【0077】
ここで、発光部から正面方向に出射する色純度の高い光がマイクロレンズ17の傾斜面によって屈折して、広角方向(斜め方向)へ取り出される過程を考える。そのような過程
を考えると、発光部の直上におけるマイクロレンズ17の傾斜面の角度が大きいほど発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下をより抑制でき、好ましい。すなわち、マイクロレンズ17の形状が同じであれば、発光部の端からマイクロレンズ17(曲面部分)までの水平方向の距離aが大きいほど、発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下を抑制できる。
【0078】
本実施形態ではa<R/nの関係を満たしながら距離aを大きくすることによって、発光部の電流利用効率を向上することができると共に、発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下をより抑制することができる。このような効果を得る観点において、例えば、a/(R/n)が0.6以上であることが好ましい。
【0079】
<実施形態4>
本発明の実施形態4について説明する。実施形態1(具体例)では保護層13(SiN膜)の厚さを1μmとしたが、本実施形態では、保護層13(SiN膜)の厚さを1.5μmとする。それ以外は実施形態1と同様である。図12は本実施形態に係る発光装置100を示す模式図である。図12は、マイクロレンズ17(曲面部分)の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。
【0080】
保護層13(SiN膜)の厚さを1.5μmとすると、n=1.79およびH=6.6μmとなる。この場合も、式(4)および式(7)が満たされる。
【0081】
ここで、発光部の中心位置からマイクロレンズ17(曲面部分)の端に向けて出射される光がマイクロレンズ17の当該端で屈折する過程を考える。そのような過程を考えると、マイクロレンズ17の距離rが一定であれば、発光部からマイクロレンズ17まで垂直方向の距離が大きいほど、発光部からの光の出射角が小さくなる。そのため、発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下をより抑制することができる。
【0082】
本実施形態では、発光部から広角方向に出射された光(色純度の低い光)は隣接する副画素のマイクロレンズ17(曲面部分)により全反射され外部に取り出されない。そのため、発光部からマイクロレンズ17(曲面部分)までの垂直方向の距離を長くすることによって、発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下をより抑制することができる。
【0083】
<実施形態5>
本発明の実施形態5について説明する。本実施形態では、複数の発光部の間で発光部からカラーフィルタ15までの距離、つまり発光部から発せられた光がカラーフィルタ15に到達するまでの光学距離を異ならせる。それ以外は実施形態4と同様である。図13は本実施形態に係る発光装置100を示す模式図である。図13は、マイクロレンズ17(曲面部分)の頂点を通る垂直方向の面によって得られる断面を示す。
【0084】
本実施形態に係る発光装置100の作製方法の具体例を説明する。まず、基板8上にアルミニウムを形成し、これをパターニングすることによって複数の反射層18を形成した。次に、酸化シリコンで形成される絶縁層の形成とパターニングを繰り返すことにより、層厚が互いにの異なる複数の絶縁膜19を複数の反射層18上にそれぞれ形成した。具体的には、赤色光を透過するカラーフィルタ15rを設ける部分については層厚が75nmの絶縁膜19を形成し、緑色光を透過するカラーフィルタ15gを設ける部分については層厚が130nmの絶縁膜19を形成した。そして、青色光を透過するカラーフィルタ15bを設ける部分については層厚が190nmの絶縁膜19を形成した。次に、ITO膜の形成とパターニングを行い、複数の第1電極9を複数の絶縁膜19上にそれぞれ形成した。その後、実施形態1(具体例)と同様の方法で、発光装置100を作成した。但し、
絶縁層12の開口の形状、つまり(垂直方向から見た場合の)発光部の形状は、半径1.5μmの円形とした。また、有機層10において、正孔輸送層の層厚は36nm、電子輸送層の層厚は45nmとした。そして、垂直方向において保護層13の上面位置(カラーフィルタ15側の位置)が均一となるように、保護層13を形成した。保護層13の厚さは複数の発光部の間で異なるが、実施形態4と同様に約1.5μmとした。
【0085】
本実施形態では、発光部からカラーフィルタ15までの距離、つまり発光部から発せられた光がカラーフィルタ15に到達するまでの光学距離が、所望の色成分(外部に取り出すべき光の色成分)に応じて設定される。これにより、発光装置100から正面方向に出射される光の強度及び色純度を向上できる。ひいては、発光部の電流利用効率をより向上することができると共に、発光装置100を斜め方向から観察した際の色純度の低下をより抑制することができる。
【0086】
<実施形態6>
本発明の実施形態6について説明する。本実施形態では、実施形態1~5に係る発光装置100を各種装置に適用した例を説明する。
【0087】
図14は、本実施形態に係る表示装置の一例である表示装置1000を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。表示パネル1005は、実施形態1~5に係る発光装置100を有する表示部であり、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う。タッチパネル1003および表示パネル1005には、フレキシブルプリント回路FPC1002,1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタを含む制御回路がプリントされており、表示パネル1005の制御などの各種制御を行う。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。表示装置1000は、赤色、緑色、青色にそれぞれ対応する3種類のカラーフィルタを有してよい。複数のカラーフィルタがデルタ配列で配置されてよい。
【0088】
表示装置1000は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示装置1000は、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0089】
表示装置1000は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報(撮像素子が撮像した画像など)を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどであってよい。
【0090】
図15(A)は、本実施形態に係る撮像装置の一例である撮像装置1100を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置(実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う表示装置)を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報は、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。背面ディスプレイ1102も、本実施形態に係る表示装置を有してよい。
【0091】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間であるため、少しでも早く情報を表示した方が
よい。したがって、応答速度が速い有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が要求される装置において、液晶表示装置などよりも好適に用いることができる。
【0092】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に光を結像する。複数のレンズは、それらの相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。撮像装置1100は光電変換装置と呼ばれてもよい。光電変換装置は逐次撮像するのではなく、前画像からの差分を検出する方法、記録されている画像の一部を切り出す方法等を撮像の方法として含むことができる。
【0093】
図15(B)は、本実施形態に係る電子機器の一例である電子機器1200を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203とを有する。表示部1201は、実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う。電子機器1200は、筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、外部と通信する通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0094】
図16(A)は、本実施形態に係る表示装置の一例である表示装置1300を表す模式図である。表示装置1300は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301と、表示部1302と、額縁1301および表示部1302を支える土台1303とを有する。表示部1302は、実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う。土台1303の形態は、図16(A)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台1303を兼ねてもよい。また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上且つ6000mm以下であってよい。
【0095】
図16(B)は、本実施形態に係る別の表示装置の一例である表示装置1310を表す模式図である。表示装置1310は、折り曲げ可能に構成された、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第1表示部1311、第2表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第1表示部1311と第2表示部1312とのそれぞれは、実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う。第1表示部1311と第2表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第1表示部1311と第2表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第1表示部1311と第2表示部1312とは、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第1表示部1311と第2表示部1312とで1つの画像を表示してもよい。
【0096】
図17(A)は、本実施形態に係る照明装置の一例である照明装置1400を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光学フィルム1404と、光拡散部1405と、を有してよい。光源1402は、実施形態1~5に係る発光装置100を有する。光学フィルム1404は光源1402の演色性を向上させるフィルタ(光学フィルタ)であってよい。光拡散部1405は、ライトアップ等、光源1402の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルム1404と光拡散部1405は、照明装置1400の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0097】
照明装置1400は例えば室内を照明する装置である。照明装置1400は白色、昼白色、その他の色(青色から赤色までのいずれの色)を発光するものであってよい。白色とは色温度が4200Kの色であり、昼白色とは色温度が5000Kの色である。照明装置1400は、照明装置1400の発光色を調光する調光回路を有してよい。照明装置1400は、光源1402に接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、照明装置1400はカラーフィルタを有してもよい。また、照明装置1400は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0098】
図17(B)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車1500を表す模式図である。自動車1500は灯具の一例であるテールランプ1501を有してよい。テールランプ1501は、ブレーキ操作等に応じて点灯する。
【0099】
テールランプ1501は、実施形態1~5に係る発光装置100を有する。テールランプ1501は、発光装置100を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0100】
自動車1500は、車体1503と、車体1503に取り付けられている窓1502とを有してよい。窓1502は、自動車1500の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。透明なディスプレイは、実施形態1~5に係る発光装置100を有してよい。この場合に、発光装置100が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0101】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は実施形態1~5に係る発光装置100を有する。
【0102】
本実施形態に係る表示装置(実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う表示装置)は、例えばスマートグラスやHMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスにも適用できる。本実施形態に係る表示装置は、ウェアラブルデバイスなどを有するシステムにも適用できる。ウェアラブルデバイスなどとして使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0103】
図18(A)は、本実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例である眼鏡1600(スマートグラス)を表す模式図である。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、本実施形態に係る表示装置(実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う表示装置)が設けられている。
【0104】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と上記表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0105】
図18(B)は、本実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例である眼鏡1610(スマートグラス)を表す模式図である。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており
、制御装置1612に、撮像装置1602に相当する撮像装置と、本実施形態に係る表示装置とが搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の撮像装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611に画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および表示装置の動作を制御する。
【0106】
制御装置は、眼鏡1610の装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減部を有することで、表示装置からレンズ1611に投影された画像の品位低下が低減される。赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0107】
なお、視認検知(視線検知)に基づいて表示制御を行う場合には、実施形態1~5に係る発光装置100は、外部を撮像する撮像装置を有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0108】
なお、本実施形態に係る表示装置(実施形態1~5に係る発光装置100を有し、発光装置100から発せられた光を用いて表示を行う表示装置)は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザーの視線情報に基づいて表示画像を制御してよい。具体的には、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第1の視界領域と、第1の視界領域以外の第2の視界領域とが決定される。第1の視界領域と第2の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを表示装置が受信してもよい。表示装置の表示領域において、第1の視界領域の表示解像度を第2の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第2の視界領域の解像度を第2の視界領域よりも低くしてよい。
【0109】
また、表示領域は、第1の表示領域、第1の表示領域とは異なる第2の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第1の表示領域および第2の表示領域から優先度が高い領域を決定してもよい。第1の表示領域、第2の表示領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを表示装置が受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0110】
なお、第1の視界領域や優先度が高い領域などの決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0111】
以上説明した通り、実施形態1~5に係る発光装置100を各種装置に用いることにより、良好な画質で表示を行ったり、良好な発光を行ったりすることができる。
【符号の説明】
【0112】
100:発光装置 8:基板 10:有機層
17:マイクロレンズ 102:曲面部分
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