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特許7581012光源装置、照明装置、露光装置、照射装置、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光源装置、照明装置、露光装置、照射装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241105BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20241105BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L33/64
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020180628
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071584
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大場 森暁
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-130051(JP,A)
【文献】特開2004-335953(JP,A)
【文献】特開2005-085810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060932(US,A1)
【文献】特開2018-180077(JP,A)
【文献】特開2020-123690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、及び該第1面とは反対の第2面を有する基板と、
前記第1面配置された発光素子と、
記第1面に対向して配置され、前記発光素子から射出される光を集光る光学部材と、
を有し、
前記基板と前記光学部材との間において冷媒が流れる方向は、前記基板の前記第2面側において冷媒が流れる方向と反対の方向であり、
前記基板と前記光学部材との間を流れた冷媒は前記基板の前記第2面側に流入しない、且つ、前記基板の前記第2面側を流れた冷媒は前記基板と前記光学部材との間に流入しない、ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記基板と前記光学部材との間を流れた冷媒と前記基板の前記第2面側を流れた冷媒は、合流しない流路であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記基板と前記光学部材との間に流れる冷媒と前記基板の前記第2面側に流れる冷媒は、共通の流入流路からの冷媒が分岐して流入し、前記基板と前記光学部材との間を流れた冷媒と前記基板の前記第2面側を流れた冷媒が共通の合流流路に流出することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記基板に二次元に配列された複数の発光素子を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の発光素子は、前記基板に千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記基板と前記光学部材との間に流れる冷媒と前記基板の前記第2面側に流れる冷媒が流路の外部へと漏れないように封止する封止部材を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光学部材は、レンズを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記基板の前記第2面側を流れる冷媒は、前記基板と熱交換を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒は、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒と同じ冷媒であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒は、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒とは異なる冷媒であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒は気体であり、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒は液体である、ことを特徴とする請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒の単位時間当たりの流量は、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒の単位時間当たりの流量とは異なることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項13】
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒の単位時間当たりの流量、及び前記基板の前記第2面側を流れる冷媒の単位時間当たりの流量をそれぞれ独立に制御する制御部を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項14】
前記制御部により制御され、前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒の単位時間当たりの流量、及び前記基板の前記第2面側を流れる冷媒の単位時間当たりの流量を調整する弁を有することを特徴とする請求項13に記載の光源装置。
【請求項15】
前記発光素子は、LEDチップであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項16】
第1面、及び該第1面とは反対の第2面を有する基板と、
前記第1面上に配置された発光素子と、
前記第1面に対向して配置され、前記発光素子から射出される光を集光する光学部材と、
を有し、
前記基板と前記光学部材との間において冷媒が流れる方向は、前記基板の前記第2面側において冷媒が流れる方向とは反対の方向であり、
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒は、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒とは異なる冷媒であることを特徴とする光源装置。
【請求項17】
第1面、及び該第1面とは反対の第2面を有する基板と、
前記第1面上に配置された発光素子と、
前記第1面に対向して配置され、前記発光素子から射出される光を集光する光学部材と、
を有し、
前記基板と前記光学部材との間において冷媒が流れる方向は、前記基板の前記第2面側において冷媒が流れる方向とは反対の方向であり、
前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒の単位時間当たりの流量は、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒の単位時間当たりの流量とは異なることを特徴とする光源装置。
【請求項18】
第1面、及び該第1面とは反対の第2面を有する基板と、
前記第1面上に配置された発光素子と、
前記第1面に対向して配置され、前記発光素子から射出される光を集光する光学部材と、
制御部と、
を有し、
前記基板と前記光学部材との間において冷媒が流れる方向は、前記基板の前記第2面側において冷媒が流れる方向とは反対の方向であり、
前記制御部は、前記基板と前記光学部材との間を流れる冷媒の単位時間当たりの流量と、前記基板の前記第2面側を流れる冷媒の単位時間当たりの流量をそれぞれ独立に制御することを特徴とする光源装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の光源装置と、
コンデンサレンズと、
オプティカルインテグレータを有し、
複数の前記発光素子のそれぞれからの光強度分布を、前記コンデンサレンズを介して、前記オプティカルインテグレータの入射面において重ね合わせることを特徴とする照明装置。
【請求項20】
前記オプティカルインテグレータはレンズ群を有することを特徴とする請求項19に記載の照明装置。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の照明装置からの光でマスクを照明する照明光学系と、
前記マスクのパターンを基板に露光する露光手段を有することを特徴とする露光装置。
【請求項22】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の光源装置を用いて被照射物に光を照射する照射装置であって、
前記光は、前記被照射物の殺菌処理、及び表面処理の少なくとも一方の処理を行うことを特徴とする照射装置。
【請求項23】
請求項21に記載の露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された基板を現像する現像工程と、を含み、
前記現像工程で現像された基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、照明装置、露光装置、照射装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ(FPD)等のデバイスを製造する際のフォトリソグラフィ工程において、マスクのパターンを基板に転写する露光装置が用いられている。露光装置の光源には、例えば、水銀ランプが用いられているが、近年では水銀ランプよりも省エネルギーである発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)へ置換することが期待されている。LEDは、回路に電流を流してから光の出力が安定するまでの時間が短く、水銀ランプのように常時発光させる必要がないため、長寿命でもある。
【0003】
LEDには、温度の変化に応じて発光効率とピーク波長が変化する特性があり、LEDの温度上昇に伴い発光効率が低下してしまうため、LEDの温度上昇を抑制するためにLEDを冷却する必要がある。特許文献1には、複数のLEDチップが配列されている基板の表面側と裏面側の両方に流路を設けて、効率的にLEDチップを冷却する内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-079066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構成の光源装置では、LEDチップが配列されている位置によって冷却効率が異なるため、それぞれのLEDチップの温度が異なる。LEDチップには、温度により発光効率が異なるという特性があるため、特許文献1のような構成の光源装置では、複数のLEDチップの発光分布にムラが生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、複数のLEDチップから発光した光の発光分布のムラを低減するために有利な光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての光源装置は、第1面、及び該第1面とは反対の第2面を有する基板と、前記第1面上に配置された発光素子と、前記第1面に対向して配置され、前記発光素子から射出される光を集光する光学部材と、を有し、前記基板と前記光学部材との間において冷媒が流れる方向は、前記基板の前記第2面側において冷媒が流れる方向とは反対の方向であり、前記基板と前記光学部材との間を流れた冷媒は前記基板の前記第2面側に流入しない、且つ、前記基板の前記第2面側を流れた冷媒は前記基板と前記光学部材との間に流入しない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のLEDチップから発光した光の発光分布のムラを低減するために有利な光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における光源装置の構成を示す概略図である。
図2】比較例における光源装置の温度分布を説明するための図である。
図3】第1実施形態における光源装置の温度分布を説明するための図である。
図4】光源装置における冷媒を封止する構成を示す図である。
図5】光源装置における冷媒の流量を調整する構成を示す図である。
図6】光源装置におけるLEDチップの配列を示す図である。
図7】第2実施形態における光源装置の構成を示す概略図である。
図8】第3実施形態における光源装置の構成を示す概略図である。
図9】照明光学系の構成を示す概略図である。
図10】露光装置の構成を示す概略図である。
図11】照射装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。尚、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1を参照して光源装置10について説明する。図1は本実施形態における光源装置10の断面図である。光源装置10は、LEDチップ11(固体発光素子)と電気基板12により構成される光源部13と、集光レンズ14を含む光学部材16とを有する。本実施形態では、LEDチップ11が二次元に複数設けられている例について説明するが、これに限らず、LEDチップ11が一次元に配列されていても良い。また、以下の説明では、LEDチップ11が配列されている電気基板12の面を電気基板12の第1面と呼び、その反対の面を電気基板12の第2面と呼ぶ。
【0012】
電気基板12には銅配線がLEDチップ11に実装されており、LEDチップ11を発光させるための回路が形成されている。回路に電流が流れることで、LEDチップ11から所定の波長の光が出力される。電気基板12よりも第1面側には、LEDチップ11の位置に合わせて、集光レンズ14が配置される。集光レンズ14は、LEDチップ11の位置に合わせて平板15に固定されている。或いは、集光レンズ14を各々別体として枠体に保持する構造でも良い。枠体により集光レンズ14を保持する構造は、光学部材16の加工難度が下がる点で優位であるが、後述するように枠体と集光レンズ14の間に冷媒が通る隙間が生じないようにしなければならない。
【0013】
LEDチップ11の発光に伴いLEDチップ11が発熱し、光源部13の温度が上昇する。LEDチップ11の発光に伴い生じた熱を冷却するための光源装置10の構成について説明する。本実施形態では、光源装置10に冷媒を流すことにより、冷媒と光源部13の熱交換を行う。この熱交換により、光源部13を冷却することができる。熱交換後の冷媒は、冷凍機に送られて冷却される。そして、再び光源部13と熱交換を行うように光源装置10の内部を循環する。上記の熱交換の効率を上げるために、熱伝導率が高い素材を電気基板12に用いることが好ましい。電気基板12の材質としては、例えば、熱伝導率が高い銅やアルミニウムを用いると良い。冷媒には、例えば、冷却力が優れている水を主成分とする液体や、電気絶縁性に優れたオイルを主成分する液体が用いられ得る。本実施形態では、液体により光源部13を冷却する例について説明するが、これに限らず、例えば、温度の低い気体を吹き付けることによる空冷により光源部13を冷却しても良い。
【0014】
本実施形態では、光源部13を効率的に冷却するため、電気基板12の第1面側と第2面側の両方に冷媒が流れる。電気基板12と光学部材16との間には、冷媒が流れる流路1(第1流路)が形成される。流路1では、冷媒が外部に漏れないようにするために、電気基板12の第1面と光学部材16が、流路1の壁としての役割を果たす。電気基板12と平板17との間には、冷媒が流れる流路2(第2流路)が形成される。流路2では、冷媒が外部に漏れないようにするために、電気基板12の第2面と平板17が、流路2の壁としての役割を果たす。
【0015】
電気基板12よりも第1面側に形成されている流路1を流れる冷媒は、電気基板12の表面と熱交換を行うと同時に、LEDチップ11と直接熱交換を行う。電気基板12よりも第2面側に形成されている流路2を流れる冷媒は、電気基板12の第2面と熱交換を行う。熱交換を電気基板12の両面で行うことにより、熱交換が行われる電気基板12の面積が大きくなり、光源部13の冷却効率を向上させることができる。
【0016】
LEDチップ11は、比較的高い指向性を持つ光源であるが、集光レンズ14を可能な限りLEDチップ11に近づけて配置することで、光の取り込み量を増やすことができる。したがって、集光レンズ14自体が流路1を形成する部材として配置されることで、集光レンズ14をLEDチップ11に可能な限り近づけることができる。これにより、光の取り込み量が増加し、光源としての照度を上昇させる効果が期待される。
【0017】
光源部13を冷却する必要性について説明する。LEDチップの特性として、LEDチップの温度に応じて発光する光の光量やピーク波長が変化する。一例として、温度25℃でピーク波長が365nmであるLEDチップを想定する。このLEDチップの動作温度の最大値が85℃であるとき、LEDチップが85℃に上昇した場合の光量は、25℃のときと比べて18%程度低下し、ピーク波長は3nm程度長波長側にシフトする。即ち、LEDチップの温度が上昇するにつれて発光する光の光量が減少し、ピーク波長も長波長側にシフトする。
【0018】
そのような特性を考慮して、本実施形態のように電気基板12に二次元に配列して光源部13を形成する場合には、LEDチップ11の配列箇所全域において温度を低く保つことが、発光効率の観点で望ましい。また、例えば露光装置で用いられる光源には高い解像力が求められるため、LEDチップ11の配列箇所全域において温度を低く保つことにより、LEDチップ11から発光した光のピーク波長が長波長側にシフトすることを抑制できる。
【0019】
(比較例における冷媒が流れる方向)
本実施形態では、流路1と流路2を流れる冷媒が、反対の方向に流れる場合について説明するが、まず本実施形態の比較例として、流路1と流路2を流れる冷媒が、同一方向に流れる場合について説明する。図2は、比較例における冷媒の流れ方向を説明するための図である。図2(a)は、比較例において光源装置10を循環する冷媒が流れる方向を明示している。
【0020】
ここで、LEDチップ11から冷媒に伝わる熱量をQ[W]、LEDチップ11と冷媒の温度差をΔT[K]、LEDチップ11と冷媒の熱抵抗をR[K/W]としたとき、以下の式(1)を満たす。
Q=ΔT/R・・・(1)
【0021】
また、熱抵抗R[K/W]は、熱伝導率をh[W/mK]、冷媒と熱交換で接触する電気基板12の表面積をA[m]としたとき、以下の式(2)により求められる。
R=1/(h・A)・・・(2)
【0022】
式(2)より、熱抵抗Rは、熱伝導率hと表面積Aにより求めることができるため、材質や形状により定まることが分かる。LEDチップ11から発生する熱とLEDチップ11から冷媒に伝わる熱量Qが等しい状態を定常状態と呼ぶ。比較例における定常状態は、LEDチップ11の発熱量の個体差が無く、且つ均等に配列されている場合には、図2(b)のようになる。図2(b)は、図2(a)に対応する位置において、LEDチップ11と冷媒の温度を示すグラフである。グラフの横軸は位置であり、グラフの縦軸は温度である。また、比較例において、流路1の冷媒と流路2の冷媒は同じ傾向を示す。
【0023】
図2(b)に示すように、冷媒が流路の上流側から下流側に流れる間に冷媒温度が上昇する(図2(b)における点線)。また、LEDチップ11を冷却する冷却力は、冷媒温度が高い程小さくなるため、上流側よりも下流側のLEDチップ11の温度の方が高くなる(図2(b)における実線)。したがって、流路の上流側と下流側でLEDチップ11の温度が異なる状態で定常状態となり、LEDチップ11が配置されている位置によって発光効率や光のピーク波長に差が生じてしまう。
【0024】
また、本実施形態の光源装置10を、例えば、LEDチップを多く集積したLEDモジュールを使用する露光装置の光源などに適用する場合には、冷媒と固体発光素子との熱交換が多く行われる。その結果、流路の上流側と下流側の冷媒の温度の差がより大きくなり、LEDチップ11の発光効率や光のピーク波長の差がより顕著に生じてしまう。
【0025】
(本実施形態における冷媒が流れる方向)
そこで本実施形態では、流路1と流路2を流れる冷媒が反対の方向に流れるように循環させる。図3は、本実施形態において冷媒が流れる方向を説明するための図である。図3(a)は、本実施形態において光源装置10を循環する冷媒が流れる方向を明示している。
【0026】
本実施形態における定常状態は、LEDチップ11の発熱量の個体差が無く、且つ均等に配列されている場合には、図3(b)のようになる。図3(b)は、図3(a)に対応する位置において、LEDチップ11と流路1及び流路2における冷媒の温度を示すグラフである。グラフの横軸は位置であり、グラフの縦軸は温度である。
【0027】
図3(b)で示すように、冷媒が流路1と流路2の上流側から下流側に流れる間に冷媒温度が上昇する。図2(b)と比較して異なる点は、流路1と流路2で冷媒が流れる方向が異なるために、LEDチップ11の配置される位置によって温度差が生じにくい点である。特に、流路1と流路2の熱抵抗が等しい場合には、図3(b)のような温度分布となる。
【0028】
(実施例1)
図4を参照しながら、本実施形態における具体的な実施例について説明する。図4は、光源装置10を循環する冷媒を封止する構成を示す図である。流路1、流路2、光源部13、光学部材16、平板17については図1と同様であるため説明を省略する。本実施例では、光源装置10が、更に、封止部材18と、部材19を有する。
【0029】
封止部材18は、電気基板12と光学部材16、及び電気基板12と平板17の間に挟まれるように配置されており、流路1及び流路2を流れる冷媒が流路の外部へと漏れないように封止している。封止部材18には、弾性変形量が大きい部材を用いることで、冷媒を封止しやすくなる。また、封止部材18は光源部13から射出される光線にさらされるため、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等の耐候性の高い材質を使用することが望ましい。一方で、封止部材18の弾性変形量が大きい場合には、光源部13と光学部材16の距離(或いは、光源部13と平板17の距離)が一定とならない。これにより、例えば、光学部材16が光源部13からの光を集光する光量や角度が一定とならないため、安定して光源装置10を使用できない。そこで、弾性変形量が大きい封止部材18を用いる場合には、部材19を併用することで光源部13と光学部材16の距離(或いは、光源部13と平板17の距離)が一定となり、光源装置10を安定して使用することができる。
【0030】
部材19は、弾性変形量が小さい部材であり、光源部13と光学部材16の距離(或いは、光源部13と平板17の距離)が一定となるように、図4で示すように配置される。尚、部材19は、光源部13や平板17の一部であっても良い。
【0031】
また、図1の説明で、流路1や流路2を流れる冷媒と電気基板12との熱交換効率を向上させるために、電気基板12に用いられる材質は、熱伝導率が高い銅やアルミニウムが望ましいことを説明した。平板17でも同様に、熱伝導率が高い銅やアルミニウム等の材質が用いられることが望ましい。平板17に熱伝導率が高い材質を使用した場合、部材19を介して電気基板12の第2面の熱が平板17に伝わるため、熱交換効率を向上させる効果がある。電気基板12の第1面側では、LEDチップ11を直接冷却することができるが、電気基板12の第2面側では、LEDチップ11を直接冷却することができない。そのため、電気基板の第2面の熱交換効率を向上させることで、電気基板12の第1面側と第2面側で図3(b)に示すようなLEDチップ11の温度分布を得ることができる。流路1による冷却の熱抵抗と流路2による冷却の熱抵抗との差に応じて、流路1および流路2の各々に対し、流路の構造を含む熱流量を左右するパラメータを決定するのが望ましい。
【0032】
熱流量を左右するパラメータとは、例えば、流路を形成する形状、流路の壁の役割を果たす部材の材質、冷媒の種類、冷媒の初期温度、冷媒の単位時間当たりの流量等である。ここで、各パラメータの設定について説明する。
【0033】
流路を形成する形状としては、電気基板12の表面積を大きくすることで、流路1や流路2に流れる冷媒と電気基板12との熱交換の熱量を大きくすることができる。具体的には、複数のフィンを電気基板12に設けることで、電気基板12の表面積を大きくすることができる。電気基板12に設けるフィンは、冷媒の流れを阻害しないように、冷媒が流れる方向に沿って延在するように設けることが望ましい。また、電気基板12に設けるフィンは、電気基板12と一体であっても別体であってもよく、別体の場合には電気基板12に用いられる材質と同様に、熱伝導率が高い銅やアルミニウムを使用することが好ましい。また、フィンを用いずに熱交換効率を高める手段として、流路1や流路2を狭くする方法がある。熱交換が行われる面の表面積が同じであっても、流路を狭くした場合、熱交換が行われる付近の冷媒の移動量が増える為、熱交換効率が向上する。
【0034】
流路2の壁としての役割を果たす各部材の材質には、前述した通り、銅やアルミニウムを使用することが好ましく、またそれ以外であっても鉄やマグネシウム等、熱伝導性に優れた材料を使用できる。流路1においては、光学部材16が流路1の壁としての役割を果たすが、光学部材16の材質には熱伝導性を重視するよりも、光源装置10の性能を低下させないように、透明性や屈折率などの光学特性を元に選定することが好ましい。光学部材16には、合成石英やガラス、またはアクリル等の透明性が高い樹脂であっても良い。熱伝導性よりも光学特性を優先するのは、光源部13から射出される光を効率よく取り込むことで、光源部13自体の発熱量を抑えることができる為である。
【0035】
冷媒の種類としては、流路の壁の役割を果たす材質に対して非腐食性、電気絶縁性、熱伝導率が高い液体であることが好ましい。また、流路1と流路2で冷媒の種類を変えても良く、流路1に送液する冷媒は、光源部13から射出される光を阻害しないように透明性が高い液体であることが好ましい。流路1に流れる冷媒には、例えば、ジフェニル及びジフェニルエーテルの混合物など一般的に使用されている熱媒体を使用できる。流路1と流路2を流れる冷媒の種類を変えることで、冷媒の熱伝導率の違いを利用し、電気基板12の第1面側と第2面側で熱交換を行う熱量を調整しても良い。
【0036】
冷媒の初期温度は、LEDチップ11の動作温度の下限値よりも高い温度であり、且つ冷媒の使用温度の下限値よりも高い温度であることが必須条件として挙げられる。ここでの初期温度とは、光源装置10に与えられる冷媒の温度である。また熱交換効率の観点から、冷媒の温度は可能な限り低い温度であることが望ましい。実際の冷媒温度の設定にあたっては、例えば、光源装置10の周囲温度と同程度となるように、冷媒の初期温度を20℃から25℃程度としても良い。また、流路1と流路2で流れる冷媒の初期温度を異ならせても良い。
【0037】
冷媒の単位時間当たりの流量を増やすことで、LEDチップ11から冷媒に移動する熱が増えることから、流路1と流路2の両方、又は片方に流量調整可能な絞り弁を持たせ、流路1と流路2の熱交換効率を変更するための流量調整を行っても良い。図5は、それぞれ独立に流量調整が可能な流路1と流路2を示す図である。流路1の上流側に弁3を設け、流路2の上流側に弁4を設けている。更に、弁3と弁4は、制御部5と接続されており、制御部5がそれぞれの弁で冷媒が流入する量を制御することにより、流路1及び流路2に流れる冷媒の量を独立して調整することができる。
【0038】
流路1と流路2で異なる種類の冷媒の使用や、流路1と流路2の流量調整を独立して行うことができる点で、流路1と流路2は合流しない流路であることが好ましい。しかしながら、これに限らず、例えば、1つの流路から流れてきた冷媒が、光源部13と熱交換を行う箇所に流入する前に流路1と流路2に分岐し、熱交換箇所を流れ終えた後に合流する流路であっても良い。または、流路1と流路2のうち、一方を流れた後に他方を流れるような直列の構造であっても良い。また、流路は循環流路であっても非循環流路であっても良い。
【0039】
上述したように、流路1と流路2に関するパラメータの適切な設定により、それぞれの流路の熱交換効率を調整することができる。これにより、光源部13を任意の温度に調整することができる。即ち、光源部13から射出される光のピーク波長の差が少ない状態且つ、任意の波長に微調整することが可能となる。例えば、バンドパスフィルターを用いた露光装置など、理想的には所定の単一波長の光源が求められる際に、光源から射出される光を所定の単一波長に近づけることを可能とする効果を奏する。
【0040】
(実施例2)
実施例1では、流路1や流路2に関するパラメータを適切に設定することで、光源部13と冷媒との熱交換効率を調整する内容について説明した。実施例2では、光源部13と流路1を流れる冷媒の熱交換効率を向上させるためのLEDチップ11の配列について図6を参照しながら説明する。
【0041】
図6(a)は、LEDチップ11の配列方向が流路1の冷媒が流れる方向が一致している場合のLEDチップ11の配列を示す図である。LEDチップ11の配列方向が流路1の冷媒が流れる方向が一致している場合には、下流側のLEDチップ11bが上流側のLEDチップ11aに隠れるようにLEDチップ11が配列される。また、図6(a)の点20と点21における冷媒の流速を比較すると、点21における冷媒の流速の方が大きくなる。これは、冷媒がLEDチップ11の間を冷媒が流れるため、LEDチップ11aの下流側の空間(点20付近)に冷媒が流入しづらいためである。即ち、図6(a)のようなLEDチップ11の配列では、LEDチップ11との熱交換が積極的に行われないため、冷却効率が落ちてしまう。
【0042】
そこで、LEDチップ11を図6(b)に示すように、千鳥状に配列することで、冷却効率の低下を低減することができる。図6(b)は、LEDチップ11の配列方向が流路1の冷媒が流れる方向が一致しない場合のLEDチップ11の配列を示す図である。図6(b)では、例えば、LEDチップ11c(第1固体発光素子)とLEDチップ11d(第2固体発光素子)の間を流れる冷媒が、一列後方のLEDチップ11e(第3固体発光素子)にぶつかるような配列となっている。即ち、流路1を流れる冷媒の流れ方向と垂直な方向に配列されたLEDチップ11cとLEDチップ11dとの間の範囲に、LEDチップ11c及びLEDチップ11dよりも流路1を流れる冷媒の下流側にLEDチップ11eが配列されている。
【0043】
図6(b)では、LEDチップ11cと11dの間を流れた冷媒が一列後方のLEDチップ11eの中央にぶつかるようにLEDチップ11が千鳥状に配列されているが、中央でなくとも良い。例えば、冷媒の大局的な流れ方向に一致せず、蛇行するような流線となるようにすれば良い。LEDチップ11の配列が全体的に、よどみ点のような冷媒の移動が起こりづらい部分が少なくなるようにすることが望ましい。
【0044】
上述したように、LEDチップ11を図6(b)のように千鳥状に配列することで、流路1を流れる冷媒の熱交換効率を向上させることができる。これにより、LEDチップ11をより効率よく冷却し、LEDチップ11の発光効率の低下を抑えることができる。
【0045】
以上より、本実施形態では、光源装置10に形成されている流路1と流路2における冷媒を、反対の方向に流れるようにすることで、光源部13全域における複数のLEDチップ11の温度ムラを低減することができる。これにより、複数のLEDチップ11から発光した光の発光分布のムラを低減することができる。
【0046】
<第2実施形態>
第1実施形態では、光源部13の第1面を流路1の冷媒により冷却し、光源部13の第2面を流路2の冷媒により冷却する例について説明した。本実施形態では、流路1を流れる冷媒により光源部13の第1面側と第2面側の両方を冷却し、流路2を流れる冷媒により流路1を流れる冷媒を冷却する例について説明する。尚、光源装置10の基本的な構成については、第1実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。また、本実施形態で言及しない事項については、第1実施形態に従う。
【0047】
図7は、本実施形態における光源装置10の概略図である。本実施形態における光源装置10は、LEDチップ11(固体発光素子)と電気基板12を含む光源部13、光学部材16、平板17a(第1平板)、平板17b(第2平板)を有する。本実施形態における流路1は、光学部材16と平板17aが流路の壁としての役割を果たす。光源部13は、流路1を流れる冷媒に浸漬された状態となり、光源部13の第1面側と第2面側の両方が流路1を流れる冷媒により冷却される。
【0048】
本実施形態における流路2は、平板17aと平板17bが流路の壁としての役割を果たす。第1実施形態における平板17と同様に、本実施形態における平板17aには、熱伝導率が高い材質である銅やアルミニウムが用いられることが望ましい。また、図4に開示された部材19を本実施形態でも配置する場合には、本実施形態における平板17bについても同様に、熱伝導率が高い材質である銅やアルミニウムが用いられることが望ましい。
【0049】
流路2は光源部13と直接熱交換を行わず、平板17aを介して流路1と熱交換を行う。また、流路1と流路2を流れる冷媒の流れ方向は、第1実施形態と同様に反対の方向である。このような構成とする意図としては、流路1ではLEDチップ11の温度上昇を抑制する役割を担い、流路2は流路1の冷媒の温度のムラを低減し、結果的にLEDチップ11の温度ムラを低減する役割を担うためである。
【0050】
本実施形態では、光源部13を内包したパッケージとして流路1を形成することができるため、電気基板12が冷媒を封止する構造である必要がないため、第1実施形態と比較して電気基板12の機械的な強度が小さくても良い。尚、光学部材16を流路の壁として使用する点は第1実施形態と同様であるため、光学部材16の冷媒の封止は必要である。また、第1実施形態の実施例1で説明した流路1や流路2に関するパラメータの変更や、第1実施形態の実施例2で説明したLEDチップ11の配列については、本実施形態においても適宜適切に設定されれば良い。
【0051】
以上より、本実施形態では、流路1を流れる冷媒により光源部13を冷却する。また、流路1を流れる冷媒に対して、反対の方向に流れる流路2の冷媒が流路1の冷媒と熱交換を行うことによって、光源部13全域における複数のLEDチップ11の温度ムラを低減することができる。これにより、複数のLEDチップ11から発光した光の発光分布のムラを低減することができる。
【0052】
<第3実施形態>
第1実施形態や第2実施形態では、光源部13が二次元である例について説明した。本実施形態では、光源部13が二次元ではなく円筒形状である例について図8を参照して説明する。尚、光源装置10の基本的な構成については、第1実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。また、本実施形態で言及しない事項については、第1実施形態に従う。
【0053】
図8(a)は、本実施形態における円筒形状の光源装置10を正面方向から見た概略図であり、図8(b)は、本実施形態における円筒形状の光源装置10を側面方向から見た断面の概略図である。本実施形態における光源装置10は、LEDチップ41(固体発光素子)と電気基板42を含む光源部43、光学部材46を有する。電気基板42は円筒形状となっており、電気基板42の外向きにLEDチップ41が配列される。本実施形態では、LEDチップ41が配列されている電気基板42の円筒形状外側の面を電気基板42の第1面と呼び、LEDチップ41が配列されていない電気基板42の円筒形状内側の面を電気基板42の第2面と呼ぶ。
【0054】
光学部材46は、光源部43よりも径が大きく、光学部材46と光源部43が同心になるように配置される。電気基板42の第1面と光学部材46の間に形成される流路を流路1とし、電気基板42の第2面に形成される流路を流路2とする。流路1と流路2に冷媒が流れることにより、光源部13の第1面と第2面の両方を冷却する。第1実施形態や第2実施形態と同様に、流路1と流路2において冷媒が流れる方向は、反対の方向である。即ち、流路1と流路2で、反対側の端部から冷媒を流入させる。これにより、第1実施形態と同様に、光源部13の全体の温度ムラを低減させることができる。
【0055】
また、冷媒の流れに関して、流路1や流路2を一次元的に流れるのではなく、螺旋状に流れるように冷媒が流れる方向を案内するガイドを設けても良い。冷媒が流路内を螺旋状に流れる場合、流れの上流と下流の温度ムラだけでなく、円筒状の光源部の周方向の温度ムラも低減させることができる。また、螺旋状の送液では、第1実施形態の実施例2で説明したように、LEDチップ41が配列されている方向と冷媒が流れる方向とが異なる状態を容易に実現することができる。これにより冷却効率が向上し、LEDチップ41の温度上昇を抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、光源部43や光学部材46を円筒形状とした例について説明したが、それ以外の形状でも良い。例えば、光源部43や光学部材46は、角管形状や、曲がり管形状等でも良く、LEDチップ41を配列する面は、平面であっても、曲面であっても良い。尚、第1実施形態の実施例1で説明した流路1や流路2に関するパラメータの変更や、第1実施形態の実施例2で説明したLEDチップの配列については、本実施形態においても適宜適切に設定されれば良い。
【0057】
以上より、本実施形態では、円筒形状の電気基板42に配列された複数のLEDチップ41の温度ムラを低減することができる。これにより、複数のLEDチップ41から発光する光の光量分布のムラを低減することができる。尚、第1~第3実施形態で説明した内容はそれぞれ組み合わせて実施されても良い。
【0058】
<照明装置の実施形態>
次に、図9を用いて照明光学系の例を説明する。図9は照明光学系50の概略断面図である。照明光学系50は、光源装置10、集光レンズ51、コンデンサレンズ52、インテグレータ光学系53、コンデンサレンズ54を有する。光源装置10から出た光束は、集光レンズ51とコンデンサレンズ52を通過して、インテグレータ光学系53に至る。集光レンズ51は、光源装置10のLEDチップ(或いは、光源装置10の光学部材に含まれている集光レンズ)の位置に対応して設けられた各レンズを有するレンズアレイである。
【0059】
コンデンサレンズ52は、光源装置10の射出面位置とインテグレータ光学系53の入射面位置が、光学的にフーリエ共役面になるように設計されている。このような照明系をケーラー照明と呼ぶ。コンデンサレンズ52は、図9では平凸レンズ1枚を描いているが、実際は複数のレンズ群で構成されることが多い。インテグレータ光学系53を用いることにより、インテグレータ光学系53の射出面位置には、光源部51の射出面と共役な複数の二次光源像が形成される。インテグレータ光学系53の射出面から射出された光は、コンデンサレンズ54を介して照明面55に至る。
【0060】
インテグレータ光学系53は、光強度分布を均一化させる機能を有する。インテグレータ光学系53には、オプティカルインテグレータレンズやロッドレンズが用いられ、照射面55の照度均一度を改善する。
【0061】
コンデンサレンズ54は、インテグレータ光学系53の射出面と照明面55が光学的にフーリエ共役面になるように設計されており、インテグレータ光学系53の射出面またはその共役面は照明光学系の瞳面となる。その結果、照明面55において、ほぼ均一な光強度分布を作成することができる。
【0062】
上記の光源装置10や照明光学系50は各種照明装置に適用でき、光硬化性樹脂を照明する装置、被検物を照明して検査する装置、リソグラフィ装置などにも用いることができる。例えば、マスクのパターンを基板に露光する露光装置、マスクレス露光装置、型を用いて基板にパターンを形成するインプリント装置、又は、平坦層形成装置に適用することできる。
【0063】
<露光装置の実施形態>
本実施形態では、上記の光源装置10や照明光学系50を露光装置に適用した場合について説明する。図10は、露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、半導体素子や液晶表示素子の製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板上にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置100は、マスクを介して基板を露光して、マスクのパターンを基板に転写する。露光装置100は、本実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置、所謂、走査型露光装置であるが、ステップ・アンド・リピート方式やその他の露光方式を採用しても良い。
【0064】
露光装置100は、マスク101を照明する照明光学系50、マスク101のパターンを基板102上に投影する投影光学系103を有する。投影光学系103はレンズからなる投影レンズや、ミラーを用いた反射型投影系でもよい。
【0065】
照明光学系50は、光源装置1からの光をマスク101に照明する。マスク101には、基板102に形成すべきパターンに対応するパターンが形成されている。マスク101は、マスクステージ104に保持されており、基板102は、基板ステージ105に保持されている。
【0066】
マスク101と基板102とは、投影光学系103を介して、光学的にほぼ共役な位置に配置されている。投影光学系103は、物体を像面に投影する光学系である。投影光学系103には、反射系、屈折系、反射屈折系を適用することができる。投影光学系103は、本実施形態では、所定の投影倍率を有し、マスク101に形成されたパターンを基板102に投影する。そして、マスクステージ104及び基板ステージ105を、投影光学系103の物体面と平行な方向に、投影光学系103の投影倍率に応じた速度比で走査する。これにより、マスク101に形成されたパターンを基板102に転写することができる。
【0067】
<照射装置の実施形態>
本実施形態では、上記の光源装置10や照明光学系50を照射装置300に適用した場合について説明する。図11は、照射装置300の構成を示す概略図である。照射装置300は、被照射物301に紫外線の波長領域である照射光302を照射する紫外線照射装置として機能する。照射装置300は、光源装置10、照射制御装置303、制御部304を有する。
【0068】
被照射物301は、紫外線の照射を受けるものであれば、特に限定はされない。固体、液体、気体やその組み合わせであっても良い。照射光302は、被照射物301に何らかの作用を与える波長特性を有する紫外線である。照射光302の作用としては、殺菌処理、表面処理等が考えられる。
【0069】
照射制御装置303は、光源装置10を制御する制御部304と接続され、制御部304との通信を行う。照射制御装置303から制御部304へと電流出力のオンオフ信号、出力電流の指令値等を出力し、制御部304を制御する。また、制御部304がLEDチップの故障を検出した場合、制御部304から照射制御装置303に故障検知信号が出力される。
【0070】
<物品の処理の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、FPDを製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板上に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 流路(第1流路に対応)
2 流路(第2流路に対応)
10 光源装置
11 LEDチップ
12 電気基板
16 光学部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11