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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】記録装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241105BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/18
B41J2/165 207
B41J2/165 401
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020197647
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085777
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 光
(72)【発明者】
【氏名】羽根 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木村 了
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110831(JP,A)
【文献】特開2011-189647(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222948(JP,U)
【文献】特開2004-034702(JP,A)
【文献】特開2005-131969(JP,A)
【文献】国際公開第2020/169321(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/018876(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111016439(CN,A)
【文献】特開2010-005856(JP,A)
【文献】特開2012-171345(JP,A)
【文献】特開2020-059138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0114647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドとの相対移動により前記吐出面に接触してクリーニング液を付与する付与手段と、
前記吐出面に沿って移動することによって前記吐出口から液体を吸引する吸引手段と、
前記付与手段により前記クリーニング液を付与した後に、記吸引手段により前記吐出口から液体を吸引する第一のクリーニングモードを実行する制御手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記付与手段により前記クリーニング液を付与せずに、前記吸引手段により前記吐出口から液体を吸引する第二のクリーニングモードを実行することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前回のクリーニング後に前記記録ヘッドから吐出された吐出数に基づいて前記第一のクリーニングモードと前記第二のクリーニングモードのいずれを実行するか選択することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記吐出数が第1値の場合は前記第一のクリーニングモードを実行し、前記吐出数が前記第1値より少ない第2値の場合は前記第二のクリーニングモードを実行することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記付与手段は、回転可能なローラであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記吸引手段による吸引の後、前記記録ヘッドに予備吐出させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドへ供給される液体を貯留する貯留部と、
前記記録ヘッドと前記貯留部との間で液体を循環させる循環手段と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドは、記録媒体の幅に相当する範囲に前記吐出口が設けられたラインヘッドであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドを液体の色毎に複数備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記付与手段と前記吸引手段を液体の色毎に複数備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドにより記録する記録工程と、
前記記録ヘッドとの相対移動により前記吐出面に接触してクリーニング液を付与する付与工程と、
前記付与工程により前記クリーニング液を付与した後に、記吐出口から液体を吸引する第一のクリーニングモードを実行する工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
前記付与工程を行わずに、前記クリーニング液を付与しない状態で前記吐出口から液体を吸引する第二のクリーニングモードを実行する工程を有することを特徴とする請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記第一のクリーニングモードと前記第二のクリーニングモードのいずれを実行するか選択する選択工程を有することを特徴とする請求項12に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、録装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドにおいては、液体を吐出する吐出口近傍にミストや紙粉などが付着すると吐出不良が発生する場合がある。そのため、吐出口近傍及び吐出口が形成される吐出口面を定期的にクリーニングする必要がある。クリーニング方法としては、従来技術として、ワイパブレードによる吐出口面のワイピング、ウェブや多孔質体での払拭、及びこれらの方法と液体を併用した様態などが知られている。
【0003】
特許文献1には、洗浄液が塗布されたノズル形成面をブレードにより払拭した後、吸引除去部によりヘッドユニット間の隙間に入り込んだ液体を除去する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、洗浄液が供給された払拭ウェブから余剰な洗浄液を回収する洗浄液回収部を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-005856号公報
【文献】特開2012-171345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、塗布された洗浄液をブレードによってノズル内に押し込んでしまう場合があった。さらに、特許文献2の構成では、洗浄液回収部により洗浄液を過剰に回収することで、吐出口面の清掃が充分に行われない場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドにより記録する画像品位の低下を抑制する記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る記録装置は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドとの相対移動により前記吐出面に接触してクリーニング液を付与する付与手段と、前記吐出面に沿って移動することによって前記吐出口から液体を吸引する吸引手段と、前記付与手段により前記クリーニング液を付与した後に、記吸引手段により前記吐出口から液体を吸引する第一のクリーニングモードを実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録ヘッドにより記録する画像品位の低下を抑制する記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る記録システムの概要図である。
図2】第1実施形態に係る記録ユニットの斜視図である。
図3】第1実施形態に係る記録ユニットの変位態様の説明図である。
図4】第1実施形態に係る記録システムの制御系のブロック図である。
図5】第1実施形態に係る記録システムの制御系のブロック図である。
図6】第1実施形態に係る記録システムの動作例の説明図である。
図7】第1実施形態に係る記録システムの動作例の説明図である。
図8】第1実施形態に係る記録装置の回復ユニットの上面斜視図である。
図9】第1実施形態に係る記録装置のクリーニングユニットの上面斜視図である。
図10】第1実施形態に係る記録装置のクリーニングユニットの透過断面図である。
図11】第1実施形態に係る記録装置のイコライズユニットの上面斜視図である。
図12】第1実施形態に係る記録装置の吸引ワイピングユニットの上面斜視図である。
図13】第1実施形態に係る記録装置のキャップユニットを駆動する駆動部の上面斜視図である。
図14】第1実施形態に係る記録装置の吸引ワイピングユニットの上面斜視図である。
図15】第1実施形態に係る記録装置のキャップユニットの詳細構成を説明する図である。
図16】第1実施形態に係る記録装置のクリーニングモードを選択するためのフローチャートである。
図17】第1実施形態に係る記録装置の第一のクリーニングモードを説明するフローチャートである。
図18】第1実施形態に係る記録装置の第二のクリーニングモードを説明するフローチャートである。
図19】第1実施形態に係る記録装置の第一のクリーニングモードにおけるキャリッジの移動を説明する模式図である。
図20】第1実施形態に係る記録装置の吸引ワイピングユニットの移動を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状等はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。各図において、矢印XおよびYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向を示す。
【0012】
〔第1実施形態〕
<記録システム>
図1は本発明の一実施形態に係る記録システム1を概略的に示した正面図である。記録システム1は、転写体2を介して記録媒体Pにインク像を転写することで記録物P’を製造する、枚葉式のインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)である。記録システム1は、記録装置1Aと、搬送装置1Bとを含む。本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向が、それぞれ、奥行き方向、記録システム1の幅方向(全長方向)、高さ方向を示している。記録媒体PはY方向に搬送される。
【0013】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0014】
インクの成分については、特に限定はないが、本実施形態では、色材、水、樹脂を含む水性顔料インクを用いる場合を想定する。
【0015】
<記録装置>
記録装置1Aは、記録ユニット3、転写ユニット4および周辺ユニット5A~5D、および、供給ユニット6を含む。
【0016】
<記録ユニット>
記録ユニット3は、複数の記録ヘッド30と、キャリッジ31とを含む。図1図2を参照する。図2は記録ユニット3の斜視図である。記録ヘッド30は、転写体2に液体インクを吐出し、転写体2上に、記録画像のインク像を形成する。
【0017】
本実施形態の場合、各記録ヘッド30は、X方向に延設されたフルライン記録ヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分に相当する範囲にノズル(吐出口)が配列されている。記録ヘッド30は、その端部に、ノズルが開口したインク吐出面を有しており、インク吐出面は、微小隙間(例えば数mm)を介して転写体2の表面に対向している。本実施形態の場合、転写体2は円軌道上を循環的に移動する構成であるため、複数の記録ヘッド30は、放射状に配置されている。
【0018】
各ノズルには吐出素子が設けられている。吐出素子は、例えば、ノズル内に圧力を発生させてノズル内のインクを吐出させる素子であり、公知のインクジェットプリンタのインクジェット記録ヘッドの技術が適用可能である。吐出素子としては、例えば電気-熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する素子、電気-機械変換体によってインクを吐出する素子、静電気を利用してインクを吐出する素子等が挙げられる。高速で高密度の記録の観点からは電気-熱変換体を利用した吐出素子を用いることができる。
【0019】
本実施形態の場合、記録ヘッド30は、9つ設けられている。各記録ヘッド30は、互いに異なる種類のインクを吐出する。異なる種類のインクとは、例えば、色材が異なるインクであり、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク等のインクである。各記録ヘッド30は一種類のインクを吐出するが、複数種類のインクを吐出する構成であってもよい。このように複数の記録ヘッド30を設けた場合、そのうちの一部が色材を含まないインク(例えばクリアインク)を吐出してもよい。
【0020】
キャリッジ31は、複数の記録ヘッド30を支持する。各記録ヘッド30は、インク吐出面側の端部がキャリッジ31に固定されている。これにより、インク吐出面と転写体2との表面の隙間をより精密に維持することができる。キャリッジ31は、案内部材RLの案内によって、記録ヘッド30を搭載しつつ変位可能に構成されている。本実施形態の場合、案内部材RLは、X方向に延設されたレール部材であり、Y方向に離間して一対設けられている。キャリッジ31のX方向の各側部にはスライド部32が設けられている。スライド部32は案内部材RLと係合し、案内部材RLに沿ってX方向にスライドする。
【0021】
図3は記録ユニット3の変位態様を示しており、記録システム1の右側面を模式的に示した図である。記録システム1の後部には回復ユニット12が設けられている。回復ユニット12は記録ヘッド30の吐出性能を回復する機構であり、記録ヘッド30の保守装置として機能する。回復ユニット12には、例えば、記録ヘッド30のインク吐出面33をキャッピングするキャップ機構、インク吐出面33をクリーニングするクリーニング機構、インク吐出面33から記録ヘッド30内のインクを負圧吸引する吸引機構が設けられている。
【0022】
案内部材RLは、転写体2の側方から回復ユニット12に亘って延設されている。記録ユニット3は、案内部材RLの案内により、実線で記録ユニット3を示した吐出位置POS1と、破線で記録ユニット3を示したキャップ位置POS2との間で変位可能であり、不図示の駆動機構により移動される。
【0023】
さらに、記録ユニット3は、不図示の案内部材の案内によりZ方向においても吐出位置POS3と退避位置POS4、キャップ位置POS5へと各々変位可能に構成され、不図示の駆動機構により移動される。
【0024】
X方向における吐出位置POS1かつ、Z方向における吐出位置POS3は、記録ユニット3が転写体2にインクを吐出する位置であり、記録ヘッド30のインク吐出面33が転写体2の表面に対向する位置である。
【0025】
退避位置POS4は、吐出位置POS3からZ方向に上昇した位置であり、記録ユニット3が回復ユニット12直上のキャップ位置POS2へ移動するために経由する位置である。Z方向において退避位置POS4へ移動した状態で、X方向においてキャップ位置POS2への移動が完了したのち、Z方向に下降し、キャップ位置POS5へと移動する。回復ユニット12は記録ユニット3がキャップ位置へ移動する過程及び移動完了後に種々の回復動作を行う。詳細は後述する。
【0026】
<転写ユニット>
図1を参照して転写ユニット4について説明する。転写ユニット4は、転写胴41と圧胴42とを含む。これらの胴は、X方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。図1において、転写胴41および圧胴42の各図形内に示した矢印は、これらの回転方向を示しており、転写胴41は時計回りに、圧胴42は反時計回りに回転する。
【0027】
転写胴41は、その外周面に転写体2を支持する支持体である。転写体2は、転写胴41の外周面上に、周方向に連続的にあるいは間欠的に設けられる。連続的に設けられる場合、転写体2は無端の帯状に形成される。間欠的に設けられる場合、転写体2は、有端の帯状に複数のセグメントに分けて形成され、各セグメントは転写胴41の外周面に等ピッチで円弧状に配置することができる。
【0028】
転写胴41の回転により、転写体2は円軌道上を循環的に移動する。転写胴41の回転位相により、転写体2の位置は、形成領域R1、転写前処理領域R2およびR3、転写領域R4、転写後処理領域R5、吐出前処理領域R6に区別することができる。転写体2はこれらの領域を循環的に通過する。
【0029】
形成領域R1は、記録ユニット3が転写体2にインクを吐出してインク像を形成する領域である。転写前処理領域R2およびR3は転写前にインク像に対する処理を行う処理領域であり、転写前処理領域R2は周辺ユニット5Aによる処理が行われる領域であり、転写前処理領域R3は周辺ユニット5Bによる処理が行われる領域である。転写領域R4は転写ユニット4により転写体2上のインク像が記録媒体Pに転写される領域である。転写後処理領域R5は、転写後に転写体2に対する後処理を行う領域であり、周辺ユニット5Cによる処理が行われる領域である。吐出前処理領域R6は、インクの吐出前に転写体2に対する前処理(本実施形態の場合反応液の付与)を行う領域であり、周辺ユニット5Dによる処理が行われる領域である。
【0030】
本実施形態の場合、形成領域R1は、一定の区間を有する領域であり、他の領域R2~R4は実質的に点(換言すると線)の領域である。時計の文字盤に喩えると、本実施形態の場合、形成領域R1は概ね11時から1時の範囲であり、転写前処理領域R2は概ね2時の位置であり、転写前処理領域R3は概ね4時の位置である。転写領域R4は概ね6時の位置であり、転写後処理領域R5は概ね8時の領域であり、吐出前処理領域R6は概ね10時の位置である。
【0031】
転写体2は、単層から構成してもよいが、複数層の積層体としてもよい。複数層で構成する場合、例えば、表面層、弾性層、圧縮層の三層を含んでもよい。表面層はインク像が形成される画像形成面を有する最外層である。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速記録時においても転写性を維持することができる。弾性層は表面層と圧縮層との間の層である。
【0032】
表面層の材料としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。表面層には、反応液の濡れ性、転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
【0033】
圧縮層の材料としては、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。このようなゴム材料の成形時には、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し、多孔質のゴム材料としてもよい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがあるが、いずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
【0034】
弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料を用いることができる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。また、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で有利である。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも有利である。
【0035】
表面層と弾性層の間、弾性層と圧縮層の間には、これらを固定するために各種接着剤や両面テープを用いることもできる。また、転写体2は、転写胴41に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を含んでもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体2は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
【0036】
圧胴42は、その外周面が転写体2に圧接される。圧胴42の外周面には、記録媒体Pの先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。グリップ機構は圧胴42の周方向に離間して複数設けてもよい。記録媒体Pは圧胴42の外周面に密接して搬送されつつ、圧胴42と転写体2とのニップ部を通過するときに、転写体2上のインク像が転写される。
【0037】
<周辺ユニット>
周辺ユニット5A~5Dは転写胴41の周囲に配置されている。本実施形態の場合、周辺ユニット5A~5Dは、順に、吸収ユニット、加熱ユニット、清掃ユニット、付与ユニットである。
【0038】
吸収ユニット5Aは、転写前に、転写体2上のインク像から液分を吸収する機構であり、本実施形態の場合、特に、インク像から水分を吸収することを目的とした機構である。インク像の水分を減少することで、記録媒体Pに記録される画像のにじみ等を抑制することができる。吸収ユニット5Aは、例えば、インク像に接触してインク像の水分量を減少させる吸収部材を含む。収部材はローラの外周面に形成されてもよいし、吸収部材が無端のシート状に形成され、循環的に走行されるものでもよい。インク像の保護の点で、吸収部材は転写体2と同期して移動してもよく、その移動速度は転写体2の周速度と同じであってもよい。吸収部材は、インク像に接触する多孔質体を含んでもよい。インク固形分付着を抑制するため、多孔質体の平均孔径は、10μm以下であってもよい。
【0039】
加熱ユニット5Bは、転写前に、転写体2上のインク像を加熱する機構である。インク像を加熱することで、インク像中の樹脂が溶融し、インク像の膜が像膜され、記録媒体Pへの転写性を向上する。加熱温度は、樹脂の最低像膜温度(MFT)以上とすることができる。MFTは一般的に知られている手法、例えばJIS K 6828-2:2003や、ISO2115:1996に準拠した各装置で測定することが可能である。転写性及び画像の堅牢性の観点から、MFTよりも10℃以上高い温度で加熱してもよく、更に、20℃以上高い温度で加熱してもよい。加熱ユニット5Bは、例えば、赤外線等の各種ランプ、温風ファン等、公知の加熱デバイスを用いることができる。加熱効率の点で、赤外線ヒータを用いることができる。
【0040】
清掃ユニット5Cは、転写後に転写体2上を清掃する機構である。清掃ユニット5Cは、転写体2に残留したインクや、転写体2上のごみ(例えば紙粉)等を除去する。清掃ユニット5Cは、例えば、多孔質部材を転写体2に接触させる方式、ブラシで転写体2の表面を擦る方式、ブレードで転写体2の表面をかきとる方式等の公知の方式を適宜用いることができる。また、清掃に用いる清掃部材は、ローラ形状、ウェブ形状等、公知の形状を用いることができる。
【0041】
付与ユニット5Dは、清掃ユニット5Cによる清掃後、記録ユニット3によるインクの吐出前に、転写体2上に反応液を付与する機構である。反応液は色材の凝集を促進させる液体であり、例えば、インク高粘度化成分を含有する。インク高粘度化成分は、金属イオン、高分子凝集剤など、特に制限はないが、インクのpH変化を引き起こして、インク中の色材を凝集させる物質を用いることができ、有機酸を用いることができる。
【0042】
反応液の付与機構としては、例えば、ローラ、記録ヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。転写体2に対するインクの吐出前に反応液を転写体2に付与することで、隣接するインク同士が混ざり合うブリーディングや、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングを抑制することができる。
【0043】
以上の通り、本実施形態では、吸収ユニット5A、加熱ユニット5B、清掃ユニット5C、付与ユニット5Dを周辺ユニットとして備えるが、これらの一部のユニットに転写体2の冷却機能を付与するか、あるいは、冷却ユニットを追加してもよい。本実施形態では、加熱ユニット5Bの熱により転写体2の温度が上昇する場合がある。記録ユニット3により転写体2にインクを吐出した後、インク像がインクの主溶剤である水の沸点を超えると、吸収ユニット5Aによる水分の吸収性能が低下する場合がある。吐出されたインクが水の沸点未満に維持されるように転写体2を冷却することで、水分の吸収性能を維持することができる。
【0044】
冷却ユニットは、転写体2に送風する送風機構や、転写体2に部材(例えばローラ)を接触させ、この部材を空冷または水冷で冷却する機構であってもよい。また、清掃ユニット5Cの清掃部材を冷却する機構であってもよい。冷却タイミングは、転写後、反応液の塗布前までの期間であってもよい。
【0045】
<供給ユニット>
供給ユニット6は、記録ユニット3の各記録ヘッド30にインクを供給する機構である。供給ユニット6は記録システム1の後部側に設けられていてもよい。供給ユニット6は、インクの種類毎に、インクを貯留する貯留部TKを備える。貯留部TKは、メインタンクとサブタンクとによって構成されてもよい。各貯留部TKと各記録ヘッド30とは流路6aで連通し、貯留部TKから記録ヘッド30へインクが供給される。
【0046】
流路6aは、貯留部TKと記録ヘッド30との間でインクを循環させる流路であってもよく、供給ユニット6はインクを循環させるポンプ等を備えてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インク中の気泡を脱気する脱気機構を設けてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インクの液圧と大気圧との調整を行うバルブを設けてもよい。貯留部TK内のインク液面が、記録ヘッド30のインク吐出面33よりも低い位置となるように、貯留部TKと記録ヘッド30のZ方向の高さが設計されてもよい。
【0047】
<搬送装置>
搬送装置1Bは、記録媒体Pを転写ユニット4へ給送し、インク像が転写された記録物P’を転写ユニット4から排出する装置である。搬送装置1Bは、給送ユニット7、複数の搬送胴8、8a、二つのスプロケット8b、チェーン8cおよび回収ユニット8dを含む。図1において、搬送装置1Bの各構成の図形の内側の矢印はその構成の回転方向を示し、外側の矢印は記録媒体Pまたは記録物P’の搬送経路を示している。記録媒体Pは給送ユニット7から転写ユニット4へ搬送され、記録物P’は転写ユニット4から回収ユニット8dへ搬送される。給送ユニット7側を搬送方向で上流側と呼び、回収ユニット8d側を下流側と呼ぶ場合がある。
【0048】
給送ユニット7は、複数の記録媒体Pが積載される積載部を含むと共に、積載部から一枚ずつ記録媒体Pを、最上流の搬送胴8に給送する給送機構を含む。各搬送胴8、8aはX方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。各搬送胴8、8aの外周面には、記録媒体P(または記録物P’)の先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。各グリップ機構は、隣接する搬送胴間で記録媒体Pを受け渡されるように、その把持動作および解除動作が制御される。
【0049】
二つの搬送胴8aは、記録媒体Pの反転用の搬送胴であり、片面記録の場合、記録媒体Pの搬送には用いられない。記録媒体Pを両面記録する場合、表面への転写後に、圧胴42から下流側に隣接する搬送胴8へ記録媒体Pを渡さずに、搬送胴8aに渡す。記録媒体Pは、二つの搬送胴8aを経由して表裏が反転され、圧胴42の上流側の搬送胴8を経由して再び圧胴42へ渡される。これにより、記録媒体Pの裏面が転写胴41に面することになり、裏面にインク像が転写される。
【0050】
チェーン8cは、二つのスプロケット8b間に巻き回されている。二つのスプロケット8bの一方は駆動スプロケットであり他方は従動スプロケットである。駆動スプロケットの回転によりチェーン8cが循環的に走行する。チェーン8cには、その長手方向に離間して複数のグリップ機構が設けられている。グリップ機構は、記録物P’の端部を把持する。下流端に位置する搬送胴8からチェーン8cのグリップ機構に記録物P’が渡され、グリップ機構に把持された記録物P’はチェーン8cの走行により回収ユニット8dへ搬送され、把持が解除される。これにより記録物P’が回収ユニット8d内に積載される。
【0051】
<後処理ユニット>
搬送装置1Bには、後処理ユニット10A、10Bが設けられている。後処理ユニット10A、10Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’に対して後処理を行う機構である。後処理ユニット10Aは、記録物P’の表面に対する処理を行い、後処理ユニット10Bは、記録物P’の裏面に対する処理を行う。処理の内容としては、例えば、記録物P’の画像記録面に、画像の保護や艶出し等を目的としたコーティングを挙げることができる。コーティングの内容としては、例えば、液体の塗布、シートの溶着、ラミネート等を挙げることができる。
【0052】
<検査ユニット>
搬送装置1Bには、検査ユニット9A、9Bが設けられている。検査ユニット9A、9Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’の検査を行う機構である。
【0053】
本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Aは、連続的に行われる記録動作中に、記録画像を撮影する。検査ユニット9Aが撮影した画像に基づいて、記録画像の色味などの経時変化を確認し、記録データの補正の可否を判断することができる。本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、圧胴42の外周面に撮像範囲が設定されており、転写直後の記録画像を部分的に撮影可能に配置されている。検査ユニット9Aにより全記録画像の検査を行ってもよいし、所定数毎に検査を行ってもよい。
【0054】
本実施形態の場合、検査ユニット9Bも、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Bは、テスト記録動作において記録画像を撮影する。検査ユニット9Bは、記録画像の全体を撮影し、検査ユニット9Bが撮影した画像に基づいて、記録データに関する各種の補正の基本設定を行うことができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’を撮影する位置に配置されている。検査ユニット9Bにより記録画像を撮影する場合、チェーン8cの走行を一時的に停止して、その全体を撮影する。検査ユニット9Bは、記録物P’上を走査するスキャナであってもよい。
【0055】
<制御ユニット>
次に、記録システム1の制御ユニットについて説明する。図4および図5は記録システム1の制御ユニット13のブロック図である。制御ユニット13は、上位装置(DFE)HC2に通信可能に接続され、また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続される。
【0056】
ホスト装置HC1では、記録画像の元になる記録データが生成される。ここでの記録データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この記録データは、上位装置HC2へ送信され、上位装置HC2では、受信した記録データを制御ユニット13で利用可能なデータ形式(例えば、CMYKカラーのデータ)に変換する。変換後の記録データが上位装置HC2から制御ユニット13へ送信され、制御ユニット13は受信した記録データに基づき、記録動作を開始する。
【0057】
本実施形態の場合、制御ユニット13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インタフェース)135、バッファ136および通信I/F137を含む。
【0058】
処理部131は、CPU等のプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスであり、CPU131が実行するプログラムや、データを格納し、また、CPU131にワークエリアを提供する。操作部133は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力デバイスであり、ユーザの指示を受け付ける。
【0059】
画像処理部134は例えば画像処理プロセッサを有する電子回路である。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクやSSDである。通信I/F135は上位装置HC2との通信を行い、通信I/F137はエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。図4において破線矢印は、記録データの処理の流れを例示している。上位装置HC2から通信I/F135を介して受信された記録データは、バッファ136に蓄積される。画像処理部134はバッファ136から記録データを読み出し、読み出した記録データに所定の画像処理を施して、再びバッファ136に格納する。バッファ136に格納された画像処理後の記録データは、通信I/F137からエンジンコントローラ13Bへ送信される。
【0060】
図5に示すように、エンジンコントローラ13Bは、制御部14、15A~15Eを含み、記録システム1が備えるセンサ群およびアクチュエータ群16の検知結果の取得および駆動制御を行う。これらの各制御部は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェースを含む。なお、制御部の区分けは一例であり、一部の制御を更に細分化した複数の制御部で実行してもよいし、逆に、複数の制御部を統合して、それらの制御内容を一つの制御部で行うように構成してもよい。
【0061】
エンジン制御部14は、エンジンコントローラ13Bの全体の制御を行う。記録制御部15Aは、メインコントローラ13Aから受信した記録データをラスタデータ等、記録ヘッド30の駆動に適したデータ形式に変換する。記録制御部15Aは、各記録ヘッド30の吐出制御を行う。
【0062】
転写制御部15Bは、付与ユニット5Aの制御、吸収ユニット5Bの制御、加熱ユニット5Cの制御、および清掃ユニット5Dの制御を行う。
【0063】
信頼性制御部15Cは、供給ユニット6の制御、回復ユニット12の制御、および記録ユニット3を吐出位置POS1と回復位置POS3との間で移動させる駆動機構の制御を行う。
【0064】
搬送制御部15Dは、搬送装置1Bの制御を行う。検査制御部15Eは、検査ユニット9Bの制御、および検査ユニット9Aの制御を行う。
【0065】
センサ群およびアクチュエータ群16のうち、センサ群には、可動部の位置や速度を検知するセンサ、温度を検知するセンサ、撮像素子等が含まれる。アクチュエータ群にはモータ、電磁ソレノイド、電磁バルブ等が含まれる。
【0066】
<動作例>
図6は記録動作の例を模式的に示す図である。転写胴41および圧胴42が回転されつつ、以下の各工程が循環的に行われる。状態ST1に示すように、始めに転写体2上に付与ユニット5Dから反応液Lが付与される。転写体2上の反応液Lが付与された部位は転写胴41の回転に伴って移動していく。反応液Lが付与された部位が記録ヘッド30の下に到達すると、状態ST2に示すように記録ヘッド30から転写体2にインクが吐出される。これによりインク像IMが形成される。その際、吐出されるインクが転写体2上の反応液Lと混ざりあうことで、色材の凝集が促進される。吐出されるインクは、供給ユニット6の貯留部TKから記録ヘッド30に供給される。
【0067】
転写体2上のインク像IMは転写体2の回転に伴って移動していく。インク像IMが吸収ユニット5Aに到達すると状態ST3に示すように吸収ユニット5Aによりインク像IMから水分が吸収される。インク像IMが加熱ユニット5Bに到達すると状態ST4に示すように加熱ユニット5Bによりインク像IMが加熱され、インク像IM中の樹脂が溶融し、インク像IMの膜が像膜される。このようなインク像IMの形成に同期して、搬送装置1Bにより記録媒体Pが搬送される。
【0068】
状態ST5に示すように、インク像IMと記録媒体Pとが転写体2と圧胴42とのニップ部に到達し、記録媒体Pにインク像IMが転写され、記録物P’が製造される。ニップ部を通過すると、記録物P’に記録された画像が検査ユニット9Aにより撮影され、記録画像が検査される。記録物P’は搬送装置1Bにより回収ユニット8dへ搬送される。
【0069】
転写体2上のインク像IMが形成されていた部分は、清掃ユニット5Cに到達すると状態ST6に示すように清掃ユニット5Cにより清掃される。清掃後、転写体2は一回転したことになり、同様の手順で記録媒体Pへのインク像の転写が繰り返し行われる。上記の説明では理解を容易にするために、転写体2の一回転で一枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が一回行われるように説明したが、転写体2の一回転で複数枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が連続的に行うことができる。
【0070】
このような記録動作を継続していくと、各記録ヘッド30のクリーニングが必要となる。図7は各記録ヘッド30のクリーニングの際の動作例を示している。状態ST11は、吐出位置POS1に記録ユニット3が位置している状態を示す。状態ST12は、記録ユニット3が回復位置POS2に変位された状態を示す。その後、状態ST13に示すように、回復ユニット12により記録ユニット3の各記録ヘッド30の性能を回復する処理が実行される。
【0071】
<回復ユニット>
本実施形態の回復ユニット12について詳細に説明を行う。図8は、回復ユニット12の上面斜視図である。回復ユニット12は、クリーニングユニット200とイコライズユニット300とが、X方向に沿って配列されている。また、クリーニングユニット200とイコライズユニット300は、各記録ヘッド30に対してそれぞれ設けられている。
【0072】
図9は、クリーニングユニット200の上面斜視図を示す。クリーニングユニット200は、インク吐出面33にクリーニング液を付与するための回転可能なクリーニングローラ210、クリーニングローラ210を回転させる回転モータ220、回転モータ220に接続される駆動列221を備える。さらにクリーニングユニット200は、クリーニングローラ210に液体を付与する液体付与ノズル230、クリーニングローラ210を絞るための絞りローラ240、及び絞りローラ240をクリーニングローラ210に当接させるエアシリンダ241を備える。
【0073】
クリーニングローラ210は、樹脂もしくは金属材質で構成される芯金ローラに対して、所定の厚みを有する円筒形状の多孔質体を組付けたものである。本実施形態においては多孔質体として厚みが10mmのポリウレタン系の材質を使用する。しかしながら、インク及びクリーニング液に対する接液性、保水性、クリーニング性能など各機能条件を満たすものであれば本材料に限られるものではない。芯金ローラの軸方向一端には、駆動列に接続するためのギア221aが設けられる。
【0074】
クリーニングローラ210は、記録ヘッド30のインク吐出面33に対して所定の押圧力を有して接するように構成される。本実施形態では、0.5~1.0kgfの押圧力となるように構成される。押圧力は、クリーニング条件やクリーニングローラ210の材質、ヘッド吐出面の耐久性などに応じて適宜設定される。すなわち、条件によっては微接触程度でもよいし、1.0kgfを超える押圧力であっても本発明の効果が損なわれるものではない。また、押圧力でなく、多孔質体の弾性力を利用したインク吐出面33に対する進入量による管理を行ってもよい。その場合は多孔質体の厚みの5~20%の進入量が適しているが、5%未満や20%を超える進入量であったとしても本発明の効果が損なわれるものではない。
【0075】
図10は、クリーニングユニット200をY方向から見たときの透過断面図である。絞りローラ240は、クリーニングローラ210に供給された液の余剰分を絞り出すことで、クリーニングローラ210をメンテナンスすることを目的として構成される。絞りローラ240は樹脂もしくは金属材質で形成されており、回転軸中心に回転するように構成される。
【0076】
絞りローラ240は駆動列221に接続されるものではなく、後述する動作の際にクリーニングローラ210の回転に合わせ従動回転する。ただし、本発明の効果を得るために、絞りローラ240が従動回転する構成に限定されるものではない。また、回転軸はエアシリンダ241にリンクを介して接続され、クリーニングローラ210の法線方向に当接及び離間の動作を切り替え可能に構成される。
【0077】
絞りローラ240のクリーニングローラ210に対する進入量は、クリーニングローラ210の厚みに対する50%としている。しかしながら、進入量はクリーニング部材の厚みの90%程度からほぼ0%=微接触状態まで幅広い範囲に設定可能であるものとする。すなわち、進入量は、使用する記録ヘッド30の構成部材、インク組成、印刷時間などによって広く変動するパラメータであり、より強力に絞りたい場合は進入量を増加させる。また、本発明の効果は絞りローラ240の有無に左右されるものではなく、例えばクリーニング部材を定期交換可能に構成される場合などは絞りローラ240は構成されなくてもよい。
【0078】
液体付与ノズル230は、別途構成される液供給ユニットからのポンプによる送液により、クリーニング液をクリーニングローラ210に付与する。液体付与ノズル230は、円筒形状側面に直径0.3mm程度の穴を6個並べて配置している。穴の直径は液体の粘度や供給量、経路の圧力損失によって0.1~1.5mm程度の範囲で適宜設定される。
【0079】
クリーニングローラ210に付与されるクリーニング液は、グリセリン及びアルカリ性溶剤、界面活性剤、水の混合物にて構成される。これらの構成比率は固着インクのクリーニング性、液槽の密閉度、記録ヘッド30の構成部材の耐薬品性などに応じて決定される。また、混合物の種類に関しても、条件さえ満たされれば水のみでもよく、こちらも一意に限定されるものではない。
【0080】
クリーニングユニット200の動作について説明する。回転モータ220を駆動し、駆動列221を介してクリーニングローラ210を回転させるとともに、液体付与ノズル230の当接とエアシリンダ241の駆動による絞りローラ240の当接を行う。実際に記録ヘッド30のクリーニングを行う際に各ユニットが同時に作用していればよいため、動作の序列は問わない。
【0081】
クリーニングローラ210の回転方向は、記録ヘッド30との相対的な移動方向と同じ方向に設定し、クリーニングローラ210の回転速度は、記録ヘッド30の相対速度との差が小さくなるように設定している。これは、記録ヘッド30(インク吐出面33)とクリーニングローラ210の双方の摩耗を低減するためである。しかしながら、インク吐出面33の汚れをより強力に取り除きたい場合は、回転方向を相対移動方向と逆方向に設定することも可能である。
【0082】
図11は、インク一色分のイコライズユニット300の上面斜視図である。イコライズユニット300内部には、吸引ワイピングユニット400およびキャップユニット500が含まれる。イコライズユニット300は、これらのユニットを記録ヘッド30に対して位置決めする役割を担う。また、イコライズユニット300は、不図示の昇降機構により、記録ヘッド30をキャッピングするキャップ位置POS5と、記録ヘッド30から退避する退避位置POS4と、を切り替え可能に構成される。
【0083】
イコライズユニット300内部において、吸引ワイピングユニット400はスライド可能に構成され、キャップユニット500は上下に昇降可能に構成される。図12(a)は、吸引ワイピングユニット400を駆動するための吸引ワイピングユニット駆動部を示す斜視図であり、図12(b)は駆動モータ430の周辺を示す拡大斜視図である。図12に示すように、駆動部としては、吸引ワイピングユニット400をスライドさせるための駆動レール410、駆動モータ430、駆動列440及び駆動伝達するための駆動ベルト420を含む。
【0084】
図13は、キャップユニット500を駆動するためのキャップユニット駆動部を示す斜視図である。駆動部としては、キャップユニット500を上下動させるエアシリンダ510、エアシリンダにより動作するカム520、カム520と係合するカムフォロワ530が含まれる。
【0085】
図14は、吸引ワイピングユニット400の詳細構成を示す上面斜視図である。吸引ワイピングユニット400は、インク吐出面33と当接してワイピングしながらインクを吸引する吸引ノズル450、吸引ノズル450を保持する吸引ノズルホルダ451及び吸引ユニットベース452を含む。吸引ノズル450は、別ユニットの吸引ポンプ(不図示)にチューブを介して接続される。
【0086】
吸引ノズル450は、ゴム状の弾性体で構成される。本実施形態においては、HNBR・ショアA硬度50±5にて構成される。しかしながら、その材質種及び硬度は本発明の効果を得るために限定されるものではなく、インク及びクリーニング液に対する接液性、吐出ノズル面に対する密着性、耐久性、対候性などの条件が満たされればよい。例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、EPDM、フッ素ゴムなどを用いてもよい。
【0087】
吸引ノズル450は、吸引ノズルホルダ451に組付けられる。吸引ノズルホルダ451は、吸引ノズル450の形状を保つように支え、さらに吸引ノズル450に負圧を発生させるための負圧経路の役割を担う。しかしながら、吸引ノズル450材質の硬度が高い場合は、吸引ノズル450の形状を保つように構成される必要はない。吸引ノズルホルダ451から吸引ポンプへの経路中間には適宜バルブや圧力センサが設けられる。
【0088】
吸引ノズルホルダ451は吸引ユニットベース452に上下スライド可能に取り付けられており、上方向に対してばね押圧力がかけられている。これは、吸引ノズルが吐出ノズル面に接触する際の密着性及び凹凸への追従性を高めるためである。吸引ユニットベース452は、駆動レール410へ摺動可能に連結される。また、駆動ベルト420を介して駆動列440および駆動モータ430へと接続される。
【0089】
吸引ポンプは、ダイアフラム型のドライ真空ポンプを採用している。インクより粘度の高いクリーニング液をインク吐出ノズルから吸い出すため、高真空度かつ高流量が求められるためである。真空ポンプは薬液の流入がない状態で使用することが好ましいため、上流に気液分離構成を有する。しかしながら、本発明の効果を得るにあたり、ポンプの形態は限定されるものではない。クリーニング液の粘度やインク吐出ノズルの形状など種々条件が見合えば、例えばチューブポンプや液体用ダイアフラムポンプなどを使用した形態も採用可能である。
【0090】
また、吸引ユニットベース452には、インク吐出面33の吐出領域外をワイピングするブレード460が設けられている。すなわち、インク吐出面33の吐出領域は吸引ノズル450によりワイピングと吸引が行われる。吸引ワイピングユニット400によるワイピングの際に、吸引ノズル450に続いてインク吐出面33をワイピング可能なように配置される。ブレード460は、記録ヘッド30(インク吐出面33)の凹凸に追従すべく複数枚で構成される。本実施形態では、凸部を拭く第一ブレード461とそれ以外を拭く第二ブレード462とが2枚ずつ設けられている。
【0091】
図15は、キャップユニット500の詳細構成を説明する図である。図15(a)はキャップユニット500の上面図、図15(b)はキャップユニット500をY方向から見たときの断面図、図15(c)は図15(a)におけるA-A断面図、図15(d)は図15(b)におけるB-B断面図である。
【0092】
キャップユニット500は、インク吐出面33をキャッピングするためのキャップ550、キャップ550を保持するキャップホルダ551、及びキャップホルダベース552を含む。さらにキャップユニット500は、キャップ550内部に配されるキャップ吸収体553、キャップ洗浄液供給経路554、液排出経路555及びキャップ550内部を大気と連通するための大気連通口556を含む。
【0093】
キャップ550はゴム状の弾性体で構成される。本実施形態においては、塩素化ブチルゴム・ショアA硬度50±5にて構成される。キャップ550は、キャップホルダ551に組み込まれ、その内部にはキャップ吸収体553が敷設される。キャップ吸収体553に接触するように、キャップ洗浄液供給経路554及び液排出経路555が長手方向に延設されている。さらに、キャップユニット500の長手方向両端部には、キャップ550の内部を大気と連通させるための大気連通口556を備えている。
【0094】
キャップホルダ551は、キャップホルダベース552に対して揺動可能に取り付けられている。揺動とは、上下動及びY方向に延びる軸557を中心とした回動の複合動作を意味する。キャップホルダ551の揺動は、キャップホルダ551とキャップホルダベース552に間に配置されるばねによる押圧力によって規制される。キャップ550が記録ヘッド30(インク吐出面33)に接触した際、キャップホルダ551の揺動動作とばね圧の作用によってキャップ550のリブ面558が均一にインク吐出面33に密着する。これにより、インク吐出面33に形成される吐出口の乾燥を防止することができる。
【0095】
キャップホルダベース552はさらにイコライズユニット300内部のカムフォロワ530へと接続される。カムフォロワ530はカム520に対して移動可能に構成されており、カム520はエアシリンダ510によってスライドするように構成される。カム520には斜め方向の溝が切られており、その内部をカムフォロワ530が移動することにより、エアシリンダ510による横方向のスライド動作が、キャップホルダベース552の上下方向への動作に変換される。
【0096】
上述した回復ユニット12は、記録ヘッド30の数と対応する数だけ設けられる。本実施形態では、9本の記録ヘッド30に対応する9つ分が設けられている。しかしながら、各ユニットを駆動させるアクチュエータ類は必ずしも同等の数でなくてもよい。例えば、本実施形態においては一つのエアシリンダで3つのキャップユニット500の昇降動作を担う。これは、装置の規模や記録ヘッド30の本数により柔軟に変更可能なものであり、限定されるものではない。
【0097】
続いて、上述した回復ユニット12を用いたクリーニング動作について説明する。図16は、記録動作の終了後にクリーニングモードを選択するためのフローチャートである。記録ヘッド30による記録動作中、信頼性制御部15Cは吐出口から吐出する吐出数をカウントしている(以下、ドットカウントとも称する)。
【0098】
S1601にて、信頼性制御部15Cは、前回のクリーニング後からのドットカウント値が所定の汚れ閾値を超えたか否かを判断する。ここで、汚れ閾値は、インク吐出面33がインクミストによって汚れていることが想定される値であり、例えば実験値等に基づいて設定される。
【0099】
カウント値が汚れ閾値を超えている場合は、S1602にて信頼性制御部15Cは第一のクリーニングモードを実行する。一方、カウント値が汚れ閾値を超えていない場合は、S1603にて信頼性制御部15Cは第二のクリーニングモードを実行する。
【0100】
図17は、第一のクリーニングモードを説明するフローチャートである。以下で説明する一連のクリーニング動作は、全て信頼性制御部15Cによって制御が行われる。
【0101】
S1701にて、クリーニングユニット200の動作を開始して、クリーニングローラ210によりインク吐出面33をクリーニングする。S1702にて、供給ユニット6によるインクの循環動作が行われている場合は循環動作を停止する。これは、クリーニング動作により吐出口に入り込んだクリーニング液が、循環動作によってインク流路内のインクと混ざることを防ぐためである。しかしながら、インクの循環流路全体で保持されているインク量に対して、吐出口に入り込むクリーニング液の量が極微量かつ記録の完成品に影響を及ぼさない範囲であれば、循環動作を停止させなくてもよい。
【0102】
S1703にて、キャリッジ31が移動を開始する。図19は、第一のクリーニングモードにおけるキャリッジ31の移動を説明する、記録システム1の右側側面を模式的に示した図である。S1703にてキャリッジ31は、吐出位置POS3よりZ方向において上方の位置であって、退避位置POS4より下方のクリーニング位置POS6まで上昇する(図19(a))。クリーニング位置POS6とは、クリーニングユニット200によりインク吐出面33をクリーニングするためのZ方向における位置である。
【0103】
その後キャリッジ31は、図19(b)に示すように、X方向において吐出位置POS1からキャップ位置POS2へ向かう。そして図19(c)に示すように、Z方向において下降することで、キャップ位置POS5への移動を完了する。
【0104】
S1704にて、キャリッジ31がキャップ位置POS2かつPOS5へ移動したことを確認できたら、S1705にて吸引ワイピングユニット400により吸引ワイピングを行う。具体的には、イコライズユニット300内部において、キャップユニット500の退避動作が行われ、且つ、吸引ワイピングユニット400のワイピング開始位置への移動が行われる。その後、イコライズユニット300は吸引ワイピングユニット400を記録ヘッド30に対して位置決めする。
【0105】
図20は、吸引ワイピングユニット400の移動を説明するための模式的な側面図である。図20(a)はキャップユニット500の退避動作を示し、図20(b)は吸引ワイピングユニット400がワイピング開始位置へ移動する様子を示す。そして、図20(c)に示すように、イコライズユニット300により吸引ワイピングユニット400の記録ユニット3(記録ヘッド30)に対する位置決めを行う。
【0106】
吸引ワイピングユニット400は、吸引ポンプによる吸引開始後、図20(d)に示すようにワイピング開始位置からワイピング終了位置に向けて移動する。本実施形態においては、吸引ワイピングユニット400の待機位置(ホーム位置)を記録装置1Aの後方としている。従って、吸引ワイピングユニット400の走査方向は、記録装置1Aの前方から後方へと向かう方向、すなわちX方向の上流から下流へ向かう方向である。
【0107】
吸引ワイピング終了後、S1706にてキャップユニット500を上昇させて、記録ヘッド30のインク吐出面33をキャップ550によりキャッピングする。S1707で、予備吐出動作が必要かどうかを判定し、必要な場合はS1708にてキャップ550に向けて記録ヘッド30からインクを吐出する。予備吐出動作は、例えば、吐出ノズルに設けられたヒータのリフレッシュや、吐出不良の検知を目的として、必要な条件が揃っている場合に実施される。予備吐出動作を実行した場合、キャップ550内に設けられた液排出経路555からの液排出動作も行うことで、キャップ550内に吐出されたインクを排出する。さらに、予備吐出終了後は、定期的にキャップ洗浄液供給経路554からのキャップ洗浄液の供給を行い、キャップ吸収体553の洗浄を行うことが望ましい。
【0108】
続いて、図18を用いて第二のクリーニングモードについて説明する。第二のクリーニングモードでは、第一のクリーニングモードと異なり、クリーニングユニット200によるクリーニングを行わない。すなわち第二のクリーニングモードは、第一のクリーニングモードより弱いクリーニング動作を行うモードである。
【0109】
S1801にて、キャリッジ31はZ方向において上昇することで吐出位置POS3から退避位置POS4へ移動し、その後X方向において吐出位置POS1からキャップ位置POS2へ移動する。さらに、キャリッジ31はZ方向においてキャップ位置POS5へ下降する。(図3参照)
S1802にて、キャリッジ31がキャップ位置POS2かつPOS5へ移動したことを確認できたら、S1803にて吸引ワイピングユニット400により吸引ワイピングを行う。この動作は、第一のクリーニングモードと同じである。その後、S1804~S1806は、第一のクリーニングモードにおけるS1706~S1708と同様の動作を行う。
【0110】
上述したように、本実施形態では、クリーニングユニット200によりインク吐出面33にクリーニング液を付与してから、吸引ワイピングユニット400により吸引を行う。これにより、クリーニング液が吐出口に押し込まれたとしても、吸引ワイピングによって外部へ排出することができ、記録ヘッド30から吐出されるインクにクリーニング液が混ざって画質が低下することを抑制することができる。本実施形態は特に、インクを貯留部TKと記録ヘッド30の間で循環させる形態において、クリーニング液を循環流路に混在させるのを防ぐことができるため有効である。
【0111】
さらに、ドットカウント値に基づいて記録ヘッド30のクリーニング動作におけるクリーニング液の付与の有無を切り替える。すなわち、本実施形態の記録装置1Aは、クリーニング液を付与する第一のクリーニングモードと、クリーニング液を付与しない第二のクリーニングモードと、を実行可能である。これにより、必要以上にインク吐出面33に対してクリーニング液を付与することがないため、クリーニング液が吐出口に混入して画像品位を低下させることを抑制することができる。
【0112】
〔他の実施形態〕
第1実施形態では、記録ユニット3が複数の記録ヘッド30を有する形態としたが、記録ヘッド30を1つだけ有する形態でもよい。また、記録ヘッド30はフルラインヘッドではなく、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向に移動しながらインクを吐出するシリアル方式も採用可能である。
【0113】
記録媒体Pの搬送機構は、ローラ対によって記録媒体Pを挟持して搬送する方式であってもよい。ローラ対によって記録媒体Pを搬送する方式等においては、記録媒体Pとしてロールシートを用いてもよく、転写後にロールシートをカットして記録物P’を製造する形態でもよい。さらには、第1実施形態では、転写体2を転写胴41の外周面に設けたが、転写体2を無端の帯状に形成し、循環的に走行させる方式でもよい。
【0114】
また、本発明は第1実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0115】
第1実施形態においては、インク吐出面33にクリーニング液を付与する付与手段としてクリーニングローラ210を用いているが、ローラ形状に限定されるものではない。ブロック状のもの、織布、不織布を用いたものでも本発明の効果を得ることができる。ブロック状の形態の動作は、接触させた状態で相対移動させてもよいし、上下動と相対移動を組み合わせたスタンプのような動作のものでもよい。織布、不織布のようなウェブ状の形態においては、短冊状の材質を相対移動方向と同様に動かし、ローラ形態と同様に吐出ノズル面との相対速度を限りなくゼロに近づけてもよいし、逆方向に動かして積極的に汚れを掻き取る形態としてもよい。また、弾性体によるバックアップ部材を設けることで、インク吐出面33への密着性を高めてもよい。
【0116】
クリーニング液の供給形態においても、第1実施形態においては液体付与ノズルでの供給形態としているが、これに限られるものではない。液槽に貯められたクリーニング液を各形態に合わせた方法で汲み上げる形式でもよい。ローラ形態の場合は、中空かつクリーニング部材に連通された経路を持つ軸を用いて、シールベアリングなどを介して内部から液供給を行う形態としてもよい。
【0117】
クリーニング液の余剰液を取り除く形態に関しても、本実施例においては絞りローラを採用したがこれに限られることはなく、例えば、エアブローなどで吹き飛ばしてもよいし、吸引による除去などを行ってもよい。毛管力の強い材質を押し当てることで液を除去しても良い。
【符号の説明】
【0118】
1A 記録装置
12 回復ユニット
30 記録ヘッド
33 インク吐出面
200 クリーニングユニット
400 吸引ワイピングユニット
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