(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】駆動装置および機器
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20241105BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20241105BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20241105BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20241105BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20241105BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20241105BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B5/00 J
G03B17/55
H04N23/52
H04N23/54
H04N23/68
(21)【出願番号】P 2020198283
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田口 貴之
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138054(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02-17/20
G03B 17/36
G03B 17/55
G03B 5/00
G02B 7/02-7/16
H04N 5/222
H04N 5/253-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを含む第1ユニットと、磁石を含む第2ユニットと、電子デバイスを含む第3ユニットと、を備え、前記第3ユニットが前記第1ユニットに固定されており、前記コイルと前記磁石との間の磁力によって、前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットに対して相対移動する駆動装置であって、
前記第1ユニットは、前記電子デバイスの主面に重なる領域において、前記主面に沿った方向に第1開口と第2開口を有しており、
前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置する第1部分に、前記コイルで生じた磁界による誘導電流が流れないように構成されていることを特徴すると駆動装置。
【請求項2】
前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置しない第2部分に、前記コイルから生じた磁界による誘導電流が流れるように構成されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
コイルを含む第1ユニットと、磁石を含む第2ユニットと、電子デバイスを含む第3ユニットと、を備え、前記第3ユニットが前記第1ユニットに固定されており、前記コイルと前記磁石との間の磁力によって、前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットに対して相対移動する駆動装置であって、
前記第1ユニットは、前記電子デバイスの主面に重なる領域において、前記主面に沿った方向に第1開口と第2開口を有しており、
前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置する第1部分を有し、
前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置しない第2部分に、前記コイルから生じた磁界による誘導電流が流れるように構成されており、
前記第1ユニットは、前記第2部分に流れる前記誘導電流よりも大きな電流が前記第1部分に流れないように構成されている駆動装置。
【請求項4】
前記第1部分は導電体で構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第2ユニットに含まれる前記磁石を第1磁石として、前記第1ユニットは、前記第1部分に固定された第2磁石を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第2ユニットに含まれる前記磁石を第1磁石として、前記第2ユニットは、前記第1磁石に結合したヨークを含み、前記ヨークの一部が、前記第2磁石に対向する配置されている、請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第2ユニットに含まれる前記磁石を第1磁石として、前記第2ユニットは、前記第1磁石に対向する第3磁石を更に含み、前記コイルが前記第2磁石と前記第3磁石の間に配置されている、請求項5に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第3ユニットは、前記電子デバイスと前記第1部分との間に設けられ、前記電子デバイスを搭載する配線板を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1部分と前記電子デバイスとの間の距離が10mm未満である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第1ユニットは、
前記コイルを保持する第1部材と、
前記第1開口と前記第2開口の間に位置する第2部材と、
を含み、
前記第1部分は前記第2部材で構成され、前記第1部材と前記第2部材は別体であり、
前記第1部材および前記第2部材によって、前記第1開口および前記第2開口が画定されており、
前記第1部材は前記第1開口と前記第2開口の間に位置せず、
前記第2部材に、前記コイルから生じた磁界による誘導電流が流れないように構成されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
コイルを含む第1ユニットと、磁石を含む第2ユニットと、電子デバイスを含む第3ユニットと、を備え、前記第3ユニットが前記第1ユニットに固定されており、前記コイルと前記磁石との間の磁力によって、前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットに対して相対移動する駆動装置であって、
前記第1ユニットは、
前記コイルを保持する第1部材と、
少なくとも一部が前記電子デバイスに重なる板状あるいは棒状の第2部材と、
各々が前記第1部材と前記第2部材の複数の端部とを固定する複数の固定部と、を含み前記複数の固定部のうちの1つの固定部の一部と、前記第2部材の一部と、の少なくとも一方が、絶縁材料で構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項12】
前記第2部材の前記一部は導電体で構成されている、請求項11記載の駆動装置。
【請求項13】
前記複数の固定部は、第1固定部、第2固定部および第3固定部を含み、前記第1固定部と第2固定部との間の距離および前記第1固定部と第2固定部との間の距離が、前記第2固定部と前記第3固定部との間の距離よりも大きく、前記第2固定部の一部および前記第3固定部の一部が、絶縁材料で構成されている、請求項11または12に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記1つの固定部の前記一部は、前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた絶縁性のシート材である、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記第2部材の前記一部は、前記第2部材の導電体材料を覆い、前記第1部材に接触する絶縁性のコーティング材である、請求項11乃至14のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記第2部材は、前記電子デバイスからの熱を伝導するように構成されている、請求項10乃至15いずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項17】
前記第2部材は磁性体を保持しており、前記第2ユニットは、前記磁性体と前記第2ユニットの間の磁力によって、前記第1部材と前記第2ユニットが互いに吸引するように構成されている、請求項10乃至16のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記電子デバイスは撮像デバイスまたは表示デバイスである、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の駆動装置と、前記コイルに電流を供給する制御部と、を備える機器。
【請求項20】
前記電子デバイスは撮像デバイスであり、
画像処理手段を有する、請求項19に記載の機器。
【請求項21】
前記電子デバイスの変位に対応する物理量を検知する検知手段を備え、電子デバイスの変位を前記相対移動によって補正する、請求項18または19に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁力を用いて電子デバイスを移動させる駆動装置は、例えば、カメラにおいてブレ補正を行うために、撮像デバイスを移動させるために用いられる。
【0003】
特許文献1には、背面固定保持部材と、撮像素子を保持するための可動枠と、可動枠に設けられた吸引板と、背面固定保持部材に設けられたセンサ磁石とを備える像振れ補正装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の像振れ補正装置では、撮像素子の信号にノイズが重畳する可能性がある。本発明は、電子デバイスでノイズが生じることを抑制する上で有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段の第1の観点は、コイルを含む第1ユニットと、磁石を含む第2ユニットと、電子デバイスを含む第3ユニットと、を備え、前記第3ユニットが前記第1ユニットに固定されており、前記コイルと前記磁石との間の磁力によって、前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットに対して相対移動する駆動装置であって、前記第1ユニットは、前記電子デバイスの主面に重なる領域において、前記主面に沿った方向に第1開口と第2開口を有しており、前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置する第1部分に、前記コイルで生じた磁界による誘導電流が流れないように構成されていることを特徴する。
【0007】
課題を解決するための手段の第2の観点は、コイルを含む第1ユニットと、磁石を含む第2ユニットと、電子デバイスを含む第3ユニットと、を備え、前記第3ユニットが前記第1ユニットに固定されており、前記コイルと前記磁石との間の磁力によって、前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットに対して相対移動する駆動装置であって、前記第1ユニットは、前記電子デバイスの主面に重なる領域において、前記主面に沿った方向に第1開口と第2開口を有しており、前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置する第1部分を有し、前記第1ユニットは、前記第1ユニットのうちの前記第1開口と前記第2開口の間に位置しない第2部分に、前記コイルから生じた磁界による誘導電流が流れるように構成されており、前記第1ユニットは、前記第2部分に流れる前記誘導電流よりも大きな電流が前記第1部分に流れないように構成されていることを特徴する。
【0008】
課題を解決するための手段の第3の観点は、コイルを含む第1ユニットと、磁石を含む第2ユニットと、電子デバイスを含む第3ユニットと、を備え、前記第3ユニットが前記第1ユニットに固定されており、前記コイルと前記磁石との間の磁力によって、前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットに対して相対移動する駆動装置であって、前記第1ユニットは、
前記コイルを保持する第1部材と、少なくとも一部が前記電子デバイスに重なる板状あるいは棒状の第2部材と、各々が前記第1部材と前記第2部材の複数の端部とを固定する複数の固定部と、を含み、前記複数の固定部のうちの1つの固定部の一部と、前記第2部材の一部と、の少なくとも一方が、絶縁材料で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子デバイスでノイズが生じることを抑制する上で有利な技術を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そして、共通する構成を断りなく複数の図面を相互に参照して説明する場合がる。また、共通の符号を付した構成については説明を省略する場合がある。
【0012】
図1を用いて、駆動装置20を説明する。
図1(a)を前方から視た平面図であり、
図1(b)は駆動装置20を後方から視た平面図である。
図1(c)は
図1(b)におけるC-C線における駆動装置20の断面図であり、
図1(c)は
図1(b)におけるD-D線における駆動装置20の断面図である。
【0013】
駆動装置20は、コイル53を含む可動ユニット50と、磁石62を含む前方固定ユニット60と、磁石76を含む後方固定ユニット70と、電子デバイス66を含む電子ユニット6と、を備えうる。電子ユニット6が可動ユニット50に固定されている。電子ユニット6および可動ユニット50は前方固定ユニット60および後方固定ユニット70に対して可動である。コイル53と磁石62との間の磁力によって、可動ユニット50および電子ユニット6が、前方固定ユニット60に対してX方向に相対移動する。コイル53と磁石76との間の磁力によって、可動ユニット50および電子ユニット6が、後方固定ユニット70に対してX方向に相対移動する。
【0014】
可動ユニット50は、電子デバイス66の主面666に重なる領域において、主面666に沿ったX方向に開口81と開口82を有している。本実施形態では、開口81と開口82は電子ユニット6と後方固定ユニット70との間に位置している。可動ユニット50は、可動ユニット50のうちの開口81と開口82の間に位置する仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れないように構成されている。
【0015】
可動ユニット50は、可動ユニット50のうちの開口81と開口82の間に位置しない包囲部分84に、コイル53から生じた磁界による誘導電流が流れるように構成されていてもよい。その場合、可動ユニット50は、包囲部分84に流れる誘導電流よりも大きな電流が仕切部分83に流れないように構成されていればよい。
【0016】
図2(a)~(h)を用いて誘導電流について説明する。
図2(a)は、
図2(b)~(h)において説明する構成を示す図形の線種あるいはハッチングの凡例である。
図2(a)の凡例として説明した構成が、
図2(b)~(h)において、同種の線種あるいはハッチングが付された構成に対応している。
図2(a)および
図2(b)~(h)において、点線は電子デバイス66の輪郭を示し、短破線は開口81を示し、長破線は開口82を示す。
図2(a)および
図2(b)~(h)において、導電体831および/または絶縁体832が仕切部分83を構成し、導電体841および/または絶縁体842が包囲部分84を構成しうる。
図2(a)および
図2(b)~(h)において、鎖線は閉ループ経路85を示し、一点鎖線は閉ループ経路86を示し、二点鎖線は閉ループ経路87を示す。
【0017】
図2(b)~(h)のいずれにおいても、可動ユニット50においては、包囲部分84に沿って閉ループ経路85が形成され、開口81に沿って閉ループ経路86が形成され、開口82に沿って閉ループ経路87が形成されている。開口81は包囲部分84の右半分および仕切部分83によって画定され、開口82は包囲部分84の左半分および仕切部分83によって構成されている。閉ループ経路85は包囲部分84の全体によって構成され、閉ループ経路86は包囲部分84の右半分および仕切部分83によって構成され、閉ループ経路87は包囲部分84の左半分および仕切部分83によって構成されている。
【0018】
図2(b)の例では、仕切部分83の全体が導電体831で構成され、包囲部分84の全体が導電体841で構成されており、仕切部分83および包囲部分84は電気的に連続している。つまり、閉ループ経路85と閉ループ経路86と閉ループ経路87はいずれも導電性の閉ループ経路である。コイル53が生じる磁束が閉ループ経路85、86、87の少なくともいずれかに鎖交すると、導電経路の閉ループ経路85、86、87に電流(誘導電流)が流れる。この電流の一部は包囲部分84に流れるが、仕切部分83にも流れ得る。仕切部分83に電流が流れると、仕切部分83の周囲に磁束が生じる。この磁束が電子ユニット6に含まれる導電経路の閉ループ(不図示)に鎖交すると、電子ユニット6に含まれる導電経路の閉ループに電流(誘導電流)が流れる。この電流が、電子デバイス66におけるノイズとなる。
【0019】
図2(c)の例では、仕切部分83の全体が絶縁体832で構成され、包囲部分84の全体が絶縁体842で構成されている。つまり、閉ループ経路85、86,87はいずれも絶縁性の閉ループ経路である。そのため、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。また、包囲部分84に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、したがって、電子ユニット6におけるノイズを低減できる。
【0020】
図2(d)の例では、仕切部分83の全体が導電体831で構成されているが、包囲部分84の全体が絶縁体842で構成されている。つまり、閉ループ経路85、86,87はいずれも絶縁性の閉ループ経路である。そのため、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。また、包囲部分84に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、電子ユニット6におけるノイズを低減できる。
【0021】
図2(e)の例では、包囲部分84の全体が導電体841で構成されているが、仕切部分83の全体が絶縁体832で構成されている。つまり、閉ループ経路85は導電性の閉ループ経路であり、閉ループ経路86,87は絶縁性の閉ループ経路である。そのため、包囲部分84に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れうる。しかし、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。
【0022】
図2(f)の例では、包囲部分84の全体が導電体841で構成されており、仕切部分83の中央部分が絶縁体832で構成されており、仕切部分83の周辺部分が導電体831で構成されている。つまり、閉ループ経路85は導電性の閉ループ経路であり、閉ループ経路86,87は絶縁性の閉ループ経路である。そのため、包囲部分84に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れうる。しかし、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。
【0023】
図2(f)の例では、包囲部分84の全体が導電体841で構成されており、仕切部分83の中央部分が導電体831で構成されており、仕切部分83の周辺部分が絶縁体832で構成されている。つまり、閉ループ経路85は導電性の閉ループ経路であり、閉ループ経路86,87は絶縁性の閉ループ経路である。そのため、包囲部分84に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れうる。しかし、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。
【0024】
図2(f)の例では、仕切部分83の全体が導電体831で構成されている。また、包囲部分84のうち仕切部分83に近い部分が導電体841で構成されており、包囲部分84のうち仕切部分83から遠い部分が絶縁体842で構成されている。つまり、閉ループ経路85、86,87は絶縁性の閉ループ経路である。また、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。また、包囲部分84に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない。したがって、電子デバイス66におけるノイズをさらに低減できる。
【0025】
ここでは、
図2(e)~(h)を用いて、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流がほとんど流れない形態を例示した。仕切部分83が構成する閉ループ経路86、87が導電性の閉ループ経路でなくて、絶縁性の閉ループ経路でさえあれば、仕切部分83に、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れないことは理解できよう。その範囲において、
図2(e)~(h)のいずれの例を変形したり、いくつかの例を組み合わせたりしてもよい。
【0026】
本実施形態によれば、地磁気や電波などの影響により、コイル53で生じた磁束以外の磁束も閉ループ経路に鎖交しうるが、仕切部分83にはそのような磁束による誘導電流も流れないので、電子デバイス66におけるノイズを低減できる。なお、本実施形態において、コイル53で生じた磁界による誘導電流が流れないとは、コイル53による磁界の時間変化に伴って仕切部分83に生じうる誘導電流が1μA未満であることを意味する。可動ユニット50を構成する絶縁体の導電率は0よりも大きい値を有するため、閉ループ経路に鎖交する磁束が存在する限り、誘導電流を理論的にゼロにすることは困難である。したがって、現実的に電子デバイス66の動作に影響を与えない程度の微小の誘導電流が仕切部分83に流れることは、コイル53で生じた磁界による誘導電流が仕切部分83に流れないことの範疇である。
【0027】
図1に示した駆動装置20について詳細に説明する。電子ユニット6は、接着剤や両面テープ、ねじ止め等の適当な固定部材65によって、可動ユニット50に固定されている。電子ユニット6は、電子デバイス66と仕切部分83との間に設けられ、電子デバイス66を搭載する配線板67を含む。配線板67は例えばプリント配線板であり、樹脂配線板やセラミック配線板などを用いることができる。電子デバイス66と配線板67はワイヤボンディング接続やフリップチップ接続によって互いに電気的に接続されている。なお、電子デバイス66と配線板67との間にリードやBGA、LGA、PGAなどの端子を有するパッケージ基体(不図示)を配置して、電子デバイス66と配線板67とをパッケージ基体を介して互いに電気的に接続してもよい。また、電子ユニット6は、電子デバイス66に対して配線板67の側とは反対側に設けられた蓋体69と、蓋体69と配線板67との間に設けられた枠体68と、を含うる。蓋体69と電子デバイス66とが間隙を介して対向するように枠体68が蓋体69を保持する。電子デバイス66は半導体デバイスなどであり、配線を有する。仕切部分83に上述した誘導電流が流れ、仕切部分83の周囲に磁界を発生した場合、電子デバイス66の配線を含む導電性の閉ループ経路に磁束が鎖交して、電子デバイス66に誘導ノイズを生じせしめる。電子デバイス66の配線を含む導電性の閉ループ経路は、電子デバイス66の配線のみで形成されている場合だけでなく、電子デバイス66の配線と配線板67の配線とが形成している場合もある。電子デバイス66はCMOSイメージセンサなどの撮像デバイスでありうる。あるいは電子デバイス66は有機ELディスプレイなどの表示デバイスでありうる。撮像デバイスや表示デバイスの様に、電子デバイス66がアナログ回路を含む場合には、このアナログ回路が誘導ノイズの好ましくない影響を受けやすい。そのため、電子デバイス66が撮像デバイスや表示デバイスである場合に本実施形態の駆動装置20は好適である。しかしながら、電子デバイス66は磁気によって誤作動を生じたりノイズを生じたりするようなものであれば、アナログ回路を含むものに限らない。なお、仕切部分83と電子デバイス66との間の距離が極端に大きければ、仕切部分83に流れる誘導電流の電子デバイス66への影響はそれほど大きくない。しかし、仕切部分83と電子デバイス66との間の距離が10mm未満であれば、仕切部分83に流れる誘導電流の電子デバイス66への影響を特に考慮すべきである。
【0028】
可動ユニット50の仕切部分83と包囲部分84とは一体の部材(部品)で構成されていてもよいし、別体の部材(部品)で構成されていてもよい。本例では、仕切部分83は仕切部材54で構成されていて、包囲部分84は保持部材51で構成されている。仕切部分83は開口81と開口82の間に位置する。そして、保持部材51および仕切部材54によって、開口81および開口82が画定されている。保持部材51はコイル53を保持している。詳細にはコイル53はFPCなどの配線板55に搭載されており、この配線板55が保持部材51に固定されている。配線板55に形成された配線を介してコイル53に電流が供給される。保持部材51は仕切部材54を保持する。また、保持部材51に電子ユニット6が固定部材65によって固定されている。仕切部材54に磁石57が固定されている。
【0029】
このように、仕切部分83が仕切部材54で構成されているため、仕切部材54にコイル53から生じた磁界による誘導電流が流れないように構成されていればよい。
図1(c)~(h)を用いて説明したように、仕切部材54が導電性の閉ループ経路を構成しないようにすればよい。例えば、仕切部材54を絶縁体で構成したり、保持部材51を絶縁体で構成したり、導電体からなる仕切部材54と導電体からなる保持部材51を絶縁体で絶縁したりすればよい。
【0030】
前方固定ユニット60に含まれる磁石62はコイル53に対向しうる位置に設けられている。なお、相対移動の過程において、一時的にコイル53が磁石76に対向しない位置関係になりうる。前方固定ユニット60は、磁石62に結合したヨーク61を含みうる。ヨーク61は少なくとも磁石62に重なる位置に配置されていればよい。本例では、前方固定ユニット60が電子ユニット6の移動を妨げないように、前方固定ユニット60が電子ユニット6に重ならないように配置されている。また、本例では、電子デバイス66への光あるいは電子デバイス66からの光を遮らないように、ヨーク61が電子デバイス66に重ならないように配置されている。
【0031】
後方固定ユニット70に含まれる磁石76はコイル53に対向しうる位置に設けられている。なお、相対移動の過程において、一時的にコイル53が磁石76に対向しない位置関係になりうる。後方固定ユニット70は、磁石76に結合したヨーク75を含みうる。ヨーク75は少なくとも磁石76に重なる位置に配置されていればよいが、本例ではヨーク75が電子ユニット6に重なる位置まで延在して、仕切部分83に対向した部分を有する。
【0032】
駆動装置20の前方固定ユニット60と後方固定ユニット70とを固定ユニットと総称することができる。コイル53が後方固定ユニット70の磁石76と前方固定ユニット60の磁石62の間に配置されている。なお、相対移動の過程において、一時的にコイル53が磁石76と磁石62との間に位置しないこともありうる。なお、前方固定ユニット60および磁石76を含む後方固定ユニット70の少なくとも一方は省略可能である。
【0033】
可動ユニット50は、仕切部分83に固定された磁石57を含みうる。ヨーク75の仕切部分83に対向した部分が磁石57に対向する。可動ユニット50の磁石57が後方固定ユニット70のヨーク75を吸引することによって、安定した相対移動を可能にする。
【0034】
図1では、可動ユニット50および電子ユニット6がX方向に相対移動する形態を説明したが、Y方向においてもコイルを配置して、可動ユニット50および電子ユニット6がY方向にも相対移動するようにしてよい。
【0035】
ここでは、駆動装置20を備える機器の筐体に対して、前方固定ユニット60および後方固定ユニット70が固定であり、電子ユニット6および可動ユニット50が可動である形態を説明した。しかしながら、電子ユニット6および可動ユニット50が前方固定ユニット60および後方固定ユニット70に対して相対移動可能であればよい。したがって、駆動装置20を備える機器の筐体に対して、前方固定ユニット60および後方固定ユニット70が可動であり、電子ユニット6および可動ユニット50が固定である形態に変更してもよい。上述した磁石57、62、76の各々は典型的には永久磁石であるが、電磁石であってもよい。
【0036】
駆動装置20を各種の機器に搭載することができる。駆動装置20を備える機器は、コイル53に電流を供給する制御部を備えうる。また、駆動装置20を備える機器は、電子デバイス66(電子ユニット6)の変位に対応する物理量を検知する検知手段を備えうる。そして、電子デバイス66(電子ユニット6)の変位を、駆動装置20における相対移動によって補正する。この補正は、ブレ補正などに活用できる。電子デバイス66(電子ユニット6)の変位に対応する物理量を検知する検知手段は、この検知手段は、電子デバイス66の変位と同じように変位する加速度センサなどでありうる。予め電子デバイス66の変位と同じように変位するように検知手段を配置しておくことで、電子デバイス66(電子ユニット6)の変位に対応する物理量を検知することができる。
【0037】
以下、
図3から
図6を参照して、本発明のブレ補正手段を有する撮像装置について説明する。
【0038】
図4(a)は本発明の撮像装置の中央断面図、
図4(b)は電気的構成を示すブロック図である。
図4(a)および
図4(b)で同一の符号が付してあるものはそれぞれ対応している。
【0039】
図4に示すように、撮像機器としてのカメラボディ1にはカメラレンズ2が装着され、カメラが構成される。カメラレンズ2の内部には外部からの被写体光を取り込む複数のレンズからなる撮影光学系3とカメラレンズ2側のシステムを制御するレンズ制御手段12を有している。カメラボディ1には、カメラレンズ2を通ってきた被写体光を取り込む電子ユニット6と、表示手段9aと、ビューファインダ9bと、ブレ補正手段14と、ブレ検知手段15と、シャッタ機構16と、シャッタ駆動手段17を有している。レンズ制御手段12と、カメラシステム制御部5は電気接点11を介してカメラボディ1側からの電力供給や相互の通信を行っている。
【0040】
図4(b)はカメラボディ1の電気的構成を示すブロック図である。カメラボディ1およびカメラレンズ2からなるカメラシステムは、撮像手段、画像処理手段、記録再生手段、制御手段を有する。撮像手段は、撮影光学系3、電子ユニット6、シャッタ機構16を含み、画像処理手段は、画像処理部7を含む。また、記録再生手段は、メモリ手段8、表示手段9(表示手段9はディスプレイ9a、ビューファインダ9bを包含する)を含む。制御手段は、カメラシステム制御部5、操作検出部10、レンズ制御手段12、レンズ駆動手段13、ブレ補正手段14、およびブレ検知手段15を含む。レンズ駆動手段13は、焦点レンズ、絞りなどを駆動することができる。ブレ検知手段15は光軸周りの回転を含む装置の回転ブレを検知可能であり、振動ジャイロなどを用いることが出来る。ブレ補正手段14は電子ユニット6を光軸4に直交する平面内に並進させるとともに光軸4周りに回転させる機構であり、この具体的な構造については後述する。
【0041】
撮像手段は、受光部で撮影光学系3を通過し集光された光束を光電変換する電子ユニット6からなる光学処理系である。電子ユニット6からピント評価量/適当な露光量が得られるので、この信号に基づいて適切に撮影光学系3が調整されることで、適切な光量の物体光を電子ユニット6に露光するとともに、電子ユニット6近傍で被写体像が結像する。また、シャッタ機構16はシャッタ幕を走行させることで電子ユニット6に被写体像が届くか否かを制御する。シャッタ機構16はカメラシステム制御部5からの命令によりシャッタ駆動手段17により駆動を制御される。
【0042】
画像処理部7は、内部にA/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、記録用の画像を生成することができる。色補間処理手段はこの画像処理部7に備えられており、ベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像を生成する。また、画像処理部7は、予め定められた方法を用いて画像、動画、音声などの圧縮を行う。
【0043】
メモリ手段8は実際の記憶部を備えている。カメラシステム制御部5により、メモリ手段8の記録部へ出力を行うとともに、表示手段9にユーザーに提示する像を表示する。
【0044】
カメラシステム制御部5は撮像の際のタイミング信号などを生成して出力する。外部操作に応動して撮像系、画像処理系、記録再生系をそれぞれ制御する。例えば、不図示のシャッターレリーズ釦の押下を操作検出部10が検出して、電子ユニット6の駆動、画像処理部7の動作、圧縮処理などを制御する。さらに表示手段9によって情報表示を行う情報表示装置の各セグメントの状態を制御する。また、ディスプレイ9aはタッチパネルになっており、操作検出部10に接続されている。
【0045】
カメラシステム制御部5は、電気接点11を介してレンズ制御手段12に指令を出し、レンズ制御手段12はレンズ駆動手段13を適切に制御する。
【0046】
前述したように、操作検出部10へのユーザー操作に応じて、カメラボディ1の各部の動作を制御することで、静止画および動画の撮影が可能となっている。
【0047】
カメラボディ1内のブレ補正手段14を制御するにあたっては、ブレ検知手段15からの信号に基づいて後述するブレ補正手段14を動作させる。ブレ検知手段15から目標値の生成および、ブレ補正手段14の駆動制御はカメラシステム制御部5が担っており駆動制御部にあたる。
【0048】
近年、撮像機器の高性能化によりブレ補正機構が搭載される撮像機器が増えてきている。ブレ補正方式には、光学レンズを光軸直交方向に移動させる方式と電子ユニット6を光軸直交方向に移動させる方式が挙げられる。電子ユニット6を移動させる方式では、磁石とコイルからなるいわゆるボイスコイルモータ方式により、電子ユニット6を移動させてブレ補正を行う方式が一般的である。例えば、電子ユニット6をスムーズに駆動するため、後方固定ユニット70と電子ユニット6の間にボール部材を配置してもよい。また、ボール部材の脱落や、電子ユニット6の光軸方向のガタつきを抑制するため、固定ユニット側に磁石57、可動ユニット側に吸引板とこの吸引板を保持する仕切部材54を配置してもよい。磁力を利用して電子ユニット6を固定ユニットに向けて常に押圧してもよい。ボイスコイルモータ方式においてはコイルから電磁波が発生し、電子機器へ影響を与えることが分かっている。
【0049】
しかしながら、電子ユニット6近くに保持部材を配置した場合、コイルから発生した磁場によって保持部材に誘導電流が誘起されることが考えられる。保持部材に誘起された誘導電流によって2次的に発生した磁場が電子ユニット6へ到達すると、磁気ノイズとして画像への影響を与えることが考えられる。
【0050】
そこで、本実施形態は手振れ補正ユニットから撮像センサユニットに伝搬する磁界を、簡略な構成で低減することができる像振れ補正機構を有する撮像機器を提供することである。
【実施例1】
【0051】
図3、
図3を用いて電子ユニット6を含む駆動装置20について説明する。
図4(c)は駆動装置20の斜視図であり、
図5は駆動装置20の分解斜視図である。
図3(a)は、可動ユニット50の一部を抜き出した斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)を裏面側からみた斜視図である。
図3に示す座標系において、Z軸の正方向にカメラレンズ2が配される。
【0052】
図3において縦の線(Z軸方向)は光軸4と平行な方向である。
図3に示した駆動装置20は、電子ユニット6と、可動ユニット50と、前方固定ユニット60と、後方固定ユニット70と、を備えうる。可動ユニット50と、前方固定ユニット60と、後方固定ユニット70と、が上述したブレ補正手段14を構成する。可動ユニット50は、保持部材51と、コイル53a,53b,53cと、フレキシブルプリント回路基板などの配線板55と、含んでいる。可動ユニット50は、さらに、仕切部材54と、ヨーク56と、磁石57a、57bと、シート材58と、ネジを含む固定部59a、59b、59cと含んでいる。
【0053】
また、前方固定ユニット60は、ヨーク61と、磁石62a、62b、62c、62d、62e、62fと、を含んでいる。さらに、後方固定ユニット70は、ベース板71と、スペーサ73a、73b、73cと、ヨーク75と、を含んでいる。そして、後方固定ユニット70は、磁石76a、76b、76c、76d、76e、76fと、転動ボール77a、77b、77cと、を含んでいる。なお、保持部材51が請求項の第1ユニットに、転動ボール77a、77b、77cが支持部材に、前方固定ユニット60と後方固定ユニット70が固定ユニットに相当する。また、仕切部材54が請求項の第2部材、ネジを含む固定部59a、59b、59cとシート材58が固定部に相当する。
【0054】
前方固定ユニット60に配されるヨーク61、磁石62a、62b、62c、62d、62e、62fと、後方固定ユニット70に配されるヨーク75、磁石76a、76b、76c、76d、76e、76fが磁気回路を形成しており、いわゆる閉磁路を為している。磁石62a、62b、62c、62d、62e、62fはヨーク61に吸着した状態で接着固定されている。同様に磁石76a、76b、76c、76d、76e、76fはヨーク75に吸着した状態で接着固定されている。各磁石は光軸4方向に着磁されており、隣接する磁石同士の組み合わせである磁石62aと62b、62cと62d、62eと62f、76aと76b、76cと76d、76eと76fは、お互いに異なる向きに着磁されている。また、対向する向きに配置される磁石同士の組み合わせである磁石62aと76a、62bと76b、62cと76c、62dと76d、62eと76e、62fと76fは、お互いに同じ向きに着磁されている。このようにすることで、ヨーク61とヨーク75の間に光軸4方向に強い磁束密度が生じる。
【0055】
ヨーク61とヨーク75の間には、スペーサ73a、73b、73cが配されて所定の間隔が保たれている。ヨーク61とヨーク75の間には隙間をもって可動ユニット50が配されている。スペーサ73a、73b、73cの円筒側面部にはゴムが設置されており、可動ユニットの機械的端部(いわゆるストッパー)を形成している。
【0056】
ベース板71には磁石76a、76b、76c、76d、76e、76fをよけるように穴が設けられており、この穴から磁石の面が突出するように構成される。そして、不図示のビスによりベース板71とヨーク75が固定され、ベース板71よりも厚み方向の寸法が大きい磁石76a、76b、76c、76d、76e、76fがベース板71から突出するように固定される。なお、ヨーク75は8の字状に構成されており、その形状の詳細については、後述の仕切部材54と合わせて詳細に説明する。
【0057】
保持部材51に対して各要素が固定されて可動ユニット50を為している。保持部材51は導電性の部材で形成されている。保持部材51に対し、電子ユニット6、配線板55、仕切部材54が搭載されている。さらに実装部材である配線板55の後方固定ユニット70側(Z軸負の方向)の面にはコイル53a,53b,53cが実装されており、配線板55からコイル53a,53b,53cの各々に駆動に必要な電力を供給している。なお、配線板55は不図示のコネクタを介して外部との電気的なやり取りを行う。コイル53a,53b,53cは巻き線による中空部の軸方向が光軸4と略平行になっており、さらに電子ユニット6に対し略同一平面に配置されている。さらに、コイル53a,53b,53cの巻き線の内側である中空部内には不図示の磁気センサが実装されている。不図示の磁気センサは前述した磁気回路を利用して可動ユニット50の光軸4に対し略直交平面に移動したときの位置を検出することができ、例えばホール素子などを用いることが出来る。磁気センサも配線板55上に実装され不図示のコネクタを介して外部との電気的なやり取りを行う。保持部材51には導電体(導電性の金属部材)で構成された仕切部材54が固定部59a、59b、59cにより固定されている。
【0058】
ここでは、枠状の保持部材51において互い対向する2つの短辺の一方に固定部59aを設け、互い対向する2つの短辺の他方に固定部59b、59cを設けている。そして、仕切部材54は枠状の保持部材51において互い対向する2つの長辺に沿って延在している。固定部59aと固定部59bとの間の距離および固定部59aと固定部59cとの間の距離が、固定部59bと固定部59cとの間の距離よりも大きなっている。
【0059】
ここで
図3を用いて、仕切部材54の構成について説明する。仕切部材54は、電子デバイス66に重なる板状あるいは棒状の部材である。可動ユニット50は、各々が保持部材51と仕切部材の複数の端部とを固定する複数の固定部59a、59b、59cを含む。
【0060】
複数の固定部59a、59b、59cのうちの1つの固定部59aの一部が絶縁材料(非導電性材料)で構成されている。
図3(a)は保持部材51、コイル53、仕切部材54、ヨーク56、磁石57、シート材58、固定部59のみを示した斜視図である。
図3(b)は
図3(a)を裏面側からみた斜視図である。
図3(b)に示すように、仕切部材54は保持部材51の端部3点に固定部59a、59b、59cに含まれるネジで固定されている。この時、固定部59aで固定される仕切部材54と保持部材51間の間には非導電性のシート材58が配置されている。また、3つの固定部59a、59b、59cのうち少なくとも固定部59aのネジが樹脂などの非導電性材料でコーティングされている。非導電性のシート材58と非導電性材料のコーティング材が設けられたネジを用いた固定部59aを設けたことで、固定部59aで固定される面では、非導電性の材料を介して保持部材51と仕切部材54が固定されている。
【0061】
ここで、固定部59aは樹脂などの非導電性材料からなるコーティング材を形成したネジとしたが、保持部材51と仕切部材54の固定部59aで固定する部分が非導電性の材料を介して固定される構成であれば良い。したがって、固定部59aの材料を非導電性材料で構成しても良く、例えば樹脂製のネジを含む固定部やその他非導電性の材料を固定部に塗布するなどの構成であっても良い。また、シート材58も同様に保持部材51と仕切部材54の接触面の非導電性が保てれば良い。したがって、シート材58に相当する非導電性のコーティング材を保持部材51あるいは仕切部材54に設ける構成であっても良い。保持部材51あるいは仕切部材54の一方の導電体材料を覆い、保持部材51あるいは仕切部材54の他方に接触する絶縁性のコーティング材によって、絶縁を図ってもよい。また、シート材58はシート状であることに限らず樹脂製のワッシャーなど保持部材51と仕切部材54の接触面の非導電性を保つものであれば良い。また、非導電性の両面テープや非導電性の接着剤を固定部59a、59b、59cに用いてよい。
【0062】
仕切部材54には磁石57a、57bをよけるように穴が設けられており、磁石57の電子ユニット6側にはヨーク56が接着されている。なお、磁石57の位置は、光軸4方向において電子ユニット6を投影した際に、電子ユニット6の中心近傍に重なる位置に配置されている。各磁石は光軸4方向に着磁されており、隣接する磁石同士の組み合わせである磁石57(aと57bは、お互いに異なる向きに着磁されている。
【0063】
次に、仕切部材54が保持する磁石57による役割について説明する。仕切部材54が磁性体(磁石57)を保持することで、後方固定ユニット70と、可動ユニット50の磁性体(磁石57)との間の磁力によって、仕切部材54と後方固定ユニット70が互いに吸引するように構成されている。ここでは、仕切部材54と後方固定ユニット70が互いに吸引する構成として、可動ユニット50に磁石57を設けたが、後方固定ユニット70に磁石57を設けて、仕切部材54を磁性体としてもよい。
図5で記載し、先で述べたようにヨーク75は8の字状に構成されている。このヨーク75の中心部を通る辺は仕切部材54に対向するように配置されている。したがって、磁石57とヨーク75が対向した配置となる。ヨーク75は磁性体で構成されるため、磁石57との間に磁力による吸引力が発生する。この磁力による吸引によって、光軸4方向において、仕切部材54、保持部材51、電子ユニット6で構成する可動ユニット50を後方固定ユニット70側に引っ張る力が働く。この吸引力があることで、転動ボール77による可動ユニット50の光軸4に垂直な方向への動きを妨げることなく、保持部材51と転動ボール77とベース板71を隙間なく保持することができる。これにより、光軸4方向に平行な向きで可動ユニット50がガタつくなど不要な動作をすることを抑制することができる。なお、先で述べたように、磁石57は電子ユニット6の中心と重なる位置に配置されている。このような構成とすることで、転動ボール77a、77b、77cそれぞれに加わる吸引力に大きな差が生まれることを抑制している。なお、本構成で仕切部材54が磁石57を保持する構成としたが、可動ユニット50を後方固定ユニット70側に引っ張る吸引力が得られれば良い。したがって、仕切部材54が磁性体を保持し、ヨーク75側に磁石を設ける構成であっても良い。あるいは、仕切部材54を磁性体とし、ヨーク75側に磁石を設けるような構成であっても良い。
【0064】
上述した構成でコイル53a,53b,53cに駆動制御部により電流を流すことで、フレミング左手の法則に従った力が発生し可動ユニット50を動かすことが出来る。また、前述した不図示の磁気センサの信号を用いることでフィードバック制御を行うことが出来る。磁気センサからの信号の値を適当に制御し、コイル53a,53b,53cに流す電流を制御することで光軸4に直交する平面内で併進方向及び光軸4と略平行な軸に対し回転方向に駆動することが出来る。例えば、コイル53aへの電流を制御することで可動ユニット50はX軸に平行な方向に併進移動する。また、コイル53b,53cへの電流を制御することで可動ユニット50はY軸に平行な方向に併進移動、または光軸4と平行な軸に対して回転移動をすることができる。フィードバック制御を含む制御方法の詳細に関しては多くの提案がなされているので、ここではこれ以上詳述はしない。
【0065】
本実施例の駆動制御部はコイルに電流を流す際に、駆動電圧を制御するのにパルス幅のデューティ比を制御する、いわゆるPWM制御を行う。PWM制御は高周波の交流信号のデューティ比を可変にすることで電圧の制御を行うが、コイルにはPWM制御による駆動電圧による低周波の直流電流とともに、振幅の小さいPWM制御の駆動周波数による高周波の交流電流が重畳して流れることとなる。このようにコイルへ電流を流すことによりコイルから磁場が発生し、電子ユニット6に磁場が到達することで、電子ユニット6の映像信号に磁気ノイズを発生させる。特に、PWM制御の駆動周波数による高周波の電流の変化により発生する磁場が電子ユニット6の映像信号に影響を与えることが知られている。
【0066】
図3に示すように、仕切部材54は保持部材51に接続しつつ板状の金属体で構成している。このように仕切部材54を配することで駆動装置20の薄型化を図っている。
【0067】
しかしながら、電子ユニット6とコイル53と仕切部材54をともに可動ユニット50に配し、仕切部材54が電子ユニット6に近づく部位を有するために、次のような課題がある。
【0068】
電子ユニット6に仕切部材54から発生する磁場が到達すると、磁気ノイズとして電子ユニット6で取得される画像へ影響を与える。例えば、コイルと電子ユニット6の間にシールド構造を設ける、あるいはコイルと電子ユニット6の間の距離を離すことでコイルから電子ユニット6へ到達する磁場の影響は少なくなる。しかしながら、本実施例のような電子ユニット6と仕切部材54の構成では、仕切部材54から電子ユニット6に到達する磁場が大きく、磁気ノイズの影響が大きくなる。
【0069】
そこで、実施例1では
図3のように、固定部59aで接続する保持部材51と仕切部材54の固定部を非導電性材料で構成することで、駆動装置20の薄型化を図りつつも、電子ユニット6へ仕切部材54から発生する磁場の影響を低減する。
図6を用いて、コイル53から発生する磁場の影響と、非導電性材料の固定部を保持部材51と仕切部材54の間に設ける効果について説明する。なお、参考のため、電子ユニット6の外形を点線で記載する。
【0070】
図6は、
図3(b)で示した斜視図にコイル53から発生する磁場と仕切部材54に発生する誘導電流と誘導電流に起因して発生する磁場を模式的に表した図である。
図6(a)が本実施例の固定部59aの代わりに導電性の固定部59dを設け、シート材58をとり除いた場合である。
図6(b)は固定部59aとシート材58で非導電性材料による固定部を構成した本実施の形態を示した図である。
【0071】
図6(a)、
図6(b)の矢印110はコイル53a、53b、53cから発生した磁場の流れを示している。なお、コイル53a、53b、53cから発生する磁場は、
図6(a)の矢印110で示すよりもさらに大量に密に発生しているが、磁場を説明するために、代表的なものだけを模式的に示している。
図6(a)の矢印111は仕切部材54に流れる誘導電流、矢印112は仕切部材54から発生する2次的磁場の流れを表している。
【0072】
まず、
図6(a)を用いて導電性の固定部59dを設けた場合を説明する。コイル53の中空部の側から発生した磁場は矢印110のような流れで発生し、保持部材51、仕切部材54、ネジを含む固定部59で構成するループ構造に鎖交してコイル53の中空部の側に到達する。ループ構造に交流磁場が鎖交すると電磁誘導により、ループ構造には誘導起電力が生じる。この誘導起電力に起因して、ループ構造に誘導電流が流れ、2次的な磁場がループ構造から発生する。電子ユニット6の裏面近くに配置され、ループ構造の一部を構成する仕切部材54にも、同様に矢印110の磁場の鎖交に伴い誘導起電力が生じ、矢印111のような誘導電流が流れる。そして、矢印112のような2次的な磁場が仕切部材54から発生し、電子ユニット6に到達することとなる。なお、
図6(a)で示した仕切部材54の投影面100は、仕切部材54の持つ電子ユニット6に対して光軸4方向から投影した面に重なる投影面を示している。この投影面100は、仕切部材54の電子ユニット6に最も近く、かつ最も長い辺を有している。したがって、保持部材51、仕切部材54、ネジを含む固定部59で構成するループ構造のなかで、仕切部材54の投影面100から発生する矢印112の2次的な磁場が特に電子ユニット6に大きく到達することとなる。
【0073】
次に、
図6(b)を用いて、固定部59aとシート材58で非導電性の固定部を設けた、実施例1について説明する。
図6(a)記載の構成と同様に、保持部材51、仕切部材54、ネジを含む固定部59で構成するループ構造にも誘導起電力が生じる。しかし、先で述べたように保持部材51と仕切部材54を接続する固定部59aおよびシート材58は非導電性の材料である。したがって、生じた誘導起電力に対して、固定部59aに設けた固定部がハイインピーダンスとなり、電子ユニット6に対する仕切部材54の投影面100に流れる誘導電流は大きく低減する。これにより、ループ構造に含まれる仕切部材54からの2次的な磁場発生を抑制し、電子ユニット6に到達する磁場の量を低減することができる。
【0074】
なお、
図6(a)、
図6(b)では、コイル53の一方向に電流が流れた際の磁場の発生について説明しているが、実際の駆動ではPWM制御による印加電圧を用いており、交流成分が含まれるので逆方向の電流変化もある。その結果、磁場は逆方向のベクトルとなって発生し、
図6(a)、
図6(b)と逆向きとなる。しかし、磁場の向きが逆向きであっても、誘導起電力に起因して誘導電流が発生することに変わりはなく、非導電性の固定部59a、シート材58の配置による効果は同様に得られる。
【0075】
また、先で述べたように、ヨーク75は8の字状に構成され、ヨーク75の中心部を通る辺は仕切部材54に対向するように配置されている。したがって、ヨーク75にもコイル53から発生する磁場が鎖交し、誘導起電力は生じる。しかし、ヨーク75は仕切部材54に比べ、電子ユニット6から遠い。また磁性体であるため誘導電流が流れづらく2次的な磁場も発生しにくい。したがって、ヨーク75があっても、非導電性の固定部59a、シート材58の配置による効果は同様に得られる。
【0076】
以上、述べたように電子ユニット6、コイル53、保持部材51、仕切部材54が配された可動ユニット50を有する駆動装置20において、コイル53から発生した磁場に起因して、仕切部材54から発生した2次的磁場が電子ユニット6へ到達する。しかしながら、非導電性の固定部59a、非導電性のシート材58で構成する固定部を保持部材51と仕切部材54の間に設けることで、小型化を図りつつも電子ユニット6への磁場の影響を低減することができる。
【0077】
なお、本実施例では、固定部59aにおいて、非導電性のシート材58や、非導電性のネジを設ける構成としたが、その他の固定部である固定部59bや固定部59cに同様の構成を適用しても良い。
【0078】
また、本実施例では、固定部59a、59b、59cのうちの固定部59aのみにおいて、非導電性のシート材58、非導電性の固定部59aを設ける構成としたが、複数の固定部のそれぞれに同様の構成を同時に設けた構成であっても良い。このような構成とすることで、各固定部間に位置する保持部材の一部からの2次的な磁場の発生を抑制することもできる。
【0079】
実施例1では、非導電性の固定部59aとシート材58を設けることで、電子ユニット6に対する仕切部材54の投影面100に流れる誘導電流を低減している。ここで投影面100は、電子ユニット6に最も近く、かつ最も長い辺を有するため、電子ユニット6に影響する2次的な磁場を最も発生する仕切部材54の一部である。本実施例のように、非導電性の固定部は、投影面100のような電子ユニット6に最も近く、かつ最も長い辺に流れる誘導電流を低減する構成とすることがより好ましい。このような構成は、保持部材51と仕切部材54の固定部と、仕切部材54の持つ電子ユニット6に対して光軸4方向から投影した面に重なる最も長い投影面との位置関係によって決まる。より具体的には、仕切部材54のもつ投影面の長さ方向において、挟むように位置する保持部材51と仕切部材54の固定部のうちどちらか一方に位置するすべての固定部を非導電性材料で構成することが望ましい。
【0080】
例えば実施例1のように固定部59aにおいて、保持部材51と仕切部材54が非導電性部材を介して接続する構成が良い。あるいは、固定部59aを導電性材料で構成し、固定部59b、59cにおいて、保持部材51と仕切部材54が非導電性材料を介して接続する構成であっても良い。このような構成とすることで、電子ユニット6に最も近く、かつ最も長い辺に流れる誘導電流を大きく低減することができる。なお、固定部59b、59cを設ける固定部を非導電性とする構成では、固定部59bの固定部、仕切部材54、固定部59cの固定部から発生する2次的磁場も抑制することが出来る。したがって、仕切部材54のもつ投影面の長さ方向において、挟むように位置する保持部材51と仕切部材54の固定部のうち固定部の多い方に位置するすべての固定部を非導電性材料で構成することがより好ましい。したがって、固定部59bの一部および固定部59cの一部が、絶縁材料で構成されている形態が好ましい。
【0081】
固定部59aとシート材58は非導電性としているが、保持部材51と仕切部材54とその固定部で構成するループ構造において、高い電気抵抗を有し、誘導電流を抑制できる材質であれば良い。したがって、固定部59aとシート材58は、保持部材51や仕切部材54に比べより高い電気抵抗率をもつ部材であることが望ましい。
【0082】
また、固定部59aとシート材58は非導電性材料で、保持部材51と仕切部材54を接続する固定部が構成できれば良い。したがって、例えば保持部材51あるいは仕切部材54に非導電性のコーティングを施し、保持部材51に突出部、仕切部材54に穴を設けて差し込むような構成であっても良い。あるいは保持部材51あるいは仕切部材54に非導電性のコーティングを施し、保持部材51に穴を設け、保持部材の一部を穴に差し込むような構成であっても良い。このような構成とすることで、より小型、軽量化を図りつつも電子ユニット6への磁場の影響を低減することができる。
【0083】
実施例1において、固定部59b、59cを設ける固定部では保持部材51と仕切部材54の電気的な導通がとられている。このような構成とすることで、仕切部材54に不要な電気的帯電を防ぐこともできる。なお、不要な帯電を防ぐには、複数ある固定部のうち少なくとも一点の導通が取れていれば良い。また、保持部材51や仕切部材54は、電子デバイス66からの熱を伝導するように構成されていてもよい。実施例1において、電子ユニット6と仕切部材54の間に不図示の熱伝導部材を設けることで、電子ユニット6で発生した熱を仕切部材54から固定部59bや固定部59cを介して保持部材51に放熱させることができる。
【0084】
このような構成とすることで、より小型化を図りつつも、仕切部材54の不要な帯電、電子ユニット6の放熱、電子ユニット6への磁場の影響を低減することができる。
【0085】
[比較例1]
上記、実施例1における仕切部材54に流れる誘導電流低減による効果を確認するため、実施例1に係るブレ補正手段及び比較例1に係るブレ補正手段について実測による検討を行った。比較例1に係るブレ補正手段は、実施例1に係るブレ補正手段から、仕切部材54を取り外した構成である。なお、検討方法としては、実施例1や比較例1の構成において、電子ユニット6の位置に到達する磁場を実測して検討を行った。
図7は、実測位置と実測結果を示すグラフである。
図7(a)は、光軸4方向から見た駆動装置20に9点の測定箇所を示した図である。
図7(b)は、実測結果を示すグラフである。なお磁場の実測は、市販の1cmループの磁界プローブとスペクトラムアナライザーを使用して行った。
【0086】
まず、駆動条件について説明する。3つの駆動コイルへの印加電圧は周波数300kHzの振幅5Vの方形波とした。これは周波数が300kHz、デューティが50%であるPWM制御波形を想定している。
【0087】
次に実測の方法について説明する。電子ユニット6の面に相当する部分を9分割し、9分割した各面の中心に磁界プローブの中心点が位置するように測定を実施した。
図7(a)の点121、122、123、124、125、126、127、128、129は測定時に磁界プローブの中心点を配置した位置を示している。なお、測定時の磁場のベクトルは、磁場が電子ユニット6に対して大きく影響する
図7(a)に示すような光軸4の方向に垂直な、X軸、Y軸の2方向とした。
【0088】
図7(b)は、仕切部材54を取り外した比較例1の構成と、実施例1の構成を比較した結果を示すグラフである。
図7(b)に示すグラフの縦軸は、観測点9点、2軸方向のうち最大となった磁束密度[nT]を示している。
【0089】
図7(b)に示す結果より、比較例1では、到達磁界が30.3[nT]となり、実施例1では、17.2[nT]となった。したがって、仕切部材54を取り外すことで電子ユニット6の位置に到達する磁場が低減することがわかる。これは、仕切部材54を取り外すことで、仕切部材54から発生する2次的な磁場が低減したためである。なお、仕切部材54を取り外さず、一部の固定部を非導電性材料で構成することでも同様な効果を得ることができる。
【実施例2】
【0090】
図8を参照して、本発明の実施例2によるブレ補正手段を有する撮像機器について説明する。
【0091】
実施例2における撮像機器の基本的な構成は実施例1の
図4で示した撮像機器と同様であり、駆動装置20の基本的な構成も実施例1の
図3、
図3で示した駆動装置20と同様のため説明を省略する。実施例1との違いは、仕切部材54において固定部59bを設けた固定部159bから固定部59cを設けた固定部159cまで間に位置する仕切部材54の一部である部材101の形状が異なる点である。
【0092】
図8は実施例2における駆動装置20の保持部材51、コイル53、仕切部材54、ヨーク56、磁石57、シート材58、ネジを含む固定部59のみを示した斜視図である。なお、参考のため、電子ユニット6の外形を点線で記載する。
【0093】
仕切部材54の一部である101の形状について説明する。
図8で示すように、実施例1と同様に固定部59b、59cを設けた固定部159b、159cで仕切部材54と保持部材51が接続され、電気的に導通している。固定部159bから159cまでの仕切部材54の引き延ばし部である部材101は、光軸4の方向において、電子ユニット6を投影した面を避けて配されている。より具体的には、部材101は固定部159b、159cを設けた保持部材51の端部に対向するように設けられている。
【0094】
次に、コイル53から発生する磁場の影響と、仕切部材54の一部である部材101を保持部材51に沿う構成をとった効果について説明する。矢印110のようなコイル53から発生した交流磁場が、保持部材51、仕切部材54、ネジを含む固定部59で構成するループ構造に鎖交することで、ループ構造には誘導起電力が生じる。実施例2においても、実施例1と同様に、非導電性の固定部59aと非導電性材料のシート材58を設けている。したがって、固定部59aから固定部159bや固定部159cに向かって配置されている仕切部材54の一部に流れる矢印111で示す誘導電流は低減し、2次的磁場の発生を抑制している。上述したように固定部159bと固定部159cを介して、保持部材51と仕切部材54は導通している。したがって、コイル53から発生した矢印110の磁場により、固定部159b、仕切部材54の一部である部材101、固定部159cに矢印113の誘導電流が流れる。これにより部材101から矢印114の2次的磁場が発生する。この時、部材101は光軸4の方向において電子ユニット6を投影した面を避けて配されている。このような構成とすることで、電子ユニット6の直下に誘導電流が流れる部材101が配置することを避け、電子ユニット6と部材101の距離をより離している。したがって、部材101から電子ユニット6に到達する磁場の量を低減することができる。なお、部材101は保持部材51に沿う形状としている。したがって、保持部材51やベース板71によるシールド効果も得られ、これにより更に電子ユニット6に到達する磁場の量を低減することができている。
【0095】
以上、述べたように電子ユニット6、コイル53、保持部材51、仕切部材54が配された可動ユニット50を有する駆動装置20において、コイル53から発生した磁場に起因して、仕切部材54から発生した2次的磁場が電子ユニット6へ到達する。しかしながら、仕切部材54の一部である101を光軸4の方向において、電子ユニット6を投影した面を避けて配置することで、小型化を図りつつも電子ユニット6への磁場の影響を低減することができる。
【0096】
なお、固定部159bと固定部159cを介して、保持部材51と仕切部材54は導通している。したがって、より小型化を図りつつも、仕切部材54の不要な帯電、電子ユニット6の放熱、電子ユニット6への磁場の影響を低減することができる。
【0097】
本実施形態に係る駆動装置20を備えた機器は、カメラのような撮像機器に限らず、スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの電子機器、テレビやディスプレイのような表示機器であってもよい。車両や船舶、飛行体などの輸送機器であり得る。あるいは、機器は内視鏡や放射線診断などの医療機器や、測距センサなどの計測機器、電子顕微鏡のような分析機器、プリンタやスキャナ、複写機などの事務機器、ロボットや製造装置などの産業機器であってもよい。上記各種の機器が、駆動装置20の構成を採用することで、誘電ノイズの発生を抑制できる。
【0098】
説明した実施形態は、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。なお、本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。
【0099】
なお、例示した具体的な数値範囲について、e~fという記載(e、fは数字)は、e以上および/またはf以下という意味である。また、例示した具体的な数値範囲について、i~jという範囲およびm~nという範囲が併記(i、j、m、nは数字))してある場合には、下限と上限の組は、iとjの組またはmとnの組に限定されるものではない。例えば、複数の組の下限と上限を組み合わせて検討もよい。すなわち、i~jという範囲およびm~nという範囲が併記してある場合には、i~nという範囲で検討を行ってもよいし、m~jという範囲で検討を行ってもよいものである。
【0100】
また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した個別の概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、たとえ「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略していたとしても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【符号の説明】
【0101】
20 駆動装置
50 可動ユニット
60 前方固定ユニット
70 後方固定ユニット
6 電子ユニット
66 電子デバイス
666 主面
81、82 開口
83 仕切部分