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特許7581030光学装置、車載システム、および移動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光学装置、車載システム、および移動装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20241105BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20241105BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/931
G08G1/16 C
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020199812
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2021139883
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020034831
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】中野 正嗣
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-504291(JP,A)
【文献】特開平11-203701(JP,A)
【文献】特開2008-216520(JP,A)
【文献】特開平05-027188(JP,A)
【文献】特開2009-087413(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099151(WO,A1)
【文献】特開平11-083755(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G02B 6/00
G02B 26/00 - 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照明光を偏向して物体を走査すると共に、前記物体からの反射光を偏向する偏向部と、
前記照明光を前記偏向部に導光すると共に、前記偏向部からの前記反射光を受光部に導光する導光部とを有し、
前記導光部は、前記照明光が通過する第一および第二の通過領域と、前記反射光を反射する反射領域とを備え、
前記照明光は、前記導光部により第一の照明光、および第二の照明光に分岐され、
前記第一および第二の照明光はそれぞれ、互いの射出方向が非平行となるように前記第一および第二の通過領域から射出された後、前記偏向部に入射することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記照明光は、前記導光部で光束の一部を空間的に分割することで分岐されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記照明光は、前記導光部で光の強度を分割することで分岐されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記照明光は、前記導光部で第一の偏光成分と第一の偏光成分と直交する第二の偏光成分に分割することで分岐されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第一および第二の照明光の光量は等しいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記第一および第二の照明光の光量は互いに異なることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記導光部は、前記照明光が入射する第一面と、前記照明光を反射する反射面を備え、
前記第一面より入射した前記第二の照明光は、前記導光部内で分岐された後、前記反射面で反射し、前記第二の通過領域から射出されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記導光部は、前記第一面と前記第二の通過領域又は前記反射領域とのなす角度をα、前記第二の通過領域又は前記反射領域と前記反射面とのなす角度αとするとき、
α+α=90
なる式を満足することを特徴とする請求項7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記導光部は、前記照明光の光束径を拡大させることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第一および第二の通過領域が共通であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項11】
前記導光部は、前記第一の通過領域と前記反射領域とを有する第二面と、前記第二の通過領域と前記反射領域とを有する第三面とを備えることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項12】
前記第一および第二の照明光は、前記偏向部に入射する前に交差することを特徴とする請求項11に記載の光学装置。
【請求項13】
前記第一および第二の照明光の反射光は、前記導光部を通過した後、前記受光部に入射する前に共通光学系を通過することを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項14】
前記共通光学系の入射瞳の位置は、前記偏向部上であることを特徴とする請求項13に記載の光学装置。
【請求項15】
前記共通光学系は、集光ミラーであることを特徴とする請求項13又は14に記載の光学装置。
【請求項16】
前記偏向部によって偏向された前記照明光の光束径を拡大すると共に、前記物体からの前記反射光の光束径を縮小するテレスコープを更に有することを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項17】
前記偏向部は、前記テレスコープの入射瞳位置に配置されることを特徴とする請求項16に記載の光学装置。
【請求項18】
前記第一および第二の照明光の照明範囲の一部は重なることを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項19】
前記光源からの前記照明光の出射と前記受光部前記反射光の受光との時間差、又は前記光源からの前記照明光と前記受光部が受光する前記反射光との位相差に基づいて前記物体の距離情報を取得する制御部を更に有することを特徴とする請求項1乃至18の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか一項に記載の光学装置と、該光学装置によって得られた前記物体の距離情報に基づいて車両と前記物体との衝突可能性を判定する判定部とを備えることを特徴とする車載システム。
【請求項21】
前記車両と前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両に制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置を備えることを特徴とする請求項20に記載の車載システム。
【請求項22】
前記車両と前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両のユーザに対して警告を行う警告装置を備えることを特徴とする請求項20又は21に記載の車載システム。
【請求項23】
前記車両と前記物体との衝突に関する情報を外部に通知する通知装置を備えることを特徴とする請求項20乃至22の何れか一項に記載の車載システム。
【請求項24】
請求項1乃至19の何れか一項に記載の光学装置を備え、該光学装置を保持して移動可能であることを特徴とする移動装置。
【請求項25】
前記光学装置によって得られた前記物体の距離情報に基づいて前記物体との衝突可能性を判定する判定部を有することを特徴とする請求項24に記載の移動装置。
【請求項26】
前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、移動を制御する制御信号を出力する制御部を備えることを特徴とする請求項25に記載の移動装置。
【請求項27】
前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記移動装置のユーザに対して警告を行う警告部を備えることを特徴とする請求項25又は26に記載の移動装置。
【請求項28】
前記物体との衝突に関する情報を外部に通知する通知部を備えることを特徴とする請求項24乃至27の何れか一項に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明した対象物からの反射光を受光することで、対象物を検出する光学装置、車載システム、および移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物までの距離を計測する方法として、照明した対象物からの反射光を受光するまでの時間や反射光の位相から距離を算出するLiDAR(Light Detection and Ranging)が知られている。
【0003】
対象物からの反射光は、対象物が離れているほど弱くなる。対象物からの反射光を多く受光するためには、対象物を走査しながら照明するための偏向部で使用される駆動ミラーの径を大きくすればよいが、駆動ミラーの径を大きくすると駆動ミラーの振れ角が小さくなるため、対象物を走査する範囲が狭くなる。
【0004】
特許文献1には、対象物を走査する範囲を拡大するために、複数の光源からの照明光を異なる角度で偏向部に入射させ、光源ごとの照明光で対象物を照明する装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、一つの光源からの照明光をプリズムで分離し、互いに異なる入射角度で二つの照明光を偏向部に入射させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開2018/143302号明細書
【文献】特開平11-203701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の装置では、光源、および各光源に対応する対象物からの反射光を受光する受光部を複数配置する必要があるため、部品点数が多く、装置が大型化してしまう。
【0008】
また、特許文献2の装置では、一方の照明光は対象物を照明するが、他方の照明光は偏向部の角度検出用に用いられているため、走査範囲を拡大することはできない。
【0009】
本発明は、小型でありながら走査範囲が広い光学装置、車載システム、および移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての光学装置は、光源からの照明光を偏向して物体を走査すると共に、物体からの反射光を偏向する偏向部と、照明光を偏向部に導光すると共に、偏向部からの反射光を受光部に導光する導光部とを有し、導光部は、照明光が通過する第一および第二の通過領域と、反射光を反射する反射領域とを備え、照明光は、導光部により第一の照明光、および第二の照明光に分岐され、第一および第二の照明光はそれぞれ、互いの射出方向が非平行となるように第一および第二の通過領域から射出された後、偏向部に入射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型でありながら走査範囲が広い光学装置、車載システム、および移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の光学装置の要部概略図である。
図2】実施例1の分岐光学素子の要部概略図である。
図3】一方の通過領域を透過する照明光の光路図である。
図4】他方の通過領域を透過する照明光の光路図である。
図5】一方の通過領域を透過した照明光に対応する反射光の光路図である。
図6】他方の通過領域を透過した照明光に対応する反射光の光路図である。
図7】照明範囲の説明図である。
図8】実施例1の分岐光学素子の変形例の要部概略図である。
図9】実施例1の分岐光学素子の変形例の要部概略図である。
図10】実施例1の分岐光学素子の変形例の要部概略図である。
図11】実施例2の光学装置の要部概略図である。
図12】実施例2の分岐光学素子の要部概略図である。
図13】一方の通過領域を透過する照明光の光路図である。
図14】他方の通過領域を透過する照明光の光路図である。
図15】一方の通過領域を透過した照明光に対応する反射光の光路図である。
図16】他方の通過領域を透過した照明光に対応する反射光の光路図である。
図17】実施例2の分岐光学素子の変形例の要部概略図である。
図18】実施例3の光学装置の要部概略図である。
図19】実施例4の光学装置の要部概略図である。
図20】実施例4の照明光の光路図である。
図21】実施例4の分岐光学素子の要部概略図である。
図22】実施例4の照明光の分岐光学素子を通過する際の光量分布を示す図である。
図23】実施例4の反射光の光路図である。
図24】実施例4の分岐光学素子の変形例の要部概略図である。
図25】実施例4の分岐光学素子の変形例の要部概略図である。
図26】本実施形態に係る車載システムの構成図である。
図27】本実施形態に係る車両(移動装置)の模式図である。
図28】本実施形態に係る車載システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
LiDARを用いた光学装置は、対象物(物体)を照明する照明系と対象物からの反射光や散乱光を受光する受光系とから構成される。LiDARには、照明系と受光系の光軸の一部が互いに一致する同軸系と、各光軸が互いに一致しない非同軸系がある。本実施形態に係る光学装置は、同軸系のLiDARに好適なものである。
【0015】
各実施例の光学装置は例えば、自動車などの車両に自動運転支援システムとして使用される。対象物は例えば、歩行者、障害物、および車両などであり、1~300m程度離れている。各実施例の光学装置は対象物までの距離を計測し、計測結果をもとに車両の方向や速度の制御が実行される。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例の光学装置1の要部概略図である。光学装置1は、光源11、コリメータレンズ12、絞り13、分岐光学素子(導光部、分岐部)21、駆動ミラー(偏向部)31、集光ミラー41、受光素子(受光部)51,52、および制御部60を有する。
【0017】
本実施例の座標系は、図1に示されるように定められている。具体的には、駆動ミラー31の一つの揺動方向をX軸、X軸と直交し他方の揺動方向をY軸、X軸およびY軸に垂直な軸をZ軸とする。
【0018】
光源11として、エネルギー集中度が高く指向性のよいレーザである半導体レーザなどが用いられる。例えば、波長が近赤外域の半導体レーザが用いられる。絞り13の形状は、Y軸方向に平行な短径が1.3mm、長径が1.6mmの楕円形状である。光源11から射出された発散光(照明光)は、コリメータレンズ12によってコリメートされ、平行光となる。なお、ここでの平行光は、厳密な平行光束だけではなく、弱発散光や弱収束光を含むものである。照明光は、コリメータレンズ12を通過後、絞り13によって光が制限され、分岐光学素子21へと進行する。
【0019】
図2は、本実施例の分岐光学素子21の要部概略図である。分岐光学素子21は、第一面211、第二面212、第三面213、および第四面214を有する。図2(a)は、分岐光学素子21を通過する際の照明光の経路を示している。図2(b)は、第二面212を面法線方向から見た図である。
【0020】
第二面212は、照明光を透過させる通過領域2121,2122、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域(反射面)2123を有する。通過領域2121,2122の間隔dは、15.41mmである。通過領域2121,2122の形状は本実施例ではY軸方向において1.3mm、Z軸方向において1.35mmの矩形状であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、半円形状であってもよい。また、通過領域2121,2122に反射防止膜を形成してもよい。反射領域2123には、金属膜や誘電体膜などによって分岐光学素子21の内側と外側の両方からの入射光を反射する層が形成されている。また、反射領域2123の光が到達しない有効領域外には、光を吸収する層が形成されていることが好ましい。
【0021】
分岐光学素子21に使用される材料は、光源11から射出される光の波長に対して透過率が高く、また不純物や欠陥が少ないものが好ましい。本実施例では、分岐光学素子21に使用される材料の屈折率は1.972である。
【0022】
図3は、通過領域(第一の通過領域)2121を透過する照明光の光路図である。図4は、通過領域(第二の通過領域)2122を透過する照明光の光路図である。図5は、通過領域2121を透過した照明光に照明された対象物OBJからの反射光の光路図である。図6は、通過領域2122を透過した照明光に照明された対象物OBJからの反射光の光路図である。各図の(a)はXZ断面図、(b)はYZ断面図である。
【0023】
本実施例では、光を空間的に分割することで第一面からの光を分岐する手段を示す。
【0024】
絞り13を通過した光は、第一面211でスネルの法則に従って屈折して分岐光学素子21内を進行し、第二面212に到達する。第二面212に到達した照明光のうち通過領域2121に入射した光は、スネルの法則によって屈折し、射出される。以後、この光路を第一光路(図2(a)の実線)とする。一方、第二面212に到達した照明光のうち反射領域2123に入射した光は、反射され、第一面211に再び到達した後、反射領域を備える第三面213に向かって全反射する。第三面213に入射した光は、全反射し、通過領域2122でスネルの法則に従って屈折し、射出される。以後、この光路を第二光路(図2(a)の破線)とする。このように、照明光は分岐光学素子21により二つの照明光(第一の照明光、および第二の照明光)に分岐され、第一および第二の照明光はそれぞれ、互いの射出方向が角度をなすように通過領域2121,2122から射出される。なお、「角度をなす」とは、二つの照明光の射出方向が平行である(二つの照明光の射出方向が0度をなす)場合は含まれないものとする。また、通過領域が同一面に形成されておらず、二つの照明光の出射角が互いに同じであるが、それぞれの射出方向が異なる場合は含まれるものとする。
【0025】
駆動ミラー31は、X軸およびY軸周りに揺動する二軸駆動ミラーであり、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。駆動ミラー31は、本実施例では、揺動角度が±15度、駆動周波数が1kHz程度である。駆動ミラー31は、照明光を偏向して対象物OBJを走査すると共に、対象物OBJからの反射光を偏向して分岐光学素子21に導光する。
【0026】
第一光路および第二光路の照明光は、駆動ミラー31によって反射され、分岐光学素子21や光源11の下側を通過した後、2次元走査されながら対象物OBJを照明する。分岐光学素子21から射出される二つの光が異なる角度で駆動ミラー31に入射し、走査されることで異なる領域を照明することができる。すなわち、照明範囲を拡大することができる。
【0027】
図7は、照明範囲の説明図である。図7(a)は、駆動ミラー31がX軸周りに±6度、Y軸周りに±15度揺動する場合の照明範囲を示している。この場合、二つの照明範囲が全照明範囲の中心部でちょうど重なるように設定されているため、全照明範囲が大幅に拡大される。図7(b)は、駆動ミラー31がX軸周りに±6度、Y軸周りに±24度揺動する場合の照明範囲を示している。この場合、二つの照明範囲が全照明範囲の中心部で±9度重なるように設定されているため、全照明範囲を拡大しつつ中心部を重複して測距が可能となる。
【0028】
集光ミラー41は、第一光路と第二光路の光に対して同一のミラーとして使用されるが、光が通過しない中央位置で分離されていてもよい。
【0029】
受光素子51,52として、PD(Photo Diode)、APD(Avalanche Photo Diode)やSPAD(Singel PHTON Avalanche Diode)などが用いられる。
【0030】
対象物OBJからの反射光は、駆動ミラー31によって分岐光学素子21に偏向される。具体的には、第一光路の反射光は、照明光と逆方向の光路で光源11や分岐光学素子21の下側を通過した後、駆動ミラー31に入射し、通過領域2121付近に向けて偏向される。偏向された光のうち反射領域2123に当たる光は、集光ミラー41に向かって反射され、受光素子51上に集光し、受光される。第二光路の反射光は、照明光と逆方向の光路で光源11や分岐光学素子21の下側を通過した後、駆動ミラー31に入射し、通過領域2122付近に向けて偏向される。偏向された光のうち反射領域2123に当たる光は、集光ミラー41に向かって反射され、受光素子52上に集光し、受光される。
【0031】
制御部60は、光源11、駆動ミラー31、および受光素子51,52を制御する。具体的には、制御部60は、光源11、および駆動ミラー31をそれぞれ所定の駆動電圧や駆動周波数で駆動すると共に、受光素子51,52における受光の際の受光波形を特定の周波数で計測する。また、制御部60は、受光素子51,52での受光時間と光源11の発光時間との差分、又は受光素子51,52で得られた受光信号の位相と光源11の出力信号の位相との差分を用いて対象物OBJとの距離を決定する。
【0032】
分岐光学素子21の第一面211と第二面212とのなす角度をα(度)、第二面212と第三面213とのなす角度α(度)としたとき、以下の式(1)を満足することが好ましい。
【0033】
α+α=90 (1)
式(1)を満足することで、第二光路において第一面211で反射した反射光が第二面212と平行になり、かつ通過領域2121から射出される光が通過領域2122から射出される光と絶対値は等しいが、符号が異なる角度を有することができる。その結果、駆動ミラー31に入射する角度も絶対値は等しいが、逆向きになるため、それぞれの照明範囲の面積は等しくなり、Y軸に対して対称に対象物OBJを照明することができる。
【0034】
本実施例では、第一面211と第二面212とのなす角度αはY軸周りに対して38.2度、第二面212と第三面213とのなす角度αはY軸周りに対して51.8度である。すなわち、本実施例の構成は式(1)を満足し、図7に示されるようにそれぞれの照明範囲の面積は等しくなる。
【0035】
照明光が分岐光学素子21を通過する間に、第一面211と第二面212で二回屈折し光束径(ビーム径)は変倍される。本実施例では、通過領域2121から射出される照明光の光束径hと通過領域2122から射出される照明光の光束径hとが等しくなるように設定されている。この場合、絞り13によって制限され第一面211に入射する照明光の光束径hと、通過領域2121から射出される照明光の光束径hと間には、以下の式(2)が成り立つ。なお、θ,θ,θ,θはそれぞれ、照明光が、第一面211に入射する角度、第一面211から射出される角度、第二面212に入射する角度、通過領域2121から射出される角度である。
【0036】
【数1】
【0037】
式(2)は、照明光が第一面211に入射する角度θが、照明光が通過領域2121から射出される角度θより大きい場合、1より大きくなる。つまり、照明光の光束径は、分岐光学素子21を通過する間に拡大される。光束径を拡大すると、照明光の発散角が小さくなり、遠方での照明光の広がりを抑制できる。また、照明光の発散を抑制することで、遠方での分解能や照度を向上させることができる。
【0038】
本実施例では、角度θ,θ,θ,θはそれぞれ、55.2度、24.6度、13.6度、27.6度であり、式(2)は1.45となり照明光は拡大される。
【0039】
第一光路における照明光の光量は、第二光路における照明光の光量と略等しいことが好ましい。照明光量を略等しくすることで、照明範囲ごとに測距精度が変わらず、信頼性の高い測定を行うことができる。また、照明範囲ごとのキャリブレーションも不要である。本実施例では、通過領域2121,2122の透過率、および反射領域2123の反射率はそれぞれ100%であるが、それ以外の場合においても光量が等しくなるように、通過領域2121,2122の面積や位置、透過率、又は反射率を微調整すればよい。
【0040】
図8は、分岐光学素子21の変形例である分岐光学素子24の要部概略図である。分岐光学素子24の外形形状は分岐光学素子21と同一である。図8(a)は、分岐光学素子24を通過する際の照明光の経路を示している。図8(b)は、第二面242を面法線方向から見た図である。
【0041】
第二面242は、照明光を透過させる通過領域2421,2422、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2423を有する。本変形例においては、光の強度を分割することで第一面からの光を分岐する手段を示す。
【0042】
例えば本変形例では、通過領域2421は、透過率50%かつ反射率50%の特性を有し、通過領域2422は、透過率99%かつ反射率1%の特性を有する。本変形例では、第一光路と第二光路の光量を略等しくするために、上記の特性を設定しているが、本発明はこれらの特性に限定されない。
【0043】
第一面241から入射した光は、第二面242の通過領域2421に到達する。このとき、通過領域2421の特性により、光束の50%の強度は透過し、一方で50%は反射する。透過した光は図2と同様に第一光路となる。反射した光は第一面241で全反射し、さらに第三面243で全反射し、通過領域2422から射出され、第二光路となる。その後、第一光路と第二光路ともに、駆動ミラー31に入射する。
【0044】
一方、駆動ミラー31からの反射光は通過領域2421,2422、および反射領域2423で反射し、各面に対応した受光素子に入射し、受光される。
【0045】
図9は、分岐光学素子21の変形例である分岐光学素子25,26の要部概略図である。分岐光学素子25の外形形状は分岐光学素子21と同一である。図9(a)は、分岐光学素子25,26を通過する際の照明光の経路を示している。図9(b)は、第二面262を面法線方向から見た図である。
【0046】
分岐光学素子26は平板であり、第二面262は、照明光を透過させる通過領域2621,2622、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2623を有する。本変形例においては、偏光を利用することで第一面からの光を分岐する手段を示す。
【0047】
本変形例では、通過領域2621は、第一の偏光方向の透過率が100%かつ反射率0%、第二の偏光方向の透過率が0%かつ反射率100%の特性を有する偏光ビームスプリッタ面であり、通過領域2622は、透過率99%かつ反射率1%の特性を有する。本変形例では、第一光路と第二光路の光量を略等しくするために、上記の特性を設定しているが、本発明はこれらの特性に限定されない。
【0048】
分岐光学素子25の第一面251から入射する光は、円偏光や無偏光であることが好ましい。特に、光源11に半導体レーザを用いた場合、レーザ光の偏光特性は直線偏光であるので、分岐光学素子25に到達するまでに、1/4波長板で円偏光に変換することが望ましい。
【0049】
分岐光学素子25の第一面251から入射した光は、第二面252および分岐光学素子26の第一面261を通過後、通過領域2621に到達する。このとき、通過領域2621の偏光特性により、第一の偏光方向の光(第一の偏光成分)は透過し、一方で第二の偏光方向(第二の偏光成分)は反射する。透過した光は図2と同様に第一光路となる。反射した光は分岐光学素子25の第一面251で全反射し、さらに第三面253で全反射し、通過領域2622から射出され、第二光路となる。その後、第一光路と第二光路ともに、駆動ミラー31に入射する。
【0050】
一方、駆動ミラー31からの反射光は通過領域2621,2622および反射領域2623で反射し、各面に対応した受光素子に入射し、受光される。
【0051】
図10は、分岐光学素子21の変形例である分岐光学素子25,27の要部概略図である。分岐光学素子25の外形形状は分岐光学素子21と同一である。図10(a)は、分岐光学素子25,27を通過する際の照明光の経路を示している。図10(b)は、第二面272を面法線方向から見た図である。
【0052】
分岐光学素子27は平板であり、照明光を通過させる孔である通過領域2721,2722、光源11からの照明光を反射する反射領域271、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域272を有する。
【0053】
分岐光学素子25の第一面251から入射した光は、第二面252を通過後、分岐光学素子27の第一面271に到達する。到達した照明光のうち通過領域2721に入射した光は、そのまま分岐光学素子27を通過し、この光路を第一光路とする。一方、第二面272に到達した照明光は反射され、分岐光学素子25の第一面251で全反射し、さらに第三面253で全反射し、通過領域2722から射出され、第二光路となる。その後、第一光路と第二光路ともに、駆動ミラー31に入射する。
【0054】
一方、駆動ミラー31からの反射光は反射領域272で反射し、各面に対応した受光素子に入射し、受光される。
【0055】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、小型でありながら走査範囲を拡大することができる。
【実施例2】
【0056】
図11は、本実施例の光学装置2の要部概略図である。光学装置2は、光源11、コリメータレンズ12、絞り13、分岐光学素子28、駆動ミラー(偏向部)31、集光ミラー41、受光素子(受光部)51,52、および制御部60を有する。分岐光学素子28を除く構成は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0057】
分岐光学素子28は、照明光路を分岐し、さらに照明光路と受光光路とを分離する機能を有する。
【0058】
図12は、本実施例の分岐光学素子28の要部概略図である。分岐光学素子28は、第一面281、第二面282、および第三面283を有する。第一面281と第二面282とのなす角度、および第一面281と第三面283とのなす角度はともに、Y軸周りに対して7.3度である。図12(a)は、分岐光学素子28を通過する際の照明光の経路を示している。図12(b)は、分岐光学素子28を-Z軸方向から見た図である。
【0059】
第二面282は、照明光を透過させる通過領域2821、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2822を有する。第三面283は、照明光を透過させる通過領域2831、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2832を有する。通過領域2821,2831の形状は本実施例では半径1.6mmの半円形状であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、矩形状であってもよい。本実施例では、後述する第一光路および第二光路における各照明光の光量が略等しくなるように、通過領域2821,2831の面積は同じである。また、通過領域2821,2831に反射防止膜を形成してもよい。反射領域2822,2832には、金属膜や誘電体膜などによって分岐光学素子28の外側からの入射光を反射する層が形成されている。また、反射領域2822,2832の入射光が到達しない有効領域外には、光を吸収する層が形成されていることが好ましい。
【0060】
図13は、通過領域(第一の通過領域)2821を透過する照明光の光路図である。図14は、通過領域(第二の通過領域)2831を透過する照明光の光路図である。図15は、通過領域2821を透過した照明光に照明された対象物OBJからの反射光の光路図である。図16は、通過領域2831を透過した照明光に照明された対象物OBJからの反射光の光路図である。各図の(a)はXZ断面図、(b)はYZ断面図である。
【0061】
絞り13を通過した光は、第一面281でスネルの法則に従って屈折して分岐光学素子28内を進行し、第二面282、および第三面283に到達する。第二面212に到達した照明光は、通過領域2821から射出され、駆動ミラー31に入射する。以後、この光路を第一光路(図12(a)の実線)とする。一方、第三面283に到達した照明光は、通過領域2831から射出され、駆動ミラー31に入射する。以後、この光路を第二光路(図12(a)の破線)とする。このように、照明光は分岐光学素子28により二つの照明光(第一の照明光、および第二の照明光)に分岐され、第一および第二の照明光はそれぞれ、互いの射出方向が角度をなすように通過領域2821,2831から射出される。
【0062】
第一光路および第二光路の照明光は、駆動ミラー31によって反射され、分岐光学素子28や光源11の下側を通過した後、2次元走査されながら対象物OBJを照明する。分岐光学素子28から射出される二つの光が異なる角度で駆動ミラー31に入射し、走査されることで異なる領域を照明することができる。すなわち、照明範囲を拡大することができる。
【0063】
対象物OBJからの反射光は、駆動ミラー31によって分岐光学素子28に偏向される。具体的には、第一光路の反射光は、照明光と逆方向の光路で光源11や分岐光学素子28の下側を通過した後、駆動ミラー31に入射し、第二面282に向けて偏向される。偏向された光のうち反射領域2822に当たる光は、集光ミラー41に向かって反射され、受光素子51上に集光し、受光される。第二光路の反射光は、照明光と逆方向の光路で光源11や分岐光学素子28の下側を通過した後、駆動ミラー31に入射し、第三面283に向けて偏向される。偏向された光のうち反射領域2832に当たる光は、集光ミラー41に向かって反射され、受光素子52上に集光し、受光される。
【0064】
通過領域2821から射出される光は、通過領域2831から射出される光と絶対値は等しいが、符号が異なる角度を有する。その結果、駆動ミラー31に入射する角度も絶対値は等しいが、逆向きになるため、それぞれの照明範囲の面積は等しくなり、Y軸に対して対称に対象物OBJを照明することができる。
【0065】
第一光路における照明光と第二光路における照明光は、駆動ミラー31に入射する前に交差することが好ましい。第一光路と第二光路における各照明光が交差することで、第一光路と第二光路における各照明光が駆動ミラー31に入射する幅を抑制することができ、駆動ミラー31の径の増大を防ぐことができる。
【0066】
図17は、分岐光学素子28の変形例である分岐光学素子29の要部概略図である。分岐光学素子29は、第一面291、第二面292、第三面293、第四面294、および第五面295を有する。図17(a)は、分岐光学素子29を+Y軸方向から見た図である。図17(b)は、分岐光学素子29を-Z軸方向から見た図である。図17(c)は、分岐光学素子29を-X軸方向から見た図である。
【0067】
分岐光学素子28は反射領域と通過領域を有する面を二面備えているが、分岐光学素子29は四面備えている。具体的には、第二面292は、照明光を透過させる通過領域2921、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2922を有する。第三面293は、照明光を透過させる通過領域2931、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2932を有する。第四面294は、照明光を透過させる通過領域2941、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2942を有する。第五面295は、照明光を透過させる通過領域2951、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域2952を有する。また、第二面292、第三面293、第四面294、および第五面295のいずれもX軸周りとY軸周りに回転した面である。
【0068】
第一面231を透過した照明光は、通過領域2921,2931,2941,2951を透過し、駆動ミラー31に入射する。一方、駆動ミラー31からの反射光は反射領域2922,2932,2942,2952で反射し、各面に対応した受光素子(不図示)に入射し、受光される。
【0069】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、小型でありながら走査範囲を拡大することができる。
【実施例3】
【0070】
図18は、本実施例の光学装置3の要部概略図である。光学装置3は、実施例2の光学装置2、およびテレスコープ70を有する。テレスコープ70を除く構成は実施例2と同じであり、説明を省略する。
【0071】
テレスコープ70は、屈折力(パワー)を有する複数の光学素子(レンズ)で構成され、かつ全系では屈折力を持たない光学系(アフォーカル系)である。本実施例では、テレスコープ70は、正のパワーを有するレンズ71,72で構成されている。テレスコープ70は、駆動ミラー31の照明側に配置されている。駆動ミラー31は、テレスコープ70の光学的に入射瞳となる位置(入射瞳位置)に配置されている。また、テレスコープ70の光学倍率βは、駆動ミラー31の側から射出瞳に対して1より大きい(|β|>1)。
【0072】
光源11から射出された照明光は、実施例2と同一光路で駆動ミラー31に到達し、駆動ミラー31で反射され、テレスコープ70に入射する。テレスコープ70に入射した照明光は、光学倍率βに応じて拡大され、対象物OBJを照明する。照明された対象物OBJからの反射光は、テレスコープ70に入射し、光学倍率1/βに応じて縮小され、駆動ミラー31に到達する。駆動ミラー31以降の光路は、実施例2と同一である。
【0073】
このようにテレスコープ70を配置することで、照明光の光束径を拡大し、照明光の発散角を小さくすることができる。その結果、遠方での照明光の広がりを抑制でき、遠方での分解能や照度を向上させることができる。さらに、テレスコープ70を配置することで、テレスコープ70が配置されていない場合に比べて瞳径が大きくなり、対象物OBJからの反射光を多く取り込むことができるため、測距距離や測距精度を向上させることができる。
【実施例4】
【0074】
図19は、本実施例の光学装置4の要部概略図である。光学装置4は、光源11、コリメータレンズ12、絞り13、分岐光学素子81,82、駆動ミラー(偏向部)31、集光レンズ42,43、受光素子(受光部)51~53、および制御部60(不図示)を有する。分岐光学素子81,82を除く構成は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0075】
本実施例の座標系は、図19に示されるように定められている。具体的には、駆動ミラー31の一つの揺動方向をX軸、光源11から駆動ミラー31までの光が進む方向をY軸、X軸およびY軸に垂直な軸をZ軸とする。図20は、本実施例の照明光の光路図である。図20(a)はYZ断面図、図20(b)はXY断面図、図20(c)は-Y方向から見た下面図である。
【0076】
分岐光学素子81は照明光路を分岐する機能を、分岐光学素子82は照明光路と受光光路を分離する機能を有する。
【0077】
図21は、本実施例の分岐光学素子81,82の要部概略図である。図21(a)は、分岐光学素子81,82の構成および分岐光学素子81,82を通過する際の照明光の経路を示している。分岐光学素子81は、第一面811、第二面812、第三面813、および第四面814を有する。第二面812と第三面813とのなす角度、および第二面812と第四面814とのなす角度はともに、Z軸周りに対して異なる符号であるが絶対値が同じ21.4度である。
【0078】
前述した半導体レーザを光源11に使用した場合、図22に示されるように、照明光の光量分布は略ガウス分布である。照明光は、絞り13により周辺部が遮光された後、第一面811より分岐光学素子81内に進行する。照明光のうち中心付近の光束は、第二面812を通過する。この光路を第一光路91とする。第一光路91を通る光束は、図22に示される光量分布91aを持つ。照明光のうち周辺付近の光束の一部は、第三面813を通過する。この光路を第二光路92とする。第二光路92を通る光束は、図22に示される光量分布92aを持つ。照明光のうち周辺付近の光束の他の一部は、第四面814を通過する。この光路を第三光路93とする。第三光路93を通る光束は、図22に示される光量分布93aを持つ。本実施例では、第一光路91を通る光束の光量は、第二光路92を通る光束の光量および第三光路93を通る光束の光量より多い。また、第三面813と第四面814は第二面812に対して角度を有するため、第二光路92と第三光路93は第一光路91に対して符号は異なるが絶対値が同じ12.0度の角度を有する。
【0079】
分岐光学素子82は、第一面821と第二面822を有する。図21(b)は、第二面822の面法線方向から分岐光学素子82を見た図である。第二面822は、照明光を透過させる通過領域8221、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域8222を有する。通過領域8221の形状は本実施例では2.5×6.6mmの長方形であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、楕円形状であってもよい。また、通過領域8221に反射防止膜を形成してもよい。反射領域8222には、金属膜や誘電体膜などによって分岐光学素子82の外側からの入射光を反射する層が形成されている。また、反射領域8222の入射光が到達しない有効領域外には、光を吸収する層が形成されていることが好ましい。
【0080】
分岐光学素子81より出射した各光束は、分岐光学素子82の第一面821より入射し、第二面822の通過領域8221より出射する。分岐された光束が同一の通過領域を通過するため、組立調整を容易にすることが可能となる。
【0081】
分岐光学素子82より出射した第一乃至第三光路91~93を通る光束は、駆動ミラー31によって反射され、2次元走査されながら対象物OBJを照明する。分岐光学素子81から射出される三つの光が異なる角度で駆動ミラー31に入射し、走査されることで異なる領域を照明することができる。すなわち、照明範囲を拡大することができる。
【0082】
図23は、本実施例の反射光の光路図である。図23(a)はYZ断面図、図23(b)は-Y方向から見た下面図である。対象物OBJからの各光路の反射光は、駆動ミラー31によって分岐光学素子82に偏向される。偏向された光のうち反射領域8222に当たる光は、集光レンズ42に向かって反射され、集光レンズ43を通過する。第一光路91を通る光束は受光素子51上に、第二光路92を通る光束は受光素子52上に、第三光路93を通る光束は受光素子53上に集光し、受光される。すなわち、本実施例では、分岐光学素子82で反射した各光束は同一のレンズを通過して受光素子に集光される。
また、本実施例では、集光レンズを使用しているため、ミラーとは異なり装置全体を小型にすることが可能である。さらに、各受光素子の間隔を狭めることができ、同一基板上に各受光素子を配置することやアレイ状の受光素子を使用することも可能である。
【0083】
集光レンズ42,43で構成される集光光学系(共通光学系)の入射瞳の位置は、駆動ミラー31上であることが望ましい。これにより、各反射光束の主光線が受光素子に対して略垂直に入射することができる。一般的に垂直入射に近いほど受光素子の感度が高いため、光束全体が受光素子に対して小さい角度で入射することにより、検知距離を伸ばすことができる。
【0084】
前述したように、第一光路91を通る光束の光量は、第二光路92を通る光束の光量および第三光路93を通る光束の光量より多いため、反射光量を多くすることができ、その結果、測距距離を伸ばすことが可能となる。本実施例では、画角の中心付近を通過する光束を用いてより遠方まで測距しつつ、照明光を三つに分岐することで広角化を実現することができる。
【0085】
図24(a)は分岐光学素子81の変形例である分岐光学素子83の要部概略図、図24(b)は照明光の分岐光学素子83を通過する際の光量分布を示す図である。分岐光学素子83は、第一面831、第二面832、第三面833、および第四面834を有する。第一面831と第二面832とのなす角度、および第一面831と第三面833とのなす角度はともに、Z軸周りに対して異なる符号であるが絶対値が同じ22.8度である。
【0086】
照明光は、絞り13により周辺部が遮光された後、分岐光学素子83内に進行する。照明光のうち中心付近の光束は、第一面831を通過する。この光路を第一光路91とする。第一光路91を通る光束は、図24(b)に示される光量分布91aを持つ。照明光のうち周辺付近の光束の一部は、第二面832を通過する。この光路を第二光路92とする。第二光路92を通る光束は、図24(b)に示される光量分布92aを持つ。照明光のうち周辺付近の光束の他の一部は、第三面833を通過する。この光路を第三光路93とする。第三光路93を通る光束は、図24(b)に示される光量分布93aを持つ。本実施例では、第三光路93を通る光束の光量、第一光路91を通る光束の光量、第二光路92を通る光束の光量の順に光量が多くなるように設定されている。また、第二面832と第三面833は第一面831に対して角度を有するため、第二光路92と第三光路93は第一光路91に対して符号は異なるが絶対値が同じ角度を有する。第一光路91乃至第三光路93を通る光束はそれぞれ、第四面834より射出され、分岐光学素子82に入射する。
【0087】
図25は、分岐光学素子81,82の変形例である分岐光学素子85の要部概略図である。図25(a)はXY断面図、図25(b)はYZ断面図である。分岐光学素子85は、第一面851、第二面852、第三面853、および第四面854を有する。第一面851と第二面852とのなす角度、および第一面852と第三面853とのなす角度はともに、Z軸周りに対して異なる符号であるが絶対値が同じ30.0度である。第一面851と第四面854とのなす角度は、X軸周りに対して33.5度である。
【0088】
第四面854は、照明光を透過させる通過領域8541、および対象物OBJからの反射光を反射する反射領域8542を有する。
【0089】
照明光は、絞り13により周辺部が遮光された後、分岐光学素子85内に進行する。照明光のうち中心付近の光束は、第一面851を通過する。この光路を第一光路91とする。照明光のうち周辺付近の光束の一部は、第二面852を通過する。この光路を第二光路92とする。照明光のうち周辺付近の光束の他の一部は、第三面853を通過する。この光路を第三光路93とする。本実施例では、第一光路91を通る光束の光量は、第二光路92を通る光束の光量および第三光路93を通る光束の光量より多い。また、第二面852と第三面853は第一面851に対して角度を有するため、第二光路92と第三光路93は第一光路91に対して符号は異なるが絶対値が同じ角度を有する。第一光路91乃至第三光路93を通る光束はそれぞれ、第四面854の通過領域8541より射出される。本実施例では、図25(b)に示されるように、照明光は通過領域8541より下方向へ射出されるため、偏向ミラー31も下方向に配置される。
【0090】
一方、対象物OBJからの反射光は、駆動ミラー31によって分岐光学素子85に偏向される。偏向された光のうち反射領域8542に当たる光は、集光レンズ42に向かって反射される。
【0091】
本変形例では、2つの分岐光学素子が一体的に構成されているため、部品点数や組立工数の削減により、低コスト化が可能となる。
【0092】
本実施例では、光源からの照明光の光量がガウス分布に従うものとしたが、本発明はこの光量分布に限定されず、一様分布の場合やドーナツ状などの場合であってもよい。
[車載システム]
図26は、各実施例の光学装置のいずれかである光学装置100、およびそれを備える車載システム(運転支援装置)1000の構成図である。車載システム1000は、自動車(車両)等の移動可能な移動体(移動装置)により保持され、光学装置100により取得した車両の周囲の障害物や歩行者などの対象物の距離情報に基づいて、車両の運転(操縦)を支援するための装置である。図27は、車載システム1000を含む車両500の模式図である。図27においては、光学装置100の測距範囲(検出範囲)を車両500の前方に設定した場合を示しているが、測距範囲を車両500の後方や側方などに設定してもよい。
【0093】
図26に示すように、車載システム1000は、光学装置100と、車両情報取得装置200と、制御装置(ECU:エレクトロニックコントロールユニット)300と、警告装置(警告部)400とを備える。車載システム1000において、光学装置100が備える制御部60は、距離取得部(取得部)及び衝突判定部(判定部)としての機能を有する。ただし、必要に応じて、車載システム1000において制御部60とは別体の距離取得部や衝突判定部を設けてもよく、夫々を光学装置100の外部(例えば車両500の内部)に設けてもよい。あるいは、制御装置300を制御部60として用いてもよい。
【0094】
図28は、本実施形態に係る車載システム1000の動作例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って車載システム1000の動作を説明する。
【0095】
まず、ステップS1では、光学装置100の光源部により車両の周囲の対象物を照明し、対象物からの反射光を受光することで受光素子が出力する信号に基づいて、制御部60により対象物の距離情報を取得する。また、ステップS2では、車両情報取得装置200により車両の車速、ヨーレート、舵角などを含む車両情報の取得を行う。そして、ステップS3では、制御部60によって、ステップS1で取得された距離情報やステップS2で取得された車両情報を用いて、対象物までの距離が予め設定された設定距離の範囲内に含まれるか否かの判定を行う。
【0096】
これにより、車両の周囲の設定距離内に対象物が存在するか否かを判定し、車両と対象物との衝突可能性を判定することができる。なお、ステップS1及びS2は、上記の順番とは逆の順番で行われてもよいし、互いに並列して処理を行われてもよい。制御部60は、設定距離内に対象物が存在する場合は「衝突可能性あり」と判定し(ステップS4)、設定距離内に対象物が存在しない場合は「衝突可能性なし」と判定する(ステップS5)。
【0097】
次に、制御部60は、「衝突可能性あり」と判定した場合、その判定結果を制御装置300や警告装置400に対して通知(送信)する。このとき、制御装置300は制御部60での判定結果に基づいて車両を制御し(ステップS6)、警告装置400は制御部60での判定結果に基づいて車両のユーザ(運転者)への警告を行う(ステップS7)。なお、判定結果の通知は、制御装置300及び警告装置400の少なくとも一方に対して行えばよい。
【0098】
制御装置300は、車両の駆動部(エンジンやモータなど)に対して制御信号を出力することで、車両の移動を制御することができる。例えば、車両においてブレーキをかける、アクセルを戻す、ハンドルを切る、各輪に制動力を発生させる制御信号を生成してエンジンやモータの出力を抑制するなどの制御を行う。また、警告装置400は、運転者に対して、例えば警告音を発する、カーナビゲーションシステムなどの画面に警告情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどの警告を行う。
【0099】
以上、本実施形態に係る車載システム1000によれば、上記の処理により対象物の検出及び測距を行うことができ、車両と対象物との衝突を回避することが可能になる。特に、上述した各実施例に係る光学装置を車載システム1000に適用することで、高い測距精度を実現することができるため、対象物の検出及び衝突判定を高精度に行うことが可能になる。
【0100】
なお、本実施形態では、車載システム1000を運転支援(衝突被害軽減)に適用したが、これに限らず、車載システム1000をクルーズコントロール(全車速追従機能付を含む)や自動運転などに適用してもよい。また、車載システム1000は、自動車等の車両に限らず、例えば船舶や航空機、産業用ロボットなどの移動体に適用することができる。また、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)や監視システム等の物体認識を利用する種々の機器に適用することができる。
【0101】
また、車載システム1000や移動装置は万が一、移動装置が障害物に衝突した場合に、その旨を車載システムの製造元(メーカー)や移動装置の販売元(ディーラー)などに通知するための通知装置(通知部)を備えていてもよい。例えば、通知装置としては、移動装置と障害物との衝突に関する情報(衝突情報)を予め設定された外部の通知先に対して電子メールなどによって送信するものを採用することができる。
【0102】
このように、通知装置によって衝突情報を自動通知する構成を採ることにより、衝突が生じた後に点検や修理などの対応を速やかに行うことができる。なお、衝突情報の通知先は、保険会社、医療機関、警察などや、ユーザが設定した任意のものであってもよい。また、衝突情報に限らず、各部の故障情報や消耗品の消耗情報を通知先に通知するように通知装置を構成してもよい。衝突の有無の検知については、上述した受光部からの出力に基づいて取得された距離情報を用いて行ってもよいし、他の検知部(センサ)によって行ってもよい。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 光学装置
11 光源
21 分岐光学素子(導光部)
31 駆動ミラー(偏向部)
51,52 受光素子(受光部)
2121 第一の通過領域
2122 第二の通過領域
2123 反射領域
OBJ 対象物(物体)
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