(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】分散心臓ペーシングシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/365 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A61N1/365
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020200862
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-11-24
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】アロン・ボウメンディル
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・シットニツキー
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181199(JP,A)
【文献】特開平05-123307(JP,A)
【文献】特表2007-513651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0365271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/365
A61B 5/33
A61B 5/308
A61B 5/304
A61B 5/287
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓ペーシングのための装置であって、前記装置は、
患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(ECG)信号を受信し、
デジタル化対象電極からのECG信号
である第1のサブセットをデジタル化し、
デジタル化非対象電極からのECG信号である第2のサブセットをアナログ回線を介して転送するように構成されたリレー及びサンプリングユニットと、
前記アナログ回線を介してペーシング信号を出力するように構成されたペーシングユニットと、
前記ペーシング信号を検出し、前記ペーシング信号に応答してトリガを出力するように構成されたペーシング検出回路と、
プロセッサであって、
(i)前記トリガと、(ii)前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極のうちの一部の識別情報と、を受信することと、
前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極が
前記デジタル化
対象電極からのECG信号と現在関連付けられていることを特定することに応答して、前記リレー及びサンプリングユニットに、特定された前記電極を、前記ペーシング信号を転送するため
に、前記デジタル化対象電極から前記デジタル化非対象電極に切り替えるように指示することと、を行うように構成されたプロセッサと、を備える、装置。
【請求項2】
前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極の前記識別情報を受け付け、かつ記憶するように構成されている患者インターフェースユニット(PIU)を備え、前記プロセッサは、前記ペーシング検出回路によってトリガされると、前記PIUから前記識別情報を読み取るように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記リレー及びサンプリングユニットは、前記電極を前記PIUに接続するドングル内に備えられている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ペーシング検出回路は、前記ペーシング信号が停止したことを検出し、前記検出に応答して前記プロセッサをトリガするように更に構成され、前記プロセッサは、トリガされると、前記リレー及びサンプリングユニットに、選択された前記電極を前記アナログ回線からデジタル回線に切り替えるように命令するように更に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
心臓ペーシングのための
装置の作動方法であって、前記
装置は、
プロセッサと、
患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(ECG)信号を受信し、
デジタル化対象電極からのECG信号
である第1のサブセットをデジタル化し、
デジタル化非対象電極からのECG信号である第2のサブセットを、アナログ回線を介して転送する
ように構成されたリレー及びサンプリングユニットと、
前記アナログ回線を介してペーシング信号を出力するように構成されたペーシングユニットと、
前記ペーシング信号を検出し、前記ペーシング信号に応答してトリガを出力する
ように構成されたペーシング検出回路と、
を備え、
前記方法は、
前記プロセッサ
が、(i)前記トリガと、(ii)前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極の識別情報と、を受信することと、
前記プロセッサが、前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極が
前記デジタル化
対象電極からのECG信号と現在関連付けられていることを特定することに応答して、
前記プロセッサが、前記リレー及びサンプリングユニットに、特定された前記電極を、前記ペーシング信号を転送するため
に、前記デジタル化対象電極から前記デジタル化非対象電極に切り替えるように指示することと、を含む、方法。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記ペーシング信号が停止したことを検出すると、
前記プロセッサが、選択された前記電極を
前記デジタル化対象電極から前記デジタル化非対象電極に切り替える
ように命令することを含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、電気生理学的信号の操作に関し、より具体的には、カテーテルを使用する心内電気生理学的信号のペーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
心内電気生理学的信号をペーシングし、かつ測定するための様々な技術が、特許文献において提案された。例えば、米国特許第10,335,051号は、心臓腔内の電気活動に応答して、カテーテル上の1個以上の電極での信号における心拍を測定することと、心拍に関連する複数の追加のデータ信号を収集することと、を含む、心臓マッピング方法を記載している。判断基準が計算され、複数の追加データ信号における心拍の拍動形態を特徴付けるために使用され、その判断基準は、複数の追加データ信号と拍動テンプレートとの比較に基づく。いくつかの実施形態では、心臓ペーシングは、マッピング手順中に使用される。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2018/0235692号は、心臓不整脈に関連する心臓組織(cardia tissue)のマッピング、アブレーション、ペーシング、及び感知のためのカテーテル(例えば、バルーンカテーテル)と一体化された、可撓性かつ伸縮性の高密度電極アレイを概ね有する、高解像度の多機能コンフォーマル電子装置を記載している。本発明は、上記のように不整脈源の位置を正確に定め、同じ電極アレイから治療を送達することができる。これは、電気刺激をモニタするだけではなく送達することもできる容量性感知電極アレイを使用して達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な実施形態は、リレー及びサンプリングユニットと、ペーシングユニットと、ペーシング検出回路と、プロセッサと、を含む装置を提供する。リレー及びサンプリングユニットは、患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(electrocardiogram、ECG)信号を受信し、ECG信号の第1のサブセットをデジタル化し、デジタル化されていないECG信号の第2のサブセットをアナログ回線を介して転送するように構成されている。ペーシングユニットは、ペーシング信号を出力するように構成されている。ペーシング検出回路は、ペーシング信号を検出し、ペーシング信号に応答してトリガを出力するように構成されている。プロセッサは、(a)(i)トリガと、(ii)ペーシング信号を印加することとなる電極のうちの一部の識別情報と、を受信することと、(b)ペーシング信号を印加することとなる電極がデジタル化されたECG信号に現在関連付けられていることを特定することに応答して、リレー及びサンプリングユニットに、特定された電極を、ペーシング信号を転送するためのアナログ回線に切り替えるように指示することと、を行うように構成されている。
【0005】
いくつかの例示的な実施形態では、装置は、ペーシング信号を印加することとなる電極の識別情報を受け付け、かつ記憶するように構成されている患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)を更に含み、プロセッサは、ペーシング検出回路によってトリガされると、PIUから識別情報を読み取るように構成されている。
【0006】
いくつかの例示的な実施形態では、リレー及びサンプリングユニットは、電極をPIUに接続するドングルに含まれる。
【0007】
例示的な実施形態では、ペーシング検出回路は、ペーシング信号が停止したことを検出し、その検出に応答してプロセッサをトリガするように更に構成され、プロセッサは、トリガされると、リレー及びサンプリングユニットに、選択された電極をアナログ回線からデジタル回線に切り替えるように命令するように更に構成されている。
【0008】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、リレー及びサンプリングユニットにおいて、患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(ECG)信号を受信し、ECG信号の第1のサブセットをデジタル化し、デジタル化されていないECG信号の第2サブセットをアナログ回線を介して転送すること、を含む方法が更に提供される。ペーシング信号は、ペーシングユニットを使用して出力される。ペーシング信号が検出され、ペーシング信号に応答して、トリガが出力される。プロセッサにおいて、(i)トリガと、(ii)ペーシング信号を印加することとなる電極の識別情報と、が受信される。ペーシング信号を印加することとなる電極がデジタル化されたECG信号と現在関連付けられていることを特定することに応答して、リレー及びサンプリングユニットは、特定された電極を、ペーシング信号を転送するためのアナログ回線に切り替えるように指示される。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、方法は、ペーシング信号が停止したことを検出すると、選択された電極がアナログ回線からデジタル回線に切り替えられることを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの心臓ペーシング及び電気生理学的感知システムの概略描画図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、
図1のシステムの心臓ペーシング及び電気生理学的感知装置のブロック図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による、
図2の装置を使用するペーシングのための方法を模式的に表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概論
アナログカテーテルベースのシステムを使用して心臓をペーシングすることが比較的容易であるのは、そのようなシステムは、システムに接続されたペーシングユニットとカテーテルとの間でペーシング信号を直接伝導することができる回線を有するからである。典型的には、ペーシングは、(所望のカテーテル電極に対応する)伝導回線を選択し、選択された回線に沿ってペーシング信号を送信することによって実行され、自動ペーシングの実施可能性は、アナログシステムの制御回路によって容易に提供される。
【0012】
残念ながら、このような従来のアナログカテーテルベースの心臓システムは、通常、限定された数の信号のみ、例えば、同数の電極(以下、デジタル化されていないECG信号の第2のサブセットを取得するように設定された、「アナログ的に接続された電極のサブセット」とも称し、ECG信号の第1セットは、アナログ回線の不足を克服するためにデジタル化される)によって取得されたアナログ信号の最大数十までの心電図(ECG)チャネルのみしか測定できない。
【0013】
しかしながら、最新の診断カテーテルは、患者の心臓の内部に更に多くの電極、例えば、256個の電極を有する場合がある。最新の診断カテーテルの追加のチャネルを収容するために、このようなカテーテル(例えば、256チャネルのバスケットカテーテル)からの信号を、デジタル通信リンクを介して従来のカテーテルベースのシステムに伝送してもよい。デジタル回線を介して接続される電極は、以下、「デジタル的に接続された電極のサブセット」とも称し、アナログ回線の不足を克服するために、デジタル化されたECG信号の第1のサブセットを取得するように設定される。
【0014】
デジタルリンクを使用して、例えば、デジタル的に接続された電極のサブセットからの信号をECG記録装置に送信するために、アナログ-デジタル回路を備えるドングルを、診断カテーテルと従来の記録装置との間に挿入してもよい。システムのディスプレイは、このようなデジタル的に送信されたECG信号を提示してもよい。
【0015】
しかしながら、ペーシングについて、ドングル及びデジタル回線は、デジタル的に接続された電極のサブセットから選択された電極を介する、アナログ信号の送達(例えば、ペーシングユニットを使用する刺激信号の印加)をサポートすることができない。
【0016】
以下に記載される本発明の例示的な実施形態は、アナログ的に又はデジタル的に接続されたカテーテルの電極のサブセットのいずれかから選択された電極対からのペーシングを可能にする。
【0017】
いくつかの例示的な実施形態では、リレー及びサンプリングユニットと、ペーシングユニットと、ペーシング検出回路と、プロセッサと、を備えるペーシング装置が提供される。リレー及びサンプリングユニットは、患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(ECG)信号を(例えば、心臓内に挿入されたカテーテルを配置することによって)受信し、ECG信号の第1のサブセットをデジタル化し、デジタル化されていないECG信号の第2のサブセットをアナログ回線を介して転送するように構成されている。ペーシングユニットは、ペーシング信号を出力するように構成されており、一方で、ペーシング検出回路は、ペーシング信号を検出し、ペーシング信号に応答してトリガを出力するように構成されている。プロセッサは、(a)(i)トリガと、(ii)ペーシング信号を印加することとなる電極の識別情報と、を受信することと、(b)ペーシング信号を印加することとなる電極がデジタル化されたECG信号に現在関連付けられていることを特定することに応答して、リレー及びサンプリングユニットに、特定された電極を、ペーシング信号を転送するためのアナログ回線に切り替えるように指示することと、を行うように構成されている。
【0018】
例示的な実施形態では、医師は、患者ユーザインターフェース(PIU)を使用して電極を選択する。選択された電極対がデジタル化されたECG信号に現在関連付けられている(すなわち、デジタル的に接続された電極のサブセットに属する)場合、PIUは、プロセッサを、電極の識別情報で(例えば、1~256の実行インデックスで)更新する。ペーシング信号は、ペーシングユニットによって通常のように生成されるが、ペーシング信号は、他の方法ではデジタル的に接続された電極のサブセットに接続するためにのみ使用される専用アナログ回線を介して送信される。ペーシング検出回路は、専用回線上で伝導されたペーシング信号を検出し、プロセッサをトリガする。トリガされると、プロセッサは、ペーシングを可能にするために、以下、スイッチングアセンブリとも称するリレー及びサンプリングユニットに、選択された電極対を、専用アナログペーシング回線が接続されているスイッチアセンブリにおいて(例えば、スイッチングアセンブリ内に存在するリレーを使用して)アナログ入力に切り替えるように命令する。
【0019】
例示的な実施形態では、スイッチングアセンブリは、電極をPIUに接続するドングル内に含まれている。別の例示的な実施形態では、ペーシングが終了すると、ペーシング検出回路は、イベントを検出し、プロセッサをトリガして、選択された電極をアナログ入力からデジタル回線に切り替えて戻すように命令する。
【0020】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連ステップ及び機能の各々を実施することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0021】
開示された技術は、従来のシステムが最新のカテーテルの任意の電極を使用して心臓組織をペーシングすることを可能にする、単純かつ有効な手段を提供する。更に、開示された技術は、脳活動に関連する電気生理学的信号を印加し、かつ測定する脳カテーテルなどの他のカテーテルと共に使用されてもよい。したがって、開示された技術は、最新のカテーテルベースの診断サービスのいくつかのカテゴリーの利用可能性を増加させることができる。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの心臓ペーシング及び電気生理学的感知システム20の概略描画図である。システム20は、例えば、Biosense-Webster(Irvine,California)によって作製されたCARTO(登録商標)3システムであってもよい。システム20は、医師30によって患者28の心臓26にナビゲートされる、シャフト22を有するカテーテル21を備える。描画された例では、医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用してシャフト22を操作しながら、シース23を通してシャフト22を挿入する。
【0023】
本明細書に記載の例示的な実施形態では、カテーテル21は、ペーシングユニット37を使用する心臓ペーシング、及び心臓26の電気生理学的マッピングなどの、任意の好適な診断目的のために使用されてもよい。挿入
図25に示されるように、カテーテル21のシャフト22の遠位端には、多電極バスケットカテーテル40が装着されている。挿入
図45は、バスケットカテーテル40の複数の感知電極48(すなわち、256個以上のチャネル)の配置を示す。カテーテル21の近位端は、ドングル50によって制御コンソール24に接続されている。
【0024】
ECG記録機器35は、アナログ的に接続された電極48のサブセットによってプロセス中に感知され、従来の回線62を介して送信される、様々なアナログECG信号を受信してもよい。しかしながら、デジタル的に接続された電極48のサブセットを使用して感知されるデジタルECG信号は、コンソール24のディスプレイ上にのみ提示することができる。
【0025】
同様に、システム20では、デジタル的に接続されたカテーテル21の電極48のサブセットとペーシングユニット37との間にアナログリンクが存在しないのは、制御コンソール24と記録機器35とペーシングユニット37との間の従来のケーブル62は、アナログ的に接続された電極のサブセットに属するものとして選択される限られた数の電極のみをサポートするためである。
【0026】
ペーシングユニットが、デジタル的に接続された電極のサブセットに属する電極からペーシングすることを可能にするために、専用複合回線が設けられている。図示される例示的な実施形態では、複合回線は、(a)ペーシングユニット37とペーシング検出回路55との間のアナログペーシング回線100と、(b)回路55とドングル50との間のアナログペーシングリンク110と、を含む。デジタル的に接続された電極のサブセットからペーシングが必要とされるとき、回路55は、プロセッサ41をトリガして、ドングル50内部のリレー51に、選択された電極を、回線100が接続されているドングル50のアナログ入力に切り替えるように命令する。その命令に応じて、
図2に更に記載されるように、ドングル50内部のリレー51は、選択されたデジタル的に接続された電極の電極へのペーシングアナログ信号のルーティングを切り替える。
【0027】
コンソール24は、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ41を含み、(a)ドングル50からのアナログECG信号及びデジタルECG信号、並びに、カテーテル21の感知電極48からの(位置信号などの)非ECG信号を受信することと、(b)ペーシングを組織にすることとなるカテーテル電極を選択することと、のための患者インターフェースユニット(PIU)52を備える好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を含む。
【0028】
電極48は、256個以上の感知n電極を含んでもよい。電極48の各電極は、心臓の内部又は近傍に配置された「電極48 #1、#2、#3...#n」」として参照される。この目的のために、プロセッサ41は、シャフト22内を通る導線を介して感知電極48に接続される。インターフェース回路38は、ECG信号及び体表面電極49からの非ECG信号を受信するように更に構成されている。典型的には、電極49は、患者28の胸部及び脚の周囲の皮膚に取り付けられる。プロセッサ41は、ケーブル39の中を通っている導線によって電極49に接続されて、電極49から信号を受信する。
【0029】
プロセッサ41は、本明細書に述べられる機能を実施するために、通常はソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードされてもよく、又は、ソフトウェアは、代替的に若しくは付加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。具体的には、プロセッサ41は、以下で更に説明するように、開示されたステップをプロセッサ41が行うことを可能にする、
図3に含まれている、本明細書に開示される専用アルゴリズムを実行する。
【0030】
分散心臓ペーシングシステム
図2は、本発明の例示的な実施形態による、
図1のシステム20の心臓ペーシング及び電気生理学的検知装置のブロック図である。
【0031】
見られるように、システム20のカテーテル21は、ドングル50に接続され、カテーテル21の遠位端は、心臓26内に挿入されて、電気生理学的信号を感知する、かつ/又は心臓組織をペーシングする。カテーテル21の全ての電極48は、アナログ信号を取得してもよいか、又は印加してもよいが、全ての電極48をコンソール24のPIU 52に接続するには、システム20内の利用可能な(例えば、現存する)アナログ回線60では不十分である。
【0032】
図2に更に見られるように、ドングル50は、アナログ的に接続されるように選択された電極48のサブセットと共に使用するために、従来のアナログ回線60をPIU 52にルーティングする。ドングル50は、ドングル50内部のアナログ・デジタル変換器を介して、PIU 52のためのデジタル回線70によりPIU 52に更に接続されて、残りの(remining)デジタル的に接続された電極48のサブセットから信号を受信する。
【0033】
カテーテル電極48のうちの2個が、ペーシングのために選択される。2個のペーシング電極は、PIU 52のユーザインターフェースによって選択されてもよく、選択された電極の識別情報(例えば、実行インデックス)は、PIU 52からコンソール24のプロセッサ41に通信される。選択された2個の電極がアナログ的に接続された電極48のサブセットに属する場合、これらの電極は、複合アナログ回線60-62-64によって記録システム35及びペーシングユニット37に既にルーティングされている。PIU 52は、ユーザによって命令されると、ユニット37から複合アナログ回線を介して(すなわち、直列回線60、62及び64を使用して)ペーシングを可能にするように構成されている。この構成は、従来のシステム20において、ドングル50内のリレー51に命令して、選択されたペーシング電極に切り替えて、複合回線60-62-64を使用してペーシング信号を心臓26に向けるように、既に構成されている。
【0034】
しかしながら、選択された2個の電極がデジタル的に接続された電極48のサブセットに属する場合、PIU 52は、プロセッサ41に電極の識別情報のみを提供することができる。選択された電極を介してペーシングするために、ペーシングユニット37からドングル50への専用複合回線74-100-110が使用される。
【0035】
回線74内のアナログペーシング信号は、記録システム35を介してアナログ回線100を通してペーシング検出回路55へとルーティングされる。回路55は、2本の単一伝導回線を含む2本の専用回線110を介して信号をルーティングする。更に、アナログペーシング信号を感知すると、回路55は、プロセッサ41をトリガして(120)、回線76を介して、ドングル50に命令を送信して、リレー51を、回線110に配線されたドングル50の物理的入力に切り替える。その命令に応じて、ドングル50は、回線110を通っているペーシング信号を心臓26に向けるために、選択された電極を切り替える。
【0036】
図1及び
図2に示す例示の構成は、単に概念を明確化する目的で選択されている。代替的な実施形態では、開示された技術は、他の配線スキーム、異なるスタンドアローンインターフェース及び切替装置、並びにバスケットカテーテル以外のカテーテル種類を含む、他の好適な構成を使用してもよい。
【0037】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、
図2の装置を使用するペーシングのための方法を模式的に表すフロー図である。本例示的な実施形態によるアルゴリズムは、医師30がカテーテル21の複数の電極48を使用して、記録システム35によって記録される心臓26内部の心内ECG信号を取得するECG記録ステップ80から始まるプロセスを実行する。
【0038】
ペーシングセットアップステップ82において、医師30又はアルゴリズムは、心臓26をペーシングするために電極48のうちの2個を選択する。点検ステップ84において、システムは、選択された電極が、アナログ的に接続された電極のサブセット、又はデジタル的に接続された電極のサブセットに属するかどうかに応じて応答する。
【0039】
選択された電極がアナログ回線を介して接続されている(すなわち、選択された電極がアナログ的に接続された電極のサブセットに属する)場合、装置は、ペーシングステップ86において、既存の(例えば、従来の)ハードウェア及び手順を使用して選択を処理する。
【0040】
一方、選択された電極がデジタル回線を介して接続されている場合、システムのPIU 52は、電極識別ステップ88において、選択された電極の識別情報をプロセッサ41に出力し、それ以上関与していない。
【0041】
ペーシングが開始され、電極識別情報がデジタル回線を介して接続された電極の識別情報であることが既知であるとき、医師30、又はアルゴリズムは、ペーシングユニット37を操作して、ペーシング信号出力ステップ90において、ペーシング信号を専用アナログ回線74を介して出力する。
【0042】
ペーシング信号検出ステップ92において、ペーシング検出回路55は、ペーシング信号を検出し、その検出に応じてプロセッサ41をトリガする。
【0043】
検出回路55をペーシングすることによって(ステップ94において)トリガされると、プロセッサ41は、命令するスイッチングステップ96において、ドングル50内部にリレー51を備えているなどのスイッチングアセンブリに、選択された電極を、デジタル回線(70)から専用アナログペーシング回線(110)に切り替えるように命令する。
【0044】
その命令に応答して、ドングル50内部のスイッチングアセンブリは、ペーシング印加ステップ98において、命令されたとおりに、選択された電極を切り替えてペーシングを印加する。
【0045】
図3に示す例示のフロー図は、単に概念を明確化する目的で選択されている。例えば、開示された方法は、選択された電極と組織との接触をペーシングに切り替える前に確認すること、及びペーシングの終了時に電極をデジタル回線に切り替えて戻すステップなどの、追加のステップを含んでもよい。
【0046】
上記の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し記載したものに限定されない点が理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上で説明される様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 心臓ペーシングのための装置であって、前記装置は、
患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(ECG)信号を受信し、前記ECG信号の第1のサブセットをデジタル化し、デジタル化されていない前記ECG信号の第2のサブセットを、アナログ回線を介して転送するように構成されたリレー及びサンプリングユニットと、
ペーシング信号を出力するように構成されたペーシングユニットと、
前記ペーシング信号を検出し、前記ペーシング信号に応答してトリガを出力するように構成されたペーシング検出回路と、
プロセッサであって、
(i)前記トリガと、(ii)前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極のうちの一部の識別情報と、を受信することと、
前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極がデジタル化された前記ECG信号と現在関連付けられていることを特定することに応答して、前記リレー及びサンプリングユニットに、特定された前記電極を、前記ペーシング信号を転送するための前記アナログ回線に切り替えるように指示することと、を行うように構成されたプロセッサと、を備える、装置。
(2) 前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極の前記識別情報を受け付け、かつ記憶するように構成されている患者インターフェースユニット(PIU)を備え、前記プロセッサは、前記ペーシング検出回路によってトリガされると、前記PIUから前記識別情報を読み取るように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記リレー及びサンプリングユニットは、前記電極を前記PIUに接続するドングル内に備えられている、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記ペーシング検出回路は、前記ペーシング信号が停止したことを検出し、前記検出に応答して前記プロセッサをトリガするように更に構成され、前記プロセッサは、トリガされると、前記リレー及びサンプリングユニットに、選択された前記電極を前記アナログ回線からデジタル回線に切り替えるように命令するように更に構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 心臓ペーシングのための方法であって、前記方法は、
リレー及びサンプリングユニットにおいて、患者の心臓内のそれぞれの電極によって感知される複数の心電図(ECG)信号を受信し、前記ECG信号の第1のサブセットをデジタル化し、デジタル化されていない前記ECG信号の第2のサブセットを、アナログ回線を介して転送することと、
ペーシングユニットを使用してペーシング信号を出力することと、
前記ペーシング信号を検出し、前記ペーシング信号に応答してトリガを出力することと、
プロセッサにおいて、(i)前記トリガと、(ii)前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極の識別情報と、を受信することと、
前記ペーシング信号を印加することとなる前記電極がデジタル化された前記ECG信号と現在関連付けられていることを特定することに応答して、前記リレー及びサンプリングユニットに、特定された前記電極を、前記ペーシング信号を転送するための前記アナログ回線に切り替えるように指示することと、を含む、方法。
【0048】
(6) 前記ペーシング信号が停止したことを検出すると、選択された前記電極を前記アナログ回線からデジタル回線に切り替えることを含む、実施態様1に記載の方法。