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特許7581035液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241105BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20241105BHJP
   B41J 2/05 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 201
B41J2/015 101
B41J2/05
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020206568
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093855
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康雄
(72)【発明者】
【氏名】添田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋介
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059254(JP,A)
【文献】特開2019-171670(JP,A)
【文献】特開2019-006108(JP,A)
【文献】特開2018-176697(JP,A)
【文献】特開2018-202718(JP,A)
【文献】特開2019-018511(JP,A)
【文献】特開2018-001748(JP,A)
【文献】特開平07-148927(JP,A)
【文献】特開2004-150897(JP,A)
【文献】特開2020-179526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0002000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に熱を付与する電気熱変換素子と、
前記電気熱変換素子を保護するとともに、液体と接する位置に設けられた上部電極が複数形成された上部電極部と、
前記上部電極部に対応して設けられ、液体を介して前記上部電極と電気的に接続可能に設けられた対向電極が複数形成された対向電極部と、
前記上部電極部および前記対向電極部に対して印加する電圧を発生させる発生手段と、を有し、
前記上部電極部と前記対向電極部とは、複数設けられ、
前記発生手段は、
入力信号に基づいて印加する電圧を発生させるデジタルアナログコンバータを複数備え、
前記上部電極部のそれぞれに対して、1つの前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加し、
前記対向電極部のそれぞれに対して、異なる前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項2】
前記デジタルアナログコンバータは、前記液体吐出ヘッド用基板における別の構成と兼用されることを特徴とする請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項3】
前記構成は、温度検出部であることを特徴とする請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項4】
液体に熱を付与する電気熱変換素子と、
前記電気熱変換素子を保護するとともに、液体と接する位置に設けられた上部電極が複数形成された上部電極部と、
前記上部電極部に対応して設けられ、液体を介して前記上部電極と電気的に接続可能に設けられた対向電極が複数形成された対向電極部と、
前記上部電極部および前記対向電極部の少なくとも一方に対して印加する電圧を発生させる発生手段と、を有し、
前記発生手段は、抵抗分圧によって、前記上部電極部および前記対向電極部の少なくとの一方に対して印加する電圧を発生させることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項5】
前記抵抗分圧した電圧は、選択手段を介して、前記上部電極部および前記対向電極部の少なくとも一方に出力されることを特徴とする請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項6】
液体に熱を付与する電気熱変換素子と、
前記電気熱変換素子を保護するとともに、液体と接する位置に設けられた上部電極が複数形成された上部電極部と、
前記上部電極部に対応して設けられ、液体を介して前記上部電極と電気的に接続可能に設けられた対向電極が複数形成された対向電極部と、
前記上部電極部および前記対向電極部に対して印加する電圧を発生させる発生手段と、を有し、
前記上部電極部と前記対向電極部とは、複数設けられ、
前記発生手段は、
入力信号に基づいて印加する電圧を発生させるデジタルアナログコンバータを複数備え、
前記上部電極部のそれぞれに対して、異なる前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加し、
前記対向電極部のそれぞれに対して、1つの前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項7】
液体に熱を付与する電気熱変換素子と、
前記電気熱変換素子を保護するとともに、液体と接する位置に設けられた上部電極が複数形成された上部電極部と、
前記上部電極部に対応して設けられ、液体を介して前記上部電極と電気的に接続可能に設けられた対向電極が複数形成された対向電極部と、
前記上部電極部および前記対向電極部に対して印加する電圧を発生させる発生手段と、を有し、
前記上部電極部と前記対向電極部とは、複数設けられ、
前記発生手段は、
入力信号に基づいて印加する電圧を発生させるデジタルアナログコンバータを複数備え、
前記上部電極部のそれぞれに対して、異なる前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加し、
前記対向電極部のそれぞれに対して、異なる前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項8】
液体に熱を付与する電気熱変換素子と、
前記電気熱変換素子を保護するとともに、液体と接する位置に設けられた上部電極が複数形成された上部電極部と、
前記上部電極部に対応して設けられ、液体を介して前記上部電極と電気的に接続可能に設けられた対向電極が複数形成された対向電極部と、
前記上部電極部および前記対向電極部に対して印加する電圧を発生させる発生手段と、を有し、
前記上部電極部と前記対向電極部とは、複数設けられ、
前記発生手段は、
入力信号に基づいて印加する電圧を発生させるデジタルアナログコンバータを複数備え、
前記上部電極部および該上部電極部に対応する前記対向電極部よりなる組のそれぞれに対して、異なる前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加し、
前記デジタルアナログコンバータは、切替手段を介して、互いに対応する前記上部電極部および前記対向電極部に対して選択的に電圧を印加することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項9】
前記発生手段は、前記上部電極部と前記対向電極部とスルーホール実装を介して接続されており、
前記スルーホール実装は、外部構成と接続可能な電極の近傍に形成される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項10】
前記対向電極部は、前記上部電極部に対して、前記上部電極部の延在方向と交差する方向の少なくとも一方側において、前記上部電極部と所定間隔を空けて平行して延設されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項11】
前記上部電極は、電気化学反応によって液体に溶出可能な材料を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項12】
前記上部電極および前記対向電極はイリジウムを含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板を備え、
前記電気熱変換素子による熱エネルギーによって液体を沸騰させ、該沸騰による発泡の力で、該液体を吐出口から吐出することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項14】
請求項13に記載の液体吐出ヘッドから吐出された液体により、所定の処理を実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項15】
前記液体は、インクであって、
前記液体吐出ヘッドは、記録媒体に対して前記インクを吐出することにより記録を行うことを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット方式によりインクを吐出可能な記録ヘッド用基板などとして、広く適用可能な液体吐出ヘッド用基板、当該液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッド、および当該液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱抵抗素子に電圧を印加して液体中に膜沸騰を生じさせ、泡の成長エネルギーによって液体を吐出する方式の液体吐出ヘッドでは、色材などを含有したインクなどの液体を吐出する場合に、コゲーションの発生が問題となる。コゲーションとは、発熱抵抗素子による熱によって、熱溶解性のインク成分が、分解、変性などして、発熱抵抗素子あるいは発熱抵抗素子の表面を覆う塗膜上にコゲとして付着する現象である。コゲーションの発生は、発熱抵抗素子から液体への熱伝導性を低下させ、発泡ひいては吐出動作を不安定にする要因となる。
【0003】
特許文献1には、発熱抵抗素子の上部保護層の表面に、電気化学反応によって液体中に溶出可能な材料で電極層を形成し、当該電極層に電圧を印加することで、付着したコゲを除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-105364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、発熱抵抗素子や上部保護層などが形成された液体吐出ヘッド用の基板とは別体で設けられた電圧発生部で生成された電圧を電極層に対して印加する。このため、電圧発生部から電極層までの配線において電圧降下が生じ、これによって、電極層に対して、コゲの抑制やコゲを除去するための電圧を精度よく印加することができない可能性がある。また、コゲの抑制やコゲを除去するための適正な電圧値は、インクの種類によって異なる場合がある。このため、異なる種類のインクを吐出可能な構成の場合、基板において、インクの種類ごとに電圧値を異ならせるためには、インクの種類ごとに電圧を印加するための電極が必要となる場合があり、基板が大型化する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の大型化を抑制しつつ、電極層に精度よく電圧を印加することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、液体に熱を付与する電気熱変換素子と、前記電気熱変換素子を保護するとともに、液体と接する位置に設けられた上部電極が複数形成された上部電極部と、前記上部電極部に対応して設けられ、液体を介して前記上部電極と電気的に接続可能に設けられた対向電極が複数形成された対向電極部と、前記上部電極部および前記対向電極部に対して印加する電圧を発生させる発生手段と、を有し、前記上部電極部と前記対向電極部とは、複数設けられ、前記発生手段は、入力信号に基づいて印加する電圧を発生させるデジタルアナログコンバータを複数備え、前記上部電極部のそれぞれに対して、1つの前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加し、前記対向電極部のそれぞれに対して、異なる前記デジタルアナログコンバータにより電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の大型化を抑制しつつ、電極層(上部電極、対向電極)に対して適正に電圧を印加することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッドの概略構成図。
図2】液体吐出ヘッド用基板の平面図。
図3】液体吐出ヘッド用基板の一部の構成を示す図。
図4】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図5】DACの回路図。
図6】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図7】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図8】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図9】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図10】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図11】液体吐出ヘッド用基板の回路図。
図12】液体吐出ヘッドを備えた記録装置の説明図。
図13】液体吐出ヘッド用基板の変形例を示す図。
図14】液体吐出ヘッド用基板の変形例の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置の実施の形態の一例を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須ものとは限らない。また、実施形態に記載されている構成要素の相対位置、形状などは、特に限定していない限り、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(第1実施形態)
まず、図1乃至図5を参照しながら、第1実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。図1は、実施形態による液体吐出ヘッド用基板が用いられた液体吐出ヘッドの概略構成図である。図2は、液体吐出ヘッド用基板の構成を模式的に示す平面図である。図3(a)は、図2のIIIa-IIIa線断面図であり、図3(b)は、図2のIIIb枠の拡大図である。なお、図2図3(a)(b)では、理解を容易にするために、一部の構成について省略して示している。
【0012】
液体吐出ヘッド100は、圧力室102(後述する)に液体を供給する供給路104と、圧力室102から液体を回収する回収路106とが形成された液体吐出ヘッド用基板(以下、単に「基板」とも称する。)108を備えている。この基板108の一方の面には、液体を吐出するための複数の吐出口110による吐出口列が形成された流路形成部材112が設けられている。また、一方の面と対向する基板108の他方の面には、カバープレート114が設けられている。
【0013】
供給路104および回収路106は、流路形成部材112における吐出口110の配列方向に沿って延在している。また、基板108の一方の面には、供給路104と連通する複数の供給口116が、吐出口110の配列方向に沿って配列されている。さらに、基板108の一方の面には、回収路106と連通する複数の回収口118が、吐出口110の配列方向に沿って配列されている。
【0014】
基板108の一方の面には、吐出口110に対応する位置に、液体を熱エネルギーによって発泡させるための熱作用部120が形成されている。この熱作用部120は、液体を吐出させるための発熱抵抗素子304(図3(a)参照)と、発熱抵抗素子304を保護する上部電極201(後述する)とを含む。熱作用部120は、流路形成部材112に形成された圧力室102内に位置する。発熱抵抗素子304(電気熱変換素子とも称する。)は、圧力室102内の液体を沸騰させ、この沸騰による発泡の力で、液体を吐出口110から吐出させる。また、基板108の一方の面には、基板108の電気的接続用の端子としての電極122が設けられている。
【0015】
カバープレート114には、供給路104に連通する開口124、回収路106に連通する開口(不図示)が設けられている。この開口124から液体吐出ヘッド100に液体が供給され、回収路106に連通する開口を介して液体吐出ヘッド100から液体が回収される。従って、液体吐出ヘッド100において、液体は、開口124、供給路104、供給口116を通って圧力室102へ供給される。また、圧力室102に供給された液体は回収口118、回収路106、回収路106に連通する開口を通って回収される。
【0016】
流路形成部材112には、基板108とともに、圧力室102を含み、かつ、液体が貯留される空間である液室126が形成される。この液室126は、吐出口110の配列方向に沿って延在し、各吐出口列に対応して形成されている。各液室126内では、基板108において、熱作用部120を含み、かつ、当該熱作用部120の機能を維持するための構成を含むヒータ列部200が設けられている。なお、本実施形態では、液体吐出ヘッド100において液室126が3つ設けられているため、基板108には、3つのヒータ列部200a、200b、200cが形成されている(図2参照)。
【0017】
各ヒータ列部200では、熱作用部120において、発熱抵抗素子304の真上を被覆するように上部電極201が形成されている(図2図3(a)参照)。具体的には、ヒータ列部200は、上部電極201が複数形成された上部電極部202を備えている。この上部電極部202では、上部電極201が吐出口110の配列方向に沿って配列されている。
【0018】
また、液室126では、上部電極201に対応して対向電極203が形成されている(図2図3(a)参照)。具体的には、ヒータ列部200は、上部電極部202の両側において、対向電極203が複数形成された対向電極部204を備えている。この対向電極部204では、上部電極部202と平行に延設され、対向電極203が吐出口110の配列方向に平行に配列されている。
【0019】
上部電極部202は、配線306と保護層308とによって形成されている(図3(a)参照)。具体的には、基板108では、上面に発熱抵抗素子304が形成された絶縁層302上に絶縁層310が形成されている。そして、絶縁層310上において、各吐出口110に対応する位置に設けられた複数の発熱抵抗素子304を覆うように、吐出口110の配列方向に沿って配線306が延設される。この配線306は、発熱抵抗素子304の真上に位置する領域が開口するように、保護層308で覆われている。そして、この配線306では、保護層308で覆われていない開口した領域が、上部電極201として機能することとなる。
【0020】
また、上部電極部202に対応して設けられる対向電極部204は、液体吐出ヘッドとした際に、液室126に貯留される液体を介して対向電極203が上部電極部202の上部電極201と電気的に接続可能な構成となっている。具体的には、対向電極部204は、配線312と保護層314とによって形成されている(図3(a)参照)。具体的には、絶縁層310上において、吐出口110の配列方向(図3(a)では紙面に垂直な方向)と交差(本実施形態では直交)する方向に所定間隔を空けて、当該配列方向に沿って配線312が延設される。この配線312は、上部電極201に対応する領域が開口するように、保護層314で覆われている。そして、この配線312では、保護層314で覆われていない開口した領域が、対向電極203として機能することとなる。
【0021】
配線306は、パターン210を介して、電極122に接続されたTHT(Through-hole technology:スルーホール実装)214(図3(b)参照)に接続される。また、配線312は、パターン212を介して、THT214に接続される。THT214は、上部電極部202および対向電極部204へ印加する電圧を発生する回路である電圧発生部216と接続されている(図3(b)参照)。これにより、本実施形態では、基板108上に設けられた電圧発生部216が、THT214およびパターン210を介して上部電極部202に電圧を印加することで、各上部電極201に電圧が印加されることとなる。また、電圧発生部216が、THT214およびパターン212を介して対向電極部204に電圧を印加することで、各対向電極203に電圧が印加されることとなる。このように、本実施形態では、電圧発生部216が、上部電極部202および対向電極部204に対して印加する電圧を発生させる発生部として機能している。
【0022】
なお、THT214については、電極122の近傍に配置されている。電極122は、液体に触れないように封止材で封止される。従って、THT214について、電極122に対する封止材で封止することで、基板108の大型化を抑制することができるとともに、封止ミスなどを抑制することができ、基板108の性能に対する信頼性の低下を抑制することができる。
【0023】
上部電極部202に用いられる配線306は、電気化学反応によって、液室126に貯留される液体中に溶出可能な材料により形成される。また、対向電極部204に用いられる配線312は、上部電極201と液室126に貯留される液体との電気化学反応を生じさせ、上部電極201を当該液体中に溶出させる材料により形成される。配線312は、例えば、配線306と同じ材料を用いて形成される。また、配線306および配線312は、導電性材料により形成される。上部電極201は、発熱抵抗素子304を物理的および化学的衝撃から保護する機能を有するとともに、発熱抵抗素子304で発生する熱を瞬時に液体に伝達する熱伝導性を有する必要がある。配線306および配線312としては、上記した条件を満たす材料であれば、公知の種々の物質を用いてもよい。本実施形態では、配線306および配線312は、例えば、イリジウム(Ir)により形成される。なお、配線306と配線312とは、互いに同じ材料であることに限定されるものではなく、互いに異なる材料であってもよい。
【0024】
上部電極201は、絶縁層310を介して発熱抵抗素子304を被覆するように形成される電極となっている。液体吐出ヘッド100から液体を吐出する処理の実行中では、上部電極201は、主に液体中の陰イオンを寄せ付けなくするために、負の電極として機能させる。これにより、液体を吐出する処理中では、液体に由来するコゲの上部電極201に対する付着を抑制することができる。また、上部電極201を、対向電極203に対して相対的に電位が高い状態とすることで、上部電極201を液体中に溶出させるとともに、上部電極201に付着した、液体に由来するコゲを除去することができる。
【0025】
対向電極203は、液体吐出ヘッド100から液体を吐出する処理の実行中では、液体中の陰イオンを上部電極201から遠ざけるために、正の電極として機能させる。上部電極201に付着したコゲを除去する際には、上部電極201を対向電極203に対して相対的に電位が高くなるように、液体を介して上部電極201と対向電極203との間に電圧を印加する。これにより、上部電極201と液体との間で電気化学反応が生じさせ、この上部電極201を液体中へ溶出させる反応を持続させる。これに伴い、液体を介して上部電極201から対向電極203へ向かう電流が流れる。
【0026】
具体的には、対向電極部204に対して、対向電極203が溶出しない程度の電極を印加し、上部電極201に対しては電圧0Vとして、上部電極201上の液体成分を除去あるいは分散させてコゲの抑制を行う。また、上部電極部202に対して、上部電極201が溶出する電圧を印加し、対向電極203に対しては電圧0Vとして、上部電極201を液体中に溶出させて、上部電極201上に付着したコゲの除去を行う。
【0027】
次に、基板108の回路構成について説明する。図4は、第1実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。図5は、図4のDACの回路図である。基板108では、発熱抵抗素子304は、発熱抵抗素子304の駆動を制御するドライバ402と、電極122に接続された24VのVH404とに接続されている。ドライバ402は、制御回路406、電極122に接続された5VのVHTM408、発熱抵抗素子304、および電極122に接続された0VのGNDH410に接続されている。ドライバ402は、制御回路406からの制御信号に基づいて、ドライバ402の駆動能力をあげるためVHTM408の5Vに昇圧後に発熱抵抗素子304を駆動する。発熱抵抗素子304は、ドライバ402の駆動に応じてVH404の電圧が印加され、これにより、吐出口110からインクが吐出される。
【0028】
基板108は、温度変化による液体の吐出量の変動を抑制するための温度検出部412を備えている。温度検出部412は、ダイオードの温度特性を利用した温度センサ414、ロジック部416、VHTM408に接続されたデジタルアナログコンバータ(DAC)418、および比較器420により構成されている。温度検出部412は、温度センサ414により取得したアナログの温度値をデジタル変換して、制御回路406に出力する。
【0029】
ロジック部416は、制御回路406により制御され、比較器420での温度センサ414とDAC418との出力値の比較結果に基づいて、DAC418の制御を行い、デジタルの温度値を制御回路406に出力する。制御回路406は、出力された温度値を、電極122を介して、基板108と別体に設けられた外部制御回路(不図示)へ送信する。本実施形態では、温度検出部412および制御回路406は、図2では図示を省略したが、基板108に設けられている。なお、制御回路406は、外部制御回路からの出力情報などに基づいて、上部電極部202や対向電極部204へ印加する電圧を制御するなどの基板108における各種の制御を行う。
【0030】
電圧発生部216は、制御回路406により制御されるDAC422、424、426、428を備えている。DAC422、424、426、428はそれぞれ、VHTM408に接続されている。DAC422は、ヒータ列部200a、200b、200cの上部電極部202に接続されている。DAC424は、ヒータ列部200aの対向電極部204に接続されている。DAC426は、ヒータ列部200bの対向電極部204に接続されている。DAC428は、ヒータ列部200cの対向電極部204に接続されている。
【0031】
DAC422~428は、その出力側において、接続される上部電極部202または対向電極部204を介して、制御回路406に接続されている。DAC422~428の出力値は、制御回路406に出力された後に、電極122を介して外部制御回路に出力される。なお、DAC422~428は、上部電極部202や対向電極部204の手前で制御回路406に接続されるようにしてもよい。
【0032】
DAC418およびDAC422~428は、図5に示す回路構成となっている。電源502とグランド504とを抵抗506で分圧し、デジタル値である入力信号508に従い、抵抗506の所定の分割箇所を選択器510で選択し、増幅器512を介して、端子514にアナログ値を出力する。即ち、各DACは、制御回路406から出力された入力信号508に基づいて、所定値の電圧を出力することとなる。本実施形態では、デジタルアナログ変換機であるDACとして抵抗分割方式を用いるようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、R-2R方式、容量分割方式などの公知の種々の方式を用いるようにしてもよい。
【0033】
以上の構成において、液体吐出ヘッド100から液体の吐出を伴う処理の実行中には、制御回路406の制御により、DAC422に0V、DAC424、426、428に、例えば、0.5Vなどの所定値の電圧を印加するように設定する。即ち、制御回路406が、DAC424、426、428に対して、当該所定値の電圧を印加するための入力信号508を出力する。なお、当該所定値としては、液室126から吐出口110を介して吐出する液体の種類、上部電極201を形成する配線306および対向電極203を形成する配線312の材料などに応じて決定される。また、当該所定値は、効率的に上部電極201へのコゲの付着を抑制することが可能な値とする。これにより、上部電極201が負の電極、対向電極203が正の電極として機能し、上記処理を実行中に液体に由来するコゲの上部電極201への付着が抑制される。
【0034】
また、上部電極201に付着したコゲを除去する際には、制御回路406の制御により、DAC422に、例えば、2Vなどの所定値の電圧,DAC424、426、428に0Vの電圧を印加するように設定する。即ち、制御回路406が、DAC422に対して、上記所定値の電圧を印加するための入力信号508を出力する。なお、当該所定値としては、液室126から吐出口110を介して吐出する液体の種類、上部電極201を形成する配線306および対向電極203を形成する配線312の材料などに応じて決定される。また、当該所定値は、効率的に上部電極201からコゲを抑制することが可能な値とする。これにより、上部電極201が正の電極、対向電極203が負の電極として機能し、上部電極201が液体に溶出して、上部電極201に付着したコゲが除去される。
【0035】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、基板108上に設けられている電圧発生部216によって、各ヒータ列部200の上部電極部202および対向電極部204に対して所定の電圧を印加可能なようにした。このため、基板108と別体で設けられた外部構成としての電圧発生部から電圧を印加するような技術と比較して、電圧発生部から上部電極部202および対向電極部204までの配線が短くなる。これにより、電圧発生部と上部電極部202および対向電極部204とを接続する配線における電圧降下が抑制され、上部電極201、対向電極203に対して、高い精度で、目的とする値の電圧を印加することができるようになる。
【0036】
また、DAC424、426、428は、それぞれ異なるヒータ列部200の対向電極部204に接続されている。このため、液体吐出ヘッド100が、異なるヒータ列部200を備えた液室126に連通する吐出口110から、異なる種類の液体を吐出する構成の場合、対向電極部204に対して、液体の種類に応じて、コゲの抑制に適した値となる電圧を印加することができる。これにより、液体吐出ヘッド100では、効率的にコゲを抑制することができるようになる。
【0037】
また、対向電極部204に対して、異なる値の電圧値を印加する場合、公知技術のように外部の電圧発生部から電圧を印加する構成であると、各ヒータ列部に対して、それぞれ電圧発生部と接続する電極を設ける必要がある。これに対して、本実施形態の基板108では、こうした電極を、設ける必要がないため、基板108の大型化が抑制されるとともに、当該電極に対する封止の必要がなくなり、基板性能に対する信頼性を維持できる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、図6を参照しながら、第2実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0039】
この第2実施形態では、電圧発生部216の一部のDACを、温度検出部412と兼用する構成とした点において、上記した第1実施形態と異なっている。
【0040】
図6は、第2実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。本実施形態では、基板108では、電圧発生部216は、上部電極部202へ電圧を印加する構成として、DAC602を備えている。なお、DAC602は、温度検出部412で兼用可能に接続されている。
【0041】
具体的には、DAC602は、出力側において切替部604に接続されている。切替部604は、DAC602を、各ヒータ列部200の上部電極部202または温度検出部412で用いられる比較器420に選択的に接続可能な構成となっている。また、DAC602は、入力側において切替部606と接続されている。切替部606は、制御回路406または温度検出部412で用いられるロジック部416を選択的に、DAC602に接続可能な構成となっている。なお、切替部604、606はそれぞれ、制御回路406により制御されて接続先が選択される。
【0042】
ヒータ列部200a、200b、200cにおける上部電極部202に電圧を印加する際には、切替部606によって制御回路406がDAC602と接続され、切替部604によってDAC602が当該上部電極部202に接続される。また、温度検出部412を機能させる際には、切替部606によってロジック部416がDAC602と接続され、切替部604によってDAC602が比較器420に接続される。
【0043】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、電圧発生部216において各ヒータ列部200の上部電極部202へ電圧を印加するDACを、温度検出部412で兼用可能な構成とした。これにより、上記第1実施形態で説明した作用効果に加えて、基板108を小型化することが可能となる。
【0044】
本実施形態では、温度検出部412が兼用する電圧発生部216のDACを、上部電極部202に接続されるDACとしたが、これに限定されるものではない。即ち、温度検出部412が兼用するDACは、対向電極部204に接続される電圧発生部216の3つのDACのうちのいずれか1つのDACとしてもよい。また、電圧発生部216におけるDACを、温度検出部412と兼用するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、電圧発生部216のDACを、基板108に設けられた、DACを備えた他の構成と兼用する構成としてもよい。
【0045】
(第3実施形態)
次に、図7を参照しながら、第3実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0046】
この第3実施形態では、電圧発生部216において、抵抗分圧により取り出した電圧を、上部電極部202および対向電極部204に印加するようにした点において、上記第1実施形態と異なっている。
【0047】
図7は、第3実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。なお、図7では、理解を容易にするために、温度検出部412の構成を省略して示している。本実施形態では、基板108において電圧発生部216は、抵抗アレイ702と、抵抗アレイ702からの出力を増幅する増幅器704、706、708、710を備えている。抵抗アレイ702は、電極122に接続された24VのVHT712に接続されている。VHT712は、ソースフォロアのVHTバッファ714に接続される。VHT712は、抵抗アレイ702からの取り出し電圧をVHTバッファ714に入力し、ドライバ402へ駆動電圧の5Vを供給する。
【0048】
増幅器704は、各ヒータ列部200の上部電極部202に接続され、増幅器706は、ヒータ列部200aの対向電極部204に接続される。また、増幅器708は、ヒータ列部200bの対向電極部204に接続され、増幅器710は、ヒータ列部200bの対向電極部204に接続される。これにより、抵抗アレイ702からの出力は、各増幅器で増幅されて、上部電極部202または対向電極部204に入力される。
【0049】
増幅器704~710は、その出力側において、接続される上部電極部202または対向電極部204を介して制御回路406に接続されている。増幅器704~710の出力値は、制御回路406に出力された後に、電極122を介して外部制御回路に出力される。なお、増幅器704~710は、上部電極部202や対向電極部204の手前で制御回路406に接続されるようにしてもよい。
【0050】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、電圧発生部216において抵抗アレイ702を用いて上部電極部202および対向電極部204に所望の電圧を印加するようにした。これにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、抵抗アレイ702を用いて抵抗分割方式によって、上部電極部202および対向電極部204に電圧を印加するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、容量分割方式などの公知の種々の技術を用いて上部電極部202および対向電極部204に電圧を印加するようにしてもよい。また、本実施形態では、共有をVHTバッファ714としたが、その他の部位としてもよい。
【0052】
(第4実施形態)
次に、図8を参照しながら、第4実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態および第3実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、第1実施形態および第3実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0053】
この第4実施形態では、電圧発生部216において、抵抗分圧により取り出した電圧を、上部電極部202および対向電極部204に印加するようにした点において、上記第1実施形態と異なっている。また、第4実施形態では、抵抗分圧により取り出し電圧を、印加する対象となる上部電極部202または対向電極部204に接続された増幅器に、選択的に接続可能な選択部を備えるようにした点において、上記第3実施形態と異なっている。
【0054】
図8は、第4実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。なお、図8では、理解を容易にするために、温度検出部412の構成を省略して示している。本実施形態では、基板108において電圧発生部216は、抵抗アレイ702と増幅器704、706、708、710とが、選択部802を介して接続されている。
【0055】
選択部802は、選択部802a、802b、802c、802dを備えている。選択部802aは増幅器704に接続され、選択部802bは増幅器706に接続され、選択部802cは増幅器708に接続され、選択部802dは増幅器710に接続される。選択部802aは、抵抗アレイ702からの引き出し電圧のうち、各ヒータ列部200の上部電極部202に印加する電圧を増幅器704に入力させる。また、選択部802bは、抵抗アレイ702からの引き出し電圧のうち、ヒータ列部200aの対向電極部204に印加する電圧を増幅器706に入力させる。さらに、選択部802cは、抵抗アレイ702からの引き出し電圧のうち、ヒータ列部200bの対向電極部204に印加する電圧を増幅器708に入力させる。さらにまた、選択部802dは、抵抗アレイ702からの引き出し電圧のうち、ヒータ列部200cの対向電極部204に印加する電圧を増幅器710に入力させる。
【0056】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、電圧発生部216において抵抗アレイ702を用いて上部電極部202および対向電極部204に電圧を印加するようにした。このとき、上部電極部202および対向電極部204に対しては、選択部802によって、抵抗アレイ702からの引き出し電圧のうち、目的とする値の電圧が印加されるようにした。これにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
(第5実施形態)
次に、図9を参照しながら、第5実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0058】
この第5実施形態では、下記の点において上記第1実施形態と異なっている。即ち、基板108では、各ヒータ列部200における対向電極部204に対して、電圧発生部216の同一のDACから電圧が印加されるようにした。また、各ヒータ列部200における上部電極部202に対してそれぞれ、電圧発生部216における異なるDACから電圧が印加されるようにした。
【0059】
図9は、第5実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。本実施形態では、電圧発生部216は、制御回路406により制御されるDAC902.904、906、908を備えている。DAC902、904、906、908はそれぞれ、VHTM408に接続されている。DAC902は、ヒータ列部200aの上部電極部202に接続されている。DAC904は、ヒータ列部200bの上部電極部202に接続されている。DAC906は、ヒータ列部200cの上部電極部202に接続されている。DAC908は、ヒータ列部200a、200b、200cの対向電極部204に接続されている。
【0060】
DAC902~908は、その出力側において、接続される上部電極部202または対向電極部204を介して制御回路406に接続されている。DAC902~908の出力値は、制御回路406に出力された後に、電極122を介して外部制御回路に出力される。なお、DAC902~908は、上部電極部202や対向電極部204の手前で制御回路406に接続されるようにしてもよい。DAC902、904、906、908はそれぞれ、DAC418と同様に、図5に示す回路構成となっている。
【0061】
以上の構成において、液体吐出ヘッド100から液体の吐出を伴う処理の実行中には、制御回路406の制御により、DAC902、904、906に0V、DAC908に、例えば、0.5Vなどの所定値の電圧を印加するように設定する。即ち、制御回路406が、DAC908に対して、当該所定値の電圧を印加するための入力信号508を出力する。なお、当該所定値としては、液室126から吐出口110を介して吐出する液体の種類、上部電極201を形成する配線306および対向電極203を形成する配線312の材料などに応じて決定される。また、当該所定値は、効率的に上部電極201へのコゲの付着を抑制することが可能な値とする。これにより、上部電極201が負の電極、対向電極203が正の電極として機能し、上記処理を実行中に液体に由来するコゲの上部電極201への付着が抑制される。
【0062】
また、上部電極201に付着したコゲを除去する際には、制御回路406の制御により、DAC902、904、906に、例えば、2Vなどの所定値の電圧、DAC908に0Vの電圧を印加するように設定する。即ち、制御回路406が、DAC902、904、906に対して、当該所定値の電圧を印加するための入力信号508を出力する。なお、当該所定値としては、液室126から吐出口110を介して吐出する液体の種類、上部電極201を形成する配線306および対向電極203を形成する配線312の材料などに応じて決定される。また、当該所定値は、効率的に上部電極201からコゲを除去することが可能な値とする。これにより、上部電極201が正の電極、対向電極203が負の電極として機能し、上部電極201が液体に溶出して、上部電極201に付着したコゲが除去される。
【0063】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、基板108上に設けられている電圧発生部216によって、各ヒータ列部200の上部電極部202および対向電極部204に対して所定の電圧を印加するようにした。このため、上記第1実施形態と同様に、上部電極201、対向電極203に対して、高い精度で、目的とする値の電圧を印加することができるようになる。
【0064】
また、DAC902、904、906は、それぞれ異なるヒータ列部200の上部電極部202に接続されている。このため、異なるヒータ列部200を備えた液室126に連通する吐出口110から、異なる種類の液体を吐出する構成の場合、上部電極部202に対して、液体の種類に応じて、コゲの除去に適した値となる電圧を印加することができる。これにより、液体吐出ヘッド100では、効率的にコゲを除去することができるようになる。
【0065】
また、上部電極部202に対して、異なる値の電圧値を印加する場合、公知技術のように外部の電圧発生部から電圧を印加する構成であると、各ヒータ列部に対して、それぞれ電圧発生部と接続する電極を設ける必要がある。これに対して、本実施形態の基板108では、こうした電極を、設ける必要がないため、基板108の大型化が抑制されるとともに、当該電極に対する封止の必要がなくなり、基板性能に対する信頼性の低下が生じ難くなる。
【0066】
(第6実施形態)
次に、図10を参照しながら、第6実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態および第5実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、第1実施形態および第5実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0067】
この第6実施形態では、各ヒータ列部200における上部電極部202および対向電極部204に対してそれぞれ、電圧発生部216における異なるDACから電圧が印加されるようにした点において、上記第1実施形態および第5実施形態と異なっている。
【0068】
図10は、第6実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。本実施形態では、電圧発生部216は、VHTM408に接続されたDAC424、426、428、902、904、906を備えている。
【0069】
具体的には、ヒータ列部200aでは、上部電極部202に対してDAC902から電圧が印加され、対向電極部204に対してDAC424から電圧が印加される。また、ヒータ列部200bでは、上部電極部202に対してDAC904から電圧が印加され、対向電極部204に対してDAC426から電圧が印加される。さらに、ヒータ列部200cでは、上部電極部202に対してDAC906から電圧が印加され、対向電極部204に対してDAC428から電圧が印加される。
【0070】
以上の構成において、例えば、それぞれ異なるヒータ列部200を備えた液室126に連通する吐出口110から、異なる液体を吐出する構成の場合には、以下のように制御することができる。
【0071】
液体吐出ヘッド100から液体の吐出を伴う処理の実行中には、制御回路406の制御により、DAC902、904、906に0V、DAC424に0.5V、DAC426に0.6V、DAC428に0.7Vの電圧を印加するように設定する。なお、DAC424、426、428に設定される電圧値は、それぞれ吐出する液体に由来するコゲの上部電極201への付着を効率的に抑制可能な値となる。このように、液体の種類に応じて、コゲの抑制に適した電圧を対向電極部204に印加する。これにより、上部電極201が負の電極、対向電極203が正の電極として機能し、コゲの抑制を効率的に実行することができる。
【0072】
また、上部電極部202に付着したコゲを除去する際には、制御回路406の制御により、DAC902に2V、DAC904に2.4V、DAC906に2.8V、DAC424、426、428に0Vの電圧を印加するように設定する。なお、DAC902、904、906に設定される電圧値は、それぞれ吐出する液体に由来するコゲを上部電極201から効率的に除去可能な値となる。このように、液体の種類に応じて、コゲの除去に適した電圧を上部電極部202に印加する。これにより、上部電極201が正の電極、対向電極203が負の電極として機能し、コゲの除去を効率的に実行することができる。
【0073】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、基板108上に設けられた電圧発生部216によって、各ヒータ列部200の上部電極部202および対向電極部204のそれぞれに対して個別に異なる電圧を印加することができるようにした。これにより、上記第1実施形態の同様の作用効果に加えて、上記第5実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
(第7実施形態)
次に、図11を参照しながら、第7実施形態による液体吐出ヘッド用基板について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0075】
この第7実施形態では、電圧発生部216において、各ヒータ列部200に対して、上部電極部202および対向電極部204のそれぞれに選択的に電圧を印加することができるDACを備えるようにした点において、上記第1実施形態と異なっている。
【0076】
図11は、第7実施形態による液体吐出ヘッド用基板108の回路図である。本実施形態では、電圧発生部216は、制御回路406により制御されるDAC1102、1104、1106を備えている。DAC1102、1104、1106はそれぞれVHTM408に接続されている。DAC1102は、切替部1108を介して、ヒータ列部200aの上部電極部202または対向電極部204に選択的に接続可能となっている。DAC1104は、切替部1110を介して、ヒータ列部200bの上部電極部202または対向電極部204に選択的に接続可能となっている。DAC1106は、切替部1112を介して、ヒータ列部200cの上部電極部202または対向電極部204に選択的に接続可能となっている。
【0077】
切替部1108、1110、1112は、制御回路406の制御によって、DAC1102、1104、1106による電圧を印加する対象を選択する。切替部1108、1110、1112はそれぞれ同じ構成となっている。従って、以下の説明では、切替部1112の構成について説明し、切替部1108、1110の構成についてはその説明を省略する。
【0078】
切替部1112は、2つのスイッチ部Sa、Sbを備えている。制御回路406は、このスイッチ部Sa、Sbを制御して、DAC1112が電圧を印加する対象を選択することとなる。スイッチ部Saは、対向電極部204を、DACまたはグランドGに選択的に接続する。また、スイッチ部Sbは、上部電極部202を、DACまたはグランドGに選択的に接続する。制御回路406は、スイッチ部Sa、Sbを制御して、DACを上部電極部202または対向電極部204に接続させる。
【0079】
DAC1102~1106は、その出力側において、接続される上部電極部202または対向電極部204を介して制御回路406に接続されている。DAC1102~1106の出力値は、制御回路406に出力された後に、電極122を介して外部制御回路に出力される。なお、DAC1102~1106は、上部電極部202や対向電極部204の手前で制御回路406に接続されるようにしてもよい。DAC1102、1104、1106はそれぞれ、DAC418と同様に、図5に示す回路構成となっている。
【0080】
以上の構成において、液体吐出ヘッド100から液体の吐出を伴う処理の実行中には、各DACと各切替部とを制御して、上部電極部202へ0V、対向電極部204に、例えば、0.5Vなどの所定値の電圧を印加するよう設定する。具体的には、切替部1108、1110、1112では、スイッチ部Sbにより上部電極部202がグランドGに接続され、スイッチ部Saにより対向電極部204が対応するDACに接続される。これにより、上部電極201が負の電極、対向電極203が正の電極として機能し、上記処理を実行中に液体に由来するコゲの上部電極201への付着が抑制される。
【0081】
また、上部電極201に付着したコゲを除去する際には、制御回路406の制御により、切替部1108、1110、1112を制御して、上部電極部202に、例えば、2Vなどの所定値の電圧、対向電極部204に0Vの電圧を印加するように設定する。具体的には、切替部1108、1110、1112では、スイッチ部Sbにより上部電極部202が対応するDACに接続され、スイッチ部Saにより対向電極部204がグランドGに接続される(図11に示す状態である。)。これにより、上部電極201が正の電極、対向電極203が負の電極として機能し、上部電極201が液体に溶出して、上部電極201に付着したコゲが除去される。
【0082】
以上において説明したように、本実施形態による基板108では、基板108上に設けられた電圧発生部216によって、ヒータ列部200ごとに、上部電極部202または対向電極部204に所定値の電圧を印加可能な構成とした。これにより、上記第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
(第8実施形態)
次に、図12を参照しながら、上記実施形態による液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した各実施形態による液体吐出ヘッド用基板と同一または相当する構成については、各実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0084】
本実施形態では、液体吐出装置として、記録媒体に対してインクジェット方式によりインクを吐出して記録するインクジェット記録装置を例として説明する。従って、以下の説明では、液体吐出ヘッドは記録ヘッドとして説明される。なお、インクジェット記録装置としては、記録機能のみを備えたシングルファンクションプリンタであってもよいし、記録機能のほかにスキャナ機能などの種々の機能を備えたマルチファンクションプリンタであってもよい。
【0085】
以下の説明において、「記録」は、記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物など、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものを形成する場合だけでなく、媒体の加工を行う場合を含む。「記録媒体」とは、一般的なインクジェット記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革など、記録液を付すことが可能なものを含む。「記録液」は、記録媒体に付与されることにより、画像、模様、パターンなどの形成または記録媒体の加工に供されるインクなどの液体だけでなく、付与された記録液に対して、例えば、凝固、不溶化などの処理を行う種々の処理液を含む。
【0086】
図12(a)は、上記実施形態による液体吐出ヘッド用基板108を用いた記録ヘッドを備えた記録部の斜視構成図である。図12(b)は、図12(a)の記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置の概略構成図である。なお、以下の説明では、インクジェット記録装置を、単に「記録装置」とも称する。
【0087】
記録装置1201は、記録媒体Pに対してインクを付与する記録部1202を備えている。この記録部1202は、上記実施形態による液体吐出ヘッド用基板108を用いた記録ヘッド1200を備えた記録ヘッド部1204と、記録ヘッド部1204に取り付けられたインクタンク1206とを有する。
【0088】
また、記録装置1201は、記録媒体Pの搬送方向と交差(本実施形態では直交)する方向において、往復移動可能なキャリッジ1208を備えている(図12(b)参照)。キャリッジ1208は、螺旋溝が形成されたリードスクリュー1210に取り付けられている。リードスクリュー1210の回転によってキャリッジ1208はガイド1212に沿って矢印A方向および矢印B方向に移動することができる。リードスクリュー1210の回転は、駆動力伝達ギア1214、1216を介して、駆動モータ1218の回転に連動する。
【0089】
記録部1202は、このキャリッジ1208に搭載される。従って、記録部1202は、キャリッジ1208を介して、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向で往復移動可能となっている。なお、記録部1202は、キャリッジ1208に搭載された際に、キャリッジ1208からの電気信号を受けるための電気的コンタクト(不図示)を備えており、当該電気信号に従って記録ヘッド1200の吐出口110よりインクを吐出する。キャリッジ1208には、記録制御部(後述する)から当該電気信号が入力される。
【0090】
インクタンク1206は、記録ヘッド部1204に供給するインクを保持する。記録部1202では、インクタンク1206と記録ヘッド部1204とを、例えば、破線部分Kで分離することができ、インクタンク1206を交換可能な構成となっている。インクタンク1206は、例えば、繊維質状または多孔質状のインク保持部材(不図示)を有しており、当該インク保持材によってインクを保持することができる。
【0091】
記録装置1201は、記録媒体Pを搬送する搬送部(不図示)を備えている。記録媒体Pは、搬送部によってプラテン1220上に搬送される。プラテン1220上に搬送される記録媒体Pは、押え板1222によって、キャリッジ1208の移動方向に亘って、プラテン1220に押さえられる。また、記録装置1201は、矢印B方向から矢印A方向へ移動方向の転換するタイミングを検出するためのフォトカプラ1224、1226と、記録ヘッド1200の吐出口110が形成された面をキャッピングして保護するキャップ部材1232とを備えている。さらに、記録装置1201は、記録ヘッド1200の吐出口110が形成された面(以下、「吐出口面」とも称する。)を払拭して、当該面に付着した付着物を除去可能なクリーニングブレード1234を備えている。
【0092】
フォトカプラ1224、1226は、キャリッジ1208において、矢印A方向の上流側に設けられたレバー1228を検知可能となっている。フォトカプラ1224、1226においてレバー1228を検知すると、記録制御部は、駆動モータ1218の回転方向を切り替えて、キャリッジ1208の移動方向を矢印B方向から矢印A方向に変更する。また、キャップ部材1232は、支持部材1230に支持されている。また、キャップ部材1232は、その内部を吸引部(不図示)により吸引可能な構成となっている。これにより、記録装置1201では、キャップ部材1232が記録ヘッド1200をキャッピングした状態で、吸引部が駆動することで、吐出口110からのインクの吐出状態を良好に維持・回復することができる。
【0093】
クリーニングブレード1234としては、公知の種々の技術を用いることができる。本実施形態では、クリーニングブレード1234は、移動部材1236に保持され、移動部材1236によって、記録媒体Pの搬送方向および記録部1202の移動方向と交差する方向に移動可能となっている。上記付着物を除去するクリーニング時には、移動部材1236を介してクリーニングブレード1234は、移動する記録部1202における吐出口面と当接可能な位置まで移動し、記録部1202の移動によって、当該吐出口面の付着物を除去することとなる。なお、クリーニングブレード1234および移動部材1236は、本体支持板1238により支持されている。
【0094】
記録装置1201には、記録制御部(不図示)が設けられている。記録装置1201では、記録制御部によって、外部からの記録データなどの電気信号に従って、各機構のそれぞれの駆動を制御することとなる。記録装置1201は、記録制御部の制御によって、キャリッジ1208を介して記録部1202が移動する際の記録と、搬送部による記録媒体Pの搬送とを交互に繰り返すことで、記録媒体Pへの記録を完成させる。
【0095】
本実施形態では、上記実施形態による液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッドを、記録媒体に対して記録する記録装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。即ち、上記実施形態による液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッドを、液体吐出ヘッドから液体を吐出して、例えば、粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形装置に適用するようにしてもよい。
【0096】
(他の実施形態)
なお、上記した実施形態は、以下の(1)乃至(6)に示すように変形してもよい。
【0097】
(1)上記実施形態では特に記載しなかったが、上部電極201と対向電極203とは、それ1つ当たりの面積、つまり、電極として液体と接触可能な面積が、同じであってもよいし、対向電極203の方が小さくてもよい。また、上部電極201と対向電極203とは、設けられた個数が、対向電極203の方が多くなるようにしたが(図2参照)、対向電極203の方が少なくなるようにしてもよい。あるいは、図13のように、上部電極部202の延在方向と交差する方向の一方側において、上部電極201と同数の対向電極203が設けられるようにしてもよい。
【0098】
(2)上記第1~4実施形態では特に記載しなかったが、コゲの除去が不要な場合には、上部電極部202へ電圧を印加するためのDAC(または、それに相当する構成)を省略してもよい。この場合、上部電極部202は、THT214を介して電圧発生部216に接続するのではなく、電極122に接続されたIr1402(イリジウム電極)を、基板108外でグランドに接続するようにしてもよい。ここで、Ir1402は上部電極201を構成する配線306と積層方向において同じ層として設けてもよい。
【0099】
具体的には、例えば、第1実施形態の場合、DAC422を省略し、各ヒータ列部200の上部電極部202をIr1402に接続することとなる(図14(a)(b)参照)。こうした構成において、コゲを除去させる場合には、外部からIr1402へ電圧を印加し、その他は外部でグランドに接続するようにする。
【0100】
なお、上記のようにコゲの除去が不要な場合、上部電極201は液体との電気化学反応によって液体に溶出可能な材料で構成されていなくてもよい。上部電極201は、液体と接する位置に設けられ、電極として機能すればよい。即ち、上部電極201を形成する配線306は、上部電極201を電極として機能させることが可能であれば、どのような材料であってもよい。
【0101】
また、上記第5実施形態では、コゲの抑制が不要な場合には、対向電極部204へ電圧を印加するためのDAC908を省略してもよい。この場合、対向電極部204は、THT214を介して電圧発生部216に接続するのではなく、電極122を介して、基板108外でグランドに接続するようにしてもよい。
【0102】
(3)上記第5、第6、第7実施形態では特に記載しなかったが、これらの実施形態では、上記第2、第3、第4実施形態の技術を適用するようにしてもよい。また、上記実施形態では、基板108においてヒータ列部200を3つ設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、基板108にはヒータ列部200を、1つ、2つ、または4つ以上設けるようにしてもよい。また、各ヒータ列部200が吐出するインクの種類が異なっていても、それぞれに対応する上部電極部202や対向電極部204に対して必ずしも異なる電圧を印加する必要はない。即ち、インクの種類が異なる2つの上部電極部202や2つの対向電極部204に対し、2つの異なる電圧を印加可能なように構成すればよい。その際、その他のインクの種類の上部電極部202や対向電極部204に対しては共通の電圧を印加するような回路構成であってもよい。
【0103】
(4)上記実施形態では、各ヒータ列部200の上部電極部202および対向電極部204に対して、1つの電圧発生部216から電圧を印加するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、各ヒータ列部200の上部電極部202と対向電極部204とに対して、異なる電圧発生部から電圧を印加するようにしてもよい。この場合、各上部電極部202のそれぞれに対して電圧発生部を設けるようにしてもよいし、複数設けられた上部電極部202に対して1つの電圧発生部を設けるようにしてもよい。なお、対向電極部204についても、上部電極部202と同様にして電圧発生部を設けるようにしてもよい。
【0104】
(5)上記実施形態による液体吐出ヘッド用基板を用いた液体吐出ヘッドは、インクを吐出して記録媒体に記録する記録装置のみに適用されるものではなく、液体吐出ヘッドから種々の液体を吐出する液体吐出装置として広く適用可能である。また、上記第8実施形態では、記録装置1201を、所定方向に搬送される記録媒体Pに対して、所定方向と交差する方向に記録部1202を移動しながら記録する、所謂、シリアルスキャンタイプの記録装置としたが、これに限定されるものではない。即ち、記録装置1201は、記録媒体Pにおける記録領域の幅方向(所定方向と交差する方向)全域に亘る長尺な記録ヘッドを用いる、所謂、フルラインタイプの記録装置としてもよい。さらに、上記第8実施形態では、記録装置1201を、搬送される記録媒体Pに対して記録を行う、所謂、ペーパームーブタイプの記録装置としたが、これに限定されるものではない。即ち、載置された記録媒体Pに対して、記録ヘッドが移動して記録を行う、所謂、フラットベッドタイプの記録装置としてもよい。
【0105】
(6)上記実施形態および上記した(1)乃至(5)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
108 液体吐出ヘッド用基板
201 上部電極
202 上部電極部
203 対向電極
204 対向電極部
216 電圧発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14