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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241105BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20241105BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20241105BHJP
   H03K 17/06 20060101ALI20241105BHJP
   H03K 17/10 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H02M7/48 S
H02M1/08 A
H02M1/08 341A
H03K17/687 A
H03K17/06 063
H03K17/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020211680
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098252
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 晃久
(72)【発明者】
【氏名】餅川 宏
(72)【発明者】
【氏名】葛巻 淳彦
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-114142(JP,A)
【文献】特開2015-080144(JP,A)
【文献】特開平09-093908(JP,A)
【文献】特開平10-229671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームと下アームとを含むレグを備え、前記上アームと前記下アームとの少なくとも一方が直列に接続された複数のスイッチング素子を備えた電力変換装置であって、
前記複数のスイッチング素子の各々が制御端子と第1端と第2端とを備え、
前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御端子と前記第1端との間に電気的に接続された第1抵抗器と、前記第1抵抗器と並列に接続された第1コンデンサと、を含む第1回路を備え、
前記第1コンデンサの容量は、前記複数のスイッチング素子各々の前記第1端と前記制御端子との間の帰還容量と、前記帰還容量の変動幅をもとに前記複数のスイッチング素子間の電圧差が所定の範囲に収まるように決定された係数との積以上である、
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1回路と前記制御端子との間に接続された第2抵抗器をさらに含む、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチング素子の各々の前記第1端と前記第2端との間に電気的に接続された第2コンデンサをさらに備える、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1回路は、
前記第1抵抗器と並列に接続された第3抵抗器と、
前記第3抵抗器と直列に、かつ前記第1抵抗器と並列に接続されたスイッチと
をさらに備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1端と前記第2端との間の電圧を検出する第2回路と、
前記第2回路により検出された電圧に基づいて前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御端子に印加される電圧を調整する第3回路と
をさらに備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上アームと前記下アームの少なくとも一方が、1つの前記スイッチング素子を含むパッケージを複数備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数のスイッチング素子の各々がソースインダクタンスを備え、前記ソースインダクタンスが同じインダクタンス値を備える、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータなどの電力変換装置では、PWM(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)制御を行うために半導体スイッチが使用される。大容量の電力変換装置は、損失を低減するために、低電流および高電圧で動作することが望ましい。そのため、耐圧の高い半導体スイッチが必要であるが、既存の半導体スイッチの耐圧は限られており、より高耐圧の半導体スイッチを開発するには多大な時間と費用を要する。そこで、比較的耐圧の低い半導体スイッチを複数直列に接続して、高耐圧の半導体スイッチの代わりに利用することが検討されている。
【0003】
複数の半導体スイッチを直列に接続すると、半導体スイッチや駆動回路の特性差に起因して、半導体スイッチに生じる電圧に不均衡(以下、「電圧アンバランス」と称する)が生じることがある。電圧アンバランスが生じると、いずれかの半導体スイッチに耐圧以上の電圧が生じるおそれがあるため、複数の半導体スイッチを直列接続することによって期待される電圧まで利用できない。
【0004】
電圧アンバランスを抑制するためには、例えば、直列に接続された複数の半導体スイッチそれぞれに生じる電圧を検出し、検出された電圧の差に応じて、スイッチングタイミングを調整する手法が考えられる。例えば2つの半導体スイッチが直列に接続されている場合、先にターンオフした半導体スイッチには比較的高い電圧が生じ、後にターンオフした半導体スイッチには比較的低い電圧が生じる。また、2つの半導体スイッチをターンオフする時間のずれが小さいほど、電圧差は小さくなる。そのため、電圧差を検出し、ターンオフするタイミングを調整することにより、電圧アンバランスを抑制し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4313088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ターンオンやターンオフのタイミングを調整するだけでは、スイッチングを行っていないときに生じる電圧アンバランスを抑制することはできない。また、例えば半導体スイッチとしてMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)のようなユニポーラデバイスを用いた装置では、半導体スイッチを高速にスイッチングさせることが可能であり、わずかなスイッチングタイミングの時間差であっても、電圧アンバランスが大きくなる可能性がある。ターンオンやターンオフのタイミングを正確に調整するための制御を行うには、半導体スイッチの複雑な駆動制御が必要になり、電力変換装置の製造コストの増加をまねいていた。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、大容量の電力変換装置をより低い製造コストで提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、電力変換装置は、上アームと下アームとを含むレグを備え、上アームと下アームとの少なくとも一方が、直列に接続された複数のスイッチング素子を備える。複数のスイッチング素子の各々は、制御端子と、第1端と、第2端と、を備える。電力変換装置は、複数のスイッチング素子の各々の制御端子と第1端との間に電気的に接続された第1抵抗器と、第1抵抗器と並列に接続された第1コンデンサと、を含む、第1回路を備え、前記第1コンデンサの容量は、前記複数のスイッチング素子各々の前記第1端と前記制御端子との間の帰還容量と、前記帰還容量の変動幅をもとに前記複数のスイッチング素子間の電圧差が所定の範囲に収まるように決定された係数との積以上である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電力変換装置に用いることのできるバランス回路構成例を概略的に示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る電力変換装置の効果の一例を説明するための図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電力変換装置の効果の一例を説明するための図である。
図5図5は、第2実施形態に係る電力変換装置に用いることのできるバランス回路構成例を概略的に示す図である。
図6図6は、第3実施形態に係る電力変換装置に用いることのできる回路構成例を概略的に示す図である。
図7図7は、第4実施形態に係る電力変換装置に用いることのできる回路構成例を概略的に示す図である。
図8図8は、第5実施形態に係る電力変換装置の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態に係る電力変換装置について説明する。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0011】
(第1実施形態)
(1-1)全体構成
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
なお、図1では、第1実施形態に係る電力変換装置100の一例として、鉄道向けの駆動回路の構成例を示している。電力変換装置100は、例えば単相交流電源AC1と三相交流負荷(モータM)との間に接続され、コンバータ110と、インバータ120と、平滑コンデンサ130と、コントローラ140と、コンバータ用ドライバ141と、インバータ用ドライバ142と、を備えている。
【0012】
コンバータ110は、例えば単相交流電力と直流電力とを相互に変換し得る変換器であって、直流リンク間に接続された2つのレグを備えている。それぞれのレグは上アームと下アームとを備え、上アームと下アームとの間において単相交流電源と電気的に接続されている。
【0013】
インバータ120は、例えば直流電力と三相交流電力とを相互に変換し得る変換器であって、直流リンク間に接続された3つのレグ(U相、V相、W相それぞれに対応する)を備えている。各レグは、上アームと下アームとを備え、上アームと下アームとの間においてモータMと電気的に接続されている。
【0014】
コンバータ110およびインバータ120の各アーム150(簡単のため図では符号を1つのみ付す)は、複数のスイッチング素子5と、複数のバランス回路50と、を含む。
【0015】
複数のスイッチング素子5は、各アーム150内で直列に接続されている。スイッチング素子5は、例えば、定格電圧3.3kVのシリコンカーバイドMOSFET(SiC-MOSFET)である。バランス回路50は、各スイッチング素子5のゲート・ドレイン間に接続されている。スイッチング素子5はSiC-MOSFETに限られるものではなく、他のスイッチング素子が用いられてもよい。またアーム150内で3以上のスイッチング素子5が直列に接続されて用いられてもよい。
【0016】
コントローラ140は、コンバータ用ドライバ141と、インバータ用ドライバ142と、に電気的に接続されている。コントローラ140は、プロセッサと、メモリと、入出力回路とを含むマイクロコンピュータ等によって構成される。コントローラ140は、モータMの動作状態や外部(例えば上位制御装置)から入力された指示に基づいて、コンバータ110の動作を制御する制御信号およびインバータ120の動作を制御する制御信号を生成し、それぞれコンバータ用ドライバ141およびインバータ用ドライバ142に出力する。
【0017】
コンバータ用ドライバ141は、コントローラ140から制御信号を受け取り、コンバータ110の複数のスイッチング素子5のそれぞれのゲート信号を生成してコンバータ110に出力する。ゲート信号は、整流作用により所定の直流電流が得られるよう、コンバータ110の2つのレグの上アームのスイッチング素子5と下アームのスイッチング素子5とが交互にオン/オフとなるような切替えタイミングを指示する。コンバータ用ドライバ141は、レグごとに、アームごとに、またはアーム内の素子ごとに設けられ得る。
【0018】
インバータ用ドライバ142は、コントローラ140から制御信号を受け取り、インバータの複数のスイッチング素子5のそれぞれのゲート信号を生成してインバータ120に出力する。ゲート信号は、U相、V相、W相の電流の合計が所定の電流値になるようなPWM制御を行うよう、インバータ120の3つのレグの上アームのスイッチング素子5と下アームのスイッチング素子5とが交互にオン/オフとなるような切替えタイミングを指示する。インバータ用ドライバ142は、レグごとに、アームごとに、またはアーム内の素子ごとに設けられ得る。
【0019】
平滑コンデンサ130は、コンバータ110とインバータ120との直流端間(直流リンク間)に接続されている。
【0020】
本実施形態のように、各アーム150において複数のスイッチング素子5を直列に接続すると、スイッチング素子5間に電圧アンバランスが生じ得る。電圧アンバランスには、例えば「直流電圧アンバランス」と「過渡的な電圧アンバランス」とが含まれる。直流電圧アンバランスは、直列接続された複数のスイッチング素子5をスイッチングしていないときに、スイッチング素子5間に生じる電圧アンバランスである。過渡的な電圧アンバランスは、直列接続された複数のスイッチング素子5をターンオフする時に、スイッチング素子5間に生じる電圧アンバランスである。バランス回路50は、これらの電圧アンバランスを抑制する。
【0021】
なお、コンバータ110およびインバータ120の両方において、各レグの上下アーム150が複数のスイッチング素子5および複数のバランス回路50を含んでいる必要はなく、例えばコンバータ110およびインバータ120のいずれか一方が各アームにおいて直列に接続された複数のスイッチング素子5および複数のバランス回路50を備えてもよい。
【0022】
以下の説明および図では、便宜上、直列に接続される複数のスイッチング素子5のうちの1つと、当該スイッチング素子5に外付けされる1つのバランス回路50のみを図示し、説明するが、電力変換装置100のアーム150において直列に接続される複数のスイッチング素子5の各々に、同様の構成を適用可能である。
【0023】
(1-2)バランス回路の構成
図2は、第1実施形態に係る電力変換装置100に用いることのできるバランス回路50の構成例を概略的に示す図である。
バランス回路50は、各スイッチング素子5に接続される。
スイッチング素子5は、制御端子としてのゲート端子Gと、第1端としてのドレイン端子Dと、第2端としてのソース端子Sと、を備える。スイッチング素子5のゲート端子Gには、ゲート信号を供給する駆動回路4が接続される。駆動回路4は、コンバータ用ドライバ141またはインバータ用ドライバ142に含まれる回路である。スイッチング素子5はボディダイオード51を備え得る。
【0024】
第1実施形態では、バランス回路50は、スイッチング素子5のドレイン端子Dとゲート端子Gとの間に接続される。バランス回路50は、抵抗器(第1抵抗器)1と、コンデンサ(第1コンデンサ)2と、共振抑制抵抗器(第2抵抗器)3と、を備える。
【0025】
抵抗器1とコンデンサ2とは、並列回路(第1回路)を構成する。
共振抑制抵抗器3は、当該並列回路とゲート端子Gとの間に接続される。
第1実施形態に係る電力変換装置100のバランス回路50は、抵抗器1により直流電圧アンバランスを抑制し、コンデンサ2によりターンオフ時の過渡的な電圧アンバランスを抑制し、共振抑制抵抗器3によりゲート端子Gの電圧の振動を抑制する。
【0026】
一般に、スイッチング素子は、ドレイン端子とゲート端子の間に容量Cgd を有する。容量Cgd は帰還容量とも称される。この帰還容量Cgd には、スイッチング素子によりばらつきがある。そのため、スイッチング素子がターンオフする時に、ドレイン電流能力が負荷電流となるようなゲート電圧に達すると、スイッチング素子のドレイン電圧が上昇し、その電圧変化で下記の電流が流れる。式1において、IGN は駆動回路4からゲート端子Gに流れる電流(駆動電流)であり、dv/dtは単位時間当たりのドレインソース間の電圧変化量である。
GN = Cgd・dv/dt (式1)
【0027】
式1から、スイッチング素子5の電圧上昇は、駆動回路4の電流とゲート・ドレイン間の容量Cgd で決まることがわかる。そのため、バランス回路50では、スイッチング素子5の容量Cgd のばらつきを打ち消すように、Cgd よりも大きい容量のコンデンサ2がゲート・ドレイン間に接続される。一般に、スイッチング素子のCgd のばらつきに比べて、製品としてのコンデンサ2の容量のばらつきの方が小さい。そのため、バランス回路50は、コンデンサ2によって、過渡的な電圧アンバランスを抑制することができる。
【0028】
また、ターンオフ後の電圧アンバランスは、スイッチング素子5がターンオフする時の抵抗で決まる。この抵抗にはスイッチング素子5によりばらつきがある。そのため、バランス回路50では、スイッチング素子5自体の抵抗よりも小さい抵抗器1がゲート・ドレイン間に接続される。バランス回路50は、スイッチング素子5と抵抗器1との間の抵抗分圧によりスイッチング素子5にかかる電圧を下げることができ、スイッチング素子5自体の抵抗に起因する直流電圧アンバランスを抑制することができる。
【0029】
(1-3)効果
図3は、第1実施形態に係る電力変換装置100の効果の一例を説明するための図であり、バランス回路50を使用しない場合の2直列のスイッチング素子5間の電圧アンバランスの試験結果を示す。Vdsp は、アーム150内の上側(高電位側)のスイッチング素子5にかかる電圧、Vdsn は、下側(低電位側)のスイッチング素子5にかかる電圧を表す。図3のように、上側の素子5の電圧Vdsp の方が、下側の素子5の電圧Vdsn よりも高い値を示した。
【0030】
図4は、第1実施形態に係る電力変換装置100の効果の一例を説明するための図であり、図3と同じ電力変換装置100においてバランス回路50を使用する場合の電圧アンバランスの抑制結果を示す。図3に対し、上側の素子5の電圧Vdsp と下側の素子5の電圧Vdsn がほぼ同じであることを確認できる。なお、バランス回路50として共振抑制抵抗器3は必須ではなく、共振抑制抵抗器3を省略しても一定の電圧アンバランス抑制効果が得られる。
【0031】
このように、バランス回路50は、受動回路のみの簡易な構成で、直列に接続した複数のスイッチング素子5間の電圧アンバランスを抑制することができる。第1実施形態に係る電力変換装置100は、バランス回路50を用いることにより、ゲートタイミングの調整を要することなく、また定電圧素子などの追加構成を要することなく、高耐圧のスイッチング素子の代わりに比較的安価で入手しやすい低耐圧のスイッチング素子を直列に接続して、高電圧で動作することができる。したがって、第1実施形態によれば、直列に接続された複数のスイッチング素子5を効率的に活用することができ、製造コストの増加を抑えた大容量の電力変換装置を提供することができる。
【0032】
(1-4)変形例
第1実施形態の電力変換装置100において、バランス回路50のコンデンサ2の容量は、スイッチング素子5の容量に対して以下のように決定されてもよい。
【0033】
スイッチング素子5がターンオフする時、上記の式1に示す駆動電流IGN がゲート端子Gに流れる。式1の両辺を積分すると、以下の式2が得られる。QGN は、ゲート端子Gに流入する電荷量である。式2から、スイッチング素子5における電荷量QGN のバランスを保つことによって、スイッチング素子5にかかる電圧Vds のアンバランスを抑制できることがわかる。
GN = Cgd・Vds (式2)
【0034】
帰還容量Cgd は実際にはスイッチング素子5の電圧Vds によって変化するが、ここでは簡単のため、一定値として考える。例えば、2直列のスイッチング素子5の特性によるCgd のばらつきを±20%で考慮し、電圧差を±2.5%に抑えるという例を考える。追加する外付けのコンデンサ2の容量をαCgd とすると、2つのスイッチング素子5の電圧比は次式で表すことができる。
0.95=(0.8Cgd1 + αCgd1 )/(1.2Cgd2 + αCgd2
gd1 は2直列のスイッチング素子5のうちの一方の帰還容量を表し、Cgd2 は2直列のスイッチング素子5のうちの他方の帰還容量を表す。
【0035】
上式より、係数α=6.8が得られる。すなわちこの例では、コンデンサ2の容量値として、スイッチング素子5の帰還容量Cgd の値の6.8倍以上が適していると決定される。なお、実際には素子のCgdは電圧によって変化する。このため、追加するコンデンサのQGNが素子のQGNのα倍になるようにコンデンサ容量を設定する。本変形例では、第1実施形態に係る電力変換装置100のバランス回路50は、各スイッチング素子5の帰還容量Cgd の電荷量QGN に予め決められた係数αを乗じて得られる電荷量となる容量値以上のコンデンサ2を使用する。これにより、電圧アンバランスがさらに効果的に抑制される。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電力変換装置100は、上述のバランス回路50に代えてバランス回路55を用いる点を除き、第1実施形態に係る電力変換装置100と同様の構成を有する。以下で主に第1実施形態との相違箇所について説明する。
【0037】
(2-1)バランス回路の構成
図5は、第2実施形態に係る電力変換装置100に用いることのできるバランス回路55の構成例を概略的に示す。バランス回路55は、第1実施形態に関して説明したバランス回路50の構成(抵抗器1、コンデンサ2、および共振抑制抵抗器3)に加え、コンデンサ6をさらに備える。共振抑制抵抗器3は省略されてもよい。
【0038】
コンデンサ6は、第2コンデンサとして、スイッチング素子5のドレイン端子Dとソース端子Sとの間に接続される。コンデンサ6は、スイッチング素子5の出力容量Coss よりも十分に大きな容量値を有する。コンデンサ6は、スイッチング素子5のボディダイオード51の容量のばらつきに起因する電圧アンバランスを抑制する。
【0039】
(2-2)効果
一般に、電力変換装置では、出力端子を挟んで上下にアームが配置され、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とが交互にオン/オフとなるような駆動制御が行われる。ここで、上アームのスイッチング素子がターンオフすると、上アームのスイッチング素子に流れていた電流は、下アームのスイッチング素子のダイオードへ転流する。この後、上アームのスイッチング素子が再度ターンオンすると、下アームのスイッチング素子のダイオードに流れていた電流はまた、上アームのスイッチング素子へ転流する。この時、下アームのスイッチング素子のダイオードに流れていた電流が上アームへ転流するため、スイッチング素子の制御端子の制御だけでは電圧アンバランスを抑制することができない。そのため、ダイオードの容量成分で決まるアンバランスにより、アーム内のスイッチング素子間に電圧アンバランスが生じる。
【0040】
バランス回路55は、コンデンサ6の容量によってボディダイオード51の容量差の影響を吸収し、素子特性に起因する電圧アンバランスを抑制する。第2実施形態に係る電力変換装置100は、バランス回路55を用いることにより、バランス回路50の効果に加えて、ゲート端子Gによる制御ができないタイミングでもスイッチング素子5間の電圧アンバランスを抑制できるという追加の効果を有する。したがって、第2実施形態によれば、受動素子のみの簡易な構成の追加により、直列に接続された複数のスイッチング素子5をより効率的に活用することができ、製造コストの増加を抑えた大容量の電力変換装置を提供することができる。
【0041】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る電力変換装置100は、抵抗制御回路200をさらに備え、バランス回路50に代えてバランス回路56を用いる点を除き、第1実施形態に係る電力変換装置100と同様の構成を有する。以下で主に第1実施形態との相違箇所について説明する。
【0042】
(3-1)構成
図6は、第3実施形態に係る電力変換装置100に用いることのできる回路構成例を概略的に示す。
アーム150において、直列に接続された複数の半導体スイッチング素子5の各々にバランス回路56が接続される。各バランス回路56は、各半導体スイッチング素子5のドレイン端子Dとゲート端子Gとの間に接続される。
【0043】
各バランス回路56は、第1実施形態に関して説明したバランス回路50の構成(抵抗器1、コンデンサ2、および共振抑制抵抗器3)に加え、スイッチ10と、抵抗器11と、をさらに備える。共振抑制抵抗器3は省略されてもよい。
【0044】
抵抗器11は、第3抵抗器として、抵抗器1に対して並列に接続される。抵抗器11は、抵抗器1の抵抗値の半分以下など、抵抗器1よりも小さい抵抗値を有する。
【0045】
スイッチ10は、抵抗器11と直列に、かつ抵抗器1と並列に接続される。スイッチ10がオン(閉)にされると抵抗器1と抵抗器11が電気的に接続され、スイッチ10がオフ(開)にされると抵抗器11がバランス回路56から切り離される。
【0046】
抵抗制御回路200は、アーム150内の複数の半導体スイッチング素子5の各々の素子電圧Vds を検出するように接続される。抵抗制御回路200はまた、アーム150内の各バランス回路56のスイッチ10の開閉を制御する。抵抗制御回路200は、コンバータ用ドライバ141またはインバータ用ドライバ142に含まれ得る。
【0047】
第3実施形態に係る電力変換装置100では、例えば、抵抗制御回路200が、直列に接続された複数のスイッチング素子5の各々にかかる電圧を監視し、電圧差が予め設定された閾値を超えるか否かに応じて電圧アンバランスの悪化を判定する。そして、抵抗制御回路200は、電圧アンバランスが小さいときにはアーム150内のすべてのバランス回路56のスイッチ10を開いて抵抗器11に電流が流れないようにし、電圧アンバランスが悪化したときにはアーム150内のすべてのバランス回路56のスイッチ10を閉じて抵抗器11に電流が流れるようにする制御を行う。抵抗制御回路200は、スイッチング素子5の温度を監視し、温度が閾値を超えたらスイッチ10を閉じるような制御を行ってもよい。
【0048】
一般に、スイッチング素子がターンオフしている時の抵抗は、温度に依存する。温度が上昇するとスイッチング素子の抵抗は小さくなる。スイッチング素子の抵抗が小さくなるとより多くの電流が流れるため、スイッチング素子自体の抵抗のばらつきに起因する電圧アンバランスが大きくなる。電圧アンバランスを抑制するには、そのような抵抗のばらつきを考慮して、スイッチング素子自体の抵抗よりも小さい抵抗を接続する必要がある。しかし電圧アンバランスを抑制するために抵抗を小さくすると、より大きな電流を流さなければならず、電力損失が大きくなる。一方、スイッチング素子にかかる電圧が耐圧以下であれば、常時、複数のスイッチング素子間の電圧バランスを均一に保つ必要はない。
【0049】
そこで、バランス回路56は、スイッチ10の開閉を抵抗制御回路200で制御して抵抗器11に電流が流れるかどうかを切り替えることにより、電力損失が抑えられるようにしている。なお、バランス回路56は、第2実施形態で説明したコンデンサ6をさらに備えてもよい。
【0050】
(3-2)効果
バランス回路56は、並列に接続された、抵抗値が比較的大きい抵抗器1と、比較的小さい抵抗器11と、を備え、抵抗制御回路200およびスイッチ10により、通常時には抵抗器1だけで電圧のバランスを取り、電圧アンバランスが悪化したときだけ抵抗器11を併用可能とする。抵抗値が大きい抵抗器1だけを使用している間は、バランス回路56に流れる電流が減少するので、電力損失を低減することができる。
【0051】
第3実施形態に係る電力変換装置100は、バランス回路56および抵抗制御回路200を用いることにより、バランス回路50の効果に加えて、電力損失を最小限に抑えることができる。したがって、第3実施形態によれば、簡易な構成の追加により、損失を低減し、複数のスイッチング素子5をより効率的に活用でき、製造コストの増加を抑えた大容量の電力変換装置を提供することができる。
【0052】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る電力変換装置100は、素子電圧検出回路22をさらに備え、駆動回路4に代えてゲート制御回路21を備える点を除き、第1実施形態に係る電力変換装置100と同様の構成を有する。以下で主に第1実施形態との相違箇所について説明する。
【0053】
(4-1)構成
図7は、第4実施形態に係る電力変換装置100に用いることのできる回路構成例を概略的に示す。
【0054】
素子電圧検出回路(第2回路)22は、スイッチング素子5のドレイン電圧(第1端と第2端との間の電圧)を検出可能に接続される。
【0055】
ゲート制御回路(第3回路)21は、素子電圧検出回路22と、ゲート端子Gと、に接続される。ゲート制御回路21は、コンバータ用ドライバ141またはインバータ用ドライバ142に含まれる回路である。ゲート制御回路21は、第1のゲート電圧源および第2のゲート電圧源と、ゲート電圧切替器と、を備える。ここでは一例として、第1のゲート電圧源および第2のゲート電圧源はコンデンサにより構成されており、第2のゲート電圧源の電圧は、第1のゲート電圧源の電圧よりも大きいものとする。ただし、印加するゲート電圧を異なる値とする構成であれば良く、第1の電圧源に対してバイアス電圧を印加することで第2の電圧源とする構成や、異なる抵抗値を有するゲート抵抗を切り替えることで第1の電圧源と第2の電圧源に相当する電圧が印加される構成としても良い。
【0056】
ゲート制御回路21は、ゲート電圧切替器により、素子電圧検出回路22によって検出されたドレイン電圧をもとにゲート端子Gに印加されるゲート電圧を制御する。ゲート電圧切替器は、素子電圧検出回路22によって検出されたドレイン電圧を取得し、取得したドレイン電圧をあらかじめ設定された閾値と比較する。ゲート電圧切替器はまた、ドレイン電圧と閾値との比較結果に応じて第1のゲート電圧源の電圧または第2のゲート電圧源の電圧をゲート電圧として印加するかを切り替える。ゲート電圧切替器は、例えば比較器を含む回路などのハードウェアにより実装されてもよいし、比較プログラムなどのソフトウェアにより実装されてもよい。
【0057】
ゲート制御回路21は、例えば、素子電圧検出回路22により検出されたドレイン電圧があらかじめ設定された閾値を超えるかどうかを監視し、閾値を超えた場合にサージ電圧が発生したと判定する。サージ電圧が発生したと判定した場合、ゲート制御回路21は、サージ電圧を抑制するため、ゲート電圧切替器を制御し、通常のスイッチング時に用いる第1のゲート電圧源の電圧よりも大きい第2のゲート電圧源の電圧を印加することにより、ゲート電圧を高める制御を行う。
【0058】
素子電圧検出回路22は、アーム150内の複数の半導体スイッチング素子5の各々の素子電圧を取得するように構成される。あるいは半導体スイッチング素子5の各々に1つずつ、半導体スイッチング素子5と同数の素子電圧検出回路22が接続されてもよい。ゲート制御回路21は、それら1または複数の素子電圧検出回路22から各半導体スイッチング素子5の素子電圧を受け取る。ゲート制御回路21は、複数の半導体スイッチング素子5の各ゲート端子Gに接続され、ゲート電圧を制御する。複数の半導体スイッチング素子5の各々に1つずつ、半導体スイッチング素子5と同数のゲート制御回路21が配置されてもよい。
【0059】
第4実施形態に係る電力変換装置100は、バランス回路50の代わりに、第2実施形態で説明したバランス回路55、または第3実施形態で説明したバランス回路56を備えてもよい。
【0060】
(4-2)効果
一般に、スイッチング素子は、ゲート端子に接続された駆動回路からの駆動信号によりオン/オフを切り替えられる。例えば、ゲート電圧がプラスからマイナスへ切り替えられると、スイッチング素子はオンからオフに切り替えられる。この時、電流が遮断され、スイッチング素子に過電圧(サージ電圧)が発生する。ここで、直列に接続されたスイッチング素子のうち、先にターンオフしたスイッチング素子の損失が大きくなり、電圧アンバランスを生じることがある。
【0061】
第4実施形態に係る電力変換装置100は、スイッチング素子5間の基本的な電圧アンバランスをバランス回路50によって抑制し、事故時などのサージ電圧をゲート制御回路21および素子電圧検出回路22によって抑制する。ゲート制御回路21および素子電圧検出回路22を用いることにより、バランス回路50を小さくすることが可能になる。また、ゲート制御回路21および素子電圧検出回路22によりゲート電圧を制御することで、サージ電圧発生前から電流変化率di/dtを制御することも可能である。サージ電圧は、回路インダクタンスと電流変化率の積で決まるため、ターンオフ時の電流変化率di/dtを小さくすることができれば、サージ電圧も抑制することができる。
【0062】
第4実施形態に係る電力変換装置100は、受動回路でないゲート制御回路21および素子電圧検出回路22を追加で備えるが、その分バランス回路50を小さくできるので、全体として見れば比較的小型で安価な構成になる。したがって、第4実施形態によれば、電力変換装置100を必要以上に大型化することなく、直列に接続された複数のスイッチング素子5を効率的に活用することができ、製造コストの増加を抑えた大容量の電力変換装置を提供することができる。
【0063】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る電力変換装置100は、アーム150内で直列に接続される複数のスイッチング素子5として、同一パッケージのスイッチング素子5または同一ソースインダクタンスを有するスイッチング素子5を使用する点を除き、第1実施形態に係る電力変換装置100と同様の構成を有する。
【0064】
(5-1)構成
図8は、第5実施形態に係る電力変換装置100の構成例を説明するための図である。
第5実施形態に係る電力変換装置100は、アーム150内に、パッケージ24Aと、バランス回路50Aと、パッケージ24Bと、バランス回路50Bと、を備える。
【0065】
パッケージ24Aとパッケージ24Bとは、同一仕様のパッケージであり、直列に接続される。ここでは「パッケージ」は、半導体スイッチとして流通し得る単位であって、例えば半導体スイッチング素子と半導体スイッチング素子周辺の構成を含むパッケージ製品である。
【0066】
パッケージ24Aは、スイッチング素子5Aと、ソースインダクタンス23Aと、制御端子G,Eと、を備える。パッケージ24Bは、スイッチング素子5Bと、ソースインダクタンス23Bと、制御端子G,Eと、を備える。パッケージ24Aとパッケージ24Bとは、同一仕様のパッケージであるので、スイッチング素子5Aとスイッチング素子5Bの特性差は比較的小さく、ソースインダクタンス23Aとソースインダクタンス24Bの値の差は比較的小さい。
【0067】
バランス回路50Aおよび50Bは、第1実施形態で説明したバランス回路50である。バランス回路50Aは、パッケージ24Aのスイッチング素子5Aのゲート・ドレイン間に接続される。バランス回路50Bは、パッケージ24Bのスイッチング素子5Bのゲート・ドレイン間に接続される。
【0068】
バランス回路50Aおよび50Bは、バランス回路50の代わりに、第2実施形態で説明したバランス回路55、または第3実施形態で説明したバランス回路56であってもよい。バランス回路50Aおよび50Bは、第4実施形態で説明したゲート制御回路21および素子電圧検出回路22をさらに備えてもよい。
【0069】
図8はアーム150内に2つのスイッチング素子5Aおよび5Bが直列に接続された例を示しているが、アーム150内に3つ以上のスイッチング素子5が直列に接続された場合も同様に、電力変換装置100は、各スイッチング素子5として同一仕様のパッケージのスイッチング素子5を使用する。
【0070】
(5-2)効果
一般に、スイッチング素子がスイッチングするときの電流変化率は、非常に高い。スイッチング素子の内部の配線にはインダクタンス(ソースインダクタンス)が存在し、このインダクタンスと電流変化率の積による電圧が発生する。一方で、スイッチング素子の制御端子間にはゲート駆動回路が接続され、所定の電圧が印加されている。スイッチング素子のゲート・ソース間電圧は、過渡時、閾値電圧などで決まるミラー電圧となる。ソースインダクタンスが無ければ、ゲート駆動回路の電圧とミラー電圧の差分で決まる電圧がスイッチング素子の制御端子に印加され、ゲートに電流が流れる。しかし、ソースインダクタンスがあるため、ゲート電流はさらに抑制される。直列に接続されたスイッチング素子間で構造が異なると、このソースインダクタンスが異なるため、同じゲート電圧を印加したとしてもゲート電流に差が生じてしまう。これにより、直列に接続されたスイッチング素子間に電圧アンバランスが発生する。また、例えば1つのパッケージ内に複数のスイッチング素子が直列に接続されたモジュールは、モジュール内のスイッチング素子間の特性差が大きいものも多い。そのため、電力変換装置100のアーム150にパッケージ化されたモジュールを用いると、アーム150内の素子間の電圧アンバランスが大きくなる可能性がある。
【0071】
そこで第5実施形態に係る電力変換装置100では、1in1モジュールなど、複数のスイッチング素子5として同一仕様のものを用いている。これにより、アーム150内で直列に接続された複数のスイッチング素子5のソースインダクタンスを合わせることができ、スイッチング素子5間の電圧アンバランスを抑制することができる。したがって、第5実施形態によれば、複雑な構成を追加することなく、直列に接続された複数のスイッチング素子5を効率的に活用することができ、製造コストの増加を抑えた大容量の電力変換装置を提供することができる。
【0072】
以上詳述したように、実施形態によれば、比較的簡易な構成を追加して電圧アンバランスを抑制し、アーム150内で直列に接続されたスイッチング素子5の効率的な活用を可能にすることにより、大容量の電力変換装置100をより低い製造コストで提供することができる。
【0073】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、スイッチング素子5の一例としてMOSFETを挙げて説明したが、これに限られない。上記実施形態は、IGBTなど、他の自己消弧形スイッチング素子を使用する場合にも適用可能である。
【0074】
また図1図8に関し、2つのスイッチング素子5が直列に接続される例を挙げて説明したが、これに限られない。上記実施形態は、さらに多数のスイッチング素子5がアーム150内で直列に接続される場合にも適用可能である。さらに、第1実施形態~第5実施形態で説明した構成は、組み合わせて使用されることもできる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
[付記1]
上アームと下アームとを含むレグを備え、前記上アームと前記下アームとの少なくとも一方が直列に接続された複数のスイッチング素子を備えた電力変換装置であって、
前記複数のスイッチング素子の各々が制御端子と第1端と第2端とを備え、
前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御端子と前記第1端との間に電気的に接続された第1抵抗器と、前記第1抵抗器と並列に接続された第1コンデンサと、を含む第1回路を備える、
電力変換装置。
[付記2]
前記第1回路と前記制御端子との間に接続された第2抵抗器をさらに含む、
付記1に記載の電力変換装置。
[付記2]
前記複数のスイッチング素子の各々の前記第1端と前記第2端との間に電気的に接続された第2コンデンサをさらに備える、
付記1または付記2に記載の電力変換装置。
[付記3]
前記第1コンデンサは、前記複数のスイッチング素子がターンオフする時に前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御端子に流入する電荷量に対して、前記複数のスイッチング素子間の前記制御端子に流入する電荷量のバランスをもとに予め決定された係数を乗じて得られる電荷量となる容量値以上の容量値を有する、
付記1乃至付記3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
[付記5]
前記第1回路は、
前記第1抵抗器と並列に接続された第3抵抗器と、
前記第3抵抗器と直列に、かつ前記第1抵抗器と並列に接続されたスイッチと
をさらに備える、付記1乃至付記4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
[付記6]
前記第1端と前記第2端との間の電圧を検出する第2回路と、
前記第2回路により検出された電圧に基づいて前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御端子に印加される電圧を調整する第3回路と
をさらに備える、付記1乃至付記5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
[付記7]
前記上アームと前記下アームの少なくとも一方が、1つの前記スイッチング素子を含むパッケージを複数備える、付記1乃至付記6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
[付記8]
前記複数のスイッチング素子の各々がソースインダクタンスを備え、前記ソースインダクタンスが同じインダクタンス値を備える、付記1乃至付記6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0076】
1…抵抗器、2…コンデンサ、3…共振抑制抵抗器、4…駆動回路、5,5A,5B…スイッチング素子、6…コンデンサ、10…スイッチ、11…抵抗器、21…ゲート制御回路、22…素子電圧検出回路、23A,24B…ソースインダクタンス、24A,24B…パッケージ、50,50A,50B,55,56…バランス回路、51…ボディダイオード、100…電力変換装置、110…コンバータ、120…インバータ、130…平滑コンデンサ、140…コントローラ、141,142…ドライバ、150…アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8