IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムヤン ホールディングス コーポレイションの特許一覧

特許7581052レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物
<>
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図1
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図2
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図3
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図4
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図5
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図6
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図7
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図8
  • 特許-レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】レナリドミドの経口用コーティング錠剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20241105BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241105BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K9/32
A61K9/36
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61P35/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020556288
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2019004473
(87)【国際公開番号】W WO2019199133
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0043593
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンヨブ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ミンヒョ
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】井上 千弥子
【審判官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0046315(US,A1)
【文献】特開2008-074770(JP,A)
【文献】特開2016-128391(JP,A)
【文献】特開2007-197410(JP,A)
【文献】特開2017-186331(JP,A)
【文献】国際公開第2006/011638(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106309403(CN,A)
【文献】特表2009-527460(JP,A)
【文献】特表2018-505193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レナリドミド、希釈剤、崩壊剤及び潤滑剤を含む素錠;及び
前記素錠をコーティングするコーティング層;
を含み、
レナリドミド1重量部に対して、前記希釈剤の含量が、10~20重量部であり、前記崩壊剤の含量が、0.1~1重量部であり、前記潤滑剤の含量が、0.1~1重量部であり、前記コーティング層の含量が、0.1~3重量部であり、
前記希釈剤が、無水ラクトースと微結晶セルロースの組み合わせ又はマンニトールと微結晶セルロースの組み合わせであり、
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム又はデンプングリコール酸ナトリウムであり、
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムであり、
前記コーティング層が、二重層であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルアルコールの組み合わせを含有し、素錠と接触する1次コーティング層がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、外部と接触する2次コーティング層がポリビニルアルコールを含有する、経口用錠剤。
【請求項2】
コーティング層の重量が、レナリドミド1重量部に対して、0.2~2.5重量部である請求項1に記載の経口用錠剤。
【請求項3】
コーティング層の膜厚が、15μm~150μmである請求項1に記載の経口用錠剤。
【請求項4】
素錠の硬度が、20N~300Nである請求項1に記載の経口用錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レナリドミドを含む経口用錠剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫は、形質細胞の異常な分化及び増殖を特徴とする血液癌である。これらの異常な形質細胞は、骨髄腫細胞(myeloma cell)と呼ばれている。主に男性(特に、黒人男性)及び65歳以上の高齢者から発生しており、近年、韓国では、発生率が徐々に増加している傾向にある。このような多発性骨髄腫の主な治療剤としては、ボルテゾミブ、サリドマイド及びレナリドミドがある。
【0003】
レナリドミドは、セルジーン社が経口用カプセル製剤として開発したものであり、25、20、15、10、7.5、5、2.5mgの用量で製品化されている。
【0004】
レナリドミドもサリドマイドの誘導体であるため、妊婦には絶対処方不可能である。そこで、レナリドミドは、薬物の意図しない流出により被害が生じないように硬質カプセル剤として市販された。即ち、サリドマイドと同様に厚い硬質カプセル剤に薬物を充填することによって薬物の流出、消失を制御した。
【0005】
韓国でのブランド名は、レブラミド(登録商標)カプセルであり、レナリドミド半水和物を含んでいる。硬質カプセル製剤であるレブラミド(登録商標)カプセルは、25、20、15、10mgの製剤の全ての場合において0号カプセルに充填されており、長軸が約2.17cmとかなり長くて、嵩張っている。従って、患者、特に高齢の患者は服用が不便であると感じることがある。更に、水で服用した場合でも、カプセルは嚥下中に喉や食道に張り付くことがある。この場合、たとえ患者が多量の水を飲んだとしてもカプセルはその部位から除去できないことがある。薬物が誤ってカプセルから放出されると、痛みを引き起こす可能性があり、場合によっては炎症を引き起こす可能性がある。従って、長さが短く、且つ容積の小さい錠剤形態が開発されれば、不便、且つ嵩高いカプセルによって引き起こされる前記問題を解決することができ、それにより、患者は、より容易に薬を服用することができる。即ち、カプセルの欠点を克服することができる。
【0006】
1950年代後半から1960年代にかけて、サリドマイドは妊婦のつわり防止剤として使用されたが、予期せぬ催奇形性の副作用により世界中で何万人もの奇形児が生まれたという悲劇的な出来事があった。サリドマイドと類似するレナリドミドは、催奇形性の副作用があるので、妊娠中の女性、妊娠可能年齢の女性又は妊娠可能性の女性に投与又は治療することは禁止されている。このような副作用の防止のために、カプセル剤を製造する際に厚いゼラチンカプセルが薬物を取り囲むようにして、安全な遮蔽を達成できると考えられる。しかし、錠剤(特に、素錠)の場合には、錠剤の表面に薬物が直接存在し、使用とは無関係の取扱者に暴露される可能性がある。患者が錠剤の分割線に沿って分割量を服用する場合、又は脆弱さのためにPTP包装から取り出す際に壊れた場合、又は摩損度が良くないため崩れている場合、取扱者及び周囲の人々に薬が曝される危険がある。
【0007】
また、レナリドミドを含有する錠剤の剤形は、臨床で検証されている市販のカプセル剤と同じ薬物放出速度及び放出パターンを発揮するように薬物を設計及び製造することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、市販の硬質カプセル剤のレナリドミド製剤の剤型を錠剤に変更し、長さが短くて、嵩高くなく、服用が容易であり、コーティング基剤の選定及びコーティング厚を適切に選択することにより、錠剤全体の一定厚さにわたって完全に包むことによって、内部の薬物と取扱者を互いに分離することができ、コーティング工程中に薬物が放出するのを防止することができる錠剤組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、溶出パターンがカプセル中のものと同等であり、比較溶出試験において理化学的同等性を示すだけでなく、実験動物及び生物学的同等性試験のインビボ試験においても同等性を示す錠剤組成物を提供することにある。
【0010】
したがって、本発明は、市販中のカプセル製剤と同様の薬理学的効能と効果を有しており、更に発展して、外観、服用及び取扱の便利性、製造容易性、安全性などが向上した錠剤組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
用語の意義
特に明記しない限り、本明細書に使用する幾つかの用語は以下のように定義され得る。
【0012】
文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、「含む」又は「含有する」は、任意の構成要素(又は構成成分)を特別な制限なしに含むことを意味し、他の構成要素(又は構成成分)を除外すると解釈すべきではない。
【0013】
また、「レナリドミド」は、レナリドミドベース(塩を含まない基剤)、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはその異性体、又はそれらの混合物であってもよい。また、それぞれの場合において様々な水和物であってもよく、また、それぞれの場合において様々な結晶形であってもよい。例えば、レナリドミド無水物、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物など種々の水和物又は種々の溶媒和物、又はそれらの混合物であってもよい。
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は、有効成分として、レナリドミド及び一つ以上の薬学的に許容される担体を含む素錠;及びそれをコーティングするコーティング層を含む経口用錠剤組成物;を提供する。ここで、前記担体は、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤を含むことができる。
【0015】
本発明の経口用錠剤組成物は、素錠の表面がコーティング基剤でコーティングされているので、内部の薬物と錠剤取扱者とを分離することができ、コーティング工程中に薬物が放出する恐れがながい。
【0016】
また、本発明は、適切な打錠圧で打錠して、適切な範囲の硬度を有するようにし、市販中のカプセル製剤と同じ溶出パターンが示されるようにする。
【0017】
一実施形態において、前記希釈剤は、糖、糖アルコール、セルロース、デンプン、無機塩、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよく;崩壊剤は、膨潤性崩壊剤、湿潤性崩壊剤、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよく;潤滑剤は、可溶性潤滑剤、不溶性潤滑剤及びそれらの混合物よりなる群からから1種以上選ばれていてもよい。
【0018】
一実施形態において、前記経口用錠剤組成物のコーティング層が、単層又は二重層以上であってもよい。
【0019】
一実施形態において、前記経口用錠剤組成物は、レナリドミド1重量部対比希釈剤0.5~200重量部、崩壊剤0.02~10重量部及び/又は潤滑剤0.005~3.5重量部を含むことができる。
【0020】
本発明において、前記希釈剤は、例えば、ラクトース(無水物又は水和物、例えば、一水和物)、セルロース粉末、微晶質セルロース、ケイ化微晶質セルロース、デンプン、糊化デンプン、炭酸カルシウム、シクロデキストリン、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、デキストレート、デキストリン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、ラクトース、微晶質セルロース、マンニトール、デンプン、又はそれらの混合物を選択してもよい。最も好ましくは、ラクトースと微晶質セルロースの混合物を選択してもよく、希釈剤は、結合剤としても作用し得る。
【0021】
一実施形態において、前記希釈剤は、レナリドミド1重量部に対して、例えば、2~50重量部、又は2~45重量部、又は5~30重量部、又は10~20重量部の量で使用してもよい。希釈剤の使用量が前記範囲より遙かに少ない場合、錠剤を製造することが困難である。一方、希釈剤が、前記範囲より遥かに多いと、薬物の濃度が低くなる可能性があるため、錠剤製造時の内容物均一性の確保に問題が生じる可能性がある。
【0022】
本発明において、前記崩壊剤は、例えば、デンプン、セルロース、架橋高分子、ガム類、多糖類、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。例えば、クロスカルメロースナトリウム(CrosCMC-Na)、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、L-HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、キシラン、ジェランガム、キサンタンガム、部分加水分解されたデンプン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、L-HPC、デンプングリコール酸ナトリウムであってもよい。より好ましくは、クロスカルメロースナトリウムであってもよい。
【0023】
一実施形態において、前記崩壊剤は、前記崩壊剤は、レナリドミド1重量部に対して、例えば、0.05~10重量部、又は0.1~5重量部、又は0.2~1.5重量部、又は0.1~1重量部の量で使用してもよい。崩壊剤の使用量が前記範囲より遙かに少ないと、崩壊速度の遅延により溶出速度の遅延が問題となる場合がある。一方、崩壊剤が、前記範囲より遥かに多いと、圧縮不良又はコーティング不良など、生産性に問題が生じる可能性がある。
【0024】
本発明において、前記潤滑剤は、潤滑剤、粘着防止剤、流動促進剤を包括する概念である。例えば、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はポテトデンプン)、タルク、高分散(コロイド)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硬化植物油、硬質流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、三酢酸グリセリル、スクロースモノラウラート、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。前記潤滑剤は、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、高分散(コロイド)シリカであってもよい。より好ましくはステアリン酸マグネシウムであってもよい。
【0025】
一実施形態において、前記潤滑剤は、レナリドミド1重量部に対して、例えば0.05~10重量部、又は0.1~5重量部、又は0.1~1重量部、又は0.1~0.5重量部の量で使用してもよい。潤滑剤使用量が前述した範囲より過度に少なければ打錠障害など生産性に問題があり得、反対に前述した範囲より過度に多ければ溶出遅延や生産性に問題があり得る。
【0026】
本発明において、コーティング基剤は、水性高分子であってもよく、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、アクリル酸及びその塩の重合体、ポリメタクリレート、ポリ(ブチルメタクリレート,2-ジメチルアミノエチルメタクリレート,メチルメタクリレート)共重合体(例えば、オイドラギット(登録商標)E、エボニック(Evonik))、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩及びカルシウム塩)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、L-HPC(低置換度のHPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)VA64、BASF社製)、ゼラチン、グァーガム、部分加水分解デンプン、アルギネート、キサンタン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、前記コーティング基剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、ポリ(ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)共重合体(例えば、オイドラギット(登録商標)E、エボニック(Evonik))であってもよい。
【0027】
一実施形態において、前記コーティング層は、レナリドミド1重量部に対して、例えば、0.05~10重量部、又は0.1~3重量部、又は0.1超~3未満、又は0.2~2.5重量部、又は0.5~2重量部の量で使用してもよい。コーティング基剤の使用量が前記範囲より遙かに少ないと、素錠全体がコーティング基剤で覆われないという問題がある。一方、コーティング基剤の使用量が前記範囲より遥かに多いと、溶出速度が過度に遅れる可能性がある。
【0028】
錠剤を半分に切断した後のコーティング層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定することができる。このとき、錠剤全面が一定の膜厚で均一にコーティングされていることが好ましく、平均膜厚は5個以上の錠剤を測定して平均することにより求めることができる。断面を観察したとき、コーティング層の平均膜厚は、1μm以上300μm以下であってもよい。より好ましくは10μm以上200μm以下、更に好ましくは15μm以上150μm以下、最も好ましくは20μm以上100μm以下であってもよい。コーティング層の平均膜厚が前記範囲より薄いと、錠剤全体を均一にコーティングすることが困難となり、取扱時に粉塵が発生することがある。コーティング層の平均膜厚が前記範囲より厚いと、溶出遅延、過剰の処理時間などの理由により、所望の目的が達成できない場合がある。
【0029】
前記コーティング層を単層で形成する場合は、1種類以上のコーティング基剤を混合して用いてもよく、錠剤全体を十分量のコーティング基剤で被覆してコーティング層を形成してもよい。前記コーティング層は、二層以上であることが好ましい。例えば、二層を超える層でコーティングする場合、各層は、錠剤を薬物への暴露、水分、酸化などから保護するために異なるコーティング基剤で作製してもよい。二重コーティング時、外部環境からの保護力を上昇させることができる。素錠と直接的に接触する1次コーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)VA64、BASF社製)、ポリエチレングリコール(PEG)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC)又はそれらの組み合わせであってもよく、前記1次コーティング上にさらにコーティングする2次コーティング基剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、ポリ(ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)共重合体(例えば、オイドラギット(登録商標)E、エボニック)、ゼラチン、グァーガム、部分的に加水分解されたデンプン、アルギネート、キサンタン又はそれらの組み合わせであってもよい。一実施形態において、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いた1次コーティングを行って薬物に対するバリアを形成し、次いでマクロゴールポリビニルアルコールグラフト重合体を用いた2次コーティングを行って最終的に二層のコーティング層を形成することが好ましい。一実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)による1次コーティングを行って薬物に対するバリアを形成し、次いでポリビニルアルコール(PVA)による2次コーティングを行って防湿バリアを形成することによって、より優れた機能を有する二層コーティング層を形成することができるが、これに限定されない。
【0030】
コーティング中に薬物がコーティング液によって瞬間的に溶解して、コーティング層に含まれるのを防止するために、コーティング液の製造に使用する溶媒の種類及び組成を慎重に選択する必要がある。更にコーティング条件は、コーティング液を素錠にコーティングした後、迅速に乾燥し得る条件を確立する必要がある。コーティング溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、塩化メチレン、イソプロピルアルコール、水など、又はそれらの混合溶媒であってもよいが、それらに限定されない。好ましくは、エタノール、水、又はそれらの混合物を使用することができる。より好ましくはエタノールと水の混合物、塩化メチレンとエタノールの混合物、又はイソプロピルアルコールとエタノールの混合物を用いて1次コーティングを形成し、次いで水を用いて2次コーティングを形成することができる。
【0031】
前述のようなコーティング錠を製造する過程で、更に、コーティング効率、薬物安定性、外観、色、保護、維持、結合、性能、及び製造方法などを改善する目的のために、種々のさらなる生物学的に不活性な成分を使用することができる。
【0032】
一実施形態において、前記コーティング層に更に含まれてもよい生物学的に不活性な成分は、可塑剤、潤滑剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、発泡剤、消泡剤、パラフィン、及びワックスなどよりなる群から選ばれた1種以上であってもよい。
【0033】
コーティング層に更に含まれてもよい前記可塑剤は、例えば、トリエチルシトラート、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びセトステアリルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0034】
前記可塑剤は、各コーティング層に使用される全高分子の乾燥重量を100重量%としたとき、100重量%以下(例えば、0~100重量%又は0.1~100重量%)、具体的に50重量%以下(例えば、0~50重量%又は0.1~50重量%)、より具体的に30重量%以下(例えば、0~30重量%又は0.1~30重量%)で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0035】
コーティング層に更に含まれてもよい前記潤滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、タルク、高分散(コロイド)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、グルセリルモノステアレート、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であっても、これに限定されない。前記潤滑剤は、各コーティング層に使用される高分子の全乾燥重量を100重量%としたとき、100重量%以下(例えば0~100重量%又は0.1~100重量%)で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0036】
本発明の錠剤組成物は、有効成分として、レナリドミド及び一つ以上の薬学的に許容される担体を混合し、混合物を圧縮して、コーティング前錠剤(素錠)を製造した後、素錠の表面をコーティング基剤でコーティングすることを含む、本発明の経口用錠剤組成物の製造方法を提供する。
【0037】
具体的に、本発明の錠剤は、原料成分の称量後、顆粒化、混合、打錠、コーティングの順で製造するか、原料成分の称量後、混合、打錠(直接打錠)、コーティングの順で製造することができる。顆粒化は、乾式顆粒、湿式顆粒などの方式で行うことができる。
【0038】
一実施形態において、湿式顆粒で顆粒化する場合、顆粒は、結合剤溶液を製造し、薬物と共に希釈剤などの混合物から顆粒を形成し、篩分けし、乾燥することによって得られる。その後、残りの成分を混合してから圧縮した。前記結合剤溶液は、水溶性高分子、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、L-HPC(低置換度のHPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)VA64、BASF社製)、又は糖類、糖アルコール類、例えば、白糖、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトールなどを水やエタノール又はこれらの混合溶液に溶解して製造することができる。
【0039】
一実施形態において、乾式顆粒で顆粒化する場合、ローラーコンパクター等を用いて薬物、希釈剤及び結合剤の混合物をプレスし、篩分けした。その後、残りの成分を混合してから圧縮した。
【0040】
顆粒化の代わりに直接圧縮は、原料の称量直後に成分を混合し、圧縮するので、工程が簡単になるという長所がある。薬物自体に催奇形性の副作用があるため、製造工程中に保護具を着用する必要がある。妊婦や妊娠可能性のある女性は排除した方が良い。更に、作業者の薬物への暴露が最小限に抑えられる直接圧縮を使用することが好ましい場合があるが、それに限定されない。
【0041】
素錠の硬度は、錠剤の形状と重量、大きさによって異なるが、最大平均硬度300N、最小平均硬度20Nが好ましい。好ましくは、最大平均硬度250N、最小平均硬度30Nである。より好ましくは、最大平均硬度230N、最小平均硬度35N、特に、40N~200Nである。素錠の硬度が前記範囲より遙かに高い場合、崩壊遅延による薬物の放出が遅延する可能性がある。一方、素錠の硬度が前記範囲より遥かに低いと、錠剤が、コーティング中、輸送中、保管中、及び服用中に脆くなって割れることがある。
【0042】
前記硬度とは、長方形の錠剤の場合、長軸上で測定した値をいい、無作為に選んだ6個の錠剤の平均硬度を意味する。
【0043】
本発明において、素錠の崩壊時間は、薬物の放出時間を決定することができる重要な要素の1つである。従って、打錠工程中に適切な圧力で圧縮することによって適切な硬度を有することが必要である。その結果、錠剤は所望の崩壊時間を有することができ、それはコーティング工程におけるコーティング基剤のコーティング量に加えて、薬物の溶出パターンを決定する要因になり得る。溶出パターンは、体内の吸収に影響を与えるので、適切な打錠圧によって適切な硬度を提供することによって、適切な崩壊時間を設定することが重要になる場合がある。更に、薬物の溶出パターンは、たとえ投与量が変わっても同じでなければならない。すなわち、崩壊時間は、異なる用量を有する全ての錠剤について同じでなければならない。
【0044】
崩壊時間の測定は、第1の試験液であるpH1.2緩衝液中で、韓国薬局方の一般試験法の第10版(KP X)中のNo.17崩壊試験法に従って測定することができる。崩壊時間は6個の錠剤を測定し、平均することにより決定される。一実施形態において、素錠の平均崩壊時間は、1分~20分である。好ましくは1分30秒~15分、より好ましくは2分~10分、更に好ましくは2分30秒~8分、更に一層好ましくは3分~6分、最も好ましくは3分30秒~5分30秒である。本発明において、素錠に形成されるコーティング層は、単層、二層以上、より好ましくは二層以上であってもよい。
【0045】
コーティングのための溶媒は、変動し得る。例えば、HPMCコーティングの場合、溶媒は、無水エタノールと水を2:8~8:2の間の比率で有していてもよく、又は水単独であってもよい。更に、例えば、水を単独でPVAのコーティング用の溶媒として使用することができる。これらの溶媒はすべてコーティング工程中に揮発し、最終製品中には実質的に残留しない。
【0046】
前記錠剤には、錠剤の物理的な特性、製造性、圧縮性、外観、薬物の味及び/又は安定性などを改善するために、更に各種添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、例えば、安定化剤、可溶化剤、甘味剤、矯味剤、顔料、湿潤剤、充填剤、安定化剤、界面活性剤、潤滑剤、可溶化剤、緩衝剤、甘味剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁化剤、硬化剤、抗酸化剤、光沢剤、着香剤、香味剤、顔料、コーティング剤、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、咀嚼剤、静電防止剤、着色剤、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘増剤、発泡剤、pH調節剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、防水剤、防腐剤、保存剤、溶解補助剤、溶剤、及び流動化剤などを含むが、それらに限定されるものではなく、薬学的に許容されるのであれば任意に添加剤を使用することができる。
【0047】
本発明のコーティング錠剤は、カプセルに製造された比較製剤の溶出率と同等の溶出率を示すことができる。特に、2.5分、5分、10分、15分などでの初期溶出率は、pH1.2の緩衝溶液などの酸性条件において重要である。レナリドミドは、pH依存性の溶解度を有しており、体内のどの部位で崩壊されるかによって、薬物の溶解度及び吸収に影響を与えることになる。特に、低いpHで薬物の溶解度が高いため、服用後、胃での放出パターンが薬物吸収パターンを決める主な因子と言える。したがって、製剤の崩壊時間及び溶出パターンを対照薬と類似に調整することが同じ薬物吸収パターンを確保するのに重要な要件となる。
【0048】
溶出試験は、韓国薬局方の第10版(KP X)中の一般試験法のうち、No.35溶出試験法に準じて、第2の方法であるパドル法に従い、37℃、50回転/分で行う。ある時点での平均溶出率は、6個の錠剤のそれぞれを試験し、各時点でのそれらの溶出率をHPLCで測定することによって得ることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明に開示されるレナリドミドを含む錠剤組成物は、服用の便宜性、取扱性、安全性などが一層改善された錠剤形態の組成物として有用に使用することができる。特に、コーティング層によって内部の薬物と取扱者を分離することができるため、催奇形性のあるレナリドミド薬物がコーティング層に放出しなくなることによって、コーティング層に接触しても薬物と接触されなくなる。また、pH1.2の緩衝溶液と同じ酸性条件で2.5分、5分、10分、15分など初期の溶出率が重要であるが、本発明による錠剤組成物は、従来、市販中のカプセル剤の溶出と同じパターンを示した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例2と比較例1をpH1.2の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図2】実施例2と比較例1をpH4.0の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図3】実施例2と比較例1を水の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図4】実施例2と比較例1をpH6.8の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図5】実施例3と比較例1をpH1.2の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図6】実施例3と比較例1をpH4.0の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図7】実施例3と比較例1を水の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図8】実施例3と比較例1をpH6.8の溶出液で溶出比較試験した結果を示したグラフである。
図9】実施例1で得られた錠剤の表面をFT-IR分析した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0051】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明を例示することのみを目的としており、本発明の範囲はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0052】
実施例1及び比較例1
下記表1のような成分及び含量で下記製造方法に従って実施例1の錠剤を製造した。比較例1としては、市販中のレブラミド25mgカプセルを使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
<素錠の製造>
レナリドミドと無水ラクトースを篩過し、混合した。その後、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウムを篩過し、最後に混合した。長方形のパンチ(punch)で混合物を圧縮した。素錠の硬度は、120Nであった。
【0055】
<素錠のコーティング>
前記で製造された錠剤を、薬物遮蔽を目的として素錠に対して、合計7.5%(w/w)量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2.5%(w/w))した後、主成分としてPVAを含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(5%(w/w))を行った。
【0056】
比較例2
下記表2のような成分及び含量で下記製造方法に従って比較例2の錠剤を製造した。
【0057】
【表2】
【0058】
<素錠の製造>
レナリドミドと無水ラクトースを篩過し、混合した。その後、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、AEROSIL、ステアリン酸を篩過し、最後に混合した。長方形のパンチで混合物を圧縮した。素錠の硬度は15Nであった。
【0059】
<素錠のコーティング>
前記製造された素錠に対し、実施例1の素錠のコーティングと同じ方法で二重コーティングを行った。
【0060】
実施例2
下記表3のような成分及び含量で下記製造方法に従って実施例2の錠剤を製造した。
【0061】
【表3】
【0062】
<素錠の製造>
レナリドミドと噴霧乾燥マンニトールを篩過し、混合した。その後、米結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムを篩過し、最後に混合した。長方形のパンチで混合物を圧縮した。素錠の硬度は143Nであった。
【0063】
<素錠のコーティング>
前記で製造された錠剤を、薬物遮蔽を目的として素錠に対して、合計7.5%(w/w)量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2.5%(w/w))した後、主成分としてPVAを含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(5%(w/w))を行った。
【0064】
実施例3
<素錠の製造>
素錠の硬度を155Nで圧縮したことを除いて、実施例2の素錠の製造と同じ成分、含量及び製造方法で素錠を製造した。
【0065】
<素錠のコーティング>
前記で製造された錠剤を、薬物遮蔽を目的として素錠に対して、合計7.5%(w/w)量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2.5%(w/w))した後、主成分としてPVAを含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(5%(w/w))を行った。
【0066】
実施例4
<素錠の製造>
素錠の硬度を163Nで圧縮したのを除いて、実施例2の素錠の製造と同じ成分、含量及び製造方法で素錠を製造した。
【0067】
<素錠のコーティング>
前記で製造された錠剤を、薬物遮蔽を目的として素錠に対して、合計7.5%(w/w)量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2.5%(w/w))した後、主成分としてPVAを含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(5%(w/w))を行った。
【0068】
試験例1: 摩損度測定
摩損度は、米国薬局方 1216 錠剤の摩損度試験項目に記載の方法により、10個の錠剤に対して、ファーマテスト摩損率試験機(Pharmatest friability tester)を用いて測定し、実施例1~4及び比較例2に対する素錠とコーティング錠との差を下記表4に示した(測定時間=4分)。
【0069】
【表4】
【0070】
一般的な生産工程において、摩損度は、0.2%以下に管理されなければならず、催奇形性を有する有効成分の特性上、作業者の安全のために、摩損度は低く管理することが好ましい。
【0071】
試験例2:崩壊試験
韓国薬局方の第10版の崩壊試験法に従って、pH1.2溶液中で実施例1~4及び比較例1~2の崩壊試験を行い(n=3)、その結果を下記表5に示した。
【0072】
【表5】
【0073】
実験結果、実施例1~4の組成物は、すべて比較例1(対照薬)と210秒~350秒の好ましい崩壊時間を示した。
【0074】
試験例3: 比較溶出
実施例2と比較例1(レブラミド(登録商標)カプセル製剤)を用いて、韓国薬局方第8版の一般試験法中、溶出試験法に従ってpH1.2及びpH4.0、pH6.8、水中で、経時的に溶出率を測定した。
各溶出時間に採取した試験液を用いて、液体クロマトグラフィーにより溶出率を測定した。その溶出ファイルを図1図4に示した。
<溶出条件>
溶出試験装置: 韓国薬局方溶出試験法のパドル法
試験液: pH1.2、pH4.0、pH6.8、水
回転速度: 50rpm
温度: 37℃
溶出基準時点:
5分、10分、15分、30分、45分(pH1.2、pH4.0)
5分、10分、15分、30分、45分、60分(pH6.8、水)
分析方法: HPLC分析法
【0075】
実験の結果、実施例2の組成物は、比較例1(対照薬)と同等程度(対照薬の溶出率が60%、85%時点で試験薬との溶出率の差が15%以内)の溶出パターンを示した。
【0076】
試験例4: 比較溶出
実施例3と比較例1(レブラミド(登録商標)カプセル製剤)を用いて、試験例3と同じ方法で比較溶出試験を行った。各溶出時間に採取した試験液を用いて、液体クロマトグラフィーにより溶出率を測定した。その溶出ファイルを図5図8に示した。
実験の結果、実施例3の組成物は、比較例1(対照薬)と同等程度の溶出パターンを示した。
【0077】
試験例5: 非臨床試験
実施例2及び実施例3で製造された試験物質レナリドミド錠剤(25mg用量)に対して、比較物質であるレブラミド(登録商標)カプセル(Celgene、25mg用量)と比較するために、ビーグル犬に経口投与後、血中レナリドミドの濃度を分析して、薬物動態プロフィールを確認した。
被験動物は、実験開始前、24時間絶食させた後、2つの群に分け、それぞれ試験物質と比較物質を空腹状態で水と共に経口投与した。試験後、24時間まで決められた間隔で採血し、2週間のwashout期間を経た後、交差試験を行った。採取した血液サンプルから血漿を分離し、それらを凍結保存した。試料をLC/MS/MS装置により分析して血中濃度を得た。当該データからAUC及びCmaxを算出し、その結果を下記表6に示した。
【0078】
【表6】
【0079】
実験の結果、実施例2及び3は、すべて比較例1に対して、生物学的同等性があることが評価された。
【0080】
試験例6: FT-IR
二重コーティングされた錠剤の表面から有効成分であるレナリドミド成分が検出されるかを確認するために、レナリドミドと実施例1のコーティング錠の表面と錠剤内部に対してFT-IR分析を行った。図9に、コーティング錠表面のFT-IR分析結果を示した。これにより、レナリドミド成分は、錠剤内部では検出されるが、表面では検出されなかったことを確認した。
【0081】
試験例7: コーティング率による錠剤の物性
実施例1の素錠を、オパドライ(PVA系)を用いて、素錠の重量対比5~32%のそれぞれ異なる割合でコーティングした錠剤を製造した。最終コーティング率は、錠剤重量対比コーティング後の重量の増加量で計算した。
【0082】
<コーティング率による崩壊時間>
韓国薬局方の第10版の崩壊試験法に従って製造したコーティング別錠剤に対して、pH1.2溶液中で崩壊試験を行い(n=3)、その結果を下記表7に示した。
【0083】
<コーティング率によるコーティング層の膜厚>
コーティング層の平均膜厚は、錠剤を半分に切断した後、コーティング層の平均厚さを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、5個の膜厚値の平均を記録し、下記表7に示した。
【0084】
【表7】
【0085】
試験の結果、コーティング率5%~13%のとき、崩壊時間が適していることが分かった。
【0086】
試験例8: コーティング剤含量による錠剤の物性
実施例2の成分、含量及び製造方法を基準に、コーティング剤含量比を下記表8のようにして崩壊速度及び摩損度を測定した。
【0087】
【表8】
【0088】
主成分1重量部に対して、コーティング剤を0.1重量部にしてコーティングした場合、コーティング前の素錠とほとんど差がないことを確認した。したがって、コーティング効果がほとんどないと言える。
また、主成分1重量部に対して、コーティング剤を3重量部にしてコーティングした場合、崩壊時間が過度に長くなる問題が生じた。
摩損度が0.5%以下、崩壊時間が210~350秒(3分30秒~5分)の場合、適すると判定した。
【0089】
試験例9.レナリドミドの生物学的同等性試験
実施例1で製造した試験物質レナリドミド錠剤(25mg用量)と比較例1のレブラミド(登録商標)カプセル(Celgene、25mg用量)とを比較するために、41人の健常な男性志願者に対して、生物学的同等性試験を実施した。
被験者を2群に分け、絶食下で試験物質と比較物質を水で与え、24時間までの間、所定の間隔で血液を採取した。2週間後、群を変えて同じ薬を試験した。血液を採取し、採取した血液サンプルから血漿を分離し、それらを凍結保存した。試料をLC/MS/MS装置により分析して血中濃度を得た。当該データからAUC及びCmaxを算出し、その結果を下記表9に示した。
【0090】
【表9】
【0091】
前記データから実施例1の錠剤は、比較例1の剤形と対比するとき、生物学的同等性があることが評価された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9