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特許7581055新規なヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びそれを生成するための方法
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  • 特許-新規なヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びそれを生成するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】新規なヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びそれを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
C08B37/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020573107
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 FR2019051602
(87)【国際公開番号】W WO2020002851
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】1855952
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1902375
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】クロティルド ビュフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル デラートレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ヴィアッツ
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102040675(CN,A)
【文献】特表2018-517046(JP,A)
【文献】特表昭61-500788(JP,A)
【文献】特開2016-153401(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102558394(CN,A)
【文献】特表2017-500310(JP,A)
【文献】特表平10-504351(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108034010(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-シクロデキストリン(β-CD)及び水酸化ナトリウムを含む水溶液を調製するステップ(a)において、使用される水酸化ナトリウムの量がβ-CDの乾燥重量に対する水酸化ナトリウムの乾燥重量で3.7%未満であるステップ(a)と;
ステップ(a)で得られた前記水溶液にプロピレンオキシドを添加するステップ(b)において、
- 前記プロピレンオキシドの導入前のステップ(a)で得られた前記水溶液の温度が、80℃~120℃の範囲内で選択される;
- 使用される前記プロピレンオキシド/無水グルコースのモル比が、0.70/1.00~0.86/1.00の範囲内で選択される;
- プロピレンオキシドの添加速度が、β-CDの0.15~0.30kg/h/kgの範囲内で選択される;
ことを特徴とするステップ(b)と:
有機溶媒を使用しないことを特徴とする精製ステップ(c)と;
このようにして得られたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを回収するステップ(d)と、
を含むことを特徴とする、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、及びその調製のために有用な新規な方法に関する。本発明はまた、賦形剤としてのこのHPβCDの使用に関する。本発明はまた、薬剤として使用するための、より詳細には、組織内でのコレステロールの過負荷、及び/又は貯蔵及び/又は蓄積に関連する疾患又は状態、ひいてはそれらの結果、例えば中枢神経系又は心血管系の特定の障害の治療又は予防のための、HPβCDに関する。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンは、デンプンの酵素分解に由来する環状オリゴ糖である。3つの最も一般的な天然シクロデキストリンは、α-1,4結合によって互いに結合された6、7又は8のα-D-グルコピラノース単位から椅子状の配置で構成される。それらは各々、より一般には、α、β、又はγ-シクロデキストリンと称される。それらの三次構造の外観は、シクロデキストリンの高度親水性部分を表すヒドロキシル基であるその外側で、切断された円錐体の形態である。シクロデキストリンの円錐体の内部又は空洞は、C及びC炭素による水素原子とさらにグリコシド結合に関与する酸素原子とから構成されることから、非極性がもたらされる。
【0003】
親水性外側部分及び疎水性空洞を有するシクロデキストリンは、親油性化合物又は基をカプセル封入するそれらの能力、ひいてはこれらの親油性化合物又は親油性基を有する化合物のプロテクター及び可溶化剤におけるそれらの役割として、一般に用いられる。それ故、それらは通常は、食品加工の分野だけでなくガレヌスにおいて見出され、その場合には医薬製剤中の賦形剤として用いられる。
【0004】
シクロデキストリンの無水グルコース単位は各々、C2、C3及びC6炭素に由来する、3つの反応性ヒドロキシル基を含む。それ故、これらのヒドロキシル基上で異なる基をグラフト化することにより、極めて多数の誘導体が既に合成されており、中でも、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、メチルシクロデキストリン及びスルホアルキルシクロデキストリンについて言及されることがある。
【0005】
特に、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、活性成分の経口又は非経口送達のためのガレヌスにおいて広範に用いられる。
【0006】
通常は、HPβCDは、β-シクロデキストリンを塩基性媒体中のプロピレンオキシドと反応させることによって得られ、その後反応物は、塩酸を添加することにより中和される。
【0007】
次に、粗反応生成物は、不純物、即ち典型的には:
- 試薬、例えば残留(未置換)β-シクロデキストリン;
- 塩、プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)、ジプロピレングリコールなどの反応副生成物;
- β-シクロデキストリンの分解生成物又はその直線構造;
- エンドトキシンなどの微生物学的生成物
を低減するため、精製される。
【0008】
この精製は、濾過、脱色、脱ミネラル化、エタノールによる洗浄、アセトンによる抽出
、透析などの1以上の処理を用いて実施される。
【0009】
規制上の観点から、特にHPβCDが医薬品市場向けである場合、要求される精製度は高い。これらの規制上の要求は、投与経路が侵襲的であると、さらに高まる。
【0010】
特に、HPβCDが、中枢神経系(CNS)の特定の疾患、例えばニーマン・ピック病C型などの特定の難病に対する好ましい効果を有することは知られている。これらの病態では、くも膜下腔内経路が好ましく、安全性への要求は非常に高い。
【0011】
したがって、好ましくは、HPβCDは、最大で0.71に等しい、好ましくは0.50~0.71の範囲内の平均モル置換度(MS)を有し、且つ可能な限り少ない不純物を有する必要がある。これらの不純物の中で、残留β-シクロデキストリン(β-CD)は、有毒な特性を呈し得るものとして同定されている。
【0012】
注目すべき技術的困難は、このMS範囲を残留β-CDの低含量と一致させることにある。当然ながら、このMS範囲は特に低い。低いMSのHPβCDの調製は、ヒドロキシプロピル化試薬があまり使用されないことを通常は意味する。それから、反応生成物がより多くの未反応のβ-CD、即ち残留β-CDを含有するということになる。
【0013】
しかしながら、このβ-CDは、除去するのが困難であるが、その含量が十分に減少すると、これによりMSにおける増加がもたらされる。というのは、後者が未置換β-CDを含むすべてのシクロデキストリン分子に基づいて決定されるからである。
【0014】
さらに、ヒドロキシプロピル化後、例えばプロピレングリコール又はジプロピレングリコールなどの反応副生成物を低減することも必要である。これはさらに、これらの他の副生成物の除去によりHPβCDの全乾燥質量が減少することから、β-CDの割合における増加をもたらす。ヒドロキシプロピル化後、プロピレングリコール含量は、例えば、当然ながら典型的には、乾燥重量で少なくとも5.0%に等しい。
【0015】
それ故、所定のMS及び所定のβ-CD含量を有するHPβCDを生成することは、特にこのMSが最大で0.71に等しい必要があり、且つβ-CD含量が可能な限り低い必要があることを考慮すると、困難である。プロピレングリコール及びジプロピレングリコールなどの副生成物を最小化することも所望される場合には、この困難さは増大する。
【0016】
国際公開第2016/201137号(VTESSE)の出願では、有機化合物との複合体形成、沈降、アルミナ上での吸着クロマトグラフィーを含む、HPβCDを精製するための様々な方法が提案されている。本特許出願では、減少したβ-CD含量及び0.71未満のMSを有するHPβCDを得ることができた。しかしながら、すべての精製プロセスは、この使用される有機溶媒、例えばアセトン又はメタノールを得ることを可能にする。
【0017】
これらの有機溶媒の使用には特に制約があり、それを使用する限りにおいては、特に取扱者の安全性を保証するため、厳しい監督が要求される。さらに、これらの溶媒は、最終生成物中の不純物として見出され、消費者にとっては毒性リスクを表す。
【0018】
それらの結果として、改善された安全性を有する、特に0.71以下である低いMSを有する、且つ特に後者が例えば静脈内又はくも膜下腔内に注射されることが意図されるときにおいて、HPβCDを提供するという需要は満たされなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の1つの目的は、特に賦形剤又は活性医薬成分として使用するための、改善された品質を有するHPβCDを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、特に活性薬剤、特に活性医薬成分の可溶化又は安定化に対して特に有効であるHPβCDを提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、先行技術の場合と対照的に、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル及びクロロホルムなどの望ましくない有機溶媒を含まないことがある、減少した含量の残留β-CDを有し、最大で0.71に等しいMSを有するHPβCDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
出願人はこれを、膨大な試験の後、最大で0.71に等しいMS、及び最大で0.3%(乾燥/乾燥)、好ましくは0.2%(乾燥/乾燥)以下のβ-CD含量を有するHPβCDの開発という結果に至り、達成している。
【0023】
さらに、本発明に係るHPβCDは、特に薬学的活性タンパク質の安定化に関して顕著な適用特性を有してもよい。
【0024】
このHPβCDは、特許出願の国際公開第2016/201137号中で用いられたHPβCDとは異なり、HPβCD精製プロセスから通常生じる有機溶媒を、有利には含まなくてもよい。
【0025】
事実、本発明のHPβCDは、有利には、水性媒体中で実施される新規プロセスによって得られてもよい。新規な方法では、溶液はヒドロキシプロピル化ステップにおいて、精製ステップよりも多く存在する。特に、出願人は、ヒドロキシプロピル化パラメータの賢明な選択により、本発明のHPβCDを得ることが可能になったことを示した。
【0026】
したがって、最終生成物中に必然的に見出される、望まれない有機溶媒を含む精製ステップを用いて調剤することは可能である。水性媒体中で実施される精製ステップは十分である。そのようにして得られたHPβCDは、0.71以下、特に0.50~0.71の範囲内のMSを有する。そのβ-CD含量は減少し、0.3%以下、好ましくは0.2%以下である。プロピレングリコール及びジプロピレングリコールなどの望ましくない反応副生成物もまた、減少し得る。
【0027】
したがって、本発明の第1の主題は、
- 0.71以下の平均モル置換度(MS)を有し;且つ
- 乾燥重量で0.3%以下、好ましくは0.2%以下の含量のβ-シクロデキストリン(β-CD)を有することを特徴とする、
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)である。
【0028】
本発明の別の主題は、
β-シクロデキストリン(β-CD)及び水酸化ナトリウムを含む水溶液を調製するステップ(a)において、使用される水酸化ナトリウムの量がβ-CDの乾燥重量に対する水酸化ナトリウムの乾燥重量で3.7%未満であるステップ(a)と;
ステップ(a)で得られた前記溶液にプロピレンオキシドを添加するステップ(b)において、
- プロピレンオキシドの導入前のステップ(a)で得られた溶液の温度が、80℃~120℃の範囲内で選択される;
- 使用されるプロピレンオキシド/無水グルコースのモル比が、0.70/1.00~0.86/1.00の範囲内で選択される;
- プロピレンオキシドの添加速度が、β-CDの0.15~0.30kg/h/kgの範囲内で選択される;
ことを特徴とするステップ(b)と:
有機溶媒を使用しないことを特徴とする精製ステップ(c)と;
このようにして得られたHPβCDを回収するステップ(d)と、
を含むことを特徴とする、本発明のHPβCDの調製に特に有用な、HPβCDを調製するための方法である。
【0029】
本発明の別の主題は、本発明のHPβCD調製方法によって得られるHPβCDである。
【0030】
本発明はまた、薬剤及び/又は賦形剤として、及び/又は物質をカプセル封入するため、及び/又は物質を水性媒体中に可溶化するため、及び/又は物質の化学的安定性を改善するため、及び/又は物質の生物学的膜への送達と生物学的膜を介した送達を改善するため、及び/又は物質の物理的安定性を増強するため、及び/又は液体形態から粉末形態にかけて物質を配合するため、及び/又は一方の物質ともう一方の物質との相互作用を阻止するため、及び/又は物質の局所若しくは経口投与後の局所刺激作用を低減するため、及び/又は皮膚などの特定組織内での物質の吸収を阻止するため、及び/又は物質の徐放性を得るため、及び/又は物質の味、特にその苦味をマスクするため、及び/又は物質の匂いをマスクするため、及び/又は物質のバイオアベイラビリティを改善するための、本発明に係るHPβCDの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】USP41 NF36からのヒドロキシプロピルベータデクス(HPβCD)のモノグラフを提示し、特許出願の説明の不可欠な部分である。
図2】USP41 NF36からのヒドロキシプロピルベータデクス(HPβCD)のモノグラフを提示し、特許出願の説明の不可欠な部分である。
図3】USP41 NF36からのヒドロキシプロピルベータデクス(HPβCD)のモノグラフを提示し、特許出願の説明の不可欠な部分である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
したがって、本発明は、0.71以下の平均モル置換度(MS)、乾燥重量で0.3%以下のβ-シクロデキストリン(β-CD)含量を有することを特徴とする、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)に関する。
【0033】
「HPβCD」との表現は、通常はHPβCD分子の混合物、さらにはその調製方法から得られる物質を包含することは、一般に理解されている。実際に、明確に定義された構造を有する化学物質に反するように、HPβCDは一般に、異なる置換プロフィール及びパターンを有し、それ故構造的に異なる、HPβCD分子の混合物に相当する。
【0034】
まず、本発明のHPβCDは、0.71以下のその平均モル置換度(MS)によって特徴づけられる。好ましくは、このMSは、0.50~0.71の範囲内で選択される。それは、より好ましくは0.70以下、好ましくは0.69以下である。好ましくは、このMSは、少なくとも0.58に等しい、即ち0.58~0.71の範囲内で選択される。さらに、このMSは一般に、少なくとも0.60に等しい、さらに少なくとも0.65に等しい。それは、典型的には0.66に等しいか、又は0.67に等しいか、又は0.68に等しいか、又は0.69に等しい。
【0035】
ここで、「平均モル置換度(MS)」が無水グルコース1単位あたりのヒドロキシプロピル基の平均数に相当することが想起される。MSが、シクロデキストリン1分子あたりのヒドロキシプロピル基の平均数に対応する平均分子置換度(DS)とは異なり、それ故、出発シクロデキストリンを構成する無水グルコース単位の数の関数であることは注目されるべきである。したがって、HPβCDの場合、β-シクロデキストリンが7つの無水グルコース単位からなることから、DSはMSの7倍に等しい。
【0036】
MSは、通常、好ましくは付録中に再現されたUSP41 NF36の「ヒドロキシプロピルベータデクス;モル置換」法に従い、プロトン核磁気共鳴(NMR)により、当業者によって決定され得る。
【0037】
上述のように、この混合物は、通常、残留天然β-シクロデキストリン(β-CD)分子、即ちヒドロキシプロピル化されないが有利には本発明のHPβCD中で低減される分子を含有する。
【0038】
したがって、本発明のHPβCDは、0.3%以下、好ましくは0.2%以下、好ましくは0.1%以下のβ-CD含量を有し、このパーセンテージはHPβCDの総乾燥重量に対するβ-CDの乾燥重量として表される。
【0039】
この残留β-CD含量は、通常、好ましくは付録中に再現されたUSP41 NF36の方法(「ヒドロキシプロピルベータデクス;ベータデクス、プロピレングリコール、及び他の関連物質の限度」)による手順に従い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、当業者によって決定され得る。
【0040】
好ましくは、本発明に係るHPβCDの置換パターンは、次の通りである:
未置換(no-OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、25.0%、好ましくは30.0%、好ましくは35.0%、好ましくは40.0%に等しい;及び/又は、
- 最大で、55.0%、好ましくは52.0%、好ましくは50.0%、好ましくは49.0%、好ましくは48.0%に等しい;及び/又は、
C2置換(2OHP)部分の割合は:
少なくとも15.0%、好ましくは20.0%、好ましくは24.0%、好ましくは25.0%、好ましくは26.0%、好ましくは27.0%、好ましくは28.0%、好ましくは28.5%に等しい;及び/又は、
- 最大で、35.0%、好ましくは31.0%、好ましくは30.5%に等しい;及び/又は、
C3置換(3OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、5.0%、好ましくは6.0%、より好ましくは7.0%に等しい;及び/又は
- 最大で、10.0%、好ましくは9.0%、好ましくは8.0%に等しい;及び/又は、
C6置換(OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、1.0%、さらには2.0%に等しい;及び/又は
- 最大で、10.0%、好ましくは7.0%、好ましくは6.0%、好ましくは5.0%、好ましくは4.0%に等しい;及び/又は、
C2及びC3置換(2,3-ジ-OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、5.0%、好ましくは8.0%、好ましくは9.0%に等しい;及び/又は、
- 最大で、25.0%、好ましくは20.0%、好ましくは15.0%、好ましくは12.0%、好ましくは11.0%、好ましくは10.0%に等しい;及び/又は、
C2及びC6置換(2,6-ジ-OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、1.0%、好ましくは2.0%に等しい;及び/又は、
-最大で、10.0%、好ましくは6.0%、好ましくは5.0%、好ましくは4.0%に等しい;及び/又は、
2回のC3置換(3,3’-ジ-OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、0.2%、好ましくは0.3%、より好ましくは0.5%に等しい;及び/又は
- 最大で、2.0%、好ましくは1.5%、好ましくは1.0%、好ましくは0.8%に等しい;及び/又は
C2、C3及びC6置換(2,3,6-トリ-OHP)部分の割合は:
- 少なくとも、0.5%、好ましくは0.6%、好ましくは0.7%、好ましくは0.8%に等しい;及び/又は、
- 最大で、4.0%、好ましくは3.0%、より好ましくは2.0%、好ましくは1.5%、好ましくは0.8%に等しい。
【0041】
これらのパーセンテージは、検討される置換のタイプを有する無水グルコース単位のパーセンテージに相当する。例えば、30.0%に等しい2OHP値の場合、HPβCDの無水グルコース単位の30.0モル%がC2炭素でヒドロキシプロピル基によって置換されると推定される。さらなる例として、0.4%に等しい3,3’-ジ-OHP値の場合、HPβCDの無水グルコース単位の0.4モル%がC3炭素で2回置換される(即ち、C3炭素は2つのヒドロキシプロピル基を有する)と推定される。最後の例として、5.0%に等しい2,6-ジ-OHP値の場合、HPβCDの無水グルコース単位の5.0モル%がC2炭素及びC6炭素の双方でヒドロキシプロピル基により置換されると推定される。最初の例においては一置換に関して言及される一方で、最後の2つの例においては二置換に関して言及されることになる。
【0042】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、例えば3,6-OHP置換といった上に列挙された置換以外の置換の5.0%未満、好ましくは4.0%未満、好ましくは3.0%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.5%未満を含む。より好ましくは、本発明のHPβCDは、上に列挙される置換とは別のタイプの置換を含まない。「別のタイプの置換がない」との表現は、かかる置換を含む無水グルコース単位が特に「箱守」法により検出できないことを意味すると理解され、ここで前記方法は、HPβCDに以下の連続ステップ:過メチル化、加水分解、還元、過アセチル化を施すことを含む。
【0043】
好ましくは、本発明に係るHPβCD置換パターンは、次の通りである:
・一置換に相当する置換の割合は:
〇少なくとも、60%、好ましくは70%、好ましくは73%に等しい、及び/又は
〇最大で、80%、さらには78%、さらには77%、さらには78%に等しい;及び/又は、
・二置換に相当する置換の割合は:
〇少なくとも、15%、さらには20%、さらには22%、さらには23%に等しい;及び/又は、
〇最大で、40%、好ましくは35%、好ましくは30%、好ましくは28%、好ましくは26%、好ましくは25%に等しい;及び/又は
・三置換に相当する置換の割合は:
〇少なくとも、1%、さらには2%に等しい;及び/又は、
〇最大で、5%、好ましくは4%、好ましくは3%、さらには2%に等しい;及び/又は、
・C2/C6置換比は:
〇少なくとも、2.0、好ましくは3.0、好ましくは4.0、好ましくは5.0に等しい;及び/又は、
〇最大で、10.0、さらには8.0、さらに7.5に等しい;及び/又は、
・C2/C3置換比は:
〇少なくとも、1.5、好ましくは2.0、好ましくは2.1、好ましくは2.2に等しい;及び/又は、
〇最大で、3.0、さらには2.5に等しい。
【0044】
これらの置換パターンは、例えば「箱守」法と同様の方法に従い、典型的にはHPβCDを以下の連続ステップ:過メチル化、加水分解、還元、過アセチル化を施すことにより、当業者によって決定され得る。
【0045】
例えば、カラム6、実施例9~カラム7、実施例10を含む米国特許第5,096,893号明細書に記載のような方法に従うことは可能であり、前記方法は参照により援用される。典型的には、米国特許第5,096,893号明細書に記載の方法は、以下の通りである:
水素化ナトリウム(0.07モル)がアルゴン下で無水ジメチルスルホキシド(20ml)に添加され、混合物は約60℃で1時間加熱される。次に、(110℃で3時間)乾燥され、ジメチルスルホキシド(15ml)中に溶解されているHPβCD(4g)が添加され、室温で3時間撹拌しながらアルゴン下に放置される。反応媒体が氷槽内で冷却され、ヨウ化メチル(10ml、0.161モル)が滴下される。氷槽内でさらに1時間後、混合物は撹拌しながら一晩放置される。次に、水(24ml)が冷却しながら添加される一方で、生成物がクロロホルム(全部で90ml)で2回抽出される。抽出物が水(20ml)で洗浄され、蒸発される。残渣が水(25ml)で処理され、エーテル(全部で75ml)で3回抽出される。抽出物が水で洗浄され、次に蒸発される。残渣がエーテル(100ml)に溶解され、次に中性アルミナの存在下で30分間撹拌され、濾過され、次に典型的には3.7gの過メチル化生成物が得られるまで蒸発される。3mgの過メチル化生成物が水性トリフルオロ酢酸(0.5ml)中に溶解され、次いでスクリューキャップチューブ内、100℃で一晩貯蔵され、空気でリンスすることで濃縮される。残渣及び水素化ホウ素ナトリウム(100mg)が水性アンモニア(0.5ml)中に溶解され、溶液が室温で1時間放置される。溶液は、50%酢酸(2滴)で酸性化され、次に濃縮される。最初に酢酸/メタノール混合物(1:9、5ml)、次にメタノール(25ml)との共蒸留により、ホウ酸が蒸発される。残渣が、酢酸無水物及びピリジン(2:1、0.5ml)で、100℃で30分間処理され、濃縮され、クロロホルムと水(2:1、6ml)の間で分離される。クロロホルム相が濃縮され、残渣がガスクロマトグラフィー及び質量分析と結合されたガス-液体クロマトグラフィー(GLC-MS)により分析される。ガス-液体クロマトグラフィーは、例えば、キャリアガスとして水素を用いる、水素炎イオン化検出器を装備したHewlett Packard 5830A機器上で実施される。質量分析と結合されたガス-液体クロマトグラフィーは、例えば、キャリアガスとしてヘリウムを用いる、Hewlett Packard 5790-5970システム上で実施される。例えばHewlett Packard Ultra 2タイプの、(架橋された5%メチルフェニルシリコーン)融合ガラス製のキャピラリーカラム(長さが25m、内径が0.20mm)が使用される。温度は、次のようにプログラムされる:185℃で8分、5℃/分で250℃へ、250℃で10分間。
【0046】
発明者は、HPβCDが特異的な置換パターンを有したときに、HPβCDの性能が増強されたことを見出している。より具体的には、発明者は、タンパク質、特に治療目的のタンパク質(ホルモン、抗体など)の安定化が改善されたことを示している。
【0047】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、有機溶媒含量として、以下:
- d-リモネンを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;
- エタノールを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;
- メタノールを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;
- アセトニトリルを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;
- アセトンを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;
- クロロホルムを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;
を有し、これらの含量は、HPβCDの総乾燥重量に対する前記有機溶媒の乾燥重量で表される。
【0048】
これらの有機溶媒含量は、通常、質量分析による検出を伴うガスクロマトグラフィー(GC/MS)により、好ましくはヘッドスペースGC/MSによる分析を実施することにより、当業者により決定可能である。例えば、実施例のセクションAに記載のような方法に従うことは可能である。
【0049】
最も好ましくは、本発明に係るHPβCDは、d-リモネン、及び/又はエタノール、及び/又はメタノール、及び/又はアセトニトリル、及び/又はアセトン、及び/又はクロロホルムを検出可能な量で含有しない。
【0050】
好ましくは、本発明に係るHPβCDはまた、有機溶媒含量として、以下:
- p-キシレンを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;及び/又は
- トルエンを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;及び/又は
- l-メントールを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満;及び/又は
- トリクロロエチレンを2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは1ppm未満;
を有する。
【0051】
最も好ましくは、本発明のHPβCDは、p-キシレン、及び/又はトルエン、及び/又はl-メントール、及び/又はトリクロロエチレンを検出可能な量で含有しない。
【0052】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、2000ppm未満、好ましくは1000p
pm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満の、USP41 NF36のジェネラルチャプターの「<467>残留溶媒」セクションに従うクラス1有機溶媒の全含量を有する。
【0053】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満の、USP41 NF36のジェネラルチャプターの「<467>残留溶媒」セクションに従うクラス2有機溶媒の全含量を有する。
【0054】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、好ましくは200ppm未満、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppm未満の、USP41 NF36のジェネラルチャプターの「<467>残留溶媒」セクションに従うクラス3有機溶媒の全含量を有する。
【0055】
代替として、又は有機溶媒の含量による特性決定に加えて、HPβCDは、有機溶媒の使用を除外する、即ち全体的に水性媒体中で実施される、ヒドロキシプロピル化及び精製のプロセスによりそれが入手可能である、又は得られるという事実により定義され得る。
【0056】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、エレクトロスプレーイオン化-質量分析(ESI-MS)によって決定されるような以下の置換プロフィール:
- 未置換β-CDに対応するシグナル(HP0):0.0%に等しい;及び/又は
- 1に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP1):3%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0%に等しい;及び/又は
- 2に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP2):5%以下、好ましくは0~4%、好ましくは1~3%の範囲内、及び/又は
- 3に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP3):1~10%、好ましくは2~8%、好ましくは3~7%の範囲内;及び/又は
- 4に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP4):5~20%、好ましくは7~17%、好ましくは9~15%の範囲内;及び/又は
- 5に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP5):10~30%、好ましくは15~25%、好ましくは17~25%の範囲内;及び/又は
- 6に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP6):15~35%、好ましくは20~30%、好ましくは24.0~28.0%の範囲内;及び/又は- 7に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP7):10~30%、好ましくは15~25%、好ましくは17~25%の範囲内;及び/又は
- 8に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP8):5~20%、好ましくは5~15%、好ましくは6~13%の範囲内;及び/又は
- 9に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP9):1から10%、好ましくは2~8%、好ましくは2~6%の範囲内;及び/又は
- 10に等しい置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP10):5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%以下、好ましくは1%に等しい;及び/又は- 11以上の置換度を有するHPβCD分子に対応するシグナル(HP≧11):2%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0%に等しい;
を有し、これらのパーセンテージは、各置換度において得られたシグナルの和に対して表され、ここでシグナルはバックグラウンドノイズの場合よりも大きかった。
【0057】
当然ながら、用語「シグナル」が目的の置換度に対応するイオンの曲線下面積を意味す
ることは受け入れられている。
【0058】
本明細書では、置換プロフィールは、好ましくは3通りに実施された測定値の平均をとることにより、ESI-MSによって決定される。この置換プロフィールの決定においては、特に実施例のセクションAにおける下記のような方法に従うことは可能である。
【0059】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、5.00%以下のプロピレングリコール含量を有し、このパーセンテージはHPβCDの総乾燥重量に対するプロピレングリコールの乾燥重量によって表される。このプロピレングリコール含量は、好ましくは2.50%以下、好ましくは1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好ましくは0.10%以下、好ましくは0.05%以下である。
【0060】
このプロピレングリコール含量は、通常、好ましくは付録中に再現されたUSP41 NF36の方法(「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;ベータデクス、プロピレングリコール、及び他の関連物質の限度」)による手順に従い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、当業者によって決定され得る。
【0061】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、0.10%以下のジプロピレングリコール含量を有し、このパーセンテージはHPβCDの総乾燥重量に対するジプロピレングリコールの乾燥重量によって表される。このジプロピレングリコール含量は、好ましくは0.05%以下、好ましくは0.03%以下である。それは例えば、0.01~0.05%の範囲内にある。
【0062】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、1.0%以下の還元糖含量を有し、このパーセンテージはHPβCDの総乾燥重量に対する還元糖の乾燥重量によって表される。好ましくは、この還元糖含量は、0.5%以下、好ましくは0.1%以下である。
【0063】
この還元糖含量は、通常、例えば下記の実施例のセクションAに記載のような方法に従い、ベルトラン法により、当業者によって決定され得る。
【0064】
一般に、有利には、本発明に係るHPβCDは、1000ppm以下の塩化物含量を有し、この含量はHPβCDの総乾燥重量に対する塩化物イオンの乾燥重量によって表される。好ましくは、この塩化物含量は、500ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは50ppm未満である。
【0065】
この塩化物含量は、通常は、既知濃度の硝酸銀の溶液を用いてのHPβCD溶液の電位差滴定により、当業者によって決定され得る。
【0066】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、230~400nmで1.00以下の最大吸光度を有し;前記最大吸光度は、10mmの光経路長さを有するセルを用いて、溶液100mlあたり2.50g(乾燥)のHPβCDを含有する蒸留水溶液に基づいて測定される。好ましくは、この最大吸光度は、0.50未満、好ましくは0.10未満、好ましくは0.05未満であり、例えば0.01~0.50の範囲内である。
【0067】
有利な実施形態では、本発明のHPβCDは、粉末形態である。この場合、それは有利には、10.0%以下、好ましくは5.0%以下の、例えば2.0~5.0%の範囲から選択される、乾燥時の質量の欠損(又は「水分含量」)を示す。
【0068】
この水含量は、通常、好ましくは付録中に再現されたUSP41 NF36の方法(「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;乾燥時の欠損」)による手順に従い、乾
燥時の質量の欠損を測定することにより、当業者によって決定され得る。
【0069】
この粉末形態は、特にHPβCDの貯蔵及び輸送において有利である。
【0070】
有利なことに、この粉末状HPβCDは、微粒化生成物の形態、即ちHPβCDの溶液を噴霧乾燥することによって得られる粉末の形態である。
【0071】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、5.0~7.5の範囲内のpHを有し;前記pHは、2gの乾燥HPβCD、98gの蒸留水及び225g/Lの塩化カリウム溶液0.3mlからなるHPβCDの溶液に基づいて測定される。
【0072】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、200μS/cm以下の伝導率を有し、前記伝導率は、10%(乾燥)HPβCDを含有する蒸留水溶液に基づいて測定される。好ましくは、この伝導率は、100μS/cm以下、好ましくは50μS/cm以下、好ましくは25μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下である。この伝導率は、例えば、1~10μS/cm、さらには2~5μS/cmの範囲内である。
【0073】
この伝導率は、通常、付録中に再現されたUSP41 NF36に記載の方法(「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;伝導率」)による手順に従い、当業者によって決定され得る。例えば、下記の実施例のセクションAに記載の方法に従うことは可能である。
【0074】
好ましくは、本発明に係るHPβCDは、0.5%未満、好ましくは0.1%未満の、プロピレングリコール及びβ-CD以外のHPβCDに関する不純物の含量を有する。
【0075】
プロピレングリコール及びβ-CD以外のHPβCDに関する不純物のこの含量は、通常、好ましくは付録中に再現されたUSP41 NF36の方法(「ベータデクス、プロピレングリコール、及び他の関連物質の限度」)による手順に従い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、当業者によって決定され得、プロピレングリコール及びβ-CD以外のHPβCDに関する不純物が前記方法における「他の関連物質」に相当すると理解されている。
【0076】
好ましくは、本発明に係るHPβCDはまた、2018年6月1日発効の米国モノグラフに従う。好ましくは、本発明のHPβCDはまた、2018年6月1日発効の中国モノグラフに従う。好ましくは、本発明のHPβCDはまた、2018年6月1日発効の欧州モノグラフに従う。
【0077】
本発明の別の主題は、
β-シクロデキストリン(β-CD)及び水酸化ナトリウムを含む水溶液を調製するステップ(a)において、使用される水酸化ナトリウムの量がβ-CDの乾燥重量に対する水酸化ナトリウムの乾燥重量で3.7%未満であるステップ(a)と;
ステップ(a)で得られた溶液にプロピレンオキシドを添加するステップ(b)において、
- プロピレンオキシドの導入前のステップ(a)で得られた溶液の温度が、80℃~120℃の範囲内で選択される;
- 使用されるプロピレンオキシド/無水グルコースのモル比が、0.70/1.00~0.86/1.00の範囲内で選択される;
- プロピレンオキシドの添加速度が、β-CDの0.15~0.30kg/h/kgの範囲内で選択される;
ことを特徴とするステップ(b)と:
有機溶媒を使用しないことを特徴とする精製ステップ(c)と;
このようにして得られたHPβCDを回収するステップ(d)と、
を含むことを特徴とする、上記のようなHPβCDの調製に特に有用な、HPβCDを調製するための方法である。
【0078】
好ましくは、ステップ(a)の溶液中のβ-CDの乾燥質量は、30~70重量%の範囲内で選択され、このパーセンテージは溶液の総重量に対するβ-CDの乾燥重量によって表される。好ましくは、β-CDのこの乾燥質量は、40~60%、好ましくは45~55%、好ましくは50~55%の範囲内で選択される。
【0079】
好ましくは、ステップ(a)の溶液中の水酸化ナトリウムの量は、β-CDの乾燥重量に対する水酸化ナトリウムの乾燥重量で0.5~3.6%の範囲内で選択される。より好ましくは、水酸化ナトリウムのこの量は、1.0%以上、好ましくは1.2%以上、好ましくは1.3%以上、好ましくは1.4%以上、好ましくは1.5%以上、さらに1.6%以上、さらに1.7%以上、さらに1.8%以上、さらに1.9%以上、さらに2.0%以上、さらに2.1%以上、さらに2.2%以上、さらに2.3%以上、さらに2.4%以上、さらに2.5%以上、さらに2.6%以上、さらに2.7%以上、さらに2.8%以上、さらに2.9%以上である。好ましくは、水酸化ナトリウムのこの量は、3.5%以下、好ましくは3.4%以下、好ましくは3.3%以下、好ましくは3.2%以下、好ましくは3.1%以下、好ましくは3.0%以下、好ましくは2.9%以下である。
【0080】
好ましくは、ステップ(b)では、プロピレンオキシドの導入前のβ-CDの水溶液の温度は、85℃以上、好ましくは90℃以上である。この温度はまた、好ましくは110℃以下、好ましくは100℃以下である。それは例えば、90~100℃、好ましくは94~96℃の範囲内で選択される。それは例えば、約95℃に等しい。
【0081】
好ましくは、ステップ(b)では、使用されるプロピレンオキシド/無水グルコースのモル比は、0.75/1.00以上、好ましくは0.80/1.00以上、好ましくは0.82/1.00以上、好ましくは0.84/1.00以上、好ましくは0.85/1.00に等しい。
【0082】
好ましくは、ステップ(b)では、プロピレンオキシドの添加速度は、β-CDの0.20~0.30kg/h/kg、好ましくはβ-CDの0.20~0.25kg/h/kg、好ましくはβ-CDの0.21~0.23kg/h/kgの範囲内で選択され、例えばβ-CDの0.22kg/h/kgに等しい。
【0083】
次に、反応は、例えば塩酸を添加することにより中和され得る。
【0084】
ステップ(c)を実施するため、ステップ(b)で得られるHPβCDは、典型的には濾過、ナノ濾過、活性炭による処理及び脱ミネラル化から選択される1以上の処理を行うことができる。
【0085】
好ましくは、この精製は、好ましくはこの順序:
(b.1)脱色;
(b.2)濾過;
(b.3)膜精製
で実施される処理を含む。
【0086】
好ましくは、脱色ステップ(b.1)は、典型的にはバッチモードで実施される活性炭処理を用いて実施される。好ましくは、この処理は、70℃±5℃で少なくとも1時間実
施される。
【0087】
好ましくは、ステップ(b.2)は、バッグフィルターを通過する少なくとも1つの濾過ステップを含む。好ましくは、ステップ(b.2)は、0.22μmのカートリッジフィルターを通過する少なくとも1つの濾過ステップを含む。好ましくは、ステップ(b.2)は、好ましくは任意選択的に0.22μmのカートリッジフィルターで実施される濾過の前に、0.1μmカートリッジフィルターを通過する少なくとも1つの濾過ステップを含む。
【0088】
好ましくは、膜精製ステップ(b.3)は、好ましくは、35バール未満の圧力及び45℃を超える温度で、800Da未満のカットオフ閾値又は65%超のCaClの呼び保持率を有する膜を備えたナノ濾過モジュールを用いて、ナノ濾過により実施される。
【0089】
好ましくは、該精製は、有利にはカチオン交換カラムを通過し、次いでアニオン交換カラムを通過するステップを含む、脱ミネラル化ステップ(b.4)をさらに含む。好ましくは、脱ミネラル化は、混合ベッドを通過する通路をさらに含む。好ましくは、ステップ(b.4)は、出口での生成物の抵抗率が500,000Ω・cmを超えるように実施される。
【0090】
好ましくは、処理(b.1)及び(b.2)は、膜精製(b.3)後、又は任意選択的に実施される脱ミネラル化処理(b.4)後、繰り返される。
【0091】
有利には、特に粉末HPβCDを得ることが所望される場合、本発明の方法は、該精製後に、ヒドロキシプロピル化され、任意選択的に精製された生成物を乾燥させるステップを含む。この乾燥ステップは、当業者に公知の任意の手法により、典型的には、蒸発により又は噴霧乾燥により、好ましくは噴霧乾燥により、実施され得る。
【0092】
この噴霧乾燥は、一段階又は多段階噴霧乾燥であってもよい。多段階噴霧乾燥の場合、噴霧乾燥器が流動層に結合され、任意選択的には噴霧乾燥タワーと一体化され、噴霧乾燥によって形成される粒子を凝集させることが可能になる。後者のプロセスは、より大きい平均直径の粉末を得ることが所望される場合や、得られる粉末にとって望ましいフローに応じて、特に有利である。
【0093】
本発明のHPβCDは、様々な用途にて使用可能であり、それらの中では、ここで治療的用途と非治療的用途との間で区別される。
【0094】
したがって、本発明は、第一に、薬物として使用するための、本発明に係るHPβCDに関する。
【0095】
好ましくは、この使用は、組織内でのコレステロールの過負荷、及び/又は貯蔵及び/若しくは蓄積に関連する状態又は疾患、及びそれらの結果の治療又は予防を対象とする。これは、例えば、心血管疾患、血管疾患、アテローム性動脈硬化症若しくはアテロームに関連する合併症などの閉塞性末梢動脈疾患、中枢神経系の疾患、例えば、中枢神経系を冒す、アルツハイマー病、パーキンソン病、巣状分節性糸球体硬化症、及びリソソーム症、例えば、ニーマン・ピック病、例えば、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型、又はニーマン・ピック病C型などを含む。本発明に係るHPβCDの使用により治療及び/又は予防されるアテロームに関連する合併症は、非限定的には、虚血、例えば、心筋虚血、冠疾患、狭心症、急性冠症候群、心筋梗塞、腸間膜梗塞、脳卒中、動脈瘤又は下肢の動脈症である。
【0096】
本発明のHPβCDは、ニーマン・ピック病C型の治療における使用、又は巣状分節性糸球体硬化症の治療における使用が意図される。
【0097】
好ましくは、本発明のHPβCDは、ヒト又は動物、好ましくはヒトへの投与が意図される。
【0098】
本発明のHPβCDは、経口的に、非経口的に、皮膚性に又は粘膜に投与可能である。非経口経路は、例えば、皮下、静脈内、筋肉内又は腹腔内投与を含むが、後者はむしろ動物用に準備される。粘膜経路は、例えば、経鼻投与、経肺投与又は直腸粘膜を介する投与を含む。皮膚経路は、例えば、特に経皮デバイス、典型的にはパッチを介する経皮経路を含む。中枢神経系の疾患の治療及び/又は予防の場合には、くも膜下腔内経路又は脊髄経路も用いられてもよい。
【0099】
本発明はまた、特に上記の状態及び疾患を治療及び/又は予防することを意図した薬剤の製造における本発明に係るHPβCDの使用に関する。それはまた、対象における上記の状態及び疾患を治療及び/又は予防するための方法であって、本発明に係るHPβCDの治療有効量での投与を含む方法に関する。
【0100】
本発明に係るHPβCDはまた、特に通常はこのタイプの生成物において見出される用途から選択される、他の可能な用途を有する。
【0101】
したがって、本発明はまた、賦形剤として、及び/又は物質をカプセル封入するため、及び/又は物質を水性媒体中に可溶化するため、及び/又は物質の化学的安定性を改善するため、及び/又は物質の生物学的膜への送達と生物学的膜を介した送達を改善するため、及び/又は物質の物理的安定性を増強するため、及び/又は液体形態から粉末形態にかけて物質を配合するため、及び/又は一方の物質ともう一方の物質との相互作用を阻止するため、及び/又は物質の局所若しくは経口投与後の局所刺激作用を低減するため、及び/又は皮膚などの特定組織内での物質の吸収を阻止するため、及び/又は物質の徐放性を得るため、及び/又は物質の味、特にその苦味をマスクするため、及び/又は物質の匂いをマスクするため、及び/又は物質のバイオアベイラビリティを改善するための、本発明に係るHPβCDの使用に関する。
【0102】
好ましくは、これらの物質は、親油性化合物又は少なくとも1つの親油性基を有する化合物である。
【0103】
これらの親油性化合物又は少なくとも1つの親油性基を有する化合物は、例えば、室温(15~25℃)で、水に対して、やや溶けにくい化合物、非常にやや溶けにくい化合物、さらに実質的に水に不溶性である化合物から選択され得る。「やや溶けにくい水溶性化合物」は、通常は、1グラムの前記化合物を溶かすのに100~1000mlの水の体積が必要であることを意味することが意図される。「非常にやや溶けにくい水溶性化合物」の場合、水のこの体積は1000mlを超え、最大で10,000mlに及ぶ。「実質的に水に不溶性である化合物」の場合、水のこの体積は10,000mlを超える。この点では、[図1、2、3]や、特に欧州薬局方(European Pharmacopeia)における参照「1.4 Monographs,07/2014:10,000」で示される定義を参照されたい。
【0104】
ここで指定される物質は、通常は、選択される用途に応じた活性薬剤又は望ましくない物質であってもよい。例えば、本発明のHPβCDは、悪臭をマスクするため、例えば脱臭エアロゾルの形態で使用され得る。それらはまた、食料組成物中の香料の効果を延長するため、又は活性薬剤を溶解及び/又は安定化するために使用することができる。
【0105】
「活性薬剤」は、通常は、例えば、目的の医薬品、動物薬、食品、栄養補助食品、化粧品又は農薬の任意の物質を意味するように理解される。かかる活性薬剤の例として、活性医薬成分、着色剤、香料が挙げられる。好ましくは、本発明の活性薬剤は、好ましくはヒト用を意図した活性医薬成分である。
【0106】
本発明にとって有用な活性薬剤、特に活性医薬成分は、例えば、タンパク質;核酸、例えばDNA若しくはRNA由来のもの;細胞;又はウイルスに基づく又は由来する有効成分の場合のように、化学分子だけでなく、「生物学的」活性薬剤であり得る。本発明における好ましい活性薬剤の例としては、治療活性タンパク質、例えば抗体又はホルモンが挙げられる。
【0107】
本発明の主題はまた、本発明に係るHPβCD及び少なくとも1つの他の物質を含む組成物である。
【0108】
好ましくは、前記他の物質は、本発明に係るHPβCDの使用に関するセクションにおいて上で定義される通りである。それは例えば、活性薬剤、好ましくは活性医薬成分、及び/又は親油性化合物若しくは少なくとも1つの親油性基を有する化合物及び/又は室温(15~25℃)でやや溶けにくい、非常にやや溶けにくい、さらに実質的に水に不溶性である化合物である。
【0109】
これらの他の物質はまた、使用及び/又は所望されるガレヌス形態に応じて、後者が本発明で所望される特性に反しない限り、一般に使用される化合物から選択され得る。これらの他の物質は、例えば、結合剤、(超)崩壊剤及び滑沢剤から選択され得る。
【0110】
本発明に係るHPβCD及びそれらを含む組成物は、特に意図される使用に応じて、当業者が好適とみなす任意のガレヌス形態であり得る。それらは例えば、液体、固体又は半流動体形態であってもよい。それらは例えば、溶液、特に注射用液剤、懸濁液、分散液、エマルション、ペレット、顆粒剤、フィルム、散剤、ゲル剤、クリーム、軟膏剤、ペースト剤、スティック剤、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、浸透圧デバイス、パッチであってもよい。
【0111】
本発明では、パーセンテージで表される溶液中の物質の濃度について言及されるときや、別段の指示がない限り、後者が通常は溶液100mlあたりの乾燥物質のグラム量に相当することが想起される。
【0112】
物質の乾燥質量(「乾燥重量」)に対して参照がなされるとき、当然ながらそれが無水物質の質量であることも想起される。換言すれば、この質量は、粉末形態での出発物質中に存在する任意の水分を排除している。
【0113】
本発明は、例示的かつ非限定的であることが意図される以下の実施例によって、より明確に理解されるであろう。
【実施例
【0114】
A.HPβCDを特性決定するために用いられる方法
1.水分含量(乾燥時の質量の欠損)は、付録中に再現されたUSP41 NF36の方法(「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;乾燥時の欠損」)に従って決定した。
2.還元糖含量は、還元性媒体への酸化第一銅の沈降、焼結ガラス上での濾過及び残渣の秤量により、ベルトラン法によって決定した。
3.溶液のpHは、20~25℃で2つの浸漬した電極間の電位差を測定することにより決定した。HPβCD溶液は、2g(乾燥)のHPβCD、500,000Ω・cmを超える抵抗率を有する98gの蒸留水、及び225g/Lの塩化カリウム溶液0.3mlからなった。
4.塩化物(Cl)含量は、既知濃度の硝酸銀溶液を用いてのHPβCD溶液の電位差滴定により決定した。
5.230~400nmでの最大吸光度は、10mmの光経路長さを有するセルを用いて、溶液100mlあたり2.50g(乾燥)のHPβCDを含有する蒸留水溶液に基づいて決定した。
6.HPβCDにおける関連物質の含量(β-CD、プロピレングリコール、他の関連不純物(ジプロピレングリコールを含む))は、USP41 NF36に準じる方法(「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;ベータデクス、プロピレングリコール、及び他の関連物質の限度」)に従って決定した。
7.伝導率は、付録中に再現されたUSP41 NF36に記載の方法(「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;伝導率」)による手順に従い、500,000Ω・cmを超える抵抗率を有する蒸留水で調製した10%HPβCDを含有する100mlの溶液に基づき、25℃で測定した。そのようにして得た溶液の抵抗率Rを電子導電率計により決定し、伝導率を後者から計算した(1/R)。
8.平均モル置換度(MS)は、付録中に再現されたUSP41 NF36の方法「ヒドロキシプロピルベータデクスのモノグラフ;モル置換」に従い、NMRにより決定した。9.置換プロフィールは、エレクトロスプレーイオン化-質量分析(ESI-MS)により決定した。1g(乾燥)/LのHPβCD溶液を、1mMの酢酸ナトリウムを有するメタノール/水混合物(50/50,v/v)中で調製した。各サンプルの注入を10μl/分で1分間実施し、MSデータを下記のように記録した。2回の連続注入の間、500μlのメタノール/水混合物(50/50,v/v)を注入し、イオン源を洗浄した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)パラメータは次の通りであった:スプレー電圧:5kV;ネブライザーガス:9、補助ガス:2;スイープガス:0;キャピラリー電圧:23V;キャピラリー温度:275℃;チューブレンズ:80V。質量分析パラメータは次の通りであった:全走査;走査範囲:50~200m/z;質量範囲:正常、走査速度:改善;捕捉時間:1分。置換された各HPβCD分子(HPXと称される、Xはβ-CD1分子あたりの置換の数である)において、各イオンについて抽出されたイオン電流(XIC)を積分し、すべてのHPXイオン電流の和と比較し、そこでは対応するピークの強度はバックグラウンドノイズの強度よりも大きかった。ナトリウム付加物が最も強力なHPβCDイオンであったことから、各HPXに対応するピークの曲線下面積を積分し、特性決定(バックグラウンドノイズの強度よりも大きい強度)用に考慮されるHPXイオンの面積の和に関連づけ、それをパーセンテージとして表した。
10.有機溶媒の含量は、質量分析による検出を伴うガスクロマトグラフィー(GC/MS)により決定した。より正確には、該分析は、ヘッドスペースGC/MSにより実施した。動作条件は次の通りであった:30m*0.25mm、df0.25μmのVf-ワックスカラムを備えたBruker GC/MS;温度プログラム:40℃で5分、230℃まで5℃/分;インジェクター250℃スプリット比1:10;EIでのMS検出器。サンプルを次のように調製した:0.2gの乾燥HPβCDを1mlの超純水に溶解した。
11.置換パターンは、上で考察した「箱守」法に従って決定した。
【0115】
B.先行技術:市販HPβCDのMS及びβ-CD含量の値
このセクションでは、MS及びβ-CD含量の値は、様々な市販HPβCDについて測定した(Meas.)。供給業者の詳細についても、利用可能であったとき、情報として提供した(Spec.)。
【0116】
【表1】
【0117】
これらの結果により、市販のHPβCDが、低いMSで低い残留β-CD含量であることに一致しないことが確認される。したがって、例えば、KLEPTOSE(登録商標)HP、CAVASOL(登録商標)W7 HP7及びCOMPLEXOL-HP製品は、0.3%以下のβ-CD含量を有するとはいえ、系統的に0.71を超えるMSを有する。逆に、KLEPTOSE(登録商標)HPB、CAVASOL(登録商標)W7 HP、CAVASOL(登録商標)W7 HP5及びC*CAVITRON(登録商標)製品は、0.71未満のMSを有するが、それらの残留β-CD含量は系統的に0.3%を超える。
【0118】
C.本発明の又は本発明ではないHPβCDの調製及び特性決定(MS及びβCD)
1.方法1-脱色、濾過及び膜精製による精製を伴う
このセクションの目的は、得られるHPβCDの特性に対するヒドロキシプロピル化パラメータの影響を提示することである。
【0119】
本発明のHPβCD(IN-1)を次のように調製した:1313gの市販β-シクロデキストリン(β-CD)(1188gの無水β-CDに相当する)を、不活性雰囲気下のオートクレーブ内で撹拌しながら、アルカリ性媒体に溶解した。このようにして、溶液の総重量に対する乾燥重量で52%のβ-CD、及びβ-CDの乾燥重量に対する2.9%の水酸化ナトリウム(下表中の[NaOH])を含む溶液を得た。反応媒体を95℃の温度[T]で30分間維持し、次に361.6gのプロピレンオキシドを、乾燥β-CDの0.22kg/h/kgの速度[D]、即ち0.85/1.00のプロピレンオキシド/無水グルコース[PO/G]モル比で添加した。プロピレンオキシドの導入の終了後、反応媒体を4時間撹拌し続け、次に塩酸で中和した。
【0120】
次に、HPβCDを、水性媒体中で、即ち有機溶媒を用いずに、以下の技術により、精製し、乾燥させた:
- 脱色;
- 濾過;
- 膜精製;
- 蒸発乾燥
【0121】
活性炭脱色ステップは、70℃±5℃で最低1時間撹拌しながら、バッチモードで実施した。次に、媒体を、クリケットフィルターを通して、次に0.22μmのカートリッジフィルターを通して濾過した。膜精製ステップは、特に35バール未満の圧力及び45℃を超える温度で、800Daのカットオフ閾値を有する膜を備えたナノ濾過モジュールを用いて実施した。保持液のプロピレングリコール含量をHPLCアッセイにより観測した。乾燥生成物に対するプロピレングリコール含量が0.5重量%未満に達した直後に、動作を停止させた。次に、そのようにして得られたHPβCDを、95重量%を超える固体含量を有するように、ロータリーエバポレーター内、減圧下で乾燥させた。
【0122】
比較対象のHPβCD(CP-1)を次のように調製した:656gの市販β-シクロデキストリン(β-CD)(594.4gの無水β-CDに相当する)を、不活性雰囲気下のオートクレーブ内で撹拌しながら、アルカリ性媒体に溶解した。このようにして、溶液の総重量に対する乾燥重量で52%のβ-CD、及びβ-CDの乾燥重量に対する2.9%の水酸化ナトリウムを含む溶液を得た。反応媒体を75℃の温度[T]で30分間維持し、次に182.6gのプロピレンオキシドを、乾燥β-CDの0.14kg/h/kgの速度[D]、即ち0.86/1.00のプロピレンオキシド/無水グルコース[PO/G]モル比で添加した。プロピレンオキシドの導入の終了後、反応媒体を4時間撹拌し続け、次に塩酸で中和した。そのようにして得られたHPβCDを、HPβCD IN-1と同様の方法で精製し、乾燥させた。
【0123】
得られたHPβCDを、それらのMS及びそれらのβ-CD含量に関連して特性決定した。ヒドロキシプロピル化条件とさらにMS及びβ-CD含量の値とを下表に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
次に、他の試験を次のように実施した:
各試験においては、無水β-CDの使用は約250gであり、導入した水の量及びプロピレンオキシドの量は、HPβCD IN-1の調製に使用した量に比例的に対応する。特に、これは、[PO/G]モル比が0.85/1.00に等しかったことを意味する。プロピレンオキシドの導入前の反応媒体の温度[T]は110℃であった。試験した様々な量の水酸化ナトリウム[NaOH]を、β-CDの乾燥重量に対する水酸化ナトリウムの乾燥パーセンテージとして下表中に示す。プロピレンオキシドを速度[D]で添加した。反応後、反応媒体を塩酸で中和した。試験した各水酸化ナトリウム[NaOH]含量については、2つの粗反応生成物を生成し、次に精製のナノ濾過ステップ用に十分な材料を有するようにそれらを組み合わせた。このようにして得られたHPβCD粗反応生成物を、
HPβCD IN-1と同様の方法で精製し、乾燥させた。
【0126】
得られたHPβCDを、それらのMS及びそれらのβ-CD含量に関連して特性決定した。ヒドロキシプロピル化条件とさらにMS及びβ-CD含量の値とを下表に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
これらの試験のすべては、ヒドロキシプロピル化条件が適切に設計される場合には、本発明による対象としてのMS及びβ-CD含量を有するHPβCDを得ることが可能であることを示す。
【0129】
精製において非常に有利なことに、有機溶媒を含むことは必要でない。したがって、本発明に係るHPβCDは、通常はヒドロキシプロピル化ステップ及びこのヒドロキシプロピル化にて用いられる原料から得られる有機物質以外の有機物質を含まない可能性がある。
【0130】
2.方法2-脱色及び追加的な濾過を伴う
このセクションの目的は、本発明のHPβCDの調製における最適化プロセスを提示することである。
【0131】
本発明に係るHPβCD(IN-2)を次のように調製した:1305gの市販β-シクロデキストリン(β-CD)(1204gの無水β-CDに相当する)を、不活性雰囲気下のオートクレーブ内で撹拌しながら、アルカリ性媒体に溶解した。このようにして、
溶液の総重量に対する乾燥重量で52%のβ-CD、及びβ-CDの乾燥重量に対する2.9%の水酸化ナトリウムを含む溶液を得た。反応媒体を95℃の温度[T]で30分間維持し、次に367gのプロピレンオキシドを、乾燥β-CDの0.22kg/h/kgの速度[D]、即ち0.85/1.00のプロピレンオキシド/無水グルコース[PO/G]モル比で添加した。プロピレンオキシドの導入の終了後、反応媒体を4時間撹拌し続け、次に塩酸で中和した。
【0132】
次に、得られたHPβCDを、水性媒体中で、即ち有機溶媒を用いずに、以下のステップを経ることにより、精製し、乾燥させた:
- 脱色;
- 濾過;
- 膜精製;
- 脱ミネラル化;
- 脱色;
- 濾過;
- 噴霧乾燥
【0133】
脱色ステップは、70℃で1時間の活性炭処理により実施した。次に、媒体を、バッグフィルター、次に1μm、そして次に0.22μmのカートリッジフィルターを通して濾過した。膜精製ステップは、35バール未満の圧力及び45℃を超える温度で、800Da未満のカットオフ閾値を有する膜を備えたナノ濾過モジュールを用いて実施した。保持液のプロパンジオールグリコール含量をHPLCアッセイにより観測した。乾燥生成物に対するプロパンジオール含量が0.1重量%未満に達した直後に、ナノ濾過動作を停止させた。脱ミネラル化ステップは、500,000Ω・cmを超える出口の抵抗率を得るため、特に、カチオン性、そして次にアニオン性イオン交換カラムを通過させ、最後に混合ベッドを通過させることにより実施した。第2の脱色ステップは、70℃で少なくとも1時間撹拌しながらの活性炭処理により、バッチモードで実施した。次に、HPβCD溶液を、バッグフィルター、次に1μm、そして次に0.22μmのカートリッジフィルターを通して濾過した。次に、HPβCD溶液を噴霧乾燥することにより、HPβCDを粉末形態で得た。
【0134】
次に、本発明のHPβCD IN-2の徹底的な特性決定を実施した。結果を下表に示す:
【0135】
【表4】
【0136】
D.本発明の又は本発明ではないHPβCDの置換パターン
このセクションでは、発明者は、本発明のHPβCDの置換パターン、比較対象のHPβCDの置換パターン、さらに市販HPβCDの置換パターンを決定している。HPβCD IN-2の場合、いくつかのバッチを試験した。
【0137】
パーセンテージで表される結果を表5及び6に示す。MS値及び残留β-CD値についても報告している。
「モノ」:一置換(2OHP、3OHP、6OHP)に相当する置換の割合;「ジ」:二置換(2,3-ジ-OHP、2,6-ジ-OHP、3,3’-ジ-OHP)に相当する置換の割合;
「トリ」:三置換(2,3,6-トリ-OHP)に相当する置換の割合;
「C2/C6」:C2/C6置換((2OHP+2,3-ジ-OHP+2,6-ジ-OH
P+2,3,6-トリ-OHP)/(6OHP+2,6-ジ-OHP+2,3,6-トリ-OHP))の割合;
「C2/C3」:C2/C3置換((2OHP+2,3-ジ-OHP+2,6-ジ-OHP+2,3,6-トリ-OHP)/(3OHP+2,3-ジ-OHP+3,3’-ジ-OHP+2,3,6-トリ-OHP)の割合
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
注:試験したすべてのHPβCDについて、置換の他のタイプに相当するシグナルが得られなかった(例えば、3,6-ジ-OHPタイプの場合)。したがって、表5及び6に示される以外の置換のタイプを有する無水グルコース単位では、検出可能な量が得られなかった。
【0141】
これらの結果は、本発明に係るHPβCDが、特に、同じく分析した、CAVASOL(登録商標)W7 HP Pharma、CAVITRON(登録商標)W7 HP5 Pharma及びCAVITRON(登録商標)W7 HP7 Pharma製品と比べて特定の置換パターンを有することを示す。
【0142】
発明者によって実施した実験によると(データは本明細書で示していない)、本発明のHPβCDの場合などの置換パターンは、特定の特性、特に、物質、特に活性医薬成分、より具体的には薬学的活性タンパク質などの生物学的活性薬剤の安定化における改善された効率をもたらすように思われる。特に、治療用タンパク質の安定化のため、本発明のHPβCDの場合などの置換パターンを有するHPβCDの場合、CAVASOL(登録商標)W7 HP Pharma、CAVITRON(登録商標)W7 HP5 Pharma及びCAVITRON(登録商標)W7 HP7 Pharma製品で得られる場合と比べてのタンパク質凝集における大幅な減少が得られた。
図1
図2
図3