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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ロールベーラ
(51)【国際特許分類】
   A01F 15/08 20060101AFI20241105BHJP
   A01D 78/02 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A01F15/08 R
A01D78/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021020643
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123369
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】外山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】木村 啓明
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082630(JP,A)
【文献】特開2017-035030(JP,A)
【文献】特開2008-125408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 15/08
A01D 78/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールベールの大きさ検出器と制御部を備え、
前記ロールベールの大きさ検出器は、ロールベール径または体積を検出するものであり、
前記制御部は、
前記ロールベールの大きさ検出器が、ピーク値を検出した時点を起点として所定時間経過したとき、梱包材繰り出し信号を出力する、または、
前記ロールベールの大きさ検出器が、ピーク値を起点として、前記ピーク値より所定値小さい第2の値を検出したとき、梱包材繰り出し信号を出力することを特徴とするロールベーラ。
【請求項2】
前記ロールベーラは、固定側半部と可動側半部を有し、
前記ロールベールの大きさ検出器は、固定側半部と可動側半部の開度を検出する開度検出器である請求項1に記載のロールベーラ。
【請求項3】
前記ロールベールの大きさ検出器は、成形圧を検出する検出器である請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のロールベーラ。
【請求項4】
前記ロールベーラの成形機構が、チェーン方式、ベルト方式、または、ローラ方式であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のロールベーラ。
【請求項5】
前記制御部は、前記ロールベールの大きさ検出器が、第1の値を検出したとき、走行停止信号を出力するものであり、
前記走行停止信号は、報知装置へ送られ、
前記走行停止信号が送られると、
前記報知装置は、光、音、画像等の報知手段で報知を行う
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のロールベーラ。
【請求項6】
前記梱包材繰り出し信号は、前記報知装置に送られ、光、音、画像等の報知手段で報知を行う請求項5に記載のロールベーラ。
【請求項7】
ピックアップ送り込み機構を有し、
ピックアップ送り込み機構上の牧草塊または牧草量を検出する牧草量検出器を有し、
前記制御部は、
走行停止の手動操作した規定時間前以降に、または、前記制御部が走行停止信号を出力した規定時間前以降に、前記牧草量検出器が、所定の大きさより大きい前記牧草塊を検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、
前記ロールベールの大きさ検出器がピーク値を検出した時点を起点として、所定時間に遅延時間を加えた時間が経過したとき、梱包材繰り出し信号を出力する
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のロールベーラ。
【請求項8】
前記牧草量検出器が、所定の大きさより大きい前記牧草塊を検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、
前記制御部は、
ボトムプレートを下降する信号を出力する
ことを特徴とする請求項7に記載のロールベーラ。
【請求項9】
ロールベールの大きさ検出器と牧草量検出器と制御部を備え、
前記ロールベールの大きさ検出器は、ロールベール径、重量、または体積を検出するものであり、
牧草量検出器は、ピックアップ送り込み機構上の牧草量または牧草塊を検出し、
前記制御部は、
前記ロールベールの大きさ検出器が、所定の値を検出した時点を起点として所定時間経過したとき、梱包材繰り出し信号を出力し、
走行停止の手動操作した規定時間前以降に、または、前記制御部が走行停止信号を出力した規定時間前以降に、前記牧草量検出器が、所定の大きさより大きい前記牧草塊を検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、前記所定時間に遅延時間を加えた時間が経過したとき、梱包材繰り出し信号を出力することを特徴とするロールベーラ。
【請求項10】
前記牧草量検出器が、所定の大きさより大きい前記牧草塊を検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、
前記制御部は、
ボトムプレートを下降する信号を出力する
ことを特徴とする請求項9に記載のロールベーラ。
【請求項11】
前記ロールベールの大きさ検出器は、成形圧を検出する検出器である請求項9または請求項10のいずれか1項に記載のロールベーラ。
【請求項12】
前記ロールベーラの成形機構が、チェーン方式、ベルト方式、または、ローラ方式であることを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか1項に記載のロールベーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールベーラに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、圃場を走行車で牽引されながら、集草されてウィンドロウとされた成形材料をピックアップすると共に、成形室に送り込み、送り込まれた成形材料を成形ローラの回転により、成形材料を混合・圧縮し円柱状のロールベールに成形することができるロールベーラが知られている(特許文献1)。ロールベールが成形室内で適正な大きさになったことを検知してから一定時間後にネット装置(梱包材供給機構)からネット(梱包材)を成形室内に供給して、このネット(梱包材)をロールベールに巻き付ける。その後、梱包が終了したロールベールは、ロールベーラ後方に向かって排出される。
ロールベールが適正な大きさになったか否かの判断は、成形室の横幅が決まっていることから、ロールベールの径や体積に関連するパラメータを検出し、走行車を停止させるなどして、それ以上成形材料が成形室に送り込まれないようにし、ロールベールに対してネット(梱包材)による梱包が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-31659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロールベーラでは、なぜか、ロールベールの品質(圧縮され高密度になっている)が安定せず、同じ圃場内の同じ作業で作成されたロールベールであっても品質に違いがあることが判明した。
本発明は、品質の安定したロールベールを作成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、 ロールベールの大きさ検出器と制御部を備え、前記ロールベールの大きさ検出器は、ロールベール径、重量、または体積を検出するものであり、前記制御部は、前記ロールベールの大きさ検出器が、ピーク値を検出した時点を起点として所定時間経過したとき、梱包材繰り出し信号を出力する、または、前記ロールベールの大きさ検出器が、ピーク値を起点として、前記ピーク値より所定値小さい第2の値を検出したとき、梱包材繰り出し信号を出力する
ことを特徴とするロールベーラとすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
圧縮され高密度となり、大きさにもバラつきの無いロールベールを作ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ロールベーラの内部構造図。(A)ピックアップ送り込み機構と成形機構の内部構造図。(B)リンク機構を中心とした成形機構外部の概念図。
図2】開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)の動作を説明する説明図。(A)固定側半部と可動側半部が開く前の状態のリンク機構の位置を示す説明図。(B)固定側半部と可動側半部が開いた状態のリンク機構の位置を示す説明図。
図3】開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)から開度検出値を受けた制御部の動作を示す概念図。
図4】開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)からの出力の推移を表すグラフ。
図5】ロールベールの、成形機構内での成形過程を示す概念図。(1)~(9)は時系列を示す。
図6】牧草塊がピックアップ送り込み機構から成形機構内で混合・圧縮されるまでの様子を示す説明図。(1)~(4)は時系列を示す。
図7】所定時間に遅延時間が加わる場合の開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)から開度検出値を受けた制御部の動作を示す概念図。
図8】ピーク開度(ピーク値)213の誤検出防止の説明図。(A)誤検出防止のフローチャート。(B)誤検出が起き得る状況を示す説明図。
図9】リミットスイッチ群を利用した開度検出器
図10】ゲート開閉アクチュエータの流体圧を利用した開度検出器の説明図。(A)ゲート開閉アクチュエータと可動側半部と固定側半部との位置関係を示す斜視図。(B)油圧回路の部分図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(ロールベーラ)
本発明でいうロールベーラ1は、自走式及び牽引車(トラクタ等)によって牽引される牽引式、装架される装架式など走行装置の形式は問わない。
【0009】
(ロールベール)
本発明でいうロールベールRは、作物をロールベーラ1などのロールベール成形装置によって、円柱状に圧縮成型したものであり、作物とは、ワラ、ソルガム、デントコーンや牧草などの植物などである。また、ロールベールRは圧縮され高密度になると、ラップサイレージ発酵において、ベールごとの発酵品質のムラが少なくなること、また、不良発酵を生じさせる菌が少なくなり、乳酸が優先するサイレージとなるなど有利な点が多い。さらに、ラッピングマシンでラッピングしたロールベールRをベールグリッパで掴んで持ち上げる際、ロールベールRが柔らかい(十分圧縮されていない)と、ロールベールRの凹みが大きく、表面のラップに孔が開くようなことも起きやすくなる。ロールベールRは、十分に圧縮され、高密度に仕上げられることで、硬く締まったロールベールRとなり、ラップに孔が開くことが防止されるものとなる。
また、ロールベールRは、倉庫などに保管(特に乾燥ワラや乾燥牧草)するとき段積みされる。ロールベールRが柔らかい(十分圧縮されていない)と安定せず崩れる可能性がある。
【0010】
(梱包材)
梱包材は、ネット、トワイン、フィルム、不織布など様々であり得る。そして、本発明でいう梱包材は、ロールベーラ1からロールベールRが放出される直前に、ロールベールRに対して梱包するものであればどのようなものでも包含する。
【0011】
(実施例1)
図1は、ロールベーラ1の内部構造図あり、図1(A)はピックアップ送り込み機構13と成形機構14の内部構造図である。ロールベーラ1が牧草をピックアップするところから順に説明する。ロールベーラ1は、前に向かって走行しながら、ウィンドロウWをプレスローラ135で平坦にし、ピックアップ送り込み機構13の一部であるピックアップ131で牧草を取り込む。クロップカバー132は、牧草の円滑な供給を補助する。ピックアップ送り込み機構13には、切断刃134が間隔を空けて複数設けられている。ロータ133の周囲には、搬送爪1331が多数取り付けられており、切断刃134に牧草を押し付け切断しつつ成形機構14に切断した牧草を送り込む。
【0012】
成形機構14の内周面には、駆動する多数の成形ローラ143が設けられている。成形機構14に送りこまれた牧草は、成形機構14内に既に送り込まれた牧草と攪拌・混合されつつ、回転する多数の成形ローラ143により円柱状のロールベールRに成形されて行く。なお、実施例1の成形機構14は、成形ローラ143を使用するローラ方式のものであるが、チェーン方式やベルト方式のものであってもよい。本発明は、成形方式を問わない。
成形機構14は、円柱を二つに割ったような固定側半部141と可動側半部142の2つの部材により構成されており、ゲート開閉軸144を中心に、可動側半部142が矢印方向に開くようになっている。
成形機構14の固定側半部141の上方には、梱包材供給機構81が設置されている。
【0013】
ロールベールRの径(体積)は、ピックアップ送り込み機構13によって送り込まれた牧草により徐々に大きくなってくる。やがて、ロールベールRの径(体積)が成形機構14内の空間に収まらなくなる大きさとなる。その時、可動側半部142は、徐々に径(体積)が大きくなったロールベールRに押されて開いてゆく。
図1(B)はリンク機構16を中心とした成形機構14外部の概念図である。掛止部15は、固定側半部141と可動側半部142の間に架け渡され、両者が開放しないように掛止している。掛止部15にはリンク機構16が設けられており、リンク機構16の途中には、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21と当接する当接部217が設けられている。開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の下部は、検出器軸216で回動するようになっており、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の上部はリンク機構16に設けた当接部217と当接しており、リンク機構16が動くことで、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の角度が変わるようになっている。
【0014】
(ロールベールの大きさ検出器)
図2は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の動作を説明する説明図である。図2(A)は、固定側半部141と可動側半部142が開く前の状態のリンク機構16の位置を示す説明図である。掛止部15は、固定側半部141、可動側半部142の間を掛止ており、リンク機構16と接続されている。リンク機構16は、スプリング161で引っ張られており、走行中にリンク機構16が動かないようなっている。そして、リンク機構16を構成する部品は互いに動くようになっており、リンク機構の部品の一部に当接部217が設けられ、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21と当接するようになっている。
なお、ロールベールRを放出する際には、シリンダで駆動する掛止解除リンク機構151が掛止部15の掛止を解除するように構成されている。
【0015】
図2(B)は、固定側半部141と可動側半部142が開いた状態のリンク機構16の位置を示す説明図である。ロールベールRが成形機構14の内部で大きくなると、成形機構14の内部空間に収まりきれなくなり、やがて可動側半部142を押圧し、ロールベーラ1の上部に設けられたゲート開閉軸144を軸にして可動側半部142が開き出す。その結果、可動側半部142の下方に隙間215ができるようになる。掛止部15が架け渡されることで、可動側半部142が完全に開くことを防止している。隙間215の開度は、掛止部15からリンク機構16に伝わり、リンク機構16を動かす。
【0016】
リンク機構16は、当接部217の設けられたリンク機構16の部品が大きく動くように設計されており、隙間215の大きさを増幅し当接部217を介して、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21へと伝える。開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21は、当接部217によって検出器軸216を中心に隙間215(開度)の大きさ応じた角度になるように回動し、隙間215(開度)の大きさを角度に変換して制御部3へと送る。
【0017】
(制御部)
図3は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21から開度検出値を受けた制御部の動作を示す概念図である。開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21は、開度検出値を制御部3へリアルタイムで送っている。制御部3は、受信した開度検出値に基づいて、走行停止信号31を出力する。出力された走行停止信号31は、制動部312に送られ、ロールベーラ1の走行を停止する。手動で操作をする場合は、走行停止信号31は報知装置311に送られ、光、音、画像等の報知手段により作業者に走行停止操作を促す。また、制御部3により走行停止を行う場合、自動的に走行が停止する。もちろん、制御部3により走行を停止する場合であっても、報知装置311による報知を行ってもよいし、いずれか一方を作業者が選べるようにしてもかまわない。
【0018】
また、後述するように、制御部3は、走行停止信号31を出力した後に、成形機構14内のロールベールRに対して、梱包材供給機構81に向けて梱包材繰り出し信号32を出力し、梱包材を巻き付ける制御を行う。前述した走行停止と同様に、手動で梱包操作を行なってもよい。
制御部3により梱包を行う場合であっても、報知装置311による報知を行ってもよいし、いずれか一方を作業者が選べるようにしてもかまわない。
【0019】
(ロールベールの大きさ検出器の出力の推移)
図4は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21からの出力の推移を表すグラフである。
検出開始開度211は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21から検出値が送られ始めた点である。成形機構14の内部空間で作られるロールベールRは、内部空間よりロールベールRの大きさが大きくならないと可動側半部142が動かず、隙間215ができないため検出値は0である。検出開始開度211を検出した後もロールベーラ1の走行が続いているため、牧草が成形機構14に送りこまれ、ロールベールRは大きくなり続け、ロールベールRの大きさに比例する検出値は上昇を続ける。
【0020】
第1の開度(第1の値)212は、ロールベーラ1のハード面(機種等)によって決まる成形機構14内がロールベールRで満杯となった値である。実施例1の制御部3は、第1の開度(第1の値)212になると走行停止信号31を出力する。
作業者が手動で走行停止の操作する場合、または、制御部3が走行停止を行う場合のいずれの場合であっても、瞬間的に走行を停止できるわけではない。特にロールベーラ1の速度が速い場合や大型のロールベーラ1では、走行停止信号31が発せられたり、走行停止の手動操作をしてから実際に停止するまで時間を要する。また、走行を停止してもピックアップ送り込み機構13にはまだ牧草が残っており、成形機構14へ牧草の送り込みが続く。
これらの事情から、走行停止信号31が発せられる第1の開度(第1の値)212となった後も、ロールベールRは大きくなり続ける。やがて、成形機構14へ送り込まれる牧草が無くなり、ロールベールRはそれ以上大きくなれなくなる(ピークの径となる)。開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21は、この時、検出値sとしてピーク開度(ピーク値)213を出力する。
【0021】
(ロールベールの大きさの検出器の変形例)
ロールベールの大きさ検出器2は、ロールベールRの大きさを検出できるのであれば、どのような検出器でもよい。実施例1では、ロールベールRの直径に比例する隙間215の開度を、リンク機構16と開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21により、角度に変換して、間接的にロールベールRの大きさを検出した。直接ロールベールRの大きさ、例えば、直径や体積を測定する装置であってもよい。また、ロールベールRの大きさを様々なパラメータに変換して測定してもよい。実施例1では、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)から検出される角度そのものをロールベールRの径と紐づけて検出しているように、検出値自体がロールベールRの直径や体積でなくても構わない。ロールベールRの大きさと等価となり得る様々なパラメータの検出器を包含する。
ただし、体積や径を測定し、重さと併せて密度を測定値とする場合は、同じ単位重量である場合、密度が小さい方がロールベールRの径や体積は大きい。そのため、大きさを表す場合、図4のグラフは上下逆になる。本発明のロールベールの大きさ検出器2は、実質的に等価なこのような変形例を含む。他の変形例については後述する。
【0022】
(発明者の発見)
以上のように、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の検出値が推移することは、これまでも知られていた。そして、ピーク開度(ピーク値)213を迎えると、牧草が成形機構14へ送り込まれることがないため、ロールベールRの大きさは、ピーク開度(ピーク値)213を保ったまま推移すると思われていた。
ところが、実際にピーク開度(ピーク値)213になった以降も測定を続けると、ピーク開度(ピーク値)213を迎えた後に、急激にロールベールRの大きさ(径)が小さくなることが、図4に示す開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の検出値から判明した。
これは、予想外のことであって、調べたところ、新たな牧草が成形機構14に送り込まれることが無いまま、ロールベールRは成形機構14内で成形ローラ143により強制的に回転され続け、いびつであったロールベールRの断面が円形に近づき、また、硬くしまり、大きさ(径)が減少していることが分かった。
【0023】
図4のように、ピーク開度(ピーク値)に到達してから、20秒程度経過すると、開度の検出値は減らなくなり、グラフは平坦になって行く。この時点で、梱包材を繰り出し、被覆し、可動側半部142を開放して、ロールベールRを放出してロールベールRの特性を調べてみたところ、圧縮され密度が高く、目立った凹凸の無いきれいな円柱状のロールベールRとなっていた。
【0024】
(走行停止)
前述したように、ロールベールRの梱包を行うために必要な走行停止を自動制御によって行うため、実施例1では制御部3は、第1の開度(第1の値)212になると走行停止信号31を出力するようになっている。他の態様として、第1の開度(第1の値)212になると、作業者に走行停止の手動操作を促すため、報知装置311は、制御部3から出力された走行停止信号31を受け、光、音、画像等の報知手段により報知を行うようにしてもよい。
【0025】
(梱包材繰り出し信号出力のタイミング)
従来の制御部3は、走行停止信号31を発するタイミングを起点として、あらかじめ決められた時間経過したことで梱包材繰り出し信号32を出す制御をしていた。走行停止信号31を起点とした場合、走行停止信号31を発してから停止まで至る時間は、走行速度や圃場の乾燥具合等によって微妙に異なる。完全に停止する前に、梱包材繰り出し信号32が発せられることもあった。搬送中の牧草Gが一時的に引っ掛かり動かなくなるなど、成形機構14に対し、牧草が最後に送り込まれるタイミングが変わることがあり得る。
【0026】
図5は、ロールベールRの、成形機構14内での成形過程を示す概念図である。(1)~(9)は時系列を示す。成形機構14は、牧草の混合、圧縮に加え、ロールベールR円周面の均平化などの役割を果たしている。
【0027】
図5(1)の時点は、ロールベーラ1の通常作業時の様子である。その後、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21が第1の開度(第1の値)212を検出したと制御部3が認識すると、その時点で走行停止信号31が出力される。または、ロールベールRを梱包すべく走行停止の手動操作を行う時点がある。その時点は、図5(1)と(2)の間であり、制御部3から走行停止信号31が出力される、または、走行停止の手動操作がなされる。実際には、走行停止信号または手動で走行停止がなされたとしても、直ちにロールベーラ1が停止することはできず徐々に減速するため、ロールベーラ1が走行を停止するまで、ロールベーラ1はウィンドロウWの牧草を取り込み続ける。走行速度が速ければ、より多くの牧草が取り込まれる。
【0028】
図5(2)は走行停止した時点であっても、ピックアップ送り込み機構13にはまだ牧草が残っており、牧草が成形機構14へと送り込まれ続ける。図5(3)は、ロールベーラ1が走行を停止した若干後の時点であり、搬送中の牧草Gが存在する様子が図示されている。図5(4)の時点になると、搬送中の牧草Gはすべて成形機構14内に取り込まれている。図5(5)の時点になると、成形機構14内のロールベールRに比べ密度の低い搬送中の牧草Gは成形中のロールベールRと多数の成形ローラ143に挟まれて薄く引き伸ばされて行く。開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21でピーク開度(ピーク値)213が検出されるのは、図5(4)~(5)の時点である。
【0029】
図5(6)や図5(7)の時点になると、成形機構14に送り込まれた牧草は、成形中のロールベールRの周面に層状に広がるように、混合されながら圧縮されて行く。円柱形をしたロールベールRの底面や上面が層を重ねたように見えるのはこのためである。圧縮がなされるため、図4のグラフのようにロールベールRの大きさはピーク開度(ピーク値)213より小さくなって行く。図5(8)の時点になると、新たな牧草の送り込みがないため図5(7)の時点より、ロールベールR周面の凹凸が減り、形状が円柱に近づいてくる。図5(9)の時点になると、圧縮されきれいな円柱状となったロールベールRとなる。
ピーク開度(ピーク値)213が検出された以降の図5(6)の時点から図5(9)の時点までに要する時間は、バラつきが少なかった。
【0030】
従来の走行停止信号31を発するタイミングを起点として、梱包材繰り出し信号32を出力するように制御した場合、ロールベールRごとに、搬送中の牧草Gが最後に成形機構14へ送り込まれるタイミングにバラつきがあり、ロールベールRの品質に影響を与えていることが判明した。つまり、ロールベールRごとに走行停止信号31を発するタイミングからロールベールRがピーク径となるタイミング(ピーク開度(ピーク値)213となるタイミング)までの時間がバラつき、一定していないのである。走行停止信号31を発するタイミングを起点として、所定時間t1経過するなどの梱包材繰り出し制御を行った場合、どうしてもロールベールRの品質が安定しない結果となる。
【0031】
そこで、実施例1の制御部3は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21がピーク開度(ピーク値)213を検出した時点を起点として、所定時間t1経過する、または、ピーク開度(ピーク値)213を起点として、ピーク値より所定値小さい第2の開度(第2の値)214を検出したときなどにより梱包材繰り出し信号32を出力するタイミングを決めるようにした。このようにすることで、ロールベールごとに時間間隔がバラつく時間帯[走行停止信号31を出力する第1の開度(第1の値)212を検出してからピーク開度(ピーク値)213となるまでの時間帯]を制御から排除できることとなった。この工夫により、ロールベールRの品質のバラつきをなくすことができた。
ここで、「ピーク値より所定値小さい第2の開度(第2の値)214」の意味を説明する。所定値とはあらかじめ設定することができる。ロールベールの大きさ検出器2がロールベールRの径を測定するものであれば、所定値とは、あらかじめ設定した2cmなどcm単位の設定値となる。ロールベールRの径のピーク値が100cmであるとすると、「ピーク値を起点として、ピーク値より所定値小さい第2の開度(第2の値)214」とは、すなわち、ピーク値100cmを超えた後に、所定値(設定した値2cm)小さいことを意味する。すなわち、98cmが、第2の開度(第2の値)214となる。
前述したように、同じロールベーラ1でもロールベールRごとに微妙に径が異なる。次のロールベールRのピーク値が102cmであれば、ピーク値(102cm)より所定値(設定した値2cm)小さい100cmが「ピーク値より所定値小さい第2の開度(第2の値)214」となる。このタイミングで、梱包材繰り出し信号32が出力される。
また、所定値を比とすることもでき、ピーク値を100cmとしたとき、ピーク値より3%小さい第2の開度(第2の値)214は、97cmとなる。
ロールベールRの大きさと等価となり得る様々なパラメータの検出器を包含するため、所定値の単位はcmとばかりとは限らない。ロールベールの大きさ検出器2が体積を計測するものであれば、同様に所定値(体積値)を予め設定しておき、ピーク値となる体積から所定値(設定した体積値)小さい値が、「ピーク値より所定値小さい第2の値214」となる。
所定値は、ピーク値に連動して変動するものであってもよい。
【0032】
制御部3が梱包材繰り出し信号32を出力するタイミングは、ロールベールRの品質から観れば、ピーク開度(ピーク値)213を検出した時点を起点として、十分な時間(所定時間t1)が経過した時点、あるいは、ピーク開度(ピーク値)213を起点として、ピーク値より十分小さい(ピーク値より所定値小さい)第2の値214が検出されたときが好ましい。しかし、品質を重視しすぎると、梱包材繰り出し信号32を出力するまで時間を要し、作業効率が悪くなる。
作業効率を重視する場合、ピーク開度(ピーク値)213を検出した時点を起点とした所定時間t1は、短い方が良い。また、ピーク開度(ピーク値)213を起点として、ピーク値より所定値小さい第2の値214は、ピーク開度(ピーク値)213に近い方が良い。
【0033】
そこで、作業効率とロールベールRの品質を総合的に考慮して、ピーク開度(ピーク値)213を起点として、所定時間t1経過する時間の長さを決めることが好ましい。または、作業効率とロールベールRの品質を総合的に考慮して、ピーク開度(ピーク値)213を起点として、ピーク値より所定値小さい第2の開度(第2の値)214を決めることが好ましい。
実施例1によれば、品質を重視しても、作業効率を重視しても、従来のロールベールRより品質のバラつきの無いロールベールRが作られることにおいて変わるところはない。
【0034】
(実施例2:ロールベールの異質化要因検出)
実施例2は、大きな牧草塊Mや平均的な量よりかなり多い牧草量によるロールベールR異質化要因に焦点を絞った実施例である。梱包材繰り出し信号32出力のタイミングが異なる他は、実施例1のロールベーラ1と大きく違う点はない。
ウィンドロウWには、牧草の量が多い場所や少ない場所があり、必ずしも一様ではない。また、絡み合って大きな牧草塊Mとなっている場所がある。そのため、大きな牧草塊Mや平均的な量よりかなり多い牧草量がピックアップ送り込み機構13で搬送され、成形機構14に送り込まれることがある。
図6は、牧草塊Mがピックアップ送り込み機構13から成形機構14内で混合・圧縮されるまでの様子を示す説明図である。図6(1)~(4)は時系列を示す。図6(1)のように通常走行中に大きな牧草塊Mがピックアップ送り込み機構13に入ると、詰まりを防止するため、スプリング(図示せず)に支えられたボトムプレート136が下降する。ボトムプレート136が降下するため、一部充分にカッティングされていない牧草が残る。
【0035】
図6(2)は、手動による走行停止操作又は制御部3から走行停止信号31が出力された時点である。いずれの場合でも減速し停止するまで時間がかかる。図6(3)の減速した状態となってもウォンドロウWから牧草をピックアップし続け、図6(3)を経て図6(4)の時点で走行が停止する。走行を停止した時点でも、ピックアップ送り込み機構13には少量の搬送中の牧草Gが残っている。
【0036】
牧草塊Mの牧草は、十分にカッティングされた牧草より混合・圧縮されるのに時間がかかり、ロールベールRの異質化要因となり得る。また、図6(1)で示されているように、異質化要因となる牧草塊Mがピックアップ送り込み機構13に送り込まれるのは、手動による走行停止操作又は制御部3から走行停止信号31が出力された図6(2)時点より前の図6(1)の時点である。つまり、異質化要因は、手動による走行停止操作又は制御部3から走行停止信号31が出力される図6(2)時点より前に始まっている。
【0037】
この間に、大きな牧草塊Mや平均的な量よりかなり多い牧草量が成形機構14に送り込まれると、「ロールベールの大きさ検出器2がピーク値を検出した時点を起点として、所定時間t1経過したとき」になっても、混合・圧縮が不十分で牧草塊Mにより表面にコブができたロールベールRとなったり、大量に送り込まれた牧草により表面のみが硬く締まっていないロールベールRができたりする。
【0038】
発明者は、このような異質化要因があっても、送り込まれた牧草を、混合・圧縮する工程(図5(4)~図5(9)の工程)の時間を長くすることで異質化を防止できることを発見した。牧草塊Mや大量に送り込まれた牧草は、成形機構14内で長い時間にわたって混合・圧縮を受けることで、品質の良いロールベールRとなる。
【0039】
この問題を解決するための実施例2では、異質化要因となるピックアップ送り込み機構13上の牧草量または牧草塊Mを検出する牧草量検出器として、ボトムプレート開度検出器1361を設けることとした。ボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)は、常に作動しており、ボトムプレート開度検出器1361からの検出値が制御部3に送られると、制御部3は、常に送られてくる検出値を時系列に沿って記憶部(図示せず)に記憶する。
ロールベーラの大きさ検出器2の検出値が、例えば、第1の開度(第1の値)212を検出すると、制御部3は走行停止信号31を出力する。そして、制御部3は、走行停止信号31を受けて制動を開始する。または、制御部3が出力する走行停止信号31を受けて報知装置311が走行停止を作業者に促す報知が行われる、または、作業者自身が目視で可動側半部142の開き具合などを判断するなどして、作業者は、走行停止の手動操作を行う。
図6(2)は、この制御部3が走行停止信号31を受けて制動を開始する時点、または、作業者が手動で走行停止操作をした時点である。
図7の、第1の開度(第1の値)212となった時点を、この制御部3が走行停止信号31を出力し走行停止を開始する時点、または、作業者が手動で走行停止操作をした時点として順に説明する。
【0040】
(制御部が走行停止信号を出力し、制動を開始する時点)
図7は、所定時間に遅延時間が加わる場合の開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21から開度検出値を受けた制御部3の動作を示す概念図である。
制御部3が走行停止信号31を出力し制動を開始した時点は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21が第1の開度(第1の値)212を検出した時点である。
制御部3が走行停止信号31を出力すると、制御部3は、走行停止信号31を出力した時より規定時間t3前の時点からのボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の時系列検出値を記憶部から読み出す。加えて、制御部3は、走行停止信号31を出力した以降に送られてくるボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の検出値も監視することで、「走行停止信号31を出力した時より規定時間前t3以降」途切れなくボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の検出値を取得することができる。図7の「規定時間前以降」と記した矢印は、途切れなく連続したボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の時系列検出値を得ることができることを示している。
制御部3は、走行停止信号31を出力した規定時間t3前以降に、前記ボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)が、所定の大きさより大きい牧草塊Mを検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、ロールベールの大きさ検出器2がピーク開度(ピーク値)213を検出した時点を起点として、「所定時間t1に遅延時間t2を加えた時間」が経過したとき、梱包材繰り出し信号32を出力するようにした。
【0041】
次いで、手動で走行停止する場合について説明する。ボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)は、常に作動しており、制御部3は、常に送られてくるボトムプレート開度検出器1361からの検出値を時系列に沿って記憶部(図示せず)に記憶する。作業者は、可動側半部142の動きから目視で第1の開度(第1の値)212となったことを知る。あるいは、作業者は、制御部3が出力する走行停止信号31により報知装置311から報知が行われることでロールベールRが梱包するに適した大きさになりつつあることを知る。
作業者は、次いで走行停止の手動操作を行う。第1の開度(第1の値)212となった報知がなされたとしても、作業者は瞬時に走行停止することは困難であるし、可動側半部142の動きから目視で走行停止の手動操作を行う場合は作業者の判断に揺らぎがあるため、常に同じ開度で走行停止の手動操作が行われることはないものの、おおよそ第1の開度(第1の値)212となった時点に走行停止の手動操作が行われる。
制御部3は、走行停止の手動操作が行われたことを検出すると、その時点から規定時間t3前のボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の時系列検出値を記憶部から読み出す。加えて、制御部3は、走行停止信号31を出力した以降に送られてくるボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の検出値も監視することで、「走行停止信号31を出力した時より規定時間前t3以降」のボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)の連続した検出値を取得することができる。
制御部3は、走行停止信号31を出力した規定時間t3前以降に、前記ボトムプレート開度検出器1361(牧草量検出器)が、所定の大きさより大きい牧草塊Mを検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21がピーク値を検出した時点を起点として、「所定時間t1に遅延時間t2を加えた時間」が経過したとき、梱包材繰り出し信号32を出力するようにした。
【0042】
以上のように、「所定時間t1に遅延時間t2を加えた時間」と長時間にわたり成形機構14で成形がなされるため、所定の大きさより大きい牧草塊Mや所定の量より多い牧草量が、梱包材繰り出し信号32を出力する直前に成形機構14に送り込まれたとしても、品質のよいロールベールRを作ることができる。
規定時間t3は、走行速度やウィンドロウWの平均的な牧草量を考慮して決めてもよいが、一律同じ規定時間t3としてもよい。一律同じ規定時間t3とする場合は、安全を見込んで長めに設定することが好ましい。
遅延時間t2は、牧草塊Mの大きさや牧草の量に比例して長くしてもよいし、一律同じ遅延時間t2としてもよい。一律同じ遅延時間t2とする場合は、安全を見込んで長めに設定することが好ましい。
【0043】
実施例2は、「走行停止の手動操作した規定時間t3前以降に、または。前記制御部3が走行停止信号31を出力した規定時間t3前以降に」という終点を決めない期間(最長、梱包材繰り出し信号32が出力されるまでの期間)とした。ピックアップ送り込み機構13に搬送中の牧草Gが存在し無くなれば、それ以降大きな牧草塊Mや、所定より多い牧草量を検出することがあり得ないからである。しかし、少なくともすべての牧草がピックアップ送り込み機構13から成形機構14へ送り込まれるまでの時点を別途検出して終点としてもよい。大きな牧草塊Mが引っ掛かり、動かなくなっている場合など、すべての牧草がピックアップ送り込み機構13から成形機構14へ送り込まれるまでの時間は状況により変動するから、終点をあまり厳密に決める必要はない。
【0044】
異質化要因を検出する牧草量検出器は、図5(3)に示されたボトムプレート136やクロップカバー132の作動を検出する検出器やカメラや光学センサ・音波センサなどの非接触センシングなど牧草塊Mの大きさや牧草の量を直接検出する検出器であってもよい。また、エンジン回転数の低下などを検出する検出器など、牧草塊Mの大きさや牧草の量を間接的に検出する検出器であってもよい。さらに、複数の検出器からの情報を総合して牧草量検出器としてもよい。
【0045】
(実施例3)
実施例2は、実施例1の「ロールベールの大きさ検出器2がピーク値を検出した時点を起点」とする制御の変形例であったが、実施例2の技術的事項は、「ロールベールの大きさ検出器2がピーク値を検出した時点を起点」とするものでなくても、応用可能である。
図示はしないが、「ロールベールの大きさ検出器2が、所定の値を検出した時点」とする、例えば、制御部3が、走行停止信号31を出力するタイミングとなる開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21が第1の開度(第1の値)を検出した時を起点として所定時間t1経過したとき、梱包材繰り出し信号32を出力するものであっても適用可能である。
【0046】
制御部3が、どの時点を起点として梱包材繰り出し信号32を出力するかにかかわりなく、大きな牧草塊Mや平均的な量よりかなり多い牧草量が、ロールベールRの異質化要因になることには変わりはない。
実施例2と同様に、走行停止の手動操作した規定時間t3前以降に、または、制御部3が走行停止信号31を出力した規定時間t3前以降に、牧草量検出器2が、所定の大きさより大きい牧草塊Mを検出した場合、または、所定より多い牧草量を検出した場合に、ロールベールの大きさ検出器2が所定の値を検出した時点を起点として、所定時間t1に遅延時間t2を加えた時間が経過したとき、梱包材繰り出し信号32を出力するように構成することができる。
【0047】
(実施例4:異質化要因検出の応用)
異質化要因を検出するボトムプレート開度検出器1361などの牧草量検出器を常時作動させているので、牧草が詰まることを事前に回避することにも使用することができる。所定の大きさ以上の牧草塊Mや所定の量を超えた牧草量がピックアップ送り込み機構13に送り込まれることは、梱包するか否かにかかわりなく搬送中の牧草Gが詰まる原因となる。
所定の大きさ以上の牧草塊Mや所定より多い牧草量がピックアップ送り込み機構13に入ったことが検出された場合、制御部3は、詰まりを回避するためボトムプレート136向けて下降する信号を出力することができる。
実施例4は、実施例1~3と併存させても何ら問題は起きない。
【0048】
(ピーク値誤検出防止)
図8は、ピーク開度(ピーク値)213の誤検出防止の説明図であり、図8(A)は誤検出防止のフローチャートである。また、図8(B)は誤検出が起き得る状況を示す説明図である。
図8(B)のように、牧草がピックアップ送り込み機構13などに一時的に詰まり、成形機構14への牧草の送り込みが止まることにより検出値sが徐々に下がりあたかもピーク開度(ピーク値)213のような、偽ピーク開度(偽ピーク値)219が現れることがある。
実施例では、まず、ピーク開度(ピーク値)閾値sfを定め、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の検出値sが、ピーク開度(ピーク値)閾値sfを超えていない場合は、ピーク開度(ピーク値)213である判断をしないこととした。また、実施例では、第1の開度(第1の値)212をピーク開度(ピーク値)閾値sfとしている。前述したように、第1の開度(第1の値)212を迎えることで、走行停止信号31が制御部3から出力されるが、ロールベーラ1が停止するまでの時間および停止した後も搬送中の牧草Gがあるから、しばらくの間、ロールベールRは大きくなり続ける。
【0049】
制御部3は、常に開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21が出す検出値sを読み込んでおり、ピーク開度(ピーク値)閾値sf以上の検出値sが検出される領域に達すると、最大検出値Smaxが検出された時点をいわば仮のピーク開度(ピーク値)213として記憶する。新たな検出値sが読み込まれて、最大検出値Smaxが更新され続けている場合は、ピーク開度(ピーク値)213を迎えていないということであり、ピーク開度(ピーク値)213は確定しない。最大検出値Smaxの更新がなされなくなったとき(すなわち、新たに読み込まれた検出値sが小さくなり続けているとき)、その最大検出値Smaxは、ピーク開度(ピーク値)213である可能性が出てくる。
【0050】
ただし、制御部3は、最大検出値Smaxが計測されたとしても、直ちにピーク開度(ピーク値)213であると判断しない。繰り出しタイマー設定値Tdを設け、最大検出値Smaxが検出されると繰り出しタイマーT(常に減算)が作動し、Tdが0秒となるまの間に、新たな最大検出値Smaxの更新があった場合、先に検出した最大検出値Smaxをピーク開度(ピーク値)213としないこととした。このため、偽ピーク開度(偽ピーク値)219は排除されることとなる。
【0051】
最大検出値Smaxが計測された後、繰り出しタイマー設定値Tdが0秒となるまの間に検出された検出値sが最大検出値Smaxとして更新されなかったときに限り、ピーク開度(ピーク値)213とするようにした。
【0052】
図8(B)の制御を、フローチャートとしたのが図8(A)である。制御部3は、フローチャートの制御を開始する。ST1で制御部3は、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の検出値sを読み込む。次いで、これまでSmaxとなる検出値sが検出されていない場合は、その読み込まれた検出値sがSmaxとして記憶される。過去にSmaxとなる検出値sが検出されている場合は、ST2にて、記憶された最大検出値Smaxと読み込まれた検出値sが比較される。「if s>Smax」が「yes」だと、読み込まれた検出値sが、記憶された最大検出値Smaxを超えており、最大検出値Smaxが読み込まれた検出値sに書き換えられる。そして、繰り出しタイマー設定値Tdがセットされることで、常に減算している繰り出しタイマーTにより、繰り出しタイマー設定値Tdの減算が開始され、ST3に送られる。
【0053】
他方、ST2において「if s>Smax」が「no」だと、記憶された最大検出値Smaxより読み込まれた検出値sが小さくなっており、記憶された最大検出値Smaxがピーク開度(ピーク値)213である可能性が出てくる。そして、ST3に送られる。
【0054】
ST3では、ピーク値フラグPが確かめられ、ピーク値フラグP=0がyesだとST4に送られる。次いで、ST4では、読み込まれた検出値sとピーク開度(ピーク値)閾値sfが比較される。ST4で「s>sf?」が問い合わされ、これにより、現在の検出値sがピーク開度(ピーク値)閾値sfを超えていない限り、ピーク開度(ピーク値)213とならないように、制限がかけられる。ST4が「no」だと、読み込まれた検出値sがピーク開度(ピーク値)閾値sfに達していないため、ST1に戻される。
他方、ST4で「s>sf?」が「yes」だと、読み込まれた検出値sが、真のピーク開度(ピーク値)213である可能性が出てくる。ST5において、P=1とフラグが立てられるとともに、常に減算している繰り出しタイマーTにより、繰り出しタイマー設定値Tdの減算が開始され、ST1に戻される。
【0055】
次のループでは、P=1フラグが立っているため、ST3の「P=0?」という問い合わせに対しては、「no」となり、ST7へ送られる。ST7では、繰り出しタイマーTが繰り出しタイマー設定値Tdを使い切り、0になっているか否かが判断される。「T=0?」が「yes」だと、繰り出しタイマー設定値Tdの期間、記憶された最大検出値Smaxを超える新たな最大検出値Smax更新がなかった(ピーク開度(ピーク値)213である)として、ST8に送られる。ST8では、制御部3は梱包材繰り出し信号32を出力される。
【0056】
ST7で、繰り出しタイマーTが0になっていない場合、すなわち、ST7が「no」の場合、繰り出しタイマーTが0になるまでに新たな更新があり得るため、再びST1へ戻される。
このフローチャートでは、繰り出しタイマー設定値Tdが、ロールベールの大きさ検出器2が、ピーク開度(ピーク値)213を検出してから所定時間t1経過したときという条件の、「所定時間t1」に相当することとなる。
【0057】
この図8(A)のフローチャートは、偽ピーク開度(偽ピーク値)219を排除するのに有効である。時として、牧草がピックアップ送り込み機構13などに詰まり、検出値sが徐々に下がりあたかもピーク開度(ピーク値)213のように見えることがある。このような、誤検出を防ぐのに有効である。
【0058】
(ロールベールの大きさ検出器/リミットスイッチ式開度検出器)
ロールベールRの大きさの測定に関し、さらに具体的な変形例をいくつか示す。
図9は、リミットスイッチを利用した開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の例である。図2に示した開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の変形例であり、図9は掛止部15とリンク機構16の付近を拡大した図である。固定側半部141と可動側半部142は、ロールベールRが大きくなるに連れて回動し、ゲート145が開いてゆく。ゲート145の開き具合(開度)は、掛止部15が開く方向に動くことでリンク機構16に伝えられる。リンク機構16は、可動側半部142が開くと、矢印の方向に動く。リンク機構16には、リミットスイッチ押圧部23が設けられており、リミットスイッチ押圧部23は、固定側半部141に設けられたリミットスイッチ群22を開度に応じて押圧するようになっている。リミットスイッチ群22には、第1の開度212を検出する第1の開度検出スイッチ221とピーク開度検出スイッチ222が割り当てられており、開度に応じて制御部3へ信号を送る。
この方式の開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の出力は、ロールベールRの大きさがピーク開度検出スイッチ222の間隔によって離散的になるため、連続的に測定するものと比較して、細かな出力の変動が起きず、ノイズを拾いにくいという利点がある。また、壊れにくい。
【0059】
(ロールベールの大きさ検出器/圧力検出式開度検出器)
図10はゲート開閉アクチュエータ24の流体圧を利用した開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21の説明図であり、図10(A)はゲート開閉アクチュエータ24と可動側半部142と固定側半部141との位置関係を示す斜視図である。ゲート開閉アクチュエータ24は、実施例では複動型油圧シリンダであり、ボトム側を固定側半部141に支持されており、ピストンロッド243の先端は可動側半部142に取り付けられている。ゲート開閉アクチュエータ24は、ロールベーラ1の左右に一対取り付けられている。
ゲート開閉アクチュエータ24の近くには、可動側半部142のゲート開閉軸144が設けられている。固定側半部141と可動側半部142は、ゲート145を境に開くようになっており、可動側半部142がゲート開閉アクチュエータ24により大きく開くことで、成形され梱包材で包装されたロールベールRが放出される。
【0060】
ロールベールRの成形が開始され、成形機構14内に収まり切れない大きさになると、大きくなったロールベールRに負けてゲート145が開こうとして動く。ゲート145が開き出すとゲート開閉アクチュエータ24のピストンロッド243は、縮む方向に圧力を受ける。
図10(B)は油圧回路の部分図である。ピストンロッド243ゲート開方向に力を受けて縮もうとしている。ゲート開閉アクチュエータ24内のボトム側室242は、縮もうとするピストンロッド243の圧力を直接受けており、ボトム側室242内の圧力は上昇する。ボトム側室242内の圧力は、ボトム側室242と繋がる流路に設けられた圧力センサ25により測定される。
計測された圧力は、ロールベールRの大きさと関連し、ロールベールRの体積や径を反映したものとなるため、開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)21として使用することができる。
【0061】
また、成形機構14内に直接ロールベールRの成形圧を計測する圧力センサを設けてもよい。これもまた、ロールベールRの体積や径を反映したものとなる。
【0062】
(ロールベールの大きさ検出器/トルク検出器)
ロールベールRの大きさの測定に関し、間接的に大きさを測定することも可能である。例えば、ロールベールRの大きさがピーク値に到達すると、成形機構14内で成形中のロールベールRを回転させる負荷が大きくなり、PTO軸を通じてロールベーラ1を駆動する動力のトルクが最大となる。すなわち、ロールベーラ1を駆動する動力のトルクも間接的にロールベールRの大きさと関連している。このように、ロールベールRの大きさを測定することは、間接的な測定でもよく、直接的な測定である必要はない。
【0063】
(ロールベールの大きさ検出器/重量検出器)
ロードセルなどの重量検出器を成形機構14の下部に設けて、ロールベールRの重量のピークを測定してもよい。この場合、新たな牧草が成形機構14に送り込まれなくなった時が最も重量がピーク値となり減少することなく重量は平坦に推移する。そのため、前記ロールベールの大きさ検出器2(重量検出器)が、ピーク値を検出した時点を起点として所定時間t1経過したとき、梱包材繰り出し信号32を出力することとなる。
以上のように、ロールベールの大きさ検出器2は、実質的に新たな牧草が成形機構14に送り込まれなくなった時点がピーク値として分かればよく、ロールベールRの大きさと等価となり得る様々なパラメータの検出器を包含する。
【0064】
(複数の検出器の組み合わせによるロールベールの大きさ検出)
上述したロールベールの大きさ検出器2は、単独の検出器がロールベールRの大きさそのものに関連する情報を出力するものであった。
検出器が検出するパラメータは、ロールベールRの大きさと一見無関係であるが、状況的にロールベールRの大きさと相関関係が高い検出器であれば、本発明のロールベールの大きさ検出器2となり得る。例えば、車速や車輪の回転数を検出する検出器は、走行停止を確実に検知している。ピックアップ送り込み機構13に残った牧草が、走行停止してから成形機構14に送り込まれるまでの時間は常に同じであるとして、この時間を加えた時点をロールベールRの大きさのピーク値であるとする態様である。すなわち、これ以上牧草が成形機構14に送り込まれることは状況的にあり得ないからロールベールRの大きさのピーク値(容積または重量がピークとなったとみなせる)を検出しているといえる。ただし、様々な状況(例えば、梱包材を使い切ったとき、新たな梱包材を積み込む状況)でロールベーラ1が停止することはよくあることであり、誤検出が起き得る。
【0065】
そこで、個々の検出器はロールベールRの大きさそのものを検出していないが、複数の検出器からの情報を総合することでロールベールの大きさ検出器2として機能させることもできる。例えば、車輪の回転数が0になり停止したことを検出し、かつ、搬送中の牧草Gを検出する検出器が、ピックアップ送り込み機構13に牧草が残っていないことを検出したときロールベールRの大きさのピーク値を検出しているとしてもよい。
より具体的に説明すれば、枕地での旋回時に、一時的に搬送中の牧草Gがピックアップ送り込み機構13から無くなることがある。このため、搬送中の牧草Gを検出する検出器単独だと、ロールベールの大きさ検出器2とはなり得ない。枕地での旋回時には、車輪の回転数は0になっておらず、搬送中の牧草Gを検出する検出器と車輪の回転数検出器を組み合わせることで、誤検出の起きにくいロールベールの大きさ検出器2として機能させる。
なお、本発明のすべての態様において、枕地で誤検出が起きることや誤った操作により誤検出が起きることを防ぐため、旋回を検出する検出器や、上述のような検出器など様々な検出器を組み合わせて誤検出を防ぐことも本発明の態様に含まれる。
【0066】
(制御部)
制御部3は、一つの装置として存在する必要はなくソフトウエア上のモジュールであってもよい。また、実施例では、制御部3などについて説明してきたが、多機能制御装置のモジュールの一部となっていてもよいし、ネットワークでつながれて分散して配置されていてもよい。
【0067】
(設計変更)
以上、本発明に係る実施例のロールベーラ1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造や構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
これまで述べてきた通り、梱包材繰り出し信号32が出た後、梱包材を繰り出す操作は作業者が手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。また、ロールベーラ1の走行停止は、自動で行ってもよいし、作業者が手動で行ってもよい。
また、前述の実施例や実施形態は、その目的および構成などに特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【0068】
(持続可能な開発目標:SDGs)
また、本発明は均質なロールベールRの作成できるため、廃棄せざるを得ない不良なロールベールRの発生を抑制できる。これにより、資源の無駄を抑制し、持続的な生産パターンを確保することができるので、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1: ロールベーラ
13: ピックアップ送り込み機構
131: ピックアップ
132: クロップカバー
133: ロータ
1331:搬送爪
134: 切断刃
135: プレスローラ
136: ボトムプレート
1361:ボトムプレート開度検出器
14: 成形機構
141: 固定側半部
142: 可動側半部
143: 成形ローラ
144: ゲート開閉軸
145: ゲート
15: 掛止部
151: 掛止解除リンク機構
16: リンク機構
161: スプリング
2: ロールベールの大きさ検出器
21: 開度検出器(ロールベールの大きさ検出器)
211: 検出開始開度
212: 第1の開度(第1の値)
213: ピーク開度(ピーク値)
214: 第2の開度(第2の値)
215: 隙間
216: 検出器軸
217: 当接部
219: 偽ピーク開度(偽ピーク値)
22: リミットスイッチ群
221: 第1の開度検出スイッチ
222: ピーク開度検出スイッチ
23 : リミットスイッチ押圧部

24: ゲート開閉アクチュエータ
242: ボトム側室
243: ピストンロッド
3: 制御部
31: 走行停止信号
311: 報知装置
32: 梱包材繰り出し信号

81: 梱包材供給機構

G: 搬送中の牧草
M: 牧草塊
P: ピーク値フラグ
s: 検出値
sf: ピーク開度(ピーク値)閾値
Smax:最大検出値
T: 繰り出しタイマー(常に減算)
Td: 繰り出しタイマー設定値
W ウィンドロウ
t1: 所定時間
t2: 遅延時間
t3: 規定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10