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特許75810763d印刷物のz軸強度を向上させるための磁性粒子の利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】3d印刷物のz軸強度を向上させるための磁性粒子の利用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/336 20170101AFI20241105BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20241105BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241105BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20241105BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20241105BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20241105BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20241105BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241105BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241105BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20241105BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20241105BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241105BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20241105BHJP
【FI】
B29C64/336
B29C64/118
B29C64/153
B29C64/188
B29C64/295
B29C64/386
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/20
B33Y50/00
B33Y50/02
B33Y70/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021026438
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021146734
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】16/818,754
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】チュンリアン・ル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ウォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ランニ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・メルカンデッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ポーラック
(72)【発明者】
【氏名】チーミン・チェン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-063641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220442(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015016959(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F
B29C 64/00
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
ポリマー及び磁性粒子を含む印刷材料を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷することと、
前記3Dオブジェクトを前記ポリマーの融解温度の温度に加熱することと、
前記3Dオブジェクトに磁場を印加して、前記ポリマー中の前記磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、前記ポリマーを前記磁性粒子の周囲で融合させて、前記3Dオブジェクトのz軸における強度を向上させ、前記印加によって振動パターンに従って前記磁場を振動させて前記磁性粒子を前方向及び方向に回転させ前記3Dオブジェクトの様々な内部位置に局所的な熱を発生させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記印刷が、
前記ポリマーを用いて前記3Dオブジェクトの層を印刷することと、
前記層の上に前記磁性粒子を分配することと、
前記3Dオブジェクトが印刷されるまで前記層の前記印刷及び前記分配を繰り返すことと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷が、粉末焼結積層造形法(SLS)プリンタによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性粒子が、前記ポリマーと混合されて、前記磁性粒子を前記ポリマーの粒子に埋め込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記磁性粒子が、前記印刷材料の0.1重量パーセント~15重量パーセントを構成する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記磁性粒子が、1ナノメートル~5マイクロメートルの平均粒径を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記印刷が、熱溶解積層法(FDM)プリンタを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記磁性粒子が、延伸プロセス中に前記ポリマーの押し出されたフィラメント上に融合される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記磁性粒子が、1重量パーセント~10重量パーセントを構成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記磁性粒子が、10ナノメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記磁場は、約10ヘルツから500メガヘルツの範囲で振動させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数の命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに動作を実行させ、前記動作が、
ポリマー及び磁性粒子を含む印刷材料を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷することと、
前記3Dオブジェクトを前記ポリマーの融解温度の温度に加熱することと、
前記3Dオブジェクトに磁場を印加して、前記ポリマー中の前記磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、前記ポリマーを前記磁性粒子の周囲で融合させて、前記3Dオブジェクトのz軸における強度を向上させ、前記印加によって振動パターンに従って前記磁場を振動させて前記磁性粒子を前方向及び方向に回転させ前記3Dオブジェクトの様々な内部位置に局所的な熱を発生させることと、を含む、複数の命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記印刷が、
前記ポリマーを用いて前記3Dオブジェクトの層を印刷することと、
前記層の上に前記磁性粒子を分配することと、
前記3Dオブジェクトが印刷されるまで前記層の前記印刷及び前記分配を繰り返すことと、を含む、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記磁性粒子が、前記ポリマーと混合されて、前記磁性粒子を前記ポリマーの粒子に埋め込まれる、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記磁性粒子が、0.1重量パーセント~15重量パーセントを構成する、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記磁性粒子が、1ナノメートル~5マイクロメートルの平均粒径を有する、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記磁性粒子が、延伸プロセス中に前記ポリマーの押し出されたフィラメント上に融合される、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記磁性粒子が、前記印刷材料の1重量パーセント~10重量パーセントを構成する、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記磁性粒子が、10ナノメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有する、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
方法であって、
ポリマー及び磁性粒子を含む印刷材料を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷することと、前記磁性粒子が、1ナノメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有し、前記印刷材料の0.1重量パーセント~15重量パーセントを構成し、
前記3Dオブジェクトを前記ポリマーの融解温度の温度に加熱することと、
振動磁場を3Dオブジェクトに印加して、前記ポリマー中の磁性粒子を整列させ、振動パターンに従って前記磁性粒子を前方向及び方向に回転させ、前記3Dオブジェクトの層間の領域を溶融する熱を発生させ、層間のポリマー鎖の絡み合いを促進し、前記3Dオブジェクトのz軸における強度を向上させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して3次元(3D)印刷物に関し、より具体的には、3D印刷物のz軸強度を向上させるために3D印刷材料を用いた磁性粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dオブジェクトを印刷するために、3次元プリンタを使用することができる。3Dプリンタは、異なる種類の材料を使用して様々な異なる種類のオブジェクトを印刷するために使用することができる。3D印刷には、異なる種類のプロセスを使用することができる。例えば、3D印刷は、サブトラクティブプロセス(例えば、材料のブロックをエッチングして最終オブジェクトを印刷する)又は添加プロセス(例えば、3Dオブジェクトを層ごとに印刷する)を使用することができる。
【0003】
付加3D印刷プロセスの1つのタイプは、熱溶解積層法(FDM)であってもよい。FDMプロセスは、材料の層をプラットフォーム上に分配することができる。バインダ液は、材料の層上に印刷されてもよい。エネルギーは、層に印加されてもよく、バインダ液を受ける層の部分を互いに融合させることができる。プロセスは繰り返されてもよく、各層の非融合部分は、脱ケーキングプロセスによって除去されてもよい。しかし、現在のFDMプロセスは、比較的弱いz軸強度(例えば、層の断面方向)に悩まされる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に示される態様によれば、3D印刷物のz軸強度を改善するための方法、非一時的コンピュータ可読媒体、及び装置が提供される。実施形態の1つの開示された特徴は、ポリマー及び磁性粒子を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷し、3Dオブジェクトをポリマーのほぼ融解温度の温度に加熱し、3Dオブジェクトに磁場を印加してポリマー中の磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、磁性粒子の周囲でポリマーを融合させ、3Dオブジェクトのz軸強度を向上させる方法である。
【0005】
実施形態の別の開示された特徴は、複数の命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であり、複数の命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、ポリマー及び磁性粒子を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷する動作を実行させ、3Dオブジェクトをポリマーのほぼ融解温度の温度に加熱し、3Dオブジェクトに磁場を印加してポリマー中の磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、磁性粒子の周囲でポリマーを融合させ、3Dオブジェクトのz軸強度を向上させる命令を含む。
【0006】
実施形態の別の開示された特徴は、プロセッサと、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、ポリマー及び磁性粒子を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷する動作を実行させ、3Dオブジェクトをポリマーのほぼ融解温度の温度に加熱し、3Dオブジェクトに磁場を印加してポリマー中の磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、磁性粒子の周囲でポリマーを融合させ、3Dオブジェクトのz軸強度を向上させる複数の命令を記憶したコンピュータ可読媒体を含む装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の教示は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することによって容易に理解することができる。
【0008】
図1】本開示のシステムのブロック図を示す。
【0009】
図2】本開示のポリマー及び磁性粒子を使用して3Dオブジェクトを印刷する概略図を示す。
【0010】
図3】本開示のポリマー及び磁性粒子を使用して3Dオブジェクトを印刷する別の概略図を示す。
【0011】
図4】本開示の3D印刷物のz軸強度を向上させるための例示的な方法のフローチャートを示す。
【0012】
図5】本明細書に記載される機能を実施する際に使用するのに好適な例示的なコンピュータの高レベルブロック図を示す。
【0013】
理解を容易にするために、可能なかぎり、同一の参照番号が、図面に共通する同一の要素を示すのに使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、3D印刷物のz軸強度を向上させるために磁性粒子を含む方法及び印刷材料を広く開示する。上述のように、いくつかの3D印刷プロセスは、FDMプロセスを使用することができる。しかし、各層間の結合は、比較的弱い場合がある。したがって、z軸強度(例えば、3Dオブジェクトの各層を通って垂直に走る軸)は、比較的弱い場合がある。
【0015】
本開示は、磁性粒子を含む3D印刷用の独特の印刷材料を提供する。印刷材料は、粉末形態又はフィラメント形態であってもよく、FDM 3D印刷プロセスのために分配されてもよい。各層を印刷した後に磁場を印加して磁場を生成し、磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、層間のポリマー粉末を更に局所的に融合させ、層間の結合強度を向上させることができる。加えて、磁場は、磁性粒子を整列させ、結合強度を更に向上させることができる。その結果、本開示の方法及び印刷材料は、3D印刷物のz軸強度を向上させることができる。
【0016】
図1は、本開示の例示的なシステム100を示す。一実施形態では、システム100は、3Dプリンタ102、オーブン104、及び磁場116を印加するための装置106を含んでもよい。オーブン104及び装置106は、別個のデバイスとして示されているが、オーブン104及び装置106は、単一のデバイスとして組み合わせることができることに留意されたい。
【0017】
一実施形態では、3Dプリンタは、3Dオブジェクト108を印刷するための印刷材料114の供給を含んでもよい。3Dプリンタ102は、印刷材料114の層上に印刷用流体を分配するための印字ヘッド112を含んでもよい。3Dオブジェクト108は、層ごとに印刷されてもよい。図1では、3Dオブジェクト108が球体として示されているが、任意の形状のオブジェクトが印刷されてもよいことに留意されたい。3Dオブジェクト108は、異なる形状、サイズ、及び複雑さに印刷することができる。
【0018】
一実施形態では、印刷材料114は、ポリマー及び磁性粒子の組み合わせを使用して、3Dオブジェクト108のz軸110の強度を向上させることができる。z軸110は、3Dオブジェクト108の各印刷層を通って垂直に走る方向であってもよい。磁性粒子は、印刷材料114が粉末又はフィラメントとして分配されるかどうかに応じて、10ナノメートル(nm)~10マイクロメートル(μm)及び0.1重量パーセント(重量%)~15重量%の範囲であってもよい。
【0019】
以下で更に詳細に論じられるように、3Dオブジェクトに印加される磁場116は、3Dオブジェクト108内の磁性粒子を整列させるのに役立ち得る。磁性粒子の整列は、磁性粒子の磁気引力のために、z軸強度を向上させることができる。加えて、磁場116は、磁性粒子の運動から局所的に熱を発生させ、より多くの層間融合及び層間ポリマー鎖を生成し、3Dオブジェクト108のz軸強度を更に向上させることができる。例えば、局所的運動は、磁性粒子の摩擦を生じさせて、熱を発生させることができる。加えて、磁気誘導及びヒステリシスは、熱を発生させることができる。
【0020】
一実施形態では、3Dプリンタ102は、任意のタイプの3Dプリンタであってもよい。例えば、3Dプリンタは、粉末焼結積層造形法(SLS)プリンタ、熱溶解積層法(FDM)プリンタなどであってもよい。印刷材料114は、SLSプリンタの場合は粉末形態で、又はFDMプリンタの場合は連続フィラメントで提供することができる。
【0021】
図2は、ポリマー202及び磁性粒子204が一緒に混合される印刷材料114を使用する3Dプリンタの概略図を示す。次いで、ポリマー202及び磁性粒子204の組み合わせを分配して、3Dオブジェクト108の各層を印刷することができる。
【0022】
図2は、供給/容器214におけるポリマー202及び磁性粒子204の粉末ベースの組み合わせの例を示す。例えば、粉末ベースの組み合わせは、SLS 3Dプリンタで使用することができる。
【0023】
一実施形態では、ポリマー202は、ポリ乳酸(PLA)、ナイロン(例えば、ナイロン6、10、又は12)、ポリカルボナート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などの材料を含んでもよい。ポリマー202は、特定の3Dプリンタ200に適切な任意の平均直径サイズを有する粉末形態で分配することができる。
【0024】
一実施形態では、磁性粒子204は、フェライト、酸化鉄、フェライト及び二酸化ケイ素(SiO)コアシェルナノ粒子、磁気/金属ナノ粒子、鉄、コバルト、ニッケル、これらの金属合金などの磁性金属を含んでもよい。粉末ベースの印刷材料114の場合、磁性粒子204は、1nm~5μmの平均粒径サイズを有し得る。一実施形態では、平均粒径サイズは、約50nm~3μmであってもよい。一実施形態では、平均粒径サイズは、約75nm~1μmであってもよい。
【0025】
一実施形態では、磁性粒子204は、印刷材料114の約0.1重量%~15重量%(例えば、ポリマー202及び磁性粒子204の組み合わせの総重量)を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子204は、約3重量%~10重量%を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子204は、約4重量%~6重量%を構成することができる。
【0026】
一実施形態では、磁性粒子204は、ポリマー202と混合されてもよい。磁性粒子204及びポリマー202は、磁性粒子204がポリマー202に部分的に埋め込まれてもよいように、高い混合力を有する温度制御ブレンダー内で混合されてもよい。
【0027】
一実施形態では、ポリマー202及び磁性粒子204の組み合わせは、プラットフォーム210上に分配されて、層212を形成することができる。プロセッサ又はコントローラの制御下で、印字ヘッド206は、層212の所望の部分に印刷用流体を分配することができる。印字ヘッド206は、層212の上方のx-y座標平面に沿って移動することができる。印刷用流体は、ポリマー202を溶融させて、エネルギー源208に曝露されたときに印刷される3Dオブジェクト108の部分を形成するのに役立つバインダであってもよい。印刷用流体を受け取らない部分は、融合されなくてもよく、層212~212の全てが印刷された後に、脱ケーキングプロセス中に除去されてもよい。
【0028】
プラットフォーム210は、垂直に移動することができる(矢印218によって示されるように)。層212が印刷された後、プラットフォーム210を下降させ、ポリマー202及び磁性粒子204の別の層212を受け取ることができる。印刷プロセスは、各層212~212に対して繰り返すことができる。
【0029】
上記のように、図2は、SLSプリンタの一例を示す。しかし、3Dプリンタ200はまた、連続フィラメントを用いて印刷するFDMプリンタであってもよい。結果として、磁性粒子204は、ポリマー202の連続フィラメントと組み合わせることができる。フィラメントは、ポリマー202及び磁性粒子204の両方を含むように形成することができる。
【0030】
一実施形態では、磁性粒子204は、延伸プロセス中に、ポリマー202の押し出されたフィラメント上に吸収又は融合され得る(例えば、ポリマー202のフィラメントが押し出し中に融解温度を超える場合)。磁性粒子204は、ポリマー202の押し出されたフィラメント上に粉末噴霧されて、ポリマー202の層が堆積するように組み合わせることができる。
【0031】
一実施形態では、ポリマー202及び磁性粒子204が連続フィラメントとして分配される場合、磁性粒子204の平均粒径は、約10nm~10μmであってもよい。一実施形態では、磁性粒子204の平均粒径は、約90nm~8μmであってもよい。一実施形態では、磁性粒子204の平均粒径は、約1μm~5μmであってもよい。
【0032】
一実施形態では、磁性粒子204は、フィラメントの約1重量%~10重量%(例えば、FDMプリンタのフィラメントとして送達される場合のポリマー202及び磁性粒子204の総重量)を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子204は、約1重量%~8重量%を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子204は、約2重量%~5重量%を構成することができる。したがって、磁性粒子204のサイズ及びおよその重量パーセントは、ポリマー202がSLSプリンタ用の粉末、又はFDMプリンタ用の連続フィラメントとして送達されるかどうかの関数であってもよい。
【0033】
図3は、印刷材料114のポリマー302及び磁性粒子304が別々に送達されるプリンタ300の一例を示す。一実施形態では、プリンタ300はSLS 3Dプリンタであってもよい。プリンタ300は、粉末形態のポリマー302の供給容器314を含んでもよい。ポリマー302を分配して、移動可能なプラットフォーム310上にポリマー302の層312を形成することができる。プロセッサ又はコントローラの制御下にある印字ヘッド306は、層312の所望の部分に印刷用流体を分配することができる。印刷用流体は、(上記のように)エネルギー源308に曝露されると、層312の選択された部分を融合するのに役立つバインダ液であってもよい。
【0034】
層312が印刷された後、磁性粒子304の層316をポリマー302の層312上に分配することができる。一実施形態では、印字ヘッド306は、層316上に印刷用流体を分配し、層316をエネルギー源308に曝露させることができる。
【0035】
層312及び316が印刷された後、プラットフォーム310は、(矢印318によって示されるように)下降又は垂直に移動させることができる。次いで、3Dオブジェクト108の全ての層が印刷されるまで、プロセスを繰り返すことができる。
【0036】
一実施形態では、磁性粒子304の平均粒径及び重量パーセントは、SLS又は粉末ベースの印刷について上述したものと同じであってもよい。例えば、磁性粒子304は、1nm~5μmの平均粒径サイズを有し得る。一実施形態では、平均粒径サイズは、約50nm~3μmであってもよい。一実施形態では、平均粒径サイズは、約75nm~1μmであってもよい。
【0037】
一実施形態では、磁性粒子304は、印刷材料114の約0.1重量%~15重量%(例えば、ポリマー202及び磁性粒子204の組み合わせの総重量)を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子304は、約3重量%~10重量%を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子304は、約4重量%~6重量%を構成することができる。
【0038】
粉末ベースのプリンタの一例が図3に示されているが、プリンタ300はまた、フィラメント形態のポリマー302の供給を使用するFDM 3Dプリンタであってもよい。したがって、層312は、押し出されたフィラメントからポリマー302を分配することによって形成することができる。層312を印刷することができる(例えば、印字ヘッド306からの印刷用流体を用いて、エネルギー源308により融合される)。次いで、層316を分配して、ポリマー302の層312の上に別々に磁性粒子304の層を堆積させることができる。
【0039】
一実施形態では、磁性粒子304の平均粒径及び重量パーセントは、FDM又はフィラメントベースの印刷について上述したものと同じであってもよい。例えば、磁性粒子304は、10nm~10μmの平均粒径サイズを有し得る。一実施形態では、平均粒径サイズは、約90nm~8μmであってもよい。一実施形態では、平均粒径サイズは、約1μm~5μmであってもよい。
【0040】
一実施形態では、磁性粒子304は、印刷材料114の約1重量%~10重量%(例えば、ポリマー202及び磁性粒子204の組み合わせの総重量)を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子304は、約1重量%~8重量%を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子304は、約2重量%~5重量%を構成することができる。
【0041】
再び図1を参照すると、3Dオブジェクト108がポリマー及び磁性粒子の両方を含む印刷材料114で印刷された後、3Dオブジェクト108を、オーブン104内に配置することができる。次いで、3Dオブジェクト108を、ポリマー202又は302の融解温度に近い温度まで加熱することができる。換言すれば、温度は、3Dオブジェクト108が溶融によって形状を失うことなく、ポリマー202又は302の融解温度付近の温度であってもよい。例えば、温度は、ポリマー202又は302の融解温度よりも約摂氏20度(℃)低い温度から、ポリマー202又は302のほぼ融解温度であってもよい。
【0042】
3Dオブジェクト108を所望の温度に上げた後、磁場116を3Dオブジェクト108に印加することができる。一実施形態では、磁場116の強度は、約1エルステッド(Oe)であってもよい。一実施形態では、磁場116は、3Dオブジェクト108内の磁性粒子204又は304の極運動を整列させるのに役立ち得る。磁性粒子204又は304の整列は、磁性粒子204又は304間に磁気引力を発生させ、層間結合強度の向上に役立ち得る。これにより、3Dオブジェクト108の全体のz軸強度を向上させることができる。
【0043】
一実施形態では、磁場116は、振動又はパルス化されてもよい。磁場116の振動は、3Dオブジェクト内の磁性粒子204又は304の局所的運動を生じさせることができる。例えば、磁場116の振動は、磁場116の振動パターンに従って磁性粒子204又は304を前後に回転させることができる。この運動は、磁性粒子204又は304とポリマー202又は302との間の摩擦を生じさせて、3Dオブジェクト108の様々な内部位置に局所的な熱を発生させることができる。運動及び摩擦は、3Dオブジェクト108の層(例えば、層212)の間及び磁性粒子204又は304の周囲の領域において、ポリマー202又は302を溶融するのに役立ち得る。磁場116はまた、磁気誘導及び/又はヒステリシスを生じさせ、熱を発生させ、3Dオブジェクト108の層(例えば、層212)の間の領域において、ポリマー202又は302を溶融させることができる。層間の領域の溶融は、ポリマー鎖の更なる混合及び絡み合いを促進して、3Dオブジェクト108のz軸強度を向上させることができる。
【0044】
一実施形態では、磁場116は、約10ヘルツ(Hz)~500メガヘルツ(MHz)の範囲で振動又はパルス化されてもよい。一実施形態では、磁場116は、約250Hz~100MHzの範囲で振動又はパルス化されてもよい。一実施形態では、磁場116は、約500Hz~10MHzの範囲で振動又はパルス化されてもよい。
【0045】
一実施形態では、フィードバックループを実装することができる。例えば、3Dオブジェクト108のz軸強度は、磁場116が印加された後に試験されてもよい。z軸強度の試験が失敗した場合、3Dオブジェクト108は、更なる加熱及び磁場116の印加のために、オーブン104及び/又は装置106内に戻されてもよい。
【0046】
図4は、本開示の3D印刷物のz軸強度を向上させるための例示的な方法400のフローチャートを示す。一実施形態では、方法400の1つ又は複数のブロックは、システム100によって、又は図5に示し、以下で論じるようにシステム100の動作を制御するコンピュータ/プロセッサによって実行されてもよい。
【0047】
ブロック402において、方法400は開始する。ブロック404において、方法400は、ポリマー及び磁性粒子を用いて3次元(3D)オブジェクトを印刷する。例えば、SLS又はFDMベースの3Dプリンタは、ポリマー及び磁性粒子の混合物を含む印刷材料を使用することができる。一実施形態では、SLSベースの3Dプリンタは、磁性粒子と組み合わせた粉末ベースのポリマーを使用することができる。SLSベースの3Dプリンタは、上記のように、ポリマー及び磁性粒子の組み合わせを用いて各層を印刷することができ、又は上記のように、ポリマー及び磁性粒子の別々の層を印刷することができる。
【0048】
一実施形態では、SLSベースの3Dプリンタの場合、磁性粒子は、1nm~5μmの平均粒径サイズを有し得る。一実施形態では、平均粒径サイズは、約50nm~3μmであってもよい。一実施形態では、平均粒径サイズは、約75nm~1μmであってもよい。
【0049】
一実施形態では、磁性粒子は、印刷材料の約0.1重量%~15重量%(例えば、ポリマー及び磁性粒子の組み合わせの総重量)を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子は、約3重量%~10重量%を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子は、約4重量%~6重量%を構成することができる。
【0050】
一実施形態では、FDMベースの3Dプリンタは、磁気ポリマーと組み合わせたフィラメントベースのポリマーを使用することができる。磁性粒子をポリマーと混合して、フィラメントを形成することができる。別の実施形態では、フィラメントが押し出される際に、磁性粒子をポリマーのフィラメント上に噴霧することができる。次いで、押し出される溶融ポリマーと磁性粒子を融合することができる。
【0051】
別の実施形態では、FDMベースの3Dプリンタは、ポリマー及び磁性粒子の別々の層を印刷することができる。例えば、ポリマーの層をフィラメントから押し出すことができ、磁性粒子の層を、上述のように、ポリマー層の上に分配することができる。
【0052】
一実施形態では、FDMベースの3Dプリンタの場合、磁性粒子は、75nm~10μmの平均粒径サイズを有し得る。一実施形態では、平均粒径サイズは、約90nm~8μmであってもよい。一実施形態では、平均粒径サイズは、約1μm~5μmであってもよい。
【0053】
一実施形態では、磁性粒子は、印刷材料の約1重量%~10重量%(例えば、ポリマー及び磁性粒子の組み合わせの総重量)を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子は、約1重量%~8重量%を構成することができる。一実施形態では、磁性粒子は、約2重量%~5重量%を構成することができる。
【0054】
ブロック406において、方法は、3Dオブジェクトをポリマーのほぼ融解温度の温度に加熱する。例えば、温度は、ポリマーの融解温度よりも約摂氏20度(℃)低い温度から、ポリマーのほぼ融解温度であってもよい。
【0055】
ブロック408において、方法は、3Dオブジェクトに磁場を印加して、ポリマー中の磁性粒子を局所的に運動させて熱を発生させ、ポリマーを磁性粒子の周囲で融合させて、3Dオブジェクトのz軸強度を向上させる。例えば、3Dオブジェクトを所望の温度に上げた後、磁場を3Dオブジェクトに印加することができる。磁場の強度は、約1Oeであってもよい。
【0056】
一実施形態では、磁場は、振動又はパルス化されてもよい。磁場の振動は、3Dオブジェクト内の磁性粒子の局所的運動を生じさせることができる。例えば、磁場の振動は、磁場の振動パターンに従って磁性粒子を前後に回転させることができる。この運動は、3Dオブジェクトの様々な内部位置に局所的な熱を発生させ、3Dオブジェクトの層間の領域を溶融させることができる。層間の領域の溶融は、ポリマー鎖の更なる混合及び絡み合いを促進して、3Dオブジェクトのz軸強度を向上させることができる。
【0057】
一実施形態では、磁場は、約10ヘルツ(Hz)~500メガヘルツ(MHz)の範囲で振動又はパルス化されてもよい。一実施形態では、磁場は、約250Hz~100MHzの範囲で振動又はパルス化されてもよい。一実施形態では、磁場は、約500Hz~10MHzの範囲で振動又はパルス化されてもよい。
【0058】
一実施形態では、磁場は、3Dオブジェクト内の磁性粒子の極運動を整列させるのに役立ち得る。磁性粒子の整列は、磁性粒子間の磁気引力を発生させ、層間結合強度の向上に役立ち得る。これにより、3Dオブジェクトの全体のz軸強度を向上させることができる。ブロック410において、方法400は終了する。
【0059】
図5は、本明細書に記載される機能を実行するための専用のコンピュータの高レベルのブロック図を示す。図5に描写されるように、コンピュータ500は、1つ又は複数のハードウェアプロセッサ要素502(例えば、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、マイクロプロセッサ、又はマルチコアプロセッサ)、メモリ504、例えばランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)及び/又は読み出し専用メモリ(read only memory、ROM)、3D印刷物のz軸強度を向上させるためのモジュール505、及び様々な入力/出力デバイス506(例えば、テープドライブ、フロッピードライブ、ハードディスクドライブ又はコンパクトディスクドライブを含むが、これらに限定されない、記憶デバイス、受信機、送信機、スピーカ、ディスプレイ、音声合成器、出力ポート、入力ポート及びユーザ入力デバイス(キーボード、キーパッド、マウス、マイクロフォンなど))を含む。1つのプロセッサ要素のみが示されているが、コンピュータは、複数のプロセッサ要素を採用してもよいことに留意されたい。
【0060】
本開示は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むプログラマブルロジックアレイ(PLA)、若しくはハードウェアデバイス上に展開されたステートマシン、コンピュータ、又は任意の他のハードウェア等価物、例えば、上で考察される方法(複数可)に関連し、上記に開示した方法のステップ、機能、及び/又は動作を実行するハードウェアプロセッサを構成するために使用することができるコンピュータ可読命令を使用して、ソフトウェア及び/又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実装することができることに留意されたい。一実施形態では、3D印刷物のz軸強度を向上させるための本モジュール又はプロセス505に対する命令及びデータ(例えば、コンピュータ実行可能命令を含むソフトウェアプログラム)は、メモリ504にロードされ、ハードウェアプロセッサ要素502によって実行され、例示的な方法400に関連して上記に論じたようなステップ、機能又は動作を実装することができる。更に、ハードウェアプロセッサが命令を実行して「動作」を行うときに、これはハードウェアプロセッサが直接的に動作を実行するかつ/あるいは動作を行う別のハードウェアデバイス又は構成要素(例えば、コプロセッサなど)を容易にする、それに指向する、あるいはそれと協働することを含むことができる。
【0061】
上記に説明した方法に関するコンピュータ読み取り可能又はソフトウェア命令を実行するプロセッサは、プログラムされたプロセッサ又は専門プロセッサとして認識されることができる。したがって、本開示の3D印刷物のz軸強度を向上させるための本モジュール505(関連するデータ構造を含む)は、有形又は物理的(広義的には非一時的)コンピュータ可読記憶デバイス又は媒体、例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ROMメモリ、RAMメモリ、磁気又は光学ドライブ、デバイス又はディスケットなどに記憶することができる。より具体的には、コンピュータ読み取り可能記憶デバイスが、プロセッサ又はコンピュータ、アプリケーションサーバなどの計算デバイスによってアクセスされるデータ、命令などの情報を記憶する能力を提供する任意の物理的デバイスを含んでもよい。
【0062】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、その後に当業者によってなされてもよく、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5