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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】給紙装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/26 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
B65H1/26 312B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021026496
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128133
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 嘉儀
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016987(JP,A)
【文献】特開2012-001326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、前記装置本体に対し、挿入方向に沿って挿入される給紙カセットとを設けた給紙装置であって、
レバー軸を介して前記給紙カセットに取り付けられたロックレバーと、
前記ロックレバーを係止方向に回転させる回転力を付与するスプリングと、
前記装置本体に設けられたロック部材とを備え、
前記ロックレバーは、前記レバー軸から前記挿入方向での下流側に向かって延びた先端にレバー爪が設けられ、
前記ロック部材は、前記レバー爪が係止される係止部と、前記係止部よりも前記挿入方向での上流側に設けられた引き込み部とを有し、
前記引き込み部は、前記係止部に向かうに従って、前記係止方向での下流側に下がるように傾斜しており、前記挿入方向に対して平行な面とされ、
前記給紙カセットを前記装置本体に挿入する際、前記レバー爪が前記引き込み部を押圧すること
を特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記給紙カセットに設けられ、引き出す際にユーザに把持される取っ手と、
前記取っ手を把持して前記給紙カセットを引き出す力を前記レバー軸に伝える伝達機構とを備え、
前記ロックレバーは、前記伝達機構から伝えられた力によって、前記係止方向の逆方向に回転し、
前記レバー軸は、前記引き込み部よりも低い位置に設けられていること
を特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の給紙装置であって、
前記ロック部材は、前記引き込み部よりも前記挿入方向での上流側に設けられた押し上げ部を有し、
前記押し上げ部は、前記引き込み部に向かうに従って、上昇するように傾斜していること
を特徴とする給紙装置。
【請求項4】
装置本体と、前記装置本体に対し、挿入方向に沿って挿入される給紙カセットとを設けた給紙装置であって、
レバー軸を介して前記給紙カセットに取り付けられたロックレバーと、
前記ロックレバーを係止方向に回転させる回転力を付与するスプリングと、
前記装置本体に設けられたロック部材とを備え、
前記ロックレバーは、前記レバー軸から前記挿入方向での下流側に向かって延びた先端にレバー爪が設けられ、
前記ロック部材は、前記レバー爪が係止される係止部と、前記係止部よりも前記挿入方向での上流側に設けられた引き込み部とを有し、
前記引き込み部は、前記係止部に向かうに従って、前記係止方向での下流側に下がるように傾斜しており、
前記給紙カセットを前記装置本体に挿入する際、前記レバー爪が前記引き込み部を押圧し、
前記ロック部材は、前記引き込み部よりも前記挿入方向での上流側に設けられた押し上げ部を有し、
前記押し上げ部は、前記引き込み部に向かうに従って、上昇するように傾斜しており、
前記引き込み部の前記挿入方向の長さは、前記押し上げ部の前記挿入方向の長さより長いこと
を特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1つに記載の給紙装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を供給する給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、複数の用紙を収容可能な給紙部(給紙装置)を設けることで、用紙を補充する回数を削減し、ユーザの手間を減らすようにしている。給紙部においては、補充の際の作業性を向上させるため、装置本体に対し着脱自在に装着されたものがある。ところで、給紙部に収容した用紙が多い際には、重量が大きくなり、ユーザに大きな負担を与えることがあった。そこで、給紙部を装置本体に引き込む引き込み機構を設けることが提案されている(例えば、特許文献1ないし特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-198925号公報
【文献】特開2008-254841号公報
【文献】特開2015-209311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシート収納容器搬送装置は、複数のシートを収容するシート収納容器と、シート収納容器を搬送する搬送手段と、搬送手段を駆動する駆動手段とを備える。
【0005】
上述したシート収納容器搬送装置では、搬送手段を駆動させるのに駆動手段としてモータを用いており、モータに対して電力を供給しなければならず、装置が複雑になっていた。
【0006】
特許文献2に記載の画像形成装置は、装置本体の収納部に着脱可能に装着される給紙カセットと、給紙カセットに設けられた係止部と、収容部に設けられ、係止溝を備えた引き込み部材とを有する。引き込み部材は、係止溝で係止部を係止しながら移動して、給紙カセットを引き込む。
【0007】
上述した画像形成装置では、引き込み部材が引き込み位置にある場合、係止案内部によって、係止溝に係止部を係止させるように案内しているだけであって、引き込み部材は、給紙カセットを引き込む動作に寄与せず、ユーザの負担を軽減することができないという課題がある。
【0008】
特許文献3に記載のユニット引き込み装置は、ユニットに設けられた被係合部に係合するフック部材と、フック部材に引き込み力を作用させる引き込み力発生機構と、ユニットを装置本体に引き込むときに、引き込み速度に応じた負荷を発生して、引き込み速度の増加を抑制する抑制部材とを備える。
【0009】
上述したユニット引き込み装置では、引き込み力発生機構に設けた第1回動部材や、引き込み力発生機構と抑制部材との間に配置した2段ギアなど、複数の部材によってユニットの引き込みを行っており、装置が複雑になっていた。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、給紙カセットを引き込む力を補助することができる給紙装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る給紙装置は、装置本体と、前記装置本体に対し、挿入方向に沿って挿入される給紙カセットとを設けた給紙装置であって、レバー軸を介して前記給紙カセットに取り付けられたロックレバーと、前記ロックレバーを係止方向に回転させる回転力を付与するスプリングと、前記装置本体に設けられたロック部材とを備え、前記ロックレバーは、前記レバー軸から前記挿入方向での下流側に向かって延びた先端にレバー爪が設けられ、前記ロック部材は、前記レバー爪が係止される係止部と、前記係止部よりも前記挿入方向での上流側に設けられた引き込み部とを有し、前記引き込み部は、前記係止部に向かうに従って、前記係止方向での下流側に下がるように傾斜しており、前記給紙カセットを前記装置本体に挿入する際、前記レバー爪が前記引き込み部を押圧することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る給紙装置は、前記給紙カセットに設けられ、引き出す際にユーザに把持される取っ手と、前記取っ手を把持して前記給紙カセットを引き出す力を前記レバー軸に伝える伝達機構とを備え、前記ロックレバーは、前記伝達機構から伝えられた力によって、前記係止方向の逆方向に回転する構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る給紙装置では、前記ロック部材は、前記引き込み部よりも前記挿入方向での上流側に設けられた押し上げ部を有し、前記押し上げ部は、前記引き込み部に向かうに従って、上昇するように傾斜している構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る給紙装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、簡単な機構で、給紙カセットを引き込む力を補助することができ、ロック部材とロックレバーとの係止を確実に行うことができる。つまり、レバー爪が引き込み部に当接した状態では、スプリングからの回転力が、引き込み部の傾斜によって分力を発生させ、給紙カセットを装置本体側に引き込む力として作用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の外観斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る給紙装置の模式上面図である。
図4図3に示す給紙装置の給紙カセットを引き出した状態を示す模式上面図である。
図5】給紙装置の一部の部材を抽出して示す要部斜視図である。
図6】ロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その1)である。
図7】ロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その2)である。
図8】ロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その3)である。
図9】変形例1におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図である。
図10】変形例2におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図である。
図11】変形例3におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図である。
図12】本発明の第2実施形態におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その1)である。
図13】本発明の第2実施形態におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の外観斜視図であって、図2は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【0019】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成を行う本体部と、上部に設けられた原稿読取部44および原稿搬送部45と、下部に設けられた給紙装置50とを備える。給紙装置50は、装置本体52と、装置本体52に挿入される給紙カセット51とで構成されている。給紙カセット51の前面には、引き出す際にユーザに把持される取っ手53が設けられている。なお、給紙装置50の詳細な構造については、後述する図3を参照して説明する。
【0020】
原稿読取部44は、原稿が載置される原稿載置台43が上面に設けられており、原稿載置台43上の原稿の画像を読み取り、画像データを作成して画像形成装置1に伝達する。原稿搬送部45は、原稿載置台43の上に自動で原稿を搬送する。また、原稿搬送部45は、画像形成装置1に対して回動自在に取り付けられており、回動させて原稿載置台43の上を開放することで、原稿を手置きで載置することができる。
【0021】
画像形成装置1の本体部には、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13、クリーニング装置14、帯電器15、中間転写ベルト21、定着装置17、排紙トレイ39、および用紙搬送経路R1が設けられており、外部や原稿読取部44から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色および単色の画像を形成する。
【0022】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、クリーニング装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0023】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面(周面)を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーニング装置14は、現像および画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。
【0024】
中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0025】
画像形成装置1は、転写ローラ26aを含む2次転写装置26をさらに備えている。転写ローラ26aは、中間転写ベルト21との間にニップ域が形成されており、用紙搬送経路Sを通じて搬送されて来た用紙をニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0026】
画像形成装置1は、給紙カセット51に蓄積された用紙を用いて画像形成を行う。給紙装置50は、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ39は、原稿読取部44の下方に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0027】
用紙は、ピックアップローラ33により給紙カセット51から引き出されて、S字状の用紙搬送経路R1に供給される。用紙搬送経路R1に沿って、さらに、搬送ローラ35、レジストローラ34、2次転写装置26、定着装置17、および排紙ローラ36が配置されている。
【0028】
レジストローラ34は、給紙カセット51から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26aに搬送する。搬送ローラ35は、用紙の搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0029】
定着装置17は、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、加熱ローラ31と加圧ローラ32との間に、用紙を挟み込んで加熱および加圧し、用紙上のトナー像を定着させる。定着後の用紙は、排紙ローラ36によって排紙トレイ39上に排出される。
【0030】
また、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ36から反転経路Rrへと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ34へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ39へと搬出する。
【0031】
図3は、本発明の第1実施形態に係る給紙装置の模式上面図であって、図4は、図3に示す給紙装置の給紙カセットを引き出した状態を示す模式上面図である。
【0032】
給紙装置50では、装置本体52に給紙カセット51が収容される構成とされている。給紙カセット51は、装置本体52の前面に設けた開口から、奥に向かって挿入される。以下では説明のため、装置本体52に対して給紙カセット51を挿入する方向(図3では、上向き)を挿入方向S1と呼び、装置本体52から給紙カセット51を引き出す方向(図3では、下向き)を引出方向S2と呼び、挿入方向S1と引出方向S2とを併せて、入出方向Sと呼ぶことがある。
【0033】
給紙カセット51は、装置本体52の前面を覆う前面パネル51aと、装置本体52の内部に収容されるカセット本体部51bとを備えている。カセット本体部51bは、中央部の広い範囲が凹んだ容器とされており、中央部より高い部分に囲まれている。カセット本体部51bでは、平坦な中央部に用紙が積載される。図3では、カセット本体部51bを簡略に示しているが、これに限定されず、中央部には、用紙の端部を揃えるための規制部や、用紙の一端を持ち上げるガイド板などが設けられていてもよい。
【0034】
給紙カセット51と装置本体52とは、ガイドレール52aを介して接続されている。ガイドレール52aは、入出方向Sに沿って延びた装置本体52の内側面とカセット本体部51bの側辺部との間に設けられている。給紙カセット51が装置本体52に収容された状態において、カセット本体部51bは、ガイドレール52aによって側辺部が係止されている。なお、これに限定されず、ガイドレール52aは、装置本体52とカセット本体部51bとが互いに面する箇所に設けられていればよく、例えば、カセット本体部51bの裏面と装置本体52の底面との間に設けられていてもよい。また、装置本体52にガイドレール52aを支持するフレームなどを設け、ガイドレール52aが装置本体52の内側面から離間した構造としてもよい。ガイドレール52aに案内されつつ給紙カセット51を入出方向Sに移動させることで、給紙カセット51を装置本体52に挿入したり、給紙カセット51を装置本体52から引き出したりすることができる。
【0035】
給紙カセット51には、レバー軸62を介してロックレバー61が取り付けられ、装置本体52にはロック部材70が設けられており、給紙カセット51が装置本体52に収容された状態では、ロックレバー61がロック部材70に係止される構成とされている。給紙カセット51には、自身を引き出す力をレバー軸62に伝える伝達機構60が設けられている。給紙カセット51を装置本体52から引き出す際には、伝達機構60を介してロックレバー61を回動させることで、ロック部材70との係止を解除することができる。なお、ロックレバー61、ロック部材70、および伝達機構60の詳細な構造については、後述する図5を参照して説明する。
【0036】
図5は、給紙装置の一部の部材を抽出して示す要部斜視図である。
【0037】
図5では、給紙装置50のうち、取っ手53、ロックレバー61、ロック部材70、および伝達機構60を抽出して示しており、前面パネル51a、カセット本体部51b、装置本体52、およびガイドレール52aなどの部材を取り除いた状態とされている。
【0038】
取っ手53は、ユーザに把持される把持部53aが前面パネル51aの外側に設けられており、把持部53aから延びた延伸部53bが、前面パネル51aに設けた穴に挿入されている。取っ手53は、前面パネル51aに固定されておらず、前面パネル51aに対して前後に少し揺動するように保持されている。レバー軸62は、前面パネル51aの内側に取り付けられており、延伸部53bに応じた箇所に連結部64が設けられている。延伸部53bは、連結部64に引っ掛けられており、取っ手53を引いて揺動させることで、レバー軸62が回転する。ロックレバー61は、レバー軸62に取り付けられており、レバー軸62を支点にして回転する。ロックレバー61は、レバー軸62から挿入方向S1での下流側に向かって延びた先端にレバー爪61aが設けられている。また、レバー軸62には、回転力を付与するスプリング63が取り付けられている。なお、スプリング63によってロックレバー61が回転する方向とロック部材70との関係については、後述する図6ないし図8と併せて説明する。
【0039】
ロック部材70は、給紙カセット51を装置本体52に収容する際、ロックレバー61に当接する位置に設けられ、図5では、ロックレバー61がロック部材70に係止された状態を示している。本実施の形態において、ロック部材70は、ロックレバー61の下方に位置し、給紙カセット51を装置本体52に収容する際には、ロック部材70の先端から下方へ突出したレバー爪61aが、ロック部材70の上面をなぞるように移動する。ロック部材70は、挿入方向S1での上流側から下流側に、押し上げ部73、引き込み部72、および係止部71が順に設けられている。つまり、給紙カセット51を装置本体52に収容する際、レバー爪61aは、ロック部材70に対し、押し上げ部73、引き込み部72、および係止部71の順に当接する。
【0040】
押し上げ部73は、ロック部材70のうち、入出方向Sで対向する側面(引出方向S2側の側面)の上部に設けられ、頂点が引き込み部72側に傾いた斜面とされている。引き込み部72は、ロック部材70の上面に設けられ、挿入方向S1での下流側に向かうに従って、下方へ下がるように傾斜した斜面とされている。係止部71は、ロック部材70のうち、入出方向Sで対向する側面(挿入方向S1側の側面)の上部に設けられ、下端よりも上端が挿入方向S1に突出するように傾斜した斜面とされている。ロックレバー61は、レバー爪61aが係止部71に引っ掛かることで、ロック部材70に係止される。
【0041】
なお、ロック部材70は、押し上げ部73、引き込み部72、および係止部71を構成する要部と、ガイドレール52aに対してビスなどで固定される部分とが一体に形成されているが、これに限定されず、ロックレバー61の係止を阻害しないように、装置本体52に固定されていればよい。
【0042】
次に、給紙カセット51を装置本体52に収容する際のロックレバー61とロック部材70との位置関係を図6ないし図8を参照して説明する。なお、図6ないし図8では、図面の見易さを考慮して、ロック部材70のうち、押し上げ部73、引き込み部72、および係止部71を構成する要部を模式的に示しており、それ以外の部分を省略している。また、レバー軸62についても、取り付けられた部材のうち、ロックレバー61のみを示し、他の部材を省略している。
【0043】
図6は、ロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その1)である。
【0044】
図6では、レバー爪61aの先端が、ロック部材70のうち、押し上げ部73と引き込み部72との境界、つまり、引き込み部72の頂点に当接している状態を示している。本実施の形態において、引き込み部72は、入出方向Sに対する傾斜角θが約13度とされている。また、引き込み部72の入出方向Sでの長さ(ストローク距離SL)は、約31mmとされている。
【0045】
ロックレバー61は、レバー軸62に取り付けられたスプリング63によって、レバー爪61aを下げる方向(図6では、反時計回り)に回転力が付与されている。なお、レバー軸62については、自身を軸支する前面パネル51aなどによって、回転する範囲が規制されており、図5に示すように、レバー爪61aが係止部71に引っ掛かる程度の高さまで下がると回転が止まる。また、取っ手53が引かれた際には、スプリング63による回転と逆方向(図6では、時計回り)に回転する構成とされており、レバー爪61aが上に上がる。
【0046】
給紙カセット51を装置本体52に収容する際、スプリング63からの回転力によって、レバー爪61aが下がっており、レバー爪61aが押し上げ部73に当接する。そして、給紙カセット51をさらに挿入方向S1に移動させると、レバー爪61aは、押し上げ部73によって上に押し上げられ、引き込み部72の頂点に接するように、ロックレバー61が回転する。このように、給紙カセット51を挿入する際、押し上げ部73の傾斜に応じて、ロックレバー61を押し上げて退避させるので、ロックレバー61が給紙カセット51の挿入を妨げることを避けられる。
【0047】
図7は、ロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その2)である。
【0048】
図7は、図6に示す状態から、ロックレバー61が挿入方向S1に移動した状態を示しており、レバー爪61aの先端が、ロック部材70のうち、引き込み部72に当接している。上述したように、給紙カセット51がユーザによって装置本体52の中に押し込まれると、レバー爪61aが、ロック部材70の上面をなぞるように移動する。図7のように、レバー爪61aの先端が、引き込み部72に当接していると、引き込み部72によって、係止方向Kへの回転が止められる。ここで、係止方向Kとは、スプリング63からの回転力によってロックレバー61を回転させた際、レバー爪61aの先端が辿る軌跡に沿った方向とされており、レバー軸62を中心にした円と重なる。
【0049】
図7に示す状態において、ロックレバー61とロック部材70との間では、回転を止めている引き込み部72をレバー爪61aが押圧する押圧力AFが生じる。この押圧力AFは、引き込み部72に対して傾斜している。ところで、給紙装置50においては、給紙カセット51の移動方向が、ガイドレール52aによって入出方向Sに規制されているので、レバー軸62も入出方向Sだけに移動する。そこで、押圧力AFを分解し、入出方向Sに作用する力だけを抽出すると、図7に示すように、引出方向S2へ作用する分力BFとして表すことができる。この分力BFは、入出方向Sにおいて、レバー爪61aが引き込み部72を押圧する力に相当するが、引き込み部72は、装置本体52(ガイドレール52a)に固定されているので、自身が動くことはない。そのため、ロックレバー61には、分力BFに反発する力として、挿入方向S1への引き込み力HFが加わり、引き込み力HFは、ロックレバー61を挿入方向S1に移動させるように作用する。本実施の形態において、引き込み力HFは、約4Nとされている。なお、ここでの引き込み力HFは、摩擦等による軽減を無視した計算値を示している。
【0050】
給紙装置50では、給紙カセット51自体の重さが約1kgであり、給紙カセット51に用紙を満載した際、用紙自体の重さが約5kgとなる。この状態の給紙カセット51を挿入する際には、ガイドレール52a等で軽減された結果、11N程度の力を必要とする。本実施の形態では、ロックレバー61に作用する引き込み力HFによって、給紙カセット51を挿入するのに必要な力を補助することができる。このように、簡単な機構で、給紙カセット51を引き込む力を補助することができ、ロック部材70とロックレバー61との係止を確実に行うことができる。つまり、レバー爪61aが引き込み部72に当接した状態では、スプリング63からの回転力が、引き込み部72の傾斜によって分力BFを発生させ、給紙カセット51を装置本体52側に引き込む力として作用する。
【0051】
ところで、本実施の形態において、給紙カセット51を挿入する際に11N程度の力を必要とするのに対し、引き込み力HFが、それより小さい約4Nとされているが、引き込み部72等は、あくまで補助機構であり、この機構だけで給紙カセット51の引き込みを完了するものとはされていない。このことは、後述する変形例1および変形例2においても同様とされている。給紙カセット51の引き込みを完了するためには、図示しない別の引き込みユニットを必要とするが、上述した補助機構に補助されるので、引き込みユニットが負担する負荷を軽減することができる。
【0052】
また、後述する変形例3の場合では、引き込み力が約12.5Nとされており、11Nを上回っているため、別の引き込みユニットを必要としない。
【0053】
図8は、ロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その3)である。
【0054】
図8は、図7に示す状態から、ロックレバー61がさらに挿入方向S1に移動した状態を示している。図8のように、レバー爪61aの先端が、引き込み部72を通り越すと、引き込み部72に遮られないので、下方へ回転し、レバー爪61aが係止部71に引っ掛かる。
【0055】
上述したように、給紙カセット51を装置本体52から引き出す際には、ユーザが取っ手53を引くと、ロックレバー61が伝達機構60から伝えられた力によって、係止方向Kの逆方向に回転する。このように、給紙カセット51を引く力を利用して、ロックレバー61とロック部材70との係止を解除することができる。
【0056】
次に、ロック部材70の形状を異ならせた変形例1ないし変形例3について、図9ないし図11を参照して説明する。
【0057】
図9は、変形例1におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図である。
【0058】
変形例1ないし変形例3では、図6に示す構造に対し、ロック部材70の傾斜角θとストローク距離SLとが異なっている。具体的に、変形例1での傾斜角θは、約20度とされ、ストローク距離SLは、40mmとされている。傾斜角θを変更したことで、分力BFが大きくなり、引き込み力HFは、約6.0Nとなっている。
【0059】
図10は、変形例2におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図である。
【0060】
変形例2での傾斜角θは、約30度とされ、ストローク距離SLは、25mmとされている。傾斜角θを変更したことで、分力BFが大きくなり、引き込み力HFは、約8.8Nとなっている。
【0061】
図11は、変形例3におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図である。
【0062】
変形例3での傾斜角θは、約45度とされ、ストローク距離SLは、14mmとされている。傾斜角θを変更したことで、分力BFが大きくなり、引き込み力HFは、約12.5Nとなっている。
【0063】
変形例1ないし変形例3のように傾斜角θを大きくすると、引き込み力HFが大きくなり、ストローク距離SLが短くても給紙カセット51を動かすことができるので、ストローク距離SLを短くして、ロック部材70を短くすることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0065】
第2実施形態では、第1実施形態に対し、ロック部材70近傍の構造が異なっている。なお、第2実施形態は、図1ないし図8に示す第1実施形態と略同様の構成とされているので、説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0066】
図12は、本発明の第2実施形態におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その1)であって、図13は、本発明の第2実施形態におけるロックレバーとロック部材との位置関係を示す模式側面図(その2)である。
【0067】
図12は、レバー爪61aの先端が、ロック部材70のうち、引き込み部72に当接している状態を示し、図13は、レバー爪61aが、ロック部材70の係止部71に係止されている状態を示している。
【0068】
第2実施形態では、第1実施形態に対し、ロック部材70における引き込み部72の構造が異なっている。具体的に、引き込み部72は、挿入方向S1に対して平行な面とされている。また、レバー軸62は、引き込み部72よりも低い位置に設けられている。その結果、レバー爪61aは、引き込み部72に対して斜め上から当たるようになっており、引き込み部72に対する押圧力AFの角度が直角ではない。そのため、この構成においても、引き込み部72は、係止部71に向かうに従って、係止方向Kでの下流側に下がるように傾斜している。そして、引出方向S2へ作用する分力BFによって、ロックレバー61には、挿入方向S1への引き込み力HFが加わり、ロックレバー61を挿入方向S1に移動させる。
【0069】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
50 給紙装置
51 給紙カセット
52 装置本体
53 取っ手
60 伝達機構
61 ロックレバー
62 レバー軸
63 スプリング
70 ロック部材
71 係止部
72 引き込み部
73 押し上げ部
S 入出方向
S1 挿入方向
S2 引出方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13