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特許7581079ボイラの保管装置およびこれを備えたボイラならびにボイラの保管方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ボイラの保管装置およびこれを備えたボイラならびにボイラの保管方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/52 20060101AFI20241105BHJP
   F22B 37/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
F22B37/52 B
F22B37/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021027560
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129031
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高柳 大輔
(72)【発明者】
【氏名】白石 護
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009722(JP,A)
【文献】特開2007-224820(JP,A)
【文献】特開2018-054259(JP,A)
【文献】特開昭63-271006(JP,A)
【文献】特開2014-159925(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02123865(EP,A2)
【文献】特開昭63-123985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/52
F22B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水器から復水ポンプを介して給水加熱器に至る復水系統の下流側と、前記復水器とを接続する復水戻り配管と、
アンモニアが貯留されたアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクから、前記復水系統と前記復水戻り配管とによって構成された復水循環系統に対してアンモニアを注入するアンモニア注入ポンプと、
ボイラの保管を行う際に、前記復水ポンプによって前記復水循環系統に水の循環流れを形成するとともに、前記アンモニア注入ポンプによって前記アンモニアタンクからアンモニアを前記復水循環系統に対して注入する制御部と、
を備えているボイラの保管装置。
【請求項2】
前記復水系統とボイラとの間に設けられた給水系統と前記復水器とを接続する給水戻り配管を備え、
前記制御部は、前記復水系統を流れる水のアンモニア濃度が所定値を超えた後に、アンモニアが注入された前記復水系統の水が、前記給水系統および前記給水戻り配管を介して前記復水器へと循環するように制御する請求項1に記載のボイラの保管装置。
【請求項3】
前記給水系統は、給水ポンプと、該給水ポンプよりも上流側で低圧給水加熱器を有する低圧給水系統と、該給水ポンプよりも下流側で高圧給水加熱器を有する高圧給水系統と、を備え、
前記給水戻り配管は、前記低圧給水加熱器よりも下流側で前記低圧給水系統に接続された低圧給水戻り配管と、前記高圧給水加熱器よりも下流側で前記高圧給水系統に接続された高圧給水戻り配管と、を備え、
前記制御部は、前記低圧給水系統にアンモニアが注入された水を前記低圧給水戻り配管を介して前記復水器との間で循環させ、前記低圧給水系統を流れる水のアンモニア濃度が所定値を超えた後に、前記低圧給水系統を流れる水が、前記高圧給水系統および前記高圧給水戻り配管を介して前記復水器へと循環するように制御する請求項2に記載のボイラの保管装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記復水系統、前記低圧給水系統および前記高圧給水系統のアンモニア濃度が所定範囲とされた場合に、前記復水器を介した水の循環を停止して保管を行う請求項3に記載のボイラの保管装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のボイラの保管装置と、
ボイラ本体と、
を備えているボイラ。
【請求項6】
復水器から復水ポンプを介して給水加熱器に至る復水系統の下流側と、前記復水器とを接続する復水戻り配管と、
アンモニアが貯留されたアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクから、前記復水系統と前記復水戻り配管とによって構成された復水循環系統に対してアンモニアを注入するアンモニア注入ポンプと、
を備えたボイラの保管方法であって、
ボイラの保管を行う際に、前記復水ポンプによって前記復水循環系統に水の循環流れを形成するとともに、前記アンモニア注入ポンプによって前記アンモニアタンクからアンモニアを前記復水循環系統に対して注入するボイラの保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラの保管装置およびこれを備えたボイラならびにボイラの保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラなどの大型のボイラは、中空形状をなして鉛直方向に設置される火炉を有し、この火炉壁に複数のバーナが火炉の周方向に沿って配設されている。また、大型のボイラは、火炉の鉛直方向上方に煙道が連結されており、この煙道に蒸気を生成するための熱交換器が配置されている。そして、バーナが火炉内に燃料と空気(酸化性ガス)との混合気を噴射することで火炎が形成され、燃焼ガスが生成されて煙道に流れる。燃焼ガスが流れる領域に熱交換器が設置され、熱交換器を構成する伝熱管内を流れる水や蒸気を加熱して過熱蒸気が生成される。
【0003】
火力発電プラントにおいて、給水系統の配管等の腐食の要因となる溶存酸素を除去するために使用されているヒドラジンは、発がん性の疑いがあることから、国内および海外で使用を禁止されることが多くなっている。このような背景もあり、プラントの通常運用時において、ヒドラジンを用いない脱ヒドラジン給水処理の普及が進んでいる。例えば、特許文献1に示すように、アンモニアを用いてボイラ給水のpHを所定範囲に調整することで、ヒドラジンを用いずに給水系統の腐食を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-159925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、ボイラの運転中に給水中のアンモニア濃度を高濃度に保つことでpHを所望範囲とし、ボイラの停止後であっても腐食を抑制することができる保管方法が開示されているに過ぎない。つまり、ボイラの運転中では、プラント全体で常に各系統内を水ないし蒸気が循環しているが、ボイラの建設中や試運転中では、プラントの一部の設備が建設中であったり停止中であったりするため、ボイラの運転中のように各系統内で水ないし蒸気を循環させることができない。このため、ボイラの建設中や試運転中では、特許文献1のように給水中にアンモニアを注入しても、系統内でアンモニアの濃度にムラが発生しやすく、アンモニア濃度を均一化することが困難である。これでは、ボイラの建設中や試運転中に、復水系統や給水系統のプレボイラ系統でアンモニアの濃度にムラが発生するおそれがあるため、腐食抑制の観点から適切にプレボイラ系統を保管する要請に応えることができない。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ボイラの建設中や試運転中の場合であっても、ボイラ本体と復水器との間のプレボイラ系統における給水中のアンモニア濃度を均一化することができるボイラの保管装置およびこれを備えたボイラならびにボイラの保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るボイラの保管装置は、復水器から復水ポンプを介して給水加熱器に至る復水系統の下流側と、前記復水器とを接続する復水戻り配管と、アンモニアが貯留されたアンモニアタンクと、前記アンモニアタンクから、前記復水系統と前記復水戻り配管とによって構成された復水循環系統に対してアンモニアを注入するアンモニア注入ポンプと、ボイラの保管を行う際に、前記復水ポンプによって前記復水循環系統に水の循環流れを形成するとともに、前記アンモニア注入ポンプによって前記アンモニアタンクからアンモニアを前記復水循環系統に対して注入する制御部と、を備えている。
【0008】
本開示の一態様に係るボイラは、上記のいずれかに記載のボイラの保管装置と、ボイラ本体と、を備えている。
【0009】
本開示の一態様に係るボイラの保管方法は、復水器から復水ポンプを介して給水加熱器に至る復水系統の下流側と、前記復水器とを接続する復水戻り配管と、アンモニアが貯留されたアンモニアタンクと、前記アンモニアタンクから、前記復水系統と前記復水戻り配管とによって構成された復水循環系統に対してアンモニアを注入するアンモニア注入ポンプと、を備えたボイラの保管方法であって、ボイラの保管を行う際に、前記復水ポンプによって前記復水循環系統に水の循環流れを形成するとともに、前記アンモニア注入ポンプによって前記アンモニアタンクからアンモニアを前記復水循環系統に対して注入する。
【発明の効果】
【0010】
ボイラの建設中や試運転中の場合であっても、ボイラ本体と復水器との間のプレボイラ系統における給水中のアンモニア濃度を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示のボイラ発電プラントを示した概略構成図である。
図2図1のボイラ発電プラントの水及び蒸気の流れを示した概略構成図である。
図3図2のボイラ発電プラントの第1工程を示した概略構成図である。
図4図2のボイラ発電プラントの第2工程を示した概略構成図である。
図5図2のボイラ発電プラントの第3工程を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0013】
図1は、本実施形態の石炭焚きボイラを表す概略構成図である。
【0014】
本実施形態の石炭焚きボイラ10は、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。
【0015】
図1に示すように、石炭焚きボイラ10は、ボイラ本体3に、火炉11と燃焼装置12と燃焼ガス通路13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁101は、複数の伝熱管とこれらを接続するフィンとで構成され、微粉燃料の燃焼により発生した熱を伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して、火炉壁の温度上昇を抑制している。
【0016】
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数のバーナ(例えば符号21,22,23,24,25)を有している。例えばバーナ21,22,23,24,25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って複数段(例えば、図1では5段)配置されている。但し、火炉の形状や一つの段におけるバーナの数、段数、配置などはこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して複数の粉砕機(ミル)31,32,33,34,35に連結されている。この粉砕機31,32,33,34,35は、例えば、粉砕機のハウジング内に粉砕テーブル(図示省略)が駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示省略)が粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている。石炭が、複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、粉砕され、搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)により粉砕機のハウジング内の分級機(図示省略)に搬送されて、所定の粒径範囲内に分級された微粉燃料を、微粉炭供給管26,27,28,29,30からバーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
【0018】
また、火炉11は、バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト(風道)37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)38が設けられている。
【0019】
燃焼ガス通路13は、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0020】
燃焼ガス通路13は、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出される煙道14が連結されている。煙道14は、空気ダクト37との間にエアヒータ(空気予熱器)42が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
【0021】
また、煙道14には、エアヒータ42よりも上流側の位置に脱硝装置43が設けられている。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道14内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。
煙道14に連結されるガスダクト41には、エアヒータ42よりも下流側の位置に、電気集塵機などの集塵装置44、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45、脱硫装置46などが設けられ、下流端部に煙突50が設けられている。
【0022】
一方、複数の粉砕機31,32,33,34,35が駆動すると、生成された微粉燃料が搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)と共に微粉炭供給管26,27,28,29,30を通してバーナ21,22,23,24,25に供給される。また、煙道14から排出された排ガスとエアヒータ42で熱交換することで、加熱された燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)が、空気ダクト37から風箱36を介してバーナ21,22,23,24,25に供給される。バーナ21,22,23,24,25は、微粉燃料と搬送用ガスとが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに微粉燃料混合気が着火することで火炎を形成することができる。火炉11内の下部で火炎が生じ、高温の燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路13に排出される。なお、酸化性ガスとして、本実施形態では空気を用いる。空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、燃料流量との適正化を図ることで使用可能になる。
【0023】
その後、燃焼ガスは、燃焼ガス通路13に配置される第2過熱器103、第3過熱器104、第1過熱器102、(以下単に「過熱器」と記載する場合もある)、第2再熱器106、第1再熱器105(以下単に「再熱器」と記載する場合もある)、節炭器107で熱交換した後、脱硝装置43により窒素酸化物が還元除去され、集塵装置44で粒子状物質が除去され、脱硫装置46にて硫黄酸化物が除去された後、煙突50から大気中に排出される。なお、各熱交換器は燃焼ガス流れに対して、必ずしも上述の記載順に配置されなくともよい。
【0024】
次に、図2を用いて、ボイラ発電プラント1の作動流体である水及び蒸気の流れについて説明する。ボイラ発電プラント1は、石炭焚きボイラ10に設けられた熱交換器(過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107)と、石炭焚きボイラ10が生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン110と、蒸気タービン110に連結され蒸気タービン110の回転によって発電を行う発電機80とを備える。
【0025】
石炭焚きボイラ10で生成した蒸気により回転駆動される蒸気タービン110は、例えば、高圧タービン111と中圧タービン112と低圧タービン113とから構成され、再熱器105,106からの蒸気が中圧タービン112に流入した後に低圧タービン113に流入する。低圧タービン113には、復水器114が連結されており、低圧タービン113を回転駆動した蒸気が、この復水器114で冷却水(例えば海水や純水)との間接接触(又は直接接触)によって冷却されて復水となる。
【0026】
復水器114には、補給水タンク115から補給水ポンプ116によって補給水が補給されるようになっている。補給水ポンプ116の動作は、制御部60によって制御される。復水器114は、復水系統L1、低圧給水系統(給水系統)L2及び高圧給水系統(給水系統)L3を介して節炭器107に連結されている。復水系統L1、低圧給水系統L2及び高圧給水系統L3がプレボイラ系統とされる。復水系統L1には、上流側から順に、復水ポンプ(CP)121、グランドコンデンサ126、復水脱塩装置128が設けられている。
【0027】
復水器114の出口には、水中の鉄濃度を計測する鉄濃度計S1が設けられている。鉄濃度計S1の出力は、制御部60へと送信される。
【0028】
復水ポンプ121とグランドコンデンサ126の間には、復水ブロー系統L11が分岐して設けられている。復水ブロー系統L11には、遮断弁V1が設けられている。遮断弁V1は制御部60の指令によって開閉され、遮断弁V1を開とすることによって外部へと排水できるようになっている。復水ブロー系統L11は、例えば、プレボイラ系統からの排水や水中の鉄濃度を低減する際などに用いられる。
【0029】
復水脱塩装置128は並列に2つ設けられている。ただし、復水脱塩装置128の設置数はこれに限定されるものではなく、1つであっても良く、3つ以上であっても良い。復水脱塩装置128をバイパスするように復水脱塩装置バイパス系統L12が設けられている。復水脱塩装置バイパス系統L12には、遮断弁V2が設けられている。遮断弁V2は制御部60の指令によって開閉され、遮断弁V2を開とすることによって復水脱塩装置128をバイパスして復水を復水系統L1の下流側へと流すことができるようになっている。
【0030】
復水脱塩装置128及び復水脱塩装置バイパス系統L12よりも下流側でかつ低圧給水加熱器122との間の復水系統L1には、アンモニア注入位置132にて、アンモニア注入系統L13の下流端が接続されている。アンモニア注入系統L13には、アンモニア注入ポンプ130と、アンモニア水タンク(アンモニアタンク)131とが設けられている。アンモニア注入ポンプ130は、制御部60の指令によって起動ないし停止および/または回転数制御が行われ、アンモニア水タンク131から所定量のアンモニア水が復水系統L1へ注入される。本実施形態では、アンモニア注入ポンプ130を容積式ポンプとし、回転数によりアンモニア水の流量を制御する場合について説明するが、例えば、弁を用いて流量を制御する方法など、他の制御方法であっても良い。アンモニア水タンク131には、所定のアンモニア濃度に調整されたアンモニア水が貯留されている。なお、アンモニア水タンク131内には水溶液の形態でアンモニアが貯留されているが、気体としてアンモニアを貯留するアンモニアガスタンクであっても良い。
【0031】
アンモニア注入位置132と低圧給水加熱器122との間の復水系統L1には、復水戻り配管L14の上流端が接続されている。復水戻り配管L14の下流端は、復水器114に接続されている。復水戻り配管L14には、復水戻り制御弁V3が設けられている。復水戻り制御弁V3は、制御部60の指令によって全閉から最大開度まで任意に開度が調整される。復水戻り配管L14によって復水循環系統が構成される。すなわち、復水器114を出た水が、復水系統L1の復水ポンプ121、グランドコンデンサ126、復水脱塩装置バイパス系統L12及びアンモニア注入位置132を順に通過した後に、復水戻り配管L14によって復水器114に戻る復水循環系統が構成される。
【0032】
復水戻り配管L14には、電気伝導率計S2が設けられている。電気伝導率計S2は、水素イオン形の強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムを備えており、このカラムに水を通して電気伝導率が測定される。電気伝導率計S2の出力は、制御部60へと送信される。制御部60では、計測された電気伝導率に基づいて水中のアンモニア濃度が演算される。すなわち、電気伝導率計S2によって、復水戻り配管L14を通り復水器114へ戻る水のアンモニア濃度が得られる。
【0033】
復水系統L1の下流側には、低圧給水系統L2が接続されている。低圧給水系統L2は、復水戻り配管L14が復水系統L1に接続された上流端L14aよりも下流側に設けられている。低圧給水系統L2には低圧給水加熱器122が設けられている。本実施形態では低圧給水加熱器122は3つ設けられているが、設置数はこれに限定されるものではなく、1つ又は2つであっても4つ以上であっても良い。低圧給水加熱器122には、熱源として、低圧蒸気タービン113から抽気された蒸気が用いられる。
【0034】
低圧給水加熱器122の下流側には、脱気器135とボイラ給水ポンプ(BFP)123が順に設けられている。ボイラ給水ポンプ123の上流端までが低圧給水系統L2とされる。
【0035】
脱気器135には、低圧給水戻り配管L21の上流端が設けられている。脱気器135は、水中の溶存酸素や炭酸ガスなどの非凝縮性ガスを除去する。低圧給水戻り配管L21の下流端は、復水器114に下流端が接続された主給水戻り配管L4に接続されている。
【0036】
主給水戻り配管L4には、電気伝導率計S3が設けられている。電気伝導率計S3は、水素イオン形の強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムを備えており、このカラムに水を通して電気伝導率が測定される。電気伝導率計S3の出力は、制御部60へと送信される。制御部60では、計測された電気伝導率に基づいて水中のアンモニア濃度が演算される。すなわち、電気伝導率計S3によって、主給水戻り配管L4を通り復水器114へ戻る水のアンモニア濃度が得られる。
【0037】
なお、主給水戻り配管L4を用いずに、低圧給水戻り配管L21の下流端を復水器114に直接接続するようにしても良い。この場合、電気伝導率計S3は低圧給水戻り配管L21に設けられる。低圧給水戻り配管L21には、低圧給水戻り制御弁V4が設けられている。低圧給水戻り制御弁V4は、制御部60の指令によって全閉から最大開度まで任意に開度が調整される。
【0038】
低圧給水系統L2の下流側には、高圧給水系統L3が接続されている。高圧給水系統L3は、給水流れの上流側から順に、ボイラ給水ポンプ123と、ボイラ給水ポンプ出口制御弁V5と、高圧給水加熱器124と、高圧給水加熱器出口制御弁V6とを備えている。本実施形態では高圧給水加熱器124は3つ設けられているが、設置数はこれに限定されるものではなく、1つ又は2つであっても4つ以上であっても良い。高圧給水加熱器124には、熱源として、高圧蒸気タービン111や中圧蒸気タービン112から抽気された蒸気が用いられる。ボイラ給水ポンプ出口制御弁V5及び高圧給水加熱器出口制御弁V6は、それぞれ、制御部60の指令によって全閉から最大開度まで任意に開度が調整される。
【0039】
給水流れの最下流に位置する高圧給水加熱器124と高圧給水加熱器出口制御弁V6との間には、高圧給水戻り配管L31の上流端が接続されている。高圧給水戻り配管L31の下流端は、復水器114に下流端が接続された主給水戻り配管L4に接続されている。なお、主給水戻り配管L4を用いずに、高圧給水戻り配管L31の下流端を復水器114に直接接続するようにしても良い。この場合、電気伝導率計S3は高圧給水戻り配管L31に設けられる。高圧給水戻り配管L31には、高圧給水戻り制御弁V7が設けられている。高圧給水戻り制御弁V7は、制御部60の指令によって全閉から最大開度まで任意に開度が調整される。
【0040】
主給水戻り配管L4には、主給水戻り制御弁V8が設けられている。主給水戻り制御弁V8は、制御部60の指令によって全閉から最大開度まで任意に開度が調整される。また、主給水戻り制御弁V8の上流側には、主給水ブロー系統L41が分岐して設けられている。主給水ブロー系統L41には、遮断弁V9が設けられている。遮断弁V9は制御部60の指令によって開閉され、遮断弁V9を開とすることによって外部へと排水できるようになっている。
【0041】
制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0042】
次に、上記構成のボイラ発電プラント1の運転中の動作を説明する。本実施形態では、石炭焚きボイラ10は一例として貫流ボイラとされている。高圧給水加熱器124で加熱された給水は、節炭器107へと導かれてさらに加熱され、火炉壁101を構成する火炉壁管へと流れる。火炉壁管を通過する際に、火炉11(図1参照)内の火炎から輻射を受けて加熱されて蒸気となり、そして過熱器102,103,104へと供給される。過熱器102,103,104で蒸気を過熱して生成された過熱蒸気は、高圧タービン111に供給され、高圧タービン111を回転駆動する。高圧タービン111から排出された蒸気は、再熱器105,106に導入されて再度過熱される。再度過熱された蒸気は、中圧タービン112を経て低圧タービン113に供給され、中圧タービン112および低圧タービン113を回転駆動する。各蒸気タービン111,112,113の回転軸は、発電機80を回転駆動して、発電が行われる。低圧タービン113から排出された蒸気は、復水器114で冷却水との間接接触(又は直接接触)によって冷却されることで復水となり、復水系統L1、低圧給水系統L2及び高圧給水系統L3を介して、再び、節炭器107に送られる。
【0043】
次に、ボイラ発電プラント1の建設中や試運転中の際に、復水系統L1、低圧給水系統L2及び高圧給水系統L3を含むプレボイラ系統を保管する方法について説明する。以下の保管方法は、ボイラ発電プラント1の建設中や試運転中のように、ボイラ運転中における給水中のアンモニア濃度を、ボイラの停止後、そのまま維持することができない場合を想定している。
【0044】
本実施形態の保管方法は、プレボイラ系統の水中のアンモニア濃度を所定値以上として配管等の腐食を抑制するものである。アンモニア濃度としては、想定する保管期間に応じて適宜設定され、例えば、保管期間が1週間以内であれば20ppm程度、1週間を超えて4週間以下であれば50ppm程度、4週間を超える場合は100ppm程度とされる。
【0045】
<第1工程:復水系統L1のアンモニア濃度上昇>
図3を用いて第1工程を説明する。なお、以下の各図において、水が流れる経路は太線で示されている。
【0046】
先ず、ボイラ発電プラント1の停止状態から、復水系統L1のアンモニア濃度の上昇を行う。復水器114に補給水タンク115から水を適宜補給しながら、復水系統L1に水張を行う。このとき、制御部60の指令によって、復水ポンプ121は駆動され、遮断弁V2は開とされるとともに、復水戻り制御弁V3が所定開度とされる。一方、ボイラ給水ポンプ123は停止され、低圧給水戻り制御弁V4、ボイラ給水ポンプ出口制御弁V5、高圧給水加熱器出口制御弁V6、高圧給水戻り制御弁V7及び主給水戻り制御弁V8は全閉とされている。なお、以下の説明では、各図において弁が開の場合は白抜きで弁を表示し、弁が閉の場合は黒塗りで弁を表示する。
【0047】
以上の操作によって、復水器114に貯留された水は、復水ポンプ121、グランドコンデンサ126を通り、復水脱塩装置128を通過せずに復水脱塩装置バイパス系統L12を通って復水戻り配管L14へと導かれ、復水器114へと戻る。ここで、復水脱塩装置128をバイパスするのは、高pH環境に対して耐性の低いイオン交換樹脂等を復水系統L1内の水に含まれるアンモニアとのイオン交換による劣化から保護するためである。イオン交換樹脂等は、復水脱塩装置128の内部に充填されている。このようにして、復水系統L1を通って水が循環する復水循環系統が構成される。このときに、アンモニア水タンク131からアンモニア注入系統L13を用いてアンモニア水が復水系統L1に注入される。制御部60は、アンモニア注入ポンプ130の回転数や発停のタイミングを制御することによって、配管等の腐食抑制に必要なアンモニア濃度に対応するアンモニア水供給量を制御する。
【0048】
復水循環系統を流れる水のアンモニア濃度が所望値に到達すると、制御部60の指令によって、次工程である第2工程に進む。ただし、アンモニア濃度が所望値に到達する前に、予め決めた所定値を超えた場合に第2工程に進むこととしても良い。この所定値は、第2工程への移行中に、復水系統L1のアンモニア濃度が所望値に到達することが予想される濃度値として設定される。
【0049】
<第2工程:低圧給水系統L2のアンモニア濃度上昇>
図4を用いて第2工程を説明する。なお、水が流れる経路は太線で示されている。
第1工程の状態を維持したまま、低圧給水系統L2に水張を行う。具体的には、制御部60の指令によって、低圧給水戻り制御弁V4と主給水戻り制御弁V8を全閉状態から所定開度まで開く。この時、低圧給水系統L2への供給流量を確保するために、復水戻り制御弁V3の開度を全閉状態とならない程度に減操作してもよい。これにより、復水系統L1を通過した水は、低圧給水加熱器122、脱気器135を通り、低圧給水戻り配管L21へ流れ、復水器114へと返送される。このとき、必要に応じて、補給水タンク115から復水器114に水を適宜補給する。また、第1工程から引き続きアンモニア水タンク131からアンモニア注入系統L13を用いてアンモニア水が復水系統L1に注入されているので、低圧給水系統L2に水を供給しながらアンモニア濃度が増加する。
【0050】
復水系統L1及び低圧給水系統L2を含む循環系統を流れる水のアンモニア濃度が所望値に到達すると、制御部60の指令によって、次工程である第3工程に進む。ただし、アンモニア濃度が所望値に到達する前に、予め決めた所定値を超えた場合に第3工程に進むこととしても良い。この所定値は、第3工程への移行中に、復水系統L1及び低圧給水系統L2のアンモニア濃度が、所望値に到達することが予想される濃度値として設定される。
【0051】
<第3工程:高圧給水系統L3のアンモニア濃度上昇>
図5を用いて第3工程を説明する。なお、水が流れる経路は太線で示されている。
第2工程の状態を維持したまま、高圧給水系統L3に水張りを行う。具体的には、制御部60の指令によって、ボイラ給水ポンプ出口制御弁V5と高圧給水戻り制御弁V7を全閉状態から所定開度まで開く。ただし、高圧給水加熱器出口制御弁V6は全閉としたままである。そして、制御部60の指令によって、ボイラ給水ポンプ123を起動する。この時、高圧給水系統L3への供給流量を確保するために、復水戻り制御弁V3及び低圧給水戻り制御弁V4の開度を、全閉状態とならない程度に減操作してもよい。これにより、復水系統L1及び低圧給水系統L2を通過した水は、ボイラ給水ポンプ123を経て高圧給水加熱器124を通り、高圧給水戻り配管L31へ流れ、復水器114へと返送される。このとき、必要に応じて、補給水タンク115から復水器114に水を適宜補給する。また、第2工程から引き続きアンモニア水タンク131からアンモニア注入系統L13を用いてアンモニア水が復水系統L1及び低圧給水系統L2に注入されているので、高圧給水系統L3に水を供給しながらアンモニア濃度が増加する。
【0052】
上記の第1工程から第3工程までの操作を順番に行い、復水系統L1、低圧給水系統L2及び高圧給水系統L3を含むプレボイラ系統の全体を所定のアンモニア濃度まで上昇させる。そして、ボイラ給水ポンプ123と復水ポンプ121、アンモニア注入ポンプ130を停止し、プレボイラ系統を所望の高濃度アンモニア水にて保管する。
【0053】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
復水系統L1の下流側と復水器114とを接続する復水戻り配管L14を設けることによって、復水系統L1を流れる水を復水器114に戻す復水循環系統を形成する。この復水循環系統にアンモニア水タンク131からアンモニア注入ポンプ130を用いてアンモニアを注入することで、復水循環系統内のアンモニア濃度を所定値まで上昇させ、ボイラ発電プラント1の保管時に復水系統L1が腐食することを抑制できる。
保管を行う際に、復水系統L1に限定して水を循環させてアンモニアを注入することとしたので、大容量の循環系統(プレボイラ系統全体)に対してアンモニアを注入、混合する場合に比べて短時間で均一にアンモニアを混合することがきる。また、均一にアンモニアを混合することができるので、原液の濃度と希釈後の濃度の比を大きくすることが可能となり、アンモニア水タンク131に貯留するアンモニア濃度を高めることができ、これによりアンモニア水タンク131を小型化できる。
【0054】
低圧給水戻り配管L21を設けることによって、低圧給水系統L2を流れる水が復水器114との間で循環する。また、高圧給水戻り配管L31を設けることによって、高圧給水系統L3を流れる水が復水器114との間で循環する。
第2工程によって低圧給水戻り配管L21を用いて水を循環させることで低圧給水系統L2のアンモニア濃度を所定値まで増加させ、その後に、第3工程によって高圧給水戻り配管L31を用いて水を循環させることで高圧給水系統L3のアンモニア濃度を所定値まで増加させることとした。このように、低圧給水系統L2と高圧給水系統L3を分けて段階的にアンモニア濃度を増加させることとしたので、大容量の循環系統(プレボイラ系統全体)に対してアンモニアを注入、混合する場合に比べて均一にアンモニアを混合することができる。
【0055】
復水系統L1、低圧給水系統L2および高圧給水系統L3のアンモニア濃度が所定範囲とされた場合に復水器114を介した水の循環を停止する。これにより、復水器114と石炭焚きボイラ10のボイラ本体3との間のプレボイラ系統の腐食を抑制できるアンモニア濃度で保管することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、本開示のボイラを石炭焚きボイラとしたが、燃料としては、バイオマス燃料や石油精製時に発生するPC(石油コークス:Petroleum Coke)燃料、石油残渣などの固体燃料を使用するボイラであってもよい。また、燃料として固体燃料に限らず、重油、軽油、重質油などの石油類や工場廃液などの液体燃料も使用することができ、更には、燃料として気体燃料(天然ガス、副生ガスなど)も使用することができる。さらに、これら燃料を組み合わせて使用する混焼焚きボイラにも適用することができる。
【0057】
以上説明した各実施形態に記載のボイラの保管装置およびこれを備えたボイラならびにボイラの保管方法は、例えば以下のように把握される。
【0058】
本開示の一態様に係るボイラの保管装置は、復水器(114)から復水ポンプ(121)を介して給水加熱器(122,124)に至る復水系統(L1)の下流側と、前記復水器(114)とを接続する復水戻り配管(L14)と、アンモニアが貯留されたアンモニアタンク(131)と、前記アンモニアタンク(131)から、前記復水系統(L1)と前記復水戻り配管(L14)とによって構成された復水循環系統に対してアンモニアを注入するアンモニア注入ポンプ(130)と、ボイラの保管を行う際に、前記復水ポンプ(121)によって前記復水循環系統に水の循環流れを形成するとともに、前記アンモニア注入ポンプ(130)によって前記アンモニアタンク(131)からアンモニアを前記復水循環系統に対して注入する制御部(60)と、を備えている。
【0059】
復水系統の下流側と復水器とを接続する復水戻り配管を設けることによって、復水系統を流れる水を復水器に戻す復水循環系統を形成する。この復水循環系統にアンモニアタンクからアンモニア注入ポンプを用いてアンモニアを注入することで、復水循環系統内のアンモニア濃度を所定値まで上昇させ、ボイラの保管時に復水系統が腐食することを抑制できる。
ボイラの保管を行う際に、復水系統に限定して水を循環させてアンモニアを注入することとしたので、大容量の循環系統に対してアンモニアを混合する場合に比べて短時間で均一にアンモニアを混合することがきる。また、均一にアンモニアを混合することができるので、アンモニアタンクに貯留するアンモニア濃度を高めることができ、これによりアンモニアタンクを小型化できる。
【0060】
本開示の一態様に係るボイラの保管装置では、前記復水系統(L1)とボイラとの間に設けられた給水系統(122,124)と前記復水器(114)とを接続する給水戻り配管(L21,L31)を備え、前記制御部(60)は、前記復水系統(L1)を流れる水のアンモニア濃度が所定値を超えた後に、アンモニアが注入された前記復水系統(L1)の水が、前記給水系統(L2,L3)および前記給水戻り配管(L21,L31)を介して前記復水器(114)へと循環するように制御する。
【0061】
給水系統の下流側と復水器とを接続する給水戻り配管を設けることによって、復水系統から導かれた水が給水配管を介して復水器へ循環される。これにより、アンモニアが注入された復水系統の水が給水系統へと導かれて保管の準備が行われる。
復水系統を流れる水のアンモニア濃度が所定値を超えた後に、復水系統の水を給水系統及び給水戻り配管を介して復水器へ流すこととした。これにより、給水系統のアンモニア濃度を所定値まで増加させることができる。また、復水系統のアンモニア濃度を増加させた後に給水系統のアンモニア濃度を増加させることとし、アンモニア濃度を増加させる領域を分割して段階的にアンモニア濃度を増加させることとしたので、均一にアンモニアを混合することができる。
【0062】
本開示の一態様に係るボイラの保管装置では、前記給水系統は、給水ポンプ(123)と、該給水ポンプ(123)よりも上流側で低圧給水加熱器(122)を有する低圧給水系統(L2)と、該給水ポンプ(123)よりも下流側で高圧給水加熱器(124)を有する高圧給水系統(L3)と、を備え、前記給水戻り配管は、前記低圧給水加熱器(122)よりも下流側で前記低圧給水系統(L2)に接続された低圧給水戻り配管(L21)と、前記高圧給水加熱器(124)よりも下流側で前記高圧給水系統(L3)に接続された高圧給水戻り配管(L31)と、を備え、前記制御部(60)は、前記低圧給水系統(L2)にアンモニアが注入された水を前記低圧給水戻り配管(L21)を介して前記復水器(114)との間で循環させ、前記低圧給水系統(L2)を流れる水のアンモニア濃度が所定値を超えた後に、前記低圧給水系統(L2)を流れる水が、前記高圧給水系統(L3)および前記高圧給水戻り配管(L31)を介して前記復水器(114)へと循環するように制御する。
【0063】
低圧給水戻り配管を設けることによって、低圧給水系統を流れる水が復水器との間で循環する。また、高圧給水戻り配管を設けることによって、高圧給水系統を流れる水が復水器との間で循環する。
低圧給水戻り配管を用いて水を循環させることで低圧給水系統のアンモニア濃度を所定値まで増加させ、その後に、高圧給水戻り配管を用いて水を循環させることで高圧給水系統のアンモニア濃度を所定値まで増加させることとした。このように、低圧給水系統と高圧給水系統を分けて段階的にアンモニア濃度を増加させることとしたので、均一にアンモニアを混合することができる。
【0064】
本開示の一態様に係るボイラの保管装置では、前記制御部(60)は、前記復水系統(L1)、前記低圧給水系統(L2)および前記高圧給水系統(L3)のアンモニア濃度が所定範囲とされた場合に、前記復水器(114)を介した水の循環を停止して保管を行う。
【0065】
復水系統、低圧給水系統および高圧給水系統のアンモニア濃度が所定範囲とされた場合に復水器を介した水の循環を停止する。これにより、復水器とボイラ本体との間のプレボイラ系統の腐食を抑制できるアンモニア濃度で保管することができる。
アンモニア濃度の所定範囲としては、例えば、保管期間が1週間以内であれば20ppm程度、1週間を超えて4週間以下であれば50ppm程度、4週間を超える場合は100ppm程度とされる。
【0066】
本開示の一態様に係るボイラは、上記のいずれかに記載のボイラの保管装置と、ボイラ本体(3)と、を備えている。
【0067】
本開示の一態様に係るボイラの保管方法は、復水器(114)から復水ポンプ(121)を介して給水加熱器(122,124)に至る復水系統(L1)の下流側と、前記復水器(114)とを接続する復水戻り配管(L14)と、アンモニアが貯留されたアンモニアタンク(131)と、前記アンモニアタンク(131)から、前記復水系統(L1)と前記復水戻り配管(L14)とによって構成された復水循環系統に対してアンモニアを注入するアンモニア注入ポンプ(130)と、を備えたボイラの保管方法であって、ボイラの保管を行う際に、前記復水ポンプ(121)によって前記復水循環系統に水の循環流れを形成するとともに、前記アンモニア注入ポンプ(130)によって前記アンモニアタンク(131)からアンモニアを前記復水循環系統に対して注入する。
【符号の説明】
【0068】
1 ボイラ発電プラント(発電プラント)
3 ボイラ本体
10 石炭焚きボイラ(ボイラ)
11 火炉
12 燃焼装置
13 燃焼ガス通路
14 煙道
21~25 バーナ
26~30 微粉炭供給管
31~35 粉砕機(ミル)
36 風箱
37 空気ダクト(風道)
38 押込通風機(FDF)
39 アディショナル空気ポート
42 エアヒータ(空気予熱器)
43 脱硝装置
44 集塵装置
45 誘引通風機(IDF)
46 脱硫装置
50 煙突
60 制御部
80 発電機
101 火炉壁
102 第1過熱器(熱交換器)
103 第2過熱器(熱交換器)
104 第3過熱器(熱交換器)
105 第1再熱器(熱交換器)
106 第2再熱器(熱交換器)
107 節炭器(熱交換器)
111 高圧蒸気タービン
112 中圧蒸気タービン
113 低圧蒸気タービン
114 復水器
115 補給水タンク
116 補給水ポンプ
121 復水ポンプ(CP)
122 低圧給水加熱器
123 ボイラ給水ポンプ(BFP)
124 高圧給水加熱器
126 グランドコンデンサ
128 復水脱塩装置
130 アンモニア注入ポンプ
131 アンモニア水タンク(アンモニアタンク)
132 アンモニア注入位置
135 脱気器
L1 復水系統
L11 復水ブロー系統
L12 復水脱塩装置バイパス系統
L13 アンモニア注入系統
L14 復水戻り配管
L14a 上流端
L2 低圧給水系統(給水系統)
L21 低圧給水戻り配管
L3 高圧給水系統(給水系統)
L31 高圧給水戻り配管
L4 主給水戻り配管
L41 主給水ブロー系統
S1 鉄濃度計
S2,S3 電気伝導率計
V1 遮断弁
V2 遮断弁
V3 復水戻り制御弁
V4 低圧給水戻り制御弁
V5 ボイラ給水ポンプ出口制御弁
V6 高圧給水加熱器出口制御弁
V7 高圧給水戻り制御弁
V8 主給水戻り制御弁
V9 遮断弁
図1
図2
図3
図4
図5